JP3551989B2 - 液体封入式マウント - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば自動車のエンジン等の防振支持手段として用いられ、振動減衰に絞り流路内での液体の流動抵抗を利用した液体封入式マウントであって、特に過大な変位を規制するためのストッパを有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを車体フレームに弾性的に支持する液体封入式マウントの典型的な従来例が、例えば特開平4−69427号公報に開示されている。すなわちこのマウントは、図4にも示すように、大変位の入力に対しては、エンジン側と車体側の間で弾性体101が大きな変形を受けることにより、この弾性体101側の液室103と、ダイアフラム102側の液室104との間を、隔壁105に形成されたオリフィス流路106を介して封入液Lが相対的に高圧となる側から相対的に低圧となる側へ向けて往復移動するようになっており、前記弾性体101自体の有する粘弾性による減衰力のほか、オリフィス流路106を通過する封入液の流動抵抗によって、緩衝性を高めると共に振動を短時間で制止させる大きな減衰力を得るものである。
【0003】
一方、機関振動等による周波数の高い小振幅の振動入力に対しては、前記隔壁105に設けたサブダイアフラム107がその厚さ方向に小刻みに反復動作することによって封入液の圧力変動を吸収し、封入液はほとんどオリフィス流路106を通過せず、これによって動ばね定数が低くなり、振動絶縁性が高められる。また、この液体封入式マウントは、弾性体101の過大な変形及びエンジンの過大な変位を規制するため、弾性体101の中央のピストンロッド108に固定され液室103内に配置されたピストンヘッド109を、内筒110から液室103内に突設された肩部111に対して軸方向に対向させて構成されたストッパ機構を備え、ピストンヘッド109と肩部111の干渉によって、過大な変位を規制するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来例に設けられたストッパ機構は、ピストンヘッド109が内筒110の肩部111と反対方向(図中下側)へ変位するのを規制するものではないため、この方向への変位量が過大になると、弾性体101が大きく変形されてしまうと共に、ピストンヘッド109(ボルト109a)が隔壁105のサブダイアフラム107に干渉してしまう。また、例えばピストンヘッド109が肩部111と圧接干渉し、かつ中・高周波数の小振幅振動が入力された場合は、液室103が弾性体101側とサブダイアフラム107側との間でピストンヘッド109と肩部111によって分離・遮断されるため、振動入力に伴うピストンヘッド109の両側での封入液の圧力変動が大きくなる。ここで、当該マウントを介して伝達される力は、弾性体を介して伝達される力と、封入液の圧力によって伝達される力との和であるから、マウントの動ばね定数が上昇し、振動絶縁性能が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情のもとになされたもので、その技術的課題とするところは、大変位入力に対する耐久性を向上させ、しかもストッパ機構により変位が規制された状態において中・高周波数の小振幅振動が入力された場合の振動絶縁性を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。
すなわち本発明に係る液体封入式マウントは、弾性体と隔壁との間でケースの内周に固定された環状のストッパと、第一液室内に相対変位自在に配置されると共に中央部が前記センターボスに固定され外周部が前記ストッパ又は隔壁に弾性的に接触可能なピストンとを備え、前記ピストンの外周部と前記ストッパ又は前記隔壁との接触により第一液室が分離・遮断されて形成される空間間での圧力差を解消するためにその接触面間に前記ピストンの軸方向両側の空間を互いに連通する流路が形成されるものである。
【0007】
【作用】
