JP3547855B2 - 帯電防止アクリル系樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、帯電防止効果を有するアクリル系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、アクリル系樹脂と、該アクリル系樹脂との屈折率差がある特定範囲内にあるポリエーテルエステルからなり、透明性に優れ、しかも、帯電防止効果が持続するアクリル系樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
プラスチック材料は優れた諸特性を生かし、電気電子用部材、自動車用部材、医療用部材、生活用品、その他各種成形品として使用されている。ところで、一般にプラスチックには、電気絶縁性が高いという特徴があるが、そのためにかえって帯電した静電気が散逸しにくく、製品へのほこりの付着、作業者への電撃、計器類やICチップ類の誤動作といった問題が生じている。そのため、各種のプラスチック材料に対して帯電防止方法の研究がなされてきた。
【0003】
プラスチックの帯電防止方法としては、内部添加型と塗布型がある。塗布型では、別行程が必要であり、製造プロセス上は、内部添加型の方が有利である。
【0004】
内部添加型による方法ではこれまで、アルキルスルホン酸塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩といったイオン性界面活性剤をポリマー中に練り込む方法が、効果や経済性に優れるために一般的に採用されてきた。中でも、アルキル(アリール)スルホン酸塩を利用したものが数多く実施されてきた。そうした中で、樹脂本来の透明性を維持したままで、帯電防止効果のあるものとしては、例えば、特開平7−18137号公報等において、メチルメタクリレートースチレン共重合樹脂及びスルホン酸ホスホニウム塩からなる組成物が開示されている。これは、界面活性剤が表面に染み出すために、少量のスルホン酸ホスホニウム塩の添加で優れた帯電防止効果を示すのであるが、拭いたり、水洗いしたりすると帯電防止効果が減少するという問題点がある。
【0005】
一方、永久的な帯電防止効果を付与する方法として、制電性ポリマーを混合する方法が開示されている。例えば、特開昭58−118838号公報においては、ポリオレフィンとポリエーテルエステルアミドからなる組成物が帯電防止効果を有するという記載がある。しかし、こうしたポリマー同士を混合すると、ポリマー自体が結晶性であるとか、ブロックポリマーであるかいったために成型品が濁ってしまい、不透明になる。また、成型品が透明であっても、ポリマー同士が解け合っているような場合には、帯電防止効果が少ないという問題点がある。
【0006】
ところで、特開平6−57153号公報において、ポリアルキレングリコール、グリコール、多価カルボン酸からなるポリエーテルエステルについて報告されている。これは永久的な制電性はあるものの単独では効果が不足し、更に効果を上げるためには、イオン性の帯電防止剤を併用する必要がある。しかしながら、そうした場合には水洗により、制電効果がかなり低下してしまうという問題がある。
【0007】
以上のように永久的な帯電防止効果、透明性、良好な物性、及び耐熱性を兼ね備えたアクリル系樹脂組成物を得ることはこれまで困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種のアクリル系樹脂と溶融混合することにより、永続的な帯電防止効果を発揮し、透明性、物性、成形性及び耐熱性の低下の少ないアクリル系樹脂組成物を提供することにある。さらに、この帯電防止用樹脂組成物は、低コストで、これまでのポリエステルの製造設備を用いて製造可能であるためその工業的意義は大きい。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、スルホン酸塩基で核置換された特定の芳香族ジカルボン酸成分を含有して成る特定のポリエーテルエステル及び界面活性剤を、アクリル系樹脂と混合することにより、永続的な帯電防止効果を発揮した上でさらに、透明性、物性、成形性及び耐熱性の低下の少ないアクリル系樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、アクリル系樹脂(A)100重量部、(B1)炭素数6〜20のジカルボン酸及び/またはそのエステル、(B2)数平均分子量200〜50000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、及び(B3)炭素数2〜10のグリコール、を重縮合して得られるポリエーテルエステル(B)5〜30部、及び界面活性剤(C)0.5〜6重量部とからなる樹脂組成物において、上記(B1)が下記式(1)
【0011】
【化2】
【0012】
[式(1)中、Arは炭素数6〜12の3価の芳香族基、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、M+ は金属イオン、テトラアルキルホスホニウムイオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンを表す。]
で示されるスルホン酸塩基で置換された芳香族ジカルボン酸及び/またはそのエステル(B1’)を3〜50モル%含み、かつ上記ポリエーテルエステル(B)を構成する上記(B2)の含有量が(B1)、(B2)及び(B3)の合計量の10〜90重量%の範囲内であり、かつ上記アクリル系樹脂(A)の屈折率と、ポリエーテルエステル(B)と界面活性剤(C)とからなる混合物の屈折率との差が、0.03以内であることを特徴とする帯電防止アクリル系樹脂組成物である。
