JP3551234B2 - 印刷用紙の面感評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は網点印刷で発生する印刷濃度ムラの原因となる印刷用紙の面感を印刷機や印刷試験機で印刷することなく、白紙の状態で簡易的に評価する新規な面感評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近印刷市場では400線以上の網点線数で印刷される高精細印刷に代表されるように高品質な印刷物によって差別化が図られている。また、現在一般的に使用されている150〜175線での印刷でも品質の高い印刷物が要求されるようになっている。印刷品質を左右する重要な特性に網点印刷部での濃度ムラ(濃淡ムラ)があり、均一な網点印刷を再現するのに濃度ムラを生じると印刷物の美観を著しく損ねるものである。
【0003】
一般に印刷用紙の網点印刷部の濃度ムラを評価する場合、実際に商業用に使用される多色印刷機を用いて得られた印刷物で評価されている。しかし、多色印刷機を用いた評価では結果を得るまでには時間や経費が必要である上に、インキ量・温度・湿し水量など印刷条件が変動することがあり常に標準となる紙と比較して良否を判定する必要がある。
【0004】
また、実機印刷機での結果を予測するために印刷試験機を用いて簡易的に評価される場合もあるが、やはり印刷インキを用いて評価するものであり結果を得るまでには時間・手間を必要とし、さらに印刷試験機では均一な網点印刷は困難でるためベタ印刷で評価されており、実機印刷機の網点印刷での結果と相関が見られないケースもある。
【0005】
印刷用紙で印刷する前の白紙面感を評価する方法(特開平6−222002号公報、特開平8−219886号公報)が考えられているが、これらは白紙での光沢ムラのような面感を測定するものであり、印刷による濃度ムラなど印刷面感とは必ずしも一致しない。
【0006】
また、印刷濃度ムラなど印刷面感を評価する方法としては様々な方法(特開平4−82740号公報、特開平6−222002号公報、特開平8−219886号公報)が考えられているが、これらは印刷物に対して評価を行うものであり白紙の状態で印刷面感を予測、評価する方法ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
印刷機や印刷試験機を用いて印刷することなく、網点印刷での印刷面感の評価を印刷前の白紙の状態で行う新規な印刷用紙の面感評価方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、製版用のリスフィルムから作成された網点フィルムを乳剤面が接するように紙表面に密着させ、網点フィルムと紙で形成される画像により印刷用紙の面感を評価することにより本発明を完成するに至った。この方法により、網点印刷で発生する濃度ムラを紙に印刷することなく評価することができるため、印刷用紙の良否の評価が迅速に行えることに加え、印刷条件の影響を受けず再現性の高い評価が可能となった。また、画像処理装置との組み合わせで定量的な評価も可能であり、リアルタイムな印刷用紙の製品管理が可能となった。
【0009】
本発明を詳細に説明する。
紙が原因となる印刷濃度ムラの要因として、紙の表面の凹凸によるインキ転移の不均一性による濃淡ムラが考えられている。その他、インキや湿し水が印刷紙面で部分的に不均一な吸収をすることによって印刷濃度ムラが生じることが知られており、これはトラッピングムラ、バックトラップムラなどとも呼ばれている。これら表面の凹凸やインキ・湿し水の吸収ムラによる印刷濃度ムラは、要するにインキ転移の不均一性によるものであり網点印刷部とベタ印刷部両方で発生する。
【0010】
本発明者等は市販のA2コート紙について商業用のオフセット枚葉印刷機で詳細に調査したところ、適切な印刷条件下では印刷濃度ムラはベタ印刷部では各サンプルで認められなかったのに対して、網点占有面積率(網点面積率)50%前後のハーフトーンの網点印刷部分においては濃度ムラを生じ、サンプル間の差も見られた。網点印刷部にのみに見られる濃度ムラは、上記のような単純なインキ転移の不均一性では説明ができなかった。
【0011】
カラー印刷物の簡易校正として使用されるケミカルプルーフは、フィルムから紙に着色樹脂を熱転写して作成されるため網点の大きさ・濃度は均一である。上記市販A2コートの印刷物で印刷濃度ムラを発生したサンプルについてはケミカルプルーフでも同様に、ベタ部では濃淡ムラは発生しないが網点部で濃淡ムラが認められた。このことからも網点印刷で見られる濃度ムラがインキ転移の不均一性以外の原因が影響していることを示唆している。
【0012】
ケミカルプルーフで作成された簡易校正印刷物のように網点の大きさ・濃度が均一でも濃淡ムラが認めらることから、発明者らは製版時に使用されるリスフィルムを露光・現像して作製した網点フィルムを白紙面に密着させることによって網点部の濃度ムラ再現の可能性を考えた。そこで、上記市販A2コートのオフセット印刷でPS版作製時に用いた網点フィルムを白紙面に密着させると印刷物と同様の濃淡ムラが網点部にのみに生じることを見出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる網点フィルムはリスフィルムを露光・現像して作製されている。リスフィルムはPETフィルムにハロゲン化銀とゼラチンを主成分とするリス乳剤を塗布したもので、露光・現象によってAg+が還元され、網点は透明フィルム上に黒色の銀粒子の集合体として存在する。
【0014】
網点フィルムの乳剤面が接するように紙表面に密着させると濃淡ムラは顕著に認められるが、乳剤面の反対面を紙に密着させても濃淡ムラはあまり目立たなかった。尚、乳剤面とは、上記リス乳剤が塗布された発色面のことである。
