JP3547343B2 - 回折手段一体型レンズの設計方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズの表面上に回折手段を一体成形した回折手段一体型レンズ、特に、回折手段のレリーフ形状(回折効果を発生させるためにレンズ表面に設ける起伏の形状)の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、加工技術の飛躍的な発展に伴う加工の自由度の増加により、光学系の構成において、レンズと回折手段(回折効果を用いたレンズのこと、グレーティングレンズ等と称されることもある)の双方を用いる試みが盛んに行われている。従来、回折手段といえば、平面の基板上にエッチング等の半導体素子の製造プロセスを応用する方法が主であった。しかしながら、近年では、金型をダイヤモンドバイトで切削加工する方法でも高精度のものが作れるようになり、非球面レンズの非球面の表面上に回折手段を形成することも可能となった。
【0003】
また、回折手段の設計方法として、Sweatt(William C. Sweatt, ”Describingholographic optical elements as lenses”, J.Opt.Soc.Am, Vol.67, No.6(1977))による仮想的な非常に高い屈折率を用いる方法が知られている。この方法によれば、実在しない仮想の高い屈折率(例えば10000)で、非常に薄い肉厚のレンズを仮定すれば、光学シミュレーション上では回折手段と等価として扱うことができる。すなわち、従来の屈折型のレンズ設計用ソフトウェアを用いて、回折手段の設計及びシミュレーションを行うことができる。そのため、例えば、特開平8−43767号公報に記載されているように、上記方法を用いた多くの設計例が提案されている。
【0004】
上記仮想の非常に高い屈折率を用いた設計法により回折手段一体型レンズを設計した場合、回折手段部分はあくまでも仮想のレンズでしかない。すなわち、仮想的な非常に高い屈折率の面の頂点曲率半径、非球面係数等の面形状を定義する設計パラメータはレンズの光学シミュレーションには十分であるが、レンズの加工面の形状を表現したものではない。そのため、別の手段を講じてレンズの形状に変換する必要がある。その1つの方法として、本願の発明者らは、先に特開平8−171052号公報に記載した方法(第1の方法)を提案した。しかしながら、第1の方法は、あくまでも回折手段の段差毎の位相の飛びを最適にする方法であって、回折効率の調節の自由度は無い。
【0005】
回折手段を含むレンズの設計時において、回折効率を調節することは重要である。例えば、特開平8−62493号公報に記載されている光ディスク用対物レンズでは、0次回折光と1次回折光のそれぞれを用いて情報の記録又は読み出しを行う。そのため、このような光学系用の回折素子をレンズに一体化させる場合、回折効率の調節を行わなければならない。回折効率の調節の手段として、一般的に、回折面の断面の形状を調節することが知られている。また、平面上の回折素子の場合、断面形状を基に回折効率を計算する方法も知られている。そのため、球面又は非球面レンズの表面に回折素子を設計する場合においても、平面上における断面形状に基づいて回折効率をシミュレーションできれば有用である。
【0006】
一方、回折手段の表面形状を設計するための他の方法(第2の方法)として、例えば、特開平6−242373号公報には、回折手段のそれぞれの輪帯毎に非球面係数を求める方法が開示されている。第2の方法を用いても、回折手段の表面形状を求めることが可能ではあるが、回折効率を調節するためには段差の大きさを変化させるしかなく、回折素子断面の設計自由度が損なわれる。
【0007】
また、その他の方法として、特開平7−198909号公報には、回折手段の形状として、三角波形状を光軸からの距離の2乗に応じて変調させる方法(第3の方法)が開示されている。第3の方法を用いることにより、任意の回折効率を有する回折手段の加工用の表面形状を得ることができる。しかしながら、回折手段のレンズ作用に関する設計の部分に関しては設計の自由度が少ない。例えば、回折手段と屈折レンズを組み合わせて収差補正を行うような設計の場合に、特に、光ディスク用の高開口数レンズ等のような場合には開口の周辺部で満足に収差補正ができないことがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
回折手段一体型レンズを加工する方法として、一般的に、金型を切削加工し、プレス又は射出成形によりレンズを製造することが行われている。金型は、先端が鋭利なダイヤモンドバイトを用いて切削加工により形成される。レンズ成型用の金型には微細な形状が刻まれている。回折手段一体型レンズ等の光学素子の材料としては、一般的にガラスやアクリル等の樹脂が用いられる。ガラス製のレンズは、樹脂製のレンズに比べて、環境特性に優れる利点を有する。しかしながら、回折手段一体型レンズの成形の場合、特に、樹脂に比べてガラスの成形は困難である。
【0009】
また、ガラス成形のためには、成型用金型の材料として高温に耐えうるものを用いる必要があり、そのような材料の硬度は一般的に高い。そのため、ガラス成形用の金型の切削加工時において、バイトの先端曲率半径はなるべく大きいことが望ましい。また、金型の形状も、急峻な凹部がないように設計しておくことが望ましい。これらの条件を満足させるためには、回折手段一体型レンズ設計時においてレリーフ形状の設計自由度が必要となる。ところが、上記従来の各方法では、レリーフ形状の設計自由度が無く又は小さく、上記ガラスレンズ成形に適する条件を満足させるようなレリーフ形状を得ることは事実上不可能であった。
【0010】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、回折手段設計の自由度が非常に高い仮想の高屈折率を用いた設計方法を用いつつ、回折効率の調節の自由度を損なわない回折手段一体型レンズの設計方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の回折手段一体型レンズの設計方法は、レンズの表面上に回折手段が形成された回折手段一体型レンズを、特定の1つの物点に対して設計する回折手段一体型レンズの設計方法であって、前記回折手段一体型レンズを、実在しない仮想の高屈折率を用いたレンズと、少なくとも1つの実在の材料の屈折率を用いたレンズによる接合レンズであると仮定し、屈折型レンズの設計方法を用いて前記仮想の高屈折率を用いたレンズの設計を行い、上記(1)〜(3)式を用いて前記仮想の高屈折率を用いたレンズの設計データから前記回折手段の起伏形状に変換し、前記回折手段の起伏形状を球面又は非球面に施すために、上記(4)式で与えられるサグ量S(h)を用いることを特徴とする。
