JP3548582B2 - 電極箔 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、コンデンサ、特に電解コンデンサ等に用いられ得る電極箔に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の電解コンデサは電極箔としてアルミニウム箔を用い、表面を化学エッチングにより粗面化している。このようにして粗面化した表面を酸化させてアルミナを形成し、アルミナの誘電率と表面積とで大きな静電容量が得られるようにしている。
【0003】
一方、民生機器の小型化に伴い大容量の電解コンデンサの小型化の要求が高っている。この要求に応えるため、アルミニウム電解コンデンサでは、通常表面積を増大して大容量化を図っている。また、最近では、アルミニウム箔上に酸化物の誘電率の大きいTi、Ta等の金属を成膜することによって容量の増大を図る方法が提案されている。
このような方法の一例としては、アルミニウム箔等の導電性基板上にTi層を設け、Ti層上に形成される誘電率の大きい酸化チタンTiO2 の自然酸化膜を誘電体として用いる方法や、高い誘電率の酸化チタンを利用するだけでなくアルゴンガス等の不活性ガスを導入し、ガス雰囲気中でTiを成膜する方法や斜め入射成膜法により表面積を大きくして静電容量の増大をはっている。
アルミニウム箔等の導電性基板上にTi層等を形成する手段としては、例えば真空槽内にアルゴンガス等の不活性ガスを導入し、不活性ガス雰囲気内でアルミニウム箔等の導電性基板上にTiを成膜する蒸着法等の成膜技術が用いられる。成膜中に、不活性ガスを導入すると、蒸発粒子の平均自由行程は小さくなり、成膜される膜は散乱効果により充填密度の低い膜となる。従って、凹凸を考慮した実効的な表面積は非常に大きなものとなる。こうして形成された膜を大気中に暴露すると、膜表面のTiは大気中の酸素と反応して薄い緻密な自然酸化膜を形成し、膜表面には表面積の大きい誘電体の薄い層ができ、それにより静電容量の大きい電解コンデンサ用の電極箔として利用できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アルゴンガス雰囲気中で蒸着法によりTi層を成膜して形成した従来の電極箔について、その静電容量を、20℃、10重量%のホウ酸アンモニウム溶液中でLCRメータを用いて1V、120Hz の条件で測定したところ、Ti膜の膜厚が4000オングストロームの場合には、200 μF/cm2 程度の値であり、この値はエッチング処理を施したアルミニウム箔電解コンデンサの容量の2倍程度であり、電解コンデンサの高容量化という観点からは満足できるものとなっていない。
【0005】
ところで、静電容量はTi層の膜厚とほぼ比例しているため、Ti層の膜厚を厚く形成すれば静電容量をさらに高めることができるが、1μmの厚さにTi層を成膜することは、実際問題として生産性の観点や、アルミニウム箔の熱変形のため実用的ではない。そのため、Ti膜厚が薄くてもより高容量化を達成できしかも生産性のあるコンデンサ用電極材料が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決して、高容量化を達成できる電極箔を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による電極箔は、導電性箔の片面又は両面に、表面積を大きくするため細くて先の尖った柱状構造をもち、C、H、Fのいずれか一種以上の元素を含み、これら元素の含有量が70原子%以下であるTi層を設けたことを特徴としている。
【0008】
【作用】
このように構成された本発明の電極箔においては、Ti膜中にO、C、H、F、Bを混入させることにより、平滑なアルミニウム箔の表面に成膜した膜では表面が非常に凹凸のある面となり、表面積は不活性ガス中での蒸着法や斜め蒸着法により形成した膜に比較してはるかに大きくなる。その結果この電極箔をコンデンサに利用した場合には、Ti膜表面の誘電率の高い酸化チタン膜を利用するだけでなく、新たに表面積の増大も加わり、大きな静電容量が得られることになる。
【0009】
【実施例】
以下本発明の実施例について説明する。
実施例1.
