JP3550522B2 - 石炭ミル及びそれに用いる減速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉砕用ミル及びそれに用いる減速機に係り、特に石炭粉砕用のミル及びそれに用いる減速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭を粉砕して火力発電に使用するため、石炭ミルが従来から多用されている。この石炭ミルでは、上部に設けた給炭口から粉砕前の石炭を供給している。そして、中間部に設けた複数個の粉砕ローラが、ローラの転動溝が形成された粉砕リングとの間に落下した石炭を粉砕している。粉砕ロータ及び粉砕リングの下方には、粉砕リングを回転駆動するために動力を伝達する減速装置が配置されている。そしてこの減速機で回転方向を水平軸から垂直軸方向に変換している。減速機の入力側には駆動機として電動機が接続される。
【0003】
この石炭粉砕用ミルの例が、米国特許第4972099号公報や特開平5−288335号公報に、またそれに用いられる減速機の例が特開平8−89828号公報に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年火力発電所用の石炭ミルは大型化しており、粉砕リングの外形も大径化している。その典型的なものでは、粉砕リング径は3mにも達している。その結果、粉砕できる石炭量および微細径化は従来に比べて格段に向上しているが、粉砕リングの動力も増加し、この動力を伝達する減速機の負荷が増大している。さらに、石炭ミルを設置する機場では、石炭ミルを1機のみ設立するのではなく、複数台、例えば5〜6台を1機場に設置している。このような広いスペースを要する機場において、減速機及びミルに使用される軸受を潤滑する潤滑油の冷却のために、冷却水を用いることは配管スペースを確保する必要があることと、ミル相互の配置の自由度を減殺することから好ましくない。
【0005】
ところで上記米国特許第4972099号公報においては、石炭ミルの潤滑について種々の課題を挙げ、それらを解決するために補助潤滑手段を設けることが記載されている。そして、潤滑油をろ過して潤滑油に含まれている汚染物質を潤滑油から取り除くことにより、ボウルミルに使用される軸受及び歯車が摩耗するのを防止している。この結果、潤滑油への混入物による潤滑油の劣化、及び減速機等の潤滑部品の摩耗を防止できるが、通常の潤滑手段に加えて他の潤滑手段も備えており、装置が複雑になる。
【0006】
また、特開平5−288335号公報には石炭ミルで微粉化すること及びミル本体の下部にギヤボックスを設けることは記載されているものの、ミルの各部材を潤滑することについては特段の開示は無い。さらに、特開平8−89828号公報には振動・騒音を低減するためにミル用減速機のスラスト軸受をティルティングパッド軸受とし、球面上のパッドの中心位置をスラスト力を受ける垂直部の内径と外径との間に位置させることが記載されている。しかしながら、この公報においてもミル用軸受の省スペース化または簡素化を図って潤滑油や潤滑部を冷却することについての考慮は、十分ではない。
【0007】
なお、減速機の簡素化を図って空冷化した例が、特開平4−4349号公報に記載されているが、この減速機は一般的な減速機であり、高温であること、粉塵が多いこと、減速機の各歯車の面圧が増大していること、等のミル用減速機の使用条件については考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、使用される周囲環境が良くない状態であっても信頼性が高く、しかも簡素な冷却機構を備えた石炭ミル用減速機を実現することにある。本発明の他の目的は、メンテナンス周期を長くして操作性を向上させた石炭ミル用減速機を実現することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、複数の粉砕ローラとこの粉砕ローラの転動面が形成された粉砕リングを有し、粉砕ローラと粉砕リング間に導かれた石炭を粉砕する石炭ミルにおいて、粉砕リングを回動させる動力を原動機から粉砕リングに伝達するミル用減速機を設け、原動機に接続されるこのミル用減速機の入力軸に冷却ファンを設け、この冷却ファンの下流側に、ミル用減速機を潤滑する潤滑油を冷却するラジエータを配置し、ミル用減速機はブロック化されたラジエータ部、油ポンプ部、フィルタ部を有し、各ブロックをフレキシブル配管を介して接続したものである。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、ローラとリング間に導かれた原料炭を粉砕する石炭ミルに備えられるミル用減速機において、原動機に接続されるミル用減速機の入力軸に冷却ファンを設け、この冷却ファンとミル用減速機本体間にこのミル用減速機内を潤滑した潤滑油を冷却するラジエータを配設し、ラジエータをブロック化し、さらにブロック化された油ポンプ部およびフィルタ部を設け、これら各ブロックをフレキシブル配管を介して接続したものである。