【0013】
以下、本発明を詳述する。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、アクリル系樹脂(A)、ポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)とから実質的に成る。
【0015】
本発明においては、アクリル系樹脂(A)に対する、ポリエーテルエステル(B)と界面活性剤(C)との混合物の屈折率差が可視光領域において0.03以内であることが必須条件である。屈折率差が0.03以内となるのは全可視光領域に渡ることが好ましいが、実用的には少なくともブラウンホーファー線のD線(波長589nm)における屈折率差が0.03以内であることが必要である。屈折率差が0.03より大きいと、樹脂組成物中のアクリル系樹脂(A)成分とポリエーテルエステル(B)成分の境界領域において光の散乱が生じ、成型物に濁りを生じることになる。屈折率差は透明性の面でより少ない方が好ましく、0.02以内とすることがより好ましい。
【0016】
以上の条件は、以下に示すポリエーテルエステル(B)と界面活性剤(C)の組み合わせの中で実現することができる。
【0017】
本発明におけるポリエーテルエステル(B)を構成する酸成分は、炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル(B1)、及び後述のスルホン酸塩基(−SO3 −M+)で置換された芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル(B1’)とからなる。ここで炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、2、7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。また炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、2、6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2、6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2、7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2、7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル等を挙げることができる。これらは芳香環にアルキル基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。これらのうちで、取り扱い性の点からは、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、2、6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルが好ましい。また、テレフタル酸成分に比べ、2、6−ナフタレンジカルボン酸成分は全体の屈折率を高くする傾向にある。
【0018】
本発明において用いられるスルホン酸塩基(−SO3 −M+)で置換された芳香族ジカルボン酸及び/またはそのエステル(B1’)は、下記式(1)
【0019】
【化3】
【0020】
で表される。
【0021】
上記式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基等の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0022】
上記式(1)において、M+ は金属イオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンの内から選ばれるイオンを表す。M+ としてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン等の金属イオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等である。これらのイオンの中で金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオン、亜鉛イオンがより好ましい。ただし2価の金属イオンの場合にはスルホン酸塩基2モルに対し、金属イオン1モルが対応するものとする。
【0023】
上記式(1)中のArは、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭素数6〜12の3価の芳香族基であり、これらはまた、アルキル基、フェニル基、ハロゲン、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0024】
