JP3545783B2 - 被覆粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、被覆粒子の製造方法とそのための装置に関する。より詳細には、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子に、被覆形成物質を被覆する被覆粒子の製造方法とそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
気相法により、粉体粒子表面に無機材料や金属材料等の被覆形成物質を、膜を始めとする種々の形態で被覆する方法は、原理的に、(1)雰囲気の制御が容易である、(2)基本的に被覆形成物質の選択に制限がなく、活性金属を始めとする金属単体、合金、窒化物、炭化物、硼化物、酸化物などの種々の種類の物質を粉体粒子表面に被覆できる、(3)高純度の物質を被覆できる、(4)被覆形成物質の被覆量を任意に制御できるなど、他の被覆法では成し得ない大きな特徴がある。
【0003】
しかし、気相法では、例えば10μm以下の粒子径の、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の個々の表面への被覆形成物質による被覆は、以下の理由により実質的に不可能であった。
【0004】
即ち、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は粒子同士の付着力が強いため凝集性が高く、殆どの単一粒子が凝集体を形成する。そしてこの凝集体は、その凝集力を上回る特別な作用を加えない限り崩し壊すことができないために凝集体をそのままで被覆形成物質で被覆してもその表面が被覆形成物質で被覆された被覆凝集体が生成することになる。
【0005】
これにより凝集体を形成する個々の粒子は、凝集体表面に位置する粒子ではその粒子表面は被覆量が多いものの、凝集体内部に位置する粒子では全く被覆されないという被覆むらが生ずる問題があった。
【0006】
上記の問題を解決しようとして、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の個々の表面に被覆する目的で粒子を分散させて被覆するという試みは既になされていた。
【0007】
例えば、特開昭58−31076号公報に開示されている装置・方法によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を電磁気的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子は転動させられながらPVD法により被覆される。又、特開昭61−30663号公報に開示されている装置によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を機械的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子は転動させられながらPVD法により被覆されるとされている。しかし、これらの容器の振動により芯粒子粉体の粒子を転動させながら被覆する装置或いは方法では、実際には、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子からなる凝集体を崩すに要するその凝集力を上回る作用を加えることができないため、凝集体を崩せずに、むしろ造粒作用が働き、容器内に導入する前以上に、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0008】
特開平3−153864号公報に開示されている装置及び方法は、内面に障壁及び/又は凹凸を備えた回転容器内に粒子を入れ、この回転容器を回転させながら蒸着法により芯粒子表面に被覆を行うことを目的とするものであるが、このような装置或いは方法において、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子からなる凝集体を崩すのに要する凝集力を上回る力を加えることができないため、凝集体を壊すことができないばかりか、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0009】
特開昭58−141375号公報には、反応ガス雰囲気中に置かれた粉体を反応ガスの流れと重力の作用とによって浮遊させて、反応ガスの化学反応により生成される析出物質によって粉体の表面を被覆する装置が開示されている。又、特開平2−43377号公報には、微粒子を減圧下において流動化させながら、熱化学反応処理を行い被覆を行う方法が開示されている。これらの気流による流動層を利用する装置或いは方法では、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子一個一個を流動化させることが事実上不可能で、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の凝集体を崩せなかった。
【0010】
特開昭54−153789号公報には、金属の蒸気を発生させた真空容器内を粉末材料を落下させ金属を被覆する装置が開示されている。又、特開昭60−47004号公報には真空槽中の高周波プラズマ領域にモノマーガスと粉体粒子を導入し、プラズマ重合により有機物の被覆膜を形成させる方法が開示されている。これらの装置或いは方法の如く、導入するだけでは微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の凝集体を壊せなかった。
【0011】
特開昭64−80437号公報には、低・高周波合成音波により芯粒子粉体の凝集体を崩して流動化させ被覆する方法が開示されている。しかし、流動層に振動を与える方法では、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の凝集体を崩せなかった。
【0012】
特開昭62−250172号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室に滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室に自然落下で導入し、ターゲットを垂直に設けた円筒状のスパッタリング室に自然落下させて被覆する装置及び方法が開示されている。又特開平2−153068号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室で滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室のスパッタリング源を納めた回転容器に粉体状で導入し、容器を回転さた状態でスパッタリングする装置及び方法が開示されている。これらの装置及び方法では、ジェットミル処理によりその時だけ粉体は一時的に分散されるが、被覆前の加熱工程で、この粉体を滞留させる構造であり、そのような方法のため、仮にジェットミル処理で一時的に一次粒子状態に分散しても加熱工程でのこの粉体の滞留のため再凝集し、結局、被覆工程に導入される時には凝集したままである。
【0013】
以上のように、これまでのものでは、いずれも微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子に被覆する装置或いは方法としての問題解決はなされておらず、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、現実には凝集体を形成していてこれを崩すことができず、そのために単一粒子状態に分散した状態で粒子の表面を被覆する被覆粒子の製造方法及び装置は知られていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、現実に、例えば微粒子が10μm以下の粒径の粒子である微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、被覆形成物質を被覆することができる被覆粒子の製造方法とそのための装置が強く求められている。
【0015】
本発明は、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、被覆形成物質を被覆した被覆粒子の製造方法とそのための装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子である、芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に被覆形成物質を被覆するためには、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上である高い分散状態の被覆空間の被覆開始領域で、被覆を開始しなければならないことを見い出した。
【0017】
より詳しくは、(I)芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の状態に分散させた芯粒子粉体の粒子は、滞留させなくとも、時間の経過と共にブラウン凝集、乱流凝集、音波凝集等により再凝集する傾向にあり、一旦再凝集すると、特別に高い分散性能を有する分散処理手段により分散させなければ、この再凝集の状態を崩して再分散させることが困難であり、このため、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上である高い分散状態で被覆空間の被覆開始領域に導く必要があること、またそのためには、(II)この芯粒子粉体からなる凝集体を崩し、且つ主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子を高い分散状態に分散させる、一以上からなる特別に高い分散性能を有する分散処理手段群が必要であることを見い出して本発明に至った。
【0018】
即ち、本発明は芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する被覆粒子の製造方法において、
(A) 微粒子高分散処理手段群の最終処理手段が、
(a) この芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、および
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
