JP3550540B2 - 光制御素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、全光になる光制御素子に関係するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、超高速時分割多重光通信システムや光情報処理システムへの適用をめざした全光・光制御素子に関する報告がなされている。これらの素子では、3次の非線形光学効果を利用し、且つ光信号の情報を別の光を用いて制御する。この3次の非線形光学効果をもたらす現象は、いわゆる仮想励起型(非共鳴型)と、キャリアの励起を伴う実励起型(共鳴型)に分類される。前記仮想励起型(非共鳴型)はキャリアの実励起を伴わないが、光が、所望光学素子に照射されることにより電子系の波動関数が変化するものである。一般に低次元量子構造の3次の非線形光学効果は、共鳴の近くだけ増大することから、非共鳴型は、高速性には優れるが、非線形光学効果は小さい。一方、共鳴型は、非線形光学効果は比較的大きいものの、高速応答が難しいことが知られている。こうした事実は、例えば、神谷、荒川、共編、「超高速光スイッチング技術」、1993年発行(培風館)の第22より第26頁に説明されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、上記共鳴型の全光・光制御素子の性能を実用化レベルまで向上させることである。即ち、本願発明は、全光・光制御素子の高速の応答特性の向上と合わせて消費電力の低減を図ろうとするものである。
【0004】
ここで、全光・光制御素子とは、光スイッチングに関する動作領域が、光のみで動作、制御させる制御素子を意味する。即ち、この素子は、信号光を他の制御光を用いてON/OFFなどの制御を行うものである。
【0005】
共鳴型の全光・光制御素子を超高速通信システムへ適用するためには、非線形光学効果の増大、応答の高速化、更に、とりわけ快復時間の短縮が必須である。また、素子の消費電力、すなわち必要な制御光の強度は、吸収係数および非線形光学効果の大きさに依存し、これらが大きくなれば、消費電力を低減できる。現在、共鳴型の全光・光制御素子では非共鳴型に比べ大きな非線形光学効果が得られるものの、実用レベルでのスイッチ動作を行うためにはさらに大きな非線形光学効果が必要である。
【0006】
又、一対のブラッグ反射鏡で形成される共振器内に量子井戸層を配置し、共振器の共鳴エネルギーをサブバンド間遷移エネルギーに整合させることにより、サブバンド間遷移の非線形性を大幅に増大させることが可能である。このことは、例えばリュウ:オプティックスコミュニケーションズ 1998年 第147号279ー284頁(A.Liu:Optics Communicationsvol.147、(1998) pp.279ー284)に見られる。ブラッグ反射鏡は、光の伝搬方向に複素屈折率が周期的に変化している構造である。しかし、導波構造では光の伝搬方向は、ブラッグ反射鏡を形成するヘテロ構造の界面に平行となるため、上記のように、共振器の共鳴エネルギーをサブバンド間遷移エネルギーに整合させることが困難であった。
【0007】
こうした技術を背景に、本願発明では、全光スイッチ実用化に向け、上記課題を解決する超高速・低消費電力の光制御素子を提案するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明の基本的な構成は、信号光及びこれとは別の制御光を、半導体積層体に入射し、前記信号光を前記光制御光を用いて制御が可能な光制御素子において、前記半導体積層体が井戸層と障壁層とを有する量子井戸構造を有し、且つ前記井戸層及び前記障壁層が不純物を含有してなること特徴とする光制御素子である。即ち、本願発明では、信号光を他の制御光を用いて制御するに当たって、井戸層と障壁層を交互に積層した量子井戸構造を用い、これら井戸層及び障壁層にキャリアを発生させる不純物を添加するのである。
【0009】
本願発明の動作原理を、図1に示した量子井戸構造のバンド図を用いて説明する。図1には、価電子帯21と伝導帯20を模式的に示し、伝導帯基底準位1及び励起準位2、及び価電子帯内の準位22、及び準位1並びに準位22に存在する電子3及び31を例示する。図には、制御光パルス4、入射信号パルス5(あるいは52)、及び当該光制御素子を射出する信号パルス51が例示される。
