JP3547050B2 - 炭素鋼材料の強化処理方法およびチェーンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素鋼からなる薄板や棒材等の材料を強化処理する方法に係り、特に疲労強度を向上させる強化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械部品、特に自動車部品等に用いられる炭素鋼材料の疲労強度は、その材料が有する機械的諸性質のうちの引張り強度に大きく依存していると考えられていた。したがって、繰り返し回転曲げ、引張り/圧縮、ねじり等の疲労限度も引張り強度を目安に判断されていた。しかしながら、引張り強度を向上させても、疲労強度が向上しにくい、あるいは向上しない領域が現れる場合があることは周知であった。そのため、材料の形状に応じて圧延、転造、線引き、あるいはショットピーニング等の各種塑性加工を施し、材料の表面に圧縮残留応力を付与して硬化させることにより疲労強度を向上させる方法が一般に採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような疲労強度を向上させる方法では、部分的な耐疲労特性は高まるものの材料全体の疲労強度を高めるまでには至らず、疲労強度の低い部分がウイークポイントとなって材料の早期破壊につながるおそれがあった。また、ショットピーニングにおいては、ショット径、ショット速度、パス回数(工程数)、ショットの洗浄等の各種条件が材料や部材ごとに異なり、最適条件を見出すのに多くの実験を要していた。そして、このように処理条件を選定するために多くの実験を要することは、圧延、転造、線引き等の加圧加工も同様であった。したがって本発明は、炭素鋼材料の疲労強度を材料全体にわたって向上させることができ、かつその手段も比較的容易な炭素鋼材料の強化処理方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、炭素鋼の引張り強度を向上させても疲労強度が向上しない領域が現れる現象について鋭意研究を重ねた結果、疲労強度は、引張り強度よりもむしろ引張り強度測定時の降伏点と密接な相関関係があることを見い出した。すなわち、降伏点を超えて材料が破断する手前の任意のポイントまで引張り荷重をかけた後に除荷し、再び引張り荷重をかけると、降伏点が、前回かけた引張り荷重(除荷したポイントの荷重)付近まで上昇する。この降伏点の上昇は、材料全体に残存歪み(引張り残留応力)が付与されることによるものであり、このように残存歪みが付与された材料は疲労強度が上昇していることが判った。そして、残存歪みが付与されやすく、疲労強度が顕著に向上する材質としては、平均硬さHRC:50〜57の主たる組織がベイナイト組織である炭素鋼であり、かつ残存歪み量は少なくとも0.3%以上付与されているものが有効であることを見い出した。よって本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、C:0.5〜0.65重量%、Si:0.1〜1.5重量%、Mn:0.5〜1.2重量%、Cr:0.5〜0.8重量%、残部Fe及び不可避不純物からなる、平均硬さHRC:50〜57のベイナイト組織を有する炭素鋼材料に引張り加工を施し、該材料に0.3%以上の残存歪みを付与することを特徴としている。なお、ここで言う降伏点とは、材料がある程度明瞭に塑性変形を起こす応力を指すが、一定の歪み:0.2%が生じたときの応力すなわち0.2%耐力値を含むものとする。
【0005】
