JP3547623B2 - Pc桁の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PC(プレストレストコンクリート)桁の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
支間長が24m程度までのT形のPC桁(桁橋)(以下、PC・T桁という。)は、プレテンション方式によりプレストレス(圧縮応力)を導入して、製造されている。
【0003】
すなわち、図7(a)に示すように、型枠(図示略)の底の中央部に二つの折曲げ支持具52を約4mの間隔をおいて設置しアンカーボルト52aで固定する。この折曲げ支持具52の挿通孔に、折曲げ配置及び直線配置のPC鋼材53,54を通し、特に折曲げ配置のPC鋼材53については、二つの折曲げ支持具52の間の約4mの長さ部分が直線配置のPC鋼材54に近付くように、各折曲げ支持具52で折曲させる。PC鋼材53,54をジャッキ(図示略)により緊張させ、PC鋼材53,54の端部をアバット(図示略)に係止させた状態で、型枠にコンクリート55を打設し、PC鋼材53,54及び折曲げ支持具52を埋設する。
【0004】
このコンクリート55を型枠内で十分に養生して、コンクリート55とPC鋼材53,54との間の付着力が緊張に必要かつ十分な大きさになったときに、図7(b)に示すように、アンカーボルト52aを緩めて折曲げ支持具52を型枠底から取り外すとともに、PC鋼材53,54の緊張をゆっくり解除してから、PC鋼材53,54の端部を切断して解放する。すると、PC鋼材53,54は付着力によりコンクリート55の下部にプレストレス(圧縮応力)を生じさせるので、PC・T桁51は若干上へ凸に湾曲し、PC・T桁51の上部の特に支間中央部には引張応力が生じる。このとき、仮にコンクリート55が十分に養生されておらず所期の強度に到達していないと、PC・T桁51の上部の桁中央部付近にひび割れ56が発生する。具体的には、PC・T桁51の上フランジ部57に貫設されている連結用の横締め孔58のまわりにひび割れ56が発生する。そのため、前記の通り、コンクリート55を十分に養生して所期の強度に到達させた後に、PC鋼材53,54の緊張を解除しなければならないのである。
【0005】
ところが、コンクリート55を十分に養生して所期の強度に到達させるには相当な時間がかかり(例えば2〜3日)、その後でないと折曲げ支持具52の型枠底からの取り外しもPC鋼材53,54の緊張の解除もできないため、製造効率が低かった。
【0006】
そこで、図8に示すように、大型・大重量のカウンターウェイト59を使用してひび割れを防止する方法が開発されている。図8(a)は、図7(a)と同様に、PC鋼材53,54を緊張させた状態で、型枠(図示略)にコンクリート55を打設したときを示している。
【0007】
このコンクリート55をある程度(例えば1日)養生して、コンクリート55とPC鋼材53,54との間の付着力が緊張に必要な大きさになったときに、図8(b)に示すように、PC・T桁51の上部の支間中央部に大型・大重量(例えば重量7〜10トン)のカウンターウェイト59(コンクリートブロック等)を載せる。そして、折曲げ支持具52を型枠底から取り外すとともに、PC鋼材53,54の緊張をゆっくり解除してから、PC鋼材53,54の端部を切断して解放する。すると、上記と同様に、PC鋼材53,54はコンクリート55の下部にプレストレス(圧縮応力)を生じさせるが、カウンターウェイト59の大重量により、PC・T桁51は上へ凸に湾曲するのが抑止される。そのため、仮にコンクリート55が十分に養生されておらず所期の強度に到達していないとしても、支間中央部付近における横締め孔58のまわりにひび割れは通常発生しない(次に述べる▲1▼を除く)。
【0008】
このカウンターウェイト59が載ったままのPC・T桁51を、型枠から別の場所に移動させてコンクリート55の養生を続ければ、その型枠を次のPC・T桁の製造に使えるようになるので、製造効率が高くなる。型枠とは別の場所でコンクリート55を十分(例えば1〜2日)に養生して所期の強度に到達させた後は、図8(c)に示すように、カウンターウェイト59を降すことができ、このときPC・T桁51は若干上へ凸に湾曲するが、もはや支間中央部付近における横締め孔58のまわりにひび割れは発生しない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のカウンターウェイト59を使用してひび割れを防止する方法には、次のような問題があった。
