JP3551464B2 - 振れ補正カメラの調整装置、振れ補正カメラ、及び調整方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、撮影時に発生する手振れ等による像振れを補正可能な振れ補正カメラの調整装置、振れ補正カメラ、及び調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の振れ補正カメラにおいて、以下のような振れ補正カメラが知られている。角速度センサ等を用いた角速度検出回路が、少なくともカメラの光軸に垂直な平面上の2方向の振れによる角速度を検出する。この検出した角速度に応じて、検出方向と略同一方向に撮影レンズの一部である振れ補正レンズ(防振レンズ)をシフトさせること等により、撮影光学系の光軸を移動させる。この撮影光学系は、モータ等のアクチュエータの回転をギア等で減速するとともに、この回転運動を直線運動に変換することにより駆動される。これにより、カメラに発生した振れによる像振れが補正される(この制御を防振制御ともいう。)。
【0003】
このようなカメラは、その製造段階においては、いくつかの部分(部組品)に分けて製造され、その1つ1つの部組品の動作のチェック後に、総組が行われる。例えば、モータを回転させることで振れ補正レンズをシフトさせる補正レンズシフトメカ系は、1つの部組品として正常に作動するか否かのチェックが行われた後に、カメラ本体に組み込まれる。手振れによる角速度を検出する角速度検出回路も同様である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の従来の振れ補正カメラでは、以下の課題があった。
第1に、補正レンズシフトメカ系や角速度検出回路が、部組品段階での動作チェックでは良品であったものが、カメラ本体に組み込まれた段階で、動作が異常になる場合や、良好な動作性能が得られない場合があった。ここで、カメラの総組状態では、チェックを行うことができなかった。
【0005】
第2に、角速度検出回路に用いる角速度センサの出力には個体差(機器間のばらつき)があり、所定の角速度を与えたときの個々の角速度センサの出力値は一定ではない。また、角速度検出回路の増幅器にも増幅率のばらつきがある。さらには、角速度検出回路の出力値はマイクロコンピュータ等に内蔵されたA/D変換器によりデジタル値に変換される場合が多いが、そのA/D変換器にも個体差があり、所定の入力電圧に対するA/D変換されたデジタル値は一定ではない。ここで、角速度検出回路のゲインのばらつきを、その部組品の状態において調整することはそれほど難しいことではないが、この場合にもA/D変換器のばらつきによる誤差は残る。これらのゲインのばらつきがある状態で振れ補正を行った場合には、精度良く振れ補正を行うことができないという問題がある。
【0006】
第3に、角速度検出回路に用いる角速度センサは、例えば特開平2−228518号公報に開示されているように、回転運動の角速度を検出する軸の方向を決定する振動子ワイヤー状の支持部材によって空間に支持されている。この支持部材の足が固定されている角速度センサのケースが、検出軸の個体差が生じやすい構造である。さらに、角速度センサを角速度検出回路に取り付ける段階と、角速度検出回路をカメラ本体に組み込む段階において、取り付け方向の誤差が生じる。これらのことにより、角速度検出回路が角速度を検出する方向と実際に振れ補正レンズをシフトして光軸を移動させる方向とにズレが生ずる(このズレを、角速度検出回路の検出方向のズレが支配的であることから検出角度ズレともいう。)。この角度ずれは5°以上ある場合もある。このように角速度の検出方向と光軸を移動させる方向とに角度ずれがあると、精度良く振れ補正を行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解消するためになされたものであって、カメラの総組状態において、振れ補正レンズシフトメカ系、角速度検出回路等の各部組品の動作をチェックし、また、各部組品の機器間における出力値のゲインのばらつきを調整し、精度良く振れ補正を行うことができるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明は、振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部と、前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部とを備える振れ補正カメラの振れ補正機能を調整する調整装置であって、前記振れ補正カメラと情報の授受を行う情報授受部と、前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に所定の角速度振幅又は角度振幅を有する正弦波状振動を与える振動付与部と、前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に前記正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値に基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を演算する演算部と、前記演算部による前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を、前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込む書き込み部とを備えることを特徴とする振れ補正カメラの調整装置である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記演算部は、前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値の最大値及び最小値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算することを特徴とする振れ補正カメラの調整装置である。
【0010】
請求項3の発明は、振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部とを備えた振れ補正カメラにおいて、前記振れ補正カメラの前記第1の方向に所定の角速度振幅を有する第1の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第1の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第2の出力値、及び前記振れ補正カメラの前記第2の方向に所定の角速度振幅を有する第2の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第3の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第4の出力値とに基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量が演算され、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれが調整されることを特徴とする振れ補正カメラである。
請求項4の発明は、請求項3において、さらに、前記振れ補正カメラは、前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部とを備え、前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれの調整は、前記振れ補正カメラの外部の調整装置により行われ、前記調整装置は、前記第1の正弦波状振動、及び、前記第2の正弦波振動を前記振れ補正カメラに与え、前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値及び前記第4の出力値を前記振れ補正カメラから読み込み、前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値及び前記第4の出力値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算し、前記演算された前記第1の角度ズレ量 及び前記第2の角度ズレ量を前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込むことを特徴とする振れ補正カメラである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3乃至請求項4において、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量は、前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値、及び前記4の出力値のそれぞれの最大値及び最小値に基づき、演算されることを特徴とする振れ補正カメラである。
【0012】
請求項6の発明は、振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部とを備えた振れ補正カメラにおいて、前記振れ補正カメラの前記第1の方向に所定の角度振幅を有する第1の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第1の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第2の出力値をそれぞれ積分又は積算した第1の演算値並びに第2の演算値と、前記振れ補正カメラの前記第2の方向に所定の角度振幅を有する第2の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第3の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第4の出力値をそれぞれ積分又は積算した第3の演算値並びに第4の演算値とに基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量が演算され、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれが調整されることを特徴とする振れ補正カメラである。
請求項7の発明は、請求項6において、さらに、前記振れ補正カメラは、前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部とを備え、前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれの調整は、前記振れ補正カメラの外部の調整装置により行われ、前記調整装置は、前記第1の正弦波状振動、及び、前記第2の正弦波振動を前記振れ補正カメラに与え、前記第1の演算値、前記第2の演算値、前記第3の演算値及び前記第4の演算値を前記振れ補正カメラから読み込み、前記第1の演算値、前記第2 の演算値、前記第3の演算値及び前記第4の演算値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算し、前記演算された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込むことを特徴とする振れ補正カメラである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項6乃至請求項7において、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量は、前記第1の演算値、前記第2の演算値、前記第3の演算値、及び前記第4の演算値のそれぞれの最大値及び最小値に基づき、演算されることを特徴とする振れ補正カメラである。
【0014】
請求項9の発明は、振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、前記第1の方向及び前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部及び第2の角速度検出部とを備える振れ補正カメラの振れ補正機能を調整する調整方法であって、前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に所定の角速度振幅又は角度振幅を有する正弦波状振動を与え、このときの前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値に基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を演算し、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを調整することを特徴とする調整方法である。
