JP3551470B2 - 発電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、発電機の励磁コイルの通電の断続を行って励磁電流を制御し、発電機の出力を制御する発電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、車両用の発電機は、エンジン始動直後など、励磁コイルの温度が低い場合、励磁コイルの抵抗値が低い。励磁コイルの抵抗値が低いと、励磁電流が増大し、発電出力が大きくなり、発電機の駆動負荷が大きくなる。そして、エンジン始動直後、エンジンが冷えている状態では、エンジンの発生トルクが不安定であるため、発電機の駆動負荷が大きいと、エンジンの回転が不安定になる。
【0003】
この不具合を解消する従来の技術として、特開昭62−104500号に開示された技術が知られている。
この技術は、図6の電気回路に示すように、励磁コイルの負電位側の通電回路中にスイッチング手段101を介在させ、このスイッチング手段101のON-OFF制御によって励磁コイルの通電と遮断とを行う回路を備える。また、スイッチング手段101の通電回路中に励磁電流の値を検出する電流値検出用抵抗体102を設け、この電流値検出用抵抗体102の検出する励磁電流が設定値を越えたことを比較器103で判定し、この比較器103によって励磁電流が設定値を越えた際に制御トランジスタ104をONしてスイッチング手段101をOFF し、励磁コイルの通電を停止する回路を備える。なお、この回路による励磁コイルの通電停止時間は、コンデンサ105の放電時間によって設定され、コンデンサ105の放電が終了すると再びスイッチング手段101がONして、励磁コイルの通電が開始され、上記を繰り返す。
この技術によって、励磁コイルの温度が変化しても、励磁電流の最大値が一定に制限される。このため、低温時における発電機の出力電流の増加を抑え、エンジン始動直後におけるエンジンにかかる発電機の駆動負荷を小さく抑えることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発電機が作動して、励磁コイルの温度が上昇すると、励磁コイルの抵抗値が大きくなって、励磁電流が減少する。すると、電流値検出用抵抗体102で検出される電流値が小さくなって、比較器103、制御トランジスタ104が、スイッチング手段101をOFF しなくなる。一方、励磁コイルの温度が上昇し、励磁電流が減少すると、発電出力が小さくなるため、発電機の発電要求も高まる。
これによって、スイッチング手段101がONし、励磁コイルを通電する時間が長くなる。励磁コイルが通電されている間は、電流値検出用抵抗体102に励磁電流が常に流れる。このため、スイッチング手段101の電流損失による発熱に加え、電流値検出用抵抗体102の電流損失による熱が発生する。これにより、発電機の出力を制御する回路が、熱によって不具合を発生する可能性が生じる。このため、発電機の出力を制御する回路へ、冷却風を増加させるなどの冷却対策が必要になる不具合を有していた。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、励磁コイルの温度が低い場合における発電機の出力増加を抑えるとともに、発電機の出力を制御する回路の発熱を抑えることのできる発電装置の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の発電装置は、次の技術的手段を採用した。
〔請求項1の手段〕
発電装置は、磁界を発生する励磁コイル、およびこの励磁コイルに対して相対的に回転して電力を発生する電機子コイルを備えた発電機と、前記励磁コイルの通電と遮断とを行うスイッチング手段を備え、このスイッチング手段を制御することによって励磁電流を制御する励磁電流制御回路と、前記スイッチング手段によって前記励磁コイルの通電を遮断した際に、前記励磁コイルに還流電流を流すために、前記励磁コイルに接続された還流回路とを備える。