【0012】
また、前記本発明の回折手段一体型レンズの設計方法においては、上記(5)式で表された周期関数P(x)を用いることが好ましい。
【0013】
また、前記本発明の回折手段一体型レンズの設計方法においては、前記回折手段の起伏形状における凸部分の頂上の内角の最小値をφとして、φ>135゜の条件を満足させることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の回折手段一体型レンズ及びその設計方法に関する第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の回折手段一体型レンズの光軸を含み光軸に平行な断面の形状を示す図であり、図2は図1におけるA部の拡大図である。
【0015】
図1に示すように、回折手段一体型レンズ1の第1面(図中左側の面)には、位相型の回折格子(位相格子)2が形成されている。本発明の位相格子レリーフ(relief)型であり、面の起伏により透過する光束に回折現象を発生させる。実際には、位相格子2の起伏は非常に小さいため、本発明の回折手段一体型レンズ1を巨視的に見れば、一般的な屈折型レンズ形状をしている。巨視的な表面形状を一点鎖線(以下、表面曲線とする)3で表す。一方、微視的に見れば、図2に示すように位相格子2はレリーフの起伏形状を有する。
【0016】
図2において、直線4は光軸と平行であり、直線4と表面曲線3の交点及び直線4と位相格子2との交点の長さD(巨視的な断面形状と実際のレリーフ形状との間隔を光軸に平行な方向に測った長さ)が位相格子2のレリーフの微視的な起伏を表す。
【0017】
回折手段を含む光学系の光学設計法として、仮想の非常に高い屈折率を用いる方法が知られている。この方法によれば、実在のレンズの表面に接する仮想の非常に高い屈折率のレンズ(仮想高屈折率レンズ)を仮定し、また仮想高屈折率レンズのレンズ厚さを非常に薄く設定し、いわゆる仮想接合レンズを構成する。このとき、仮想高屈折率レンズによる屈折作用が回折手段の回折作用と等価となる。この方法により、通常のレンズ設計プログラムを用いて回折手段一体型のレンズの設計が可能となる。
【0018】
一方、回折効率等の観点から位相格子の断面形状の設計ができる。図3に位相格子の設計形状の一例を示す。波長をλ、位相格子の材料の屈折率をncとし、位相格子の起伏の高さH=λ/(n−1)とするとき、この位相格子22に垂直に入射し、位相格子を透過する光束に位相格子が与える位相遅れ量(位相の変化量)は図4に示すようになる。図4に示す関数をフーリエ変換を用いた演算を行うことにより回折効率の計算ができる。
【0019】
ここで、設計データ上、図3に示す位相格子を仮想接合レンズ上に形成する手順を説明する。まず、図4に示す関数を1周期が1となるように周期方向に正規化する。また、位相軸方向は波長を単位として正規化する。こうして求まる関数が本発明における周期関数P(x)である。図5は図3の位相格子の周期関数P(x)を示す。
【0020】
次に、設計データ上、仮想接合レンズにおいて、軸上物点から発する光線を光線追跡し、仮想高屈折率レンズと実在のレンズとの接合面における光軸からの高さhに対応した、実在のレンズ中での光線が光軸となす角θ(h)及び仮想高屈折率レンズ中での光路に沿った長さL(h)を求める。このL(h)を用いて、以下の(3)式で表されるQ(h)を計算する。nは仮想の非常に高い屈折率である。Q(h)は、仮想高屈折率レンズを透過する際の波面の位相遅れ量を、波長を単位として表したものである。
【0021】
【数3】
Q(h)=L(h)(n−1)/λ ・・・(3)
【0022】
また、θ(h)を用いて、以下の(2)式で表されるM(h)を計算する。nは実在のレンズ材料の屈折率である。M(h)は補正項であり、レンズ面の傾斜により光線が屈折し、結果として回折手段に対して斜めに入射してしまい、回折手段の起伏の大きさが小さくなってしまうのを補正する。
【0023】
【数4】
M(h)=(n−1)/(n・cosθ(h)−1) ・・・(2)
【0024】
こうして求まったQ(h)及びM(h)を用いて、以下の(1)式で表されるF(h)を計算する。F(h)は、図4に示す位相格子に相当する回折手段の起伏形状を表す。
【0025】
【数5】
F(h)=P(Q(h))M(h)λ/(n−1) ・・・(1)
【0026】
次に、本実施の形態における実際の演算を図6及び図7を用いて視覚化する。図6において、(a)は周期関数P(x)のグラフであり、X軸(縦軸)は周期方向の座標を表す(単位は特になし)。横軸は位相おくれを波長λを単位として正規化したものである。(b)は周期関数P(x)にλ/(n−1)を乗じたものであり、横軸を長さの次元に換算したものである。(c)はQ(h)のグラフであり、横軸はレンズ中心からの高さhを表し、単位はmmである。また、縦軸は仮想高屈折率レンズを光が透過するときの位相のおくれ量(又はレンズの厚さ)を表す。(d)は(b)のグラフをQ(h)を用いて変換したグラフを示す。この変換により、縦軸及び横軸とも長さの次元になる。図では横軸の単位をmm、縦軸の単位をμmとしている。(e)は補正係数M(h)のグラフである。横軸はレンズ中心からの高さhを表す。縦軸はh=0の時、M(0)=1であり、無次元の量である。(f)は上記F(h)のグラフであり、縦軸の単位はμmである。このF(h)が計算上の位相格子の微視的な起伏形状に相当する。
【0027】
図7の(f)は、図6の(f)を再度記載したものである。(g)は回折手段一体型レンズにおける位相格子が形成される面の巨視的な形状を表す。縦軸及び横軸共に単位はmmである。実際には、起伏形状がF(h)で表された位相格子を球面又は非球面上に形成する必要がある。そのため、図7(h)に示すように、(f)に示す位相格子の起伏形状F(h)とレンズの巨視的な表面形状D(h)を重ねあわせる必要がある。そのため、最終的には以下の(4)式で表されるS(h)を計算する。
【0028】
【数6】