【0015】
【作用】
本発明の解決手段においては、振れ補正カメラの撮影光学系の光軸の変化方向である第1,第2の方向に所定の正弦波状振動が与えられ、このときの第1,第2の角速度検出部の出力値に基づき、第1,第2の方向と第1,第2の角速度検出部による角速度の検出方向との第1,第2の角度ズレ量が演算され、この第1,第2の角度ズレ量により、両者のずれが調整される。従って、カメラの組立時における第1,第2の角速度検出部の取り付け誤差等が、振れ補正の精度に影響を及ぼすことがなくなる。
【0016】
【実施例】
以下、図面等を参照して、本発明の一実施例について説明する。
図1は、本発明の実施例であるカメラ側部分,通信工具側部分,加振台部分の構成を示す図である。最初に、カメラ側部分について説明する。
この実施例のカメラは、撮影光学系11〜14と、CPU1と、CPU1に電気的に接続されたX,Y軸レンズ位置検出回路6,7、X,Y軸モータ駆動回路2,3、及びヨー,ピッチ角速度検出回路8,9等とから構成されている。
撮影光学系11〜14は、4つの撮影レンズ11,12,13,14から構成され、このうちの撮影レンズ13が、手振れによる像振れを補正するレンズとして機能する(以下、「防振レンズ13」という。)。
ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9は、撮影光軸に直交する平面上の2軸(X,Y軸)方向のヨー、ピッチ方向の手振れによる角速度を検出するものである。
CPU1は、カメラのシーケンスを制御等するためのワンチップマイクロコンピュータであり、種々の演算を行う演算機能、時間を計測する計時タイマ機能、一定時間間隔でその処理を行うタイマ割り込み処理、任意のdutyを出力するPWM出力機能、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力をA/D変換する機能、通信工具側との通信機能、露光処理を行うためのシャッタ機能等を有している。
X,Y軸モータ駆動回路2,3は、それぞれX,Y軸用のモータ4,5を駆動させることにより、防振レンズ13をX,Y軸方向に移動させるための回路である。
X,Y軸レンズ位置検出回路6,7は、防振レンズ13のX,Y軸方向の位置を検出するための回路である。
【0017】
また、CPU1には、E2PROM10、半押しSW16、全押しSW17が電気的に接続されている。
E2PROM10は、不揮発性メモリであり、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲインばらつきを補正するゲイン調整値や、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の角速度の検出方向ズレを補正する検出角度ズレ調整値等を記憶しているものである。
半押しSW16は、レリーズボタンの半押しでオンするスイッチである。
全押しSW17は、レリーズボタンの全押しでオンするスイッチである。
【0018】
次に、このカメラの動作について説明する。
ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9は、カメラの手振れ等により生じた角速度を検出する。この出力値はCPU1に伝送され、CPU1は、この出力値をA/D変換し、手振れの角速度を検出する。次に、CPU1は、この値と、E2PROM10に記憶されたゲイン調整値や、検出角度ズレ調整値等とに基づき、所定の演算を行い、防振レンズ13の適切な駆動量を演算する。そして、X,Y軸モータ駆動回路2,3に、X,Y軸用のモータ4,5を駆動させる。X,Y軸用のモータ4,5の回転駆動力は、例えばギヤ列によって直進運動に変換され、防振レンズ13を像面での手ぶれを打ち消すようにX,Y軸方向に適当な速度で移動させる。また、防振レンズ13が移動されると、CPU1は、X,Y軸レンズ位置検出回路6,7により、防振レンズ13のX,Y軸方向の位置を読み取る。
なお、以下の説明において、X,Y軸用モータ4,5の回転により防振レンズ13をシフトする機構系を防振レンズシフトメカ系という。
【0019】
通信工具側には、カメラのCPU1と電気的に接続される通信工具15が設けられており、通信工具15は、CPU1と情報の授受を行うことにより、カメラの動作と同期させてカメラの種々の調整を行うものである。
加振台側には、通信工具15と電気的に接続される加振台18が設けられている。加振台18は、カメラに振動を与えるためのものであり、カメラが取り付けられた状態において通信工具15からの命令により防振レンズ13のシフト方向であるX,Y軸方向に略正弦波状に振動する。
【0020】
次に、角速度検出におけるゲインのばらつきの調整、及び角速度の検出角度のズレ調整について説明する。
(1)ゲイン調整、角度ズレ補正の方法
ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9は、それぞれ角速度センサ、及びその信号を増幅する増幅回路等から構成されている。ゲインのばらつきの要因には、角速度センサの出力のばらつき、増幅回路の増幅率のばらつきがあり、さらに本実施例のようにCPU1でA/D変換を行うカメラにおいては、個々のCPU1でのA/D変換器のばらつき、又はA/D変換に用いる基準電圧のばらつき等がある。図2は、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲインのばらつきを模式的に示した図である。ここでは、ヨー方向,ピッチ方向でそれぞれこれらのゲインのばらつき要因を1つにまとめてG1,G2としている。
【0021】
また、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の角速度の検出方向と、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力に基づく防振レンズ13の移動方向とは、正確には一致せず、両者の間には角度ズレによる誤差が生じている。図3は、これらの角度ズレを説明するための図である。
図3において、横軸,縦軸は、それぞれ防振レンズ13のX軸,Y軸駆動方向である。ここでX軸駆動方向とヨー角速度検出回路8の角速度の検出方向とが角度αずれており、一方、Y軸駆動方向とピッチ角速度検出回路9の角速度の検出方向とが角度βずれているとする。この場合に、手振れによりベクトルω(大きさがωでX軸駆動軸方向から反時計方向にθ傾いた角速度)として与えられると、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のそれぞれの出力u,vは、以下の式(数1)、(数2)によって算出される。
(数1) u=G1×ω×cos(θ+α)
(数2) v=G2×ω×sin(θ−β)
但し、図3では理解を容易にするためにゲインばらつきG1,G2をそれぞれG1=G2=1としている。
【0022】
また、カメラに与えられた角速度がω1の大きさでその方向がX軸方向(すなわちθ=0)であるときのヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のそれぞれの出力u1,v1は、以下の式(数3)、(数4)によって算出される。
(数3) u1=G1×ω1×cos(α)
(数4) v1=−G2×ω1×sin(β)
【0023】
次に、カメラに与えられた角速度がω2の大きさでその方向がY軸方向(すなわちθ=90゜)であるときのヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のそれぞれの出力u2,v2は、以下の式(数5)、(数6)によって算出される。
(数5) u2=−G1×ω2×sin(α)
(数6) v2=G2×ω2×cos(β)
【0024】
また、式(数3)及び(数6)から、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲインばらつきG1,G2は、以下の式(数7)、(数8)によって算出される。
(数7) G1=u1/(ω1×cos(α))
(数8) G2=u2/(ω2×cos(β))
ここで、X,Y軸に対する検出方向の角度ズレα,βは大きくて5゜程度であるから、cos(α)=1,cos(β)=1としても0.4%程度の誤差で近似可能である。従って、式(数7)、(数8)は、それぞれ以下の式(数9)、(数10)のように近似することができる。
(数9) G1=u1/ω1
(数10) G2=v2/ω2
【0025】
以上のようにして、X軸,Y軸方向にそれぞれ所定の角速度が与えられたときのヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値によりゲインのばらつきG1,G2を算出することができる。図2では、上記方法でG1、G2を算出し、G1の逆数に比例したヨー方向のゲイン調整値A1、G2の逆数に比例したピッチ方向のゲイン調整値A2を、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値に掛け合わせることでゲインのばらつきを補正するようにしている。このゲインばらつき補正後のヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値U,Vは、以下の式(数11)、(数12)によって算出される。
(数11) U=A1×G1×ω×cos(θ+α)
(数12) V=A2×G2×ω×sin(θ−β)
【0026】
また、検出角度ズレα、βは、それぞれ、式(数3)並びに(数5)、及び(数4)並びに(数6)から、以下の式(数13)、(数14)によって算出される。
(数13) tan(α)=−(ω1/ω2)×(u2/u1)
(数14) tan(β)=−(ω2/ω1)×(v1/v2)
ここで、X,Y軸に対する検出方向ズレα、βは大きくて5゜程度であるから、cos(α)=1、cos(β)=1としても0.4%程度の誤差で近似可能である。従って、式(数13)、式(数14)は、以下の式(数15)、(数16)のように近似することができる。
(数15) sin(α)=−(ω1/ω2)×(u2/u1)
(数16) sin(β)=−(ω2/ω1)×(v1/v2)
【0027】
以上のようにして、X軸,Y軸方向に各々所定の角速度が与えられたときのヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値により、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の検出方向の角度ズレα、βを検出することができる。
【0028】
次に、以上の方法によりゲインばらつきG1,G2、及び角度ズレα,βが算出されたときの、実際のカメラでの角度ズレの補正方法について説明する。ここで説明を容易にするために、式(数11)、(数12)において、A1×G1=1、A2×G2=1として正規化すると、ゲインばらつき補正後のヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値U,Vは、以下の式(数17)、(数18)のように表すことができる。
(数17) U=ω×cos(θ+α)
(数18) V=ω×sin(θ−β)
また、X軸,Y軸方向の各角速度X,Yは、以下の式(数19)、(数20)によって算出される。
(数19) X=ω×cos(θ)
(数20) Y=ω×sin(θ)
次に、式(数17),(数18)を、θによらない式にすると、以下の式(数21)、(数22)のように表すことができる。
(数21) X=(cos(β)/cos(α+β))×U+(sin(α)/cos(α+β))×V
(数22) Y=(cos(α)/cos(α+β))×V+(sin(β)/cos(α+β))×U
【0029】
