JP3553294B2 - 金属箔の圧延方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多段圧延機による金属箔圧延方法に関し、特に生産性を高め、かつ良好な板形状を得るための金属箔圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にステンレス等の金属箔圧延には、小径ワークロールを用いたクラスタータイプの多段圧延機が用いられている。金属箔圧延では板厚に対して板幅がはるかに大きな為、フラットな板形状を得ることが困難な状況にある。
【0003】
従って、このような多段圧延機には様々な形状制御端が設けられている。代表的な例としてはゼンジミアミルの分割バックアップロールのAS−U機構を用いたロール偏心によって分割バックアップロールのロールクラウンを制御する方法や、1段テーパを付けた中間ロールを圧延機に対し入・出側で同方向かつ上下で逆方向に配置し、この中間ロールを板幅方向に移動させその移動量を制御することによって板の形状を制御する方法が一般的に知られている。
【0004】
このような多段圧延機においては、特開平2−220704号公報に開示されているように、図4に示される様な1段目テーパ6及び2段目テーパ7の2段のテーパ付きの中間ロール形状を用いれば良好な板形状が得られることが知られている。しかしながら、圧延条件(圧下率、圧延荷重、板幅、ロール材質等)が変化した場合、同一形状の2段のテーパ付きの中間ロールの移動量を制御するだけでは制御の幅に限度があり、良好な板形状を得ることは難しく、この傾向はヤング率が高いワークロールを用いて圧延するほど顕著となる傾向があった。
【0005】
このため、予め各圧延条件に応じたテーパパターンの異なる2段のテーパ付きの中間ロールを数種類用意し、圧延条件毎に中間ロールを組み替えて操業を行っている。従って、中間ロールの交換のために時間がかかるので生産性が低下する問題と、中間ロールの保有数が多くなるので製造コストが増大するという問題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法として例えば、特開平3−99707号公報に開示されているように8本の中間ロールの片側に4本づつ2種類のテーパを設け、移動量を制御する方法があるが、制御のため8本の中間ロールを移動させる必要があり、このため設備コストが増大するという問題がある。また、特開平3−99706号公報に開示されているように4本の中間ロールの両端にテーパパターンの異なる2種類のテーパを設け、移動量を制御する方法があるけれどもテーパが中間ロールの両端に付いているため非対称の形状制御が行いづらい、例えばワークサイド側だけが耳伸びの場合中間ロールシフトを行うと、ワークサイドの形状は良好になってもドライブサイドの形状は悪化するなどの問題がある。
【0007】
上述した生産性の低下および製造コストの上昇を招かずに良好な板形状を得るためには、多段圧延機に形状制御端としてワークロールベンディング力を採用する方法や中間ロールに油圧等によってロール形状を変化させることが可能なものを採用するなどの方法がある。しかしながら圧延機によってはワークロールベンディングをするためのメタルチョックを設置することが構造上困難であったり、ワークロールベンディングは端伸び・中伸びの板形状制御には有効であるがポケットと呼ばれるクォータ伸びには効果が期待できないなどの問題がある。また、箔圧延機では中間ロール径が小さいため所望とするクラウン変化が油圧等では得られないなどの問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、良好な板形状を得るために種々の形状制御端を使用した圧延方法が提案されているが、テーパを付与した中間ロールのシフト方法では、広範囲に適用するためには、中間ロールのセット数の増大によるコストの増加、ロールの組み替えの発生による生産性の低下を招いたり、或いはロールベンディング装置を設ける場合には、設備的な制約、十分な形状制御の効果が得られないなど、いづれも形状制御の効果を発揮しうる範囲に限界があるなどの問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み生産性に優れ、かつ低コストで形状の良好な金属箔を広範囲に得るための方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記したような従来法の問題点を解決するためのものである。
【0011】
本発明の請求項1は、上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である前記中間ロールを各々独立に板幅方向に移動可能な構造とし、かつ該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれ1対づつ合計2対付与すると共に、それぞれ1対の該中間ロールのロールクラウンの付与された方向を変えて配置し、圧延機出側の板形状に応じて各中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法であり、本発明の請求項2は、上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である中間ロールを各々独立に板幅方向に移動可能な構造とし、かつ、該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれ1対づつ合計2対付与すると共に、