から選ばれる微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けたことを特徴とする、被覆粒子の製造方法を提供するものである。
【0019】
更に本発明は前記した被覆粒子の製造方法において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程を設け、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を、被覆工程に直接放出するか、又は分散工程と被覆工程の間に、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する放出部から、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成せしめる部材からなる中間部材、及びパイプから選択される一種類またはそれ以上の部材を介して搬送するか、及び/又は、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物の内の、低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の一種またはそれ以上を介して搬送する、搬送工程を設けることを特徴とする被覆粒子の製造方法にも関する。
【0020】
更に本発明は、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うことを特徴とする被覆粒子の製造方法にも関する。
【0021】
更に本発明はまた、前記した被覆粒子の製造方法において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめるか、又は体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめることを特徴とする被覆粒子の製造方法にも関する。
【0022】
更に本発明はまた、前記した被覆粒子の製造方法において、芯粒子粉体の粒子の粒度分布が平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)であることを特徴とする被覆粒子の製造方法にも関する。
【0023】
また本発明は上記した被覆粒子の製造方法を実施するための装置、すなわち芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する被覆粒子の製造装置において、
(A) この粒子高分散処理手段群の最終処理手段が、
(a) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、および
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
から選ばれる微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散処理手段、
(B) この分散処理手段で分散させた芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆室、
を設けたことを特徴とする、被覆粒子の製造装置を提供するものである。
【0024】
更に本発明は前記した被覆粒子の製造装置において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散処理手段を設け、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を、この微粒子高分散処理手段群から放出する微粒子高分散処理手段群の放出部を、被覆粒子の製造装置の、被覆空間を有する被覆室に、直結させ、又は、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成せしめる部材からなる中間部材、およびパイプから選択される一種類またはそれ以上の部材を介して接続し、及び/又は、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において、低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の一種またはそれ以上を介して接続したことを特徴とする被覆粒子の製造装置にも関する。
【0025】
更に本発明は、前記した被覆粒子の製造装置において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群を含む分散処理手段の一部以上と、前記被覆室とを、それらが占める空間を一部以上共有するようにして設けることを特徴とする被覆粒子の製造装置にも関する。
【0026】
更に本発明はまた、前記した被覆粒子の製造装置において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめるか、又は体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめることを特徴とする被覆粒子の製造装置にも関する。
【0027】
更に本発明はまた、前記した被覆粒子の製造装置において、芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)であることを特徴とする被覆粒子の製造装置にも関する。
【0028】
而して、本発明によれば、気相法により気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段により気中に分散させた10μm以下の微粒子からなる高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とを、被覆空間の被覆開始領域で、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の分散度がβ≧70%である分散状態で合流させ、接触及び/又は衝突させて芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆するものである。この場合、被覆形成物質前駆体は、原子、分子、イオン、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン等からなる気相を経て生成したばかりのもので、それ自体はいわば発生期で非常に活性な状態にあり、この高分散状態の芯粒子と接触及び/又は衝突を始めることにより、一次粒子状態の個々の芯粒子の表面に被覆形成物質は強固に結合し、その結果、芯粒子粉体の表面を被覆形成物質で単一粒子単位に被覆する被覆粒子が製造できる。
【0029】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書中に使用する用語をはじめに定義することにし、そして必要によってその用語の具体的内容を説明することにする。
【0030】
被覆粒子
被覆粒子とは、被覆が施された粒子をいう。例えば、具体的には、前記被覆形成物質が、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上からなる形態で芯粒子に被覆された粒子をいう。
【0031】
気相被覆法
気相被覆法とは、被覆形成物質の原料が、真空の分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気、エアロゾルの一種以上からなる気相状態を少なくとも一度は経て被覆する方法、又は気相状態の被覆形成物質の原料により被覆する方法をいう。
【0032】
芯粒子
芯粒子とは、被覆を施す対象物となる粒子をいう。これはまた、母材粒子、種粒子或は被覆される粒子ともいう。
この芯粒子は、基本的にはそれを構成する物質に制限がなく、例えば無機材料、金属材料、有機材料などからなる公知の粉体粒子が芯粒子として使用可能である。
【0033】
芯粒子粉体
芯粒子粉体とは、芯粒子からなる粉体をいう。芯粒子粉体の粒子とは、芯粒子粉体を構成する粒子をいう。本発明で被覆に供する微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、平均粒子径が体積基準頻度分布で10μm以下である。
好ましくは、平均粒子径をDMとしたとき、DMが10μm以下で、粒度分布が体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)である。このような比較的分布幅の狭い粉体では、平均粒子径で粉体の分散特性又は凝集特性が特徴付けられ、DMの値に適した条件で微粒子高分散処理手段群を作動させれば分散できる。
平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、幅広い分布又は互いに離れた複数のピークを持つ分布の粉体では、好適には適当な選択分離処理、例えば分級処理を行ってそれぞれ分級された粉体ごとに、本発明の被覆処理を施す。これにより、それぞれ分級された粉体ごとに上記条件の下で、被覆空間の被覆開始領域で分散度が分散度βで70%以上の状態で被覆が開始され、芯粒子粉体の粒子一つ一つの粒子に被覆が可能となる。
【0034】
被覆形成物質
被覆形成物質とは、被覆を施す対象物に被覆を形成する物質をいう。例えば、具体的には、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上からなる形態で被覆を形成する物質をいう。
特に、被覆形成物質の形態が超微粒子状の場合、この超微粒子の粒子径は、0.005μm〜0.5μmの範囲のものである。
この被覆形成物質は、得られる被覆粒子に対して希望される性質および機能に応じて、芯粒子とは同一であるかまたは異なった種々の無機材料、金属材料または有機材料で構成され、例えば酸化物であるAl2O3、SiO2、ZrO2、Y2O3、CaO、MgO、MgAl2O4(スピネル)、Al2SiO5(ムライト)など、窒化物であるSi3N4、AlN、TiN、ZrN、Si2N2O、HfN、VXN(x=1〜3)、NbN、TaN、Ta2N、BNなど、炭化物であるWC、SiC、W2C、HfC、TaC、Ta2C、NbC、Mo2Cなど、ほう素化物であるBP、TiB、TiB2、ZrB2、VB、V3B2、VB2、NbB、NbB2、TaB、TaB2、MoB、MoB2、MoB4、Mo2B、WB、W2B、W2B5、LaB6、B13P2など、単体金属、例えばSi、Al、Ni、Co、Cu、Fe、Ti、W、B、Nb、V、Zr、Hf、Ta、Re、Cr、Mo、Y、Laなど、および金属間化合物および合金の種々のもの、例えばTiAl、Ti2Al、TiAl3、TiNi、NiAl、Ni3Alなどの材料並びにこれらの材料を複合したものなど及びエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン等を用いることができる。