平均硬さを規定する根拠は、以下の通りである。平均硬さHRC:50未満では破断荷重が低く、降伏点以上において残存歪みが十分に付与される引張り荷重をかけることができず、よって疲労強度の向上が見込まれない。一方、平均硬さHRC:57を超えると、組織的にはベイナイト組織中にマルテンサイト組織や残留オーステナイトが多く析出しており、これに引張り荷重をかけると残留オーステナイトが引張り誘起マルテンサイトに変態して材料全体が硬く脆いものとなってしまう。したがって、伸びが急激に低下して降伏点からの伸びはほとんど生じず、降伏点の上昇が望めなくなることから疲労強度の向上が見込まれない。また、炭素鋼は、組織的には概ねフェライト組織、パーライト組織、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の4種を有する。これら組織の中で、フェライト組織とパーライト組織は軟質であるため引張り荷重をかけても十分な残存歪みを付与することができない。また、マルテンサイト組織は上記のように硬く脆いから不適当である。ベイナイト組織は延性に富み、引張り荷重をかけると十分な残存歪みを付与することができる。
【0006】
本発明は、材料に対し従来のように圧縮加工を施すことに代えて引張り加工を施し、それにより、正(プラス)の残留応力である残存歪みを材料に付与する。図1は、引張り加工時における応力−歪み曲線を示している。A0から降伏点B0を超えてB1まで引張り荷重をかけた後に除荷すると、A0に戻らずB1−A1に沿って戻り、材料にはA0−A1に相当する歪みが生じたまま残る。この歪み量が引張り加工によって付与された残存歪みであり、材料全体が硬化し、かつ全体的な疲労強度の向上に貢献する。除荷後再び材料にかける引張り荷重は、降伏点以上、かつ破断する手前であって材料全体が一様な伸びを示す範囲で選択されるが、その範囲内では、大きな変形を避けるために破断荷重の95%以下が望ましい。また、引張り加工により材料に付与する残存歪みは、0.3%以上、好ましくは1.0%以上が良い。
【0007】
圧縮加工では材料の表面が損傷したり肌荒れしたりする不利な面があったが、本発明では引張り加工なのでそのような問題は生じない。また、疲労強度を向上させるための設定条件は、残存歪みを付与し得る引張り荷重だけであり、これは、材料を引張って降伏点と破断荷重を調べることにより見出すことができる。したがって、設定条件を選定するための実験の数が格段に少なくて済み、疲労強度向上のための工程が効率的になる。
【0008】
本発明に用いられる炭素鋼材料の成分は、C:0.5〜0.65重量%、Si:0.1〜1.5重量%、Mn:0.5〜1.2重量%、Cr:0.5〜0.8重量%、残部Feおよび不可避不純物である。また、Mo:最大0.15重量%、V:最大0.5%、Ni:最大0.2重量%の1種を含むことができる。このような炭素鋼を、例えば880℃からMs点直上の温度に焼入れ、保持し、恒温変態させるといった熱処理(マルテンパー)を施す。すると、硬さHRC:50〜57、主たる組織がベイナイト組織の炭素鋼を得る。このような特性の炭素鋼に対し上記の引張り加工を施すことにより、材料全体にわたって疲労強度を向上させることができる。
【0009】
【実施例】
次に、実施例により本発明の効果を明らかにする。
[実施例1]残存歪み付与の有無と疲労強度の関係(成分同一)
【0010】
【表1】
【0011】
上記表1に示す成分を有する炭素鋼により、図2に示す引張り試験片を必要数作製した。引張り試験片は、平面曲げ疲労試験法(JIS Z 2275)に準じるものである。次いで、各試験片に、880℃から焼入れした後に戻し(徐冷)温度で1時間加熱するマルテンパーを施した。ここで、戻し温度を、A:260℃、B:280℃、C:320℃、D:340℃とし、戻し温度の異なる4種類のサンプルを得た。そして、まずサンプルA〜Dの組織を調べるとともに、硬さを測定した。図3(a),(b)はサンプルA,Bの組織の顕微鏡写真を、また、図4(a),(b)はサンプルC,Dの組織の顕微鏡写真をそれぞれ示している。いずれのサンプルにあっても針状のベイナイト組織を有していることが確認された。
【0012】
