JP3553133B2 - レゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents

レゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は建材用として壁材、天井材、また家具等の材料として有用な耐熱性、断熱性、難燃性、耐水性を有し、機械的強度に優れたレゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂発泡体は、軽量で熱可塑性樹脂発泡体に比し、難燃性、耐熱性、機械的強度に優れ、建材分野、家具等の材料として広く用いられている。
【0003】
フェノール樹脂発泡体の製造方法としては、レゾール型フェノール樹脂を原料とし、発泡剤としてトリクロルモノフルオロメタン(フロン−11)、トリクロルトリフルオロエタン(フロン−113)、ペンタン等が主として用いられていた。
しかし、フロン−11やフロン113は発泡剤として極めて優れた性質を有し、人体に対し無害で、引火性、着火性もなく、工程的には安全な発泡剤ではあるが、このフロン類が地球を取り巻くオゾン層を破壊し、地球の環境破壊を促進することがわかり、使用量の減少、さらには使用禁止の必要性が叫ばれつつある。
【0004】
また、ペンタンはフロンと異なり地球の環境破壊の問題はないとしても、可燃性の炭化水素ガスであって、漏洩すれば爆発や火災の危険の極めて大きい物質であり、またその爆発範囲もペンタンが少量であってもその範囲に入ること、空気より比重が重いため低所に溜まり易く安全上問題のあるガスであることはよく知られているところである。
【0005】
これらの対応として、現在使用可能で低価格の塩化メチレン、上市され供給可能となった代替フロン、例えばフロン−141b等が使用されている。
しかし、これらの発泡剤をレゾール型フェノール樹脂に配合して発泡した場合、得られる発泡体の気泡セルが粗く、外観、物性の悪い発泡体しか得られない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、レゾール型フェノール樹脂発泡体を製造する際に、発泡剤として塩化メチレン、フロン−141bを使用し、気泡セルの細かい、外観、物性に優れたレゾール型フェノール樹脂発泡体を工業的に製造する方法の開発を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、種々検討した結果、レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、硬化剤を混合硬化してレゾール型フェノール樹脂発泡体を製造するに当たり、シリコーンオイルをレゾール型フェノール樹脂に対し特定量使用することを特徴とするレゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法を開発した。
【0008】
またこの際に、発泡時各材料を混合する時にこのシリコーンオイルと相溶性のない、溶解度パラメーターが9以上で、かつ沸点が80℃以上の溶剤、例えばエチレングリコール、グリセリンのごとき溶剤を特定量併用(2種以上の溶剤の共用も可)することにより、均一性のある気泡セルの細かい、外観、物性に優れたレゾール型フェノール樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、硬化剤を混合硬化してレゾール型フェノール樹脂発泡体を製造するに当たり、一般式(1)で
【化2】
Figure 0003553133
表されるシリコーンオイル及び溶解度パラメーターが9以上で、かつ沸点が80℃以上の溶剤をレゾール型フェノール樹脂100重量部に対し0.2〜5重量部及び0.2〜7重量部使用することを特徴とするレゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【0011】
さらに本発明は、溶剤が、アルコール類またはエーテル類であることを特徴とする、前記のレゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明で使用するレゾール型フェノール樹脂の原料であるフェノール類としては、通常フェノール樹脂の製造原料として用いられているフェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられるが、これらの中でも反応性、硬化性の面からフェノール、メタクレゾールが特に好ましい。これらフェノール類は単独のみならず、これら同士の混合、さらにO−クレゾール、P−クレゾールまたビスフェノール等と併用してもよい。