そして、前記励磁電流制御回路は、前記スイッチング手段を介して前記励磁コイルに通電する通電経路中ではなく、前記還流回路に設けられ、前記還流回路において還流電流値を検出する還流電流検出素子を備え、前記スイッチング手段が前記励磁コイルの通電を遮断している場合に、前記還流電流検出素子が検出する還流電流値が、所定値を越えている間、前記スイッチング手段が前記励磁コイルの通電を遮断する発電抑制手段を備える。
【0007】
〔請求項2の手段〕
請求項1の発電装置において、
前記発電抑制手段は、所定の周期で発振して励磁コイル遮断信号を発生する信号発生手段を有し、この信号発生手段の発生した励磁コイル遮断信号に基づいて前記励磁コイルの通電を遮断する。
なお、信号発生手段で発生する遮断信号の周期は、励磁コイルの時定数よりも十分小さいことが望ましい。
【0008】
〔請求項3の手段〕
請求項1の発電装置において、
前記発電抑制手段は、前記励磁コイルの通電が開始されてからの所定時間後に励磁コイル遮断信号を発生する信号発生手段を有し、この信号発生手段の発生した励磁コイル遮断信号に基づいて前記励磁コイルの通電を遮断する。
なお、励磁コイルの通電が開始されてから、信号発生手段が励磁コイル遮断信号を発生するまでの所定時間は、励磁コイルの時定数よりも十分小さいことが望ましい。
【0009】
〔請求項4の手段〕
請求項2または請求項3の発電装置において、
前記信号発生手段は、所定温度以上で前記励磁コイル遮断信号の発生を停止する信号停止手段を有する。
【0010】
〔請求項5の手段〕
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発電装置において、
前記励磁電流制御回路は、前記スイッチング手段が前記励磁コイルよりも正電位側に設けられたハイサイドパワーセーブ回路で、前記還流電流検出素子を含む前記還流回路が前記スイッチング手段よりも負電位側に設けられる。
【0011】
【作用および発明の効果】
〔請求項1の作用〕
励磁電流制御回路が、スイッチング手段によって励磁コイルの通電を停止すると、還流回路に還流電流が発生する。この還流電流値は、励磁コイルの通電が遮断された時の励磁コイルの通電量に応じる。つまり、励磁コイルの温度が低く、励磁コイルの抵抗値が低い場合は、還流電流値の初期値が大きい。逆に、励磁コイルの温度が高く、励磁コイルの抵抗値が大きい場合は、還流電流値の初期値が小さい。そして、励磁コイルの通電が停止して発生した還流電流値は、徐々に減衰する。
【0012】
この還流電流値は、スイッチング手段を介して励磁コイルに通電する通電経路中ではない還流回路に設けられた還流電流検出素子によって検出される。励磁コイルの通電が遮断され、還流電流検出素子によって検出された還流電流値が所定値を越えている間、励磁電流制御回路は励磁コイルの通電の遮断を継続する。つまり、励磁コイルの温度が低く、還流電流値の初期値が大きい場合は、励磁コイルの遮断時間が長くなる。そして、還流電流検出素子によって検出された還流電流値が所定値を下回って、発電機の発電要求がある場合は、励磁コイルの通電を開始する。
【0013】
以上の作用によって、励磁コイルの温度が低い時は、還流電流値が所定値を越える時間が長くなり、スイッチング手段によって、励磁コイルの通電を遮断する時間が長くなる。逆に、励磁コイルの温度が高くなると、還流電流値が所定値を越える時間が減少、または無くなり、スイッチング手段によって、励磁コイルの通電を遮断する時間が短くなる。
【0014】
励磁コイルの温度が高くなり、励磁コイルの抵抗値が大きくなると、励磁コイルが通電される時間が長くなる。この結果、還流回路に還流電流が流れる割合が低下する。つまり、還流回路に設けられた還流電流検出素子に電流が流れる割合が低下し、還流電流検出素子の発熱が抑えられる。
【0015】
〔請求項1の効果〕
本発明の発電装置は、上記の作用で示したように、励磁コイルの温度が高くなる通常時は、還流回路に還流電流が流れる割合が低下して、還流電流検出素子の発熱が抑えられる。このため、発電機の出力を制御する励磁電流制御回路の発熱量が、従来に比較して大変小さく抑えられることにより、励磁電流制御回路が熱により不具合を生じる可能性を減少させることができる。また、励磁電流制御回路の熱を冷やすための冷却対策を減少、あるいは無くすことができるため、コストを抑えることができるとともに、励磁電流制御回路を搭載する位置の制約を小さくすることができる。