次いで、サンプルA〜Dの引張り試験片に対し、破断するまで一様に引張り荷重をかけて降伏点および破断荷重を測定する降伏点操作無しの引張り試験と、降伏点を超えてから破断する手前で一旦除荷することにより残存歪みを付与し(すなわち降伏点を上昇させ)、これに再び引張り荷重をかけて降伏点を測定する降伏点操作有りの引張り試験を行った。降伏点操作有り、すなわち残存歪みを付与するための負荷荷重は、サンプルA〜Cに関しては1種類、サンプルDに関しては2種類(DとD’)とした。また、残存歪みを付与した段階でのサンプルA〜D’に関して残存歪みと硬さも測定した。上記引張り試験を行った際の応力−歪み曲線を図5(a)〜(d)に、また、試験結果ならびに降伏点から算出される疲労強度を、表2に示す。なお、表2の降伏点割合は、降伏点操作無しの場合の破断荷重に対する降伏点荷重の割合である。また、図5および表2のデータは、同一サンプル5個の平均値である。
【0013】
【表2】
【0014】
表2によれば、サンプルA〜D’のいずれの場合も、降伏点操作有りの方が降伏点操作無しに比べて疲労強度が向上していることが判る。ここで、降伏点と疲労強度との関係を図6に、引張り強度と疲労強度との関係を図7にそれぞれ示す。図6に示すように、降伏点が向上するとそれに比例して疲労強度が向上することが判るが、図7では引張り強度が向上しても疲労強度が必ずしも向上しないことが判り、両者の間に一定の相関関係は見い出せない。また、図8は、残存歪みと疲労強度との関係を示している。図8によれば、疲労強度は70kgf/mm2程度を上限として安定し、確実に疲労強度を得るには、残存歪みが1.1%以上あれば良いことが判る。しかしながら、残存歪みが0.3%以上でも疲労強度の向上はみられるので、引張り加工により材料に付与する残存歪みは、0.3%以上、好ましくは1.0%以上が良く、1.1%以上であればより好ましいと判断される。また、図9は、降伏点操作無しと降伏点操作有りの全サンプルについての降伏点割合と疲労強度との関係を示しており、降伏点割合の上昇に伴って疲労強度が増加することが判る。降伏点割合は、材料破断(降伏点割合100%)の手前であって大きな変形を生じさせない97%以下、好ましくは95%を上限とすることが望ましいと判断される。
【0015】
[実施例2]残存歪み付与の有無と疲労強度の関係(成分変更)
【0016】
【表3】
【0017】
上記表3に示す成分を有する11種の炭素鋼により、図2に示した平面曲げ疲労試験法(JIS Z 2275)に準じる試験片を作製し、これらに、上記と同様に880℃から焼入れした後に表3に示す戻し温度で1時間加熱するマルテンパーを施し、成分の異なるサンプルE2,E4,E5〜E11を得た。次いで、これらサンプルE2,E4,E5〜E11の硬さを測定し、この後、降伏点操作無しの単純な引張り試験と、残存歪みを付与する降伏点操作有りの引張り試験を行った。降伏点操作有りの引張り試験における引張り荷重、すなわち降伏点割合は、降伏点操作無しで引張り試験を行った際の破断荷重に対する95%と一律にした。サンプルE2,E4,E5〜E11に関し、マルテンパー後の硬さと、降伏点操作無しの引張り試験において測定した引張り強度、降伏点および伸び、さらに、降伏点操作無しと有りの場合の疲労強度を、表3に示す。なお、表3のデータは同一サンプル5個の平均値である。
【0018】
表3で明らかなように、サンプルE2,E4,E5〜E11のいずれの場合も、降伏点操作有りの方が降伏点操作無しに比べて疲労強度が向上しており、かつ降伏点割合が破断荷重の95%で十分な疲労強度に達することが確かめられた。
【0019】
[実施例3]チェーンの疲労強度向上
次に、本発明をチェーンの疲労強度を向上させる方法に適用した実施例を説明する。この実施例では、並列する少なくとも一対のリンクがピンあるいはローラを介して無端状に接続されたチェーンを、接続方向に引張って全てのリンクに対しほぼ均一に残存歪みを付与し、チェーン全体の疲労強度を向上させるものである。
【0020】