上記構成において、弾性体の変形を伴いながらセンターボスとケースが相対変位されると、前記センターボスに固定されたピストンが第一液室内で相対的にストッパ側もしくは隔壁側へ変位される。そして、所定の変位量に達すると、前記ピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部が弾性的に接触することによって、それ以上の変位を規制する。このとき、ピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部との接触面間には前記ピストンの軸方向両側の空間を互いに連通する流路が形成され、しかもピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部は弾性的に接触しているので、この接触状態において中・高周波数の小振幅の振動変位が入力されても、ピストンの軸方向両側空間での圧力差の発生が抑えられてマウントの動ばね定数の上昇が抑えられ、振動絶縁性能が確保される。
【0008】
【実施例】
図1は、本発明に係る液体封入式マウントの第一の実施例を示すもので、参照符号1は環状の外筒11及びその下側のカップ部材12がカシメにより互いに連結されたケースであり、カップ部材12が取付ボルト13を介して例えば車体フレーム側に連結される。2はケース1の外筒11の内周かつ上方に配置されたセンターボスであり、上面の螺子孔2aに螺合される図示されていないボルトを介して例えばエンジン側に連結される。センターボス2と、ケース1の外筒11との間には、エラストマでテーパ筒状に成形された弾性体3が加硫接着されている。ケース1の内周には、エラストマからなるダイアフラム4と、その上側の隔壁5と、更にその上側のストッパ6が配置されている。カップ部材12には、その内周空間を外部に開放してダイアフラム4の作動が阻害されないようにするための通気孔12aが開設されている。
【0009】
隔壁5は、弾性体3とダイアフラム4との間の空間を、弾性体3側の第一液室Aとダイアフラム4側の第二液室Bとに仕切るように設けられており、外周縁がケース1の外筒11とカップ部材12とのカシメ部に固定された皿状のオリフィスケース51と、このオリフィスケース51の内周に密嵌固定された円盤状のオリフィス部材52とを備える。オリフィスケース51の底部と、これに衝合されたオリフィス部材52の下面との間には、円周方向に略C字形に延びるオリフィス流路53と、その内周側のサブダイアフラム室54が形成されており、このサブダイアフラム室54内には、サブダイアフラム55がその厚さ方向へ僅かな距離だけ移動可能な状態で収容されている。オリフィス部材52は、オリフィス流路53が形成された外周部52aが、サブダイアフラム室54が形成された内周部よりも高い環状の段差形状を有する。
【0010】
オリフィス流路53は、その円周方向両端がオリフィス部材52に開設されたオリフィス孔52b及びオリフィスケース51に開設されたオリフィス孔51aを介して第一液室A及び第二液室Bに開放されている。また、サブダイアフラム室54は、オリフィス部材52に開設された多数の小孔52c及びオリフィスケース51に開設された多数の小孔51bを介して第一液室A及び第二液室Bに開放されており、前記サブダイアフラム55は、これら小孔51b,52cの開設範囲全体に展開している。
【0011】
ストッパ6は、外周縁61がケース1の外筒11とカップ部材12とのカシメ部に固定され、その内周に弾性体3側へ偏在した肩部62が形成されている。この肩部62は、オリフィス流路53が形成されたオリフィス部材52の外周部52aの位置とほぼ対応して形成されている。
【0012】
第一液室A内には図2の斜視図にも示すような形状のピストン7が移動自在に配置されている。このピストン7はストッパ6の内径よりも小径の有底筒状を呈する中央筒部71が、第一液室A内に突出したセンターボス2の下端面にボルト74を介して固定されると共に、少なくとも外周部72が常にストッパ6の内径肩部62と隔壁5のオリフィス部材52の外周部52aとの間に位置している。ピストン7の外周部72の外径は、オリフィス部材52の外周部52aの内径及びストッパ6の肩部62の内径よりも大径となっている。前記外周部72には、エラストマからなる環状の緩衝体73が被着されており、ケース1とセンターボス2の軸方向相対変位が所定の変位量に達することによって、前記緩衝体73が前記肩部62の下面もしくは前記オリフィス部材52の外周部52aの上面に当接されるようになっている。また、ピストン7をセンターボス2に固定しているボルト74の頭部は、ピストン7の中央筒部71内にあって緩衝体73の下面より上方にあり、緩衝体73の上面及び下面には、放射状の複数の溝73a,73bが形成されている。