【0013】
一方の原料としてのアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が使用できる。この両者を塩基性触媒の存在下に反応させ、脱水濃縮させてレゾール型フェノール樹脂を得る。樹脂固形物としては60〜90%、粘度1,500〜8,000cps/25℃位が使用するのに便利である。
【0014】
発泡剤としては、従来公知のレゾールフォーム製造用発泡剤である沸点−20〜100℃の揮発性有機液体、例えば弗素化炭化水素、塩素化炭化水素、脂肪族炭化水素の1種または2種以上の混合物が使用できるが、地球環境破壊を促進する特定フロン、トリクロルモノフルオロメタン(フロン−11)、トリクロルトリフルオロエタン(フロン−113)、ジクロロテトラフルオロエタン(フロン−114)等、四塩化炭素、トリクロルエタン等、及び可燃性の炭化水素、例えばノルマルペンタン、イソプロピルエーテル等は実用上好ましくない。現実には、オゾン破壊係数の小さく可燃性でない、塩化メチレン、代替フロン(フロン−141b)等が有効である。
発泡剤の使用量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対し、3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の範囲とすることができる。
【0015】
またこれらのものとCO を発生する炭酸塩、N ガスを発生するニトロソ化合物、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体との併用も可能である。
【0016】
硬化剤としては、特に制限がなく、従来公知のレゾールフォーム製造用硬化剤を有効に使用できる。このような硬化剤としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等のごとき鉱酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸のごとき有機酸等を挙げることができ、それらの中で有機酸を水溶液の状態で使用するのが好ましい。
硬化剤の使用量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対し3〜35重量部、好ましくは5〜25重量部の範囲とする。
【0017】
整泡剤としては、シリコーン系エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ソルビタン、アルキルフェノール、ヒマシ油等のポリオキシアルキレン付加物等の界面活性剤が挙げられる。これらは混合して使用することも可能であり、その使用量はレゾール型フェノール樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部の範囲で使用することができる。
【0018】
本発明において用いられるシリコーンオイルは、下記の一般式(1)
【化3】
Figure 0003553133
で表わされる低分子シリコーンオイルであり、具体的にはヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等が挙げられる。
市販品としては信越化学工業(株)社製のKF−96シリーズ、東レ・ダウコーニング(株)社製のSH−200,500シリーズ等が挙げられる。
【0019】
シリコーンオイルの使用量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対し0.2〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。シリコーンオイルの使用方法は特に限定されないが、あらかじめレゾール型フェノール樹脂に整泡剤と共に混合して発泡させることが好ましい。シリコーンオイルの使用量が5重量部より多くなると、ボイドが発生し気泡セルも粗くなり、外観が悪くなる。また、シリコーンオイルの使用量が0.2重量部未満では、使用効果が見られず、発泡体の気泡セルが粗く、外観の向上した発泡体が得られない。
【0020】
本発明においては、レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤を混合硬化してレゾール型フェノール樹脂発泡体を製造する際に、シリコーンオイルのみ使用しても均一性のある気泡セルの細かい、外観、物性に優れたレゾール型フェノール樹脂発泡体を得ることができるが、シリコーンオイルと溶剤を併用すると、上記の特性がさらに向上したレゾール型フェノール樹脂発泡体を得ることができる。
【0021】