【0015】
網点フィルムは線数80線以上で、ハーフトーン付近の網点面積率50%前後で平網またはチントと呼ばれる一定網点面積率を持つ網点フィルムが濃淡ムラを評価するには適切であった。例えば175線で50%の網点面積率では網点1個の大きさは約100μmである。
【0016】
以上のように微細で規則的なパターンを有する網点フィルムを紙に密着させるだけで印刷物と同様の網点部濃度ムラを再現できる理由を以下に示す。
【0017】
例えばオフセット印刷ではインキは版からブランケットに転写され、さらにブランケットから紙に転写される。版、ブランケット、紙で転写される間にインキが流動性を持つため、版上で形成された網点が紙に転写されるまでに広がりを持つことが知られており、これをドットゲインと一般に呼ばれている。このドットゲインが大きくなると網点部の濃度は高くなる。また、ドットゲインには紙表面での光の拡散など光学的に異なる場合に網点が見掛け上大きく見える光学的ドットゲインの存在が知られている。
【0018】
紙表面には不均一な部分が存在するが、例えば塗工紙の場合には顔料など塗工剤の不均一性、非塗工紙の場合には填料や繊維密度の不均一性を有しており、このような不均一性は光学的な特性の違いにより部分的な光学的ドットゲインの違いを誘発し濃淡ムラを生じると考えられる。光学的なドットゲインは可視光を吸収するものが紙表面に存在することによって生じ、印刷インキだけでなく、ケミカルプルーフのような着色樹脂、さらに網点フィルムの発色面である乳剤面を紙表面に密着させただけで濃淡ムラを発生すると考えられる。
【0019】
紙に網点フィルムなどを密着させることによって生じる濃淡ムラは、目視で官能的に良否の評価も可能であるが、その画像をCCDカメラなどを用いて撮象し、画像処理装置を用いて濃淡ムラを例えば画像の輝度の標準偏差を求めることなどによって数値化し定量的なムラの評価が可能である。
【0020】
【実施例】
以下図面にもとづいて本発明による印刷用紙の網点濃淡ムラの評価法を説明する。
[実施例1]
図1は網点フィルムと印刷用紙の密着状態を示す概略図である。網点フィルム1は乳剤面が測定対象となる印刷用紙2の表面に接するように密着させる。フィルムと紙の密着方法として図1では透明なガラス板3を用いてガラス板の自重で加圧し圧着する簡易的な例を示したが、表面が粗い印刷用紙の場合などでは、静電気発生装置や空気吸引装置を利用する方法などで密着性を高める必要がある。
【0021】
図2は本発明での濃淡ムラを定量的に評価するシステムの一例を示した。網点フィルムと印刷用紙を密着した測定対象物4に光源5で白色光を照射し
、それをCCDカメラ6で受光し、画像解析装置7に画像の濃淡を255階調の輝度データとして記録し、データ処理を行う。
【0022】
取り込む画像の大きさとしては、濃淡ムラが数mm間隔で認められることから2cm×2cm以上の面積が必要である。
【0023】
150線で網点面積率50%の平網の網点フィルムを市販A2コート紙に密着させ、モノクロCCDカメラ(SONY製:XC−77CE)で撮象し、画像処理装置(カールツァイスビジョン製:IBAS KS400)により得られた画像および画像の全画素の輝度の標準偏差の例を図3に示す。画像の大きさは5cm×5cmで、画像の1画素当たりの大きさは約200μmで濃淡ムラを捉えるには十分な大きさで行った。サンプルAはBに比べ画素の輝度標準偏差が大きく、画像としても濃淡ムラが目立っていることがわかる。サンプルAは印刷物の網点部で濃度ムラが顕著に見られた印刷面感の劣る印刷用紙であり、サンプルBは濃度ムラが殆ど見られなかった印刷面感の良好な印刷用紙である。このように網点フィルムを白紙に密着しただけで印刷濃度ムラに類似した濃淡ムラを生じることがわかった。
[応用例1]
図2のシステムでは印刷物の濃度ムラも同様に評価できる。オフセット4色印刷機(ローランドR304)を用いて50%平網の印刷を市販A2コート紙(84.9g/m2:7種類、127.9g/m2:7種類)の表裏に行い、網点印刷部のムラを図2のシステムを用いて上記手法で数値評価した。また、印刷評価した紙と同じ白紙に50%平網の網点フィルムを密着させて生じる濃淡ムラを図2のシステムを用いて同様に数値評価し、印刷物の濃度ムラの数値との関係を調べた結果を図4に示す。両者に高い相関が認められた。
【0024】
【発明の効果】
本発明では印刷機や印刷試験機を用いて印刷することなく、印刷品質に深く関与する網点印刷で生じる印刷濃度ムラを予測することができ、印刷用紙の良否の判定を迅速で簡易的かつ再現よく行うことが可能となる。また、画像処理装置との組み合わせで定量的な評価も可能でリアルタイムな印刷用紙の製品管理にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】網点フィルムと印刷用紙の密着状態の構成図
【図2】本発明を利用した網点濃度ムラの定量評価システムの説明図
【図3】図2のシステムを用いて測定した網点フィルムと紙を密着させて生じる濃淡ムラの画像で画像aは印刷物の網点濃度ムラが目立った紙、画像bはムラが目立たなかった紙
【図4】図2のシステムを用いて測定した印刷物の網点部画像の輝度標準偏差に対して同じ紙に網点フィルムを密着させて得られた網点画像の輝度標準偏差との相関図
【符号の説明】
1:網点フィルム、2:印刷用紙、3:ガラス板、4:印刷用紙に網点フィルムを密着させた測定用サンプル、5:光源、6:CCDカメラ、7:画像解析装置
Claims (1)
- 製版用のリスフィルムから作成された網点フィルムを乳剤面が接するように紙表面に密着させ、網点フィルムと紙で形成される画像により印刷用紙の面感を評価する方法。
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