【0016】
〔請求項2の作用および発明の効果〕
発電抑制手段は、信号発生手段が所定の周期で発生する励磁コイル遮断信号を受けると、スイッチング手段によって励磁コイルの通電を遮断する。
このように、励磁コイルは、所定の周期で確実に通電が遮断されるため、励磁コイルの温度が低い場合に、発電機の出力が著しく増加するのを確実に防ぐことができる。
【0017】
〔請求項3の作用および発明の効果〕
信号発生手段は、励磁コイルの通電が開始されてからの所定時間後に励磁コイル遮断信号を発生する。発電抑制手段は、信号発生手段の発生する励磁コイル遮断信号を受けると、スイッチング手段によって励磁コイルの通電を遮断する。
このように、励磁コイルは、励磁コイルの通電が開始されてからの所定時間後に通電が遮断されるため、励磁コイルが通電および遮断を繰り返した際の発電機の最大出力がほぼ一定に保たれる。つまり、発電機の最大出力値が安定する。
【0018】
〔請求項4の作用および発明の効果〕
発電機の作動によって励磁コイルの温度が上昇するとともに、励磁電流制御回路も各構成部品の発熱によって温度が上昇する。励磁コイルの温度あるいは励磁電流制御回路の温度が所定温度以上に達すると、信号発生手段は、励磁コイル遮断信号の発生を停止する。
励磁コイルの温度が上昇した場合は、励磁コイルの抵抗値が増大して発電機の発生出力が小さくなる。そして、信号発生手段による励磁コイル遮断信号の発生を停止することで、発電機の出力要求に応じて励磁コイルの通電を行うことができる。つまり、励磁コイルの温度が上昇した場合、励磁コイルを常時通電することが可能になる。
【0019】
〔請求項5の作用および発明の効果〕
まず、対比のために、スイッチング手段が励磁コイルよりも負電位側に設けられたローサイドパワーセーブ回路の励磁電流制御回路に本発明を適用すると、還流電流検出素子にかかる電圧を、直接比較器やD/A変換器へ出力することができなくなり、電圧降下のための回路が必要になる。
そこで、本発明を、スイッチング手段が励磁コイルよりも正電位側に設けられたハイサイドパワーセーブ回路を採用する励磁電流制御回路に採用することにより、還流電流検出素子にかかる電圧を、直接比較器やD/A変換器へ出力することができ、回路構成を簡素化できる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明の発電装置を、図に示す一実施例に基づき説明する。
〔実施例の構成〕
図1ないし図3は本発明の実施例を示すもので、図1は自動車に搭載される発電装置の構成を示す電気回路図である。
発電機1は、通電を受けて磁界を発生する励磁コイル2と、この励磁コイル2の発生する磁界内で相対回転することにより電力を発生する電機子コイル3とを備え、励磁コイル2あるいは電機子コイル3の一方がエンジン(図示しない)によって駆動される。そして、電機子コイル3の発生する交流電流は整流回路4で直流に変換されて、バッテリ5および車両の各電気負荷6へ出力される。
【0021】
この発電機1による発電は、バッテリ5の電圧、つまり各電気負荷6の使用状況に応じて発電要求がなされる。発電機1の発電量は、励磁コイル2の通電と遮断とによって制御され、この励磁コイル2の通電および遮断は、励磁電流制御回路7によって制御される。なお、励磁コイル2には、励磁コイル2が通電状態から遮断された際に、励磁コイル2のインダクタンス成分によって励磁コイル2を通る還流電流を流すフライホイールダイオード8を備えた還流回路9が接続されている。
【0022】
励磁電流制御回路7は、バッテリ5からイグニッションキースイッチ11を介して励磁コイル2を通電するための通電経路中に、励磁コイル2の通電および遮断を行うスイッチング手段12(パワートランジスタ)を備える。このスイッチング手段12は、励磁コイル2の正電位側、つまり励磁コイル2よりもバッテリ5側に設けられたもので、励磁コイル2の負電位側は、整流回路4の負電位側、還流回路9の負電位側とともに、車両にアース接地されている。
【0023】
励磁電流制御回路7は、バッテリ5の電圧が所定電圧に低下した際に、スイッチング手段12をONして励磁コイル2を通電し、発電機1を作動させる発電要求手段13を備えるとともに、エンジンの始動直後など、励磁コイル2の温度が低い場合に励磁電流を抑える発電抑制手段14を備える。