ここで、X,Y軸に対する検出方向ズレα、βは大きくて5゜程度であるから、cos(α)=1、cos(β)=1、cos(α+β)=1と近似すると、式(数21),(数22)は、それぞれ以下の式(数23),(数24)のように近似することができる。
(数23) X=U+sin(α)×V
(数24) Y=V+sin(β)×U
すなわち、式(数9)、(数10)によりゲインばらつきを算出し、式(数14)、(数15)により角度ズレのsin値を算出しておけば、式(数23)、(数24)によってゲインばらつきG1,G2、角度ズレα,βを補正することができる。
【0030】
このゲインばらつきG1,G2、及び角度ズレα,βの補正の様子を、図2に基づき説明する。
先ず、ゲインばらつきG1,G2を持つヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力u,vは、それぞれゲイン調整値A1,A2倍され、ゲイン調整後の出力U,Vを得る。次に、UとVの角度ズレ調整値Δα倍された出力との和をXとし、VとUの角度ズレ調整値Δβ倍された出力との和をYとする。ここで、角度ズレ調整値Δα=sin(α)、Δβ=sin(β)である。つまり、図2のような構成により、X,Y軸方向の角速度X,Yが得られる。角速度X,Yは、その後それぞれB倍され、防振レンズ13のX軸,Y軸方向のシフトする目標速度(以下、「防振レンズ目標速度」という。)Vc(X),Vc(Y)が得られる。ここで、Bは、所定角速度に対して防振レンズ13をいかなる速度でシフトするかの係数である(以下、「角速度−防振レンズ目標速度変換係数」という。)。すなわち、算出された各駆動軸方向の角速度X、YをB倍することで、各々方向の防振レンズ目標速度Vc(X),Vc(Y)が算出される。防振レンズ目標速度Vc(X)、Vc(Y)が算出されたら、防振レンズ13を各々その速度でシフトすれば像面での手振れを打ち消すことができる。
【0031】
(2)正弦波状にその角速度を変化させる加振台を用いての調整方法
上述の説明において、ゲイン調整、及び角度ズレ調整は、一定の角速度をカメラに与え続け、そのときのヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値を検出することで行うことができる。しかし、実際に正確に一定角速度をカメラに与えることは非常に難しい。何故ならば、正確に一定角速度をカメラに与える場合には、ある一点を回転の中心として一定距離にカメラを固定し、等速回転運動をさせなければならない。そこで、加振台18を用いてカメラに正弦波的に変化する角速度を与えることによりゲイン調整、角度ズレ調整を行う。
【0032】
加振台18は、その加振部分の一端付近が固定されており、その逆の端付近の下には適当に偏平したカムが配置されている。そのカムがモータ等で回転され、加振部分が正弦波状に上下する。加振台18はこの機構を2方向有しており、カメラは、防振レンズ13のX,Y軸の駆動方向と各加振方向とが一致するように取り付けられる。ここで、実際には防振レンズ13の駆動方向と加振方向には微少な角度ズレが存在するが、この角度ズレは、本発明で問題とされる角度ズレに比べ無視できる範囲である。
【0033】
次に、図4に基づき、正弦波状の角速度をカメラに与えてゲイン調整、及び、角度ズレ調整を行う実施例について説明する。図4は、本発明によるゲイン調整,角度ズレ調整の様子を示す図である。
先ず、カメラには防振レンズ13のX軸駆動方向に全振幅ω1の正弦波の角速度が加振台18により与えられる。このときのヨー角速度検出回路8の出力の最大値,最小値をそれぞれu1max,u1min、及びピッチ角速度検出回路9の出力の最大値,最小値をそれぞれv1max,v1minとする。次に、カメラには防振レンズ13のY軸駆動方向に全振幅ω2の正弦波の角速度が加振台18により与えられる。このときのヨー角速度検出回路8の出力の最大値,最小値をそれぞれu2max,u2min、及びピッチ角速度検出回路9の出力の最大値,最小値をv2max,v2minとする。
【0034】
このときのゲインばらつきは、上述の一定角速度を与えた場合と同様に考えることができ、正弦波状の角速度を与えた場合には、以下の式(数25)、(数26)に示すように、与えた角速度の全幅と出力値の全幅の比として算出される。
(数25) G1=(u1max−u1min)/ω1
(数26) G2=(v2max−v2min)/ω2
よって、ゲイン調整値A1,A2は、それぞれG1,G2の逆数に比例した値として算出される。又は、与えた角速度の全幅ω1,ω2に対して、ゲイン調整後に得たい目標とするヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力の全振幅の比として与えられる。ここに、ゲイン調整後にヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力の得たい目標全振幅がそれぞれU1,V1であった場合には、ゲイン調整値A1,A2は以下の式(数27)、(数28)によって算出される。
(数27) A1=U1/(u1max−u1min)
(数28) A2=V1/(v2max−v2min)
【0035】
次に、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の検出方向の角度ズレもまた、上述の一定角速度を与えた場合と同様に考えることができ、正弦波状の角速度を与えた場合には、以下の式(数29)、(数30)によって算出される。
(数29) sin(α)=−f*(ω1/ω2)×{(u2max−u2min)/(u1max−u1min)}
(数30) sin(β)=−c*(ω2/ω1)×{(v1max−v1min)/(v2max−v2min)}
ここで、c,fは、以下の式(数31)、(数32)で与えられる。
【0036】
正弦波状の加速度をカメラに与えたときの最大値、最小値から算出された全振幅の値は常に正であるので、角度ズレの符号はわからない。これを避けるため、式(数31)では、X軸方向に与えられた角速度が正である場合には、ヨー角速度検出回路8の出力値の最大値u1max検出時のピッチ角速度検出回路9の出力が同じ符号となるので、これを利用して角度ズレの符号を検出している(式(数32)も同様である。)。本実施例では、角度ズレの符号を検出するために簡易的に上述のような方法をとったが、最小値検出時の逆方向の角速度検出回路の出力の符号、又は、加振台18で与えた角速度の符号とヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力の符号とを比較することにより、角度ズレの符号を検出しても良い。
【0037】
ここで問題になるのは、加振台18を用いてカメラに正弦波的に変化する角速度を与えてゲイン調整、角度ズレ調整を行う場合に、加振台18を精度良く制御しないと、上記最大値,最小値が精度良く算出されない。これは、第1に、加振台18により与えられる角速度の周波数が、加振台18の駆動モータの回転速度むらにより変動した場合には、その変動量に比例してヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値の全幅も変動し、これによってゲイン調整値、角度ズレ調整値も誤差を持つようになるからである。第2に、加振台18の動作が滑らかでなく、高周波振動が乗った動きをした場合には、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力値にその振動に応じたノイズが上乗せされてしまうため、各角速度検出回路の出力値の最大値,最小値の検出に誤差が生じてしまい、これによってゲイン調整値、角度ズレ調整値も誤差を持つようになるからである。そこで、次にこの問題を解決する方法を説明する。なお、精度の良い加振台を用いてこれらの調整を行った場合において上記問題のないときには、以上のような調整方法でも良いことは勿論である。
【0038】
(3)角速度の積分値を使用する調整方法
上述した調整方法は、角速度のディメンジョンであったが、以下の調整方法は、角度又は位置のディメンジョンで行う。
先ず、以下の式(数33)に示すようにヨー,ピッチ方向のゲイン調整値に初期値を設定し、式(数34)に示すように角度ズレ調整値Δα,Δβをクリアする。
(数33) A1=A2=A0
(数34) Δα=Δβ=0
これにより、図2においてゲイン調整,角度ズレ補正がされていない各検出方向の角速度X,Yが出力される。次に、その出力のB倍されたX,Y軸方向の防振レンズ目標速度Vc(X)、Vc(Y)を、以下の式(数35)、(数36)に示すように積分することで、防振レンズ13のX軸,Y軸方向の目標位置LC(X),LC(Y)が算出される。
(数35) LC(X)=∫Vc(X)
(数36) LC(Y)=∫Vc(Y)
【0039】
一方、防振レンズ13の目標位置LC(X)、LC(Y)の算出は、式(数35)、(数36)のような積分形ではなく、例えば、CPU1でヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力をA/D変換してその後の処理をデジタル値を用いて制御するような場合には、Vc(X),Vc(Y)の値を所定時間間隔で積算して算出する方が適する場合がある。この場合には、積算によって防振レンズ13の目標位置LC(X),LC(Y)を算出しても良い。
【0040】
ここで、カメラには防振レンズ13のX軸方向に角度全振幅γ1の正弦波状の振動が加振台18により与えられる。このときのLC(X)の最大値,最小値をそれぞれLCmax(X),LCmin(X)、及びLC(Y)最大値,最小値をそれぞれLCmax(Y),LCmin(Y)とすると、以下の式(数37)、(数38)により、X軸,Y軸のそれぞれの防振レンズ目標位置の全幅a,bが算出される。さらに、式(数39)により、LCmax(X)検出時のLC(Y)の符号によりcが算出される。
【0041】
次に、カメラには防振レンズ13のY軸駆動方向に角度全振幅γ2の正弦波状の振動が加振台18により与えられる。このときのLC(X)の最大値,最小値をそれぞれLCmax(X),LCmin(X)、及びLC(Y)の最大値,最小値をそれぞれLCmax(Y),LCmin(Y)とすると、以下の式(数40)、(数41)により、X軸,Y軸の防振レンズ目標位置の全幅d,eが算出される。さらに、式(数42)により、LCmax(Y)検出時のLC(X)の符号によりfが算出される。
【0042】
加振台18により与えた角度全幅γ1、γ2に対して、ゲイン調整後に得たいX軸,Y軸方向のそれぞれの防振レンズ目標位置LC(X),LC(Y)の全振幅をそれぞれL01,L02とすると、各ゲイン調整値A1、A2は、以下の式(数43)、(数44)によって算出される。ここでL01、L02は加振した角度全振幅γ1、γ2に対して比例関係にあり、加振角度全振幅に対して像を停止させるための適正な防振レンズ13のシフトの全振幅である。この値は撮影光学系により定まり、理論値が算出されている。
(数43) A1=A0×L01/a
(数44) A2=A0×L02/e
【0043】
式(数43),(数44)は、式(数27),(数28)の角速度をその積分値である防振レンズ目標位置のディメンジョンに変換したものであり、ゲイン調整値が初期値A0である場合に得たい防振レンズ振幅とゲイン調整する前の防振レンズ目標位置の振幅の比からゲイン調整値の初期値A0を何倍すれば良いかを算出し、これをA0に掛け合わせることでゲイン調整値を算出している。
【0044】
次に、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の検出方向の角度ズレ補正量Δα,Δβは、以下の式(数45)、(数46)により算出される。
(数45) Δα=sin(α)=−f*(L01/L02)×(d/a)
(数46) Δβ=sin(β)=−c*(L02/L01)×(b/e)
式(数45),(数46)は、式(数29),(数30)の角速度をその積分値である防振レンズ目標位置のディメンジョンに変換したものである。
【0045】
以上の方法によりヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力の積分値によりゲイン調整、角度ズレ調整を行うと、加振台18の周波数が多少変動しても、加振台18の角度振幅はほとんど変化しない。また、加振台18の加振時に振動ノイズが多少のっていて、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力に振動ノイズがのった場合においても、その出力の積分値から算出しているため、ノイズの影響をほとんど受けない調整を行うことができる。
