JP3552166B2 - 足踏み空気圧ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は足踏み空気圧ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
災害時には電力等は一時的に使えなくなる場合がほとんどである。また動力付きの救助機器をすべての地域に準備しておくことは著しく難しい。そのため、災害時には人力による災害救助活動に頼らなければならない場合が多く、バールやハンマー等の各家庭で保有する道具を利用して救助活動をせざるを得ない場合がほとんどである。
【0003】
一方、圧縮空気による空圧ジャッキや空圧モータ等の電力を用いずに災害現場で利用できる各種空圧機器が知られている。このような空圧機器は、空気圧ポンプにより直接圧縮空気を送り、又は空気圧ポンプから一旦アキュムレータに貯蔵された圧縮空気を送って駆動される。
【0004】
この空気圧ポンプは空圧ピストンからなり、シリンダ内を摺動するピストンを備え、シリンダ内に吸引口及び吐出口を連通させ、吸引口及び吐出口の連通部に逆止弁を設け、ピストンの往復運動によりシリンダ内に空気を吸引しこれを圧縮して吐出する。
【0005】
前述の空圧機器を駆動できる簡易な空気圧ポンプとして、手押し式ポンプ及び足踏み式ポンプが知られている。手押し式ポンプは手でピストンを往復運動させるものである。足踏み式ポンプは足でペダルを踏込んでピストンを往復運動させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の手押し式空気圧ポンプでは疲れやすく、また足踏み式ポンプでは足が踏込みペダルから外れやすく、不安定で使用性が悪かった。
【0007】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、長時間使用しても疲れにくく且つ安定してピストンの往復駆動操作ができ、災害時等に空圧駆動型の各種救助機器を駆動可能な簡易空気圧ポンプの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、踵を乗せて足踏み操作するペダルフレームと、このペダルフレームを回動可能に支持する接地フレームと、前記ペダルフレームに踵を乗せた状態で足の甲の上側に位置して前記接地フレームに支持された空圧ピストンと、前記ペダルフレームの足踏み運動を前記空圧ピストンの往復運動に変換する駆動力伝達機構とを備えたことを特徴とする足踏み空気圧ポンプを提供する。
【0009】
この構成によれば、使用者の踵の足裏部をペダルフレームに乗せて例えばベルトを用いて固定し、このペダルフレームを接地フレームに枢着して踵で往復足踏み操作し、この足踏み運動を駆動力伝達機構を介して空圧ピストンのピストンを往復運動させる。これにより、長時間使用しても疲れず、安定して使用性が向上し、災害時等に簡易に各種空圧機器に接続してこれを駆動可能な足踏み空気圧ポンプが得られる。
【0010】
好ましい構成例では、前記駆動力伝達機構は、ピストンのストローク全体にわたってほぼ一定の足踏み力で駆動されることを特徴としている。
【0011】
空圧ピストンのピストン駆動推力は、一般にピストンを圧縮するにしたがってその駆動推力を増大させることが必要になるが、この本発明の構成によれば、例えばリンク機構を用いて、ピストン内圧が小さいペダルフレームの踏込み始め付近ではピストン移動量を大きくし、ピストン内圧が上昇する踏込み終り付近ではピストン移動量が小さくなるように、踏込み量に応じてピストン移動量が変わるように駆動力を伝達することにより、ピストンストローク全体にわたってほぼ一定の足踏み力でピストンを駆動することができる。
【0012】
さらに好ましい構成例においては、前記空圧ピストンは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダ内のピストン上面側に形成されたポンプ室と、該ポンプ室にそれぞれ逆止弁を介して連通する吸引通路及び吐出通路とからなり、前記吐出通路の吐出口側の圧力に応じて前記ポンプ室から吐出通路に吐出される空気圧を自動的に変える吐出圧可変機構を備えたことを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、空圧ピストンの吐出側に接続された空圧機器あるいはアキュムレータの圧力が上昇してピストン吐出口外部圧力が高くなったときに、例えば外部圧力に対応して移動する部材(スライダ)を設け、この部材の移動により外部圧力とポンプ吐出圧力とがバランスするように逆止弁のバネ強さを自動的に変える。これにより、吐出口外部圧力にかかわらず空圧ピストンからの空気はほぼ一定の圧力で吐出される。