かかる芳香族ジカルボン酸としては、4−ナトリウムスルホ−イソフタル酸、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸、4−カリウムスルホ−イソフタル酸、5−カリウムスルホ−イソフタル酸、2−ナトリウムスルホ−テレフタル酸、2ーカリウムスルホ−テレフタル酸、4−スルホ−イソフタル酸亜鉛、5−スルホ−イソフタル酸亜鉛、2−スルホ−テレフタル酸亜鉛、4−スルホ−イソフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩、5−スルホ−イソフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩、4−スルホ−イソフタル酸テトラアルキルアンモニウム塩、5−スルホ−イソフタル酸テトラアルキルアンモニウム塩、2−スルホ−テレフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩、2−スルホ−テレフタル酸テトラアルキルアンモニウム塩、4−ナトリウムスルホ−2、6−ナフタレンジカルボン酸、4−ナトリウムスルホ−2、7−ナフタレンジカルボン酸、4−カリウムスルホ−2、6−ナフタレンジカルボン酸、4−スルホ−2、6−ナフタレンジカルボン酸亜鉛塩等を挙げることができる。また芳香族ジカルボン酸エステルとしては、上記に具体的に列記した芳香族ジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル等を挙げることができる。
【0025】
これらの中で、R1、R2がともにメチル基又はともにエチル基であり、Arがベンゼン環であり、M+がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンであることが、重合性、機械特性、色調等の面でより好ましい。
【0026】
さらに好適には、4−ナトリウムスルホ−イソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸ジメチル、4−カリウムスルホ−イソフタル酸ジメチル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、2−ナトリウムスルホ−テレフタル酸ジメチル、2−カリウムスルホ−テレフタル酸ジメチル等を挙げることができる。
【0027】
本発明によれば、帯電防止効果の点から、上記式(1)で表されるスルホン酸塩基で置換された芳香族ジカルボン酸及び/またはそのエステル(B1’)は、使用する全酸成分(B1)の3〜50モル%、すなわち、上記式(1)で表される化合物が、ポリエーテルエステルを構成する酸成分の3〜50モル%を占めるようにする。かかる芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル(B1’)が3モル%未満では、帯電防止効果が十分ではない。また50モル%を超えると、重合反応が困難になり、十分な重合度のポリエーテルエステル(B)を得にくくなったり、また取り扱い性が悪化する。上記式(1)で表される芳香族ジカルボン酸及び/またはそのエステルは、全酸成分の4〜40モル%を占めることが好ましく、5〜30モル%を占めることがより好ましい。
【0028】
本発明におけるポリエーテルエステル(B)を構成するグリコール成分は、数平均分子量200〜50000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール及び炭素数2〜6の脂肪族ジオールとからなる。ここで、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B2)としては、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ビスフェノール類に対するエチレンオキシド付加体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール共重合ポリエチレングリコール等を挙げることができる。これらのうち、ポリエチレングリコールから主としてなるポリ(アルキレンオキシド)グリコールが好ましい。かかるポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B2)の数平均分子量は200〜50000であるものを用いる。かかる分子量が200に満たない場合には、十分な制電効果が得られない。また、実用性の点からは、かかる分子量の上限は50000程度である。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの好ましい数平均分子量は500〜40000であり、より好ましくは1000〜30000である。
【0029】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B2)は、帯電防止効果の点からは、ポリエーテルエステルに対して全体の10〜90重量%を占めることが必要である。すなわち、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの使用量は、ポリエーテルエステル(B)を構成する(B2)の含有量が(B1)、(B2)及び(B3)の仕込みの合計量に対して10〜90重量%となるようにする。10重量%より少ないと帯電防止効果が十分でなく、90重量%より多い場合には、取り扱い性や耐熱性が良くない傾向になることがある。好ましい使用量は、得られるポリエーテルエステル(B)全体の15〜80重量%であり、より好ましくは20〜75重量%である。
【0030】
上記ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B2)の共重合量が、ポリエーテルエステル(B)と界面活性剤(C)との混合物の屈折率に最も大きな影響を与える。本発明においては、上記ポリエーテルエステル(B)を構成するポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B2)の共重合量(含有量)を上記使用量の範囲内で適宜選択することにより、用いるアクリル系樹脂(A)との屈折率差を0.03以内、好ましくはより小さくすることができる。
