JP4016091B2 - 被覆セラミックス粒子、セラミックス基焼結体及びその製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、セラミックス微粒子表面に被覆形成物質を被覆した被覆されたセラミックス粒子、この被覆されたセラミックス粒子又はこの被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結するセラミックス基焼結体の製造法、及びこの方法で得られるセラミックス基焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス基焼結体の高性能化には、このセラミックス基焼結体の微組織を高度に複合化した上で、その組織の微細化及び均質化といった微組織のミクロな領域での制御が必要である。そのためには原料粉体の段階でのその目的に合致する原料粉体の調製が不可欠である。
【0003】
従来、この原料の調製は、ボールミル法や振動ミル法を始めとする粉体混合法により行われてきた。しかし、粉体混合法は、混合時の不純物の混入が避けられないのみならず、原理的に組織の均一化に限度があり、焼結助剤を始めとする種々の添加物質の粉体粒子が微細であっても理想的な均一な混合、即ちセラミックス粒子に添加物質の粉体粒子がむらなく行き渡る均一な分散は極めて困難である。仮にこの均一な分散が表現されたとしても、添加物質の粉体粒子が粒子単位で混合されるために、粒子個々のレベルでは均一の意味にも限界がある。特に相対的にその量が少ない場合、分布むらが必然的に出来る。
【0004】
現実には、多くの場合、セラミックス粉体粒子や添加物質の粉体粒子は凝集してセラミックス基焼結体中に塊状に存在したり、或いは焼結体中で偏在してセラミックス基材料の性能を著しく低下させる。
【0005】
従って、均質化を実現するためには、セラミックス粉体粒子一個一個に確実に目的のセラミックス基材料とする前記添加物質を分布させる必要があり、そのために、セラミックス粉体粒子一個一個に添加物質を被覆法により均一に被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の製造、及びこの被覆されたセラミックス粒子を焼結することによる高性能セラミックス基焼結体の製造が強く望まれている。
【0006】
被覆法としては気相法、湿式メッキ法など種々の方法があるが、中でも気相法は、原理的に、(1)雰囲気の制御が容易である、(2)基本的に目的のセラミックス基焼結体とする前記添加物質を被覆形成物質とする被覆形成物質の選択に制限がなく、活性金属を始めとする金属単体物質、窒化物、炭化物、硼化物、酸化物など、いろいろな種類の物質を被覆できる、(3)目的とする被覆形成物質を、不純物を混入することなく被覆できる、(4)被覆量を任意に制御できるなど、他の被覆法では成し得ない大きな利点がある。
【0007】
しかし気相法では、セラミックス粉体粒子が、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子でなる個々のセラミックス粒子への被覆は、以下の理由により不可能であった。
【0008】
即ち、微粒子のセラミックス粒子である、芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、セラミックス粒子同士の付着力が強いため凝集性が高く、殆どの単一粒子が凝集体を形成する。そしてこの凝集体は、その凝集力を上回る特別な作用を加えないと崩し壊すことができないために、凝集体をそのままで被覆形成物質で被覆しても、一個一個の粒子表面への前記被覆形成物質での被覆は不可能で、結局その表面が被覆形成物質で被覆された被覆凝集体が生成することになる。
【0009】
これにより凝集体を形成する個々の粒子は、凝集体表面に位置する粒子では粒子表面は被覆量は多いものの被覆むらが生じたり、凝集体内部に位置する粒子では全く被覆されないという問題があった。
【0010】
上記の問題を解決しようとして、被覆されるべきセラミックス粒子が微粒子である場合のこの被覆されるべき芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の個々の表面に被覆する目的で粒子を分散させて被覆するという試みは既になされていた。
【0011】
例えば、特開昭58−31076号公報に開示されている装置・方法によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を電磁気的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子を転動させながらPVD法により被覆する。又、特開昭61−30663号公報に開示されている装置によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を機械的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子を転動させながらPVD法により被覆することができるとされている。しかし、これらの容器の振動により芯粒子粉体の粒子を転動させながら被覆する装置或いは方法では、実際には、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子の凝集体を崩すに要するその凝集力を上回る作用を加えることができないため、凝集体を崩せずに、むしろ造粒作用が働き、容器内に導入する前以上に、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0012】
特開平3−153864号公報に開示されている装置及び方法は、内面に障壁及び/又は凹凸を備えた回転容器内に粒子を入れ、回転容器を回転させながら蒸着法により芯粒子表面に被覆を行うことを目的とするものであるが、このような装置或いは方法においては、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子の凝集体を崩すのに要する凝集力を上回る作用を加えることができないため、凝集体を壊すことができないばかりか、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0013】
特開昭58−141375号公報には、反応ガス雰囲気中に置かれた粉体を反応ガスの流れと重力の作用とによって浮遊させて、反応ガスの化学反応により生成される析出物質によって粉体の表面を被覆する装置が開示されている。又、特開平2−43377号公報には、微粒子を減圧下において流動化させながら、熱化学反応処理を行い被覆を行う方法が開示されている。これらの気流による流動層を利用する装置或いは方法では、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなるセラミックスの芯粒子粉体の粒子一個一個を流動化させることが事実上不可能で、このセラミックス粒子の凝集体を崩せなかった。
【0014】
特開昭54−153789号公報には、金属の蒸気を発生させた真空容器内を粉末材料を落下させ金属を被覆する装置が開示されている。又、特開昭60−47004号公報には真空槽中の高周波プラズマ領域にモノマーガスと粉体粒子を導入し、プラズマ重合により有機物の被覆膜を形成させる方法が開示されている。これらの装置或いは方法の如く、単に導入するだけでは微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子凝集体を壊せなかった。
【0015】
特開昭64−80437号公報には、低・高周波合成音波により芯粒子粉体の凝集体を崩して流動化させ被覆する方法が開示されている。しかし、流動層に振動を与える方法では、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子凝集体を崩せなかった。
【0016】