S(h)=D(h)−F(h)+F(0) ・・・(4)
【0029】
なお、図7の(g)及び(h)おいて、縦軸の正の方向をその他のグラフとは反転させている。(h)において、実線は、実際の回折手段一体型レンズの位相格子が形成された面の形状であるS(h)を表す。また、一点鎖線は前記位相格子が形成される面の巨視的な形状を表す。F(0)は、光軸上における位相格子の巨視的なレンズの頂点からのシフト量である。このようにして、実際の回折手段一体型レンズの回折手段が施された面の形状が求められる。
【0030】
【実施例1】
以下に、第1の実施の形態における具体的な数値実施例1について説明する。以下の(表1)は、仮想の高屈折率を用いて設計した光ディスク用の対物レンズのレンズ設計データである。このレンズの開口数(NA)は0.55、焦点距離は3.0mmである。本レンズは、屈折レンズの軸上色収差を回折レンズにより補正する色消しレンズである。(表1)において、第2面〜第4面が仮想高屈折率レンズと実在の材料とからなるレンズの接合部であり、高屈折率レンズ面に相当するものが第2面、接合面に相当するものが第3面である。第5面から第6面が情報記録媒体の保護樹脂であり、本レンズは第6面上に結像する。
【0031】
本設計データの概略光路図を図8に示す。図8において、51は本発明の回折手段一体型レンズであり、52は情報記録媒体の保護樹脂、53の面が回折手段を形成したレンズ面である。また、第2面、第3面及び第4面は以下の(6)式で表される非球面である。各面における非球面係数を以下の(表2)に示す。
【0032】
【数7】
Figure 0003547343
【0033】
【表1】
Figure 0003547343
【0034】
【表2】
Figure 0003547343
【0035】
ここで、レンズ面上に形成する位相格子として、図9に示す周期関数P(x)を用いる。これは、レンズ成型用の金型をバイトを用いて加工することを考慮したものである。すなわち、図3に示すような断面の位相格子をバイトを用いて加工した場合、位相格子で凸になる部分は金型においては凹となるため、加工用バイトの先端曲率半径により、図10に示すように先端部は必ず丸みを有する。そのため、設計時には良好な回折効率であっても、実際に製造すると回折効率が低下する。この傾向は、特にレンズ周辺部では格子のピッチが小さくなるため深刻である。
【0036】
実施例1に用いた図9に示す周期関数P(x)では、設計時の回折効率は若干低下するが、加工後にバイトの丸みによる形状ずれの影響は受けにくくなる。図11は図3に示した位相格子に対応する周期関数P(x)と実施例1の周期関数P(x)との違いを理解しやすいように重ね書きしたものである。図11において、実線が実施例1の周期関数P(x)であり、破線が図3に示した位相格子に対応する周期関数P(x)である。
【0037】
また、図12には、それぞれの位相格子を形成するための金型を、一定の先端曲率半径を有するバイトを用いて加工したときの様子を模式的に示す。なお、図中の円はバイトの先端曲率半径に相当する。図12において、(a)は図3に示すような位相格子用の金型のレンズ中心付近の形状を示し、(b)はそのレンズの外周部付近の形状を示す。(c)は実施例1の位相格子用の金型のレンズ中心付近の形状を示し、(d)はそのレンズの外周部付近の形状を示す。
【0038】
図12の(a)と(b)とを比較した場合、位相格子のピッチはレンズ外周部ほど小さくなるため、点線で示す計算上の形状と実線で示す実際の形状との誤差は、外周部ほど大きくなる。このことは、レンズの内周部と外周部とで回折効率が異なることを意味し、結像性能が劣化する。一方、実施例1の(c)と(d)とを比較した場合、レンズ中心付近でもレンズ外周部付近でも、形状劣化の程度はほぼ同じであるため、レンズ全域に亘ってほぼ均一な回折効率を有し、良好な結像性能を確保することができる。
【0039】
続いて、Q(h)の計算を行う。まず、(表1)及び(表2)の光学系において光線追跡を実施する。その結果に基づいて、光線が仮想高屈折率レンズを透過するときの位相変化量を計算する。また同時に第3面目の屈折後に光線が光軸となす角を計算し、M(h)を求める。実施例1におけるQ(h)及びM(h)の計算結果を図13及び図14に示す。こうして求めた、Q(h)をP(x)に代入して、P(Q(h))を求める。P(Q(h))の計算結果を図15に示す。続いて、これにM(h)にλ/(n−1)を乗じてF(h)を求める。この結果を図16に示す。これが、実施例1の回折手段一体型レンズのレリーフの起伏に相当する。
【0040】
最終的には、第3面の非球面係数により求まるサグ量と図16に示すグラフで与えられるサグ量の和が回折レンズ一体型レンズの表面のサグ量となる。レンズのサグ量の一部を図17に示す。図17において、実線142は実施例1のレンズのサグ量をプロットしたものであり、破線141は設計データの接合面の非球面をプロットしたものである。なお、図17では、レリーフ形状を理解しやすいように、レリーフ形状を誇張して描いている。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の回折手段一体型レンズ及びその設計方法に関する第2の実施の形態について説明する。回折手段一体型レンズにおいて、レンズの表面上に回折手段を形成する場合、回折手段を形成した後の回折手段のレリーフ深さの平均と、回折手段を形成する前のレンズ形状との差が十分小さいことが望ましい。言い換えれば、回折手段を形成した後のレンズ形成面の巨視的な断面形状が設計非球面形状からずれないことが望ましい。以下の(7)式の左辺が誤差量を表し、この誤差が0であることが理想的である。
【0042】
【数8】
Figure 0003547343
【0043】
実際に誤差を0にするのは極めて困難であるため、以下の(5)式の範囲にあれば誤差を許容することができる。誤差量が上限を越えても下限を越えても設計レンズの巨視的な断面形状が本来の設計非球面形状とずれが大きくなり、結果として金型加工及びレンズ成形の加工マージンを狭くしてしまうため望ましくない。
【0044】
【数9】
Figure 0003547343
【0045】
【実施例2】