【0014】
すなわち、空圧ピストンのシリンダ内の吐出側の逆止弁(開放弁)は、バネによりシリンダを気密にしているが、本発明では、吐出側圧力が上昇すると圧力上昇に応じてこのバネが伸びる構造になっており、気密のためのバネ力が低下する。シリンダ内の空気が出力配管側に吐出されるのは、シリンダ内の圧力が、バネ力+吐出側外部圧力に達したときであり、本発明では、吐出側外部圧力の上昇にしたがってバネ力が低下するため、吐出側外部圧力にかかわらず、シリンダ内の空気はほぼ一定の圧力で出力配管側に吐出される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る足踏み空気圧ポンプを示し、(A)は全体外観斜視図、(B)は一部破断斜視図である。また、図2(A)(B)(C)は、それぞれ図1の空気圧ポンプの平面図、側面図及び正面図であり、(D)は使用状態の説明図である。
【0016】
この足踏み空気圧ポンプ1は、ペダルフレーム2と、ペダル軸3を介してこのペダルフレーム2を回動可能に支持する接地フレーム4と、同じくペダル軸3に枢着されたピストンガイド5とを備える。ペダルフレーム2は、踵を乗せる足踏み部6と踵の後側を保持する踵固定部7とを左右両側の揺動フレーム8に固定連結した構造である。揺動フレーム8はペダル軸3に枢着される。各揺動フレーム8のペダル軸3より前側部分は斜め前方に屈曲して一体部材の前アーム8aが形成される。
【0017】
接地フレーム4は、左右の固定フレーム9と、これらを連結する連結シャフト10とからなる。各固定フレーム9はペダル軸3の部分で上側に屈曲して前アーム9aが一体形成される。
【0018】
ペダルフレーム2の前アーム8aと接地フレーム4の前アーム9aには、それぞれリンク軸11,12を介してリンク13,14の一端部が枢着される。各リンク13,14の他端部は、ピストンピン15を介して相互に回動可能に連結される。
【0019】
ピストンピン15は、ピストンガイド5に形成されたガイド孔16内に挿入され、このガイド孔16に沿ってスライドする。ピストンピン15は、ピストンビーム17の左右両端に固定されている。ピストンビーム17の中央部に固定ナット18を介してピストンロッド19が固定される。
【0020】
ピストンガイド5の上端部にシリンダホルダ21に固定保持された空圧ピストン20が備わる。この空圧ピストン20は、外側のシリンダ22と、その内部を摺動するピストン23からなり、シリンダ22内のピストンヘッド23aの上側にポンプ室24が形成される。ピストン23の下側にピストンロッド19が固定される。
【0021】
この空圧ピストン20は、ペダルフレーム2に踵を乗せた状態で足の甲の上方に位置するように取付けられる(図2(D)参照)。使用者の足は踵固定部7のベルト通し7aに取付けたベルト7bによりペダルフレーム2に固定される。これにより空圧ピストン20が歩行の邪魔にならないように足に取付けられる。踵によるペダルフレーム2の足踏み動作により左右の前アーム8a,9a及びリンク13,14を介してピストンピン15がガイド孔16内で往復動作し、ピストンロッド19及びピストン23を往復駆動する。このペダルフレーム2と接地フレーム4の前アーム8a,9a、リンク13,14、リンク軸11,12及びピストンガイド5等により、請求項でいう駆動力伝達機構25が構成される。ピストンビーム17の両端部にスプリング26が備わり、このスプリング26によりペダルフレーム2は接地フレーム4から離れて持ち上がる方向に付勢される。
【0022】
この足踏み空気圧ポンプ1は、地面や床上に置いて片足のみでポンプ駆動してもよいし、両足に装着して歩行することも可能である。
【0023】
図3はピストン23を示し、(A)は断面構成図、(B)は外観図である。
ピストンヘッド23aを上下に貫通して吸引通路27が形成される。吸引通路27の下端の吸引口28はピストンヘッド23aの下面に開口し、上端のポート29はピストンヘッド23aの上面に開口する。吸引通路27の途中に、弁体30及びバネ31からなる逆止弁32が装着される。逆止弁30は、ピストン下降時に開いて空気をポンプ室内に吸引し、ピストン上昇時に閉じて吐出側の通路を開かせる。
【0024】