【0024】
発電要求手段13は、イグニッションキースイッチ11、第1、第2抵抗体15、16を介して入力された電圧によってスイッチング手段12をONさせる前段トランジスタ17を備える。また、発電要求手段13は、イグニッションキースイッチ11、第1抵抗体15を介して入力されたバッテリ電圧VBを、第1基準電圧V1 に変換する第1ツェナーダイオード18を備える。さらに、発電要求手段13は、第1基準電圧V1 から第3、第4抵抗体19、20によって設定された第2基準電圧V2 (バッテリ5の電圧が所定電圧以上か否かを判断するための電圧)と、バッテリ電圧(整流回路4の出力電圧)VBの検出電圧Vbとを比較し、バッテリ電圧VBの検出電圧Vbが第2基準電圧V2 よりも高い場合にHi信号を発生する第1比較器21と、このHi信号によって前段トランジスタ17をOFF させ、スイッチング手段12をOFF させる第1トランジスタ22とを備える。
【0025】
発電要求手段13は、上記の回路構成を採用することにより、バッテリ電圧VBの検出電圧Vbが、所定電圧よりも低い場合は、前段トランジスタ17をONさせてスイッチング手段12をONし、励磁コイル2を通電し、発電機1を作動させる。バッテリ電圧VBの検出電圧Vbが、所定電圧よりも高い場合は、第1比較器21が第1トランジスタ22をONして、前段トランジスタ17をOFF する。すると、スイッチング手段12もOFF して励磁コイル2の通電が遮断し、発電機1の作動が停止する。
【0026】
発電抑制手段14は、還流回路9を流れる還流電流値を検出する還流電流検出素子23(抵抗体)を備え、スイッチング手段12がOFF し、励磁コイル2の通電が遮断されている場合に、還流電流検出素子23が検出する還流電流値が、所定値を越えている間、スイッチング手段12をOFF する回路である。
具体的には、還流電流検出素子23で検出された電圧値Viと、第2ツェナーダイオード24から第5、第6抵抗体25、26によって設定された第3基準電圧V3 (還流電流値が、所定値を越えているか否かを判断するための電圧)とを比較し、還流電流検出素子23で検出した検出電圧Viが第3基準電圧V3 よりも高い場合にHi信号を発生する第2比較器27と、このHi信号によって前段トランジスタ17をOFF させ、スイッチング手段12をOFF させる第2トランジスタ28とを備える。
【0027】
また、発電抑制手段14は、所定の周期で短いHi信号(以下、励磁コイル遮断信号)を発生し、第2トランジスタ28をONし、スイッチング手段12をOFF させて励磁コイル2の通電を所定周期毎に遮断する信号発生手段29を備える。この信号発生手段29で発生する遮断信号の周期は、励磁コイル2の時定数よりも十分小さく設定され、励磁コイル2が通電された際に、励磁コイル2の励磁電流が極端に大きくなる前に、再び励磁コイル遮断信号が出力されて励磁コイル2の通電を遮断するように設けられている。
【0028】
信号発生手段29の電気回路を図2に示す。信号発生手段29は、第1基準電圧V1 を第7抵抗体30を介して充電するコンデンサ31の充電電圧Vcと、第1基準電圧V1 から第8、第9抵抗体32、33によって設定された第4基準電圧V4 とを比較し、コンデンサ充電電圧Vcが第4基準電圧V4 よりも高い場合にHi信号(このHi信号は、上述の励磁コイル遮断信号として、第2トランジスタ28をONさせる)を発生する第3比較器34と、この第3比較器34がHi信号を発生した際に、第3比較器34の負入力に印加される第4基準電圧V4 を第5基準電圧V5 へ低下させる第3トランジスタ35と、第3比較器34がHi信号を発生することによって、コンデンサ31を放電させる第4トランジスタ36とを備える。
【0029】
この信号発生手段29の作動を、図3のタイムチャートを用いて説明する。
第7抵抗体30を介して印加される電流によってコンデンサ31が充電され、コンデンサ充電電圧Vcが上昇して、第4基準電圧V4 に達すると、第3比較器34がHi信号(励磁コイル遮断信号)を発生する。
