JP3551288B2 - 水電気分解装置及び水電気分解方法 - Google Patents

水電気分解装置及び水電気分解方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、電気分解により、殺菌力の強い酸性水やアルカリ性水又は飲料に適する弱アルカリ性水を製造するための水電気分解装置、及びこの水電気分解装置を用いて水を電気分解する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、水を電気分解して得られる強酸性で高い酸化還元電位を呈する水や、強アルカリ性で低い酸化還元電位を呈する水は、大腸菌等に対して強力な殺菌効果を有する点で大いに注目されている。また、弱アルカリ性の水は、飲んで美味しく、活性酸素を含まないため、飲料に適するアルカリイオン水として市販されている。従来、これらの水は、陰極及び陽極となる電極の中間に隔膜を配置した構造の水電気分解装置を用いて水を電気分解することにより製造されている。この水電気分解装置を用いて水を電気分解する場合、酸性あるいはアルカリ性の水を得ようとするとき、電気分解の原理で、目的とは反対の性質を有する水も製造されることになる。すなわち、酸性水を得ようとすると、アルカリ水が同時に製造されるし、逆も同じである。
【0003】
従来の方法の電解槽の構造は、隔膜で仕切って2つの部屋を設け、それぞれの部屋に電極を設置する方法であるために、目的の水例えば酸性水を一方の部屋で製造すると、反対側の部屋には反対の水質の水例えばアルカリ水が製造される。更に、従来の方法では、電気分解の際に電解質を添加する場合には、この電解質を電解槽に供給する原水に添加するので、両方の部屋に入る水質は同一であるため、電解槽の容積は目的とする水例えば酸性水についても、目的としない水例えばアルカリについてもほぼ同じにする必要があり、またそれぞれの水の製造量もほぼ同程度になる。したがって、電解槽の設計上、目的とする水の倍以上の電解槽容積が必要で、目的以外の水の循環装置が必要となり、構造が複雑になつて製造コストがかさむし、更に目的以外の不要な水を排水するなり、或は利用手段を講じる処理に余計な手間がかかる問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決すべく、目的の性質を持った水例えば酸性水或はアルカリ水のみを簡単な装置で効率良く製造できる水電気分解装置及び水電気分解方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成させるべく、任意の容器の中で、水を電気分解してpHや酸化還元電位を変化させて、酸性で酸化還元電位がプラスを呈する水、或はアルカリ性で酸化還元電位がマイナスを呈する水を製造する装置について種々究明した結果、電解槽を隔膜で仕切って電気分解し、ほぼ同量の酸性やアルカリ水を製造する従来の方式とは異なり、電極と隔膜とを装着した容器に電解質を添加した水を入れ、この容器を水の中に挿入して電気分解する方式によって、目的の性質を持った水のみを製造できることを知見し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、壁面の全部又は一部を電極板で構成した容器及び該容器内に設置した電極からなり、上記電極板は、外側から順次に、多数の孔を有するシート状の電極及びシート状の隔膜を積層した電極板であることを特徴とする水電気分解装置である〔請求項1〕。また本発明は壁面の全部又は一部を電極板で構成した容器からなり、上記電極板は、外側から順次に、多数の孔を有するシート状の電極、シート状の隔膜及び多数の孔を有するシート状の電極を積層した電極板であることを特徴とする水電気分解装置である〔請求項2〕。上記の水電気分解装置において、多数の孔を有するシート状の電極とシート状の隔膜との間に、多数の孔を有するシート状の非導電性材料を上記電極の孔を塞がないように配置してもよい〔請求項3〕。上記の容器の形状は円筒状が好ましい〔請求項4〕。また上記の隔膜は、陰イオン交換膜でもよいし〔請求項5〕、また陽イオン交換膜でもよい〔請求項6〕。
【0007】