各1対の同じクラウン形状の中間ロールを多段圧延機の上下ワークロールの中心を結ぶ線に対して入・出側対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して逆方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置し、圧延機出側の板形状に応じて各該中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法であり、本発明の請求項3は、上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である中間ロールを各々独立に板幅方向に移動可能な構造とし、かつ、該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれ1対づつ合計2対付与すると共に、各1対の同じクラウン形状の中間ロールを多段圧延機の上下ワークロールの接触点に対して点対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して同方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置し、圧延機出側の板形状に応じて各該中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は12段の多段圧延機を示す図であり、ステンレス鋼の金属箔コイル(l)が圧延されている。図1において、一対の小径ワークロール(2,2′)は上下2対の4本の中間ロール(3a,3a′,3b,3b′)で支持され、これらの中間ロールは上下3対の6本の分割バックアップロール(4a,4a′,4b,4b′,4c,4c′)で支持されている。上側にあるサイド分割バックアップロール(4a,4c)にはAS−U機構が設置されており、各分割バックアップロールのベアリング位置を回転させて偏心させることによって、上側の分割バックアップロールプロフィルを任意に変化させることが可能である。
【0014】
また、下側にあるサイド分割バックアップロール(4a′,4c′)は主軸を回転させて偏心させることによって、下側の分割バックアップロールプロフィルをあるパターンを持って変化させることができる。また上下2対の4本の中間ロール(3a,3a′,3b,3b′)の片側にはそれぞれ後述するロールクラウンが設けられており、各ロールはロールシフト装置(図示しない)によってロール軸方向に各々独立に移動可能となっている。
【0015】
本発明においては、上下2対4本の中間ロールには、ロール軸の片側に軸方向中央側より端部に向かって徐々に先細りするロールクラウンが付与されている。このロールクラウンは1対づつ異なっており、多段圧延機は2種類(A,B)のロールクラウンを有する中間ロール対を備えている。付与された中間ロールのロールクラウンの形状として、例えば、図2のAに示すように、テーパ開始点5がロール軸方向中央側にあり、且つテーパ量が小さいロールクラウンA、或いは図2のBに示すように、ロールクラウン量alに比べてテーパ開始点がロール軸方向端部側にあり、かつテーパ量が大きいロールクラウン量a2のように異なる2種類のロールクラウンとすることができる。このようにロールクラウン量a1,a2はテーパ開始点5およびテーパ長l1,l2を、例えば特願平2−220704号公報に開示されている方法を参照して、適切に選択して2種類のロールクラウンを設定しても良い。
【0016】
なおロールクラウンは、上述のような直線的なテーパのみに限らずロールの輪郭線が曲線状のテーパとなるものも含まれる。このロールクラウンの決定は、圧延材料の板厚、板幅等の形状および材質、変形抵抗等を勘案したロールクラウンの形状の数値計算、あるいは、現場実験による試行錯誤によって決定しても良い。
【0017】
次にこのロールの片側にロールクラウンを付与した2対の中間ロールの配置に付いて説明する。
【0018】
2種類のロールクラウンを有する2対4本の中間ロールの配置に関しては図3に示すように6つの配置パターンがある。図3のaからfは、上下2対4本の中間ロールを有する多段圧延機を側面から見たロール配置を示す概略図である。なお、圧延方向を図の矢印の方向とし、図の左側を圧延機の入側、右側を圧延機の出側とする。中間ロール対A,Bは図2において説明したようにそれぞれ異なるロールクラウンを付与したロール対である。
【0019】
図3において、中間ロールのロールクラウンを付与した部分が、圧延機のワークサイド(作業側)およびドライブサイド(駆動側)のいづれの側にあるかを表すために、A,Bと記したものは、A或いはBのロールクラウンを付与した側が、圧延機のワークサイドに配置されていることを示し、A′,B′と記したものは、A或いはBのロールクラウンを付与した側が、圧延機のドライブサイドに配置されていることを示すものとする。
【0020】
また、上ロール対とは圧延ラインの上方にある圧延機入側と出側のロールの組合せを、下ロール対とは圧延ラインの下方にある圧延機入側と出側のロールの組合せをいう。また、入側ロール対とは圧延機の入側にある上と下のロールの組合せを、出側ロール対とは圧延機出側にある上と下のロールの組合せをいう。
【0021】