シリコーンオイルと併用される溶剤としては、溶解度パラメーターが9以上で、かつ沸点が80℃以上であり、シリコーンオイルと相溶性のない溶剤が挙げられる。
本発明でいう「シリコーンオイルと相溶性のない」とは、シリコーンオイル/溶剤を重量比で1/9〜9/1の範囲で混合した場合、常温で分離するものをシリコーンオイルと相溶性のない溶剤と定義する。
【0022】
溶剤の溶解度パラメーター(SP値)は、溶剤の極性を表わす尺度として一般的に用いられており、本発明ではHildebrandの計算式から導いた値を適用するものとした。
【0023】
本発明で用いられる溶剤は、溶解度パラメーターが9以上で、かつ沸点が80℃以上のものであり、溶解度パラメーターが9未満の溶剤を用いると、シリコーンオイルを溶解し、発泡混合時のクリーム状態の安定性が悪くなり、結果として得られた発泡体の気泡セルが不均一となり外観が悪くなる。
また、溶剤の沸点が80℃未満の場合は、溶剤が発泡時の温度で気化し、発泡コントロールができず、発泡不足、陥没等が発生し、好ましい発泡体が得られない。
【0024】
溶解度パラメーター(SP値)が9以上で、かつ沸点が80℃以上の溶剤としては、例えばエチレングリコール(SP値14.2、沸点197.2℃)、ジエチレングリコール(SP値9.1、沸点245℃)、グリセリン(SP値16.5、沸点290℃)等の多価アルコール類、セロソルブ(SP値9.9、沸点135℃)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、SP値9.6、沸点203℃)、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル、SP値10.8、沸点125℃)等のエーテル類等が挙げられる。
【0025】
溶剤の使用量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対し0.2〜7重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。溶剤の使用量が7重量部より多いと、発泡速度を低下させ発泡不足を発生させ、また発泡体の難燃性を低下させる。また、溶剤の使用量が0.2重量部より少ない場合は、均一セル、外観、物性等のさらなる向上が見られない。
【0026】
本発明のレゾール型フェノール樹脂発泡体は、レゾール型フェノール樹脂に整泡剤及びシリコーンオイルまたはシリコーンオイルと溶剤を混合し、次いで発泡剤及び硬化剤を混合した後、発泡硬化して製造される。混合は高速撹拌機(例えばホモディスパー等)を用いて30〜60秒間撹拌を行えば十分である。
【0027】
【作用】
レゾール型フェノール樹脂の発泡体の製造は、発泡剤として気化型(フロン系)発泡剤が使用されているが、近年の環境問題、危険物等の作用が限定されてきた。このため、塩化メチレン、代替フロン(例えばフロン−141b)等に使用が移行してきている。
塩化メチレン、代替フロン(フロン−141b)等は、フェノール樹脂との相溶性がフロン−113、ノルマルペンタンに比べ良好なため、発泡処方で混合時クリーム状態の安定化が悪く、結果として得られる発泡体の気泡セルが粗く、外観も不均一となる。
これらを解決し、均一な外観、物性向上が求められていたが、レゾール型フェノール樹脂と相溶性がなく、発泡剤と相溶性のよい低分子シリコーンオイルを使用することで発泡体の気泡セルが細かく、外観、物性のよい発泡体を得ることを見出した。
さらにシリコーンオイルと相溶性がなく、溶解度パラメーターが9以上で、かつ樹脂との相溶性のある沸点が80℃以上の溶剤、例えば多価アルコール類、エーテル類を併用することで、より効果のあることも見出した。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
実施例1(参考例)
四ツ口フラスコにフェノール2kg、37%ホルムアルデヒド2.93kg(ホルムアルデヒド/フェノール:モル比1.7モル)及び触媒として20%苛性ソーダ60gを仕込み、80℃で3時間反応した後、15%硫酸でpHを7.0に中和し、減圧脱水により樹脂中の水分を5%以下にした。
得られたレゾール型フェノール樹脂は、樹脂固形分80%、粘度2,500cps/25℃、比重1.25/25℃、重量平均分子量430であった。
【0030】
このレゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、整泡剤としてトウィーンNo.40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)2重量部を混合し、レゾール型発泡用フェノール樹脂とした。