【0031】
本発明に用いる炭素数2〜10のグリコール(B3)は、具体的にはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール(1,6−ヘキサメチレングリコール)、3ーメチルー1,5ーペンタンジオール等を例示できる。これらはエーテル結合、チオエーテル結合を含んでいてもよい。この中で1,6−ヘキサンジオール、3ーメチルー1,5ーペンタンジオールが、帯電防止効果の点で好ましい。
【0032】
本発明におけるポリエーテルエステル(B)は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)の混合溶媒中35℃で測定した還元粘度(濃度1.2g/dl)が0.3以上であることが好ましい。還元粘度が0.3より小さいと耐熱性や、機械物性低下の原因となる。還元粘度に対する上限は、ポリマーが実質的に線状の重合体であれば、帯電防止効果の点でも機械物性の点でも高い方が好ましいが、実際的な重合の上限は4.0程度である。還元粘度はより好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。
【0033】
本発明におけるポリエーテルエステル(B)は、上記成分(B1)〜(B3)及び(B1’)をエステル交換触媒の存在下、150〜300℃で加熱溶融し重縮合反応せしめることによって得ることができる。
【0034】
エステル交換触媒としては通常のエステル交換反応に使用できるものなら特に制限はない。かかるエステル交換触媒としては、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酢酸第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物、酢酸カルシウム等のカルシウム化合物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩等を例示することができる。これらのうちテトラブチルチタネートが好ましく用いられる。
【0035】
また、上記触媒の使用量としては、通常のエステル交換反応における使用量でよく、概ね、使用する酸成分1モルに対し、0.01〜0.5モル%が好ましく、0.03〜0.3モル%がより好ましい。
【0036】
また、反応時には酸化防止剤等の各種安定剤を併用することも好ましい。
【0037】
上記(B1)〜(B3)及び(B1’)の化合物を加熱溶融し重縮合する温度としては、初期反応として、150℃から200℃で数十分から十数時間エステル化反応及び/又はエステル交換反応を留出物を留去しながら行った後、反応物を高分子量化する重合反応を180℃から300℃で行う。180℃より温度が低いと反応が進まず、300℃より温度が高いと、分解などの副反応が起こり易くなるためである。重合反応温度は200℃から280℃がさらに好ましく、220℃から250℃が更に好ましい。この重合反応の反応時間は反応温度や触媒量にもよるが、通常は数十分から数十時間程度である。
【0038】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)としてはポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体などのメタクリル酸エステル及び/またはアクリル酸エステルの単独重合体あるいは共重合体等が上げられる。これらのアクリル系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせてもよい。また、それらの製造方法については特に制限はなく、公知の懸濁重合法、乳化重合法、バルク重合法などで製造したものを用いることができる。
【0039】
本発明の帯電防止用樹脂組成物は、以上に示したアクリル系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステル(B)5〜30重量部、及び界面活性剤(C)0.5〜6重量部含有する。かかる界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、又は陽イオン系界面活性剤が挙げられるが、ポリエーテルエステル等との混練時に要求される耐熱性に面で、陰イオン界面活性剤が好ましい。さらに驚くべきことに、かかる陰イオン界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤を用いることにより、かかる帯電防止効果が著しく増大し、かつ効果が永久的に持続する。かかるスルホン酸塩は、上記ポリエーテルエステルを構成する、上記式(1)で表される酸成分と組み合わせて用いることにより、かかる効果の向上に寄与しているものと推定される。
【0040】
アルキルスルホン酸塩としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸カリウム及びこれらの混合物等を挙げることができる。また、アルキルベンゼンスルホン酸塩の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物中の上記界面活性剤は、上記アクリル系樹脂(A)100重量部、ポリエーテルエステル(B)5〜30重量部に対し、界面活性剤(C)を0.5〜6重量部含有する。0.5重量部より少ないと界面活性剤の添加効果が現れず、6重量部を越えると物性低下の原因になったり、取り扱い性の低下を招くからである。かかる界面活性剤(B)の含有量は好ましくは0.7〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部である。