次に、第2の実施の形態における数値実施例2について説明する。この実施例2おいてもレンズ設計データは上記(表1)を用いるものとする。実施例2おいて、周期関数P(x)として、図18に示すような形状を用いる。回折効率は実施例1の場合と同じであるが、上記(7)式の条件を満足する形状である。実施例2におけるP(Q(h))の計算結果を図19に、F(h)の計算結果を図20に、レンズのサグのプロットの一部を図21にそれぞれ示す。図21において、実線182が実施例2におけるレンズのサグ量をプロットしたものであり、破線181が設計データの接合面の非球面をプロットしたものである。なお、図21では、レリーフ形状を理解しやすいように、レリーフ形状を誇張して描いている。
【0046】
図21から明らかなように、周期関数P(x)が(5)式を満足する場合、微視的なレリーフの起伏の平均的な深さと回折レンズを形成する前のレンズの非球面形状のずれが小さくなり、巨視的な断面形状と設計非球面のずれが小さくなることがわかる。
【0047】
上記第2の実施の形態の回折手段一体型レンズにおける周期関数P(x)として、レンズの表面の起伏の凸の部分の内角を緩和できるようなP(x)を選択した。バイトによる金型の切削加工を考慮して、P(Q(h))の内角の最小値φの最適な範囲を以下に説明する。
【0048】
レンズにおいて凸になる部分は金型にでは凹になる。この凹の部分を先端曲率半径がrのバイトを用いて金型加工した状態の模式図を図22に示す。図22において、実線が加工用のバイトであり、破線が設計のレリーフ形状である。加工用のバイトの先端は有限の曲率半径を持つため、金型で凹になる部分は必ず設計形状とレリーフ形状との間にズレを生じる。ここで、加工用バイトの先端曲率半径をrとし、レリーフの凸部の内角をφとするとき、図中eで表した誤差量は、次の(8)式で表される。
【0049】
【数10】
Figure 0003547343
【0050】
例えば設計時に周期関数P(x)として、図3の位相格子におけるP(x)の関数を用いた場合、φは最大でも90゜未満にしかならない。このとき、rとして3μmの先端曲率半径のバイトを用いて加工したとしても1.2μmの加工誤差が発生してしまい、回折効率が設計値から大きくずれてしまう。加工誤差を減らすためにはバイトの先端曲率半径をさらに小さくすればよいが、このときには加工性が低下したり、バイトがチッピングを起こしやすくなる。そのため、バイトの先端曲率半径をさらに小さくすることは望ましくない。そこで、内角であるφを緩和する必要があり、少なくともφ>135゜になるようなP(x)を選択することが望ましい。さらに望ましくはφ>160゜とする。φ>135゜であれば先端曲率半径が10μm程度の加工用バイトを用いたとしても加工誤差を0.8μm程度までに抑えることができる。また、φ>160゜の場合には、先端曲率半径が30μmの場合でも、前記の誤差量eを1μm程度に抑えることが可能となり加工性に優れる。また、先端曲率半径が10μm程度のバイトを用いれば、0.35μm程度の誤差となるため高精度でかつ加工性に優れる。
【0051】
上記本発明の回折手段一体型レンズの材料として、ガラスを用いる。ガラスは樹脂に比べると温度変化等による性能劣化が少ないという利点を有する。しかしながら、ガラスの成形温度は樹脂の成形温度よりも高いため、金型材料への制約が大きく、従来の設計方法では切削加工による加工可能な形状が限定されていた。本願発明の回折手段一体型レンズの設計方法によれば、上述のようにレンズの材料及び金型材料の制約を考慮したレリーフ設計が可能である。
【0052】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の回折手段一体型レンズの応用として、色消しレンズに関する第3の実施の形態について説明する。回折素子一体型レンズの軸上色収差と屈折レンズの軸上色収差を組み合わせて色消しレンズを構成する例は多く知られている。このようなレンズの設計法の1つとして、前述の仮想の非常に高い屈折率を用いた接合レンズによる方法を応用する。
【0053】
色消しレンズにおいては回折効率が100%であることが望ましい、しかしながら、上述のように、バイトを用いた切削加工においては必ずバイト先端の曲率半径により加工形状が劣化する。これは、回折レンズのピッチが細かくなるレンズの外周部ほど著しくなる。レンズの回折効率が中央部と周辺部とで異なる場合、レンズの開口数(NA)が実質的に低下したのと同じであり、結像性能が劣化する。この問題は、光ディスク用対物レンズ等の場合に、特に問題となる。むしろ設計回折効率が100%でなくても、レンズの中心部から周辺部に亘って形状劣化が少なくなることが望ましい。より具体的には、レリーフ形状が上記φ>135°又はφ>160°を満足することが好ましい。この場合、レンズ周辺部のピッチの細かい部分でも加工誤差を十分小さくすることが可能であるため、レンズの開口全域に亘って、一様な回折効率を得ることが可能となる。また、周期関数P(x)が(5)式又は(7)式を満足すればレンズの巨視的な断面形状と設計データの接合面の非球面形状とのずれが少なくなる。
【0054】
【実施例3】
上記第3の実施の形態における数値実施例3について説明する。実施例3を説明するための仮想の高屈折率を用いた設計データは上記(表1)及び(表2)に示した色消しレンズのものを用いる。ここでは、周期関数P(x)として図23に示す関数を用いる。一般的に知られている回折効率が100%となるための関数と実施例3の周期関数P(x)の差を図24に示す。図中、実線が実施例3の周期関数P(x)であり、破線が理論的に100%の回折効率を得るための関数である。なお、いずれも(5)式の条件を満足するものである。実施例3の周期関数P(x)では、頂点の角度を緩和したことによる回折効率の低下を防ぐために、全体的に形状を変化させている。
【0055】
実施例3におけるP(Q(h))の計算結果を図25に示す。最終的な微視的なレリーフ形状を表すF(h)の計算結果を図26に示す。このF(h)において、最小の内角φ=138゜である。このとき10μmのバイトを用いても(8)式で表される誤差は0.7μm程度にしかならず、加工のしやすさと、加工誤差の少なさを両立できる。図27は最終的に得られるレンズのサグの一部分である。図27において、実線が実施例3のレンズのサグ量をプロットしたものであり、破線は(表1)及び(表2)の設計データにおける接合面の非球面をプロットしたものである。また図27から明らかなように、実施例3のレンズは巨視的な形状と設計データの接合面の非球面形状とのずれが少なくなっていることがわかる。なお、図27では、レリーフ形状を理解しやすいように、レリーフを誇張して描いている。