また、本発明は上記の水電気分解装置を用いて水を電気分解する方法にかかわる。すなわち、上記の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極及び容器の内側の電極に直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法である〔請求項7〕。また、請求項5記載の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極を陽極にし、容器の内側の電極を陰極にして直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法〔請求項8〕である。また本発明は、請求項6記載の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極を陰極にし、容器の内側の電極を陽極にして直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法〔請求項9〕である。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、請求項1記載の発明について説明する。図1の(イ)図は、請求項1発明の水電気分解装置の一例の断面図である。aは円筒状の容器である。1は容器aの底部、2は容器aの上部で、金属製でも合成樹脂製でもよい。3は容器aの中間部の壁面を構成する電極板である。この電極板3は多数の孔を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5との積層体である。図1の(ロ)図はその電極板3の一部を拡大した斜視図である。この電極板3は容器aの底部1と容器aの上部2と接着固定され一体になっており、この一体化によって容器aが構成されている。6はシート状の電極4に穿設した孔である。7は容器aの中に配置された丸棒状の電極で容器aの略中央に配置してある。この電極7はシート状にして隔膜の内側に、隔膜に沿って配置してもよい。しかして、本発明の水電気分解装置は、容器aとその中に配置された電極7とからなっている。
【0009】
電極板3を構成するシート状の電極4は、シート状の導電性材料で、例えば銅、鉛、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、金、白金、酸化鉄、ステンレス、炭素繊維やグラファイト等の板である。このシート状電極の厚さは0.01〜5mmであるが、0.01〜5mm程度のチタン板に白金属の金属をメッキしたものが好ましい。このシート状の電極には多数の貫通する孔6が穿孔されている。孔の直径は1〜10mmで開口率は30〜70%が適当である。また、シート状の電極は、上記の導電性材料の線状物をネット状に編んだり、織ったりしたものでもよい。更に枠体に導電性材料の線状物をすだれ状に捲回したものでもよい。
【0010】
また、電極板3を構成するシート状の隔膜5は、通常使用される隔膜としては、例えばポリ弗化ビニル系繊維、アスベスト、グラスウール、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、芳香属ポリアミド繊維等の不織物である。また、例えば骨材にポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等の不織物あるいはポリエチレンスクリーンを用い、膜材に塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル又はポリ弗化ビニリデン或はこれらに酸化チタンを混合したものを用いた隔膜も好ましく使用できる。また特殊な隔膜として、セロファン等の半透膜、更には、陽イオン交換樹脂膜又は陰イオン交換樹脂膜も使用できる。
【0011】
本発明における、容器aの形状は、円筒形でも、断面四角形や断面星型の筒状でもよいが、シート状の電極板3を筒状に丸める方が角張らせるよりも加工し易く、容器aを作り易いので円筒状の容器が好ましい。この容器aは、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5と積層して予めシート状の電極板3を作っておき、この電極板3を容器aの底部1と上部2に取り付けて作成してもよいし、シート状の隔膜5及びシート状の電極4を容器aの底部1と上部2に順次取り付けて作成してもよい。水の電気電導度は低いので、低電圧で電気分解に必要な電流を流すためには、シート状電極4とシート状隔膜5の距離が短い程好ましく、したがって、電極板3の構造は多数の孔を有するシート状電極4とシート状隔膜5が積層配置された構造のものが好ましい。また、容器aの底部1と上部2には必ずしも独立した切り放せる構造でなく、容器aの底部1と上部2とが部分的につながったものでもよい。