第3比較器34がHi信号を発生すると、第3トランジスタ35がONして第3比較器34の負入力の電圧が第5基準電圧V5 に低下するとともに、第4トランジスタ36がONしてコンデンサ31が放電し、コンデンサ充電電圧Vcが下降する。コンデンサ充電電圧Vcが第5基準電圧V5 に低下すると、第3比較器34の出力がLow 信号に反転する。すると、第3、第4トランジスタ35、36がOFF してコンデンサ31の放電を停止するとともに、第3比較器34の負入力の電圧が第4基準電圧V4 に上昇する。
すると再び、第7抵抗体30を介して印加される電流によってコンデンサ31が充電され、上記を繰り返す。以上の繰り返しによって、図3の実線Aに示すように、信号発生手段29から、間隔の短い所定の周期で、励磁コイル遮断信号が発生される。
【0030】
また、励磁電流制御回路7に内蔵される本実施例の信号発生手段29は、所定の温度(例えば90℃)以上に上昇すると、励磁コイル遮断信号の発生を停止する信号停止手段37が搭載されている。この信号停止手段37は、温度によって作動点が変化する第5トランジスタ38、およびこの第5トランジスタ38が所定温度に達した際にONするように調節する第10、第11抵抗体39、40を備える。そして、所定の温度以上に上昇し、第5トランジスタ38がONすると、ダイオード41を介して第3比較器34の正入力(コンデンサ充電電圧Vc)を低下させ、第3比較器34の出力をLow に保持させるものである。
【0031】
〔実施例の作動〕
次に、上記実施例の作動を、図3に示すタイムチャートを用いて簡単に説明する。なお、この作動では、バッテリ電圧が所定電圧よりも低く、発電要求手段13の第1トランジスタ22がOFF して、前段トランジスタ17のベースには、イグニッションキースイッチ11、第1、第2抵抗体15、16を介して電圧が印加されている状態(発電要求手段13が励磁コイル2の通電を要求する状態)を示す。
【0032】
エンジンの始動直後など、励磁コイル2の温度が低い場合は、励磁電流制御回路7の発熱量が少なく、励磁電流制御回路7内の温度も低い。そして、励磁電流制御回路7に内蔵される信号発生手段29の第5トランジスタ38が所定の温度に達するまでは、図3の実線Aに示すように、信号発生手段29から大変短い周期で励磁コイル遮断信号が発生する。
【0033】
信号発生手段29から、時t1 で励磁コイル遮断信号が発生すると、第2トランジスタ28がONし、前段トランジスタ17、スイッチング手段12がOFF し、励磁コイル2の通電が停止される。すると、励磁コイル2のインダクタンス成分によって、励磁コイル2および還流回路9を循環する還流電流が流れる。この還流電流は、励磁コイル2の温度が低くて励磁コイル2の抵抗値が低いほど、大きくなる割合が高い。
この還流電流値は、還流回路9に設けられた還流電流検出素子23によって検出される。そして、還流電流検出素子23で検出された電圧値Viが、第3基準電圧V3 よりも高い場合は、第2比較器27が第2トランジスタ28のONを継続させる。つまり、還流電流検出素子23で検出された電圧値Viが、第3基準電圧V3 よりも高い場合は、前段トランジスタ17、スイッチング手段12がOFF し、励磁コイル2の通電が停止された状態に保たれる。この励磁コイル2の通電停止時間は、励磁コイル2の温度が低くて励磁コイル2の抵抗値が低いほど循環電流が大きいため、長くなる。
【0034】
還流電流検出素子23で検出される電圧値Viが徐々に低下し、第3基準電圧V3 よりも低下すると(時t2 )、第2比較器27の出力がLow に反転し、第2トランジスタ28をOFF する。すると、前段トランジスタ17およびスイッチング手段12がONして、励磁コイル2の通電が開始される。この状態で、再び、信号発生手段29から励磁コイル遮断信号が発生すると(時t3 )、第2トランジスタ28がONし、前段トランジスタ17、スイッチング手段12がOFF し、励磁コイル2の通電が停止され、上記作動を繰り返す。
【0035】
エンジンを始動してしばらく経過し、励磁コイル2の温度が上昇するとともに、励磁電流制御回路7の内部も各構成部品の発生する熱によって温度が上昇する。そして、励磁電流制御回路7に内蔵される信号発生手段29の第5トランジスタ38が所定の温度に上昇すると、信号発生手段29は励磁コイル遮断信号を発生しなくなる。このため、励磁電流制御回路7は、発電要求手段13の作動のみでスイッチング手段12を制御し、発電機1の出力を制御する。