【0014】
好ましくは、ラジエータと冷却ファンとの間に着脱自在のフィルターカートリッジを配設する、または、フィルターカートリッジは、ラジエータの冷却ファン側前面を覆う面積を有する。
【0015】
さらに、冷却ファンの周囲を覆う第1のダクトと、ラジエータの周囲を覆う第2のダクトを設け、第1のダクトは、冷却ファン外周部からラジエータの冷却ファン側前面に至るまで滑らかに拡大する形状をなす、または、第2のダクトは、ラジエータの背面側(冷却ファンに対向する面の反対側)でその流れ断面積が順次拡大する形状であることが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例を、図面を用いて説明する。
図1は、ミル用減速機を石炭ミルの下部に配置した実施例の縦断面図である。石炭ミルでは火力発電所における燃焼効率を向上させるため、原炭を200メッシュのフィルタを通過できる程度まで微粉化している。そして、原炭を投入する原炭入口31、微分炭を取出す微分炭出口32、減速機の出力テ−ブル17に取付けられたヨ−ク33、複数個の回転自在なロ−ラタイヤ34及びミルハウジング35を有している。このミル用減速機の大きさは、典型的には、全高約1500mm、全幅約1500mm、全長約2000mmと大型化している。
【0017】
原炭入口31から投入された石炭は、ヨ−ク33とロ−ラタイヤ34との間で粉砕され、微分状になった石炭は微分炭出口32から取出され、ボイラ−(図示せず)へ供給される。この際、石炭粉砕時に発生する下向きの荷重をヨ−ク33を介して全て減速機が支持している。そのため、ティルティングパッド形軸受スラスト軸受18のスラスト支持部に多大の軸受負荷が作用するとともに、減速機を構成する各歯車の歯面の負荷も、ポンプ等の一般産業用減速機に比べて多大になる。この負荷の増大に対応して、潤滑油として粘度の高い潤滑油が採用されている。
【0018】
ところで、図示は省略したが、石炭火力発電所においては上述した石炭ミルを複数台、通常5〜6台程度を同一機場内に配置している。そして、振動防止等のために、コンクリート柱に囲まれた中に石炭ミルを配置し、そのミルの下部にミル用減速機が取付けられている。
【0019】
石炭ミル用減速機では、原炭を粉砕する時にスラスト軸受に多大なスラスト荷重が作用する。それとともに粉砕リングやローラを駆動する動力系において、動力伝達の損失が発生する。これらおよび原炭内の水分を除去するための加熱により、石炭ミル設備の近傍は高温になる。例えば、ある試算では、10゜Cの原料炭を石炭ミルで粉砕するときに、57゜Cの吐出ガス温度であり、加熱用の空気温度は、420゜Cにも達している。この加熱空気は、石炭ミルのローラ部近傍に送られるから、ローラ部の下方にある減速機部は当然雰囲気温度が高くなる。しかも、石炭ミルのスラスト荷重及び伝達動力が大であるから歯車や軸受でも多量の熱を発生するので、これら潤滑部には低温の潤滑油を送ることが必須である。
【0020】
そこで、従来は、ミル用減速機に、オイルクーラ、油ポンプ、ラインフィルタ、オイルタンクを備え、潤滑油装置から低温の潤滑油を供給していた。そして、オイルクーラにおいて潤滑油を冷却するために、冷却水をオイルクーラに導いていた。この際、冷却水は石炭ミル装置とは離れた場所に設けたクーリングタワーに集められて冷却された後、再びオイルクーラに戻る循環路を循環して再利用されていた。なお、ミル用減速機がコンクリート柱間に設置されていたので、潤滑油装置をコンクリート柱よりも外側に配置し、潤滑油装置と減速機間を配管接続していた。その結果、潤滑油システムのスペースが必要であり、また、装置が複雑になっていた。
【0021】
なお、ミル用減速機100では、原炭をすりつぶすので、粉砕時に大きな振動が発生する。さらに、微粉炭がミル本体から漏れ出すのを完全に防止することは困難なため、微少な粉塵がミル本体から漏れ出る。つまりミル用減速機では、一般産業プラントで用いられる減速機に比べて、使用環境が厳しい。高温であること、粉塵が多いこと、さらに振動が多く、減速機が高負荷で運転されること等の悪条件下にも関わらず、ミル用減速機の省スペース化、簡素化を図るために、潤滑油系統を空冷にすることが強く望まれている。
【0022】