【0012】
本発明の水電気分解用電極の容器aの内側に用いる電極7は、例えば銅、鉛、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、金、白金、酸化鉄、ステンレス、炭素繊維やグラファイト等の板や棒を用いてもよいし、それらに白金属の金属をメッキしたものを用いてもよい。
【0013】
また、上記の孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5との間に、多数の孔を穿設したシート状の非導電性材料を介在させてもよい。シート状非導電性材料は、例えばABS樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニール樹脂等の合成樹脂あるいは天然ゴム、SBR、クロロプレンゴム等のエラストマー等のシートである。シート状非導電性材料の厚みは0.01〜3mmが好ましい。孔の直径は1〜10mmが好ましく、開口率は30〜70%が好ましい。そして、シート状電極の孔とシート状非導電性材料の孔とは同じ大きさ、配置にして、孔同士が重なり合うようにするのが好ましく、少なくとも両者を貫通する部分があるようにする。また、シート状電極4の片側面(隔膜と接する面)に塗装により形成させた塗膜層でもよい。この場合は、上記非導電性材料を加熱して溶融したり、溶剤に溶かしたり、分散液にしたり、粉末にしてシート状電極4に、シート状の電極4に穿設した孔6を塞がないように塗布して塗膜層を形成させる。図2の(イ)図は、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5との間に、多数の孔9を穿設したシート状の非導電性材料8を介在させ例を示した断面図である。図2の(ロ)図は、その電極板の一部を拡大した斜視図である。
【0014】
次に、請求項2発明の水電気分解装置について説明する。この請求項2発明は、図1に示した請求項1発明の容器aの中に設置する電極7をシート状のものにし、電極板3と積層一体化させた水電気分解装置の発明である。図3の(イ)図はその一例を示した断面図である。aは円筒状の容器である。1は容器aの底部、2は容器aの上部で、金属製でも合成樹脂製でもよい。10は容器aの中間部の壁面を構成する電極板である。この電極板10は、多数の孔を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5と多数の孔を穿設したシート状の電極11との積層体である。この多数の孔を穿設したシート状の電極11が、請求項1発明における電極7の作用をなす。この多数の孔を穿設したシート状の電極11は、多数の孔を穿設したシート状の電極4と同じものでよい。6はシート状の電極4に穿設した孔である。12はシート状の電極11に穿設した孔である。図3の(ロ)図は、この電極板10の一部を拡大した斜視図である。この電極板10は容器aの底部1と容器aの上部2に接着固定され一体になっており、この一体化によって容器aが構成されている。そして、容器aの一部を構成する電極板10の内側にも電極11を積層したので、この容器自体が本発明の水電気分解装置である。
【0015】
この請求項2発明における容器aの形状は、円筒形でも、断面四角形や断面星型の筒状でもよいが、シート状の電極板10を筒状に丸める方が角張らせるよりも加工し易く、容器aを作り易いので円筒状の容器aが好ましい。この容器aは、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5と孔12を穿設したシート状の電極11とを積層して予めシート状の電極板10を作っておき、この電極板10を容器aの底部1と上部2に取り付けて作成する。また、シート状の電極11、シート状の隔膜5及びシート状の電極4を容器aの底部1と上部2に順次取り付け作成してもよい。本発明で電気分解すべき水は電気電導度は低いので、低電圧で電気分解に必要な電流を流すためには、シート状電極4とシート状隔膜5の間隔が小さい程好ましい。一方、容器a中に入れる溶液は高濃度の電解質を含んだもので電導性が高いので、シート状電極11とシート状隔膜5との間隔を小さくする必要はない。したがって、この容器の内側の電極には、図1、図2に示すように、一般的に使用される棒状又は板状の電極も用いられる。また、容器aの底部1と上部2には必ずしも独立した切り放せる構造でなくてもよく、容器aの底部1と上部2とが部分的につながったものでもよい。
