JP3550205B2 - マルチビームアンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、通信衛星(CS)と放送衛星(BS)等、比較的衛星離角の広い複数の衛星からの電波を同時に受信する際に使用されるマルチビームアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の衛星受信アンテナにおいて、複数の衛星から得られる衛星電波を受信するには、複数の衛星それぞれに対して専用のアンテナを設置するか、又は、1つのパラボラ反射鏡に対向してそれぞれビーム入射位置を異ならせた複数個の一次放射器を取付け、マルチビームアンテナとしている。
【0003】
図3は従来のマルチビームアンテナの構成を示す図である。
図3における従来のマルチビームアンテナでは、1焦点型のオフセットパラボラ反射鏡10の焦点Fに対し、ホーン型の一次放射器11a,11bをそれぞれ偏位させ、受信ビームの偏向を図ったもので、反射鏡10の長軸12を大地垂直軸に一致させて設置し、その反射鏡10の焦点Fより、衛星軌道軸13の傾斜に対し逆傾斜にホーン一次放射器11a,11bを配列し偏位させるものである。
【0004】
これにより、それぞれビーム入射位置を異ならせた一次放射器11a,11bにより受信ビームを2通りに偏向させ、例えば通信衛星と放送衛星からの電波を同時受信できるようにしている。
【0005】
ここで、前記一次放射器11a,11bによる偏位量Lは、次式1により表わされる。
L=tanα・(→)MF・BDF …式1
但し、αは受信地点の衛星離角、BDFはビーム偏向係数である。
【0006】
すなわち、前記偏位量Lは、「α」か「(→)MF」が大きいほど大きくなるもので、通常、通信衛星(CS)と放送衛星(BS)を受信する場合は「α」が大きいため、偏位量Lも大きくなる。
【0007】
そして、このような、1焦点のパラボラ反射鏡10を用いたマルチビームアンテナでは、一次放射器11a,11bの偏位量Lが大きくなると、著しい利得の低下を招いてしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、前記従来の1焦点のパラボラ反射鏡10を用いたマルチビームアンテナでは、一次放射器11a,11bの偏位量Lを大きくすると利得の低下が著しいため、衛星離角の広いマルチビームアンテナは実現できないという問題がある。
【0009】
本発明は前記のような問題に鑑みてなされたもので、衛星離角の比較的広い複数の衛星に対しても、著しい利得の低下を招くことなく、そのそれぞれの衛星電波を同時に受信することが可能になるマルチビームアンテナを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係わるマルチビームアンテナは、1焦点型オフセットパラボラアンテナの反射鏡をその長軸の2等分線に対応して上下2分割した下半分に相当する1/2反射鏡を2枚用い、この2枚の1/2反射鏡をそれぞれの分割線同士で接合してなり、その長手方向を通信衛星(CS)及び放送衛星(BS)の軌道軸に対応させて設置した2つの焦点を有する反射鏡と、この2焦点反射鏡の一方の焦点に照射軸を合せて配置される通信衛星受信用のCSホーンと、前記2焦点反射鏡の他方の焦点に照射軸を合せて配置される放送衛星受信用のBSホーンとを備えて構成したものである。
【0011】
【作用】
つまり、前記1/2反射鏡を2枚接合してなる2焦点反射鏡の各焦点のそれぞれに配置したCSホーン及びBSホーンにより、衛星離角αの比較的広いCS波及びBS波でも、C/N比を損なわずに、同時受信できることになる。
【0012】
【実施例】
以下図面により本発明の実施例について説明する。
図1は本発明のマルチビームアンテナの構成を示す図である。