【0035】
被覆空間に投入の定義
被覆空間に投入とは、例えば、自由落下等の落下によって芯粒子粉体を被覆空間に導入することをいう。搬送ガスにより投入する場合には、芯粒子粉体を芯粒子粉体の粒子・気体混合物の流れの方向に乗せて導入したり、気体に乗せ流れの方向へ、或いは気体に乗り方向が変えられて導入することをいう。または、搬送ガスの作用を受けて導入することをもいう。例えば、搬送ガスの波動現象、具体的には非線系波動によって導入することをもいう。或いは、ガス中の音波、超音波、磁場、電子線等によって被覆空間に導入することをもいう。また、外場、例えば電場、磁場、電子線等により導入することをいう。具体的には、電場、磁場、電子線等により粉体粒子を帯電させ、または帯磁させ引力又は斥力により被覆空間に導入することをいう。また、ガスの背圧や減圧によって吸い込まれ、導入することも含む。
【0036】
被覆空間
被覆空間とは、被覆形成物質の原料から気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と芯粒子粉体の粒子が接触及び/又は衝突する空間をいう。あるいは、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する空間領域をいう。
【0037】
被覆室
被覆室とは、被覆空間を一部以上共有する室をいう。より具体的には、被覆室とは、被覆空間を含む仕切られた、又は略仕切られた(略閉じた、半閉じた)室であって、被覆空間を一部以上含む室である。
【0038】
気中
気中とは、真空又は気相状態の空間内をいう。ここで、本発明において、気相状態とは、分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気などの状態をいう。真空とは、技術的には、減圧状態をさす。どんな減圧下でも、厳密にはガス、分子、原子、イオン等が含まれる。
【0039】
被覆形成物質前駆体
被覆形成物質前駆体とは、被覆形成物質の前駆体である。より詳しくは、気相状態の被覆形成物質の原料がそのまま、又は被覆形成物質の原料から気相を経て形成及び/又は合成され、被覆を施す対象物となる粒子である芯粒子に被覆を形成する直前の物質をいう。被覆形成物質前駆体は、被覆形成物質の原料から、どこかで気相を経て形成及び/又は合成する限り、状態の制限はない。被覆形成物質の原料が気相の場合、原料が被覆形成物質前駆体にもなりうる。被覆形成物質前駆体そのものが気相であってもよい。また、反応前でも良く、反応中でもよく、反応後でもよい。被覆形成物質前駆体の具体例としては、イオン、原子、分子、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン、超微粒子、ガス、蒸気、エアロゾル等が挙げられる。
【0040】
被覆形成物質の原料
被覆形成物質の原料とは、気相を経て被覆を形成する物質となる原料物質をいう。被覆形成物質の原料の形態の具体例として、塊状の固体、粉体粒子、気体、液体等が挙げられる。
【0041】
分散度β
分散度βとは、粉体分散装置の分散性能を評価する指数として増田、後藤氏らが提案(化学工学、第22回、秋季大会研究発表講演要旨集、P349(1989)参照)したように、全粒子の重量に対する、見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合と定義する。ここで、見かけの一次粒子状態の粒子とは、任意の分散状態の粉体粒子の質量基準の頻度分布fm2と完全分散されている粉体粒子の質量基準の頻度分布fm1のオーバーラップしている部分の割合を示し、次の式のβで表される。
【0042】
【数1】
上式において、粒子径の単位(μm)は規定されるものではない。
【0043】
上式は質量基準で表した粒度分布を基にして分散度を評価しているが、本来分散度は体積基準で表した粒度分布を基にして評価されるべきものである。粉体粒子密度が同じである場合には質量基準で表した粒度分布と体積基準で表した粒度分布は同じになる。そこで実用上測定が容易な質量基準の粒度分布を測定し、それを体積基準の粒度分布として用いている。従って本来の分散度βは次の式及び図1(a)の斜線部分の面積で表される。
【0044】
【数2】
上式において粒子径の単位(μm)は、規定されるものではない。
【0045】
そして芯粒子粉体の分布及び平均粒子径は、特に断らない限り基本的には体積基準を用いることとする。
【0046】
体積基準頻度分布
体積基準頻度分布とは、粒子径の分布をある粒子径に含まれる体積割合をもって表したものをいう。
【0047】
(〔D1,D2〕,≧90%)の定義
(〔D1,D2〕,≧90%)分布とは、D1、D2を粒子径、但しD1<D2とするとき、D1以上でD2以下の粒子が体積で90%以上含まれる分布を表し、図1(b)のように斜線の部分の割合が90%以上である粒子からなる粉体を表す。
【0048】
体積基準頻度分布(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の定義
本発明で用いる、粒度分布が、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布とは、DMを体積基準の平均粒子径とするとき、DMの1/5倍の粒子径以上、DMの5倍の粒子径以下の粒子を体積で90%以上含む分布を表す。例えば、平均粒子径DMが5μmで体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)とは、体積基準の平均粒子径が5μmで、1μm以上且つ25μm以下の粒子径の粒子が体積で90%以上含まれるような分布を表す。ここで、体積基準の平均粒子径DMは、
【数3】
又は技術的にはある粒子径間隔をDi±△Di/2(△Diは区分の幅)内にある粒子群の体積をviとすると、
DM=Σ(viDi)/Σvi
と表される。
【0049】
被覆開始領域
微粒子高分散処理手段群の最終処理後、初めて被覆が開始される領域を被覆開始領域という。従って、微粒子高分散処理手段群の最終処理以前では、始めて被覆が開始される領域でも、本発明での被覆開始領域ではない。
【0050】
被覆開始領域での分散度β
本発明では、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とした領域に被覆空間の被覆開始領域を位置せしめる被覆室を設ける。この被覆空間の被覆開始領域における分散度であれば、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、実質的に気中に分散でき、被覆空間の被覆開始領域を通過する全ての芯粒子粉体の粒子の表面の少なくとも一部と、被覆形成物質前駆体とは接触及び/又は衝突するため、必ず粒子一個の単位に被覆形成物質を付けることができる。
【0051】
好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを80%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域での分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子に対して事実上芯粒子同士による閉ざされた部分がなく、一個一個の粒子の表面へいたるところから被覆形成物質前駆体を接触及び/又は衝突させることが可能であり、一様に被覆できる。
【0052】
より好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により高分散させて芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを90%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域の分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であっても事実上凝集しておらず、一個一個の粒子の表面に事実上一様に被覆できる。特に、処理能率が低くてもよいから、高品位な被覆を行いたいときは、分散度は、95%以上がより好ましい。この場合、微量の芯粒子粉体の粒子を処理して、芯粒子粉体の粒子の気中個数濃度を低くすることにより可能となる。
【0053】
体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は極めて凝集し易く、これより粗い粉体とは挙動が異なる。しかし、上記分散度のごとき分散状態で被覆を開始すれば、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子一個一個に、被覆形成物質を被覆できる。
【0054】
微粒子高分散処理手段群
本発明に於いて、微粒子高分散処理手段群とは、
(A) 少なくとも分散手段を1以上有し、
(B) 最終の処理手段として、
(a) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、又は
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により分離された低分散芯粒子粉体部分をこの微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
を有するものである。
【0055】
好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有するものである。
【0056】
前記被覆開始領域における種々の分散度、例えばβ≧70%、80%、90%、に対応してそれらと同等以上の分散性能の微粒子高分散処理手段群を設けることにより、被覆開始領域において、各分散度に応じた高品位な被覆を施すことができる。