【0016】
また、請求項2記載の発明において、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5との間、及び/又はシート状隔膜5と孔12を穿設したシート状の電極11との間に、多数の孔を穿設した非導電性材料を介在させてもよい。図4の(イ)図はその一例を示した断面図であり、(ロ)図はその電極板の一部を拡大した斜視図である。これらの図は、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5との間に、多数の孔15を穿設したシート状の非導電性材料13を介在させ、また孔12を穿設したシート状の電極11とシート状の隔膜5との間に、多数の孔16を穿設したシート状の非導電性材料14を介在させ例を示したである。
【0017】
請求項2発明における、容器aの底部、容器aの上部、多数の孔を穿孔したシート状電極、シート状隔膜、多数の孔を穿孔したシート状の非導電性材料は、いずれも請求項1発明で述べたと同じものが用いられる。また、孔6を穿設したシート状の電極4とシート状の隔膜5と孔12を穿設したシート状の電極11とを積層した上記の電極板は、特開平8−276184号公報、特願平9−6322号に詳しく説明されている。この電極板を使用すると電極と隔膜の距離が極端に狭くなり、また電気分解時に電極と隔膜との間に気体が発生することがなく、したがって気泡が電流を阻害することが無くなり、大変都合が良い。
【0018】
次に、本発明の水電気分解装置を用いて水を電気分解する方法について説明する。本発明の水電気分解方法は、水電気分解装置の容器aの中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器aを、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器aの外側の電極及び容器aの内側の電極に直流電圧を印荷し電流を流して水電気分解を行う方法である。電気分解すべき水としては、水道水、工業用水、河川水、海水、雨水、純水、超純水などが対象となる。また、電解質としては塩化ナトリウム、塩化カリウムが一般に用いられるが、その他の例えば硝酸銀、塩化マグネシウムなどの金属塩や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ性物質も用いられ、また、硫酸、炭酸、硝酸、硼酸、リン酸、酢酸、乳酸、蓚酸、酒石酸などの酸性物質、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの塩も用いられる。
【0019】
図5は本発明の水電気分解装置を用いた水電気分解方法の一例を示したものである。aは図1に示した容器である。この容器aを備えた水電気分解装置を使用し、この容器aに電解質水溶液として塩化ナトリウム水溶液を用いて水電気分解する例を説明する。この水電気分解装置の容器aの中に高濃度の塩化ナトリウム水溶液を充填し、この容器aを、電気分解すべき水の入った水槽17中に挿入する。次いで、容器aの中の電極7を例えば陰極にし、容器aの壁面の電極板3を構成するシート状電極(図示せず、図1参照)を例えば陽極にして直流電圧を印荷し電流を流して水電気分解を行う。
【0020】
この電気分解により、塩化ナトリウムのナトリウムイオン及び水が解離して生成する水素イオンは陰極側に移動し、塩化ナトリウムの塩素イオン及び水が解離して生成する水酸イオンは陽極側に移動する。そして、陽極面では酸素ガスや塩素ガスなどが生成し、水槽17の中の水の水素イオン濃度(pH)や酸化還元電位が変化する。この例の場合は、水槽17の中の水は、pHが低くなって酸性となり、酸化還元電位が高くなってプラスになる。電気分解すると、電流量に比例して、水溶液中のイオンはそれぞれのイオンが有する固有の輸率に応じて移動する。このとき容器aの外側の電極が陽極で、内側の電極が陰極の場合には、容器a内の塩化ナトリウム(電解質)に含まれている陰イオンすなわち塩素イオンは容器aを出て水槽17に移動する力が働き、陽イオンすなわちナトリウムイオンは容器a内に留まろうとする力が働く。容器aの外側の電極が陰極で、内側の電極が陽極ある場合はその逆である。一方、容器aと水槽17との間には電解質濃度差があるために濃度勾配を平衡に保とうとする力も働く。