アルミニウム箔上にO、C、H、F、Bのいずれかの単体元素を混入したTi膜を形成して成る電極箔について説明する。
アルミニウム箔上へのTi膜の形成は、巻取式真空蒸着装置を用い、装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、用意した厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷スキャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜して行った。成膜条件として、EB蒸発源のパワーは10KWとし、巻取速度はTi膜の膜厚が4000オングストロームとなるに調整した。
また、Ti膜への単体元素O、H、Fの混入は、成膜時に、それぞれO2 ガス、H2 ガス、F2 ガスを流量計を介してガス導入口から真空槽内に導入することによって行ない、各々のガスの流量を増加させて、真空槽内の圧力を10−5トールから10−3トールまで変化させることによってTi膜中への単体元素の混入量を調整した。
そして、Ti膜へのC及びBの混入は、真空槽内を10−5トールに保持し、TiのEB蒸発源の横に別のEB蒸発源を用意し、グラファイト及びBチップをそれぞれ加熱、蒸発させることによって行ない、混入量の調整はCとBの蒸発量を変化させることにより行った。
【0010】
図1には実施例1で得られた電極箔における各混入元素量と静電容量との関係を示す。
静電容量の測定は前述の方法を用いて行った。平滑なアルミニウム箔上のTi膜の静電容量は2μF/cm2 と非常に低いが、図1から明らかなように、全ての混入元素について混入量の増大と共に静電容量は増加し、20〜30原子%で最大値を示した後減少するが、70原子%程度まではアルゴンガス雰囲気中での蒸着法によって形成したTi膜の200 μF/cm2 の値を上回ることが認められる。
【0011】
実施例2.
アルミニウム箔上にO、C、Hの二種以上の元素を混入したTi膜を形成して成る電極箔について説明する。
実施例1の場合と同様に、アルミニウム箔上へのTi膜の形成は、巻取式真空蒸着装置を用い、この蒸着装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷キャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜することにより行った。成膜条件として、EB蒸発源のパワーは10KW、巻取速度はTi膜の膜厚が最終的に4000オングストロームとなるに調整した。
Ti膜への二種以上の元素の混入は、C、Oの場合及びC、Hの場合ではTi膜の成膜時にそれぞれCOガス、C2 H2 ガスを流量計を介してガス導入口から真空槽へ導入した。そしてTi膜中へのこれら元素の混入量は、各々のガスの混入量を増加させ、真空槽内の圧力を真空槽内の圧力を10−5トールから10−3トールまで変化させて調整した。
【0012】
図2には実施例2による電極箔においてC0.5 +O0.5 、C0.5 +H0.5 を混入した場合の混入元素量と静電容量との関係を示す。実施例1における一種の単体元素を混入した場合とほぼ同じ傾向が見られ、すなわち混入量が20〜30原子%程度までは増加するにつれて静電容量は増加し、その後減少するが、70原子%程度まではTi膜の200 μF/cm2 の値以上に高い静電容量を示している。
【0013】
表面積の増大に関して説明すると、Ti膜の成膜では、アルミニウム箔上に飛来したTi原子は、金属原子であるためアルミニウム箔上を相当量移動でき、安定な場所に核生成を行う。そのためアルミニウム箔上に粗に核が生成される。その後飛来する原子はその核まで横方向に移動しつつ上方にも成膜されるため、太くて表面のなだらかな柱状構造の膜となり、その場合表面積はそれ程増大しない。 一方従来技術であるアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中での蒸着では、Ti原子は散乱によりエネルギを失っているため、移動が抑えられ、アルゴンガスが柱状界面に入り込み、柱状粒子を粗にする。その結果、表面積は少し増加することなる。
【0014】
これに対して、本発明では、Ti成膜中にO、C、H、F、Bの単体元素または複数元素を混入させることによって、特に、O、C等はTiと化合物を作り、その融点が高くなる材料では、アルミニウム箔上に飛来した原子は、移動が妨げられてアルミニウム箔上に多数の核を生成することになる。その後飛来するTi原子及び混合元素も同じように移動が抑えられ、上方にも成膜することになる。その結果、細くて表面の尖った柱状構造の膜となり、こうして表面積は非常に増加することになる。
また混入元素がH等の場合には、アルゴンガスと同様な効果が認められるが、原子が小さいためにアルゴンガスの場合よりもはるかに粗な膜構造となり、表面積が増大されることになる。
Ti膜中へのO、C、H、F、Bの単体元素または複数元素の混入量の最適値に関しては、Cの場合、混入量の増加と共に表面積の増大が生じるが、さらに混入量を増加させると、膜表面に余分のCが析出し、酸化チタン膜の生成に影響を及ぼし、静電容量の低下が起こると考えられるので、70原子%程度以下の適当な値が選択され得る。
【0015】
下表には不活性ガスを導入せずに形成したTi膜、従来のアルゴンガス雰囲気中での蒸着により形成したTi膜及び本発明による元素C、Oを混入させたTi膜における静電容量と断面形状を示す。
この場合、成膜は次のようにして行った。すなわち、巻取式真空蒸着装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷キャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜した。EB蒸発源のパワーは10KWとし、巻取速度はTi膜の膜厚が最終的に4000オングストロームとなるに調整した。そして比較例としてのガス無導入Ti膜は10−5トール以下の圧力で、また、従来のアルゴンガス中蒸着Ti膜及び本発明のC+O混入Ti膜は10−3トールの圧力になるようにアルゴンガス及びCOガスをそれぞれ真空槽内に導入しながらTiをアルミニウム箔上に蒸着して形成した。また断面形状はSEM観察を行った後、模式化した。