【0013】
この実施例による液体封入式マウントは、車体フレームとエンジン側との間での振動入力によってケース1とセンターボス2が軸方向(図1における上下方向)に反復して相対変位され、弾性体3が反復変形を受ける。そして、その入力振動が機関振動等による振幅の小さい中・高周波振動である場合は、サブダイアフラム室54内のサブダイアフラム55が、弾性体3の反復変形に伴う第一液室Aと第二液室Bの圧力差の変化を受けて、軸方向(サブダイアフラム55の厚さ方向)に小刻みに反復移動して封入液の圧力変化が吸収され、オリフィス流路53内では殆ど封入液が流れないので、動ばね定数が低くなって優れた振動絶縁性能を発揮する。また、前記入力振動が車体のバウンド等のショックによる大振幅の変位である場合は、弾性体3が大きく変形され、これに伴う第一液室Aの圧力変化によってサブダイアフラム55がサブダイアフラム室54内をその下端又は上端まで移動してオリフィスケース51側の小孔51b又はオリフィス部材52側の小孔52cを閉塞すると、その時点から、封入液がオリフィス流路53を通じて第一液室Aと第二液室Bとの間を相対的に高圧となる側から相対的に低圧となる側へ向けて流動されるので、この時の流動抵抗によって衝撃入力に対する良好な緩衝性を得ると共に、振動を短時間で制止する。
【0014】
ここで、ケース1に対してセンターボス2が図1における下方へ向けて大きく相対変位された場合は、このセンターボス2と共に変位されるピストン7の外周部72に被着された緩衝体73の下面が、隔壁5におけるオリフィス部材52の外周部52aの上面に当接し、この時点で前記相対変位が阻止される。すなわち隔壁5(オリフィス部材52)は、センターボス2の下方変位に対するストッパとしての機能を有するものである。また、センターボス2が図1における上方へ向けて大きく相対変位された場合は、ピストン7の外周部72に被着された緩衝体73の上面が、ストッパ6の肩部62の下面に当接し、この時点で前記相対変位が阻止される。このため、大変位入力による弾性体3の過大な変形及びこれによる耐久性の低下が有効に防止される。
【0015】
ピストン7をセンターボス2に固定しているボルト74の頭部は、ピストン7の中央筒部71内にあって緩衝体73の下面より上方にあり、しかもオリフィス部材52は、ピストン7と当接される外周部52aの上面が、サブダイアフラム室54が形成された内周部よりも高くなっているから、ピストン7が第一液室A内を相対的に下方へ変位した時にボルト74の頭部がオリフィス部材52の中央部上面と衝突するようなことはない。
【0016】
緩衝体73がオリフィス部材52の外周部52aの上面又はストッパ6の肩部62の下面に当接した状態においては、その接触面間には放射状の溝73a,73bによる流路が形成されるので、第一液室Aにおける前記ピストン7の軸方向両側の空間A1 ,A2 は互いに連通された状態を維持する。したがって、この接触状態において、機関振動等による小振幅の中・高周波振動が継続的に入力されている場合、振動による前記空間A1 ,A2 間の圧力差が解消され、しかもピストン7は、緩衝体73によって緩衝体73がオリフィス部材52の外周部52aの上面又はストッパ6の肩部62の下面に弾性的に接触するため、動ばね定数の上昇が抑えられ、振動絶縁性能が確保される。
【0017】
図3は、本発明に係る液体封入式マウントの第二の実施例を示すもので、ストッパ6が、ケース1の外筒11の軸方向一部を内周側へ屈曲させることによってこの外筒11に一体に形成されている。その他の部分の構成は、上述の第一の実施例と同様である。
【0018】
また、本発明は、図示の実施例に限定されるものではなく、例えばピストン7に緩衝体73を設ける代わりに、このような緩衝体をオリフィス部材52の外周部52aの上面及びストッパ6の下面に設けても良く、ピストン7とオリフィス部材52又はストッパ6との当接状態において、ピストン7の軸方向両側の空間A1 ,A2 を互いに連通する流路を確保するための溝は、とオリフィス部材52側及びストッパ6側に設けても良い。
【0019】
【発明の効果】
本発明の液体封入式マウントによると、次のような効果が実現される。