【0046】
次に、実際のカメラの調整処理の実施例を説明する。調整処理は、通信工具側で行われる通信工具調整処理と、カメラ側で行われるカメラの通信モード処理に分けられる。最初に、全体の調整処理の概略を説明する。図1に示すように、カメラのCPU1と通信工具15とが電気的に接続され、カメラの調整処理が行われる。また、モータ4,5の制御は、PWM(PULSE WIDTH MODULATION)制御で行った場合で説明することにする。通常、PWM制御は、ある一定周期間の通電時間を可変する、つまり、モータ4,5がオンしているdutyを可変することで速度制御を行う方式である。
図7は、通信工具15が行う通信調整処理の一実施例を示すフローチャートである。また、図8は図7に続くフローチャートであり、図9は図8に続くフローチャートである。図7〜図9において、通信工具15は、S602〜S607で防振レンズシフトメカ系の不良チェックを行い、次のS608〜624でヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲイン調整及び検出角度ズレ調整を行う。さらに、S625〜S646で防振制御性の総合的なチェックを行う。
【0047】
図10は、カメラのCPU1が行う通信モード処理の一実施例を示すフローチャートである。カメラのCPU1は、通信工具15からの指令によりカメラの通信モード処理を起動する。そして、通信工具15からの指令に応じて、例えばS704の防振レンズリセット処理や、S709の防振制御開始処理を行う。
【0048】
(1)カメラ側の処理
次に、カメラ側の通信モード処理について、図10に基づき詳細に説明する。図7のS600で通信工具処理が開始されると、通信工具15は、次のS601でカメラのCPU1に通信モード処理を行う指令を送信する。これにより、カメラのCPU1は、図10のS700で通信モード処理を開始し、次のS701に進む。
S701では、式(数33)により角速度ゲイン調整値A1,A2に初期値A0が設定され、さらに次のS702で式(数34)により角度ズレ調整値Δα,Δβがクリアされ、S703に進む。S703からS718までの処理は、通信工具15からの命令の種類により各々分岐して行われる。先ずS703で防振レンズリセット命令がなされたか否かが判断され、命令があればS704で防振レンズリセット処理(図11)が行われてS703に戻り、命令がなければS705に進む。S705では防振レンズセンタリング命令がなされたか否かが判断され、命令があればS706で防振レンズセンタリング処理(図12)が行われてS703に戻り、命令がなければ次のS707に進む。
【0049】
S707では防振調整開始命令がなされたか否かが判断され、命令があればS709で防振制御開始処理(図13)が行われてS703に戻り、命令がなければS708に進む。S708では防振制御開始命令がなされたか否かが判断され、命令があればS709で防振制御開始処理が行われてS703に戻り、命令がなければS710に進む。
S710では防振調整終了命令がなされたか否かが判断され、命令があればS712で防振制御タイマ割込み処理が禁止され、防振制御が終了してS703に戻り、命令がなければS711に進む。S711では防振制御終了命令がなされたか否かが判断され、命令があればS712で防振制御タイマ割込み処理が禁止され、防振制御が終了してS703に戻り、命令がなければS713に進む。
【0050】
S713ではデータ読み込み命令がなされたか否かが判断され、命令があればS714で通信工具15によって指定されたデータが通信工具15に転送されてS703に戻り、命令がなければS715に進む。S715ではデータ書き込み命令がなされたか否かが判断され、命令があればS716で通信工具15により転送されたデータが通信工具15によって指定されたデータに書き込まれてS703に戻り、命令がなければS717に進む。S717ではE2PROM書き込み命令がなされたか否かが判断され、命令があればS718で通信工具15により転送されたデータが通信工具15によって指定されたE2PROMのデータに書き込まれてS703に戻り、命令がなければS719に進む。S719では通信モード解除命令がなされたか否かが判断され、命令があればS720でカメラの通信モード処理が終了し、命令がなければS703に戻る。以上のように、通信工具15の命令によりその該当する処理をカメラが行っている。
【0051】
図11は、図10のS704の防振レンズリセット処理の一実施例を示すフローチャートである。S704からS800に進み、防振レンズリセット処理が開始される。先ず、S801で防振レンズリセットタイマ割込み処理(図14)が許可され、防振レンズ13のリセットが開始される。次に、S802で所定時間(例えば10ms程度)ウエイトされ、S803に進む。S803ではX軸の防振レンズ速度VR(X)が所定値以下であるか否か、すなわちX軸の防振レンズのリセット駆動が終了したか否かが判断され、所定値以下のときにはS804に進み、所定値以下でないときにはS803に戻る。S804ではY軸の防振レンズ速度VR(Y)が所定値以下であるか否か、すなわちY軸の防振レンズのリセット駆動が終了したか否かが判断され、所定値以下であるときにはS805に進んで防振レンズリセット処理が終了し、所定値以下でないときにはS803に戻る。
【0052】
従って、S803,S804の処理は、X軸,Y軸の両方の防振レンズリセット駆動処理が終了するまで繰り返され、両軸とも終了したらS805で処理が終了することになる。また、防振レンズリセット駆動が終了したか否かは、防振レンズ13がその制御範囲の一方の端であるリセット端に達したときに防振レンズ13の速度VR(X),VR(Y)が略ゼロになることを利用して判断している。また、S802で所定時間ウエイトするのは、防振レンズ13のリセット駆動初期において、その速度VR(X),VR(Y)が略ゼロから立ち上がることによりS803,S804の処理で誤判定されることを避けるためである。
【0053】
図14は、図11のS801の防振レンズリセットタイマ割込み処理の一実施例を示すフローチャートである。実際には、X軸,Y軸用に2つの防振レンズリセットタイマ割込み処理が行われるが、両方とも同様の処理であるので、X軸側の処理のみを説明し、Y軸側の処理の説明は省略する。
この処理は、所定間隔(例えば1ms間隔)で繰り返し行われる処理である。S801で本防振レンズリセットタイマ割り込み処理が許可されると、先ず、S1101では、前回の防振レンズリセットタイマ割込み処理により設定されている防振レンズ位置LR(X)がLR’(X)に設定される。次にS1102で、X軸レンズ位置検出回路6により検出された防振レンズ13のX軸の位置がLR(X)に設定される。そして、S1103でLR(X)からLR’(X)が減算されることで、所定時間中の防振レンズ13の位置の変化量、すなわちX軸方向の防振レンズ13の速度VR(X)が算出される。次のS1104では、所定の駆動dutyでモータ4が駆動され防振レンズ13がX軸方向のリセット位置に駆動され、S1105で本防振レンズリセットタイマ割込み処理が終了する。
【0054】
図12は、図10のS706の防振レンズセンタリング処理の一実施例を示すフローチャートである。この防振レンズセンタリング処理は、防振レンズ13を中央位置LSに駆動する処理である。S706からS900に進んで処理が開始されると、先ずS901で、防振レンズ停止FLG、及び異常が検出された場合にセットされるFLG(防振レンズセンタリングタイムアップ異常FLG、X軸,Y軸防振レンズ動き具合異常FLG、X軸,Y軸防振レンズ位置検出異常FLG)がそれぞれクリアされる。次のS902では防振レンズセンタリング処理中断タイムアップ時間が設定される。ここで、この設定時間は、センタリング制御が開始されてから、何らかの異常がない限りは必ず設定時間内で確実に中央位置に防振レンズ13が駆動されるような時間である。
【0055】
次に、S903で防振レンズセンタリングタイマ割込み処理(図15)が許可され、防振レンズセンタリング制御が開始される。次のS904では所定時間ウエイトされる。次のS905では防振レンズ13のX軸,Y軸の速度のそれぞれの最大値VRmax(X),VRmax(Y)、及びX軸,Y軸の速度のそれぞれの最小値VRmin(X),VRmin(Y)がクリアされる。
【0056】
ここで、S904で所定時間ウエイトする意味を説明する。X軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7には、例えば防振レンズ13の位置の変化をインタラプタ信号パルスのカウント数で検出するような構成のものが一般的に用いられる。上記検出方法において、インタラプタ信号が離散的な信号であるために、所定時間中に入るパルス数、又はインタラプタ信号の周期の逆数により防振レンズ速度VRを検出するときがある。
しかし、防振レンズ13のセンタリング制御の開始初期においては、防振レンズ速度の正確な値が検出されないことや、ありえない大きな値が検出される可能性がある。そこで、インタラプタを使用した場合でも、センタリング制御が開始されてから所定時間ウエイトし、正確な防振レンズ速度が算出されるようになってからVRmax(X),VRmax(Y)、及びVRmin(X),VRmin(Y)をクリアしている。
なお、S904でのウエイト時間は通常5msから10数ms程度に設定される。また、このVRmax(X)、VRmax(Y)、VRmin(X)、VRmin(Y)の検出は、防振レンズセンタリングタイマ割込み処理(図15)により行われる。
【0057】
次に、S906ではS902で設定された防振レンズセンタリング処理中断タイマがタイムアップしたか否か、すなわち防振レンズ13のセンタリング制御が開始されてから所定の時間が経過したか否かが判断される。ここで、タイムアップしていればタイムアップ異常と判断され、S907に進んで防振レンズセンタリングタイムアップ異常FLGがセットされてS918に進む。一方、タイムアップしていなければ、S908に進んでVRmax(X)が所定値以下であるか否かが判断される。所定値以下のときには防振レンズ13のX軸方向の動き具合が異常であると判断され、S909に進んでX軸防振レンズ動き具合異常FLGがセットされてS918に進む。一方、所定値以下でないときにはS910に進む。
【0058】
S910ではVRmax(Y)が所定値以下であるか否かが判断される。ここで、所定値以下のときには、防振レンズ13のY軸方向の動き具合が異常であると判断され、S911に進んでY軸防振レンズ動き具合異常FLGがセットされてS918に進む。一方、所定値以下でないときにはS912に進む。このS908,S910の処理は、防振レンズ13の動きが悪い場合に防振レンズ速度の最大値VRmax(X)、VRmax(Y)が小さい値になることを利用して、防振レンズ13の動き具合の異常を判断している。このVRmax(X),VRmax(Y)を、防振レンズ速度VR(X),VR(Y)が所定値以下であるか否かにより判断しても良い。
【0059】
次に、S912ではVRmin(X)が所定値以下であるか否かが判断される。ここで所定値以下のときには、X軸レンズ位置の検出が異常であると判断されS913に進んでX軸防振レンズ位置検出異常FLGがセットされてS918に進む。一方、所定値以下でないときにはS914に進む。
次のS914ではVRmin(Y)が所定値以下であるか否かが判断される。ここで、所定値以下のときには、Y軸レンズ位置の検出が異常であると判断されS915に進んでY軸防振レンズ位置検出異常FLGがセットされてS918に進む。一方、所定値以下でないときにはS916に進む。
このS912,S914の処理は、X軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力による防振レンズ速度VR(X),VR(Y)が異常な値であり、ありえない小さな値(例えば負の符号を持つ値)として算出された場合に、防振レンズセンタリングタイマ割込み(図15)のなかで検出された場合にはこの異常値がVRmin(X),VRmin(Y)に設定されることを利用して、X軸、Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力の異常を判断している。このVRmin(X),VRmin(Y)を、防振レンズ速度VR(X)、VR(Y)が所定値以下であるか否かにより判断しても良い。