【0010】
制御光パルス4により、伝導帯基底基底準位1に存在する電子3が、励起準位2に共鳴励起33され、反転分布が形成される。次に入射した信号光パルス5は伝導帯基底基底準位1に電子3が存在しないため、吸収されずに透過する。この基底準位1に電子3が存在するときには、信号光パルス5は吸収され、透過光量が減少する。このように、制御光をON/OFFすることにより、信号光の制御が可能となる。
【0011】
更に、本願発明では、次の動作も可能である。伝導帯サブバンド間遷移エネルギーと同程度のエネルギーを有した制御光パルス4により、伝導帯基底準位1に存在する電子3が、励起準位2に共鳴励起される。こうした状態の下、次に入射したバンド間遷移に共鳴する信号光52は、吸収されて、価電子帯内の準位22に存在する電子31を伝導帯基底準位1に励起34する。
【0012】
又、制御光パルス4が入射しない場合には、伝導帯サブバンドの基底準位1は満たされている為、信号光52は吸収されずに透過し、信号光が出力される。この様に、制御光をオン・オフ(ON/OFF)する事により、信号光の制御が可能となる。尚、図1では、原理の理解を容易となす為、信号光パルス5と52を、併せて例示した。幾何学的に異なる場所から、当該半導体積層体に複数の信号光の入射がなされる趣旨ではないので、信号光パルス52は括弧を付して図示した。
【0013】
また、ここに説明した伝導帯サブバンド間の緩和は、従来のバンド間緩和に比べて非常に速く、psオーダのスイッチングが可能であり、超高速の制御素子を実現できると期待されている。しかし、前記課題で述べたように通信波長帯のサブバンド間遷移波長を得るためには、井戸層は2nm程度の超薄膜を用いなければならない。この様な構造において、井戸層のみならず障壁層にも不純物を添加することにより、吸収に寄与するキャリア数を大幅に増大させることができる。図10にInGaAs/AlAsSb多重量子井戸構造において、井戸層のみに不純物を添加した場合と、井戸層および障壁層ともに不純物を添加した場合の、吸収スペクトルを示した。図10の横軸は波長、縦軸は吸収強度を示す。曲線100は量子井戸構造の井戸層と障壁層の双方に不純物を添加した例、曲線101は、井戸層のみに不純物を添加した例の特性である。不純物はSiで、添加量は、いずれの層に対しても3×1012cm−2の例である。図から明らかなように、InGaAs井戸層とAlAsSb障壁層ともに不純物を添加することにより、InGaAs井戸層のみに添加した場合に比べ、30倍程度の吸収強度を達成している。
【0014】
しかし、前記課題で述べたようにInGaAs/AlAsSbヘテロ構造では、高濃度に不純物を添加することにより障壁層と井戸層の界面が乱れ、井戸層内に形成される量子準位のエネルギーが大きく変化する。このため、動作波長が設計値と大幅に異なる難点が発生する。
【0015】
量子井戸構造の各層への不純物添加に伴う界面の乱れを防止し、設計値通りのサブバンド間遷移波長を得ることは、不純物を添加した障壁層と井戸層の間に不純物を添加しない、いわゆる後退層を採用することにより達成される。
【0016】
図9に後退層5nmを採用したInGaAs/AlAsSb量子井戸構造のSIMS分析結果を示した。図9の横軸は結晶の表面からに深さ、縦軸は二次イオンの強度である。そして、In、As、及びSbの各々強度を示す。尚、図にAlAsSb、InGaAs、及びAlAsSbと示したのは、こうした組成の層の領域を示す。図からも明らかなように、図8に例示した後退層がない場合に見られたInとSbの異常な拡散が見られず、より急峻なヘテロ界面が形成されている。この様に不純物を添加した井戸層と障壁層の間に不純物を添加しない後退層を挿入した構造を採用することにより、通信波長帯のサブバンド間吸収を得ることが可能となる。
【0017】
さて、一般に消光比は吸収係数の変化分と、試料長さおよび光の閉じ込め係数の積に比例する。このため、素子内に入射した光を量子井戸層に閉じ込め、光の有効利用を図ることが重要である。そこで、光を量子井戸層に閉じ込める目的で、ブラッグ反射鏡を用いた光閉じ込め層を井戸層の上下に配置する形態は、極めて好ましい形態である。この様に、一対のブラッグ反射鏡で形成される共振器内に量子井戸層を配置し、共振器の共鳴エネルギーをサブバンド間遷移エネルギーに整合させることにより、サブバンド間遷移の非線形性を大幅に増大させることが可能である。これより、吸収飽和エネルギーが大幅に低減され、低消費電力の制御素子が実現可能となる。