▲1▼ 大型で熱容量の大きいカウンターウェイト59が接触してよく放熱されるコンクリート55の表面部と、養生時の熱が蓄積するコンクリート55の内部との間の温度差が大きくなり、大きい熱応力が生じるため、横締め孔58のまわりにひび割れが発生したり進行したりすることがあった。
▲2▼ 大型・大重量のカウンターウェイト59が載ったままのPC・T桁51は不安定なので、別の場所に移動させる際には細心の注意が必要であり、ましてや出荷は困難であった。
▲3▼ PC・T桁51が、図8(b)に二点鎖線で示すように、側部から上方へ突出する地覆鉄筋60の付いた耳桁である場合には、その地覆鉄筋60が邪魔になって大型のカウンターウェイト59を載せることができなかった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、大型・大重量のカウンターウェイトを使用しなくても、容易かつ安全な作業により、PC桁の上部の支間中央部付近におけるひび割れの発生を防止することができ、また、PC桁が地覆鉄筋の付いた耳桁である場合にも適用できる新規なPC桁の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のPC桁の製造方法は、プレテンション方式によりプレストレスを導入するPC桁の製造方法において、PC鋼材を緊張させた状態で型枠にコンクリートを打設し該PC鋼材を埋設する工程と、前記コンクリートをある程度養生する工程と、前記養生によりコンクリートとPC鋼材との間の付着力が緊張に必要な大きさになったときに、PC桁の上部の支間中央部を挟んで離間する二つの結合点に山形状に渡した引張線の両端部を結合し、該引張線の中央部に上向きの力を加えて引張線に張力を付与し、該引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間で突張る突張部材により前記引張線の張力を保持する工程と、前記引張線の張力を保持したままPC桁のPC鋼材の緊張を解除する工程と、前記引張線の張力を保持したままコンクリートの養生を続ける工程と、前記引張線の張力を解除する工程とを含む。
【0012】
PC桁の二つの結合点間の距離は、特に限定されないが、5m以上が好ましく、7〜20m程度がさらに好ましい。また、「PC桁の上部」は、PC桁の上面部が好ましいが、上フランジ部の端面の上部でもよい。引張線の種類は、特に限定されず、PC鋼より線、ピアノ線等を例示できる。
【0013】
PC桁の結合点に対する引張線の両端部の結合は、特定の方法に限定されず、例えば次の方法(イ)又は(ロ)で行うことができる。
(イ)コンクリートに引張線の両端部を直接埋設してその付着力により行う。
(ロ)コンクリートに埋め込んだ係止具の突出部に引張線の両端部を機械的に係着することにより行う。
【0014】
引張線の張力の付与及び保持は、特定の方法に限定されず、例えば次の方法(ハ)又は(ニ)で行うことができる。
(ハ)引張線の張力の付与を、PC桁の上部の支間中央部に設置した持上げ装置で引張線の中央部を持上げることにより行い、引張線の張力の保持を、持上げられた引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間に持上げ装置をそのまま突張部材として残すことにより行う。持上げ装置としては、特に限定されないが、油圧ジャッキ等を例示できる。
(ニ)引張線の張力の付与を、PC桁の上方に設けた吊上げ装置で引張線の中央部を吊上げることにより行い、引張線の張力の保持を、吊上げられた引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間に突張部材を介装することにより行う。吊上げ装置としては、特に限定されないが、工場の天井クレーン、トラックに装備したクレーン等を例示できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を桁長18〜24mのPC・T桁の製造方法に具体化した実施形態例について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)に示すように、型枠(図示略)の底の中央部に二つの折曲げ支持具2を例えば約4mの間隔をおいて設置しアンカーボルト2aで固定する。この折曲げ支持具2の挿通孔に折曲げ配置及び直線配置のPC鋼材3,4(例えばPC鋼より線)を通し、特に折曲げ配置のPC鋼材3については、二つの折曲げ支持具2の間の約4mの長さ部分が直線配置のPC鋼材4に近付くように、各折曲げ支持具2で折曲させる。PC鋼材3,4をジャッキ(図示略)により緊張させ、PC鋼材3,4の端部をアバット(図示略)に係止させた状態で、型枠にコンクリート5を打設し、PC鋼材3,4及び折曲げ支持具2を埋設する。