【0060】
次にS916では、X軸方向の防振レンズ13の動作を停止するか否かが判断され、停止するときにはS917に進み、停止しないときにはS906に戻る。ここで、防振レンズ13を停止するか否かは、X軸防振レンズ停止FLGにより判断される。このX軸防振レンズ停止FLGは、防振レンズセンタリングタイマ割込み処理のなかで設定されるX軸防振レンズ位置LR(X)が、中央位置LSの所定値Lstop前に到達した場合にセットされるものである。
次のS917では、S916と同様に、Y軸方向の防振レンズ13の動作を停止するか否かが判断され、停止するときにはS918に進み、停止しないときにはS906に戻る。ここでの防振レンズ13を停止するか否かは、上述と同様に、Y軸防振レンズ停止FLGにより判断される。Y軸防振レンズ停止FLGは、防振レンズセンタリングタイマ割込み処理のなかで設定されるY軸防振レンズ位置LR(Y)が、中央位置LSの所定値Lstop前に到達した場合にセットされるものである。
【0061】
このS916、S917の処理により、X軸,Y軸とも防振レンズ13の位置が中央位置LSの所定値Lstop前に到達するまでS906〜S917の処理が繰り返して実行され、両軸とも所定値に到達した場合にS918に進む。
S918では防振レンズ13のセンタリングタイマ割込み処理が禁止される。これにより、モータ4,5がショートブレーキ状態にされ、防振レンズ13が両軸方向ともに停止され、S919に進んで防振レンズセンタリング処理が終了する。
【0062】
図15は、図12のS903の防振レンズセンタリングタイマ割込み処理の一実施例を示すフローチャートである。実際にはX軸,Y軸用に2つの防振レンズセンタリングタイマ割込み処理が行われるが、両方とも同様の処理であるので、X軸側の処理のみを説明し、Y軸側の処理の説明は省略する。
この処理は、S903で防振レンズセンタリングタイマ割り込み処理が許可されることにより、所定間隔(例えば1ms間隔)で繰り返し行われる処理である。先ず、S1201で、前回の防振レンズセンタリングタイマ割込み処理によって設定されている防振レンズ位置LR(X)がLR’(X)に設定される。さらに次のS1202で、X軸レンズ位置検出回路6により検出された防振レンズ13のX軸の位置がLR(X)に設定される。次に、S1203ではLR(X)からLR’(X)が減算され、所定時間中の防振レンズ13の位置の変化量、すなわちX軸方向の防振レンズ13の速度VR(X)が算出される。
【0063】
次のS1204ではX軸方向の防振レンズ速度VR(X)がVRmax(X)より大きいか否かが判断され、大きいときにはS1205に進んでVRmax(X)にVR(X)が設定されてS1206に進む。一方、大きくないときにはS1206に進む。S1206ではX軸方向の防振レンズ速度VR(X)がVRmin(Y)より小さいか否かが判断され、小さいときにはS1207に進んでVRmin(X)にVR(X)が設定されてS1208に進む。一方、小さくないときにはS1208に進む。このS1204〜S1207の処理により、X軸方向の防振レンズ速度VR(X)の最大値VRmax(X)及び最小値VRmin(X)が検出される。
【0064】
次のS1208では、X軸方向の防振レンズ位置LR(X)が中央位置LSの所定量Lstop前に駆動されたか否かが、LR(X)+LstopがLS以上であるか否かで判断される。その位置に駆動されたときにはS1209に進んでX軸防振レンズ停止FLGがセットされ、次にS1210でモータ4がショートブレーキ状態にされ、次にS1214に進んで本防振レンズセンタリングタイマ割込み処理が終了する。一方、S1208でまだその位置に駆動されていないときにはS1211に進む。
S1211ではX軸方向の防振レンズの目標速度VC(X)が以下の式(数47)により算出され、さらにS1212で駆動dutyが以下の式(数48)より算出される。
(数47) VC(X)=K10×{LS−LR(X)}+Voffset
(数48) センタリング駆動duty=K1×VC(X)+K2×{VC(X)−VR(X)}±Doffset
【0065】
ここで、式(数47)は、X軸レンズ位置検出回路6で検出されたX軸方向の防振レンズ位置LR(X)と中央位置LSとの差に応じた速度に、ある所定速度Voffsetを加えた値をX軸方向の防振レンズ目標速度VC(X)としている。また、モータ4を駆動する駆動dutyは、X軸方向の防振レンズ位置LR(X)が中央位置LSの所定値Lstop前までは式(数48)で算出される駆動dutyであり、それ以降ではモータ4はショートブレーキ状態にされる。
式(数48)は、X軸方向の防振レンズ目標速度VC(X)に所定の係数K1を乗算したdutyと、VC(X)とX軸方向の防振レンズ速度VR(X)との差に所定の係数K2をかけて算出されるdutyとを加算し、さらにその値が正のときにはDoffsetを加算し、負のときにはDoffsetを減算することにより駆動dutyを求めている。
このことにより、防振レンズ13はX軸方向に概ね設定されている防振レンズ目標速度VC(X)で速度制御される。
【0066】
次に、S1213でその算出された駆動dutyでモータ4が駆動されることにより防振レンズ13がX軸の中央位置LS方向に駆動され、S1214進んで本処理が終了する。
【0067】
次に、上述の防振レンズ13のセンタリング制御の様子を説明する。図6は、防振レンズ13のX軸方向のセンタリング制御の様子を説明する図である。
図6において、先ずD1から防振レンズ13のセンタリング駆動が開始され、防振レンズ13は設定されている防振レンズの目標速度VC(X)に制御しようとする。X軸方向の防振レンズ速度VR(X)は、モータ4、防振レンズシフトメカ系等を含めた防振制御系の時定数の関係から次第に増加し、D2で最大値に達する。D2から中央位置LSのLstop前であるD3の間は、式(数47)で算出される直線によりVC(X)が設定される。この直線に沿って防振レンズ13が速度制御され、中央位置LSに近づくに従い、防振レンズ速度VR(X)は次第に減少し、D3からはモータ4がショートブレーキ状態にされ、防振レンズ13は最終的に中央位置LS近傍のD4で停止する。
【0068】
このように防振レンズセンタリング処理が実行されることにより、防振レンズ13は目的の中央位置LS付近に駆動されるとともに、その駆動の間のX軸方向の防振レンズ速度の最大値が検出されVRmax(X)に記憶される。この最大速度VRmax(X)は、防振レンズシフトメカ系の動き安さに応じて変化するものであり、何らかの原因でメカに不具合があった場合には、最大速度VRmax(X)の値は小さい値になり、同時にX軸防振レンズ動き具合異常FLGがセットされる。また、X軸レンズ位置検出回路6に異常があり、センタリング制御時にありえない防振レンズ速度VR(X)が算出され、それが例えば負の値であつときにはVRmin(X)に記憶されるとともに、X軸防振レンズ位置検出異常FLGがセットされる。
【0069】
なお、Y軸の防振レンズセンタリングタイマ割込み処理は、上述のX軸方向の処理と同様に行われる。すなわち、そのときのY軸方向の防振レンズ速度の最大値がVRmax(Y)に記憶され、各々の異常が検出された場合には各異常FLG(Y軸防振レンズ動き具合異常FLG、Y軸防振レンズ位置検出異常FLG)がセットされる。また、所定時間制御を継続しても両軸が中央位置LSに達しない場合には防振レンズタイムアップ異常FLGがセットされる。
【0070】
図13は、図10のS709の防振制御開始処理の一実施例を示すフローチャートである。この処理は、X軸,Y軸の防振レンズ目標位置の最大値,最小値、防振レンズ位置の最大値,最小値、制御誤差等を検出し、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力に応じて防振レンズ13を各方向に移動させることにより、像面での手振れを抑える防振制御の処理を開始する処理である。
S709からS1000に進んで本処理が開始されると、先ずS1001でX軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力から現在の防振レンズ位置が検出され、それぞれX軸,Y軸の防振レンズ目標位置LC(X),LC(Y)に設定される。次にS1002でX軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力で検出された現在の防振レンズ位置が、それぞれX軸,Y軸の防振レンズ目標位置の最大値,最小値LCmax(X),LCmax(Y),LCmin(X),LCmin(Y)に設定される。
【0071】
次に、S1003ではX軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力で検出された現在の防振レンズ位置が、それぞれX軸,Y軸の防振レンズ位置の最大値,最小値LRmax(X),LRmax(Y),LRmin(X),LRmin(Y)に設定される。次のS1004ではX軸,Y軸の防振レンズ位置誤差の最大値,最小値ΔLmax(X),ΔLmax(Y),ΔLmin(X),ΔLmin(Y)がクリアされる。次に、S1005で防振制御タイマ割込み処理(図16)が許可されることにより防振制御が開始され、S1006で本防振制御開始処理が終了する。
【0072】
図16は、図13のS1005の防振制御開始処理によって防振制御タイマ割り込み処理を許可されることにより、所定時間間隔でその処理が行われる防振制御タイマ割り込み処理の一実施例を示すフローチャートである。S1300から、その処理が開始される。実際には、X軸,Y軸用に2つの防振制御タイマ割込み処理が行われるが、同様の処理であるので、X軸の処理のみを説明し、Y軸の処理の説明は省略する。この処理は、所定間隔(例えば1ms間隔)で繰り返し行われる処理である。先ず、S1301で、前回の防振制御タイマ割込み処理によって設定されている防振レンズ位置LR(X)がLR’(X)に設定され、次のS1302でX軸レンズ位置検出回路6により検出された防振レンズ13のX軸の位置がLR(X)に設定される。
【0073】
次のS1303では、防振レンズ位置max、min値の検出処理が行われる。図17は、この防振レンズ位置max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。S1303から図17のS1400に進み、先ず、S1401で、X軸の防振レンズ位置LR(X)がLRmax(X)より大きいか否かが判断される。大きいときにはS1402に進んでLRmax(X)にLR(X)が設定され、S1403に進む。一方、大きくないときにはS1403に進む。
S1403では、X軸の防振レンズ位置LR(X)がLRmin(X)より小さいか否かが判断され、小さいときにはS1404に進んでLRmin(X)にLR(X)が設定され、S1405に進む。一方、小さくないときにはS1405に進む。S1405で処理が終了する。以上の処理により、X軸方向の防振レンズ位置LR(X)の最大値,最小値がそれぞれLRmax(X),LRmin(X)に検出される。
【0074】
S1405から、図16のS1304に進む。S1304では、LR(X)からLR’(X)が減算されることにより、所定時間中のX軸方向の防振レンズ13の位置の変化量、すなわちX軸方向の防振レンズ13の速度VR(X)が算出される。次に、S1305ではヨー角速度検出回路8の出力がA/D変換され、その値がuに設定される。次のS1306ではuにゲイン調整値A1が乗算され、その値がUに設定されることによりゲイン調整されたヨー方向の角速度が算出される。次のS1307では、式(数23)に示すように他方のピッチ方向のゲイン調整された角速度値Vに角度ズレ調整値Δα(=sinα)が乗算され、これがUに加算されることで角度ズレ補正された出力Xが算出される。
【0075】
ここで、Vは、他方の軸であるY軸の防振制御タイマ割込み処理のなかで算出されたゲイン調整済みの角速度値である。厳密にいえば、本防振制御タイマ割込み処理のX軸、Y軸の処理を同時に行うことは不可能であるので、ヨー角速度検出回路8とピッチ角速度検出回路9の出力のそれぞれのA/D変換を行うサンプリングタイミングが異なる。しかし、このタイミングのズレの間に変化するVの量は極めて小さい量であり、無視することができる。