図3のaは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に異なるロールクラウン形状を付与されたロールにより構成され、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側で同じ側となるように配置されている例である。すなわち、中間ロールは、ロールクラウン形状が、上下のワークロールの接触点に関して対称(以下、点対称とする)となるように、かつロールクラウンを付与された側が入・出側を比較して同方向、上下を比較して逆方向となるように配置されており、ロールクラウンの付与された側は、上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて同じであり、上ロール対と下ロール対とで互いに異なる位置となっている。
【0022】
圧延機の入側において、一方の中間ロール対の一方のロールAと他方の中間ロール対の一方のロールBが上下に対向して配置され入側ロール対を構成している。そのロールクラウンの付与された側は互いに異なり、Aがワークサイド(A)に、Bがドライブサイド(B′)となるように配置されている。一方、圧延機の出側において、他方の中間ロール対の他方のロールBと一方の中間ロール対の他方のロールAが上下に対向して配置され出側ロール対を構成している。そのロールクラウンの付与された側は互いに異なり、Bがワークサイド(B)に、Aがドライブサイド(A′)となっている。
【0023】
従ってこの例においては、入側ロール対はA+B′、出側ロール対はB+A′となり、上ロール対はA+B、下ロール対はA′+B′となる。すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが点対称の位置となるように、ロールクラウンを付与した側が入・出側を比較して同方向、上下を比較して逆方向となるように配置されている。
【0024】
図3のbは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に異なるロールクラウン形状を付与されたロールにより構成され、且つそのロールクラウンが、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に同じ側にあり、更に入側ロール対と出側ロール対は入側と出側で互いに異なる側となるように配置されている例である。すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが点対称の位置となるように、ロールクラウンを付与された側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して同方向となっている。
【0025】
圧延機の入側において、一方の中間ロール対の一方のロールAと他方の中間ロール対の一方のロールBが上下に対向して配置され入側ロール対を構成しており、かつそのロールクラウンは、上下とも同じ側にあり、A、Bともワークサイドとなっている。一方、圧延機の出側において、他方の中間ロール対の他方のロールBと一方の中間ロール対の他方のロールAが上下に対向して配置され出側ロール対を構成しており、かつそのロールクラウンは、上下とも同じ側にあり、B,Aとも、ドライブサイド(B′,A′)となっている。従ってこの例では、入側ロール対はA+B、出側ロール対はB′+A′、上ロール対はA+B′、下ロール対はB+A′となり、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが点対称の位置となり、そのロールクラウン付与された側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して同方向となるように配置されており、ロールクラウンを付与した位置が、入側ロール対A,B、出側ロール対B′,A′でそれぞれ同じであり、入側ロール対、出側ロール対とで互いに異なる位置となっている。
【0026】
図3のcは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に異なるロールクラウン形状を付与されたロールであり、更に、上ロール対、下ロール対のそれぞれが出側、入側に同じロールクラウン形状を付与されたロールで構成され、且つ、そのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に同じ側にあり、更に入側ロール対と出側ロール対は互いに異なる側にあるように配置されている例である。
【0027】
すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが、上下のワークロールの中心を結ぶ線に関して対称(以下、入・出側対称とする)の位置となり、ロールクラウンの付与した側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して同方向となるように配置されているものである。
【0028】
圧延機の入側において、一方の中間ロール対の一方のロールAと他方の中間ロール対の一方のロールBが上下に対向して配置され入側ロール対を構成しており、且つそのロールクラウンは、上下とも同じ側に付与されており、A,Bともワークサイドとなっている。一方、圧延機の出側において、一方の中間ロール対の他方ロールAと他方の中間ロール対の他方のロールBがそれぞれ上下に対向して配置され出側ロール対を構成しており、かつロールクラウンは、上下とも同じ側に付与されており、B,Aとも、ドライブサイド(B′,A′)となっている。更に、圧延機の上ロール対、下ロール対はそれぞれA,A′,B,B′の同じロールクラウン形状を付与したロールで構成されており、上下で互いに異なっている。
【0029】