このマルチビームアンテナは、通常の1焦点型オフセットパラボラアンテナの反射鏡を、その長軸の2等分線に対応して上下2分割した下半分の部分の2枚の1/2反射鏡20,20″を、それぞれその分割線同士で接合(接合線O)し、上下左右対称の楕円反射鏡21として構成したもので、この反射鏡21の長手方向を、通信衛星(CS)及び放送衛星(BS)の衛星軌道軸13に対応させて設置する。
【0013】
前記1/2反射鏡20,20″を接合したマルチビームアンテナの反射鏡21は、2つの焦点F及びF″を有するもので、一方の焦点Fには、通信衛星受信用のホーン型一次放射器(CSホーン)22を配置し、他方の焦点F″には、放送衛星受信用のホーン型一次放射器(BSホーン)23を配置する。
【0014】
このように構成すると、通信衛星(CS)からの電波は、接合線OよりM点側の1/2反射鏡20では、CSホーン22を配置した一方の焦点Fに反射集束するが、この際、M″点側の1/2反射鏡20″では、前記一方の焦点Fへ反射する電波に収差が生じる。
【0015】
また、放送衛星(BS)からの電波は、接合線OよりM″点側の1/2反射鏡20″では、BSホーン23を配置した他方の焦点F″に反射集束するが、この際、M点側の1/2反射鏡20では、前記他方の焦点F″へ反射する電波に収差が生じる。
【0016】
つまり、前記受信電波の収差によるビームの偏向や利得低下はあるものの、前記CSホーン22及びBSホーン23は、その何れもが、反射鏡21の全面による反射電波を集束する。
【0017】
次に、前記構成によるマルチビームアンテナの原理を説明する。
図2は前記マルチビームアンテナの衛星軌道軸13に対応する長手方向の切断面座標を示す図である。
【0018】
まず、X−Z軸の座標に対して、X =4FZの反射鏡の鏡面座標曲線を引き、その+側の座標のある点をDXZと定め、そこから曲線(X =4FZ)に沿って開口径分の点UXZを定め、その曲線(DXZ−UXZ)の中点をCXZとする。
【0019】
また、X軸において、前記CXZの2倍の位置にZ′軸を引き、このX−Z′軸の座標に対して、X =4F′Z′の鏡面座標曲線を引き、その−側の座標の曲線(X =4F′Z′)上で前記DXZと同様の位置にDXZ′と定めると、曲線(X =4F′Z′)は前記曲線(DXZ−UXZ)の中点CXZにて交わる。
【0020】
すなわち、前記曲線(DXZ−CXZ)と曲線(DXZ′−CXZ)とは、CXZを中心にして対称となる。
この状態で、衛星電波が座標右方向から到来した場合、曲線(DXZ−CXZ)による反射波はF点へ集束され、また、曲線(DXZ′−CXZ)による反射波はF′点へ集束される。
【0021】
そして、前記X−Z′軸座標の曲線(DXZ′−CXZ)を点CXZを中心にしてθ度座標変換すると、点DXZ′が点UXZに重なるのに伴ない、その焦点F′もF″へ移動する。
【0022】
これにより、θ度座標変換後の曲線(DXZ′−CXZ)は、座標右方向から時計回りにθ度回転した方向から到来する衛星電波を、その焦点F″へ集束させる。
【0023】
ここで、前記図1に示すマルチビームアンテナのM点側の1/2反射鏡20の衛星軌道軸断面は、前記図2における座標曲線(DXZ−CXZ)に相当し、M″点側の1/2反射鏡20″の衛星軌道軸断面は、座標曲線(CXZ−UXZ)の実線部、つまり、θ度座標変換後の曲線(DXZ′−CXZ)に相当する。
【0024】
よって、θ度からなる比較的広い離角のCS波及びBS波が、それぞれ焦点F及びF″へ反射集束される。
一方、前記CS波及びBS波の受信地点の衛星離角αとすると、反射鏡の座標変換量θは、次式2により求められる。
【0025】
θ=(α−収差によるビーム偏向角)/BDF …式2
そして、前記θは、次式3に示す通り、DXZの設定と反射鏡焦点距離Fの設定により可変可能であり、DXZを大きくとればθは大きくなり、また、Fを大きくとればθは小さくなるが収差も小さくなる。
【0026】