ピストンヘッド23aの中央部にポート33が開口する。このポート33はピストンヘッド23a内に形成された吐出通路34を介してピストンヘッド23aの下面に開口する吐出口35に連通する。穿孔工作時に形成された吐出通路34の孔のピストンヘッド上面側及び側面側の開放端部は栓36で塞がれる。
【0025】
中央部のポート33に、弁体37及びバネ38からなる逆止弁39が装着される。この逆止弁39は、後述のように、一定圧力で開放する定圧開放弁を構成する。バネ38の下側に、ピストンロッド19の軸方向に摺動可能なスライダ40が装着される。スライダ40はバネ38を調整された所定の位置で受け、直列に配置されるバネ41と38のバネ力により弁体37を押圧してポート33を塞ぐ。したがって、ピストンヘッド32aの上側のポンプ室24(図1(B)参照)内の圧力が、このバネ38による弁体37への押圧力より大きくなると、弁体37が開いてポンプ室24から吐出通路34に圧縮空気が吐出される。
【0026】
スライダ40の下面側にバネ41を介してアジャスタ42が備わる。アジャスタ42は、ピストンロッド19の軸方向に貫通する孔19a内に装着される。このアジャスタ42の外面には、ピストンロッド19の孔19aの内面に形成されたメネジ(不図示)に螺合するオネジ(不図示)が形成される。アジャスタ42をネジ回転させて螺入位置を変えることにより、バネ41によるスライダ40の押圧力を調整して変えることができる。
【0027】
吐出口35に、エアホース等の吐出配管(不図示)が接続され、この吐出配管を介して不図示の空圧ジャッキ等の空圧機器又はアキュムレータに圧縮空気を送り込む。
【0028】
圧縮空気を送り込むにしたがって、空圧ジャッキやアキュムレータ内の圧力が上昇すると、これに伴い吐出口35の外部圧力が高くなり吐出通路34内の圧力が上昇する。これにより、スライダ40がその下面側のバネ41に抗して押し下げられる。したがって、弁体37のバネ38が伸びてそのバネ力が低下する。すなわち、外部圧力が上昇するとその上昇圧力に対応する分だけ逆にバネ38が弱まり、弁体37に作用する外部圧力による力とバネ38のバネ力の合力は一定に維持される。このため、圧縮空気の吐出圧となる弁体37の塞ぎ圧力は常に一定に維持され、外部圧力が上昇しても常に一定の吐出圧力(開放圧力)で逆止弁39が開き、吐出口35から圧縮空気を送り出すことができる。この定圧開放弁となる逆止弁39の原理については、後述の図5でさらに説明する。
【0029】
図4は、本発明に係る空気圧ポンプのピストンの推力変化を示す駆動力伝達機構25の作用説明図である。(A)及び(B)は、それぞれペダルフレーム2の踏込み開始状態及び踏込み終了状態を示す。図中、黒矢印は力を表わし、白矢印は速度を表わす。
【0030】
(A)の踏み始めの状態では、ピストン23の力は小さく、速度は大きい。すなわち、ポンプ室24内が圧縮されていないため圧力が小さく、したがってピストン23に作用する力が小さいため、小さい押上げ力で速い速度でピストン23が駆動される。
【0031】
ペダルフレーム2を踏込むにしたがって、ポンプ室24が圧縮され、圧力が上昇してピストン23に作用する力が徐々に大きくなる。(B)の踏み終わりの状態では、最大の押上げ力で速度が最小になる。このとき、踵によるペダルフレーム2の踏込み力及び踏込み速度は、(A)(B)に図示したように、踏み始め及び踏み終りともに同じであり、ストロークの途中段階も一定に維持される。これは、リンク13,14及び前アーム8a,9a等のリンク構造からなる駆動力伝達機構25の作用に基づき、リンク構造が開いた(A)の状態では弱い力で速度が速く、リンク構造が閉じた(B)の状態では強い力で速度が遅くなる原理から得られるものである。
【0032】
図5は、前述の弁体37の定圧開放機構の原理説明図である。図中、前述の図3に対応した符号を付してある。19bはアジャスタ42が螺合するピストンロッド19の内ネジである。24はシリンダ内のポンプ室であり、43は吐出通路34に連通するアキュムレータを示す。
【0033】
以下の数1の(1)式は定圧開放弁の力の釣り合いの式であり、(2)及び(3)式を満たす設定値を用いることで任意の開放圧力を設定できる。
【0034】
ここで、PACはアキュムレータ43内の圧力、Pは開放圧力(吐出圧力)、Aはスライダ40に圧力が作用する面積、aはポート33の通路面積、dはアジャスタ42の調整ネジ送り量、Kaはバネ38のバネ定数、Kbはバネ41のバネ定数である。
【0035】
【数1】
