JP3545894B2 - ガラスセラミック焼結体 - Google Patents

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    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
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    • C03C10/00Devitrified glass ceramics, i.e. glass ceramics having a crystalline phase dispersed in a glassy phase and constituting at least 50% by weight of the total composition
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスセラミック焼結体に関するものであり、特に、回路基板用、パッケージ用として有用なガラスセラミック焼結体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より回路基板用材料としてアルミナが広く用いられてきた。しかしながら、アルミナは、焼成温度が1500℃以上と高いため、W、Moなどの金属を配線材料として使わなければならないが、これらの金属の配線抵抗は比較的高く、焼成も還元雰囲気が必要であるなど機能上、コスト上の問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決するためガラスセラミックス複合材の開発が行われている。ガラスセラミックスは、焼成温度を1000℃以下にすることができ、導体配線材料として抵抗値の低いAu、Ag、Ag/Pdなどを使用することが可能となる。このようにガラスセラミック材料を採用することで製品の高機能、低コスト化が達成できるため、アルミナに代わる材料として期待されている。
【0004】
このような観点から、従来、各種ガラスセラミック組成物が開発されている(例えば特公平4−49497号公報等参照)。従来のガラスセラミック組成物を大別すると、ガラスセラミック複合系と結晶化ガラス系が挙げられる。
【0005】
結晶化ガラス系は、物性を安定化し易い、焼成後の耐水性が良いといった利点を有するものの、焼成時間がかかり、コストアップにつながるといった欠点があるため、近年においては、ガラスセラミック複合系が主流となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ガラスセラミック複合系は、ガラスフリットとセラミックフィラーの混合物であり、焼成後の寸法精度を確保するためには、該ガラスフリットは、比較的軟化点の低いものが焼成収縮速度を落とすことができることから好ましい。
【0007】
ところが、比較的低融点のガラスフリットは、結晶性を高い温度域までガラスフリットに持たせることが難しく、例えば基板焼成後、表面に厚膜を形成し、再焼成を行うときに変形するといった課題があった。また、基板焼成時にガラスが表面に浮き、裏と表の状態が異なるといった課題があった。
【0008】
本現象を回避するためには、比較的低融点のガラスフリットの量を減らすことが考えられるが、その場合、焼結密度の向上に必要なガラスフリットが不足し、焼成後の密度バラツキ、強いては寸法バラツキの原因になるという課題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み、SiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラスに対して、所定量のZrOを含有せしめることにより、ZrOが核となり、ガラスの結晶化を一定レベルまで促進するとともに、ガラスの溶融性を確保し、これにより、比較的低融点のガラスフリット量を減らした場合でも焼結体を高密度とできることを見いだし、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明のガラスセラミック焼結体は、少なくともSiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分を35〜60重量%、セラミックフィラー成分としてAlを40〜65重量%、前記ガラス成分100重量部に対してZrOを0.001〜0.02重量部の割合で添加してなる組成物を焼成してなるガラスセラミック焼結体であって、結晶相として少なくともラブラドライトが存在するものである。
【0011】
【作用】
本発明のガラスセラミック焼結体は、少なくともSiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分に対して、ZrOを含有せしめることにより、低温においてZrOが核となりガラス成分のラブラドライトへの結晶化を促進するとともに、ZrOを一定量以下含有せめしることにより、ガラス成分の過度のラブラドライトへの結晶化を抑制し、ガラス成分の溶融性を確保し、Al粒子との濡れ性を向上することが可能となる。