(1) 大変位の入力時に、ピストンがその軸方向両側に配置されたストッパ及び隔壁のいずれかに接触するようにしたため、双方向の過大変位を規制し、弾性体の耐久性を向上させることができる。
(2) ピストンはストッパ又は隔壁に対して弾性的に接触し、しかもこの状態において中・高周波数の小振幅の振動が入力されても、封入液の液圧による動ばね定数の上昇が抑えられ、優れた振動絶縁性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体封入式マウントの第一の実施例を示す断面図である。
【図2】上記第一の実施例におけるピストンを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る液体封入式マウントの第二の実施例を示す断面図である。
【図4】従来例に係る液体封入式マウントを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケース
11 外筒
12 カップ部材
12a 通気孔
13 取付ボルト
2 センターボス
2a 螺子孔
3 弾性体
4 ダイアフラム
5 隔壁
51 オリフィスケース
51a,52b オリフィス孔
51b,52c 小孔
52 オリフィス部材
52a 外周部
53 オリフィス流路
54 サブダイアフラム室
55 サブダイアフラム
6 ストッパ
61 外周縁
62 肩部
7 ピストン
71 中央筒部
72 外周部
73 緩衝体
73a,73b 溝
A 第一液室
A1 ,A2 空間
B 第二液室
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば自動車のエンジン等の防振支持手段として用いられ、振動減衰に絞り流路内での液体の流動抵抗を利用した液体封入式マウントであって、特に過大な変位を規制するためのストッパを有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを車体フレームに弾性的に支持する液体封入式マウントの典型的な従来例が、例えば特開平4−69427号公報に開示されている。すなわちこのマウントは、図4にも示すように、大変位の入力に対しては、エンジン側と車体側の間で弾性体101が大きな変形を受けることにより、この弾性体101側の液室103と、ダイアフラム102側の液室104との間を、隔壁105に形成されたオリフィス流路106を介して封入液Lが相対的に高圧となる側から相対的に低圧となる側へ向けて往復移動するようになっており、前記弾性体101自体の有する粘弾性による減衰力のほか、オリフィス流路106を通過する封入液の流動抵抗によって、緩衝性を高めると共に振動を短時間で制止させる大きな減衰力を得るものである。
【0003】
一方、機関振動等による周波数の高い小振幅の振動入力に対しては、前記隔壁105に設けたサブダイアフラム107がその厚さ方向に小刻みに反復動作することによって封入液の圧力変動を吸収し、封入液はほとんどオリフィス流路106を通過せず、これによって動ばね定数が低くなり、振動絶縁性が高められる。また、この液体封入式マウントは、弾性体101の過大な変形及びエンジンの過大な変位を規制するため、弾性体101の中央のピストンロッド108に固定され液室103内に配置されたピストンヘッド109を、内筒110から液室103内に突設された肩部111に対して軸方向に対向させて構成されたストッパ機構を備え、ピストンヘッド109と肩部111の干渉によって、過大な変位を規制するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来例に設けられたストッパ機構は、ピストンヘッド109が内筒110の肩部111と反対方向(図中下側)へ変位するのを規制するものではないため、この方向への変位量が過大になると、弾性体101が大きく変形されてしまうと共に、ピストンヘッド109(ボルト109a)が隔壁105のサブダイアフラム107に干渉してしまう。また、例えばピストンヘッド109が肩部111と圧接干渉し、かつ中・高周波数の小振幅振動が入力された場合は、液室103が弾性体101側とサブダイアフラム107側との間でピストンヘッド109と肩部111によって分離・遮断されるため、振動入力に伴うピストンヘッド109の両側での封入液の圧力変動が大きくなる。ここで、当該マウントを介して伝達される力は、弾性体を介して伝達される力と、封入液の圧力によって伝達される力との和であるから、マウントの動ばね定数が上昇し、振動絶縁性能が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情のもとになされたもので、その技術的課題とするところは、大変位入力に対する耐久性を向上させ、しかもストッパ機構により変位が規制された状態において中・高周波数の小振幅振動が入力された場合の振動絶縁性を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。