【0056】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の回折素子一体型レンズを二焦点レンズに応用した第4の実施の形態について説明する。光ディスクに用いられる対物レンズは、情報記録用の媒体の情報記録面にレーザからの光束を良好に収束させるが、情報記録媒体には情報記録面を保護するための保護樹脂が重ねられている。一般に、光ディスク用対物レンズでは、光が保護樹脂を透過する際に発生する球面収差を補正できるように、球面収差をレンズ自体に持たせた構成となっている。ここで、保護樹脂の厚さが変化すると保護樹脂により発生する収差量が異なることから、レンズはある一定の保護樹脂の厚さに対して設計されている。
【0057】
一方、回折レンズを応用することによって、複数の保護樹脂の厚さに対して良好な収差補正をすることが可能となる。例えば、0次回折光を0.6mm、1次回折光を1.2mmの保護樹脂に対して良好な結像性能を得るようにすることも可能である。この場合には、まず、通常のレンズ設計法により、0.6mm用の対物レンズを設計し、続いて、前記設計したレンズと、仮想の非常に高い屈折率で、厚さが0のレンズによる接合レンズを形成し、前記接合レンズの非常に高い屈折率の面の非球面係数、頂点曲率半径等の変数を1.2mm厚さの保護樹脂に対して良好な結像性能となるように設計すればよい。
【0058】
二焦点レンズ用の位相格子のレリーフ形状はまず、回折効率の比(上記例の場合、0次回折光と1次回折光の回折効率の比)を一定の公差の範囲内に収める必要があり、かつ、不要な回折光の発生が少ないことが望ましい。そのため、周期関数P(x)のパターンが任意に選択できる必要がある。また、二焦点レンズにおいては0次回折光も用いるため、巨視的な断面形状が前記仮想の高屈折率を用いた設計の設計データにおける接合面の形状とのずれが少ないことが望ましい。このための条件として、周期関数P(x)が(5)式又は(7)式を満足することが必要である。さらに、F(h)の凸部の内角の最小値φが、φ>135°又はφ>160°を満足する形状である場合、加工用バイトの先端曲率によるレリーフ形状の劣化が少なくすることが可能であり、特に回折効率の仕様に厳しい二焦点レンズにとっては好適である。
【0059】
【実施例4】
次に、第4の実施の形態における数値実施例4について説明する。実施例4の二焦点レンズの設計データを(表3)、(表4)及び(表5)に示す。このレンズデータは光ディスク装置用の対物レンズの設計例である。この設計は2種類の厚さの情報記録媒に対応し、0次回折光を0.6mmの媒体用に、1次回折光を1.2mmの媒体用にそれぞれ用いる。0次回折光及び1次回折光共に、それぞれ良好に収差が除去されている。(表3)のデータが1次回折光に、(表4)のデータが0次回折光に相当する。また、材料として、一般に用いられているガラスを用いて設計した。レンズの仕様は、1.2mm媒体用の場合、焦点距離3.47mm、開口数(NA)0.43である。また、0.6mm用の場合、焦点距離3.3mm、開口数0.6である。また、設計波長は660nmである。
【0060】
(表3)及び(表4)中、第3面〜第4面が対物レンズ、第5面〜第6面が情報記録媒体の保護樹脂である。また、第2面が仮想の非常に高い屈折率を用いた回折レンズの設計面である。また、第2面、第3面及び第4面はそれぞれ(6)式で表現される非球面である。それぞれの面の非球面係数は(表5)に示す。(表3)及び(表4)に示すそれぞれの場合における概略光路図を図28に示す。図28中、光軸よりも上半分が(表3)に示す1次回折光の光路図であり、下半分が(表4)に示す0次回折光の光路図である。また、251が回折レンズ一体型の二焦点レンズ、252は厚さが1.2mmの情報記録媒体の保護樹脂、253は厚さが0.6mmの情報記録媒体の保護樹脂、254の面は回折レンズを形成したレンズ面、255は1次回折光の光束、256は0次回折光の光束である。
【0061】
【表3】
Figure 0003547343
【0062】
【表4】
Figure 0003547343
【0063】
【表5】
Figure 0003547343
【0064】
実施例4のレンズにおいて、回折レンズの回折効率は、0次回折光と1次回折光の比が1:1になるものとする。回折効率が前記条件を満足する形状を表す周期関数P(x)の一例として、図29に示すような形状が知られている。ところが、このような形状では2次回折光が発生する上に、加工が困難な形状になってしまうため好ましくない。実施例4では、周期関数P(x)として図30に示す形状を用いる。この形状によれば、0次回折光の回折効率と1次回折光の回折効率の強度比を1:1にでき、かつ、2次回折光の発生量を低減することができる。また、図30の周期関数P(x)は(5)式を満足する。
【0065】
次に、図30に示す周期関数P(x)に相当するレリーフ形状を非球面上に形成する手順について説明する。まず、(表3)及び(表5)に示すの光学系において光線追跡を実施する。これにより、第2面から第3面を光線が透過するときの位相変化量と第3面に入射するときの光線の高さの関係を表す関数Q(h)および、第3面における屈折後の角度を用いて(2)式を計算し、M(h)を算出する。Q(h)及びM(h)の計算結果を図31及び図32に示す。こうして求めた、Q(h)をP(x)に代入し、P(Q(h))を求める。P(Q(h))の計算結果を図33に示す。続いて、これにM(h)にλ/(n−1)をかけて図34に示すF(h)が求まる。この図に示す量が、回折レンズの微視的なレリーフ形状に相当する。
【0066】
最終的には、第3面の非球面係数により求まるサグ量と図34に示すグラフで与えられるサグ量の和が回折手段一体型レンズの表面のサグ量となる。この一部を図35に示す。図35において、実線は実施例4のレンズのサグ量をプロットしたものであり、破線は設計データの接合面の非球面をプロットしたものである。なお、図35では、レリーフ形状を理解しやすくするために、レリーフ形状を誇張して描いてある。図35から明らかなように、周期関数P(x)が(15)式を満足する場合には、微視的なレリーフの起伏の平均的な深さと回折レンズを形成しないレンズの非球面形状のずれが小さくなり、巨視的な断面形状と設計非球面のずれが小さくなることがわかる。これにより、高精度な結像性能を確保することが可能となる。
【0067】