【0036】
〔実施例の効果〕
本実施例では、励磁コイル2の温度が低い場合に発電機1の出力を抑えるために設けられる還流電流検出素子23が、バッテリ5、イグニッションキースイッチ11、スイッチング手段12を介して励磁コイル2を通電させる通電経路中ではなく、還流回路9に設けられている。そして、励磁コイル2の温度が高く、発電機1の出力が低下した通常作動時は、還流回路9に還流電流が流れる割合が低下する。これによって、発電機1の通常作動時は、還流電流検出素子23の発熱が抑えられる。
このため、励磁電流制御回路7の発熱量が、従来に比較して大変小さく抑えられ、励磁電流制御回路7が熱により不具合を生じる可能性が減少する。また、励磁電流制御回路7の発生する熱が減少するため、励磁電流制御回路7を冷やすための冷却対策を抑えることができる。これによって、発電装置の設置にかかるコストを抑えることができるとともに、励磁電流制御回路7を設置する位置の制約を小さくすることができる。
【0037】
本実施例では、励磁電流制御回路7に、所定の短い周期で励磁コイル遮断信号を発生する信号発生手段29を設けたことにより、励磁コイル2の温度が低い場合、励磁コイル2が短い周期で確実に通電が遮断されるため、発電機1の出力が著しく増加するのを確実に防ぐことができる。
励磁電流制御回路7の温度が所定温度以上に上昇すると、励磁コイル遮断信号の発生を信号発生手段29が停止するため、励磁コイル2の温度が上昇した場合は、発電要求手段13による発電機1の発電要求にのみで励磁コイル2の通電を行うことができる。つまり、励磁コイル2の温度が上昇した場合は、励磁コイル遮断信号が発生しないため、励磁コイル2を常時通電することが可能になる。
【0038】
本実施例では、スイッチング手段12を励磁コイル2よりも正電位側に設けているため、還流電流検出素子23はスイッチング手段12の負電位側に設けられ還流電流検出素子23による還流電流の検出誤差を小さくできる。また、還流電流検出素子23が、スイッチング手段12の負電位側に設けられることにより、還流電流検出素子23の検出した電圧値Viを、直接、第2比較器27へ出力している。この結果、励磁電流制御回路7の回路構成を簡素化できる。
【0039】
〔第2実施例〕
図4および図5は第2実施例を示すもので、図4は信号発生手段29の電気回路図、図5は信号発生手段29の作動および第2比較器27の作動を示すタイムチャートである。
第1実施例の信号発生手段29は、所定の周期で励磁コイル遮断信号を発生した例を示したが、本実施例の信号発生手段29は、励磁コイル2(第1実施例参照)の通電が開始されてからの所定時間後に励磁コイル遮断信号を発生するもので、励磁コイル2の通電が開始されてから、信号発生手段29が励磁コイル遮断信号を発生するまでの所定時間は、励磁コイル2の時定数よりも十分小さく設定されている。
【0040】
そして、本実施例の信号発生手段29は、スイッチング手段12(第1実施例参照)がOFF している場合に、励磁コイル2の正電位側の接続端子(F端子)の電圧が低下していることを利用し、コンデンサ31の正電位側とF端子とを、第12抵抗体42、ダイオード43を介して接続したものである。
これによって、信号発生手段29は、スイッチング手段12がONしてからコンデンサ31の充電を開始するようになるため、励磁コイル2の通電が開始されてからの所定時間後に第3比較器34がONし、励磁コイル遮断信号を発生する。
【0041】
本実施例に示すように、励磁コイル2の通電が開始されてからの所定時間後に励磁コイル遮断信号を発生することで、励磁コイル2の通電時間が一定になる。これによって、励磁コイル2の通電電流値が安定し、発電機1(第1実施例参照)の出力変動やランプ等のちらつきを第1実施例に比較して抑えることができる。
【0042】
なお、本実施例に、第1実施例に示した信号停止手段37を搭載し、励磁コイル2の温度が上昇した場合は、発電要求手段13(第1実施例参照)による発電機1の発電要求にのみで励磁コイル2の通電を行うように設けても良い。