【0057】
最終処理手段
微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が分散手段の場合、この分散処理手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。又、微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が、微粒子高分散処理手段の最終の分散手段へ、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、又は最終の分散手段より前の処理手段に、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の場合、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。
【0058】
尚、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段であるフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段より前に設ける(例えば、このフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段と最終分散手段の間、或いは最終分散手段より前)高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段は、フィードバック手段の有無にかかわらず微粒子高分散処理手段群の構成要素である。
【0059】
分散手段
分散するために用いる手段を分散手段という。少しでも或いは僅かでも分散効果を有するものは分散手段として使用可能であり、本発明ではこれを分散手段とする。例えば、一般に供給手段として用いる空気輸送用のロータリーフィーダーやインジェクションフィーダー(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P568、P571)は、分散効果も有するので、分散目的の手段として使用する場合は分散手段である。後述の分散維持・促進手段も分散目的で(βを高める目的で)使用する場合は分散手段となる。
【0060】
そしてこの微粒子高分散処理手段群は、芯粒子粉体の粒子の加速及び/又は速度勾配に置く気流による分散、芯粒子粉体の粒子の静止障害物及び/又は回転体である障害物への衝突による分散、芯粒子粉体の粒子の流動層及び/又は脈流及び/又は回転ドラム及び/又は振動及び/又は掻取りからなる機械的解砕による分散の内の選択された一種以上の分散の機構を備えた物である。
【0061】
具体的には、微粒子高分散処理手段群は、エジェクタ型分散機、ベンチュリ型分散機、細管、撹拌機、気流中の障害物を利用した分散機、ジェットの吹付けを利用した分散機、螺旋管、回転羽根を利用した分散機、回転するビンを利用した分散機(ケージミル)、流動層型分散機、脈流を利用した分散機、回転ドラムを利用した分散機、振動を利用した分散機、振動ふるい、スクレーパによる掻き取りを利用した分散機、SAEI、Gonell式分散機、中条式分散機、Roller式分散機、オリフィス型分散機、B.M式分散機、Timbrell式分散機、Wright式分散機の内の選択された一種以上からなる分散手段を備えた物である。(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P430)。
【0062】
また、特開昭56−1336号に記載の撹拌羽根を利用した分散機、特開昭58−163454号に記載の高速気流と分散ノズルを利用した分散機、特開昭59−199027号に記載の回転羽根による分散作用とプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−207319号に記載のプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−216616号に記載のエジェクタとプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−225728号に記載のエジェクタとイオン流の分散作用を利用した分散機、特開昭59−183845号に記載のプラズマイオンの分散作用を利用した分散機、特開昭63−166421号に記載の分散羽根と圧力気体による分散作用を利用した分散機、特開昭62−176527号に記載のライン状又はリング状スリット型噴出口を用いた分散機、特開昭63−221829号に記載の網状羽根を利用した分散機、特開昭63−1629号に記載の噴射ノズルからの高速気流による分散作用を利用した分散機、実開昭63−9218号に記載の多数の細孔を利用した分散機、実開昭62−156854号に記載のエジェクタ型分散機、実開昭63−6034号に記載の細孔とオリフィスを利用した分散機等に記載のものも使用可能である。
【0063】
微粒子高分散処理手段群に好適な分散手段として、特願昭63−311358号、特願平1−71071号、特願平2−218537号等に記載の装置が挙げられる。
【0064】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段
芯粒子粉体の粒子・気体混合物のなかから、主に単一粒子状態の粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、主に単一粒子状態の粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する手段をいう。一次粒子の集合体である凝集粒子は、見かけの粒子径が一次粒子の粒子径に比べ大きくなることから、例えば乾式分級手段により分離が可能である。この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力を利用した分級手段、慣性力を利用した分級手段、遠心力を利用した分級手段、静電気を利用した分級手段、流動層を利用した分級手段等から一種以上選択された乾式分級手段が挙げられる。
【0065】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機、サイクロン、エアセパレータ、ミクロンセパレータ、ミクロプレックス、ムルチプレックス、ジグザグ分級機、アキュカット、コニカルセパレータ、ターボクラシファイア、スーパセパレータ、ディスパージョンセパレータ、エルボジェット、流動層分級機、バーチュアルインパクタ、O-Sepa、ふるい、バイブレーティングスクリーン、シフタ(粉体工学会編:“粉体工学便覧”日刊工業新聞社、P514(1986))等が挙げられる。
【0066】
芯粒子粉体の粒子・気体混合物
芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、(a)芯粒子粉体の粒子が気中に一様に浮遊した均質流れ(一様な浮遊流れ)、(b)芯粒子粉体の粒子が気中のある領域で非一様な分布を示す不均質流れ(非均質浮遊流れ)、(c)芯粒子粉体の粒子の摺動層を伴う流れ(摺動流れ)、又は(d)芯粒子粉体の粒子の静止層を伴う流れをいう。
【0067】
低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
芯粒子粉体の粒子・気体混合物の内、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態以外の状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。
【0068】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、極めて高分散であっても、実際には凝集粒子を含む。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、実際には、凝集していない単粒子を含み、選択分離して低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物と高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物に分けられる。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、凝集粒子の選択分離及び/又は再分散により、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物となる。
【0069】
回収手段
被覆空間で被覆した被覆粒子を取り出す手段を回収手段という。回収手段の内で回収処理の行われる部分を回収部という。被覆空間の被覆開始領域を通過して被覆した被覆粒子は、気中から直接取り出して回収するか、又は気中から取り出して一時的に蓄えてから回収するか、又は、気体と共に回収される。
【0070】
回収手段の回収部としては、隔壁(障害物)を利用した回収手段の回収部、重力を利用した回収手段の回収部、慣性力を利用した回収手段の回収部、遠心力を利用した回収手段の回収部、帯電による引力を利用した回収手段の回収部、熱泳動力を利用した回収手段の回収部、ブラウン拡散を利用した回収手段の回収部、ガスの背圧や減圧等による吸引力を利用した回収手段の回収部等が利用可能である。
【0071】
回収手段の回収部の好適な例として、重力集塵機、慣性集塵機、遠心力集塵機、濾過集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機、粒子充填層、サイクロン、バグフィルター、セラミックスフィルター、スクラバー等が挙げられる。
【0072】
微粒子高分散処理手段群の図の説明
図2(a)は本発明の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の一例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素dで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である分散手段Aの処理後、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体に対し、分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成のものである。