【0018】
この効果をより一層顕著にするために、上部クラッド層の一部に回折格子を設けた構造を採用することが出来る。即ち、本願発明の一つの形態では、回折格子を、少なくとも量子井戸層とブラッグ反射鏡との間に配置し、光をブラッグ反射鏡に入射させることにより、導波型光制御素子でのサブバンド間遷移の非線形性を増大させることを可能とした。
【0019】
又、InGaAsの禁制帯が、通信波長帯に相当するため、InGaAs/AlAsSb系ヘテロ構造を用いることより、伝導体サブバンド間遷移とバンド間遷移を用いた通信波長帯で動作する高効率の制御素子を実現可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本願発明の具体的な実施の形態を説明するに先立って、本願発明の主な形態を整理、列挙すると、次の通りである。
【0021】
本願発明の第1の形態は、信号光を他の制御光を用いて制御が可能な光制御素子において、井戸層と障壁層を交互に積層した量子井戸構造を用い、これら井戸層及び障壁層にキャリアを発生させる不純物を添加した光制御素子である。
【0022】
量子井戸構造の各層の厚さ、材料などは原理的に通例のものを用いて十分である。尚、不純物の添加量は、素子に要求される特性や、素子の構造等によって設定されるが、井戸層には概ね、5×1011cm−2より5×1013cm−2、障壁層には概ね、5×1011cm−2より5×1013cm−2が多用される。より実用的には、井戸層には概ね、1×1012cm−2より2×1013cm−2、障壁層には概ね、1×1012cm−2より1×1013cm−2が好ましい。それは、吸収強度の大きさ、あるいは製造の容易さなどを考慮したものである。
【0023】
尚、光の入射並びに射出等の構成は通例の通りで十分である。それらは、後述の図11及び図12を用いて例示されるが、例えば、本願発明に係わる半導体積層体と一体構成とされた光導波路が光学的に接続される。そして、この光導波路より、通例の光制御素子と同様に各種光が入射され、又、射出される。
【0024】
本願発明の第2の形態は、上記第1の形態の光制御素子において、不純物を添加した障壁層と井戸層の間に不純物を添加しない後退層を設けた光制御素子である。
【0025】
使用材料、素子の具体的構造によって、適した厚さはあるが、概ね、井戸層は1nmより3nm、障壁層は5nmより20nmが多用される。又、後退層は1nm以上、実用的には30nm以下が好ましい。又、不純物の添加層は、通常1nmより10nm程度を用いるが、不純物原子のみで単原子層を形成して用いることも可能である。
【0026】
本願発明の第3の形態は、上記第1及び第2の形態の光制御素子において、該後退層が、該障壁層と構成元素が同一の材料からなる光制御素子である。
【0027】
本願発明の第4の形態は、上記第1及び第2の形態の光制御素子において、該後退層が、該障壁層と異なる材料からなる光制御素子である。
【0028】
本願発明の第5の形態は、上記第1及び第2の形態の光制御素子において、該後退層の膜厚が、1nmより30nmであることを特徴とする光制御素子である。この後退層の効用については後述する。
【0029】
本願発明の第6の形態は、上記第1及び第2の形態の光制御素子において、いわゆる光閉じ込め層を、該量子井戸層の上下に配置したことを特徴とする光制御素子である。この光閉じ込め層としては、屈折率が大きく異なる2種類の薄膜を、それぞれの膜厚が入射光の1/4波長に相当する膜厚として交互に積層した積層体が好ましい。光閉じ込め層は、通例の光学的な理論に従って、構成して十分である。クラッド層も光閉じ込め層としの効果を果たしているが、クラッド層と量子井戸層との屈折率差が小さいため、光の閉じ込め効果が十分でない。この為、1/4波長に相当する膜を交互に積層したブラッグ反射鏡を用いるのが望ましい。このブラッグ反射鏡では、例えば反射率99.8%以上を得ることが出来る。
【0030】