なお、実施例4のF(h)の凸部の内角の最小値φ=160゜であり、(7)式を満足する形状である。そのため、加工による形状劣化が少なくてすむため、生産性も良好となる。さらに、実施例4のレンズの材質はガラスであるため、温度変化に対する性能劣化が少ない。
【0068】
上記各実施例では、本発明の回折手段一体型レンズを色消しレンズや二焦点レンズに応用したが、組レンズに応用することも可能である。一般に、組レンズを構成するレンズ要素に、回折手段一体型レンズを用いてレンズ枚数を削減することは知られている。回折手段一体型レンズとして、本発明のレンズを用いることにより、回折効率の設計の自由度を高めることが可能であり、レンズ全体の性能向上を図ることが十分に可能となる。
【0069】
(第5の実施の形態)
次に、本発明のデータ変換装置に関する第5の実施の形態について説明する。従来より、非球面形状の設計データをレンズ形状に変換するデータ変換装置が知られているが、それらは全て(1)式の多項式を計算するものであって、光線追跡機能を有していなかった。しかしながら、本発明のデータ変換装置においては、(6)式の巨視的な形状と、(1)式の微視的な形状を計算してレンズのサグ量を計算するものであるため、光線追跡機能と、周期関数P(x)の入力、保存機能を有する特徴がある。本装置において、レンズのサグ量は(4)式で表される。これは、一般に(1)式で表される微視的なレリーフの起伏形状が、光軸上で必ずしも0になっていないことから、これを補正するための項を付加したものである。
【0070】
一般に、レンズ設計装置においては、装置の機能をユーザーに合わせて改善できるようにマクロ言語(プログラミング言語)を具備したものが多い。このマクロ言語を用いて本データ変換装置を構成することにより、レンズデータの入出力機能及び光線追跡機能はレンズ設計装置に備わった機能であるため、データを入力し直す必要がなく、作業を容易にするだけでなく、データの入力ミスの発生をなくすことができる。また、光学設計者が加工形状の見当をつけることができるため、加工形状までを勘案した光学設計が可能となる。
【0071】
【実施例5】
本発明のデータ変換装置の概略構成を図36に示す。レンズの設計データ及び周期間数P(x)の入力はキーボードより行われ、メモリに保存される。CPUは演算を行う部分であり、メモリ上のデータを用いて光線追跡等の各種演算処理を行い、結果をメモリに保存する。また、それらの演算結果等の情報はディスプレイ上に表示される。フロッピーディスクドライブには、本発明のデータ変換装置のアルゴリズムを実行するためのプログラムが保存されている。
【0072】
図37は本発明のデータ変化装置のアルゴリズムを示す図である。ここで、仮想の高屈折率のデータは(6)式で表す非球面を用いたデータであるとする。まず、本装置に仮想の高屈折率を用いたレンズ設計データ及び周期関数P(x)を入力する。ここで、周期関数P(x)として、加工用のバイトの先端曲率半径及び被加工物の材料特性を考慮して、レンズに要求される回折効率を満足するものを用いる。ここからは、入力された設計データを用いて光線追跡を実施しながら、逐次計算していく。
【0073】
まず、hを0に初期化し、h=0の光線追跡を実施する。その結果より、Q(h)及びM(h)を計算する。次に、周期関数P(x)を用いて(1)式を計算する。続いて、接合面の非球面のサグ量(6)式を計算し、(4)式のS(h)を求める。次に、hを微増させ光線追跡からD(h)を求めるまでを繰り返す。この微増させる間隔はNC加工機の送り刻みにあわせる。最終的にhがレンズの加工径になるまで上述の計算を行うことにより、hとそれに対応するサグ量S(h)の表が得られる。
【0074】
(第6の実施の形態)
続いて、本発明のレンズ成型用金型に関する第6の実施の形態について説明する。図38は、回折手段一体型レンズ成型用の金型加工の概略手順を説明する図である。まず、ダイヤモンド砥石を用いた研削加工より粗加工を行う。このときの形状は高屈折率を用いた設計データにおける接合面の非球面データにあわせて行う。続いて、切削加工用の加工層をスパッタ法により形成し、続いてダイヤモンドバイトにより、精密切削加工を行い、位相格子のレリーフ形状を加工する。
【0075】
このとき、レリーフの微細な凹凸形状が角度の急な凹部を有する場合、加工用バイトの先端曲率半径を十分に小さくしなければ(例えば3μm程度)加工による誤差が発生する(図22参照)。しかしながら、このような場合には、加工用バイトの磨耗が激しくなる上に、加工時にチッピングを起こしやすく、さらには加工後の面の面粗度も悪くなる。さらには、ガラス製形用の金型の場合には、高温の成形に耐えうる金属を用いて構成する必要がある。一般に、そのような金属材料は高硬度であり、加工性が悪くなるため、なるべく先端曲率半径の大きなバイトを用いることが望ましい。
【0076】
上記課題を解決するためには、F(h)の内角の最小値であるφが数φ>135°又はφ>160°の条件を満足することが望ましい。これは加工誤差を少なくするための条件である。また、加工後の表面の面粗度の向上及びバイトの長寿命化及びより堅い金属材料を安定して切削するためには、切削用バイトの先端曲率半径rが満足すべき最適な領域がある。30μm<r<50μmは、そのための条件であり、上限を越えると、設計形状と金型形状との誤差が大きくなる。また、下限を越えるとバイトの寿命が極端に短くなってしまい、安定した製造が困難となる。さらに望ましくは10μm<r<50μmを満足すればよい。このときには加工後の面粗度が改善されかつ高硬度の金型材料の切削が可能となる。
【0077】
第6の実施の形態における周期関数P(x)の具体的例は、先に説明した実施例3及び4において用いた周期関数P(x)が挙げられる。実施例3の周期関数P(x)を用いた場合、F(h)の凸部の最小の内角は160゜である。このとき、加工誤差の許容度を1μmとすると、先端曲率半径が30μmのバイトを用いて加工することが可能であり、ガラス成形に耐えうる金型材料を十分に安定して加工することができ、長寿命の金型を実現することができる。
【0078】
実施例4の周期関数P(x)を用いた場合、F(h)の凸部の最小の内角は139゜である。このとき、加工誤差の許容度を1μmとすると、先端曲率半径が14μmのバイトを用いて加工することが可能であり、ガラス成形に耐えうる金型材料を十分に安定して加工することができ、長寿命の金型を実現できる。