【0021】
しかして、隔膜として通常の隔膜を使用した場合には容器a内の塩化ナトリウム(電解質)濃度と水槽17中の塩化ナトリウム濃度との差による拡散現象によって、容器a中の塩化ナトリウムが水槽17の水中に溶出する。そのため、水槽17中の塩化ナトリウム濃度が高くなる。このように水槽17中の電解質濃度が高くなっても構わない使用目的の場合や、電解質の消費量が多くても問題ない場合には、通常の隔膜が使用できる。なお、上記の例は、図1に示した水電気分解装置を用いた例であるが、図2、図3及び図4の水電気分解装置も同様に用いることができる。図3及び図4の場合には、隔膜を挟んだ外側の電極と内側の電極に直流電圧を印荷し電流を流して水電気分解を行う。
【0022】
また、容器aの外側の電極を陽極にし、内側の電極を陰極にして電気分解を行うと、電気分解の際の電流量に比例して、容器a内の塩化ナトリウム(電解質)に含まれている陰イオンすなわち塩素イオンは容器aを出て水槽17に移動するが、容器a内に電気分解に必要な塩素イオン量よりも多い量の塩化ナトリウム(電解質)を入れておくと、容器a内の塩化ナトリウム中の塩素イオンが無くなるまで電気分解を継続することができる。容器aの中では、塩素イオンが減少すると共に水酸イオンが増加し、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質が増加するが、塩素イオンが存在する間は電気分解を継続できる。塩素イオンが不足して来ると、電流を運ぶイオンが不足する結果、電流が流れにくくなってくる。その場合には、容器a内に塩化ナトリウム(電解質)を追加するか、容器a内の塩化ナトリウム(電解質)を新しいものに交換する。これとは逆に、容器aの外側の電極を陰極にし、内側の電極を陽極にして電気分解を行う場合は、容器a内に酸性物質濃度が増加する。
【0023】
ところで、本発明の水電気分解装置において、シート状の隔膜5としてイオン交換膜を使用すると、電解質に含まれるイオンのうち、特定のイオンだけを選択的にイオン交換膜を通過させることが出来るので、製造しようとする目的の水の水質調節が容易となる。隔膜として陰イオン交換膜を使用した例を説明する。例えば図5及び図1において、隔膜5として陰イオン交換膜を使用して構成させた電極板3を用いた水電気分解装置の容器aの中に電解質水溶液として塩化ナトリウム水溶液を入れ、この容器aを電気分解すべき水を溜めた水槽17の中に挿入し、次いで電極板3のシート状電極を陽極とし、容器a中の電極7を陰極として直流電流を流して電気分解をする。この場合には、容器a内の水中に含まれている塩素イオンなどの陰イオンは電気分解とともに陰イオン交換膜を通過して水槽17側に移動するが、陽イオンのナトリウムイオンは透過できず容器a内にとどまる。その結果、水槽17中の水は酸性となり、酸化還元電位値は高くなり、電気分解時間が長くなると、pH値が低い強酸性を呈し、高いプラスの酸化還元電位を持ち、しかもナトリウムイオンを含有しない水が得られる。また、この方法によると容器a内から塩化ナトリウムが溶出しないので、塩化ナトリウムの消費量を抑えることができる。図2、図3及び図4の水電気分解装置も同様に用いることができる。
【0024】
また、上記水槽1内の電気分解されるべき水は、上記の例のようにバッチ式でもよいが、流水式にして連続的に供給し、連続的に排水させるようにしてもよい。pH値が2.7以下で、酸化還元電位が1000mV以上を呈する水は、例えば、病原性大腸菌「O−157」、耐性菌「MRSA」、感染症を引き起こす「レジオネラ菌」、水道水の汚染が問題となっている病原性微生物「クリプトスポリジウム」、植物に有害な「ウドンコ病」、芝の病気をおこす「リゾクトニア」等々、多くの細菌やウイルスに対して有効な殺菌効果を示すことが知られており、農業、畜産向けの殺菌剤として、また医療用の殺菌消毒剤として、或は皮膚疾患の治療薬として使用される。
【0025】
次に、隔膜として陽イオン交換膜を使用した例を説明する。例えば図5及び図1において、隔膜5として陽イオン交換膜を使用して構成させた電極板3を用いた水電気分解装置の容器aの中に電解質水溶液として塩化ナトリウム水溶液を入れ、この容器aを電気分解すべき水を溜めた水槽17の中に挿入し、次いで電極板3のシート状電極を陰極とし、容器a中の電極7を陽極として直流電流を流して電気分解をする。この場合には、容器aの中のナトリウムイオンは、電気分解と共に陽イオン交換膜を透過して水槽17側に移動するが、塩素イオンなどの陰イオンは透過できず容器a内に留まる。その結果、水槽17の中の溶液はアルカリ性となり、酸化還元電位は低くなり、電気分解時間が長くなると、pH値は高い強アルカリ性を呈し、酸化還元電位は低いマイナスを示す水が製造される。図2、図3及び図4の水電気分解装置も同様に用いることができる。