【0042】
本発明の帯電防止用樹脂組成物は、従来公知の方法で、上記アクリル系樹脂(A)、ポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)を溶融混合することにより製造することができる。溶融混合する方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物のかかる構成成分を、一軸あるいは二軸の溶融押し出し機を用いて溶融混合する方法が挙げられる。
【0043】
上記樹脂組成物の構成成分(A)、(B)及び(C)は、同時に溶融混合してもよいが、あらかじめ、ポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)を溶融混合した後、ついでこれとアクリル系樹脂(A)とを溶融混合することにより、永続的な帯電防止効果をより発揮し、透明性、物性、成形性及び耐熱性の低下の少ない帯電防止アクリル系樹脂組成物を得ることができ、望ましい。
【0044】
あらかじめポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)を溶融混合する方法としては、例えば、ポリエーテルエステルが重合反応終了後、そのまま重合槽に上記界面活性剤を添加して混合し、アクリル系樹脂(A)と溶融混合するする方法、一軸あるいは二軸の溶融押し出し機を用いてポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)を混合し、アクリル系樹脂(A)と溶融混合するする方法等が挙げられる。ポリエーテルエステル(B)及び界面活性剤(C)を溶融混合する温度としては、概ね140℃から300℃である。140℃より温度が低いと混合が十分ではないことがあり、300℃より温度が高いと、分解などの劣化を起こすことがあり好ましくない。溶融混合温度は好ましくは160℃から270℃であり、より好ましくは200℃から260℃である。
【0045】
こうして得られる(B)及び(C)からなる混合物をさらにアクリル系樹脂(A)と200℃から300℃で溶融混合することにより、本発明の帯電防止アクリル系樹脂組成物を得ることができる。こうした混合は一軸あるいは二軸の溶融押し出し機を用いて実施できる。この際、200℃より温度が低いと混合が十分ではないことがあり、300℃より温度が高いと、分解などの劣化を起こすことがあり好ましくない。溶融混合温度は好ましくは220℃から290℃であり、より好ましくは230℃から280℃である。
【0046】
本発明の帯電防止アクリル系樹脂組成物は、必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。かかる添加剤としては、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウィスカー、炭酸繊維、アスベストのような繊維状強化剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属フレーク、金属粉末のような各種充填剤、リン酸エステル、亜リン酸エステルに代表されるような熱安定剤あるいは触媒失活剤、酸化安定剤、光安定剤、滑剤、顔料、難燃化剤、難燃助剤、可塑剤などの添加剤が挙げられる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、スルホン酸塩基で核置換された特定の芳香族ジカルボン酸成分を含有して成るポリエーテルエステル及び界面活性剤を、アクリル系樹脂と混合することにより、該アクリル系樹脂の機械物性等を損なうことなく、高い帯電防止効果を永続的に発揮し、さらに透明性に優れたアクリル系樹脂組成物を得ることができる。
【0048】
したがって、かかる樹脂組成物は、OA機器、電子部材、自動車のハウジング、医療用部材、各種容器、カバー、フィルム、シート等に有用である。
【0049】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明の好ましい態様について記載するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
実施例中「部」は「重量部」を意味する。また還元粘度は、特に指定のない限りフェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)の混合溶媒中において濃度1.2(g/dl)、35℃にて測定した値である。屈折率はアッベ屈折計(株式会社アタゴ製)により測定した。衝撃強度はASTM D256に従い1/8インチで、熱変形温度(HDT)はASTM D648に従い、1/8インチ、荷重18.6kg/cm2 で測定した。表面固有抵抗率の測定は、20℃、湿度60%の条件下で24時間放置した後、超絶縁計(東亜電波工業株式会社製SM−8210)を用いて印加電圧1000Vにて測定した。成型品の水洗は、30℃の流水で2時間洗浄を行い、清浄な紙で水分をふき取った。その後、同様の条件で乾燥し、表面固有抵抗率の測定を行った。成型品の光の透過(透明性)については、JIS Z 8703に従い、ハンターの色差式における明度指数Lを透過法により測定し評価した。測定には、日本電色工業株式会社製Z−300Aを用い、サンプル厚2mmで透過法により測定した。