特開昭62−250172号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室に滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室に自然落下で導入し、ターゲットを垂直に設けた円筒状のスパッタリング室に自然落下させて被覆する装置及び方法が開示されている。又特開平2−153068号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室で滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室のスパッタリング源を納めた回転容器に単一粒子でない粉体状で導入し、容器を回転さた状態でスパッタリングする装置及び方法が開示されている。これらの装置及び方法では、ジェットミル処理によりその時だけ粉体は一時的に分散されるが、被覆前の加熱工程で、この粉体を滞留させる構造であり、そのような方法のため、仮にジェットミル処理で一時的に一次粒子状態に分散しても加熱工程でのこの粉体の滞留のため再凝集し、結局、被覆工程に導入される時には凝集したままである。
【0017】
以上のように、これまでのものでは、いずれも微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子に被覆する装置或いは方法としての問題解決はなされておらず、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、現実には凝集体を形成していてこれを崩すことができず、そのために単一粒子状態に分散した状態で微粒子のセラミックス粒子の表面を被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の製造方法及び装置は知られていなかった。そのため、セラミックス粒子一個一個に結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として、気相被覆法により均一に被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が作製できず、前記高性能なセラミックス基焼結体も製造できなかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
従って、現実に、被覆されるべきセラミックス粒子であって、例えば10μm以下の平均粒子径の粒子である微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の提供と、この被覆されたセラミックス粒子による高性能なセラミックス基焼結体及びその製造方法が強く求められている。
【0019】
本発明は、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子へ単一粒子単位に、結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として被覆を施された被覆セラミックス粒子、及びこの被覆されたセラミックス粒子による、組織が微細でかつ均質であり、そして高性能なセラミックス基焼結体及びその製造法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、目的のセラミックス基焼結体製造のための添加物質を被覆形成物質として被覆させるためには、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子に、分散度βが70%以上である高い分散状態の被覆空間の被覆開始領域で、被覆を開始しなければならないことを見い出した。
【0021】
すなわち、本発明の被覆されたセラミックス粒子は、セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆して得られる被覆されたセラミックス粒子であって、
(A) 微粒子高分散処理手段群の最終処理手段が、
(a) この芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、および
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により選択分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
から選ばれる微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
からなる被覆手段によって調製された被覆セラミックス粒子に関する。
【0022】
更に本発明は、前記被覆されたセラミックス粒子が、被覆されたセラミックス粒子の被覆形成物質を介して接触状態で集合塊を形成した被覆されたセラミックス粒子の集合塊を、解砕及び/又は破砕する被覆されたセラミックス粒子集合塊の解砕・破砕工程、及び/又は
被覆されたセラミックス粒子集合塊と一次粒子単位の被覆されたセラミックス粒子とを選択分離する選択分離工程
を更に経て調製されたものであることを特徴とする、被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0023】
更に本発明は、前記セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないものである被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0024】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程を設け、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を被覆工程に直接放出するか、又は分散工程と被覆工程の間に、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する放出部から、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成せしめる部材からなる中間部材、及びパイプから選択される1種類またはそれ以上の部材を介して搬送するか、及び/又は、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物の内の、低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の1種又はそれ以上を介して搬送して調製されたものであることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0025】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うことにより調製されたものであることを特徴とする、被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0026】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子のすべての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめるか、又は体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめることにより調製されたものであることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0027】
更に本発明は、使用する、芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)であることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0028】
そして本発明は、上記した被覆されたセラミックス又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結することを特徴とするセラミックス基焼結体の製造法にも関する。