【0026】
また、上記水槽17内の電気分解されるべき水は、上記の例のようにバッチ式でもよいが、流水式にして連続的に供給し、連続的に排水させるようにしてもよい。pH値が11以上で酸化還元電位が−800mV以下を呈する水は、強い還元力を有し、細菌やウイルスに対してある程度の殺菌効果を示すことが知られており、野菜の殺菌等に利用されている例が報告されている。また、pH値が8〜10の弱アルカリ性の水は、アルカリイオン水として、美味しい飲料水として市販されている。また、最近の研究では、アルカリイオン水は、癌発生の原因の一つである活性酸素を含まない健康に良い水として注目されている。さらに、電解質としてカルシウムを含有する乳酸カルシウム等を使用すると、カルシウムイオンがアルカリイオン水の中に溶出し、人体の骨の形成に必要なカルシウムが多く含まれる水を作ることが出来る。
【0027】
図5は、水槽17内でバッチ式に水を電気分解する例であるが、この他、本発明の水電気分解装置は種々の態様で利用できる。例えば、図6は電気分解すべき水を循環させるようにしたものである。すなわち、電解質を満たした水電気分解装置Aの容器aを、電気分解すべき水を溜める水槽18の中に挿入し、電極間に直流電流を流して電気分解を行わせる。それと同時に、水槽18の中の電気分解された水をタンク19の頂部に送り、タンク19内の水をその下部からポンプ20で水槽18の下部に送る。斯くすることによって、水は水槽18とタンク19の間を循環し、所望の水素イオン濃度(pH)、酸化還元電位の水をタンク内19に貯蔵できる。また、図7の如く水道の蛇口に取り付けてもよい。すなわち、水道の蛇口22から出た水を水槽21に溜め、この中に電解質を満たした水電気分解装置Aの容器aを挿入し、電極間に直流電流を流して電気分解を行わせる。水槽21中で水道水は電気分解される。この電気分解した水道水は水槽21から取り出し所望の使用目的23に用いる。
【0028】
【実施例】
実施例1
縦が10cm、横が12cm、面積が120cmで、厚さ0.1mmのチタン板に、直径1.5mmの孔をほぼ全面にわたって開けた。このときの開口率は51%であった。この多数の孔を穿設したチタン板の片面に、厚さ1ミクロンの白金メッキを施し、反対面には非導電性材料であるポリ塩化ビニール樹脂を塗装した。斯くして得たシート状の電極とシート状の非導電材料との積層物のポリ塩化ビニール樹脂塗装膜面に、シート状の陰イオン交換膜(旭化成工業(株)製の「A−201」)を積層して電極板を作成した。
この電極板を、その陰イオン交換膜側を内側にして直径4cmの筒状に巻いた。これを側壁に用いた容器を製作し、該容器の内側にステンレス製の電極を設置した。一方、電気分解させるべき水4リットルを入れたバケツ型の水槽を用意した。上記の容器の中に小サジ1杯程度の食塩と容器を満たす程度の水を入れた。この容器を上記水槽の中に入れた。そして、容器の外側の電極を陽極にし、内側の電極を陰極にして、7.0ボルトの直流電圧を印荷し、7.1アンペアの電流を15分間流して電気分解を行った。水槽中の水のpHの変化、酸化還元電位(ORP、単位mV)の変化を表1に示す。10分間の電気分解で、pHが2.44、酸化還元電位が+1181mVの水が得られた。
【0029】
【表1】
Figure 0003551288
【0030】
実施例2
縦が7cm、横が12cm、面積が84cmで、厚さ0.1mmのチタン板に、直径1.5mmの孔をほぼ全面にわたって開けた。開口率は51%にした。このチタン板の片側面に厚さ1ミクロンの白金メッキを施し、反対面には非導電性材料である塩化ビニール樹脂を塗装した。斯くして得たシート状の電極とシート状の非導電材料との積層物を2枚用意し、それぞれのポリ塩化ビニール樹脂塗装膜面を向い合わせ、その間にシート状の陽イオン交換膜(旭化成工業(株)製の「K−101」)を配置して積層し電極板を作成した。