本願発明の第7の形態は、上記第1、第2及び第8の形態の光制御素子において、光の帰還手段、例えば、回折格子を該量子井戸層と光り閉じ込め層の間に配置したことを特徴とするる光制御素子である。
【0031】
本願発明の第8の形態は、前記諸光制御素子において、量子井戸構造の伝導帯井戸内に形成される量子準位間の遷移を利用することを特徴とする光制御素子である。
【0032】
本願発明の第9の形態は、前記諸光制御素子において、量子井戸層の伝導帯内の準位間の遷移と、伝導帯と価電子帯間の遷移を利用することを特徴とする光制御素子である。
【0033】
尚、前記障壁層および井戸層を形成する材料は、III−V族化合物半導体のGaAs、AlAs、InAs、InP、AlP、GaP、GaSb、AlSb、あるいは窒素含有の半導体材料のGaN、AlN、InN、II−VI族化合物半導体のZnS、ZnSe及びこれらの化合物を組み合わせた3元ないしは4元化合物混晶のいずれかの組み合わせを用いることが好適である。わけても、障壁層としては、InP基板に格子整合するAlAsSb、AlGaAsSbなどが好ましい。一方、井戸層は、InGaAsが好適な材料である。
【0034】
又、前記光閉じ込め層を形成する材料は、 III−V族化合物半導体のGaAs、AlAs、InAs、InP、AlP、GaP、GaSb、AlSb、あるいは窒素含有の半導体材料のGaN、AlN、InN、 II−VI族化合物半導体のZnS、ZnSe及びこれらの化合物を組み合わせた3元ないしは4元化合物混晶、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、CaF、MgF、SrF、BaFおよび空気のいずれかの組み合わせを用いることが好適である。
【0035】
光閉じ込め層としては、AlGaAsSb層とAlAsSb層を交互に積層した構造が好ましい。
【0036】
又、前記後退層を形成する材料は、GaAs、AlAs、InAs、InP、GaP、GaSb、AlSb、GaN、AlN、InN、 ZnS、ZnSe及びこれらの化合物を組み合わせた3元ないしは4元化合物混晶、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、CaF、MgF、SrF、BaFおよび空気のいずれかの組み合わせを用いることが好適である。
【0037】
後退層は、通例、不純物添加層と同じ材料の層を用いるのが好ましい。それは、この後退層は、不純物の拡散を防ぐのが目的だからである。従って、このいわゆる後退層の厚さは、対象の半導体層への不純物拡散の程度を持って設定される。前述した通り、一般には概ね1nmより30nmの範囲が多用されている。
次に、本光制御素子の光入射、射出部を例示する。尚、以下の例示する形態は、後述する実施例に限るものではなく、本願発明の諸形態に用いることが出来ることは言うまでもない。
【0038】
図11に、上記本願発明の係わる非線形量子井戸構造を有する半導体積層体を、2本の光導波路111、112の接点に形成した例を示す。図では前記半導体積層体の存在する領域の上からみた平面領域110として示した。この具体的な非線形量子井戸構造は、光導波路に対応した位置に存在する。図において、符号113は光の入射端で、制御光及び信号光が入射される。符号114は光の射出端である。前記非線形量子井戸構造及び光導波路は次のように構成される。即ち、通例第1のクラッド層を有する基体115に前記非線形量子井戸構造が搭載される。そしてこの非線形量子井戸構造の両側に、光導波路111、及び112が光学的に接続されて形成される。符号117は光導波路の埋め込み層、符号118は第2のクラッド層を構成する層である。尚、図11に図示した構成は、基本構成であり、更に特性改善、結晶性改善、その他の目的等により、更なる層、手段が付加されることは言うまでもない。又、例えば、第1のクラッド層を有する基体115は、所望の基板に第1のクラッド層を形成した変形構造を採用することも自由である。
【0039】
この光制御素子の例において、TM偏光の制御光を非線形量子井戸構造に照射した直後、TM偏光の信号光を入射させると、信号光は吸収されずに透過し、出力が得られる。一方、前記の制御光を照射しない場合は、信号光は吸収されて出力は得られない。
【0040】