【0029】
そして本発明はまた上記したセラミックス基焼結体の製造法により製造したセラミックス基焼結体にも関する。
【0030】
而して、本発明によれば、セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体の粒子又は主に同微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であって、その表面が被覆形成物質で被覆されたものを、焼結してセラミックス基焼結体を製造するに際して、上記した表面が被覆形成物質で被覆されたセラミックス粒子として、気相法により気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段により気中に分散させた平均粒子径10μm以下の微粒子からなる高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とを、被覆空間の被覆開始領域で、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の分散度がβ≧70%である分散状態で合流させ、接触及び/又は衝突させてセラミックス粒子の表面を被覆形成物質で被覆したものを用いることにより、これまでに得られなかった組織が微細で均質でありそして高性能なセラミックス基焼結体を得ることができた。そして、上記した被覆芯粒子の調製に際して、被覆形成物質前駆体は、原子、分子、イオン、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン等からなる気相状態の、或は気相を経て生成したばかりのもので、高分散状態のセラミックス粒子と接触及び/又は衝突を始めることにより、一次粒子状態の個々の芯粒子の表面に被覆形成物質は強固に結合し、その結果、芯粒子の表面を被覆形成物質により単一粒子単位で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が製造できるのである。
【0031】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書中に使用する用語をはじめに定義することにし、そして必要によってその用語の具体的内容を説明し、次いで被覆形成物質で被覆されたセラミックス粒子の調製がどのような技術的手段によって行なわれるものであるのかの説明を行うことにする。
【0032】
被覆されたセラミックス粒子
被覆されたセラミックス粒子とは、被覆が施された下記するセラミックス粒子をいう。例えば、具体的には、被覆形成物質が、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上の形態で芯粒子としてのセラミックス粒子に被覆された粒子をいう。
【0033】
セラミックス粒子用原料粉体粒子
本発明に係る、セラミックス粉体粒子が微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子でなるセラミックス粒子の表面に、被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子用のセラミックス粒子の原料粉体粒子には、セラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子が選択される。
このセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子とは、ダイヤモンド粒子及び高圧型窒化硼素粒子を除くセラミックス粒子のことである。この理由は以下の通りである。
【0034】
ダイヤモンド、及び高圧型窒化硼素は、何れも高圧安定相で超高硬度物質である。これらは、常圧下では何れも準安定に存在し、高温下では、それぞれ極めて軟質のグラファイト、及びグラファイト型相に相転移する。しかも何れも超難焼結性である。従って、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素の優れた特性を生かした焼結体を作製するためには、これらが熱力学的に安定な超高圧力を印加しなければならない等、これらの焼結は特別厳しい。
このことに比べ、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素を除くセラミックスは、例えば、上記の如く相転移によって突出した優れた特性を著しく失うということはなく、しかも、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素以上に難焼結性のものはないので焼結が特別厳しいということはない。
【0035】
従って、このセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子とは、ダイヤモンド粒子及び高圧型窒化硼素粒子を除くセラミックス粒子を言う。
このセラミックス粒子は、被覆形成物質と反応及び/又は固溶等をしないセラミックス粒子を始め、一種類以上の被覆形成物質と反応及び/又は固溶して目的とする無機化合物、合金、金属間化合物等の一種類以上を生成するセラミックスが選択できる。
【0036】
気相被覆法
気相被覆法とは、被覆形成物質の原料が、分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気、エアロゾルの一種以上からなる気相状態を少なくとも一度は経て被覆する方法、又は気相状態の被覆形成物質の原料により被覆する方法をいう。
【0037】
芯粒子
芯粒子とは、被覆を施す対象物となるセラミックス粒子をいう。これはまた、母材粒子、種粒子或は被覆される粒子ともいう。
この芯粒子を構成する物質は、周期律表第1a、2a、3a、4a、5a、6a、7a、1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8族の金属、半導体、半金属、希土類金属、非金属の元素の一種類または二種類以上を構成成分とする無機化合物からなるもので、その具体例にはTiC、ZrC、HfC、WC、SiC、B4C、TaC、NbC、Si3N4、TiN、ZrN、AlN、HfN、TaN、TiB、TiB2、ZrB2、HfB、HfB2、BP、Al2O3、Al2SiO5(ムライト)、ZrO2(Y2O3、MgO又はCaO安定剤を添加したジルコニア:PSZ又は正方晶ジルコニア多結晶体:TZP)、MgAl2O4(スピ ネル)、グラファイト、無定形炭素、アモルファス炭素などが挙げられる。
そしてこれらのセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度は40000を越えないものとする。
【0038】
芯粒子粉体
芯粒子粉体とは、芯粒子からなる粉体をいう。芯粒子粉体の粒子とは、芯粒子粉体を構成する粒子をいう。本発明において被覆に供する微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、平均粒子径が体積基準頻度分布で10μm以下である。
好ましくは、平均粒子径をDMとしたとき、DMが10μm以下で、粒度分布が体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)のものである。このような比較的分布の幅の狭い粉体では、平均粒子径で粉体の分散特性又は凝集特性が特徴付けられ、DMの値に適した条件で微粒子高分散処理手段群を作動させれば分散できる。
【0039】
平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、幅広い分布又は互いに離れた複数のピークを持つ分布の粉体では、好適には適当な選択分離処理、例えば分級処理を行ってそれぞれ分級された粉体ごとに、被覆処理を施す。これにより、それぞれ分級された粉体ごとに上記条件の下で、被覆空間の被覆開始領域で分散度βが70%以上の状態で被覆が開始され、芯粒子粉体の粒子一つ一つの粒子に被覆が可能となる。
【0040】
被覆形成物質