【0012】
これにより、1050℃以下で低温焼成した場合でも高い磁器密度で焼結でき、ガラスセラミック焼結体が本来有する電気的特性等の諸特性を満足することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のガラスセラミック焼結体は、少なくともSiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分を35〜60重量%と、セラミックフィラーとしてのAlを40〜65重量%と、前記ガラス成分100重量部に対してZrOを0.001〜0.02重量部とを含有するとともに、結晶相としてアルミナとラブラドライトが存在するものである。
【0014】
ここで、SiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分を35〜60重量%含有せしめたのは、ガラス成分が35重量%よりも少ない場合(Alが65重量%よりも多い場合)には、1050℃以下で低温焼成した場合に緻密な焼結体が得られず、60重量%よりも多い場合(Alが40重量%よりも少ない場合)には、緻密な焼結体が得られず、十分な材料強度が得られないからである。ガラス成分とアルミナとの比は、緻密な焼結体で十分な材料強度を得るという観点から、ガラス成分を44〜50重量%、Alを56〜60重量%含有することが望ましい。
【0015】
また、ガラス成分100重量部に対してZrOを0.001〜0.02重量部含有せしめたのは、ZrO量が0.001重量よりも少ない場合には、ガラスの結晶化が進まず、再焼成時の変形や焼成後にガラスが表面に浮く等の問題があり、0.02重量部よりも多い場合、ガラスの結晶化が進み過ぎ、緻密化に必要なガラスの流動性を阻害し、緻密な燒結体が得られないからである。ZrOは、適度に結晶化を促進し、緻密な焼結体を得るという観点から、ガラス成分100重量部に対して0.005〜0.015重量部含有せしめることが望ましい。このようなZrO量を得るためには、製造工程においてZrOが混入しないように厳密に制御する必要がある。
【0016】
本発明のガラスセラミック焼結体においては、結晶相として、Alと、SiO、PbO、CaO、NaO、Alからなるラブラドライトが析出するものである。このラブラドライト相は、焼成時において、ZrOが核となることにより結晶化が促進される。しかしながら、添加されるZrO量を0.02重量部以下とすることにより、ラブラドライト相は、結晶化速度が適度に抑制され、ガラス成分の溶融性を確保してAl粒子を十分に濡らし、焼結性を向上して緻密化を促進する。そして、Al粒子間にラブラドライト相が析出し、ZrO粒子がラブラドライト相中に存在した焼結体が得られる。尚、少量のアモルファスが存在する場合もある。
【0017】
ラブラドライトはAb50An50〜Ab30An70(Ab:NaAlSi、An:CaAlSi)という化学式で表される。即ち、ラブラドライトはNaAlSiを30〜50モル%、CaAlSiを50〜70モル%からなるものである。
【0018】
また、本発明のガラスセラミック焼結体のガラス成分としては、ガラス成分中において(ガラス成分を100とした時)重量比で、SiO40〜60重量%、Alを0〜20重量%、CaO、ZnO及びMgOが合計で5.5〜30重量%(CaOは必須成分)、PbOを10〜25重量%、NaO、KO及びBが合計で2〜30重量%(NaOは必須成分)からなる結晶化ガラスであることが望ましい。これは以下のような理由による。
【0019】
SiO量がガラス成分中40重量%以下の場合は、ガラスの析出結晶量が少なくなり、充分な強度の焼成体が得られないからである。一方、60重量%以上の場合は、ガラスの溶融性が悪くなる共に、軟化点が高くなり、1050℃以下での低温焼成が困難になる。
【0020】
また、ガラス成分としてAlを含有せしめることにより、焼成時にAlフィラーとの濡れ性を促進し、結晶性を向上することができるが、Al含有量が20重量%以上の場合は、ガラスの溶融性が困難になると共に、焼成時にガラスの軟化温度が高くなるからである。尚、ラブラドライトは、フィラー成分のAlとガラス成分のSiO、PbO、CaO、NaOと反応して生成する場合もある。
【0021】
ガラス成分中に、CaO、ZnO及びMgO(但し、CaOは必須成分)を含有せしめたのは、これらは、ガラスの粘性特性を調整できるからである。そして、その合計量を5.5〜30重量%としたのは、CaO、ZnO及びMgOの合計量が5.5重量%よりも少ない場合や30重量%よりも多い場合には、適度なガラスの粘性を得ることができず、ガラス化、結晶化が阻害され緻密な燒結体が得られないからである。
【0022】
ガラス成分中にPbOを10〜25重量%含有せしめたのは、その含有量が10重量%よりも少ない場合には、ガラスの結晶化が困難であり、25重量%よりも多い場合にはガラスの軟化点が低くなりすぎるからである。
【0023】
ガラス成分中にNaO、KO及びBを合計で2〜30重量%含有せしめたのは、2重量%よりも少ない場合や30重量%よりも多い場合には、ガラスの軟化点が高くなり、1050℃以下においてAl粒子を十分に濡らすことができなくなるからである。