図12は別な構成例である。図12は、上記本願発明の係わる非線形量子井戸構造110を有する半導体積層体を、2本の光導波路112、124の交差点に形成した例を示す。符号120は制御光の入射端、121は信号光の入射端、122、123は各々、第1及び第2の信号光の出力端である。この例は、制御光を非線形量子井戸構造を有する半導体積層体に入射し、この領域の屈折率を変化させて、例えば、信号光の射出経路を出力端122から出力端123に切り替える等の動作をせしむるものである。例えば、前記制御光を用いない場合、信号光は信号出力端122に出力されるように構成されているとする。今、TM偏光の制御光を入射し、非線形量子井戸構造の領域に吸収に伴う屈折率変化を生じさせる。本形態の光制御素子では、この変化により、TE偏光の信号光は前記非線形量子井戸構造の領域で回折され、信号出力端123に出力することを可能とする。
<本願発明と類似構造の比較特性>
本願発明と類似の超高速スイッチを実現できる現象として、キャリアの緩和が非常に高速なサブバンド間遷移が注目されている。しかし、サブバンド間遷移波長1.55μmを得るためには、対象の量子井戸構造の井戸層を2nm程度の超薄膜を用いなければならない。我々もこれまでにInGaAs/AlAsSb結合量子井戸構造を用いて緩和時間1.3psを達成している。このサブバンド間−バンド間吸収変調の過渡応答の特性を図7に例示する。横軸は遅延時間、縦軸は吸収の変化を相対値で示している。しかし、吸収係数が実用レベルの5%程度と低く、吸収に寄与するキャリアおよび非線形性の増大を図る必要がある。
【0041】
しかし、InGaAs/AlAsSbヘテロ構造では、GaAs/AlGaAs系ヘテロ構造と異なりキャリアの増大を図るために不純物添加量を増大すると、構成元素の相互拡散が促進されて構造が大幅に乱れる難点が存在する。図8にAlAsSb層にSiを1×1018cm−3添加したInGaAs/AlAsSb量子井戸構造をSIMS(Secondary Ion Mass Spectormeter)分析した結果を示した。図8の横軸は結晶の表面からの深さ、縦軸は二次イオンの強度である。そして、In、As、及びSbの各々強度を示す。尚、図にAlAsSb、InGaAs、及びAlAsSbと示したのは、こうした組成の層の領域を示す。図からも明らかなように、InがAlAsSb層へ、又、SbがInGaAs層へ大きく拡散している。この拡散により、サブバンド間遷移波長が大幅に長波長へシフトし、スイッチ動作波長の短波長化の障害となっていた。従って、ヘテロ界面が急峻なInGaAs/AlAsSbヘテロ構造を形成することが、通信波長帯の超高速制御素子の実現には不可決である。これに対して、本願発明での特性例は図9に示される。本願発明では、ヘテロ界面における、一方の層から他の層への元素の拡散の程度が大きく改善される。図9の詳細は後述される。
<実施例1>
図2に本願発明の第一の実施例である光制御素子に供する結晶体構造の斜視図を示す。InP基板6上に、AlAsSb(AlAs混晶比=0.56)になる下部クラッド層7、InGaAs/AlAsSbになる量子井戸層8、AlAsSb(AlAs混晶比=0.56)になる上部クラッド層9、さらにInAlAsになるキャップ層10を順次積層する。その後、この半導体積層体の前記キャップ層10と前記上部クラッド層9の一部をエッチング除去し、図2に示すようなストライプ状の導波路構造を作成した。図における半導体積層体の長手方向が光の進行方向である。
【0042】
図3に、この例に用いた量子井戸構造の詳細図を示した。図は量子井戸構造の積層体の断面図である。量子井戸構造は、Siを添加したAlAsSb障壁層81、AlAsSb後退層82、およびSiを添加したInGaAs井戸層83から成る5層を基本単位として、これを50組積み上げた。なお、Siの添加量は1×1019cm−3とした。導波部はストライプ幅3μm、長さ200μmとした。また、各層の膜厚は、上下のクラッド層:各3μm、障壁層:10nm、井戸層:2nm、後退層:10nm、キャップ層:10nmとした。
【0043】
本構造の採用により、従来の井戸層のみにSiした場合に比べ吸収強度を30倍に増大させることが可能となった。結果として、当該光制御素子の消費電力を実用レベルの値とすることが出来た。
【0044】
また、後退層を採用しない場合には、吸収ピークは2μmであったが、本発明により1.55μmを達成し、現行の光通信システムへの適用が可能となった。