被覆形成物質とは、被覆を施す対象物に被覆を形成する物質をいう。例えば、具体的には、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上からなる形態で芯粒子粉体の粒子に被覆を形成する物質をいう。
特に、被覆形成物質の形態が超微粒子状の場合、当該超微粒子の粒子径は、例えば0.005μm〜0.5μmの範囲のものをいう。
【0041】
この被覆形成物質は、被覆形成物質自体がそのままで被覆を形成するか、又は被覆形成物質と芯粒子のセラミックスとが反応して及び/又はセラミックス粒子に固溶して及び/又は二種類以上の被覆形成物質同志が反応して及び/又は固溶して被覆を形成するための目的とする無機化合物、合金、金属間化合物等の一種類又はそれ以上を生成し、被覆されたセラミックス粒子の焼結を促進する焼結助剤及び/又は結合材となる単体物質及び/又は化合物及び/又はセラミックス粒子の表面改質剤となる単体物質及び/又は化合物から選択される。セラミックス粒子の粒界を制御させる表面改質剤を被覆形成物質としても選択可能である。必要に応じて、例えばセラミックス粒子と焼結助剤及び/又は結合材との化学結合性を高めたり、又は個々のセラミックス粒子を任意の物質から隔離させ、これにより、セラミックス粒子と任意の物質との反応を抑止させることができる。
何れも、焼結助剤及び/又は結合材としての被覆形成物質の選択の幅が飛躍的に大きく広がり好適である。
【0042】
これらの被覆形成物質は、周期律表1a、2a、3a、4a、5a、6a、7a、1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8族の金属、半導体、半金属、希土類金属、非金属、及びその酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、炭窒化物、酸炭窒化物、硼化物、珪化物の一種類又はそれ以上、例えばAl、B、Si、Fe、Ni、Co、Ti、Nb、V、Zr、Hf、Ta、W、Re、Cr、Cu、Mo、Y、La、TiAl、Ti3Al、TiAl3、TiNi、NiAl、Ni3Al、SiC、TiC、ZrC、B4C、WC、W2C、HfC、VC、TaC、Ta2C、NbC、Mo2C、Cr3C2、Si3N4、TiN、ZrN、Si2N2O、AlN、HfN、VxN(x=1〜3)、NbN、TaN、Ta2N、TiB、TiB2、ZrB2、VB、V3B2、VB2、NbB、NbB2、TaB、TaB2、MoB、MoB2、MoB4、Mo2B、WB、W2B、W2B5、LaB6、B13P2、MoSi2、BP、Al2O3、ZrO2、MgAl2O4(スピネル)、Al2SiO5(ムライト)の一種類又はそれ以上を含むことができる。
【0043】
この被覆されたセラミックス粒子表面を被覆する被覆形成物質の被覆による添加量は、何れの焼結法を選択しても特に制限はなく、微量から多量までの任意の量を選択できる。
【0044】
被覆空間に投入の定義
被覆空間に投入とは、例えば、自由落下等の落下によって芯粒子粉体を被覆空間に導入することをいう。搬送ガスにより投入する場合には、芯粒子粉体を芯粒子粉体の粒子・気体混合物の流れの方向に乗せて導入したり、気体に乗せて流れの方向へ、或いは気体に乗り方向が変えられて導入することをいう。または、搬送ガスの作用を受けて導入することをもいう。例えば、搬送ガスの波動現象、具体的には非線系波動によって導入することをもいう。或いは、ガス中の音波、超音波、磁場、電子線等によって被覆空間に導入することをもいう。また、外場、例えば電場、磁場、電子線等により導入することをもいう。具体的には、電場、磁場、電子線等により粉体粒子を帯電させ、または帯磁させ引力又は斥力により被覆空間に導入することをもいう。また、ガスの背圧や減圧によって吸い込まれ、導入することも含む。
【0045】
被覆空間
被覆空間とは、被覆形成物質の原料から気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と芯粒子粉体の粒子が接触及び/又は衝突する空間をいう。あるいは、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する空間領域をいう。
【0046】
被覆室
被覆室とは、被覆空間を一部以上有する室をいう。より具体的には、被覆室とは、被覆空間を含む仕切られた、又は略仕切られた(略閉じた、半閉じた)室であって、被覆空間を一部以上含む室である。
【0047】
気中
気中とは、真空又は気相状態の空間内をいう。ここで、本発明において、気相状態とは、分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気などの状態をいう。真空とは、技術的には、減圧状態をさす。どんな減圧下でも、厳密にはガス、分子、原子、イオン等が含まれる。
【0048】
被覆形成物質前駆体
被覆形成物質前駆体とは、被覆形成物質の前駆体である。より詳しくは、気相状態の被覆形成物質の原料がそのまま、又は被覆形成物質の原料から気相を経て形成及び/又は合成され、被覆を施す対象物となる粒子である芯粒子に被覆を形成する直前までの物質をいう。被覆形成物質前駆体は、被覆形成物質の原料から、気相を経て形成及び/又は合成する限り、状態の制限はない。被覆形成物質の原料が気相の場合、この原料が被覆形成物質前駆体にもなりうる。被覆形成物質前駆体そのものが気相であってもよい。また、被覆形成物質前駆体が反応性物質の場合は、反応前でも良く、反応中でもよく、反応後でもよい。被覆形成物質前駆体の具体例としては、イオン、原子、分子、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン、超微粒子、ガス、蒸気、エアロゾル等が挙げられる。
【0049】
被覆形成物質の原料
被覆形成物質の原料とは、気相を経て被覆を形成する物質となる原料物質をいう。被覆形成物質の原料の形態の具体例として、塊状の固体、粉体粒子、気体、液体等が挙げられる。
【0050】
分散度β
分散度βとは、粉体分散装置の分散性能を評価する指数として増田、後藤氏らが提案(化学工学、第22回、秋季大会研究発表講演要旨集、P349(1989)参照)したように、全粒子の重量に対する、見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合と定義する。ここで、見かけの一次粒子状態の粒子とは、任意の分散状態の粉体粒子の質量基準の頻度分布fm2と完全分散されている粉体粒子の質量基準の頻度分布fm1のオーバーラップしている部分の割合を示し、次の式のβで表される。
【0051】
【数1】
上式において、粒子径の単位(μm)は規定されるものではない。
【0052】
上式は質量基準で表した粒度分布を基準にして分散度を評価しているが、本来分散度は体積基準で表した粒度分布を基にして評価されるべきものである。しかし粉体粒子密度が同じである場合には質量基準で表した粒度分布と体積基準で表した粒度分布は同じになる。そこで実用上測定が容易な質量基準の粒度分布を測定し、それを体積基準の粒度分布として用いている。従って本来の分散度βは次の式及び図1(a)の斜線部分の面積で表される。
【0053】
【数2】
上式において、粒子径の単位(μm)は規定されるものではない。
そして芯粒子粉体の分布及び平均粒子径は、特に断らない限り基本的には体積基準を用いることとする。
【0054】
体積基準頻度分布
体積基準頻度分布とは、粒子径の分布をある粒子径に含まれる体積割合をもって表したものをいう。
【0055】
(〔D1,D2〕,≧90%)の定義
(〔D1,D2〕,≧90%)分布とは、D1、D2を粒子径、但しD1<D2とするとき、D1以上でD2以下の粒子が体積で90%以上含まれる分布を表し、図1(b)のように斜線の部分の割合が90%以上である粒子からなる粉体を表す。
【0056】
体積基準頻度分布(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の定義