すなわち本発明に係る液体封入式マウントは、弾性体と隔壁との間でケースの内周に固定された環状のストッパと、第一液室内に相対変位自在に配置されると共に中央部が前記センターボスに固定され外周部が前記ストッパ又は隔壁に弾性的に接触可能なピストンとを備え、前記ピストンの外周部と前記ストッパ又は前記隔壁との接触により第一液室が分離・遮断されて形成される空間間での圧力差を解消するためにその接触面間に前記ピストンの軸方向両側の空間を互いに連通する流路が形成されるものである。
【0007】
【作用】
上記構成において、弾性体の変形を伴いながらセンターボスとケースが相対変位されると、前記センターボスに固定されたピストンが第一液室内で相対的にストッパ側もしくは隔壁側へ変位される。そして、所定の変位量に達すると、前記ピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部が弾性的に接触することによって、それ以上の変位を規制する。このとき、ピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部との接触面間には前記ピストンの軸方向両側の空間を互いに連通する流路が形成され、しかもピストンの外周部とストッパもしくは隔壁の外周部は弾性的に接触しているので、この接触状態において中・高周波数の小振幅の振動変位が入力されても、ピストンの軸方向両側空間での圧力差の発生が抑えられてマウントの動ばね定数の上昇が抑えられ、振動絶縁性能が確保される。
【0008】
【実施例】
図1は、本発明に係る液体封入式マウントの第一の実施例を示すもので、参照符号1は環状の外筒11及びその下側のカップ部材12がカシメにより互いに連結されたケースであり、カップ部材12が取付ボルト13を介して例えば車体フレーム側に連結される。2はケース1の外筒11の内周かつ上方に配置されたセンターボスであり、上面の螺子孔2aに螺合される図示されていないボルトを介して例えばエンジン側に連結される。センターボス2と、ケース1の外筒11との間には、エラストマでテーパ筒状に成形された弾性体3が加硫接着されている。ケース1の内周には、エラストマからなるダイアフラム4と、その上側の隔壁5と、更にその上側のストッパ6が配置されている。カップ部材12には、その内周空間を外部に開放してダイアフラム4の作動が阻害されないようにするための通気孔12aが開設されている。
【0009】
隔壁5は、弾性体3とダイアフラム4との間の空間を、弾性体3側の第一液室Aとダイアフラム4側の第二液室Bとに仕切るように設けられており、外周縁がケース1の外筒11とカップ部材12とのカシメ部に固定された皿状のオリフィスケース51と、このオリフィスケース51の内周に密嵌固定された円盤状のオリフィス部材52とを備える。オリフィスケース51の底部と、これに衝合されたオリフィス部材52の下面との間には、円周方向に略C字形に延びるオリフィス流路53と、その内周側のサブダイアフラム室54が形成されており、このサブダイアフラム室54内には、サブダイアフラム55がその厚さ方向へ僅かな距離だけ移動可能な状態で収容されている。オリフィス部材52は、オリフィス流路53が形成された外周部52aが、サブダイアフラム室54が形成された内周部よりも高い環状の段差形状を有する。
【0010】
オリフィス流路53は、その円周方向両端がオリフィス部材52に開設されたオリフィス孔52b及びオリフィスケース51に開設されたオリフィス孔51aを介して第一液室A及び第二液室Bに開放されている。また、サブダイアフラム室54は、オリフィス部材52に開設された多数の小孔52c及びオリフィスケース51に開設された多数の小孔51bを介して第一液室A及び第二液室Bに開放されており、前記サブダイアフラム55は、これら小孔51b,52cの開設範囲全体に展開している。