【0073】
図2(b)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の他の一例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aへ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素d、最終分散手段と最終選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素eとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0074】
図2(c)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の他の一例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aより前の処理手段へ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の微粒子高分散処理手段群の構成要素d、最終の分散手段と最後の選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0075】
なお、以上のような構成であるから、供給槽、芯粒子生成手段等の粉体の供給源も本微粒子高分散処理手段群の構成に含めてもよい。例えば図2(c)の場合、フィードバック手段Cのフィードバック先を供給槽とする構成も高分散処理手段群の構成として良いことは言うまでもない。又、微粒子高分散処理手段群の分散工程の前に、芯粒子粉体の粒子を解砕及び/又は粉砕する解砕工程を入れても良いことは言うまでもない。
【0076】
上記した微粒子高分散処理手段群の基本的な構成をより詳細にしたブロック図に基づいて更に詳しく説明することにする。
【0077】
構成1
図3(a)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第1の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0078】
構成2
図3(b)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第2の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0079】
構成3
図3(c)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第3の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、分散手段aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックさせるフィードバック手段C、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を最終の分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、から構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0080】
構成4
図3(d)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第4の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0081】
構成5
図3(e)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第5の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0082】
構成6
図3(f)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第6の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を取り除き、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、選択分離された芯粒子粉体の粒子を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックさせるフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0083】
構成7
図3(g)は、本発明の微粒子高分散処理手段群の第7の構成を説明するブロック図であって図2(c)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0084】
このようにして達成された微粒子の高分散状態を維持するために、気中分散維持手段を微粒子高分散処理手段群に付加することもできる。ここでいう気中分散維持手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子の再凝集を防止して分散度βを維持する手段をいう。又、このようにして達成された芯粒子の高分散状態を促進するために、気中分散促進手段を微粒子高分散処理手段群と被覆室の間に付加することもできる。ここでいう気中分散促進手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子のうち主に再凝集した粒子の再分散を促進し、分散状態の低下を鈍らせたり、一旦低下した分散状態を元の高分散の状態まで回復するように再分散を促す手段をいう。
【0085】
気中分散維持手段又は気中分散促進手段の好適な例としては、パイプ振動装置、パイプ加熱装置、プラズマ発生装置、荷電装置等が挙げられる。
パイプ振動装置は、発振器を設置したパイプの振動により、気中に分散している粒子に分散機とは言えない振動を与えることで、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
パイプ加熱装置は、加熱したパイプにより搬送気体の外側から熱を加えて搬送気体を膨張させ、分散機とは言えないほどに流速を加速して再凝集を抑制し、再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
プラズマ発生装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中にプラズマを発生させ、そのプラズマイオンと芯粒子との衝突により、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
荷電装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中に、コロナ放電、電子ビーム、放射線等の方法で単極イオンを発生させ、単極イオン雰囲気中を通過させることで粒子を単極に帯電させ、静電気の斥力により再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0086】
このようにして形成された微粒子の高分散状態の芯粒子粉体は粒子の表面を被覆形成物質で被覆するために被覆室に送られる。この被覆室には被覆開始領域を含む被覆空間が設けられている。
【0087】
微粒子高分散処理手段群と被覆室とは直結することが望ましいが、搬送に不可避の中空部材及び/又はパイプを使って接続しても良い。この場合にも、被覆開始領域でのβ≧70%を実現することが不可欠である。
【0088】
微粒子高分散処理手段群と被覆室を別々に置いてその間を連結する場合は、芯粒子粉体をその分散状態のまま被覆室へ導入してやれば良い。そのためには、この間に芯粒子粉体の分散状態を維持するための装置である気中分散維持手段及び/又は分散状態を高めるための装置である気中分散促進手段及び/又は芯粒子粉体の粒子・気体混合物から、低分散芯粒子粉体部分を分離し、主に単一粒子状態の粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を設けることもできる。
【0089】
微粒子高分散処理手段群において気中分散された直後の芯粒子粉体の中から、主に凝集した粒子からなる低分散状態の粒子と主に一次粒子からなる分散度β≧70%の高分散状態の芯粒子粉体を選択分離し、β≧70%の高分散状態の部分のみを被覆室に送り出す高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を介して、微粒子高分散処理手段群を被覆室へ接続すれば、効果的に被覆処理を行うことができる。
【0090】
又、本発明においては、微粒子高分散処理手段群が、(1)被覆室、又は(2)被覆空間、又は(3)被覆開始領域と一部以上空間を共有することもできる。
すなわち、微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆室とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域を有する被覆空間とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域とを、空間的に共有することもできる。
【0091】
ここで被覆開始領域とは、β≧70%の分散状態で搬送された高分散状態の芯粒子粉体に気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体が接触及び/又は衝突し、被覆を開始する領域を指し、次の図4(a)〜(e)で示される態様が考慮される。
【0092】
すなわち、図4(a)〜(e)において被覆開始領域は2で示される領域である。図4(a)において粉体に対してβ≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の一部、好適には微粒子高分散処理手段群の放出部1を覆って設ける。