粒度分布が、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布とは、DMを体積基準の平均粒子径とするとき、DMの1/5倍の粒子径以上、DMの5倍の粒子径以下の粒子を体積で90%以上含む分布を表す。例えば、平均粒子径DMが5μmで体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)とは、体積基準の平均粒子径が5μmで、1μm以上且つ25μm以下の粒子径の粒子が体積で90%以上含まれるような分布を表す。ここで、体積基準の平均粒子径DMは、
【数3】
又は技術的には、ある粒子径間隔をDi±△Di/2(△Diは区分の幅)内にある粒子群の体積をviとすると、
DM=Σ(viDi)/Σvi
と表される。
【0057】
被覆開始領域
微粒子高分散処理手段群の最終処理後、初めて被覆が開始される領域を被覆開始領域という。従って、微粒子高分散処理手段群の最終処理以前では、始めて被覆が開始される領域でも、ここでいう被覆開始領域ではない。
【0058】
被覆開始領域での分散度β
本発明では、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とした領域に被覆空間の被覆開始領域を位置せしめる被覆室を設ける。被覆空間の被覆開始領域における分散度であれば、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、実質的に粒子一個一個の単位に気中に分散して被覆に供することができ、被覆空間の被覆開始領域を通過する全ての芯粒子粉体の粒子の表面の少なくとも一部と、被覆形成物質前駆体とは接触及び/又は衝突するため、必ず粒子一個一個の単位に被覆形成物質を付けることができる。
【0059】
好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを80%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域での分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子に対して事実上芯粒子同士による閉ざされた部分がなく、一個一個の粒子の表面のいたるところに被覆形成物質前駆体を接触及び/又は衝突させることが可能であり、一個一個の粒子表面にほぼ一様に被覆できる。
【0060】
より好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを90%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域の分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であっても事実上凝集しておらず、一個一個の粒子の表面全てに事実上一様に被覆できる。
【0061】
特に、処理能率が低くてもよいから、高品位な被覆を行いたいときは、分散度は、95%以上がより好ましい。
【0062】
微粒子高分散処理手段群
微粒子高分散処理手段群とは、
(A) 少なくとも分散手段を1以上有し、
(B) 最終の処理手段として、
(a) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、又は
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
を有するものである。
【0063】
好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有するものである。
前記被覆開始領域における種々の分散度、例えばβ≧70%、80%、90%、に対応してそれらと同等以上の分散性能の微粒子高分散処理手段群を設けることにより、被覆開始領域において、各分散度に応じた商品位な被覆を施すことができる。
【0064】
最終処理手段
微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が分散手段の場合、分散処理手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。又、微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が、微粒子高分散処理手段の最終の分散手段へ、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、又は最終の分散手段より前の処理手段に、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の場合、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。
【0065】
尚、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段であるフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段より前に設ける(例えば、フィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段と最終分散手段の間、或いは最終分散手段より前)高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段は、フィードバック手段の有無にかかわらず微粒子高分散処理手段群の構成要素である。
【0066】
分散手段
微粒子を分散するために用いる手段を分散手段という。この分散手段は、少しでも或いは僅かでも分散効果を有するものは分散手段として使用可能であり、これを分散手段とする。例えば、一般に供給手段として用いる空気輸送用のロータリーフィーダーやインジェクションフィーダー(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P568、P571)は、分散効果も有するので、分散目的の手段として使用する場合は分散手段である。後述の分散維持・促進手段も分散目的で(βを高める目的で)使用する場合は分散手段となる。そしてこの分散手段は単一の装置、機器である場合も、複合された装置、機器である場合もあり、これらを総称して微粒子高分散処理手段群と呼ぶ。
【0067】
この微粒子高分散処理手段群は、芯粒子粉体の粒子の加速及び/又は速度勾配に置く気流による分散、芯粒子粉体の粒子の静止障害物及び/又は回転体でなる障害物への衝突による分散、芯粒子粉体の粒子の流動層及び/又は脈流及び/又は回転ドラム及び/又は振動及び/又は掻取りからなる機械的解砕による分散等の選択された一種類以上の分散の機構を備えたものをいう。
【0068】
具体的には、微粒子高分散処理手段群は、エジェクタ型分散機、ベンチュリ型分散機、細管、撹拌機、気流中の障害物を利用した分散機、ジェットの吹付けを利用した分散機、螺旋管、回転羽根を利用した分散機、回転するピンを利用した分散機(ケージミル)、流動層型分散機、脈流を利用した分散機、回転ドラムを利用した分散機、振動を利用した分散機、振動ふるい、スクレーパによる掻き取りを利用した分散機、SAEI、Gonell式分散機、中条式分散機、Roller式分散機、オリフィス型分散機、B.M式分散機、Timbrell式分散機、Wright式分散機等の選択された一種以上からなる分散手段を備えたものである(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P430)。
【0069】