得られた発泡用フェノール樹脂100重量部にシリコーンオイル(ヘキサメチルジシロキサン:分子量162、信越化学工業(株)社製、KF−96L 0.65)を1重量部混合した後、塩化メチレン5重量部、65%フェノールスルホン酸(PSA)16重量部をフェノール樹脂発泡機により急速に均一混合し、幅50cm、長さ25cm、高さ4cmの鉄枠中に一定量流し込み、これを50℃オーブン中で5分間放置し、発泡硬化を完了させてレゾール型フェノール樹脂発泡体を得た。
【0031】
得られたレゾール型フェノール樹脂発泡体の物性は、密度32kg/m 、圧縮強度1.2kg/cm (10%歪)、熱伝導率0.025kcal/m・hr・℃であり、気泡セルは微細で平均気泡セルサイズは80μで外観も全体に均一であった。
【0032】
実施例2〜8(参考例)及び比較例1〜6
実施例1と同条件で製造された整泡剤添加済レゾール型発泡用フェノール樹脂に、シリコーンオイルの添加量を変えた結果、及びシリコーンオイルの分子量を高くして使用した結果を表1に示す。
なお、用いたシリコーンオイルは、次の通りである。
ヘキサメチルジシロキサン:
分子量162、信越化学工業(株)社製、KF−96L 0.65
オクタメチルトリシロキサン:
分子量237、信越化学工業(株)社製、KF−96L 1.0
デカメチルテトラシロキサン:
分子量311、信越化学工業(株)社製、KF−96L 1.5
ドデカメチルペンタシロキサン:
分子量385、信越化学工業(株)社製、KF−96L 2.0
【0033】
【表1】
Figure 0003553133
【表2】
Figure 0003553133
【0034】
実施例9
実施例1と同条件で製造された整泡剤添加済レゾール型発泡用フェノール樹脂に、シリコーンオイルとしてヘキサメチルジシロキサン(実施例1と同製品)1重量部、溶剤としてエチレングリコール(SP値14.2、沸点197.2℃)2重量部を混合した後、塩化メチレン5重量部、65%フェノールスルホン酸(65%PSA)18重量部をフェノール樹脂発泡機により急速に均一混合して実施例1と同様に発泡、硬化してレゾール型フェノール樹脂発泡体を得た。
【0035】
得られたレゾール型フェノール樹脂発泡体の物性は、密度30kg/m 、圧縮強度1.3kg/cm (10%歪)、熱伝導率0.025kcal/m・hr・℃であり、平均気泡セルサイズは60μと微細で全体に均一で非常に外観のよい発泡体が得られた。
【0036】
実施例10〜15及び比較例7〜11
実施例9と同様に整泡剤添加済レゾール型発泡用フェノール樹脂に、ヘキサメチルジシロキサン(実施例1と同製品)1重量部を添加し、溶剤の添加量と溶剤の種類を変えて発泡した結果を表2に示す。
【0037】
【表3】
Figure 0003553133
【表4】
Figure 0003553133
1)エチレングリコール(SP値14.2、沸点197.2℃)
2)ジエチレングリコール(SP値9.1、沸点245℃)
3)グリセリン(SP値16.5、沸点290℃)
4)セロソルブ(SP値9.9、沸点135℃)
5)メタノールはシリコーンオイルに溶けず、樹脂には溶け、SP値=14.5であるが沸点=64.1℃
6)トルエンはシリコーンオイルに溶け、樹脂には溶けず、SP値=8.9、沸点=110℃
【0038】
【発明の効果】
従来発泡剤として使用されていた特定フロンは、オゾン層を破壊し、地球の環境汚染をするとされ使用量が制限、または禁止が叫ばれており、またイソプロピルエーテル、ペンタン類の炭化水素系発泡剤は危険物として問題がある。
これらの対応として、塩化メチレン、代替フロン、例えばフロン−141bが使用検討されているが、代替フロンを用いて得られた発泡体の気泡セルは大きく、外観、物性が著しく劣る。
これに対し、本発明のように、低分子シリコーンオイルを使用すること、さらに特定の溶剤を併用することで塩化メチレン、代替フロン等でも実用に供し得る外観、物性に優れた発泡体が得られる。

Claims (1)

  1. レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、硬化剤を混合硬化して発泡体を製造するにあたり、一般式(1)で
    Figure 0003553133
    表されるシリコーンオイル及び溶解度パラメーターが9以上で、かつ沸点が80℃以上の溶剤をレゾール型フェノール樹脂100重量部に対し0.2〜5重量部及び0.2〜7重量部使用することを特徴とするレゾール型フェノール樹脂発泡体の製造方法。
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