図4(b)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の一部、好適には微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4が全て通る前記被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
上記の構成により、全ての芯粒子粉体の粒子はβ≧70%の分散状態で被覆始められる。
図4(c)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の一部で好適には微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4の内、回収部5に入る粒子は必ず通過する前記被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(d)において回収部5を囲む前記被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(e)において高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子のみが到達可能な位置に回収部5を設ける。従って、ここでの領域6は重力を利用した選択手段となる。回収部に入る高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子が、必ず通過する前記被覆空間の被覆開始領域2を図の斜線部のように設ける。
【0093】
β≧70%の分散状態で被覆始めた芯粒子のみ回収でき、被覆開始領域を通っていない芯粒子と被覆開始領域を通過した被覆粒子とは混ざることはない。
【0094】
上記したところから、本発明を実施する装置は、微粒子高分散処理手段群と被覆室と回収手段から構成されるものであるが、これらの装置の構成要素は、種々の組み合わせ方をすることが可能で、これらの装置の構成例を図面にもとづいて説明するとつぎのとおりである。
【0095】
装置の構成1
図5(a)は、本発明を実施する第一の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に直結してある。
【0096】
装置の構成2
図5(b)は、本発明を実施する第二の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、不可避の中空部材2−C2、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に不可避の中空部材2−C2を介して接続してある。
【0097】
装置の構成3
図5(c)は、本発明を実施する第三の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、気中分散維持手段2−C3、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に気中分散維持手段2−C3を介して接続してある。
【0098】
装置の構成4
図5(d)は、本発明を実施する第四の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1と空間を共有している。
【0099】
装置の構成5
図5(e)は、本発明を実施する第五の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1中に設けている。
【0100】
装置の構成6
図5(f)は、本発明を実施する第六の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1の分散空間中に、被覆室2−B1を設けている。
【0101】
装置の構成7
図5(g)は、本発明を実施する第七の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−D、再被覆供給手段2−Eから構成されている。回収手段2−Dから被覆後の被覆粒子を高分散処理手段群2−C1に再被覆供給手段2−Eにより搬送して、繰り返して被覆処理が行える。
【0102】
かかる構成の装置のすべてが本発明に含まれるものである。
【0103】
上記のようにして芯粒子粉体を被覆形成物質で被覆した被覆粒子について、再び被覆形成物質で被覆すること、またはこの再被覆を反復することができる。この場合、被覆粒子は再被覆供給手段に送られる。ここで、再被覆供給手段とは、再被覆を行うために被覆後の被覆粒子を微粒子高分散処理手段群へ搬送する手段をいう。具体的には、(a)被覆粒子を回収する回収手段、及び(b)この回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段を備えた手段である。または、(a)被覆粒子を回収する回収手段、(b)この回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段、(c)及び被覆後の被覆粒子を分級する被覆粒子分級手段を備えた手段である。被覆量が多い場合、被覆前の芯粒子粉体の粒子の粒度分布と被覆後の被覆粒子の粒度分布は変わってしまう。そこで、被覆後の被覆粒子の粒度分布を被覆粒子分級手段により調整し、再被覆処理を行えば効果的である。
【0104】
この再被覆処理は、必要によって繰り返すことが出来、そして被覆形成物質の被覆量を所望のものに設定することが出来る。更に、この被覆形成物質の種類を変えてこの被覆処理を繰り返すことが出来、このようにして複数成分の物質を被覆形成物質として多重被覆することも出来る。
【0105】
被覆後の被覆粒子と被覆前の芯粒子が混ざっても、一つ一つに被覆できることに変わりない。
【0106】
本発明に適用する被覆粒子の製造装置は、被覆形成物質が、気相を経る気相法によって、芯粒子粉体の粒子表面に被覆される被覆粒子の製造装置であれば制限はない。例えば、化学蒸着(CVD)装置としては、熱CVD装置、プラズマCVD装置、電磁波を利用したCVD(可視光線CVD、レーザCVD、紫外線CVD、赤外線CVD、遠赤外線CVD)装置、MOCVD装置等、或いは、物理蒸着(PVD)装置としては、真空蒸着装置、イオンスパッタリング装置、イオンプレーティング装置等が適用可能である。より具体的には、例えば、特開平3−75302号公報の超微粒子で表面が被覆された粒子およびその製造方法に記載の被覆粒子製造装置が好適である。
【0107】
以上述べた通り、本発明では微粒子芯粒子粉体、又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を被覆空間に投入し気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体をこの芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させてこの芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する被覆粒子が製造されるが、本発明の基本的な工程を要約すると次の通りである。
【0108】
I
(A) 微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0109】
II
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0110】
III
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、被覆工程に直接搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0111】
IV
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成する部材からなる中間部材、及びパイプから選択される1種類又はそれ以上の部材を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0112】
V
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、この分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の1種類又はそれ以上を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0113】
以上、I〜Vの全てにおいて、好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、又は、
体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全てに粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、
又は、前記I及びIIにおいて、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うものである。
【0114】
次いで本発明を実施例によって更に詳細に説明することにする。
【0115】
実施例1
以下、図5(a)に示した構成の装置の具体例としての図6およびその部分拡大図である図7に示した本発明の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0116】
本例の装置は、プラズマトーチ3−A、プラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室の冷却槽3−B、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室冷却槽3−C、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室の冷却槽3−D、被覆粒子冷却室3−d、被覆形成物質の原料の供給側に、供給装置3−E1、芯粒子粉体の供給側に、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1、細管分散機107及び被覆粒子回収部3−Gより成る。供給装置3−E1は被覆形成物質の原料粉体の供給槽112に、撹拌式分散機3−F1は芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111にそれぞれ結合される。本例における被覆室は、定義ではプラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室3−dから構成されており、ここではこれらを広義の被覆室と称する。広義の被覆室の内、主に被覆処理の行われる室3−cを狭義の被覆室と称する。