また、特開昭56−1336号に記載の撹拌羽根を利用した分散機、特開昭58−163454号に記載の高速気流と分散ノズルを利用した分散機、特開昭59−199027号に記載の回転羽根による分散作用とプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−207319号に記載のプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−216616号に記載のエジェクタとプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−225728号に記載のエジェクタとイオン流の分散作用を利用した分散機、特開昭59−183845号に記載のプラズマイオンの分散作用を利用した分散機、特開昭63−166421号に記載の分散羽根と圧力気体による分散作用を利用した分散機、特開昭62−176527号に記載のライン状又はリング状スリット型噴出口を用いた分散機、特開昭63−221829号に記載の網状羽根を利用した分散機、特開昭63−1629号に記載の噴射ノズルからの高速気流による分散作用を利用した分散機、実開昭63−9218号に記載の多数の細孔を利用した分散機、実開昭62−156854号に記載のエジェクタ型分散機、実開昭63−6034号に記載の細孔とオリフィスを利用した分散機等の公報に記載のものも使用可能である。
微粒子高分散処理手段群に好適な分散手段として、特願昭63−311358号、特願平1−71071号、特願平2−218537号等に記載の装置が挙げられる。
【0070】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とは、芯粒子粉体の粒子・気体混合物から、低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、主に単一粒子状態の微粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する手段をいう。一次粒子の集合体である凝集粒子は、見かけの粒子径が一次粒子の粒子径に比べ大きくなることから、例えば乾式分級手段により分離が可能である。高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力を利用した分級手段、慣性力を利用した分級手段、遠心力を利用した分級手段、静電気を利用した分級手段、流動層を利用した分級手段等から一種以上選択された乾式分級手段が挙げられる。
【0071】
この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機、サイクロン、エアセパレータ、ミクロンセパレータ、ミクロプレックス、ムルチプレックス、ジグザグ分級機、アキュカット、コニカルセパレータ、ターボクラシファイア、スーパセパレータ、ディスパージョンセパレータ、エルボジェット、流動層分級機、バーチュアルインパクタ、O-Sepa、ふるい、バイブレーティングスクリーン、シフタ(粉体工学会編:“粉体工学便覧”日刊工業新聞社、P514(1986))等が挙げられる。
【0072】
芯粒子粉体の粒子・気体混合物
芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、(a)芯粒子粉体の粒子が気中に一様に浮遊した均質流れ(一様な浮遊流れ)、(b)芯粒子粉体の粒子が気中のある領域で非一様な分布を示す不均質流れ(非均質浮遊流れ)、(c)芯粒子粉体の粒子の摺動層を伴う流れ(摺動流れ)、又は(d)芯粒子粉体の粒子の静止層を伴う流れをいう。
【0073】
低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、芯粒子粉体の粒子・気体混合物の内、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態以外の状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。
【0074】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、極めて高分散であっても、実際には凝集粒子を含む。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、実際には、凝集していない単粒子を含み、選択分離して低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物と高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物に分けられる。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、凝集粒子の選択分離及び/又は再分散により、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物となる。
【0075】
回収手段
被覆空間で被覆した被覆粒子を取り出す手段を回収手段という。回収手段の内で回収処理の行われる部分を回収部という。被覆空間の被覆開始領域を通過して被覆した被覆粒子は、気中から直接取り出して回収するか、又は気中から取り出して一時的に蓄えてから回収するか、又は、気体と共に回収される。
【0076】
回収手段の回収部としては、隔壁(障害物)を利用した回収手段の回収部、重力を利用した回収手段の回収部、慣性力を利用した回収手段の回収部、遠心力を利用した回収手段の回収部、帯電による引力を利用した回収手段の回収部、熱泳動力を利用した回収手段の回収部、ブラウン拡散を利用した回収手段の回収部、ガスの背圧や減圧等による吸引力を利用した回収手段の回収部等が利用可能である。
この回収手段の回収部の好適な例として、重力集塵機、慣性集塵機、遠心力集塵機、濾過集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機、粒子充填層、サイクロン、バグフィルター、セラミックスフィルター、スクラバー等が挙げられる。
【0077】
次に、本発明で用いる被覆セラミックス粒子を調製する場合に採用される微粒子高分散処理手段群を添付の図面に基づいて説明することにする。
【0078】
微粒子高分散処理手段群の図の説明
図2(a)は被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の一例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素dで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である分散手段Aの処理後、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体に対し、分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成のものである。
【0079】
図2(b)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の第2の例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aへ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素d、最終分散手段と最終選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素eとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0080】
図2(c)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の第3の例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aより前の処理手段へ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の微粒子高分散処理手段群の構成要素d、最終の分散手段と最後の選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0081】