この表から認められるように、本発明によるTi膜では他の例によるTi膜に比べて成膜粒子径が非常に細かく、それに伴い静電容量も大幅に増大していることがわかる。
【0016】
ところで、上記各実施例では導電性箔としてアルミニウム箔を用いた例について説明してきたが、代わりに、ステンレス箔または薄膜化を意図したプラスチックフィルム上に金属膜、例えばアルミニウム等を成膜したフィルムを導電性箔として使用することもできる。
また、蒸発源としてEB蒸発源が用いたが、一層圧力の高い範囲でも有効に使用できるホローカソード蒸発源や、抵抗加熱蒸発源を使用してもよい。
さらに、実施例2では二種以上の元素を混合する場合、混合ガスを真空槽に導入して成膜を行っているが、各々単体のガス、単体の蒸発源を多数利用して膜中で混合するようにしてもよい。
さらにまた、蒸発材としてTi材料中に金属の酸化物の誘電率が酸化アルミニウムより大きく、O、C、H、F、Bの混入により、高融点材料が得られたり、ポーラスな膜が得られるような他の金属、例えばTa、Nbが含まれていてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、導電性箔の片面または両面にTi層を設けて成る電極箔において、Ti層に、O、C、H、F、Bのいずれか一種以上の元素を70原子%以下含ませて構成したことにより、電極箔の実効的な表面積を大きくできるので、静電容量を大幅に増大させることができる。それによりTi膜の膜厚を減少させて生産性に富んだ小型で大容量のコンデンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による電極箔における混入元素の混入量と静電容
量との関係を示すグラフ。
【図2】本発明の別の実施例による電極箔における混入元素の混入量と静電
容量との関係を示すグラフ。
【産業上の利用分野】
本発明は、コンデンサ、特に電解コンデンサ等に用いられ得る電極箔に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の電解コンデサは電極箔としてアルミニウム箔を用い、表面を化学エッチングにより粗面化している。このようにして粗面化した表面を酸化させてアルミナを形成し、アルミナの誘電率と表面積とで大きな静電容量が得られるようにしている。
【0003】
一方、民生機器の小型化に伴い大容量の電解コンデンサの小型化の要求が高っている。この要求に応えるため、アルミニウム電解コンデンサでは、通常表面積を増大して大容量化を図っている。また、最近では、アルミニウム箔上に酸化物の誘電率の大きいTi、Ta等の金属を成膜することによって容量の増大を図る方法が提案されている。
このような方法の一例としては、アルミニウム箔等の導電性基板上にTi層を設け、Ti層上に形成される誘電率の大きい酸化チタンTiO2 の自然酸化膜を誘電体として用いる方法や、高い誘電率の酸化チタンを利用するだけでなくアルゴンガス等の不活性ガスを導入し、ガス雰囲気中でTiを成膜する方法や斜め入射成膜法により表面積を大きくして静電容量の増大をはっている。
アルミニウム箔等の導電性基板上にTi層等を形成する手段としては、例えば真空槽内にアルゴンガス等の不活性ガスを導入し、不活性ガス雰囲気内でアルミニウム箔等の導電性基板上にTiを成膜する蒸着法等の成膜技術が用いられる。成膜中に、不活性ガスを導入すると、蒸発粒子の平均自由行程は小さくなり、成膜される膜は散乱効果により充填密度の低い膜となる。従って、凹凸を考慮した実効的な表面積は非常に大きなものとなる。こうして形成された膜を大気中に暴露すると、膜表面のTiは大気中の酸素と反応して薄い緻密な自然酸化膜を形成し、膜表面には表面積の大きい誘電体の薄い層ができ、それにより静電容量の大きい電解コンデンサ用の電極箔として利用できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アルゴンガス雰囲気中で蒸着法によりTi層を成膜して形成した従来の電極箔について、その静電容量を、20℃、10重量%のホウ酸アンモニウム溶液中でLCRメータを用いて1V、120Hz の条件で測定したところ、Ti膜の膜厚が4000オングストロームの場合には、200 μF/cm2 程度の値であり、この値はエッチング処理を施したアルミニウム箔電解コンデンサの容量の2倍程度であり、電解コンデンサの高容量化という観点からは満足できるものとなっていない。
【0005】
ところで、静電容量はTi層の膜厚とほぼ比例しているため、Ti層の膜厚を厚く形成すれば静電容量をさらに高めることができるが、1μmの厚さにTi層を成膜することは、実際問題として生産性の観点や、アルミニウム箔の熱変形のため実用的ではない。そのため、Ti膜厚が薄くてもより高容量化を達成できしかも生産性のあるコンデンサ用電極材料が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決して、高容量化を達成できる電極箔を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による電極箔は、導電性箔の片面又は両面に、表面積を大きくするため細くて先の尖った柱状構造をもち、C、H、Fのいずれか一種以上の元素を含み、これら元素の含有量が70原子%以下であるTi層を設けたことを特徴としている。
【0008】
【作用】
このように構成された本発明の電極箔においては、Ti膜中にO、C、H、F、Bを混入させることにより、平滑なアルミニウム箔の表面に成膜した膜では表面が非常に凹凸のある面となり、表面積は不活性ガス中での蒸着法や斜め蒸着法により形成した膜に比較してはるかに大きくなる。その結果この電極箔をコンデンサに利用した場合には、Ti膜表面の誘電率の高い酸化チタン膜を利用するだけでなく、新たに表面積の増大も加わり、大きな静電容量が得られることになる。
【0009】
【実施例】
以下本発明の実施例について説明する。
実施例1.