【0043】
〔変形例〕
上記の実施例では、励磁電流制御回路の内部の温度が所定温度以上に上昇した際に、励磁コイル遮断信号の発生を停止する例を示したが、励磁コイルの温度に係わる発電機の表面の温度や内部の温度を検出して、発電機の検出温度が所定温度以上に上昇した際に、励磁コイル遮断信号の発生を停止するように設けても良い。
また、所定温度以上に達すると、励磁コイル遮断信号の発生を停止する信号停止手段を励磁電流制御回路に搭載した例を示したが、信号停止手段を廃止して、温度が高くなっても励磁コイル遮断信号を発生するように設けても良い。
スイッチング手段が励磁コイルよりも正電位側に接続されたハイサイドパワーセーブ回路の励磁電流制御回路に本発明を適用した例を示したが、スイッチング手段が励磁コイルよりも負電位側に接続されたローサイドパワーセーブ回路の励磁電流制御回路に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】発電装置の構成を示す電気回路図である(第1実施例)。
【図2】信号発生手段の電気回路図である(第1実施例)。
【図3】作動説明のためのタイムチャートである(第1実施例)。
【図4】信号発生手段の電気回路図である(第2実施例)。
【図5】作動説明のためのタイムチャートである(第2実施例)。
【図6】励磁電流を調節する電気回路である(従来技術)。
【符号の説明】
1 発電機
2 励磁コイル
3 電機子コイル
7 励磁電流制御回路
9 還流回路
12 スイッチング手段
13 発電要求手段
14 発電抑制手段
23 還流電流検出素子
29 信号発生手段
37 信号停止手段

Claims (5)

  1. 磁界を発生する励磁コイル、およびこの励磁コイルに対して相対的に回転して電力を発生する電機子コイルを備えた発電機と、
    前記励磁コイルの通電と遮断とを行うスイッチング手段を備え、このスイッチング手段を制御することによって励磁電流を制御する励磁電流制御回路と、
    前記スイッチング手段によって前記励磁コイルの通電を遮断した際に、前記励磁コイルに還流電流を流すために、前記励磁コイルに接続された還流回路と
    を備える発電装置において、
    前記励磁電流制御回路は、
    前記スイッチング手段を介して前記励磁コイルに通電する通電経路中ではなく、前記還流回路に設けられ、前記還流回路において還流電流値を検出する還流電流検出素子を備え、
    前記スイッチング手段が前記励磁コイルの通電を遮断している場合に、前記還流電流検出素子が検出する還流電流値が、所定値を越えている間、前記スイッチング手段が前記励磁コイルの通電を遮断する発電抑制手段を備える
    ことを特徴とする発電装置。
  2. 請求項1の発電装置において、
    前記発電抑制手段は、
    所定の周期で発振して励磁コイル遮断信号を発生する信号発生手段を有し、
    この信号発生手段の発生した励磁コイル遮断信号に基づいて前記励磁コイルの通電を遮断する
    ことを特徴とする発電装置。
  3. 請求項1の発電装置において、
    前記発電抑制手段は、
    前記励磁コイルの通電が開始されてからの所定時間後に励磁コイル遮断信号を発生する信号発生手段を有し、
    この信号発生手段の発生した励磁コイル遮断信号に基づいて前記励磁コイルの通電を遮断する
    ことを特徴とする発電装置。
  4. 請求項2または請求項3の発電装置において、
    前記信号発生手段は、所定温度以上で前記励磁コイル遮断信号の発生を停止する信号停止手段を有する
    ことを特徴とする発電装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発電装置において、
    前記励磁電流制御回路は、前記スイッチング手段が前記励磁コイルよりも正電位側に設けられたハイサイドパワーセーブ回路で、
    前記還流電流検出素子を含む前記還流回路が前記スイッチング手段よりも負電位側に設けられた
    ことを特徴とする発電装置。
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