なお、以上のような構成であるから、供給槽、芯粒子生成手段等の粉体の供給源も本微粒子高分散処理手段群の構成に含めてもよい。例えば図2(c)の場合、フィードバック手段Cのフィードバック先を供給槽とする構成も高分散処理手段群の構成として良いことは言うまでもない。又、微粒子高分散処理手段群の分散工程の前に、芯粒子粉体の粒子を解砕及び/又は粉砕する解砕工程を入れても良いことは言うまでもない。
【0082】
上記した微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の具体的な代表例をより詳細にしたブロック図に基づいて更に詳しく説明することにする。
【0083】
構成1
図3(a)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第1の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0084】
構成2
図3(b)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第2の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0085】
構成3
図3(c)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第3の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、分散手段aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックさせるフィードバック手段C、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を最終の分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、から構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0086】
構成4
図3(d)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第4の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0087】
構成5
図3(e)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第5の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0088】
構成6
図3(f)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第6の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を取り除き、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、選択分離された芯粒子粉体の粒子を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックさせるフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0089】
構成7
図3(g)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第7の構成を説明するブロック図であって図2(c)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0090】
このようにして達成された微粒子の高分散状態を維持するために、気中分散維持手段を微粒子高分散処理手段群と被覆室の間に付加することもできる。ここでいう気中分散維持手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子の再凝集を防止して分散度βを維持する手段をいう。又、このようにして達成された芯粒子の高分散状態を促進するために、気中分散促進手段を微粒子高分散処理手段群と被覆室の間に付加することもできる。ここでいう気中分散促進手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子のうち主に再凝集した粒子の再分散を促進し、分散状態の低下を鈍らせたり、一旦低下した分散状態を元の高分散の状態まで回復するように再分散を促す手段をいう。
この気中分散維持手段又は気中分散促進手段の好適な例としては、パイプ振動装置、パイプ加熱装置、プラズマ発生装置、荷電装置等が挙げられる。
【0091】
パイプ振動装置は、発振器を設置したパイプの振動により、気中に分散している粒子に分散機とは言えない振動を与えることで、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0092】
パイプ加熱装置は、加熱したパイプにより搬送気体の外側から熱を加えて搬送気体を膨張させ、分散機とは言えないほどに流速を加速して再凝集を抑制し、再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0093】
プラズマ発生装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中にプラズマを発生させ、そのプラズマイオンと芯粒子との衝突により、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0094】
荷電装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中に、コロナ放電、電子ビーム、放射線等の方法で単極イオンを発生させ、単極イオン雰囲気中を通過させることで粒子を単極に帯電させ、静電気の斥力により再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0095】
このようにして形成された微粒子の高分散状態の芯粒子粉体は粒子の表面を被覆形成物質で被覆するために被覆室に送られる。この被覆室には被覆開始領域を含む被覆空間が設けられている。
【0096】
微粒子高分散処理手段群と被覆室とは直結することが望ましいが、搬送に不可避の中空部材及び/又はパイプを使って接続しても良い。この場合にも、被覆開始領域でのβ≧70%を実現することが不可欠である。
【0097】
微粒子高分散処理手段群と被覆室を別々に置いてその間を連結する場合は、芯粒子粉体をその分散状態のまま被覆室へ導入してやれば良い。そのためには、この間に芯粒子粉体の分散状態を維持するための装置である気中分散維持手段及び/又は分散状態を高めるための装置である気中分散促進手段及び/又は芯粒子粉体の粒子・気体混合物から、低分散芯粒子粉体部分を分離し、主に単一粒子状態の粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を設けることもできる。
【0098】
又、被覆されたセラミックス粒子を調製するに際して、微粒子高分散処理手段群が、(1)被覆室、又は(2)被覆空間、又は(3)被覆開始領域と一部以上空間を共有することもできる。
例えば、微粒子高分散処理手段群中の分散空間と被覆室とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域を有する被覆空間とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域とを、空間的に共有することもできる。
【0099】
ここで被覆開始領域とは、β≧70%の分散状態で搬送された高分散状態の芯粒子粉体に気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体が接触及び/又は衝突し、被覆を開始する領域を指し、次の図4(a)〜(e)で示される態様が考慮される。
すなわち、図4(a)〜(e)において被覆開始領域は2で示される領域である。
【0100】
図4(a)において粉体に対してβ≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1を覆って設ける。