【0051】
[参考例1]
370部のジメチルテレフタレート、222部の5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、413部の3ーメチル−1,5ーペンタンジオール、1625部のポリエチレングリコール(数平均分子量2000)、及び1.1部のテトラブチルチタネートを精留塔及び撹拌装置を備えた反応器に入れ、容器内を窒素置換した後、常圧下、220℃に昇温した。220℃でメタノールを留去しながら5時間反応を行った後、反応物を撹拌装置を備えた真空留出系を有する反応器に入れ、45分間で240℃まで昇温した。その時点で徐々に反応系内を減圧し、60分後0.3mmHgとし、6時間後に重合体を得た。得られたポリエーテルエステルの還元粘度は0.57であった。さらにそこへ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム464部を加え、容器内を窒素置換した後、240℃で減圧下1時間撹拌した。得られた混合物の屈折率は1.50であった。
【0052】
[参考例2]
577部のジメチルテレフタレート、155部の5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、578部の1、6−ヘキサメチレングリコール、922部のポリエチレングリコール(数平均分子量2000)、及び1.2部のテトラブチルチタネートを精留塔及び撹拌装置を備えた反応器に入れ、容器内を窒素置換した後、常圧下、220℃に昇温した。220℃でメタノールを留去しながら5時間反応を行った後反応物を、撹拌装置を備えた真空留出系を有する反応器に入れ、45分間で240℃まで昇温した。その時点で徐々に反応系内を減圧し、60分後0.3mmHgとし、6時間後に高粘度の重合体を得た。得られたポリエーテルエステルの還元粘度は1.12であった。さらにそこへ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム369部を加え、容器内を窒素置換した後、240℃で減圧下1時間撹拌した。得られた混合物の屈折率は1.51であった。
【0053】
[実施例1、2]
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(旭化成株式会社製「デルペット」80N、屈折率1.49)100部に対して、参考例1、2で得られたポリエーテルエステル及び界面活性剤との混合物をそれぞれ表記の量、30mmφ同方向回転2軸エクストルーダー(池貝鉄工株式会社製、PCM30)を用いて、ポリマー温度250℃、平均滞留時間約3分の条件下で溶融混練し、これをペレット化した。次に射出成型機(名機製作所株式会社製M−50B)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、2mm厚の成型品を得、表面固有抵抗の測定を行った。機械物性、明度指数と共に、結果を表1に示す。
【0054】
[比較例]
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(旭化成株式会社製「デルペット」80N)を射出成型機(名機製作所株式会社製M−50B)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、2mm厚の成型品を得、表面固有抵抗の測定を行った。機械物性と共に、結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
Claims (4)
- アクリル系樹脂(A)100重量部、(B1)炭素数6〜20のジカルボン酸及び/またはそのエステル、(B2)数平均分子量200〜50000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、及び(B3)炭素数2〜10のグリコール、を重縮合して得られるポリエーテルエステル(B)5〜30重量部、及び界面活性剤(C)0.5〜6重量部とからなる樹脂組成物において、上記(B1)が下記式(1)
で示されるスルホン酸塩基で置換された芳香族ジカルボン酸及び/またはそのエステル(B1’)を3〜50モル%含み、かつ上記ポリエーテルエステル(B)を構成する上記(B2)の含有量が(B1)、(B2)及び(B3)の合計量の10〜90重量%の範囲内であり、かつ上記アクリル系樹脂(A)の屈折率と、ポリエーテルエステル(B)と界面活性剤(C)とからなる混合物の屈折率との差が、0.03以内であることを特徴とする帯電防止アクリル系樹脂組成物。 - ポリエーテルエステル(B)が、フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)の混合溶媒中35℃で測定した還元粘度(濃度1.2g/dl)で、0.3以上である請求項1記載の帯電防止アクリル系樹脂組成物。
- 界面活性剤(C)が、アルキルスルホン酸塩及びアルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性界面活性剤である請求項1または2記載の帯電防止アクリル系樹脂組成物。
- 請求項1におけるポリエーテルエステル(B)を界面活性剤(C)と溶融混合した後、さらにアクリル系樹脂(A)と溶融混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止アクリル系樹脂組成物の製造方法。
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