JP3549209B2 - 可動支持部材を備えた脛骨補綴物 - Google Patents

Description

発明の背景
本発明は、広義には、人間の膝関節の再構築に使用する補綴装置の改良に関する。一層詳しくは、本発明は、無理のない範囲の膝の屈曲運動、膝関節に加わる荷重により良く順応するようになっている可動支持要素を包含する人工膝用の改良した脛骨補綴物に関する。
人工膝関節は、この技術分野では一般に知られており、代表的なものは、切除した脛骨の上端、切除した大腿骨の下端のそれぞれに移植するようになっている対応した形態の脛骨、大腿骨補綴物からなる。脛骨補綴物はプラスチック製の半月支持部材を包含し、この半月支持部材が大腿骨要素上の凸状に湾曲した内側、外側顆頭がそれぞれ係合して着座する上向きの内側、外側顆陥凹を構成する。これに関して、脛骨、大腿骨の補綴物の全体的な結合構造は、特に顆陥凹およびそれに関係した大腿骨顆頭に関して、一般的に人間本来の膝関節の生理機能に似ている。大腿骨顆頭が膝関節の靭帯、腱構造を含む本来の結合組織によって本来の膝屈曲運動、荷重の範囲を通じて半月支持部材との着座支持係合状態に保持されると望ましい。
しかしながら、人間の膝関節の複雑な機械的構造が最適な人工関節を設計するのを非常に難しくしていた。より具体的には、本来の膝屈曲範囲内では、自然の膝は回旋運動、滑り運動の組み合わせを行っており、枢軸および関係した大腿骨、脛骨間接触点が膝屈曲運動の程度に応じて変位するのである。この複雑な動きが、膝関節が受ける可能性のある比較的大きな荷重に耐えながら自然な膝の動きを模倣することができる最適な人工膝を設計するのを非常に難しくしていた。
改良されたと称する膝補綴物のための１つの方法では、患者の骨に固定した脛骨要素に相対的に少なくともある程度変位移動できるように脛骨支持部材を取り付けている。たとえば、米国特許第5,071,438号を参照されたい。この概念では、内側顆陥凹の下方の位置でピンまたはポストが支持部材から下方に突出し、脛骨要素に形成された浅い陥凹に入るようになっている。ポストおよび陥凹は、脛骨要素に相対的な支持部材のある程度の前後方向変位を許し、自然な膝運動により良く順応し、支持要素の摩耗も最低限に抑えるように設計されている。しかしながら、不幸にも、この概念では、許容しがたいほどの頻度で転位が生じ、広く好評を得たり、使用されたりすることはなかった。
本発明は、可動支持要素を有するタイプではあるが、この可動支持要素が人工要素の望ましくない転位の可能性を低減するように装着、拘束された改良脛骨補綴物に関する。
発明の概要
本発明によれば、人工膝関節用の改良脛骨補綴物は、適当な高密度プラスチックなどからなる可動半月支持部材と組み合わせて、患者の骨に安定して固着できるようになっている脛骨要素を包含する。
一層詳しく言えば、この脛骨要素は、患者の脛骨の外科的に切除した端部に取り付けるための適当なベース面を包含する。この取り付けは、好ましい形態では、機械的に連動するポスト、ピンの組み合わせあるいは多孔性骨内植面の使用またはこれら両方によって達成される。脛骨要素は、半月支持部材を受け、支持するための上向きの脛骨トレーを構成し、この脛骨トレーが上向きの内側、外側顆頭陥凹を構成し、人工関節の大腿骨要素に形成した内側、外側顆頭のそれぞれと係合、着座するようになっている。
本発明によれば、脛骨トレーの内側端は、180度より充分に大きい円弧状経路を通って延び、支持部材の内側端と係合し、それを拘束する部分円形の短い直立した周囲ロックリムを包含する。これに関して、支持部材内側端はロックリム内で回転自在に支持されてロックリムの結合構造によって構成される中心軸線に相対的な支持部材外側端の前後方向変位運動に順応する円筒形のセグメントを有する。
支持部材の前後方向変位運動範囲は、脛骨トレーから上向きに突出して支持部材に形成した細長いガイドスロットに受け入れられた止めポストによって制限することができる。好ましい形態では、止めポストは脛骨トレー上のほぼ中央に配置してあり、ガイドスロットは内側、外側の顆陥凹間の位置で支持部材の下面に形成してある。ガイドスロットは約20度の全運動範囲を通じて支持部材の前後方向変位運動に順応する円弧形態を持っていてもよい。
本発明の他の特徴、利点は、本発明の原理を例示、説明する添付図面に関連して行う以下の詳細な説明からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