【0076】
次に、S1308ではS1307で算出されたXに角速度−防振レンズ目標速度変換係数Bが乗算されることでX軸の防振レンズ目標速度VC(X)が算出される。そして、次のS1309でX軸の防振レンズ目標位置LC(X)にVC(X)が加算され、LC(X)が設定される。所定間隔でVC(X)が積算されることにより、防振レンズ目標位置LC(X)を算出することが可能になる。また、LC(X)は、図13のS1001でそのタイミング時に設定されているので、そのタイミングを初期値として防振制御タイマ割込み処理が許可されている間は防振レンズ目標速度VC(X)を積算して防振レンズ目標位置LC(X)が算出され続ける。
【0077】
次のS1310では、防振レンズ目標位置max、min値の検出処理が行われる。図18は、この防振レンズ目標位置max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。S1310から図18のS1500に進む。先ず、S1501でX軸の防振レンズ目標位置LC(X)がLCmax(X)より大きいか否かが判断される。大きいときにはS1502に進んでLCmax(X)にLC(X)が設定され、次のS1503で他方の軸であるY軸の防振レンズ目標速度LC(Y)の符号が保持され、S1504に進む。S1501で大きくないときにはS1504に進む。
【0078】
S1504ではX軸の防振レンズ目標位置LC(X)がLCmin(X)より小さいか否かが判断され、小さいときにはS1505に進んでLCmin(X)にLC(X)が設定されてS1506に進む。小さくないときにはS1506に進む。S1506でこの処理が終了する。この処理により、X軸方向の防振レンズ目標位置LC(X)の最大値、最小値が、それぞれLCmax(X)、LCmin(X)に検出され、最大値を検出した時の他方の軸の防振レンズ目標位置LC(Y)の符号が得られる。
【0079】
S1506から図16のS1311に進む。S1311では、X軸の防振レンズ目標位置LC(X)から防振レンズ位置LR(X)が減算され、防振レンズ位置誤差ΔL(X)が算出される。次にS1312に進み、防振レンズ位置誤差max、min値の検出処理が行われる。図19は、この防振レンズ位置誤差max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。S1312から図19のS1600に進む。先ず、S1601でX軸の防振レンズ位置誤差ΔL(X)がΔLmax(X)より大きいか否かが判断される。大きいときにはS1602に進んでΔLmax(X)にΔL(X)が設定されてS1603に進む。大きくないときにはS1603に進む。次のS1603ではX軸の防振レンズ位置誤差ΔL(X)がΔLmin(X)より小さいか否かが判断され、小さいときにはS1604でΔLmin(X)にΔL(X)が設定されてS1605に進む。小さくないときにはS1605に進む。S1605でこの処理が終了する。これにより、X軸方向の防振レンズ位置誤差ΔL(X)の最大値、最小値がそれぞれΔLmax(X)、ΔLmin(X)に検出される。
【0080】
S1605から、図16のS1313に進む。S1313では、防振制御におけるモータ4を駆動する駆動dutyが算出される。ここでは、例えば上述のセンタリング制御時に用いた式(数48)で駆動dutyが算出される。次にS1314で防振調整であるか否かが判断され、防振調整でないときにはS1315に進んでS1313で算出された駆動dutyでモータ4が駆動される。防振調整のときには(モータ4が駆動されずに)S1316に進み、本防振制御タイマ割込み処理が終了する。
【0081】
(2)通信工具側の処理
次に、通信工具側で行う防振レンズシフトメカ系の不良チェック、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲイン調整及び検出角度ズレ調整、及び防振制御性の総合的なチェックについて、図7〜図9に基づき説明する。
先ず、S601で本処理が開始されると、S601で従来より公知の方法によりカメラが通信モードに設定される。この設定により、図10に示すCPU1が行うカメラの通信モード処理が開始される。次のS602からS607までの処理により、防振レンズシフトメカ系の不良チェックが行われる。S602で、防振レンズリセット命令がCPU1に指示される。これにより、カメラのCPU1は、図10のS704で防振レンズ13を所定のリセット位置に駆動する。次のS603で防振レンズセンタリング命令が行われ、防振レンズ13は中央位置LSに駆動される。次のS604ではデータ読み込み命令を用いて、S603による防振レンズセンタリング時に検出した、X軸,Y軸の防振レンズ速度の最大値VRmax(X),VRmax(Y)と、センタリング異常データ(防振レンズセンタリングタイムアップ異常FLG、X軸,Y軸防振レンズ動き具合異常FLG、X軸,Y軸防振レンズ位置検出異常FLG)がCPU1から読み込まれる。
【0082】
次に、S605では、VRmax(X)が所定値以上か否かが判断され、所定値以上のときにはS606に進み、所定値以上でないときにはS646(図9)に進んでメカ不良と判断され、S647に進む。S606ではVRmax(Y)が所定値以上か否かが判断され、所定値以上のときにはS607に進み、所定値以上でないときには上述と同様にS646に進んでメカ不良と判断される。S607ではセンタリング異常か否かが、前記センタリング異常データにより判断される。センタリング異常でないとき、すなわちこれらの異常FLGが1つもセットされていないときにはS608に進む。前記異常FLGが1つでもセットされているときには、上述と同様にS646に進んでメカ不良と判断される。
【0083】
以上のS603からS607、S646の処理により、防振レンズ13をセンタリングさせ、センタリング制御中に防振レンズ速度の最大値や、各異常を検出することで、何らかの原因により、防振レンズ13のX軸,Y軸方向の動きが悪いときや、X軸,Y軸レンズ位置検出回路6,7の出力が異常であるときに、防振レンズシフトメカ系が不良であることをチェックすることが可能となる。
【0084】
次のS608からS624までの処理により、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲイン調整,検出角度ズレ調整が行われる。
S608のタイミングにおけるCPU1の内部で持っているゲイン調整値A1、A2は、図10のS700で設定された初期値A0であり、角度ズレ調整値Δα、Δβは、図10のS702で書き込まれた初期値0である。
先ずS608でX軸方向の加振が開始される。これにより、加振台18が振動される。ここでの振動は、X軸方向に所定の角度振幅を有する正弦波状の振動である。次に、S609で防振調整開始命令がCPU1に指令される。S609により、CPU1は図10のS709により防振制御開始処理を実行する。これにより、図16に示す防振制御タイマ割込み処理による防振レンズ目標位置の最大,最小値LCmax(X),LCmax(Y),LCmin(X),LCmin(Y)と、LCmax(X),LCmax(Y)検出時のそれぞれのLC(Y),LC(X)の符号が検出され続ける。また、図16のS1314により防振調整であると判断されるのでモータは駆動されず、防振レンズ13は、駆動されない。
【0085】
次に、S610で所定時間ウエイトされ、次のS611で防振調整終了命令がCPU1に指令される。これによりCPU1は、図10のS712で防振制御タイマ割込み処理を禁止し、防振制御を終了する。次のS612でX軸方向の加振台18による加振動作が終了される。ここで、S610でウエイトする時間は、S609からS611の間に、防振レンズ目標位置の最大値,最小値が少なくとも1回ずつは検出することができる時間である。
次のS613では、データ読み込み命令を用いて、CPU1で検出されているLCmax(X),LCmax(Y),LCmin(X),LCmin(Y)と、LCmax(X),LCmax(Y)検出時のそれぞれのLC(Y),LC(X)の符号がCPU1から読み込まれる。そして次のS614で、式(数37),(数38),(数39)を用いて、X軸,Y軸の防振レンズ目標位置の全幅a,b、及びcが算出される。
【0086】
次に図8のS615に進む。S615では加振台18が振動される。ここでの振動は、Y軸方向に所定の角度振幅を有する正弦波状の振動である。次のS616で防振調整開始命令がCPU1に指令される。S616により、CPU1は図10のS709により防振制御開始処理を実行する。これにより、図16に示す防振制御タイマ割込み処理による防振レンズ目標位置の最大,最小値LCmax(X),LCmax(Y),LCmin(X),LCmin(Y)と、LCmax(X),LCmax(Y)検出時のそれぞれのLC(Y),LC(X)の符号が検出され続ける。また、図16のS1314で防振調整であると判断されないのでモータは駆動はされず防振レンズ13は駆動されない。
【0087】
次に、S617で所定時間ウエイトされ、S618で防振調整終了命令がCPU1になされる。これによりCPU1は図10のS712で防振制御タイマ割込み処理を禁止し、防振制御を終了する。次のS619でY軸方向の加振台18による加振動作が終了される。ここで、S617でウエイトする時間は、S616からS618の間に、防振レンズ目標位置の最大値,最小値が少なくとも1回ずつは検出することができる時間である。
次のS620では、データ読み込み命令を用いて、CPU1で検出されているLCmax(X),LCmax(Y),LCmin(X),LCmin(Y)と、LCmax(X),LCmax(Y)検出時のそれぞれのLC(Y),LC(X)の符号がCPU1から読み込まれる。そして次のS621で、式(数40),(数41),(数42)を用いて、X軸,Y軸の防振レンズ目標位置の全幅d,e、及びfが算出される。
【0088】
次のS622では、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力のゲイン調整値A1,A2が、式(数43),(数44)を用いて算出される。そしてS623で、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の検出角度ズレ調整値Δα,Δβが式(数45),(数46)を用いて算出される。次にS624でE2PROM書き込み命令がなされ、上記のゲイン調整値A1,A2、検出角度ズレ調整値Δα,ΔβがE2PROMに書き込まれる。
以上のS608からS624までの処理により、ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲイン調整、及び検出角度ズレ調整を行うことが可能となる。
【0089】
次のS625以降の処理により、防振制御性の総合的なチェックが行われる。先ず、S625のタイミングにおけるCPU1内部で持っているゲイン調整値A1,A2は、図10のS700で設定された初期値A0であり、角度ズレ調整値Δα、Δβは、図10のS702で書き込まれた初期値0である。S625ではデータ書き込み命令がなされ、S622で算出されたA1,A2の1/mの値がCPU1内のゲイン調整値A1,A2に書き込まれ、さらに、S623で算出されたΔα,ΔβがCPU1内の角度ズレ調整値Δα,Δβに書き込まれて、S626に進む。
【0090】
次に、S626で加振台18が振動される。ここでの振動は、X軸方向に所定の角度振幅を有する正弦波状の振動である。次のS627で防振制御開始命令がCPU1に指令される。S627の指令により、CPU1は、図10のS709により防振制御開始処理を実行する。さらに、図16に示す防振制御タイマ割込み処理において、防振レンズ位置の最大,最小値LRmax(X),LRmax(Y),LRmin(X),LRmin(Y)と、防振レンズの制御誤差の最大値,最小値ΔLmax(X),ΔLmax(Y),ΔLmin(X),ΔLmin(Y)が検出され続ける。また、図16のS1314により防振調整でないと判断され、上述のゲイン調整,角度ズレ調整時とは異なりモータが駆動されて防振レンズ13が制御される。
【0091】