<実施例2>
本願発明の第二の実施例である光制御素子に供する結晶体構造の斜視図を図4に示す。本例は、積層体に光閉じ込め層11、12を挿入した例である。
【0045】
InP基板6上に、下部の光閉じ込め層11、AlAsSb(AlAs混晶比=0.56)になる下部クラッド層7、InGaAs/AlAsSbになる量子井戸層8、AlAsSb(AlAs混晶比ー=0.56)になる上部クラッド層9、上部光閉じ込め層12、さらにInAlAsキャップ層10を順次積層した。そして、その後、この半導体積層体の前記キャップ層10、前記上部光り閉じ込め層12、および前記上部クラッド層の一部をエッチング除去し、図4に示すようなストライプ状の導波路構造を作成した。図における半導体積層体の長手方向が光の進行方向である。
【0046】
図5に、この例に用いた量子井戸構造の詳細図を示した。図は量子井戸構造の積層体の断面図である。導波路構造を作成した。光閉じ込め層は、AlGaAsSb層71とAlAsSb層72を20.5周期積み重ねた構造とした。それぞれの膜厚及び組成は、AlGa1−xAsSb1−y層の膜厚は107nm、組成を、x=0.1、=0.515とした。また、AlAsSb1−xの膜厚は126nm、組成はx=0.56とした。導波部はストライプ幅20μm、長さ200μmとした。また、各層の膜厚は、上下のクラッド層:各1μm、障壁層:10nm、井戸層:2nm、後退層:10nm、キャップ層:10nmとした。この構造により、波長1.55μmの光に対して99.8%の反射率が得られ、量子井戸層への高効率の光閉じ込めが可能となった。本構造の採用により、従来の屈折率差を用いた光閉じ込め導波構造に比べ、吸収強度を3倍に増大させることが可能となった。これよりさらなる低消費電力化が可能となった。
<実施例3>
本願発明の第三の実施例である光制御素子に供する結晶体構造の光の進行方向に平行な面での断面図を図6に示す。本例は、積層体に回折格子を挿入した例である。
【0047】
InP基板6上に、下部光閉じ込め層11、AlAsSb(AlAs混晶比=0.56)下部クラッド層7、InGaAs/AlAsSb 量子井戸構造の領域8、InAlAs(AlAs混晶比=0.56)上部クラッド層9を順次積層した。その後、こうして準備した半導体積層体の上部クラッド層9をエッチングして一部に回折格子13を形成した。
【0048】
次に、上部光閉じ込め層12、さらにInAlAsキャップ層10を順次積層した。そして、その後、この半導体積層体より、前記キャップ層10、前記上部光り閉じ込め層12、および前記上部クラッド層の一部をエッチング除去し、図4に示すような導波路構造を作成した。導波路構造のストライプの方向は、これまでの実施例と同様である。
【0049】
光閉じ込め層は、AlGaAsSb層71とAlAsSb層72を20.5周期積み重ねた構造とした。それぞれの膜厚及び組成は、AlGa1−bAsSb1−y層の膜厚は107nm、組成をx=0.1、y=0.515とした。また、AlAsSb1−xの膜厚は126nm、組成はx=0.56とした。導波部はストライプ幅20μm、長さ200μmとした。また、各層の膜厚は、上下のクラッド層:各1μm、量子井戸構造の層領域1.5μm、後退層:10nm、キャップ層:10nmとした。また、該回折格子の周期は2μmとした。本構造の採用により、共振器の共鳴エネルギーとサブバンド間遷移エネルギーを整合させることが可能となり、サブバンド間遷移の非線形性が増大し、吸収強度が約10倍増大し、また吸収スペクトルの線幅が1/5になった。
【0050】
即ち、光のON/OFFの制御に伴う透過光の消光比は、吸収係数(即ち、吸収強度に対応する)の変化分と、試料長さ及び光の閉じ込め係数の積に比例する。本願発明においては、サブバンド間遷移における吸収係数は、量子井戸内のキャリア数に比例するため、井戸層内のキャリア数を増大させることにより、消光比を大きくすることが出来るのである。そして、素子の低消費電力化は、低パワーの制御光で、信号光の消光比を大きくすることを意味している。この為、吸収係数の増大と、制御光の有効活用が求められる。本願発明では、不純物の添加により前述のように吸収係数を増大させることによって実現することが出来た。こうして、当該素子の消費電力の低減を図ることが可能となる。更に、光閉じ込めの手段を活用することによって、より制御光の有効活用を図り、もって当該素子の消費電力の低減をより有効に図ることが可能となる。