そこで本発明では、減速機に冷却ファン110を設けて空冷化している。この例を、図2以下を用いて説明する。図2は空冷減速機の縦断面図であり、図3はその正面図である。本図に示したミル用減速機は、2段の減速機である。入力軸1の先端にはベベルピニオン2が固定され、中間軸3にはベベルギヤ4が固定されている。ベベルピニオン2とベベルギヤ4とは噛み合い、入力軸1の回転が減速されて中間軸3に伝達される。入力軸1は軸受5、軸受6を介して円筒ケ−ス9に支持され、中間軸3は軸受7、軸受8を介して円筒ケ−ス9に支持されている。中間軸3は、太陽歯車10が固定され太陽歯車10を回転させる太陽歯車軸11とカップリング12によってスプライン結合している。また、太陽歯車軸11の下端面は球面状に形成されている。太陽歯車10は、キャリヤ13に支持された3個の遊星歯車14と噛み合っている。遊星歯車14は、円筒ケ−ス9にピン15を用いて複数個所固定された内歯歯車16と噛み合っている。キャリヤ13は、出力テ−ブル17とスプライン結合している。出力テ−ブル17は、ティルティングパッド形のスラスト軸受18を介して円筒ケ−ス9に支持されている。また、キャリヤ13は3個の遊星歯車14を支持している。これら太陽歯車軸11と3個の遊星歯車14及び内歯歯車16は遊星歯車装置を構成している。このように構成されたミル用減速機の入力軸1には、潤滑油及び減速機本体を冷却するために、直径約700mmの冷却ファン10が嵌合されている。
【0023】
入力軸1の端部は、カップリングを介して図示しない電動機に直結されている。これにより、入力軸1から入力された回転動力は、ミル用減速機を構成するベベル歯車と遊星歯車により減速され、出力軸109からミル粉砕リング部に伝達される。潤滑油装置および冷却装置はミル用減速機100にコンパクトに備え付けられている。なお、ミル用減速機のギヤケース112は、オイルタンクをも兼用している。ミル用減速機100内の歯車および軸受を潤滑した潤滑油は、ミル用減速機の背面側に位置する油ポンプ103によりミル用減速機の側面に設置されたラインフィルタ113に送られる。そして、このラインフィルタ113で摩耗粉等がろ過される。ろ過された清浄な潤滑油は、ミル用減速機100の入力軸1側に設けられたラジエータ111に送られる。ラジエータ111で放熱して温度が低下した潤滑油は、減速機を構成する各歯車の歯面や軸受に供給される。ラジエータ111には冷却ファン110から冷風が送風され、内部を流通する潤滑油と熱交換して潤滑油を冷却する。
【0024】
ところで、ミル用減速機100ではミル粉砕部で生じた下向きの荷重を支持するため、高粘度の潤滑油を使用する。そのため、一般産業に用いられるラジエターを使用すると圧力損失が大となり、規定の潤滑油圧力が得られない。そこで本実施例では、従来用いられてきた吐出圧力0.5MPaの油ポンプの代わりに、吐出圧力0.75MPaの油ポンプを使用している。
【0025】
また、ミル用減速機100にはミルの原炭を粉砕するときの振動が伝達する。そこで、油ポンプ103部、ラインフィルタ113部およびラジエータ111部を、各々ブロック化している。そして、各ブロックをミル用減速機の本体に取付けるときは、取付け部に防振ゴムを介在させて振動絶縁する。また、各ブロックを接続する配管の一部は、フレキシブル配管121、122である。フレキシブル配管部で振動吸収することにより、各ブロックの振動の位相が異なっていても、油ポンプ部、ラインフィルタ部およびラジエタ部の振動が配管に伝わって配管を破損させるのを防止できる。
【0026】
次に、本発明の他の実施例を図4に示す。本実施例が上記実施例と異なるのは、潤滑油の輸送配管を冷却管114として利用することである。ミル用減速機110の入力軸1部のケーシング118を軸方向に延在させ、このケーシング118回りに冷却管114を螺旋状に巡らせ、その冷却管114に冷却ファン110から送風された冷却空気を導いている。配管経路を長くして、冷却空気との熱交換面積を増大させ、冷却効果を向上させている。本実施例においても上記実施例と同様に、油ポンプ103部、ラインフィルタ113部およびラジエータ(冷却配管)114部を各々ブロック化し、各ブロックの取付け部に防振ゴムを介在させて、振動絶縁を図っている。また、各ブロックを接続する配管の一部を、フレキシブル配管121、122にして振動を吸収している。
【0027】
本発明のさらに他の実施例を図5に示す。図5は、石炭ミル用減速機の上面図である。本実施例が上記各実施例と相違する点は、ミル用減速機100の入力軸1側に配置したラジエータ111の前方および外周部に通風ダクト1123、24を設けて冷却ファン110から送風された冷風を導く流路を形成するとともに、ラジエータ111の上流側にエアフィルタ116を設けたことである。これにより、石炭ミルが設置された機場内の埃などが、ラジエータ111に付着または堆積することを防止している。なお、通風ダクトの形状は、冷風が効率良く流れることができるなだらかな曲線が望ましい。