添付図面は本発明を示している。この図面において：
第１図は、本発明の新規な特徴を具体化している改良脛骨補綴物を示す展開斜視図である。第２図は、第１図に示す脛骨補綴物の展開していない斜視図である。
第３図は、ほぼ第２図の３−３線に沿った側面図である。
第４図は、第２図に示す脛骨補綴物の頂面図である。
第５図は、ほぼ第４図の５−５線に沿った垂直横断面図である。
第６図は、ほぼ第４図の６−６線に沿った垂直縦断面図である。
第７図は、ほぼ第６図の７−７線に沿った背面図である。
第８、９図は、第４図と同様の頂面図であるが、脛骨要素に相対的な支持部材の前後方向変位運動を説明する図である。
第10図は、第２図と同様の斜視図であるが、本発明の別の好ましい形態を示す図である。第11図は、第10図の実施例の展開斜視図である。
好ましい実施例の詳細な説明
図面に示すように、人工膝用の脛骨補綴物は、第１図において全体的に参照符号10で示してある。脛骨補綴物10は、大まかに言って、支持部材14と組み合わせて、患者の切除脛骨（図示せず）の上端に安定して固定するようになっている脛骨要素12を包含する。支持部材14は脛骨要素12によって可動状態で支持されており、脛骨要素12に相対的に支持部材14が限られた範囲の変位移動を行え、本来の範囲の、膝屈曲運動、再構築された膝関節に加わる荷重により良く順応できるようになっている。これに関して、本発明の改良脛骨補綴物10は米国特許第5,071,438号の発明の改良である。この米国特許は参考資料としてここに援用する。
脛骨要素12は、ほとんどの点において、膝再構築手術の途中で患者の脛骨に取り付けるほぼ普通の形態を持つように構成してある。この点に関して、脛骨要素12は強くて生体親和性のある外科移植材料、たとえば、コバルトクロム、チタン合金などで作る。第１図〜第13図および第５図〜第７図に最も良く示すように、脛骨要素12は上方プラトーまたはトレー16を提供し、ここから下方へ中央のテーパ付き固定ポスト18が突出している。さらに、１つまたはそれ以上の回転防止用ピンまたはフルート20も設け、脛骨トレー16の下面から下方へ突出するようにしてもよい。固定ポスト18および回転防止用ピン20は加工した患者の骨（図示せず）と機械的に固着する手段となり、これらの機械的な固着構造を多孔性骨内植面（図示せず）と組み合わせて用いるか、骨セメントと一緒に用いて脛骨要素12を患者の骨に固着してもよい。
脛骨トレー16は普通の幾何学形状を持っており、いくぶん小さい直径サイズのほぼ円形の外側端と一体につながるほぼ円形の内側端を構成し、全体的にほぼ楕円形の外観を呈するトレー形態となっている。トレー16は、支持部材14を受け、支持するようになっており、代表的には高密度で生体親和性のあるプラスチック材料、たとえば、ポリエチレンなどで形成してあり、脛骨トレーの幾何学形状にほぼ一致する形状を有する。第１図、第２図、第４図に最も良く示すように、支持部材14は上向きの内側顆陥凹22と外側顆陥凹24とを構成しており、これらの陥凹はそれぞれ脛骨トレー16の内側端、外側端の上方に配置され、またそれぞれ、この技術分野で知られているように大腿骨要素の内側、外側顆頭（図示せず）と係合、着座するように位置している。
本発明によれば、脛骨トレー16は、さらに、その内側端の周縁まわりに部分円形形態で延びる短い直立したロックリム26を包含する。これに関して、ロックリム26は橈側中心に形成してあって支持部材14の対応する形状の円筒形内側端セグメント28を受け入れ、回転自在に支持する。第４図は、180度より充分に大きい円弧を描いて延びるロックリム26を示しており、このロックリム26はそれの構成する中心軸線に相対的に回転運動できるように支持部材14の円筒形内側端セグメント28を受け入れ、拘束する。さらに、支持部材14の円筒形セグメント28はロックリム26よりも充分に大きい部分円形経路を通じて延び、支持部材内側端がロックリム内で回転するときに支持部材外側端の前後方向の変位に順応するようになっている。第４図は、内側端と外側端の間の移行領域において支持部材14に形成した一対の止めランド30を示している。これらの止めランド30はロックリム26の隣接端と係合して（第８図、第９図）、脛骨トレー16に相対的な支持部材の前後方向の変位に対する端部限界を定めるように配置してある。図示してはいないが、ここで、ロックリム26がその外側端を含めて、あるいは、少なくとも外側端の一部を含めて脛骨トレーの全周縁まわりに延び、脛骨トレーの構造強度を向上させたり、支持部材の過剰な前後方向変位を制限する付加的な止めとなるようにしたりしてもよいことは了解されたい。