【0024】
本発明のガラスセラミック焼結体は以下のようにして得ることができる。
【0025】
先ず、SiO粉末、Al粉末、CaCO粉末、ZnO粉末、MgCO粉末、PbO粉末、NaCO粉末、KCO粉末及びB粉末を準備し、これらを上記したように所定量秤量し、これらを混合し、ルツボに入れ1500〜1600℃で2〜3時間溶融し、母ガラスを作製する。その母ガラスを所定の粒径になるまで粉砕する。
【0026】
そして、このガラス粉末と、Al粉末を混合するとともに、ガラス粉末に対して所定量ZrO粉末を添加混合する。ここでZrO粉末の平均粒径は、3μm以下であることが望ましい。これは、ZrO粉末が3μmよりも大きい場合には、ZrO粉末の表面活性力が小さいため、焼成時に核となりにくく、ラブラドライトへの結晶化を促進できないからである。尚、ZrOは、焼結体中においても平均結晶粒径が3μm以下として存在する。
【0027】
この後、例えば、プレス、ドクターブレード法等の公知の成形法により成形し、大気中において、800〜1050℃で1〜5時間焼成することにより、本発明のガラスセラミック焼結体が得られる。
【0028】
【実施例】
先ず、純度99%以上のSiO粉末、Al粉末、CaCO粉末、ZnO粉末、MgCO粉末、PbO粉末、NaCO粉末、KCO粉末及びB粉末を準備し、これらを表1に示す酸化物換算で表1に示す組成となるように所定量秤量し、これらをAlボールを用いてボールミルにて混合し、白金ルツボに入れ1550℃で2時間溶融し、母ガラスを作製した。その母ガラスを所定の粒径になるまで、上記したボールミルにて粉砕した。
【0029】
そして、このガラス粉末と、Al粉末を混合するとともに、ガラス粉末に対して、平均粒径が表1に示すようなZrO粉末を表1に示す量だけ添加し、上記したボールミルにて混合した。
【0030】
この粉末に所定量のバインダー、可塑剤、溶剤を添加し、凝集物の無いスラリーを作製し、そのスラリーをドクターブレード装置を用いテープ化し、これを5枚積層し、加圧した後、金型プレス機により打ち抜いた。
【0031】
この後、400℃で脱バインダー処理した後、大気中において、900℃で3時間焼成することにより、直径30〜50mm、厚み1〜5mmの評価用試料を作製した。試料について、アルキメデス法により焼成体密度を測定し、その結果を表1に記載した。
【0032】
【表1】
Figure 0003545894
【0033】
この表1から、本発明の試料は、焼成体密度は3.17〜3.20g/cmと高い値を示し、安定していることが判る。
【0034】
一方、試料No.13は、ZrO量が0.02重量部よりも多いため、過多のZrOが焼成時の結晶化の核となり緻密化を阻害するため、焼成体密度は本発明の試料と比較して3.10g/cmと低いことが判る。また、ZrO量が多くなる程焼成体密度が低下することが判る。
【0035】
さらに、平均粒径が3μm以上のZrO粉末を用いた試料No.6、8では、ガラスの結晶化が進まず焼成体密度が低いが、平均粒径が3μm以下のZrO粉末を用いた試料ではより焼結体密度が高くなることが判る。尚、本発明の試料については、ラブラドライトが析出していることをX線回折により確認した。
【0036】
表1の試料No.3〜13、22について、ZrO量を横軸に、焼結体密度を縦軸に表したグラフを図1に示す。この図および表1から、ZrO量とZrO粉末の粒径を管理することにより、焼結体密度のバラツキ、特に密度低下を解決できることが判る。
【0037】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミック焼結体では、少なくともSiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分に対して、ZrOを含有せしめることにより、低温においてZrOが核となりガラス成分のラブラドライトへの結晶化を促進するとともに、ZrOを一定量以下含有せめしることにより、ガラス成分の過度のラブラドライトへの結晶化を抑制し、ガラス成分の溶融性を確保し、Al粒子との濡れ性を向上することができる。これにより、ガラスフリット量を減らした場合において焼成後の密度バラツキ、特に密度低下を解決し、安定なガラスセラミックスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ZrO量を横軸に、焼結体密度を縦軸に表したグラフである。

Claims (1)

  1. 少なくともSiO、PbO、CaO、NaOを含有するガラス成分を35〜60重量%、セラミックフィラー成分としてAlを40〜65重量%、前記ガラス成分100重量部に対してZrOを0.001〜0.02重量部の割合で添加してなる組成物を焼成してなるガラスセラミック焼結体であって、結晶相として少なくともラブラドライトが存在することを特徴とするガラスセラミック焼結体。
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