【0028】
また、ラジエータを通過した冷風は、ラジエータにおいてミル用減速機100の各部を潤滑した潤滑油と熱交換して熱膨張するので、冷風の流れが阻害され易い。そこで、ラジエータ111の下流側では、通風ダクト124の形状を断面積が流れ方向に順次増加する形状とすることが望ましい。さらに、エアフィルタ116はラジエータ111の前面側を覆うことが望ましい。これにより、ラジエータ111内部に粉塵が付着または堆積するのを防止できる。
【0029】
ラジエータ111は、入力軸1側の冷却ファン110下流に設けられているが、その際、ラジエータ111をケーシング118の上方および左右両側面に配置し、各ラジエータ111間を配管接続している。そして、エアフィルタ116をカートリッジ構造としている。ラジエータがケーシング118の下方に無いので、エアフィルタ116の取付けが容易になるとともに、カートリッジを通風ダクト124の上部または側面から引き抜くことが可能になり、カートリッジの交換を簡単に行える。これにより、日常点検が容易になり、専門の作業員が不要となり、メンテナンス費用を低減できる。なお、ラジエータ111のカートリッジを洗浄等により再使用可能にすれば、地球環境を保全できる。また、ラジエータの容量を増大させるときに、ケーシング118の下方にもラジエータを配置してもよいことは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、石炭ミル用減速機システムをミル用減速機本体と潤滑油装置を一体化することが出来、システムトータルとしての省スぺース、低コストを実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る石炭ミルの一実施例の縦断面図である。
【図2】本発明に係る石炭ミル用減速機の一実施例の縦断面図である。
【図3】図2に示した石炭ミルの正面図である。
【図4】本発明に係る石炭ミル用減速機の他の実施例の正面図である。
【図5】本発明に係る石炭ミル用減速機のさらに他の実施例の上面図である。
【符号の説明】
1・・・入力軸、100・・・ミル用減速機、103・・・油ポンプ、109・・・出力軸、110・・・冷却ファン、111・・・ラジエータ、112・・・ギヤケース、113・・・ラインフィルタ、114・・・ベア配管、116・・・エアフィルタ、121、122・・・フレキシブル配管、123・・・第1の通風ダクト、124・・・第2の通風ダクト。
Claims (7)
- 複数の粉砕ローラとこの粉砕ローラの転動面が形成された粉砕リングを有し、前記粉砕ローラと前記粉砕リング間に導かれた石炭を粉砕する石炭ミルにおいて、前記粉砕リングを回動させる動力を原動機から前記粉砕リングに伝達するミル用減速機を設け、原動機に接続されるこのミル用減速機の入力軸に冷却ファンを設け、前記ミル用減速機は、冷却ファンの下流側に配置され、前記ミル用減速機を潤滑する潤滑油を冷却するブロック化されたラジエータ部と、油ポンプ部と、フィルタ部とを有し、各ブロックをフレキシブル配管を介して接続したことを特徴とする石炭ミル。
- ローラとリング間に導かれた原料炭を粉砕する石炭ミルに備えられるミル用減速機において、原動機に接続されるミル用減速機の入力軸に冷却ファンを設け、この冷却ファンとミル用減速機本体間にこのミル用減速機内を潤滑した潤滑油を冷却するラジエータを配設し、前記ラジエータをブロック化し、さらにブロック化された油ポンプ部およびフィルタ部を設け、これら各ブロックをフレキシブル配管を介して接続したことを特徴とするミル用減速機。
- 前記各ブロックを、防振手段を介して減速機本体に取付けたことを特徴とする請求項2に記載のミル用減速機。
- 前記ラジエータと前記冷却ファンとの間に着脱自在のフィルターカートリッジを配設したことを特徴とする請求項2に記載のミル用減速機。
- 前記フィルターカートリッジは、前記ラジエータの冷却ファン側前面を覆う面積を有することを特徴とする請求項4に記載のミル用減速機。
- 前記冷却ファンの周囲を覆う第1のダクトと、前記ラジエータの周囲を覆う第2のダクトを設け、前記第1のダクトは、冷却ファン外周部からラジエータの冷却ファン側前面に至るまで滑らかに拡大する形状をなすことを特徴とする請求項2に記載のミル用減速機。
- 前記第2のダクトは、ラジエータの背面側でその流れ断面積が順次拡大する形状であることを特徴とする請求項6に記載のミル用減速機。
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