JP3550953B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,非水電池用封口板の、とくにその防爆部分の安全弁構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,機器,パソコン等のコードレス化,ポータブル化に伴いその駆動用電源である電池に対し,小型,軽量,高エネルギー密度化の要望が強まっている。特にリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池は高エネルギー密度を有する電池であり次世代の主力電池として期待され,その潜在的市場規模も大きい。
【0003】
また形状としては円筒形に加え、通信機の薄型化,あるいはスペースの有効利用の観点から角薄型の要望が高まっている。
【0004】
リチウム金属やリチウムを吸蔵、放出可能な炭素材料を負極として使用する非水電解液二次電池は,短絡・過充電・逆充電等の場合電解液や活物質の分解により電池内でガスが発生し蓄積され電池内圧が急激に上昇することがあった。
【0005】
このような電池の急激な内圧上昇を未然に防止するために、特開平2−112151号公報には内圧の上昇に伴って変形する防爆弁が備えられ、内圧が所定値に達した際に防爆弁が破断して電池内のガスが電池外部へ放出される防爆構造が示されている。
【0006】
また,防爆構造として特開平6−16312号公報や特開平5−82113号公報には、蓋板の一部に開口部を設け、この開口部を被覆するように金属薄板を接合するとともに、この蓋板の上部に切り刃を有するキャップ状端子板を配するものが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の電池では蓋板の上部に端子板を配して防爆部分、すなわち安全弁を構成しているので、防爆部分の構造やその製造工程が複雑になっていた。また、薄板と蓋板とを水平面になるように配するので電池内圧を受けた場合、薄板が変形しにくく、変形部分が切り刃によって破断されないと所定の電池内圧に達しても防爆弁が作動しないことがあった。
【0008】
さらに、非水電解液二次電池の小型、軽量化が進む中で封口板等の材質にアルミニウム等が用いられてきているが、材質によっては防爆部分に電解液の影響により腐食が起こるという問題が生じていた。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するものであり、非水電解液二次電池の防爆部分の作動が的確であり、長期間腐食の問題なく使用できる封口板を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために,本発明の非水電解液二次電池は,封口板として平板状蓋板の下面に金属箔を圧着したクラッド板を用い,安全弁は蓋板に設けられた穴部とその下部を被覆する金属箔によって構成されており,電池内圧上昇時に安全弁が的確に作動するように穴部内の金属箔の形状を凸状に設定するものである。
【0011】
また,安全弁を構成する金属箔の腐食を防止するために前記金属箔に有機系防食剤を塗布するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、蓋板の穴部と金属箔によって構成された安全弁において、穴部内の金属箔を上方に向かって凸状に湾曲させて、内圧上昇時に的確に作動させるものであり、とくに小型、軽量で安全弁を簡易構造にした電池に適用する場合に好ましい。
【0013】
すなわち、蓋板と金属箔の材質がアルミニウム製の場合が好ましく、さらに端子部分はリベットを蓋板に挿入して構成するとともに蓋板とリベットを樹脂によって絶縁した薄型の角型電池が良い。また、ケースと蓋板とはレーザー溶接していても良い。
【0014】
また、蓋板の安全弁用穴部内にある金属箔に有機系防食剤を塗布することにより、長期間、電池を使用した際も電解液による金属箔の腐食を防止することができるものであり、安全弁用金属箔が電解液に直接触れることの多い、簡易な封口板構造の電池に適用する場合に好ましい。
【0015】
【実施例】
以下,本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は,本発明の角形非水電解液電池の構造断面図である。1はアルミニウム製の角形ケースである。2は封口板で,アルミニウム製の平板状蓋板2aにアルミニウム箔2bが圧着されたクラッド板になっており安全弁3が設けられている。そして安全弁3は蓋板2aの安全弁用穴部4の下面にアルミニウム箔2bが圧着されて構成されている。
【0017】
この封口板2は,角形ケース1とレーザー溶接されている。5はニッケルメッキされた鉄製の端子を兼ね,封口板2の中央部に配されたリベット,6は封口板2にモールド成型された樹脂製の絶縁ガスケット,7はニッケルメッキされた鉄製のワッシャーである。このリベット5は封口板2の中央部の開口部に挿入され,リベット5の下部にワッシャー7を配した後リベットをかしめることによりリベットとワッシャーの電気的接続をとるとともに,蓋板とリベット間の絶縁を確保している。