図10は、例えば自動車のエンジンにおいてクランクシャフトの回転をカムスプロケットに伝えるタイミングチェーン等に用いられる多列型チェーンの構成を示している。このチェーンは、複数並列されたリンク10がローラ11を介して無端状に接続されて構成される。リンク10はマルテンパーの熱処理が施されてからチェーンに組まれるが、熱処理時に生じる若干の変形により実際には個々のピッチ(この場合、図11のLの長さをピッチと定義する:例えば9〜10mm程度の範囲で設定される)にバラツキが生じる。通常、このバラツキを緩和するために、プレストレッチと呼ばれる予備操作を行っている。このプレストレッチは、図12に示すように、リンク10によって組んだチェーン10Aをプレストレッチ用の一対のスプロケット20に巻回し、スプロケット20を離間する方向に移動させてチェーン10Aを引張り、各リンク10のピッチLを均一もしくは近似させる操作である。図11に示したリンク10のドット部分は、プレストレッチによりもっとも負荷が集中する部分である。このプレストレッチと同時に、各リンク10に残存歪みを付与することができるか否かを試みたところ、ピッチLのバラツキに起因して全てのリンク10に所望の残存歪みを付与することが困難であることが、次の試験で判った。
【0021】
すなわち、製造時(熱処理後)のピッチが、目標とするピッチLに対してL−0.15mm(サンプルF1)、L−0.1mm(F2)、L−0.05mm(F3)、L±0mm(F4)のリンクのサンプルを得、これらリンクの引張り試験を行った。図13は、その結果を示す引張り荷重−伸び曲線である。ここで、バラツキが0.1mmの範囲内にあるリンクを並列させてプレストレッチを行うことを仮定すると、サンプルの組み合わせは、図13の▲1▼で示すF1とF3、▲2▼で示すF2とF4である。F1とF3の組み合わせの場合、F3が降伏点を超えた時点でF1は破断の領域に入っている。つまり、F3には残存歪みの付与は可能であるが、F1は破断するおそれがある。また、F2とF4の組み合わせでは、F2が降伏点を超えた時点でもF4には伸びがほとんど生じず、F4に残存歪みを付与することができない。これは、降伏点操作を行うことなくリンクを単純に引張った結果起こる現象であり、ピッチのバラツキを0.1mmの範囲で選択しても全てのリンクに残存歪みを付与することができないことを示唆する。
【0022】
そこで、本発明をリンクに適用し、降伏点操作を行ったリンクを組んだチェーンをプレストレッチした際に、残存歪みを付与することができるか否かを検証した。それには、通常の1回の引張りよりも伸び量が大きいことを考慮し、目標ピッチLに対してL−0.2mm以上を平均ピッチとしてリンクのサンプルを作製した。ここで、そのリンクのサンプルは、バラツキの範囲を0.1mm内に設定することとして、ピッチを、L−0.27mm(サンプルG1)、L−0.22mm(G2)、L−0.17mm(G3)とした。
【0023】
これらサンプルについて、予め降伏点操作無しの引張り試験を行って破断荷重を把握し、次いで、降伏点操作有りの引張り試験を行った。引張り荷重は、最低でも破断荷重の82%を確保した。図14は、降伏点操作有りの引張り荷重−伸び曲線を示している。同図で明らかなように、G1,G2,G3いずれのリンクも、目標ピッチLに到達した時点で、降伏点を超え、かつ残存歪みが付与される範囲に収まっている。
【0024】
次に、上記G1,G2,G3のリンクを用い予めプレストレッチを行って所定の残存歪みをリンクに付与した実施例のチェーンと、熱処理後に引張り加工を施さないままのリンクによって組んだ比較例のチェーンに対し、それぞれ所定の引張り荷重を繰り返し与え、リンクが破断してチェーンが切れた際の引張り回数から疲労強度を調べるサイクル試験を行った。図15はその結果を示しており、同図によれば、実施例のチェーンは比較例のチェーンに比べると耐久性が高いことが明らかであり、引張り一千万回後の破断荷重からみると、実施例は比較例の約1.53倍の疲労強度を有することを示した。
【0025】