アルミニウム箔上にO、C、H、F、Bのいずれかの単体元素を混入したTi膜を形成して成る電極箔について説明する。
アルミニウム箔上へのTi膜の形成は、巻取式真空蒸着装置を用い、装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、用意した厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷スキャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜して行った。成膜条件として、EB蒸発源のパワーは10KWとし、巻取速度はTi膜の膜厚が4000オングストロームとなるに調整した。
また、Ti膜への単体元素O、H、Fの混入は、成膜時に、それぞれO2 ガス、H2 ガス、F2 ガスを流量計を介してガス導入口から真空槽内に導入することによって行ない、各々のガスの流量を増加させて、真空槽内の圧力を10−5トールから10−3トールまで変化させることによってTi膜中への単体元素の混入量を調整した。
そして、Ti膜へのC及びBの混入は、真空槽内を10−5トールに保持し、TiのEB蒸発源の横に別のEB蒸発源を用意し、グラファイト及びBチップをそれぞれ加熱、蒸発させることによって行ない、混入量の調整はCとBの蒸発量を変化させることにより行った。
【0010】
図1には実施例1で得られた電極箔における各混入元素量と静電容量との関係を示す。
静電容量の測定は前述の方法を用いて行った。平滑なアルミニウム箔上のTi膜の静電容量は2μF/cm2 と非常に低いが、図1から明らかなように、全ての混入元素について混入量の増大と共に静電容量は増加し、20〜30原子%で最大値を示した後減少するが、70原子%程度まではアルゴンガス雰囲気中での蒸着法によって形成したTi膜の200 μF/cm2 の値を上回ることが認められる。
【0011】
実施例2.
アルミニウム箔上にO、C、Hの二種以上の元素を混入したTi膜を形成して成る電極箔について説明する。
実施例1の場合と同様に、アルミニウム箔上へのTi膜の形成は、巻取式真空蒸着装置を用い、この蒸着装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷キャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜することにより行った。成膜条件として、EB蒸発源のパワーは10KW、巻取速度はTi膜の膜厚が最終的に4000オングストロームとなるに調整した。
Ti膜への二種以上の元素の混入は、C、Oの場合及びC、Hの場合ではTi膜の成膜時にそれぞれCOガス、C2 H2 ガスを流量計を介してガス導入口から真空槽へ導入した。そしてTi膜中へのこれら元素の混入量は、各々のガスの混入量を増加させ、真空槽内の圧力を真空槽内の圧力を10−5トールから10−3トールまで変化させて調整した。
【0012】
図2には実施例2による電極箔においてC0.5 +O0.5 、C0.5 +H0.5 を混入した場合の混入元素量と静電容量との関係を示す。実施例1における一種の単体元素を混入した場合とほぼ同じ傾向が見られ、すなわち混入量が20〜30原子%程度までは増加するにつれて静電容量は増加し、その後減少するが、70原子%程度まではTi膜の200 μF/cm2 の値以上に高い静電容量を示している。
【0013】
表面積の増大に関して説明すると、Ti膜の成膜では、アルミニウム箔上に飛来したTi原子は、金属原子であるためアルミニウム箔上を相当量移動でき、安定な場所に核生成を行う。そのためアルミニウム箔上に粗に核が生成される。その後飛来する原子はその核まで横方向に移動しつつ上方にも成膜されるため、太くて表面のなだらかな柱状構造の膜となり、その場合表面積はそれ程増大しない。 一方従来技術であるアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中での蒸着では、Ti原子は散乱によりエネルギを失っているため、移動が抑えられ、アルゴンガスが柱状界面に入り込み、柱状粒子を粗にする。その結果、表面積は少し増加することなる。
【0014】
これに対して、本発明では、Ti成膜中にO、C、H、F、Bの単体元素または複数元素を混入させることによって、特に、O、C等はTiと化合物を作り、その融点が高くなる材料では、アルミニウム箔上に飛来した原子は、移動が妨げられてアルミニウム箔上に多数の核を生成することになる。その後飛来するTi原子及び混合元素も同じように移動が抑えられ、上方にも成膜することになる。その結果、細くて表面の尖った柱状構造の膜となり、こうして表面積は非常に増加することになる。