患者の膝再構築手術の後に脛骨補綴物を正常に使用しているとき、支持部材14は人工膝関節の大腿骨要素（図示せず）上の大腿顆頭に係合し、支持する。患者の膝が通常の運動範囲を通じて動かされるとき、大腿顆頭はそれを支持している顆陥凹22、24に対して回動し、滑動する。無理のない膝屈曲運動は本発明の可動支持部材14によって受け止められる。これは、大腿骨要素と支持部材の間で相互に作用する力が、ロックリム26および支持部材上の隣接止めランド30によって定められる回転限度内での、支持部材外側端の小程度の前方変位あるいは後方変位を生じさせることができるからである。
本発明の別の特徴によれば、脛骨要素12上に止めポスト32も設けてあり、これは通常の膝運動中に人口構造の意図しない、望ましくない転位を防ぐガードとして作用する。図示した止めポスト32は、下に位置する固定ポスト18と同軸に一致するように示したほぼ中央の位置で脛骨トレー16から上向きに突出している。止めポスト32は支持部材14の下面に形成したガイドスロット34内に上向きに突入する。好ましい幾何学形状では、ガイドスロット34は限られた経路を通じて移動できるように支持部材14を案内、拘束する円弧形となっている（第４図、第８図、第９図）。好ましい形態では、第８図、第９図で見て約20度の全運動範囲に対して、前方変位は約10度の範囲に限られ、後方変位も同様に約10度の範囲に限られる。止めポスト32は、ガイドスロット34内に延びるビード38（第５図）をスナップ嵌合で受け入れ、支持部材14を脛骨トレー16上の所定位置に垂直方向に錠止する周溝36を包含すると便利である。
第10図、第11図は本発明の別の好ましい形態を示しており、ここでは、第１図〜第９図に示し、説明したものと同一の構成要素は同じ参照符号で示してある。第10図、第11図の実施例は、支持部材14の下面に適当に取り付けたベースプレート40を設けた点で第１図〜第９図の実施例とは異なる。たとえば、ベースプレート40は支持部材の下面に形成した対応するソケット（図示せず）に受け入れられる短い直立したポスト（図示せず）を包含してもよい。ベースプレート40は支持部材14の外形に一致する幾何学的形状を有し、さらに、支持部材14の下面に形成したガイドスロット34（第10図、第11図には示さない）と整合するガイドスロット35も包含する。ベースプレート40は、適当な移植可能金属材料で作ってあり、ベースプレート40と脛骨トレー16の間の滑り面が金属対金属面となるようにしてある。これにより、非金属製の支持部材14の摩耗を減らすことができる。
ここに説明した脛骨補綴物に対する種々のさらなる変更、改良は当業者には明らかであると考える。これに関して、図面に示した発明の幾何学構造が患者の後十字靭帯を除去した移植用途で用いることを意図したものであることは了解されたい。膝補綴要素を適当に整形して後十字靭帯が残っている用途にも合わせることができることも了解されたい。したがって、本発明は上記の説明、添付図面によって限定されるものではなく、添付の請求の範囲によってのみ限定されるものである。

Claims (19)

1. 患者の脛骨の切除端に固定するための手段を有する脛骨要素を有し、該脛骨要素は、内側端および外側端を有する脛骨トレーを構成し、この脛骨トレーの内側端がほぼ円筒形の短い直立するロックリムを包含し、
   更に、前記脛骨トレー上に支持された半月支持部材を有し、該半月支持部材は、前記脛骨トレーの内側端及び外側端それぞれの上方に位置する内側端及び外側端を有し、且つ、内側及び外側の顆陥凹を構成しており、支持部材内側端は、前記脛骨トレーのロックリム内に回転自在に支持されて、このロックリムによって定められた中心軸線に対して前記支持部材外側端の前後方向変位を許すほぼ円筒形の形状を有し、
   更に、ロックリムの中心軸線は脛骨要素の中心軸線から偏位している、ことを特徴とする膝関節補綴物。
2. 前記ロックリムが少なくとも約180度の円弧経路に沿って延びていることを特徴とする請求の範囲第１項記載の膝関節補綴物。