従って、この例では、入側ロール対はA+B、出側ロール対はA′+B′、上ロール対はA+A′、下ロール対はB+B′となり、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが入・出側対称の位置となり、ロールクラウンの付与した側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して同方向となるように配置されているものである。
図3のdは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に異なるロールクラウン形状を付与されたロールであり、更に、上ロール対、下ロール対のそれぞれが出側、入側に同じロールクラウンを付与されたロールで構成され、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、更に上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側に互いに異なる側にあるように配置されている例である。すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが入・出側対称の位置であり、ロールクラウンの付与された側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して逆方向となるように配置されている。圧延機の入側において、一方の中間ロール対の一方のロールAと他方の中間ロール対の一方のロールBが上下に対向して配置され、かつロールクラウンは、上下に異なる側に付与されており、Aがワークサイド、Bがドライブサイド(B′)となっている。
【0030】
一方、圧延機の出側において、一方の中間ロール対の他方のロールAと他方の中間ロール対の他方のロールBが上下に対向して配置され、かつロールクラウンは上下に異なる側に付与されており、Aがドライブサイド(A′)、Bがワークサイド(B)となっている。更に、圧延機の上ロール対、下ロール対はそれぞれA,A′,B′,Bの同じロールクラウンを付与したロールで構成されており、上下で互いに異なっている。
【0031】
従って、入側ロール対はA+B′、出側ロール対はA′+B、上ロール対はA+A′、下ロール対はB+B′となり、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが入・出側対称の位置であり、ロールクラウンの付与された側が入・出側を比較して逆方向、上下を比較して逆方向となるように配置されてる。
図3のeは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に同じロールクラウン形状を付与されたロールで構成され、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側で同じ側にあるように配置されている例である。
【0032】
すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが圧延面に関して対称(以下、上下対称とする)の位置であり、ロールクラウンの付与された側が入・出側を比較して同方向で、上下を比較して逆方向になるように配置されている。圧延機の入側において、一方の中間ロール対Aが上下に対向して配置され入側ロール対を構成している。且つ、そのロールクラウンは、上下に互いに異なる側に付与されており、上ロールがワークサイド(A)に、下ロールがドライブサイド(A′)になっている。一方、圧延機の出側において、他の中間ロール対Bが上下に対向して配置され出側ロール対を構成している。更に、そのロールクラウンは、上下に互いに異なる側に付与されており、上ロールがワークサイド(B)に、下ロールがドライブサイド(B′)になっている。従ってこの例では、入側ロール対がA+A′、出側ロール対がB+B′、上側ロール対がA+B、下側ロール対がA′+B′となり、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが上下対称であり、ロールクラウンの付与された側が入・出側ロール対を比較して同方向となり、上下を比較して逆方向となるように配置されている。
【0033】
図3のfは、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれが、上下に同じロールクラウン形状を付与されたロールで構成され、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側で異なる側にあるように配置されている例である。すなわち、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが上下対称の位置となり、ロールクラウンの付与された側が入・出側を比較して逆方向となり、上下を比較して逆方向となるように配置されている。圧延機の入側において、一方の中間ロール対Aが上下に対向して配置され、かつロールクラウンは、上下で互いに異なる側に付与されており、上ロールがワークサイド(A)に、下ロールがドライブサイド(A′)となっている。一方、圧延機の出側において、他の中間ロール対Bが上下に対向して配置され、かつロールクラウンは、上下で互いに異なる側に付与されており、上ロールがドライブサイド(B′)に、下ロールがワークサイド(B)となっている。
【0034】