次に、S628で所定時間ウエイトされ、S629で防振制御終了命令がなされ、CPU1は図10のS712で防振制御タイマ割込み処理を禁止し、防振制御を終了する。次にS630で加振台18により加振動作が終了される。ここで、S628でウエイトする時間は、S627からS629までの間に、少なくとも加振台18の加振周期が1周期以上となる時間である。これは、防振レンズ13は正弦波状に制御されるが、その1周期の全てのタイミングで制御性が良いか否かをチェックするためである。S630から、図9のS631に進む。S631では、データ読み込み命令を用いてCPU1で検出されているX軸の防振レンズ位置の最大値,最小値LRmax(X),LRmin(X)と、X軸の防振レンズ位置誤差の最大値,最小値ΔLmax(X),ΔLmin(X)がCPU1から読み込まれ、S632で以下の式(数49)を用いて実際に制御された防振レンズ13のX軸方向の振幅gが算出される。
(数49) g=LRmax(X)−LRmin(X)
【0092】
次のS633では、ゲイン調整後に得たい防振レンズ13のX軸方向の全振幅L01の1/mの値からS632で得られた実際の防振レンズ13のX軸方向の全振幅gを減算した値の絶対値が、所定値以下であるか否かが判断される。所定値以下のときにはS634に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。
【0093】
ここで、S625において、ヨー方向の防振ゲイン調整値A1を、S622で求めた調整値に対して1/mにしているので、防振レンズ13の実際に得られた振幅gがL01の1/mになれば、ゲイン調整が精度良く行われ、かつ防振制御性が良いことになる。しかし、何らかの原因でゲイン調整が精度良く行われなかった場合、又は、防振レンズシフトメカ系の動きが良くないために実際に制御された防振レンズ13の全振幅が理論通りに得られなかった場合には、このS633の判断により不良のチェックを行える。
【0094】
次に、S634ではX軸方向の防振レンズ位置誤差の最大値ΔLmax(X)の絶対値が所定値以下であるか否かが判断され、所定値以下のときにはS635に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。さらにS635ではX軸方向の防振レンズ位置誤差の最小値ΔLmin(X)の絶対値が所定値以下であるか否かが判断され、所定値以下のときにはS636に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。
【0095】
このS634、S635での処理は防振レンズ13のX軸方向の制御性のチェックを行っている。上述の防振制御タイマ割込み処理において、防振レンズ目標位置LC(X)と実際に制御された防振レンズ位置LR(X)との差である防振レンズ位置誤差ΔL(X)が算出され、この最大値ΔLmax(X),最小値ΔLmin(X)が検出され、S634,S635でΔLmax(X),ΔLmin(X)の絶対値が小さいときは制御性は良く、反対に大きいときは制御性が悪いと判断することができる。
【0096】
次のS636からの処理はY軸方向の防振制御性のチェックを行う処理である。先ずS636で加振台18が振動される。ここでの振動は、Y軸方向に所定の角度振幅を有する正弦波状の振動である。次のS637で防振制御開始命令がCPU1に指令される。S637の指令により、CPU1は、図10のS709により防振制御開始処理を実行する。さらに、図16に示す防振制御タイマ割込み処理において、防振レンズ位置の最大,最小値LRmax(X),LRmax(Y),LRmin(X),LRmin(Y)と、防振レンズの制御誤差の最大値,最小値ΔLmax(X),ΔLmax(Y),ΔLmin(X),ΔLmin(Y)が検出され続ける。また、図16のS1314により防振調整でないと判断され、モータが駆動されて防振レンズ13が制御される。
【0097】
次に、S638で所定時間ウエイトされ、S639で防振制御終了命令がなされ、CPU1は図10のS712で防振制御タイマ割込み処理を禁止し、防振制御を終了する。次にS640で加振台18により加振動作が終了される。ここで、S638でウエイトする時間は、S637からS639までの間に、少なくとも加振台18の加振周期が1周期以上となる時間である。このようにするのは、S628でのウエイトする時間と同様の理由による。次のS641では、データ読み込み命令を用いてCPU1で検出されているY軸の防振レンズ位置の最大値,最小値LRmax(Y),LRmin(Y)と、Y軸の防振レンズ位置誤差の最大値,最小値ΔLmax(Y),ΔLmin(Y)がCPU1から読み込まれ、S642で以下の式(数50)を用いて実際に制御された防振レンズ13のY軸方向の振幅hが算出される。
(数50) h=LRmax(Y)−LRmin(Y)
【0098】
次のS643では、ゲイン調整後に得たい防振レンズ13のY軸方向の全振幅L02の1/mの値からS642で得られた実際の防振レンズ13のY軸方向の全振幅hを減算してた値の絶対値が、所定値以下であるか否かが判断される。所定値以下のときにはS644に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。
ここで、S643において、上述のような判定を行うのは、S633と同様の理由による。
【0099】
次に、S644ではY軸方向の防振レンズ位置誤差の最大値ΔLmax(Y)の絶対値が所定値以下であるか否かが判断され、所定値以下のときにはS645に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。さらにS645ではY軸方向の防振レンズ位置誤差の最小値ΔLmin(Y)の絶対値が所定値以下であるか否かが判断され、所定値以下のときにはS647に進み、所定値以下でないときにはS646に進んで防振レンズシフトメカ系の不良、又は調整不良と判断されS647に進む。
【0100】
このS644、S645での処理は防振レンズ13のY軸方向の制御性のチェックを行っている。上述の防振制御タイマ割込み処理において、防振レンズ目標位置LC(Y)と実際に制御された防振レンズ位置LR(Y)との差である防振レンズ位置誤差ΔL(Y)が算出され、この最大値ΔLmax(Y),最小値ΔLmin(Y)が検出され、S644,S645でΔLmax(Y),ΔLmin(Y)の絶対値が小さいときは制御性は良く、反対に大きいときは制御性が悪いと判断することができる。
【0101】
次に、S647では防振レンズリセット命令がCPU1に指令され、CPU1は、図10のS704で防振レンズ13を所定のリセット位置に駆動する。次に、S648で通信モード解除命令がCPU1に指令され、カメラは通信モードから解除される。そして、S649で通信工具調整処理が終了する。
【0102】
なお、S625でゲイン調整値A1,A2をそれぞれ1/mに設定しているのは以下の理由による。通常、ゲイン調整、角度ズレ調整時にはヨー,ピッチ角速度検出回路8,9の出力を大きくしてダイナミックレンジをかせぐことで調整精度を向上させるようにする。よって、加振台18の加振角度も大きくなる。この場合に、この加振角度のままで上述のような防振制御性のチェックを行ったときには、防振レンズシフトメカ系の駆動能力を超えて防振レンズ13を制御しなければならなかったり、又は、防振レンズ13のシフト範囲を超えてしまうことがある。
【0103】
また、ゲイン調整、角度ズレ調整を行う角度に対して、通常のカメラを使用するユーザの手振れの角度範囲又は角速度は、これに比べて小さいものである。従って、この防振制御性のチェック時のみ、加振台18の加振角度をこれに合わせて小さく設定しても良い。しかし、メカ的に加振台18の加振角度を2段階に設定することは容易ではない。そこで、使用者が、通常のカメラの使用時に生じる手振れの角度範囲、又は角速度範囲になるようにmの値を設定し、現実的な防振制御性のチェックを行うようにしている。mの値を可変して、このような防振制御性のチェックを行えば、より精度の良いチェックが可能ある。一方、加振台18の加振角度を複数段階に設定する等、メカ的に行うのは容易ではない。
【0104】
次に、カメラが使用者により使用されるときの処理について説明する。図20は、本発明によるカメラの半押し処理の一実施例を示すフローチャートである。図20に示す処理は、カメラの半押しSW16がオンされたときに行われる処理である。先ずS1700で処理が開始されると、次のS1701でゲイン調整値A1,A2がE2PROMから読み込まれる。さらにS1702では角度ズレ調整値Δα,ΔβがE2PROMから読み込まれる。
次のS1703では、全押しSW17がオンされたか否かが判断され、オンのときにはS1706に進む。一方、オフのときにはS1704に進んで半押しSW16がオンか否かが判断される。ここで、オンのときにはS1703に戻り、オフのときにはS1705に進んでこの処理が終了する。
【0105】
S1706では、上述の防振レンズセンタリング処理(図12)が行われ、防振レンズ13がX軸,Y軸方向のそれぞれの中央位置に駆動される。次のS1707では防振制御開始処理(図13)が行われる。従って、ここでは防振制御タイマ割込み処理(図16)が許可されることで防振制御が開始される。
次のS1708では、シャッタが開閉されて露光処理が行われる。この露光処理が終了すると、S1709で防振制御タイマ割込みが禁止されて防振制御が終了する。また、モータ4,5が所定時間ショートブレーキにされ、防振レンズ13が停止される。次のS1710では防振レンズリセット処理(図11)により防振レンズ13がリセット位置に駆動される。そしてS1711に進み、本半押し処理が終了する。
【0106】
S1707で防振制御が開始されてから、S1708での露光中を含めてS1709で防振制御が終了するまでの間の防振制御タイマ割込みでは、S1701,S1702でゲイン調整値A1,A2、角度ズレ調整値Δα,ΔβがE2PROMから読み込まれ、S1306においてゲインばらつきの補正が行われ、S1307において角度ズレが補正された出力で防振制御が行われる。これにより、精度の良い防振制御が行われる。
【0107】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、実施例では角度ずれの量を電気的に検出し、カメラのE2PROMにその調整値を書き込むことで電気的に角度ずれの補正を行ったが、角度ずれ量をこの方法により検出し、その角度ずれの調整を、角速度センサ又は角速度検出回路をメカ的に角度調整することで行うこともできる。
また、モータ4,5の速度制御は、PWM制御について説明したが、モータ4,5の制御方法は、これに限定されるものではない。
さらにまた、実施例では撮影光学系の光軸を変化させる方法として撮影光学系の一部(防振レンズ13)をシフトする方式で説明したが、これ以外にもバリアングルプリズム等を使用しても良く、あるいはモータの代わりにボイスコイル等の他のアクチュエータを使用することもできる。
【0108】
本発明の実施例では、通信工具側がカメラの振れ補正機能の検査や調整を行うようにしたが、これに限らず、例えばカメラのCPU1にこれらの検査機能や調整機能を具備すれば、カメラ自体で自己診断をすることができるようになる。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、撮影光学系の光軸の変化方向である第1,第2の方向と、第1,第2の角速度検出部による角速度の検出方向との第1,第2の角度ズレ量を演算して、両者のずれを調整するようにしたので、カメラの組立時における第1,第2の角速度検出部の取り付け誤差等の影響をうけることなく、より高精度な振れ補正を行うことができる。
さらに、第1,第2の角速度検出部の出力値の積分若しくは積算値に基づき、角度ズレを調整した場合には、この角度ズレ調整時に与える正弦波状振動の周波数変動、又はこの正弦波状振動に上乗せされた不要な高周波ノイズによって調整の精度が落ちるようなことも防止することができ、さらに精度の良い角度ズレ調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるカメラ側部分,通信工具側部分,加振台部分の構成を示す図である。
【図2】ヨー,ピッチ角速度検出回路8,9のゲインのばらつきを模式的に示した図である。