【0051】
以上、不純物添加法、光の閉込め効率の改善、さらに非線形性の増大を図ることにより、大幅に吸収係数を増大させた例を示した。これらの素子を用いることにより、高速、低消費電力の全光・光制御素子を実現できる。
【0052】
このように、本願発明は、光通信および光情報処理システムに用いる、特に将来の超高速時分割多重光通信システムや光インタコネクションに用いる広帯域光制御素子などに極めて有用である。本願発明によると、スチッチ速度が1ps、繰り返し速度が1Tbの超高速、且つ結果として低消費電力の光制御素子を提供することが出来る。
【0053】
尚、本願発明に用いる半導体積層体は、光制御素子に限定されるものではなく、トランジスタ等の電子デバイスにも適用できるものである。
【0054】
【発明の効果】
本願発明は、全光になる光制御素子の消費電力を、実用レベルまで低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は発明の原理を説明するバンド構造図である。
【図2】図2は第一の実施例を示す素子の主要部の斜視図である。
【図3】図3は量子井戸層の構造を示す断面図である。
【図4】図4は第二の実施例を示す素子の主要部の斜視図である。
【図5】図5は光閉じ込め層の構造を示す断面図である。
【図6】図6は第三の実施例を示す素子の主要部の斜視図である。
【図7】図7はInGaAs/AlAsSb量子井戸構造のサブバンド間吸収変調の過渡応答を例示する図である。
【図8】図8はInGaAs/AlAsSb量子井戸構造の例のSIMS分析の結果を示す図である。
【図9】図9は本願発明の係わるInGaAs/AlAsSb量子井戸構造の例のSIMS分析の結果を示す図である。
【図10】図10は量子井戸構造の各層への不純物の添加と吸収との関係を示す図である。
【図11】図11は本願発明に係わる光制御素子の一つの例の結晶部の斜視図を示す図である。
【図12】図12は本願発明に係わる光制御素子の別な例の結晶部の斜視図を示す図である。
【符号の説明】
1:量子井戸内基底準位、2:量子井戸内励起準位、3:電子、4:制御パルス光、5:信号パルス光、6:基板、7:下部クラッド、8:量子井戸層、9:上部クラッド、10:キャップ層、11:下部光閉じ込め層、12:上部光閉じ込め層、13: 回折格子。

Claims (4)

  1. 信号光及びこれとは別の制御光とを、半導体積層体に入射し、前記信号光を前記制御光を用いて制御可能な光制御素子において、前記半導体積層体が井戸層と障壁層とを有する量子井戸構造を有し、これら井戸層及び障壁層の少なくとも一方にキャリアを発生させる不純物を添加し、且つ
    前記制御光が、前記量子井戸構造に形成される伝導帯内の準位間の遷移を利用して、前記信号光の吸収を促す電子状態の有無を生ぜしめることにより、当該信号光をオン/オフとなす、或いは
    前記制御光の入射によって前記量子井戸構造に形成される伝導帯内の準位間の遷移を利用して、前記信号光に対する、当該量子井戸構造の伝導帯と価電子帯間の遷移を促す状態の有無を生ぜしめることにより、当該信号光のオン/オフとなすことを特徴とする光制御素子。
  2. 記障壁層と前記井戸層の間に不純物を添加しない第2の障壁層を有することを特徴とする請求項1に記載の光制御素子。
  3. 前記量子井戸構造に対して、その積層方向の上下に光閉じ込め層を配置し、前記光閉じ込め層が、屈折率の異なる2種類の薄膜を、それぞれの膜厚が入射光の1/4波長に相当するように交互に積層したブラッグ反射鏡で構成され、且つ前記量子井戸構造の上下一対の前記ブラッグ反射鏡より構成される共振器の共鳴エネルギーを、前記量子井戸構造のサブバンド間エネルギーに整合させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光制御素子。
  4. 光の帰還手段を少なくとも前記量子井戸構造と光閉じ込め層の間に配置したことを特徴とする請求項3に記載の光制御素子。
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