【0079】
(第7の実施の形態)
次に、本発明の光ヘッド装置に関する第7の実施の形態について説明する。情報の再生と記録の両方を行う光ヘッド装置においては、情報の記録時には再生時よりもレーザの出力光の強度を強くする。このとき、レーザの発信波長もそれにつれて変動してしまう。このとき、対物レンズに色収差が残っていると対物レンズのフォーカスがディスクの記録面からはずれてしまい、情報の正確な記録、再生ができなくなる。しかし、本発明の回折手段一体型色消しレンズを用いた場合には、色収差の発生がないため、波長変動の影響を受けにくい。また、本発明の回折手段一体型レンズでは、回折効率がレンズの開口全体で一様であるため、集光性能にも優れる。
【0080】
【実施例6】
本発明の回折手段一体型色消しレンズを用いた光ヘッド装置の好適な実施例6について説明する。図39は実施例6の光ヘッド装置の概略構成図である。半導体レーザ361からの発散光束362はコリメートレンズ363により平行光に変換され、ビームスプリッタ364を透過し、本発明の回折手段一体型色消しレンズ365により情報記録媒体366の記録面上に集光される。情報記録媒体366からの反射光は、対物レンズ365により平行光に変換された後、ビームスプリッタ364により反射され、検出光学系のレンズ系367により受光素子368に結像される。実施例6の光ヘッド装置では、対物レンズ365として、実施例3に示したレンズを用いている。そのため、本光ヘッド装置においては、対物レンズの色収差が除去されており、波長変動の影響を受けにくい。また、本発明の色収差補正レンズは回折効率がレンズ開口全体において一様であるため、集光性能にも優れる利点を有する。
【0081】
(第8の実施の形態)
次に、本発明の光ヘッド装置に関する第8の実施の形態について説明する。高密度記録用の光ディスク装置においては、情報記録媒体の厚さが薄いほうが収差的な観点から望ましい。しかしながら、薄型の情報記録媒体専用のレンズでは従来からある厚い保護樹脂の媒体が再生できない。しかし、本発明の回折手段を一体化させた二焦点レンズを用いることにより、厚さの異なる2種類の媒体を良好に再生できる光ヘッド装置を構成することができる。
【0082】
【実施例7】
本発明の回折手段一体型二焦点レンズを用いた光ヘッド装置の好適な実施例7について説明する。実施例7の光ヘッド装置の概略構成図は図39と同じである。半導体レーザ361からの発散光束362はコリメートレンズ363により平行光に変換された後、ビームスプリッタ364を透過し、本発明の回折手段一体型二焦点レンズ365により情報記録媒体366の記録面上に集光される。情報記録媒体からの反射光は、対物レンズ365により平行光に変換された後、ビームスプリッタ364により反射され、検出光学系のレンズ系367により受光素子368に結像される。
【0083】
実施例7においては、対物レンズ365として、実施例4において説明した二焦点レンズを用いているため、情報記録媒体366の厚さが0.6mmであっても、また1.2mmであっても、良好に再生することができる。
【0084】
なお、上記各実施の形態の説明中、位相格子を形成する面をすべて非球面で説明したが、レンズ面が球面であっても非球面と同様の効果を奏することはいうまでもない。また、高屈折率を用いた設計データにおいて、接合面の定義式が(6)式とは異なった多項式を用いる非球面形状(例えばスプライン関数を用いたようなもの)であっても、本質的に本発明は同様の効果を奏する。さらに、本発明の第7及び第8の実施の形態では、光ディスク用の対物レンズを例示して説明したが、この用途に限定されるものではなく、ビデオカメラ、ボードカメラ等に用いられる撮像用のレンズや、レーザビームプリンタ等の走査光学系用のレンズ、ヘッドアップディスプレイ装置や投写型テレビジョン等に用いる像投影用のレンズであってもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の回折手段一体型レンズの設計方法によれば、(1)〜(3)式を用いることにより、仮想の高屈折率を用いた仮想の屈折型接合レンズの設計データを位相格子の実際の起伏(レリーフ)形状に変換することができる。特に、周期関数P(x)を任意に設定することが可能であるため、レンズの加工性及び回折効率等を考慮した設計が可能となり、設計の自由度を著しく高めることができる。また、(4)式を用いることにより、位相格子を球面又は非球面上に形成することができ、直接回折手段一体型レンズの位相格子形成面の実際の形状を得ることができる。
【0086】
また、位相格子のレリーフ形状として(5)式を満足させることにより、レンズの巨視的な断面形状と、仮想高屈折率を用いた仮想接合レンズの接合面の非球面形状とのずれを十分小くすることができる。そのため、非球面形状のずれに起因する性能劣化を抑制することができる。
【0087】
また、位相格子のレリーフ形状F(h)の凸部の内角の最小値をφとして、φ>135°を満足させることにより、金型をバイトで切削加工する際のバイトの先端の曲率半径を大きくすることができる。その結果、バイトの磨耗も少なく、加工時にピッチングを起こすこともなく、加工後の金型の面粗度も劣化せず、金型加工が容易になり、加工誤差による形状劣化の影響を受けにくい。特に、レンズ材料としてガラス性を用いることができ、回折手段一体型レンズ特有の効果を有しつつ、温度の変化による性能劣化が少ないという利点を有する。
【0088】
また、本発明の回折手段一体型レンズは高屈折率法により設計され、巨視的な断面形状が(6)式で表され、そのレリーフ形状を(1)式を用いて設計したので、屈折レンズの色収差を位相格子の色収差で補正することができ、単レンズながら色消しレンズを実現することができる。また、組レンズのうち、少なくとも1枚のレンズを本発明の回折手段一体型レンズを用いることにより、レンズの高機能化を図りつつ、良好な回折効率を確保することができる。また、本発明の回折手段一体型レンズの位相格子により回折される光のうち、例えば0次回折光と1次回折光をそれぞれ異なった位置に集光させることができ、二焦点レンズを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折手段一体型のレンズの概略構成を示す断面図
【図2】図1におけるA部の拡大断面図
【図3】位相格子の一例を示す図
【図4】図3に示す位相格子を透過した波面の位相遅れを示す図