上記各試験により、次のことが確かめられた。すなわち、目標とするピッチよりも平均ピッチを所定長さ(本実施例では平均で0.2mm)以上小さくし、バラツキの範囲を所定長さ(本実施例では0.1mm)以内としたリンクを用いて、予め降伏点操作有りの引張り加工を施すことにより、チェーンのプレストレッチを行うと同時に全てのリンクに所望の残存歪みを付与することができる。その結果、全てのリンクすなわちチェーンの疲労強度を向上させることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、引張り加工を施して0.3%以上の残存歪みを付与することにより、従来では部分的にしか向上させることができなかった炭素鋼材料の疲労強度を材料全体にわたって向上させることができる。また、疲労強度向上のための設定条件は残存歪みを付与し得る引張り荷重だけであるから、その設定条件を選定するための実験の数が格段に少なくて済み、疲労強度向上のための工程が効率的になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】引張り加工によって炭素鋼材料に付与する残存歪みを説明するための応力−歪み曲線である。
【図2】本発明に基づく実施例1で用いた引張り試験片の(a)正面図、(b)平面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ実施例1のサンプルA,Bの組織を示す顕微鏡写真である。
【図4】(c),(d)はそれぞれ実施例1のサンプルC,Dの組織を示す顕微鏡写真である。
【図5】実施例1の各サンプルについて引張り加工を行った際の応力−歪み曲線である。
【図6】実施例1の各サンプルの降伏点と疲労強度の関係を示す線図である。
【図7】実施例1の降伏点操作無しのサンプルにおける引張り強度と疲労強度の関係を示す線図である。
【図8】実施例1の降伏点操作有りのサンプルにおける残存歪みと疲労強度の関係を示す線図である。
【図9】実施例1の各サンプルにおける降伏点割合と疲労強度の関係を示す線図である。
【図10】本発明に基づく実施例3で疲労強度向上の対象材料としたチェーンの構造を示す(a)側面図、(b)平面図である。
【図11】実施例3に係るチェーンを構成するリンクの側面図である。
【図12】実施例3に係るチェーンにプレストレッチを与える方法を示す側面図である。
【図13】実施例3に係るリンクを通常の降伏点操作無しで引張った際の引張り荷重−伸び曲線図である。
【図14】実施例3に係るリンクを降伏点操作有りで引張った際の引張り荷重−伸び曲線図である。
【図15】実施例3に係るチェーンのサイクル試験結果を示すプロット図である。
【符号の説明】
10…リンク、11…ローラ、10A…チェーン、20…スプロケット、
L…ピッチ。
Claims (5)
- C:0.5〜0.65重量%、Si:0.1〜1.5重量%、Mn:0.5〜1.2重量%、Cr:0.5〜0.8重量%、残部Fe及び不可避不純物からなる、平均硬さHRC:50〜57の主たる組織がベイナイト組織である炭素鋼材料に引張り加工を施し、該材料に0.3%以上の残存歪みを付与することを特徴とする炭素鋼材料の強化処理方法。
- 前記残存歪みは1.1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼材料の強化処理方法。
- 前記炭素鋼材料は、Mo:最大0.15重量%、V:最大0.5%、Ni:最大0.2重量%の1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の炭素鋼材料の強化処理方法。
- C:0.5〜0.65重量%、Si:0.1〜1.5重量%、Mn:0.5〜1.2重量%、Cr:0.5〜0.8重量%、残部Fe及び不可避不純物からなる、平均硬さHRC:50〜57の主たる組織がベイナイト組織である炭素鋼材料からなるリンクを無端状に接続したチェーンの製造方法であって、上記チェーンを一対のスプロケットに巻回し、これらスプロケットを互いに離間させて上記リンクに引張り加工を施し、該リンクに0.3%以上の残存歪みを付与することを特徴とするチェーンの製造方法。
- 前記引張り加工は、前記リンクの破断荷重の82%以上の引張り荷重で行うことを特徴とする請求項4に記載のチェーンの製造方法。
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