【0011】
ストッパ6は、外周縁61がケース1の外筒11とカップ部材12とのカシメ部に固定され、その内周に弾性体3側へ偏在した肩部62が形成されている。この肩部62は、オリフィス流路53が形成されたオリフィス部材52の外周部52aの位置とほぼ対応して形成されている。
【0012】
第一液室A内には図2の斜視図にも示すような形状のピストン7が移動自在に配置されている。このピストン7はストッパ6の内径よりも小径の有底筒状を呈する中央筒部71が、第一液室A内に突出したセンターボス2の下端面にボルト74を介して固定されると共に、少なくとも外周部72が常にストッパ6の内径肩部62と隔壁5のオリフィス部材52の外周部52aとの間に位置している。ピストン7の外周部72の外径は、オリフィス部材52の外周部52aの内径及びストッパ6の肩部62の内径よりも大径となっている。前記外周部72には、エラストマからなる環状の緩衝体73が被着されており、ケース1とセンターボス2の軸方向相対変位が所定の変位量に達することによって、前記緩衝体73が前記肩部62の下面もしくは前記オリフィス部材52の外周部52aの上面に当接されるようになっている。また、ピストン7をセンターボス2に固定しているボルト74の頭部は、ピストン7の中央筒部71内にあって緩衝体73の下面より上方にあり、緩衝体73の上面及び下面には、放射状の複数の溝73a,73bが形成されている。
【0013】
この実施例による液体封入式マウントは、車体フレームとエンジン側との間での振動入力によってケース1とセンターボス2が軸方向(図1における上下方向)に反復して相対変位され、弾性体3が反復変形を受ける。そして、その入力振動が機関振動等による振幅の小さい中・高周波振動である場合は、サブダイアフラム室54内のサブダイアフラム55が、弾性体3の反復変形に伴う第一液室Aと第二液室Bの圧力差の変化を受けて、軸方向(サブダイアフラム55の厚さ方向)に小刻みに反復移動して封入液の圧力変化が吸収され、オリフィス流路53内では殆ど封入液が流れないので、動ばね定数が低くなって優れた振動絶縁性能を発揮する。また、前記入力振動が車体のバウンド等のショックによる大振幅の変位である場合は、弾性体3が大きく変形され、これに伴う第一液室Aの圧力変化によってサブダイアフラム55がサブダイアフラム室54内をその下端又は上端まで移動してオリフィスケース51側の小孔51b又はオリフィス部材52側の小孔52cを閉塞すると、その時点から、封入液がオリフィス流路53を通じて第一液室Aと第二液室Bとの間を相対的に高圧となる側から相対的に低圧となる側へ向けて流動されるので、この時の流動抵抗によって衝撃入力に対する良好な緩衝性を得ると共に、振動を短時間で制止する。
【0014】
ここで、ケース1に対してセンターボス2が図1における下方へ向けて大きく相対変位された場合は、このセンターボス2と共に変位されるピストン7の外周部72に被着された緩衝体73の下面が、隔壁5におけるオリフィス部材52の外周部52aの上面に当接し、この時点で前記相対変位が阻止される。すなわち隔壁5(オリフィス部材52)は、センターボス2の下方変位に対するストッパとしての機能を有するものである。また、センターボス2が図1における上方へ向けて大きく相対変位された場合は、ピストン7の外周部72に被着された緩衝体73の上面が、ストッパ6の肩部62の下面に当接し、この時点で前記相対変位が阻止される。このため、大変位入力による弾性体3の過大な変形及びこれによる耐久性の低下が有効に防止される。
【0015】
ピストン7をセンターボス2に固定しているボルト74の頭部は、ピストン7の中央筒部71内にあって緩衝体73の下面より上方にあり、しかもオリフィス部材52は、ピストン7と当接される外周部52aの上面が、サブダイアフラム室54が形成された内周部よりも高くなっているから、ピストン7が第一液室A内を相対的に下方へ変位した時にボルト74の頭部がオリフィス部材52の中央部上面と衝突するようなことはない。
【0016】