【図5】図3の位相格子の周期関数P(x)を示す図
【図6】本発明の回折手段一体型レンズの設計方法を視覚化するための図
【図7】本発明の回折手段一体型レンズの設計方法を視覚化するための図
【図8】本発明の実施例1のレンズの光路図
【図9】実施例1における周期関数P(x)を示す図
【図10】バイトを用いて位相格子用金型を加工する際の設計値と実際の加工形状との誤差を示す図
【図11】図7に示す実施例1の周期関数P(x)と図3に示す周期関数P(x)を重ねて描いた図
【図12】位相格子形成用金型をバイトを用いて加工したときの様子を模式的に示す図であり、(a)は図3に示すような位相格子用の金型のレンズ中心付近の形状、(b)はそのレンズの外周部付近の形状、(c)は実施例1の位相格子用の金型のレンズ中心付近の形状、(d)はそのレンズの外周部付近の形状を示す。
【図13】(表1)及び(表2)の設計データにおけるQ(h)の計算結果を示す図
【図14】(表1)及び(表2)の設計データにおけるM(h)の計算結果を示す図
【図15】実施例1におけるP(Q(h))を示す図
【図16】実施例1におけるのF(h)を示す図
【図17】実施例1のレンズの断面形状の一部分の拡大図
【図18】実施例2における周期関数P(x)を示す図
【図19】実施例2におけるP(Q(h))の計算結果を示す図
【図20】実施例2におけるF(h)の計算結果を示す図
【図21】実施例2のレンズの断面形状の一部分の拡大図
【図22】バイトの先端曲率半径による誤差を説明するための図
【図23】実施例3における周期関数P(x)を示す図
【図24】実施例3における周期関数P(x)と図3に示す周期関数P(x)を重ね書きした図
【図25】実施例3におけるP(Q(h))の計算結果を示す図
【図26】実施例3におけるF(h)の計算結果を示す図
【図27】実施例3におけるレンズの断面形状の一部分の拡大図
【図28】(表3)、(表4)及び(表5)に示す設計データのレンズの光路図
【図29】実施例4における周期関数P(x)を示す図
【図30】1次回折光と0次回折光の比が等しくなる周期関数P(x)の一例を示す図
【図31】(表3)及び(表5)のデータにおけるQ(h)の計算結果を示す図
【図32】(表3)及び(表5)のデータにおけるM(h)の計算結果を示す図
【図33】実施例4におけるP(Q(h))を示す図
【図34】実施例4におけるF(h)の計算結果を示す図
【図35】実施例4におけるレンズの断面形状の一部分の拡大図
【図36】実施例5のデータ変換装置の概略構成を示す図
【図37】実施例5のデータ変換装置のアルゴリズムを示す図
【図38】本発明の回折手段一体型レンズ成形用金型の加工手順の説明図
【図39】本発明の光ヘッド装置の概略構成を示す図
【符号の説明】
1・・・回折手段一体型のレンズ
2・・・回折手段を形成したレンズ面
3・・・回折手段を形成した面の巨視的な形状
4・・・光軸に平行な直線
22・・・回折格子
51・・・本発明の回折レンズ一体型のレンズ
52・・・情報記録媒体の保護樹脂
53・・・回折レンズを形成した面
71・・・加工用バイトの先端曲率半径の円
72・・・設計レリーフ形状
141・・・回折レンズ一体型レンズの断面形状
142・・・接合面の非球面の形状
181・・・回折レンズ一体型レンズの断面形状
182・・・接合面の非球面の形状
191・・・加工用バイトの先端
192・・・設計レリーフ形状
241・・・回折レンズ一体型レンズの断面形状
242・・・接合面の非球面の形状
251・・・本発明の回折レンズ一体型のレンズ
252・・・情報記録媒体の保護樹脂(1.2mm)
253・・・情報記録媒体の保護樹脂(0.6mm)
254・・・回折レンズを形成した面
255・・・1次回折光の光束
256・・・0次回折光の光束
321・・・回折レンズ一体型レンズの断面形状
322・・・接合面の非球面の形状
361・・・半導体レーザ
362・・・光源
363・・・コリメートレンズ
364・・・ビームスプリッタ
365・・・対物レンズ
366・・・情報記録媒体
367・・・検出レンズ系
368・・・受光素子

Claims (3)

  1. レンズの表面上に回折手段が形成された回折手段一体型レンズを、特定の1つの物点に対して設計する回折手段一体型レンズの設計方法であって、前記回折手段一体型レンズを、実在しない仮想の高屈折率を用いたレンズと、少なくとも1つの実在の材料の屈折率を用いたレンズによる接合レンズであると仮定し、屈折型レンズの設計方法を用いて前記仮想の高屈折率を用いたレンズの設計を行い、以下の(1)〜(3)式を用いて前記仮想の高屈折率を用いたレンズの設計データから前記回折手段の起伏形状に変換し、前記回折手段の起伏形状を球面又は非球面に施すために、以下の(4)式で与えられるサグ量S(h)を用いることを特徴とする回折手段一体型レンズの設計方法。
    Figure 0003547343
    ただし、
    F(h):光軸からの高さhの箇所における回折手段の起伏形状を、光軸と平行な方向に計った長さ
    P(x):周期が1の周期関数
    θ(h):設計データにおいて、仮想の高屈折率を用いたレンズと実在の材料の屈折率を用いたレンズの接合面に光軸からの高さがhで入射する、レンズ設計に用いた物点から射出された軸上光線が前記実在の材料を透過するときの光軸とのなす角
    L(h):設計データにおいて、上記接合面に光軸からの高さがhで入射する、レンズ設計に用いた物点から射出された軸上光線が仮想の高屈折率レンズを透過する光路に沿った長さ
    D(h):仮想の高屈折率を用いたレンズと実在の材料の屈折率を用いたレンズの仮想接合面の形状を表す多項式
    F(0):光軸上における回折手段のレリーフ形状の初期値
    λ:設計中心波長
    n:λにおける実在の材料(レンズ材料)の屈折率
    :λにおける仮想の高屈折率
  2. 以下の(5)式で表された周期関数P(x)を用いることを特徴とする請求項1に記載の回折手段一体型レンズの設計方法。
    Figure 0003547343
    ただし、mは正整数又は0
  3. 前記回折手段の起伏形状における凸部分の頂上の内角の最小値をφとして、φ>135゜の条件を満足させることを特徴とする請求項1又は2に記載の回折手段一体型レンズの設計方法。
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