θ=180−tan−1{CXZ(X)−DXZ(X)/CXZ(Z)−DXZ(Z)}−tan−1{UXZ(X)−CXZ(X)/UXZ(Z)−CXZ(Z)} …式3
なお、前記θの設定をより大きくしなければならない場合に、DXZを大きくすると、反射鏡の軸比(長軸/短軸)が非常に大きくなる。これを避けるため、前記θの不足分は、BSホーン23を焦点F″よりそのホーン照射軸に対し垂直に偏位させ受信ビームを偏向させることで、衛星離角αに対応させてもよい。
【0027】
この場合、前記BSホーン23の偏位により、CS受信のアンテナ利得よりBS受信のアンテナ利得が多少低下しても、BS波の実効副射電力(E.I.R.P)はCS波のそれに比べて大きいため問題とはならない。
【0028】
したがって、前記構成のマルチビームアンテナによれば、1焦点型オフセットパラボラアンテナの反射鏡を、その長軸の2等分線に対応して上下2分割した下半分の部分の2枚の1/2反射鏡20,20″を、それぞれの分割線同士で接合し、2つの焦点F及びF″を有する上下左右対称の楕円反射鏡21とすると共に、この反射鏡21の長手方向を、通信衛星(CS)及び放送衛星(BS)の衛星軌道軸13に対応させて設置し、一方の焦点Fには、通信衛星受信用のCSホーン22を配置し、他方の焦点F″には、放送衛星受信用のBSホーン23を配置して構成したので、衛星離角αの比較的広いCS波及びBS波を、C/N比を損なうことなく、同時に受信することができるようになる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、1焦点型オフセットパラボラアンテナの反射鏡をその長軸の2等分線に対応して上下2分割した下半分に相当する1/2反射鏡を、2枚接合してなる2焦点反射鏡の、各焦点のそれぞれに配置したCSホーン及びBSホーンにより、衛星離角の比較的広い複数の衛星に対しても、著しい利得の低下を招くことなく、そのそれぞれの衛星電波を同時に受信することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わるマルチビームアンテナの構成を示す図。
【図2】前記マルチビームアンテナの衛星軌道軸に対応する長手方向の切断面座標を示す図。
【図3】従来のマルチビームアンテナの構成を示す図。
【符号の説明】
13…衛星軌道軸、20、20″…1/2反射鏡、21…2焦点反射鏡、22…CSホーン、23…BSホーン、O…反射鏡接合線、F…CS反射集束焦点、F″…BS反射集束焦点。

Claims (2)

  1. 1焦点型オフセットパラボラアンテナの反射鏡をその長軸の2等分線に対応して上下2分割した下半分に相当する1/2反射鏡を2枚用い、この2枚の1/2反射鏡をそれぞれの分割線同士で接合してなり、その長手方向を第1の衛星及び第2の衛星の軌道軸に対応させて設置した2つの焦点を有する反射鏡と、
    この2焦点反射鏡の一方の焦点に照射軸を合せて配置される第1の衛星受信用のホーンと、
    前記2焦点反射鏡の他方の焦点に照射軸を合せて配置される第2の衛星受信用のホーンとを具備し、
    前記2焦点反射鏡の衛星軌道軸に対応する長手方向の一端点及び他端点及びその中点を、それぞれX−Z軸座標面における鏡面座標曲線(X 2 =4FZ)上のDXZ及びUXZ及びCXZとした場合に、前記第1の衛星と第2の衛星に対する各受信ビーム間のなす角度θは、
    Figure 0003550205
    に基づき調整される、
    ことを特徴とするマルチビームアンテナ。
  2. 前記第2の衛星受信用のホーンは放送衛星受信用のBSホーンであり、
    このBSホーンは、前記他方の焦点よりそのホーン照射軸に対し垂直な方向に偏位自在に配置されることを特徴とする請求項記載のマルチビームアンテナ。
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