従ってこの例では、入側ロール対がA+A′、出側ロール対がB+B′、上側ロール対がA+B′、下側ロール対がA′+Bとなり、中間ロールは、同じロールクラウン形状のロールが上下対称の位置であり、ロールクラウンの付与された側が入・出側を比較して逆方向となり、上下を比較して逆方向となるように配置されている。このように中間ロールにロールクラウンを付与すると共に、そのロール配置を変えることによって、一方向への圧延、および一方向、逆方向のリバース圧延においても、少ないロール本数をシフトさせることによって形状制御を効率的に行うことができるが、更に、多段圧延機で薄板を圧延する場合、リバース圧延することが多い。従って、1パス毎に圧延方向が逆転する。この様なリバース圧延を行う際、ワークロールの水平方向のたわみが圧延方向によって異なると、圧延機の形状制御特性が圧延方向によって異なることとなる。例えば、同じ圧延条件で右側方向に圧延する場合にフラットであっても、左側方向に圧延する場合には中伸びになる様な現象が生じる場合がある。
【0035】
ところで、図3において、圧延方向(圧延機の入側と出側)で、中間ロールクラウンの平均が圧延方向に変化しない組み合わせは、図3のa)およびd)の配置である。すなわち、入側または出側でのロールの上下配置がそれぞれ(A+B′)または(A′+B)となるので、ワークロールのロール軸方向の撓みが圧延方向によって異なることはなく、形状制御が極めて効率的になり好ましい。従って、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれを、上下に異なるロールクラウン形状を付与したロールにより構成し、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側で同じ側となるように配置する。
【0036】
すなわち、同じクラウン形状の中間ロールを多段圧延機に対して点対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して同方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置するのが好ましい。
または、もう一つの場合として、中間ロールの入側ロール対、出側ロール対のそれぞれを、上下に異なるロールクラウン形状を付与したロールであり、更に、上ロール対、下ロール対のそれぞれを出側、入側に同じロールクラウンを付与したロールで構成し、且つそのロールクラウンは、入側ロール対、出側ロール対のそれぞれにおいて上下に異なる側にあって、更に上ロール対、下ロール対のそれぞれにおいて入側、出側に互いに異なる側にあるように配置する、すなわち、同じロールクラウン形状の中間ロールを多段圧延機に対して入・出側対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して逆方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置することが好ましい。
【0037】
上述したように中間ロールの形状と中間ロールの配置を決定した後の形状制御方法について述べる。各中間ロールのシフト量が板形状に及ぼす影響は、中間ロールAのロールクラウン部を板内側に移動することによってクォータ部の板形状制御が、中間ロールBのロールクラウン部を板内側に移動することによって中・端伸びの板形状制御が可能である。従って、圧延機出側の板形状を見ながら各中間ロールの移動量を制御することにより良好な板形状を得ることができる。
【0038】
また、板形状がワークサイドとドライブサイドで非対称であっても、ロールクラウンが片側にしか付いていないのでロールクラウン部の付いていない側の板形状を乱すことなくロールクラウン部の付いている側の形状制御を中間ロールの移動によって容易に行うことができる。
【0039】
説明では、Aの中間ロール形状はBの中間ロール形状と比較してテーパ開始点はロール中央側にあり、テーパ量は小さいとしたが、AとBの中間ロール形状が入れ替わっていても(逆であっても)問題がないこと、および中間ロールA、Bのテーパ部の向きがワークサイド側と説明したがドライブサイド側であっても全く問題がないことはいうまでもない。
【0040】
【実施例】
使用した多段圧延機は図lに示したものと同じ圧延機であり、圧延条件を表lに示す。中間ロール形状は表2に示す。なお、表2中には従来技術と比較するため2段テーパの中間ロール形状も示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003553294
【0042】
【表2】
Figure 0003553294
本発明の中間ロール形状a×bはテーパ開始点がロール端からammロール軸中央側にあり、ロール端で半径当たりのクラウンがbμm付いていることを示す、また、従来の中間ロールa×b+c×dはl段目のテーパ開始点がロール端からammロール軸中央にあり、ロール端で半径当たりのクラウンがbμm付いており、2段目のテーパ開始点がロール端からcmmロール軸軸中央にあり、ロール端で半径当たりのクラウンがdμm付いており、ロール端では合計(b+d)μmの半径当たりクラウンが付いていることを示す。
【0043】
従来の圧延方法では、表lにおける圧延条件において出側板厚65μm、圧下率9.7%の場合cの中間ロールを4本用いることによって良好な板形状の製品Eを、表lにおける圧延条件において出側板厚60μm、圧下率16.7%の場合Dの中間ロールを4本用いることによって良好な板形状の製品Fをそれぞれ製造していた。この理由は、多段圧延機の形状制御端である中間ロールシフトや分割バックアップロールのロール偏心では形状制御能力に限界があるために中間ロールを交換せざるを得ないためである。