【0036】
この場合、開放圧力Pと調整ネジ送り量dとの関係は以下の数2の(4)式で表わされる。
【0037】
【数2】
【0038】
このような理論式に基づきアキュムレータ等の外部圧力の変化にかかわらず常に一定の吐出圧力で空圧ピストンから圧縮空気を送り出すことができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、使用者の踵の足裏部をペダルフレームに乗せて例えばベルトを用いて固定し、このペダルフレームを接地フレームに枢着して接地フレームに対し踵で往復足踏み操作し、この足踏み運動を駆動力伝達機構を介して空圧ピストンのピストンを往復運動させる。これにより、長時間使用しても疲れず、安定して使用性がよく、災害時等に簡易に各種空圧機器を駆動可能な足踏み空気圧ポンプが得られる。
【0040】
また、例えばリンク機構を用いて、シリンダ内圧が小さいペダルフレームの踏込み始め付近ではピストン移動量を大きくし、シリンダ内圧が上昇する踏込み終り付近ではピストン移動量が小さくなるように、踏込み量に応じてピストン移動量が変わるように駆動力を伝達することにより、ピストンストローク全体にわたってほぼ一定の足踏み力でピストンを駆動することができ、長時間にわたって疲労することなく安定して空気を送り出すことができる。
【0041】
さらに、空圧ピストンの吐出側に接続された空圧機器あるいはアキュムレータの圧力が上昇してピストン吐出口外部圧力が高くなったときに、例えば外部圧力に対応して移動する部材(スライダ)を設け、この部材の移動により外部圧力とポンプ吐出圧力とがバランスするように逆止弁のバネ強さを自動的に変えることにより、吐出口外部圧力の上昇にかかわらず空圧ピストンからの圧縮空気の吐出圧力をほぼ一定に維持することができ、足踏み操作が楽になり操作性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る足踏み空気圧ポンプの斜視図。
【図2】図1の空気圧ポンプの構成及び使用説明図。
【図3】図1の空気圧ポンプのピストン部分の構成説明図。
【図4】図1の空気圧ポンプのピストン推力変化の説明図。
【図5】図1の空気圧ポンプの定圧開放弁の原理説明図。
【符号の説明】
1:足踏み空気圧ポンプ、2:ペダルフレーム、3:ペダル軸、
4:接地フレーム、5:ピストンガイド、6:足踏み部、7:踵固定部、
7a:ベルト通し、8:揺動フレーム、8a:前アーム、9:固定フレーム、
9a:前アーム、10:連結シャフト、11:リンク軸、12:リンク軸、
13:リンク、14:リンク、15:ピストンピン、16:ガイド孔、
17:;ピストンビーム、18:固定ナット、19:ピストンロッド、
19a:孔、19b:内ネジ、20:空圧ピストン、21:シリンダホルダ、
22:シリンダ、23:ピストン、23a:ピストンヘッド、24:ポンプ室、
25:駆動力伝達機構、26:スプリング、27:吸引通路、28:吸引口、
29:ポート、30:弁体、31:バネ、32:逆止弁、33:ポート、
34:吐出通路、35:吐出口、36:栓、37:弁体、38:バネ、
39:逆止弁(定圧開放弁)、40:スライダ、41:バネ、
42:アジャスタ、43:アキュムレータ。
Claims (3)
- 踵を乗せて足踏み操作するペダルフレームと、
このペダルフレームを回動可能に支持する接地フレームと、
前記ペダルフレームに踵を乗せた状態で足の甲の上側に位置して前記接地フレームに支持された空圧ピストンと、
前記ペダルフレームの足踏み運動を前記空圧ピストンの往復運動に変換する駆動力伝達機構とを備えたことを特徴とする足踏み空気圧ポンプ。 - 前記駆動力伝達機構は、ピストンのストローク全体にわたってほぼ一定の足踏み力で駆動されることを特徴とする請求項1に記載の足踏み空気圧ポンプ。
- 前記空圧ピストンは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダ内のピストン上面側に形成されたポンプ室と、該ポンプ室にそれぞれ逆止弁を介して連通する吸引通路及び吐出通路とからなり、
前記吐出通路の吐出口側の圧力に応じて前記ポンプ室から吐出通路に吐出される空気圧を自動的に変える吐出圧可変機構を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の足踏み空気圧ポンプ。
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