また混入元素がH等の場合には、アルゴンガスと同様な効果が認められるが、原子が小さいためにアルゴンガスの場合よりもはるかに粗な膜構造となり、表面積が増大されることになる。
Ti膜中へのO、C、H、F、Bの単体元素または複数元素の混入量の最適値に関しては、Cの場合、混入量の増加と共に表面積の増大が生じるが、さらに混入量を増加させると、膜表面に余分のCが析出し、酸化チタン膜の生成に影響を及ぼし、静電容量の低下が起こると考えられるので、70原子%程度以下の適当な値が選択され得る。
【0015】
下表には不活性ガスを導入せずに形成したTi膜、従来のアルゴンガス雰囲気中での蒸着により形成したTi膜及び本発明による元素C、Oを混入させたTi膜における静電容量と断面形状を示す。
この場合、成膜は次のようにして行った。すなわち、巻取式真空蒸着装置の真空槽を10−5トール以下に排気し、厚さ25μmで表面が平滑なアルミニウム箔を巻取式真空蒸着装置の水冷キャンに巻き付け、巻取ながら、水冷ハース内に入れたTiをEB蒸発源で加熱して蒸発させ、アルミニウム箔上にTi膜を成膜した。EB蒸発源のパワーは10KWとし、巻取速度はTi膜の膜厚が最終的に4000オングストロームとなるに調整した。そして比較例としてのガス無導入Ti膜は10−5トール以下の圧力で、また、従来のアルゴンガス中蒸着Ti膜及び本発明のC+O混入Ti膜は10−3トールの圧力になるようにアルゴンガス及びCOガスをそれぞれ真空槽内に導入しながらTiをアルミニウム箔上に蒸着して形成した。また断面形状はSEM観察を行った後、模式化した。
この表から認められるように、本発明によるTi膜では他の例によるTi膜に比べて成膜粒子径が非常に細かく、それに伴い静電容量も大幅に増大していることがわかる。
【0016】
ところで、上記各実施例では導電性箔としてアルミニウム箔を用いた例について説明してきたが、代わりに、ステンレス箔または薄膜化を意図したプラスチックフィルム上に金属膜、例えばアルミニウム等を成膜したフィルムを導電性箔として使用することもできる。
また、蒸発源としてEB蒸発源が用いたが、一層圧力の高い範囲でも有効に使用できるホローカソード蒸発源や、抵抗加熱蒸発源を使用してもよい。
さらに、実施例2では二種以上の元素を混合する場合、混合ガスを真空槽に導入して成膜を行っているが、各々単体のガス、単体の蒸発源を多数利用して膜中で混合するようにしてもよい。
さらにまた、蒸発材としてTi材料中に金属の酸化物の誘電率が酸化アルミニウムより大きく、O、C、H、F、Bの混入により、高融点材料が得られたり、ポーラスな膜が得られるような他の金属、例えばTa、Nbが含まれていてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、導電性箔の片面または両面にTi層を設けて成る電極箔において、Ti層に、O、C、H、F、Bのいずれか一種以上の元素を70原子%以下含ませて構成したことにより、電極箔の実効的な表面積を大きくできるので、静電容量を大幅に増大させることができる。それによりTi膜の膜厚を減少させて生産性に富んだ小型で大容量のコンデンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による電極箔における混入元素の混入量と静電容
量との関係を示すグラフ。
【図2】本発明の別の実施例による電極箔における混入元素の混入量と静電
容量との関係を示すグラフ。
Claims (1)
- 導電性箔の片面又は両面に、表面積を大きくするため細くて先の尖った柱状構造をもち、C、H、Fのいずれか一種以上の元素を含み、これら元素の含有量が70原子%以下であるTi層を設けたことを特徴とする電極箔。
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JP10988792A JP3548582B2 (ja) | 1992-04-28 | 1992-04-28 | 電極箔 |
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JPH0697006A JPH0697006A (ja) | 1994-04-08 |
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