【0044】
ところで、箔圧延では1コイル当たりの製品長さが非常に長く、最終パスで製品板厚の異なる製品(E,F)を作り分ける必要がある。この際、例えばEの製品を作った後圧延機を停止し、コイルを切り放し出側巻き取り機にある製品コイルを取り出し、中間ロールを交換するためにワークロールを取り出し、中間ロールを交換し、コイルおよびワークロールを再びセットし、圧延を再開する必要があった。このため、ロール交換のために圧延機の稼働率は悪化し、生産性が低下していた。
【0045】
また、製品毎に中間ロールを保有する必要があるので保有すべき中間ロール数が増大し、製造コストを増大させる原因にもなっていた。さらに、鏡面に仕上げられたワークロールはロール交換時に微細な疵が入りやすくこのような状態で圧延を行った結果、製品品質(表面性状)を損なう場合が多々生じていた。
【0046】
本発明の実施例では、図3においてa)〜f)のように6パターンの中間ロール配置を行った。本発明の圧延方法では、表lにおける圧延条件において出側板厚65μm、圧下率9.7%の場合A、Bの中間ロールを4本用い、移動量0mmにセットすることによって良好な板形状の製品Eを、表lにおける圧延条件において出側板厚60μm、圧下率16.7%の場合A、Bの中間ロールを4本用い、Aの中間ロールを−30mm、Bの中間ロールl0mm移動することによって良好な板形状の製品Fをそれぞれ製造することができた。
【0047】
また、圧延方向を変えて同様の実験を行った結果、従来法と本発明のa)とd)の中間ロール配置では、板形状に及ぼす圧延方向の影響は全く無かったが、本発明のb),c),e),f)の中間ロール配置では、表lにおける圧延条件において出側板厚60μm、圧下率16.7%の高圧下条件時に板形状に及ぼす影響が若干生じ各中間ロールの移動量を圧延方向で少し修正する必要があったものの良好な板形状を得ることができた。
【0048】
これらの結果、圧延機の稼働率を上昇することや中間ロールの保有数を減少することや製品品質が損われる発生率を減少することができた。
【0049】
【発明の効果】
本発明の圧延方法を用いることにより、金属箔を生産する多段圧延機において圧延機の稼働率を上昇させ生産性を向上することや中間ロールの保有数を減少させ製造コストを低減することや製品品質が損われる発生率を減少することにより歩留を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに使用した多段圧延機を示す図である。
【図2】本発明の中間ロール形状についてその形状を示す図である。
【図3】本発明の中間ロールの配置について示す図である。
【図4】従来の中間ロール形状を示す図である。
【符号の説明】
l 金属箔コイル
2,2′ ワークロール
3a,3a′,3b,3b′ 中間ロール
4a,4a′,4b,4b′,4c,4c′ 分割バックアップロール
5 テーパ開始点
6 1段目テーパ
7 2段目テーパ
l1,l2 テーパ長
a1,a2 ロールクラウン量
A,B ワークサイド側ロール
A′,B′ ドライブサイド側ロール

Claims (3)

  1. 上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である前記中間ロールを各々独立に板幅方向に移動可能な構造とし、かつ該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれl対づつ合計2対付与すると共に、それぞれl対の該中間ロールのロールクラウンの付与された方向を変えて配置し、圧延機出側の板形状に応じて各中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法。
  2. 上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である中間ロールを各々独立に振幅方向に移動可能な構造とし、かつ、該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれ1対づつ合計2対付与すると共に、各1対の同じクラウン形状の中間ロールを多段圧延機の上下ワークロールの中心を結ぶ線に対して入・出側対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して逆方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置し、圧延機出側の板形状に応じて各該中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法。
  3. 上下一対のワークロールと該ワークロールを支持する上下の複数の中間ロールと該中間ロールを支持する上下の複数の分割バックアップロールから成る多段圧延機において、金属箔を圧延する際、形状制御端である中間ロールを各々独立に板幅方向に移動可能な構造とし、かつ、該中間ロールの片側に、徐々に先細りする2種類のロールクラウンを、それぞれ1対づつ合計2対付与すると共に、各1対の同じクラウン形状の中間ロールを多段圧延機の上下ワークロールの接触点に対して点対称の位置に、かつ、中間ロールのロールクラウンの付与された方向を多段圧延機の入・出側を比較して同方向、かつ、上下を比較して逆方向に配置し、圧延機出側の板形状に応じて各該中間ロールの移動量を制御することを特徴とする金属箔の圧延方法。
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