【0018】
8はモールド成形された絶縁樹脂に開けられた安全弁用排気穴である。9は蓋板に開けられた注液口で,10は注液口から注がれた有機電解液を,角形ケースの角部の内側と長円形極板群の外側によって形成される空間部に向かって導くために設けられた溝である。11は正極板,負極板をセパレータを介して巻き回し,長円形にプレス圧縮されたものである。12は正極板から取り出したアルミニウム製の集電用リードで蓋板に溶接されている。
【0019】
また,13は負極板から取り出したニッケル製の集電リードでワッシャー7に溶接されている。従って電池としてはケースが正極で,リベット端子が負極となる。そして,この封口板では,電池の短絡・過充電,逆充電等にガスが蓄積し電池内圧が上昇した際には,封口板に設けられたアルミニウム箔2bが破断され,電池内のガスを排出することにより電池の急激な温度上昇や電池内圧の上昇を効果的に防止することが可能となる。
【0020】
極板群を構成する正極板、負極板、セパレータは次のように作製する。正極板は,活物質であるLiCoO2に導電剤としてカーボンブラックを,結着剤としてポリ四フッ化エチレンの水性ディスパージョンを固形分の重量比で100:3:10の割合で混合したものをアルミニウム箔の両面に塗着,乾燥し,圧延した後所定の大きさに切断したものである。これにアルミニウム製の正極リード板を溶接している。
【0021】
負極板は,炭素質材料を主材料とし,これとスチレンブタジエンゴム系結着剤とを重量比で100:5の割合で混合したものを銅箔の両面に塗着,乾燥,圧延した後所定の大きさに切断したものである。これに,ニッケル製の負極リードを溶接している。セパレーターポリエチレン製の微多孔フィルムである。
【0022】
ついで、極板群のリードを封口板に溶接するとともに角形電池ケースに挿入し,封口板とケースをレーザー溶接により封口する。正極リードと蓋板、負極リードとワッシャーを溶接し、さらに電解液を注液口から所定量注液する。
【0023】
本実施例では,注液口に先端にゴム製のリングが取り付けてあるパイプを差し込んで行った。パイプは3方コックが備えてあり一方は電池に,他方は真空ポンプに,残りは電解液が入ったポンプに接続されている。そして、パイプを通して電池内を真空ポンプで減圧に引き、コックを切り替え電解液をポンプから注入する方法で注液を行う。一度電池内を減圧に引くことで電解液の注入が容易になる。電解液は,エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)をモル比で1:3で混合した溶媒に溶質として六フッ化リン酸リチウムを1モル/lの濃度で溶解したものである。
(実施例1)
封口板の安全弁構造で、アルミニウム箔が蓋板の穴部内で凸状に構成されていることの効果について説明する。図2に本発明の安全弁部分の構造断面図を示した。
【0024】
図2に示したように安全弁部分において,アルミニウム箔2bがアルミニウム製の平板状蓋板2aの穴部4の内側で凸状に湾曲して配されている場合は,電池内にガスが蓄積し内圧が上昇した場合、凸状の金属箔の頂点部分の中心にガス圧が集中的に作用して安全弁の作動が安定する。また、この構成では薄いアルミニウム箔が安全弁穴部によって保護される。
【0025】
一方、穴部に対して平面的に配されている場合は、蓋板とアルミニウム箔が同じ面であるので、電池組立時に機械的に封口板をケースに挿入する際,箔部分に傷が入りやすく,場合によっては破断する場合がある。また、切断刃が無いと安全弁のガス圧上昇時の作動が安定しないことがある。
【0026】
したがって、蓋板に金属箔を配する簡易な構造の封口板では本構成はとくに有効である。
【0027】
次に、安全弁の作動圧を測定した。結果を(表1)に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
(表1)より明らかなように、アルミニウム箔2bがアルミニウム製の平板状蓋板2aの穴部の内側に凸状に湾曲して設けられている場合の方が、穴部でアルミニウム箔が平面状に配されている場合よりも弁作動圧のばらつきが小さくなった。これは、穴部内でアルミニウム箔を凸状に湾曲させた方が、凸部の頂点にガス圧が集中的に作用しやすいためと考えられる。
(実施例2)
安全弁用穴部4のアルミニウム箔2bに有機系防食剤が塗布されている事について説明する。電池の短絡・過充電・逆充電が起こると電解液や,活物質の分解等により電池内でガスが発生し蓄積する。内圧が過度に上昇すると電池の破裂・発火が起こることとなる。
【0030】