【0017】
このコンクリート5をある程度(例えば1日)養生して、コンクリート5とPC鋼材3,4との間の付着力が緊張に必要な大きさになったときに、図1(b)に示すように、PC・T桁1の上部の支間中央部を挟んで離間する二つの結合点11,11に、山形状に渡した引張線12(例えばPC鋼より線)の両端部を結合し、該引張線12の中央部に上向きの力を加えて引張線12に張力を付与し、該引張線12の中央部とPC・T桁1の上部の支間中央部との間で突張る突張部材により前記引張線12の張力を保持する。二つの結合点11,11間の距離は、例えば約10mである。
【0018】
引張線12の両端部の結合は、例えば次の方法(イ)又は(ロ)で行う。
(イ)図1(b)に破線で示すように、PC・T桁1の結合点11に引張線12の両端部を直接埋設してその付着力により行う。
(ロ)図3、図4又は図5に示すように、PC・T桁1の結合点11に埋め込んだ係止具13,14,15の突出部13a,14a,15aに引張線12の両端部を機械的に係着して行う。図3の係止具13は丸鋼棒を略逆U字状に曲げたもの、図4の係止具14はPC鋼材を略逆U字状に曲げたもの(16は突出部14aに被せたパイプ)、図5の係止具15は丸鋼棒よりなるI字状のものである。
【0019】
引張線12の張力の付与及び保持は、例えば次の(ハ)又は(ニ)で行う。
(ハ)図1(b)に示すように、引張線12の張力の付与を、PC・T桁1の上部の支間中央部に保護板21を介して設置した持上げ装置22(図示例は油圧ジャッキ)で引張線12の中央部を持上げることにより行い、引張線12の張力の保持を、持上げられた引張線12の中央部とPC・T桁1の上部の支間中央部との間に持上げ装置22をそのまま突張部材として残すことにより行う。
(ニ)図6(b1)に示すように、引張線12の張力の付与を、PC・T桁1の上方に設けた吊上げ装置23(図示例はクレーンのフック)で引張線12の中央部を吊上げることにより行い、図6(b2)に示すように、引張線12の張力の保持を、吊上げられた引張線12の中央部とPC・T桁1の上部の支間中央部との間に突張部材24(図示例は小型のコンクリートブロック)を介装することにより行う。
【0020】
そして、アンカーボルト2aを緩めて折曲げ支持具2を型枠底から取り外すとともに、PC鋼材3,4の緊張をゆっくり解除し、PC鋼材3,4の端部を切断して解放する。すると、PC鋼材3,4は付着力によりコンクリート5の下部にプレストレス(圧縮応力)を生じさせるが、張力の保持された引張線12が、PC・T桁1の二つの結合点11,11に斜め上向き(引張線12の引抜方向)の荷重P1 を付与すると同時に、持上げ装置22又は突張部材24を介してPC・T桁1の上部の支間中央部に下向きの荷重P2 を付与するため、PC・T桁1は上へ凸に湾曲するのが抑止される。そのため、仮にコンクリート5が十分に養生されておらず所期の強度に到達していないとしても、PC・T桁1の上部の支間中央部付近における横締め孔8のまわりにひび割れは発生しない。
【0021】
この引張線12の張力を保持したままのPC・T桁1を、型枠から別の場所に移動させてコンクリート5の養生を続ければ、その型枠を次のPC・T桁の製造に使えるようになるので、製造効率が高くなる。型枠とは別の場所でコンクリート5を十分(例えば1〜2日)に養生して所期の強度に到達させた後は、図1(c)に示すように、引張線12の張力を解除し、引張線12、保護板21、持上げ装置22、突張部材24等をPC・T桁1の上部から取り外すことができ、このときPC・T桁1は若干上へ凸に湾曲するが、もはや支間中央部付近における横締め孔8のまわりにひび割れは発生しない。
【0022】
本製造方法によれば、次の効果が得られる。
▲1▼ PC・T桁1の上部には小型で熱容量の小さい保護板21、持上げ装置22、突張部材24等しか接触しない。従って、コンクリート5の表面部と内部との間の温度差はあまり大きくならず、小さい熱応力しか生じないため、横締め孔8のまわりにひび割れが発生したり進行したりすることがない。