緩衝体73がオリフィス部材52の外周部52aの上面又はストッパ6の肩部62の下面に当接した状態においては、その接触面間には放射状の溝73a,73bによる流路が形成されるので、第一液室Aにおける前記ピストン7の軸方向両側の空間A1 ,A2 は互いに連通された状態を維持する。したがって、この接触状態において、機関振動等による小振幅の中・高周波振動が継続的に入力されている場合、振動による前記空間A1 ,A2 間の圧力差が解消され、しかもピストン7は、緩衝体73によって緩衝体73がオリフィス部材52の外周部52aの上面又はストッパ6の肩部62の下面に弾性的に接触するため、動ばね定数の上昇が抑えられ、振動絶縁性能が確保される。
【0017】
図3は、本発明に係る液体封入式マウントの第二の実施例を示すもので、ストッパ6が、ケース1の外筒11の軸方向一部を内周側へ屈曲させることによってこの外筒11に一体に形成されている。その他の部分の構成は、上述の第一の実施例と同様である。
【0018】
また、本発明は、図示の実施例に限定されるものではなく、例えばピストン7に緩衝体73を設ける代わりに、このような緩衝体をオリフィス部材52の外周部52aの上面及びストッパ6の下面に設けても良く、ピストン7とオリフィス部材52又はストッパ6との当接状態において、ピストン7の軸方向両側の空間A1 ,A2 を互いに連通する流路を確保するための溝は、とオリフィス部材52側及びストッパ6側に設けても良い。
【0019】
【発明の効果】
本発明の液体封入式マウントによると、次のような効果が実現される。
(1) 大変位の入力時に、ピストンがその軸方向両側に配置されたストッパ及び隔壁のいずれかに接触するようにしたため、双方向の過大変位を規制し、弾性体の耐久性を向上させることができる。
(2) ピストンはストッパ又は隔壁に対して弾性的に接触し、しかもこの状態において中・高周波数の小振幅の振動が入力されても、封入液の液圧による動ばね定数の上昇が抑えられ、優れた振動絶縁性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体封入式マウントの第一の実施例を示す断面図である。
【図2】上記第一の実施例におけるピストンを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る液体封入式マウントの第二の実施例を示す断面図である。
【図4】従来例に係る液体封入式マウントを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケース
11 外筒
12 カップ部材
12a 通気孔
13 取付ボルト
2 センターボス
2a 螺子孔
3 弾性体
4 ダイアフラム
5 隔壁
51 オリフィスケース
51a,52b オリフィス孔
51b,52c 小孔
52 オリフィス部材
52a 外周部
53 オリフィス流路
54 サブダイアフラム室
55 サブダイアフラム
6 ストッパ
61 外周縁
62 肩部
7 ピストン
71 中央筒部
72 外周部
73 緩衝体
73a,73b 溝
A 第一液室
A1 ,A2 空間
B 第二液室
Claims (1)
- ケース(1)とセンターボス(2)との間に一体的に設けられ円周方向に連続したエラストマからなる弾性体(3)と、
前記ケース(1)の内周に変位自在に封着されたダイアフラム(4)と、
前記ケース(1)の内周に固定されて前記弾性体(3)側の第一液室(A)及び前記ダイアフラム(4)側の第二液室(B)の間を仕切ると共に前記両液室(A)(B)間を連通するオリフィス流路(53)が形成された隔壁(5)と、
前記弾性体(3)と前記隔壁(5)との間で前記ケース(1)の内周に固定された環状のストッパ(6)と、
前記第一液室(A)内に相対変位自在に配置されると共に中央部が前記センターボス(2)に固定され外周部が前記ストッパ(6)又は隔壁(5)に弾性的に接触可能なピストン(7)と、
を備え、
前記ピストン(7)の外周部と前記ストッパ(6)又は前記隔壁(5)との接触により第一液室が分離・遮断されて形成される空間(A 1 )(A 2 )間での圧力差を解消するためにその接触面間に前記ピストン(7)の軸方向両側の空間(A1)(A2)を互いに連通する流路が形成されることを特徴とする液体封入式マウント。
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-
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