3. 前記ロックリムが前記支持部材の内側端と係合し、それを保持するに充分な、180度よりも大きい円弧経路に沿って延びていることを特徴とする請求の範囲第１項記載の膝関節補綴物。
4. 前記支持部材の内側端が、前記脛骨トレーの内側端によって定められる円弧経路よりも大きい円弧経路に沿って延びる円筒形であることを特徴とする請求の範囲第３項記載の膝関節補綴物。
5. さらに、前記支持部材外側端の前後方向移動範囲を制限する止め手段を包含することを特徴とする請求の範囲第１項記載の膝関節補綴物。
6. 前記止め手段が前記脛骨要素、前記支持部材のうちの一方に形成した止めポストと、前記脛骨要素、前記支持部材のうちの他方に形成し、ほぼ前後方向に延びるガイドスロットとを包含し、前記止めポストが前記ガイドスロット内に受け入れられ、それによって、前記ガイドスロットが前記支持部材外側端の前後方向移動の範囲を制限することを特徴とする請求の範囲第５項記載の膝関節補綴物。
7. 前記ガイドスロットが円弧状であることを特徴とする請求の範囲第６項記載の膝関節補綴物。
8. 前記ガイドスロットが約20度の円弧経路に沿って延びていることを特徴とする請求の範囲第７項記載の膝関節補綴物。
9. さらに、前記ガイドスロット内に前記止めポストを保持する手段を包含することを特徴とする請求の範囲第６項記載の膝関節補綴物。
10. 前記保持手段がスナップ嵌合式相互連結部を包含することを特徴とする請求の範囲第９項記載の膝関節補綴物。
11. 前記止めポストが前記脛骨トレーから上向きに突出するように形成してあり、前記ガイドスロットが前記支持部材の下面に形成してあることを特徴とする請求の範囲第６項記載の膝関節補綴物。
12. 前記止め手段が一対の止めランドを包含し、これらの止めランドが、前記支持部材外側端の、移動範囲の両端への前後方向移動の際に前記ロックリムの両端とそれぞれ係合するように前記支持部材に形成してあることを特徴とする請求の範囲第５項記載の膝関節補綴物。
13. さらに、前記脛骨トレーと前記支持部材の間に挿設したスライドプレートを包含し、このスライドプレートが金属材料で形成してあり、前記支持部材と一緒に移動できることを特徴とする請求の範囲第１項記載の膝関節補綴物。
14. 患者の脛骨の切除端に固定するための手段を有する脛骨要素を有し、該脛骨要素は、内側端および外側端を有する脛骨トレーを構成し、前記内側端がほぼ円筒形であり、且つ、180度より大きい円弧経路に沿って延びるほぼ部分円形の短い直立したロックリムを有し、更に、前記脛骨トレー上に支持された半月支持部材を有し、該半月支持部材は、前記脛骨トレーの内側端および外側端それぞれの上方に支持された内側端および外側端を構成し、前記支持部材内側端は、前記ロックリムよりも大きい円弧経路に沿って延びる円筒形面を構成しており、前記ロックリムが、それによって定められた中心軸線まわりに回転運動できるように、前記支持部材内側端の前記円筒形面と係合し、且つ、それを保持して前記支持部材外側端の前後方向の移動を許し、前記脛骨トレーおよび前記支持部材が、さらに、前記支持部材外側端の前後方向移動の許容範囲を制限する止め手段を有する、ことを特徴とする膝補綴物。
15. 前記止め手段が、前記脛骨要素、前記支持部材のうちの一方に形成した止めポストと、前記脛骨要素、前記支持部材のうちの他方に形成してあり、ほぼ前後方向に延びているガイドスロットとを包含し、前記止めポストが前記ガイドスロット内に受け入れられており、それによって、前記ガイドスロットが前記支持部材外側端の前後方向移動の範囲を制限することを特徴とする請求の範囲第14項記載の膝補綴物。
16. 前記ガイドスロットが円弧状であることを特徴とする請求の範囲第15項記載の膝補綴物。
17. さらに、前記ガイドスロット内に前記止めポストを保持するスナップ嵌合手段を包含することを特徴とする請求の範囲第15項記載の膝補綴物。
18. 前記止め手段が一対の止めランドを包含し、これらの止めランドが前記支持部材に形成してあり、前記支持部材外側端の、運動範囲のそれぞれの端に向かう前後方向移動の際に前記ロックリムのそれぞれの端と係合するようになっていることを特徴とする請求の範囲第14項記載の膝補綴物。
19. さらに、前記脛骨トレーと前記支持部材の間に挿設したスライドプレートを包含し、このスライドプレートが金属材料で形成してあり、前記支持部材と一緒に動けることを特徴とする請求の範囲第14項記載の膝補綴物。

Images