▲2▼ 小型・小重量の保護板21、持上げ装置22、突張部材24等が張力の保持された引張線12によりPC・T桁1の上部に押さえ付けられた状態のPC・T桁1はさほど不安定ではないので、別の場所に容易に移動させることができ、さらにその状態で出荷することも可能となる。
▲3▼ PC・T桁1が、図1(b)及び図2に示すように、側部から上方へ突出する地覆鉄筋10の付いた耳桁である場合でも、その地覆鉄筋10が邪魔になることなく、小型の保護板21、持上げ装置22、突張部材24等を載せることができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)PC・T桁1の桁長18〜24m、二つの折曲げ支持具2の間隔、二つの結合点11,11間の距離、等の各部の寸法を適宜変更すること。
(2)T形以外の各種PC桁(桁橋)において実施すること。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明に係るPC桁の製造方法によれば、大型・大重量のカウンターウェイトを使用しなくても、容易かつ安全な作業により、PC桁の上部の支間中央部付近におけるひび割れの発生を防止することができ、また、PC桁が地覆鉄筋の付いた耳桁である場合にも適用できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るPC桁の製造方法を示す説明図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同方法における引張線の端部の結合構造を示す部分断面図である。
【図4】別の結合構造を示す部分断面図である。
【図5】さらに別の結合構造を示す部分断面図である。
【図6】同方法における引張線の張力の付与及び保持の一方法を示す説明図である。
【図7】従来におけるPC桁の製造方法を示す説明図である。
【図8】従来における別のPC桁の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 PC・T桁
2 折曲げ支持具
2a アンカーボルト
3 折曲げ配置のPC鋼材
4 直線配置のPC鋼材
5 コンクリート
7 上フランジ部
8 横締め孔
10 地覆鉄筋
11 結合点
12 引張線
13 係止具
13a 突出部
14 係止具
14a 突出部
15 係止具
15a 突出部
21 保護板
22 持上げ装置
23 吊上げ装置
24 突張部材
Claims (5)
- プレテンション方式によりプレストレスを導入するPC桁の製造方法において、
PC鋼材を緊張させた状態で型枠にコンクリートを打設し該PC鋼材を埋設する工程と、
前記コンクリートをある程度養生する工程と、
前記養生によりコンクリートとPC鋼材との間の付着力が緊張に必要な大きさになったときに、PC桁の上部の支間中央部を挟んで離間する二つの結合点に山形状に渡した引張線の両端部を結合し、該引張線の中央部に上向きの力を加えて引張線に張力を付与し、該引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間で突張る突張部材により前記引張線の張力を保持する工程と、
前記引張線の張力を保持したままPC桁のPC鋼材の緊張を解除する工程と、
前記引張線の張力を保持したままコンクリートの養生を続ける工程と、
前記引張線の張力を解除する工程と、
を含むPC桁の製造方法。 - 前記コンクリートの結合点に対する引張線の両端部の結合を、コンクリートの結合点に引張線の両端部を直接埋設してその付着力により行う請求項1記載のPC桁の製造方法。
- 前記コンクリートの結合点に対する引張線の両端部の結合を、コンクリートの結合点に埋め込んだ係止具の突出部に引張線の両端部を機械的に係着することにより行う請求項1記載のPC桁の製造方法。
- 前記引張線の張力の付与を、PC桁の上部の支間中央部に設置した持上げ装置で引張線の中央部を持上げることにより行い、前記引張線の張力の保持を、持上げられた引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間に持上げ装置をそのまま突張部材として残すことにより行う請求項1、2又は3記載のPC桁の製造方法。
- 前記引張線の張力の付与を、PC桁の上方に設けた吊上げ装置で引張線の中央部を吊上げることにより行い、前記引張線の張力の保持を、吊上げられた引張線の中央部とPC桁の上部の支間中央部との間に突張部材を介装することにより行う請求項1、2又は3記載のPC桁の製造方法。
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