この電極板を、直径4cmの筒状に巻いた。これを側壁に用いた容器を製作した。該容器を直径4.5cmの外筒の中に挿入し、容器と外筒との隙間を水が流れる構造にした。容器の中に小サジ1杯程度の乳酸カルシウムと容器を満たす程度の水を入れ、容器と外筒との隙間を1.4リットル/分の水道水が流れる様に流量を調節した。そして、該容器の外側の電極を陰極にし、内側の電極を陽極にして電流を流した。電圧は8ボルトに設定し、0.2アンペアの電流を流して電気分解したところ、PH値が8.8の弱アルカリ性で、酸化還元電位が−25mVのアルカリイオン水が得られた。
【0031】
【発明の効果】
本発明の水電気分解装置は、構造が簡素化されており、コストが安く、しかも目的とする水、すなわち酸性水又はアルカリ水を効率的に製造できる。そして、高濃度の電解質溶液を入れる容器を独立させて電気分解装置とし、電気分解させるべき水を入れる容器と切りはなした構造のために、電気分解装置の設計製作がいたって簡単で、小さいものはエンピツの太さのものから、大きいものはドラムカンあるいはそれ以上の大きさのものまで自由に大きさを変えられる利点がある。また、この水電気分解すべき水を入れる水槽も、電極を包む外筒状のものから、バケツ、ポリタンク、風呂桶、ローリー車用タンク、プール等目的とする水の用途に応じて任意に選択できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水電気分解装置の一例の断面図
【図2】本発明の水電気分解装置の他の例の断面図
【図3】本発明の水電気分解装置の他の例の断面図
【図4】本発明の水電気分解装置の他の例の断面図
【図5】本発明の水電気分解装置の使用例の一例を示す断面図
【図6】本発明の水電気分解装置の使用例の他の例を示す断面図
【図7】本発明の水電気分解装置の使用例の他の例を示す断面図
【符号の説明】
a 容器、1 容器の底部、2 容器の上部、3,10 電極板、4,11 シート状電極、5 シート状隔膜、6,12 シート状電極の孔、7 電極、8,13,14 シート状非導電性材料、9,15,16 シート状非導電性材料の孔、17,18,21 水槽、19 タンク、20 ポンプ、22 蛇口

Claims (9)

  1. 壁面の全部又は一部を電極板で構成した容器及び該容器内に設置した電極からなり、上記電極板は、外側から順次に、多数の孔を有するシート状の電極及びシート状の隔膜を積層した電極板であることを特徴とする水電気分解装置。
  2. 壁面の全部又は一部を電極板で構成した容器からなり、上記電極板は、外側から順次に、多数の孔を有するシート状の電極、シート状の隔膜及び多数の孔を有するシート状の電極を積層した電極板であることを特徴とする水電気分解装置。
  3. 多数の孔を有するシート状の電極とシート状の隔膜との間に、多数の孔を有するシート状の非導電性材料を上記電極の孔を塞がないように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の水電気分解装置。
  4. 容器の形状が円筒状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水電気分解装置。
  5. 隔膜が陰イオン交換膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水電気分解装置。
  6. 隔膜が陽イオン交換膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水電気分解装置。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極及び容器の内側の電極に直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法。
  8. 請求項5記載の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極を陽極にし、容器の内側の電極を陰極にして直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法。
  9. 請求項6記載の水電気分解装置の容器の中に高濃度の電解質水溶液を充填し、この電解質水溶液を充填した容器を、電気分解すべき水の中に入れ、次いでこの容器の外側の電極を陰極にし、容器の内側の電極を陽極にして直流電圧を印荷し電流を流すことを特徴とする水電気分解方法。
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