【0117】
本微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機111、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1及び内径4mmのステンレス製細管分散機107で構成されており、図2(a)の微粒子高分散処理手段群の構成である。微粒子高分散処理手段群は、DM=3μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の粉体に対して出力時β≧70%を実現できるように構成されている。微粒子高分散処理手段群の最終処理手段である細管107は被覆室3−Cに直結してあり、被覆空間の3−L2の被覆開始領域3−L1においてDM=3μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の粉体に対しβ≧70%を実現できるように構成されている。
【0118】
プラズマトーチ3−Aは、例えば、内径44mm、長さ200mmの石英管を主体とし、外側に高周波発振用のコイルが取り付けられ、その外側には冷却用の外套管が設けられている。プラズマトーチ3−Aの上部には噴出方向が接線方向、軸方向及び半径方向のガス噴出口101が設けられている。
プラズマトーチ3−Aの下部は被覆形成物質の原料の供給口104が設けられ、被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機112から供給される被覆形成物質の原料の粉体がキャリアガス103に担持されてプラズマ焔中に導入される構成である。
【0119】
被覆形成物質前駆体生成室3−bは、内径120mm、長さ200mmの石英管と、その外側の冷却用外套管3−Bとから成る。
狭義の被覆室3−cは、内径120mm、長さ100mmの内管とその外側の冷却用の外套管3−Cとから成る。狭義の被覆室3−cは、芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111から供給される芯粒子が、撹拌式分散機3−F1、エジェクター式分散機3−H1及び細管分散機107からなる微粒子高分散処理手段群αにより分散させて、狭義の被覆室3−cの中央部に設けられた芯粒子粉体の供給口から導入される構成である。被覆空間3−L2及び被覆空間の被覆開始領域は、狭義の被覆室3−c内に設けてある。
被覆粒子冷却室3−dは、内径440mm、長さ800mmの管116とその外側の冷却用の外套管3−Dとから成る。
被覆粒子の回収部3−Gの出口部109は、真空ポンプに連結され、被覆粒子がフィルター110上に集められ取り出される構成である。
【0120】
本発明の、実施例の被覆粒子の製造装置により、芯粒子粉体の粒子として、DM=3μmで(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布の酸化アルミニウムの微粒子粉体の粒子に、被覆形成物質として金属アルミニウムを被覆した。
【0121】
プラズマトーチ3−Aの上部に設けられたガス噴出口101に供給源102からアルゴンガスを20リットル/分の割合で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ3−A内プラズマ室3−aでプラズマ焔を形成する。
【0122】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機112から供給した被覆形成物質の原料である金属アルミニウム粉末は、5リットル/分のキャリアガス103に担持されて、プラズマトーチ3−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口104から、プラズマ焔中に0.5g/分の割合で導入され、プラズマ焔の熱により蒸発し、被覆形成物質前駆体生成室3−bで急冷、凝縮して被覆形成物質前駆体となる。
【0123】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111から1.5g/分で供給される酸化アルミニウムの芯粒子は、撹拌式分散機3−F1により分散せしめ、5リットル/分の割合で供給されるキャリアガス105により担持され、10リットル/分の流量の分散ガス106によるエジェクター式分散機3−H1及び細管分散機107により気中に分散させる。
【0124】
本実施例の供給槽を備えた供給機111、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1及び細管分散機107で構成される微粒子高分散処理手段群αは、体積基準の頻度分布として、DM=3μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布の芯粒子粉体の粒子を、最終処理手段である細管分散機107で、分散度β=85%に分散できる。又、被覆空間の被覆開始領域3−L1で、分散度β=85%の分散状態で被覆が始められる。
【0125】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面が被覆された被覆粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室3−dを降下し、被覆粒子回収部3−Gに至る。被覆粒子からなる製品は、フィルター110により気体と分離し、集められ取り出される。
【0126】
得られた被覆粒子である、金属アルミニウムで表面を被覆した酸化アルミニウム微粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図8に示す通り、一次粒子である個々の酸化アルミニウム微粒子に金属アルミニウムが超微粒子状に被覆したものであった。
【0127】
比較例
分散手段を設けず、微粒子粉体を供給機111から直接被覆室3−cに導入するようにした点を除いて本実施例で用いた装置とは同一の構成の装置を用い、本実施例で用いたものと全く同じ酸化アルミニウム微粒子粉体を、被覆形成物質の金属アルミニウムで被覆した。被覆室への投入口における酸化アルミニウム微粒子の分散度βは63%であった。得られた被覆粒子である、金属アルミニウムで表面を被覆した酸化アルミニウム微粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図9に示す通り、芯粒子の酸化アルミニウムの凝集体に金属アルミニウムが被覆したものしか得られなかった。
【0128】
実施例2
図10およびその部分拡大図である図11に示した装置は、図5(d)に示した構成の装置の1つの具体例である。
【0129】
本例で用いる被覆形成物質前駆体を生成させる装置の構成は実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機214、撹拌式分散機5−F1、細管分散機211及び衝突板を利用した分散機5−H2で構成されており、図2(a)の微粒子高分散処理手段群の構成の一例である。細管分散機211は、内径4mmのステンレス製である。微粒子高分散処理手段群αの最終分散手段である衝突板を利用した分散機5−H2は、SiC製の衝突板213がステンレス製のホルダー212により設置された構成である。この衝突板を利用した分散機5−H2は狭義の被覆室5−cの中に設けられており、微粒子高分散処理手段群αと狭義の被覆室5−cは共有の空間を有している。また、被覆空間5−L1及び被覆空間の被覆開始領域5−L2は、狭義の被覆室5−c内に設けてある。本装置の微粒子高分散処理手段群によれば、体積基準頻度分布として、DM=1μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布に相当する芯粒子粉体の粒子を、最終の分散処理である衝突板を利用した分散機5−H2の衝突板215を衝突直後、分散度β≧70%に分散できる。したがって、分散度β≧70%の状態で被覆が開始される。
【0130】
本例の被覆粒子の製造装置により、芯粒子粉体の粒子として、体積基準の平均粒子径DM=1μmで(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布の酸化アルミニウムの微粒子粉体の粒子に、被覆形成物質として金属アルミニウムを被覆した。
プラズマトーチ5−Aの上部に設けられたガス噴出口201に供給源202から20リットル/分のアルゴンガスを供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ5−A内プラズマ室5−aでプラズマ焔を形成する。
【0131】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機215から0.5g/分で供給した被覆形成物質の原料である金属アルミニウム粉末は、5リットル/分のキャリアガス203に担持されて、プラズマトーチ5−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口204から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発し、被覆形成物質前駆体生成室5−bで急冷、凝縮して被覆形成物質前駆体となる。
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機214から1.5g/分で供給される酸化アルミニウムの芯粒子は、撹拌式分散機5−F1により分散させて、20リットル/分の割合で供給されるキャリアガス205により担持され、細管分散機211を経て衝突板を利用した分散機5−H2によって、分散度β=88%に気中に分散させる。この被覆室の中で分散させた芯粒子を、被覆空間5−L2の被覆開始領域5−L1で分散度β=88%の分散状態で被覆し始める。
【0132】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面が被覆された被覆粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室5−dを降下し、被覆粒子回収部5−Gに至る。被覆粒子からなる製品は、フィルター210により気体と分離し、集められ取り出される。