これを防止するためには,一定圧力以上の内圧になると薄肉部が破断し,圧力の解放を行い破裂・発火を防ぐ安全弁が必要である。本発明では,厚み0.6mmのアルミニウム製の蓋板に安全弁用の穴をあけその部分を塞ぐようにアルミニウム箔(厚み0.03mm)をクラッド加工したものである。安全弁用穴形状やアルミニウム箔の厚みで弁作動圧力を設計する。
【0031】
このように薄いアルミニウム箔を安全弁として用いる場合,長期間の電池使用時の腐食が懸念される。この部分に腐食によるピンホールができれば,弁作動圧が著しく低下し電池保存時に弁の誤作動を起こしたり,漏液するといった問題を引き起こすこととなる。
【0032】
これを防止するためにアルミニウム薄肉部に有機系防食剤を塗布することが有効な手段となる。有機系防食剤は本実施例の場合,コールタールピッチ剤とワセリンを用いた。このような有機防食剤の有効性を確認するために電池を作製し,高温多湿(60℃,90%,3カ月)での耐漏液試験を行った。結果を(表2)に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
(表2)より明らかなようにアルミニウム箔に有機系防食剤を塗布することが有効な手段となる。
【0035】
なお,以上の説明では蓋板及び金属箔がアルミニウム製、リベット及びワッシャーがニッケルメッキした鉄製で構成した例で示したが,その他、蓋板及び金属箔がステンレス鋼、ニッケルあるいはニッケルメッキした鉄製であっても良く、リベット及びワッシャーがアルミニウム製で構成した場合も同様に実施可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明は蓋板の穴部に金属箔を配して構成した安全弁において、金属箔を穴部内で凸状に形成し、有機系防食剤を塗布するので、安全弁を長期間安定して的確に作動させることができ、安全性に優れた非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の角型非水電解液電池の断面図
【図2】同電池の安全弁部分の拡大断面図
【符号の説明】
1 アルミニウム製の角形ケース
2 アルミニウム製の封口板
2a アルミニウム製の平板状蓋板
2b アルミニウム箔
3 安全弁
4 安全弁用穴部
5 ニッケルメッキされた鉄製の端子を兼ねたリベット
4 樹脂製の絶縁ガスケット
7 ニッケルメッキされた鉄製のワッシャー
8 排気用の穴
9 封口板蓋板に開けられた注液口
10 電解液導入溝
11 極板群
12 正極板から取り出したアルミニウム製の集電リード
13 負極板から取り出したニッケル製の集電リード
14 レーザー溶接部
Claims (12)
- 極板群と電解液を内部に収容するケースと、安全弁を備えて前記ケースの開口部を封口する封口板を備え、前記封口板は平板状蓋板の下面に金属箔を圧着したクラッド板によって構成されており、封口板の安全弁は蓋板に設けられた安全弁用穴部とその下部を被覆する金属箔によって構成されていて、前記安全弁用穴部の内側にある金属箔は上方に向かって凸状に湾曲している非水電解液電池。
- 蓋板と金属箔はアルミニウム製である請求項1記載の非水電解液電池。
- ケースと封口板はレーザー溶接された請求項1または2記載の非水電解液電池。
- 蓋板に挿入された端子を兼ねる金属製のリベットと、蓋板とリベットを絶縁する樹脂を備え、薄型電池を構成する請求項1,2,3のいずれかに記載の非水電解液電池。
- ケースと蓋板と金属箔がアルミニウム製であり、リベットがニッケルあるいはニッケルメッキされた鉄製である請求項4記載の非水電解液電池。
- ケースと蓋板と金属箔がニッケル製、ニッケルメッキされた鉄製あるいはステンレス鋼製のいずれかであり、リベットがアルミニウム製である請求項4記載の非水電解液二次電池。
- 極板群と電解液を内部に収容するケースと、安全弁を備えて前記ケースの開口部を封口する封口板を備え、前記封口板は平板状蓋板の下面に金属箔を圧着したクラッド板によって構成されており、封口板の安全弁は蓋板に設けられた安全弁用穴部とその下部を被覆する金属箔によって構成されていて、前記安全弁用穴部内の金属箔には有機系防食剤が塗布されている非水電解液電池。
- 蓋板と金属箔はアルミニウム製である請求項7記載の非水電解液電池。
- ケースと封口板はレーザー溶接された請求項7または8記載の非水電解液電池。
- 蓋板に挿入された端子を兼ねる金属製のリベットと、蓋板とリベットを絶縁する樹脂を備え、薄型電池を構成する請求項7,8,9のいずれかに記載の非水電解液電池。
- ケースと蓋板と金属箔がアルミニウム製であり、リベットがニッケルあるいはニッケルメッキされた鉄製である請求項10記載の非水電解液電池。
- ケースと蓋板と金属箔がニッケル製、ニッケルメッキされた鉄製あるいはステンレス鋼製のいずれかであり、リベットがアルミニウム製である請求項10記載の非水電解液二次電池。
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