【図3】角度ズレを説明するための図である。
【図4】本発明によるゲイン調整、検出角度ずれ調整の様子を示す図である。
【図5】本発明によるゲイン調整、検出角度ずれ調整の様子を示す図である。
【図6】防振レンズ13のX軸方向のセンタリング制御の様子を説明する図である。
【図7】通信工具15が行う通信調整処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図8】図7に続くフローチャートである。
【図9】図8に続くフローチャートである。
【図10】カメラのCPU1が行う通信モード処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図11】図10のS704の防振レンズリセット処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図12】図10のS706の防振レンズセンタリング処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図13】図10のS709の防振制御開始処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図14】防振レンズリセットタイマ割込み処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図15】防振レンズセンタリングタイマ割込み処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図16】防振制御タイマ割り込み処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図17】防振レンズ位置max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図18】防振レンズ目標位置max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図19】防振レンズ位置誤差max、min値の検出処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図20】本発明によるカメラの半押し処理の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 CPU
2,3 X軸,Y軸モータ駆動回路
4,5 X軸,Y軸用モータ
6,7 X軸,Y軸レンズ位置検出回路
8,9 ヨー,ピッチ角速度検出回路
10 E2PROM
11,12,13,14 撮影レンズ(13 防振レンズ)
15 通信工具
16 半押しSW
17 全押しSW
18 加振台
Claims (9)
- 振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、
前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、
前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部と、
前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部と
を備える振れ補正カメラの振れ補正機能を調整する調整装置であって、
前記振れ補正カメラと情報の授受を行う情報授受部と、
前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に所定の角速度振幅又は角度振幅を有する正弦波状振動を与える振動付与部と、
前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に前記正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値に基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を演算する演算部と、
前記演算部による前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を、前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込む書き込み部と
を備えることを特徴とする振れ補正カメラの調整装置。 - 請求項1において、
前記演算部は、前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値の最大値及び最小値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算する
ことを特徴とする振れ補正カメラの調整装置。 - 振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、
前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、
前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部と
を備えた振れ補正カメラにおいて、
前記振れ補正カメラの前記第1の方向に所定の角速度振幅を有する第1の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第1の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第2の出力値、及び前記振れ補正カメラの前記第2の方向に所定の角速度振幅を有する第2の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第3の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第4の出力値とに基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量が演算され、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれが調整される
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 請求項3において、さらに、
前記振れ補正カメラは、前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部とを備え、
前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれの調整は、前記振れ補正カメラの外部の調整装置により行われ、
前記調整装置は、前記第1の正弦波状振動、及び、前記第2の正弦波振動を前記振れ補正カメラに与え、前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値及び前記第4の出力値を前記振れ補正カメラから読み込み、
前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値及び前記第4の出力値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算し、前記演算された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込む
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 請求項3乃至請求項4において、
前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量は、前記第1の出力値、前記第2の出力値、前記第3の出力値、及び前記4の出力値のそれぞれの最大値及び最小値に基づき、演算される
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、
前記第1の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部と、
前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第2の角速度検出部とを備えた振れ補正カメラにおいて、
前記振れ補正カメラの前記第1の方向に所定の角度振幅を有する第1の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第1の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第2の出力値をそれぞれ積分又は積算した第1の演算値並びに第2の演算値と、前記振れ補正カメラの前記第2の方向に所定の角度振幅を有する第2の正弦波状振動が与えられたときの前記第1の角速度検出部の第3の出力値並びに前記第2の角速度検出部の第4の出力値をそれぞれ積分又は積算した第3の演算値並びに第4の演算値とに基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量が演算され、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれが調整される
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 請求項6において、さらに、
前記振れ補正カメラは、前記第1の方向と前記第1の角速度検出手段の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出手段の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを補正する補正部とを備え、
前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれの調整は、前記振れ補正カメラの外部の調整装置により行われ、
前記調整装置は、前記第1の正弦波状振動、及び、前記第2の正弦波振動を前記振れ補正カメラに与え、前記第1の演算値、前記第2の演算値、前記第3の演算値及び前記第4の演算値を前記振れ補正カメラから読み込み、
前記第1の演算値、前記第2の演算値、前記第3の演算値及び前記第4の演算値に基づき、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を演算し、前記演算された前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量を前記振れ補正カメラの前記記憶部に書き込む
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 請求項6乃至請求項7において、
前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量は、前記第1の演算値、前記第2の演算値、前記第3の演算値、及び前記第4の演算値のそれぞれの最大値及び最小値に基づき、演算される
ことを特徴とする振れ補正カメラ。 - 振動により発生する振れを補正するために、撮影光学系の光軸を光軸方向に略垂直な第1の方向及び第2の方向に変化させる光軸変化部と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に略一致する方向の振れにより作用する角速度を検出する第1の角速度検出部及び第2の角速度検出部と
を備える振れ補正カメラの振れ補正機能を調整する調整方法であって、
前記振れ補正カメラの前記第1の方向及び前記第2の方向に所定の角速度振幅又は角度振幅を有する正弦波状振動を与え、このときの前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の出力値又はその出力値を積分若しくは積算した演算値に基づき、前記第1の方向と前記第1の角速度検出部の角速度の検出方向との第1の角度ズレ量、及び前記第2の方向と前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向との第2の角度ズレ量を演算し、前記第1の角度ズレ量及び前記第2の角度ズレ量に基づき、それぞれ前記第1の角速度検出部及び前記第2の角速度検出部の角速度の検出方向のずれを調整する
ことを特徴とする調整方法。
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