得られた被覆粒子である、金属アルミニウムで表面を被覆した酸化アルミニウム微粒子は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子である個々の酸化アルミニウム微粒子に金属アルミニウムが被覆したものである。被覆形態は実施例1で得たものと同様であった。
【0133】
実施例3
図12およびその部分拡大図である図13に示した装置は、図5(b)に示した構成の装置の1つの具体例である。
【0134】
本例で用いる被覆形成物質前駆体を生成させる装置の構成は、実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機313、分散手段である撹拌式分散機6−F1、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段であるサイクロン6−Iで構成されており、図2(b)のブロック図の構成の一例である。サイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の放出部は、搬送に不可避のパイプ307で狭義の被覆室6−cへ接続してあり、低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の放出部は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを介して搬送管310で撹拌式分散機6−F1へ接続してある。本装置の微粒子高分散処理手段群によれば、体積基準の粒度分布として、DM=1.5μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布に相当する芯粒子粉体の粒子を、最終の処理手段であるサイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体流の放出部で、分散度β≧75%に分散できる。狭義の被覆室6−cに図のごとく被覆空間6−L2及び被覆空間の被覆開始領域6−L1が設けてある。6−Cと6−Dを結合するフランジ部の制約による不可避のパイプ307による分散度βの低下は少なくとどめられる。したがって、被覆開始領域において、分散度β≧70%で被覆が開始される。
【0135】
本例の被覆粒子の製造装置により、芯粒子粉体の粒子として、DM=1.5μmの(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布の酸化アルミニウムの微粒子粉体の粒子に、被覆形成物質として金属アルミニウムを被覆した。
プラズマトーチ6−Aの上部に設けられたガス噴出口301に供給源302からアルゴンガスを20リットル/分で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ6−A内プラズマ室6−aでプラズマ焔を形成する。
【0136】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機314から0.5g/分で供給した被覆形成物質の原料である金属アルミニウム粉末は、5リットル/分のキャリアガス303に担持されて、プラズマトーチ6−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口304から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発し、被覆形成物質前駆体生成室6−bで急冷、凝縮して被覆形成物質前駆体となる。
【0137】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機313から1.5g/分で供給される酸化アルミニウムの芯粒子は、撹拌式分散機6−F1により分散させ、15リットル/分のキャリアガス305により担持されパイプ306を介してサイクロン6−Iに搬送される。サイクロン6−Iは、微粉側の最大粒子径が2μmとなるように調節されており、単一粒子を主に含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、搬送に不可避のパイプ307を介し放出口308から狭義の被覆室6−cに放出させる。一方、サイクロン6−Iにより選択分離させた主に凝集粒子からなる低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物分散芯粒子粉体流は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを経て、10リットル/分のキャリアガス309によりパイプ310中を搬送され、撹拌式分散機6−F1へフィードバックさせる。微粒子高分散処理手段群αからの放出部であるサイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の放出部での分散度は分散度β=85%であり、被覆空間の被覆開始領域6−L1での分散度は、β=80%である。
【0138】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面が被覆された被覆粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室6−dを降下し、被覆粒子回収部6−Gに至る。被覆粒子からなる製品は、フィルター312により気体と分離し、集められ取り出される。
得られた被覆粒子である、金属アルミニウムで表面を被覆した酸化アルミニウム微粒子は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子である個々の酸化アルミニウム微粒子に金属アルミニウムが被覆したものである。被覆形態は実施例1と同様であった。
【0139】
【発明の効果】
本発明の、被覆粒子の製造方法および装置によって、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であっても個々の粒子に被覆形成物質を被覆可能となり、凝集体の表面を被覆形成物質で被覆した被覆凝集体を生成することによる未被覆の粒子や未被覆を持つ粒子を生成することが無くなった。これにより、未被覆の芯粒子或いは未被覆部分を有する芯粒子が存在しなくなり工業生産上のメリットは、頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉体粒子の分布図であり、(a)は本来の分散度βを表わし、(b)は粒径D1〜D2の範囲の粒子が体積で90%を占める粉体の粒径対体積基準頻度を表わす。
【図2】(a)〜(c)は微粒子高分散処理手段群の基本構成を示すブロック図。
【図3】(a)〜(g)は微粒子高分散処理手段群の構成をより詳細に説明するブロック図。
【図4】(a)〜(e)は芯粒子粉体に被覆が開始される態様を示す図。
【図5】(a)〜(g)は本発明の装置の構成を説明するブロック図。
【図6】実施例1の装置を示す図。
【図7】実施例1の装置の部分拡大図。
【図8】実施例1の装置で得られた被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図9】比較例で得られた被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図10】実施例2の装置を示す図。
【図11】実施例2の装置の部分拡大図。
【図12】実施例3の装置を示す図。
【図13】実施例3の装置の部分拡大図。
Claims (6)
- 微粒子からなる体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を気中に分散させて主に単一粒子状態で気中に存在する分散度βが70%以上の高分散粒子・気体混合物とする分散工程と、
前記高分散粒子・気体混合物を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて前記芯粒子粉体の粒子表面を被覆する被覆工程とからなることを特徴とする、被覆微粒子の製造方法。 - 前記分散工程により分散させた粒子・気体混合物から低分散粒子・気体混合物を分離して前記分散工程にフィードバックさせて高分散粒子・気体混合物とするフィードバック工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の被覆微粒子の製造方法。
- 前記フィードバック工程が、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する放出部から、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成せしめる部材からなる中間部材、及びパイプから選択される一種類又はそれ以上の部材を介して搬送するか、及び/又は、気中分散維持手段、気中分散促進手段、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の一種類又はそれ以上を介して搬送して調製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆微粒子の製造方法。
- 前記分散工程と、前記被覆工程とを、共有空間において行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆微粒子の製造法。
- 前記被覆工程において、被覆空間の被覆開始領域を、当該高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域、又は回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、位置せしめることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆微粒子の製造法。
- 使用する芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆微粒子の製造方法。
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