図4(b)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4が全て通る前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
上記の構成により、全ての芯粒子粉体の粒子はβ≧70%の分散状態で被覆が始められる。
図4(c)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4の内、回収部5に入る粒子が必ず通過する前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(d)において回収部5を囲む前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(e)において高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子のみが到達可能な位置に回収部5を設ける。従って、ここでの領域6は重力を利用した選択手段となる。回収部に入る高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子が、必ず通過する前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を図の斜線部のように設ける。
【0101】
β≧70%の分散状態で被覆始めた芯粒子のみ回収でき、被覆開始領域を通っていない芯粒子と被覆開始領域を通過した被覆粒子とは混ざることはない。
【0102】
上記したところから、被覆されたセラミックス粒子を製造するための装置は、微粒子高分散処理手段群と被覆室、又は微粒子高分散処理手段群と被覆室と回収手段から構成されるものであるが、これらの装置の構成要素は、種々の組み合わせ方をすることが可能で、これらの装置の構成例を図面にもとづいて説明するとつぎのとおりである。
【0103】
装置の構成1
図5(a)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第一の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に直結してある。
【0104】
装置の構成2
図5(b)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第二の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、不可避の中空部材2−C2、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に不可避の中空部材2−C2を介して接続してある。
【0105】
装置の構成3
図5(c)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第三の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、気中分散維持手段2−C3、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に気中分散維持手段2−C3を介して接続してある。
【0106】
装置の構成4
図5(d)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第四の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1と空間を共有している。
【0107】
装置の構成5
図5(e)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第五の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1中に設けている。
【0108】
装置の構成6
図5(f)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第六の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1の分散空間中に、被覆室2−B1を設けている。
【0109】
装置の構成7
図5(g)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第七の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−D、再被覆供給手段2−Eから構成されている。回収手段2−Dから被覆後の被覆粒子を高分散処理手段群2−C1に再被覆供給手段2−Eにより搬送して、繰り返して被覆処理が行える。
かかる構成の装置のいずれかにより、被覆セラミックス粒子が製造されるものである。
【0110】
上記のようにしてセラミックス粒子である芯粒子粉体を被覆形成物質で被覆した被覆粒子について、再び被覆形成物質で被覆すること、またはこの再被覆を反復することもできる。この場合、被覆粒子は再被覆供給手段に送られる。ここで、再被覆供給手段とは、再被覆を行うために被覆後の被覆粒子を微粒子高分散処理手段群へ搬送する手段をいう。具体的には、(a)被覆粒子を回収する回収手段、及び(b)回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段を備えた手段である。または、(a)被覆粒子を回収する回収手段、(b)回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段、(c)及び被覆後の被覆粒子を分級する被覆粒子分級手段を備えた手段である。被覆量が多い場合、被覆前の芯粒子粉体の粒子の粒度分布と被覆後の被覆粒子の粒度分布は変わってしまう。そこで、被覆後の被覆粒子の粒度分布を被覆粒子分級手段により調整し、再被覆処理を行えば効果的である。
【0111】
この再被覆処理は、必要によって繰り返すことができ、そして被覆形成物質の被覆量を所望のものに設定することができる。更に、この被覆形成物質の種類を変えてこの被覆処理を繰り返すことができ、このようにして複数成分の物質を被覆形成物質として多重被覆することもできる。
【0112】
本発明で用いる被覆粒子の製造装置は、被覆形成物質が、気相を経る気相法によって、芯粒子粉体の粒子表面に被覆される被覆粒子の製造装置であれば制限はない。例えば、化学蒸着(CVD)装置としては、熱CVD装置、プラズマCVD装置、電磁波を利用したCVD(可視光線CVD、レーザCVD、紫外線CVD、赤外線CVD、遠赤外線CVD)装置、MOCVD装置等、或いは、物理蒸着(PVD)装置としては、真空蒸着装置、イオンスパッタリング装置、イオンプレーティング装置等が適用可能である。より具体的には、例えば、特開平3−75302号公報の超微粒子で表面が被覆された粒子およびその製造方法に記載の被覆粒子製造装置が好適である。
【0113】
以上述べた通り、本発明ではセラミックス粒子である微粒子芯粒子粉体、又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を被覆空間に投入し気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体をこの芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させてこの芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する被覆されたセラミックス粒子が製造されるが、本発明の基本的な工程を要約すると次の通りである。
【0114】
I
(A) 微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0115】
II
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0116】
III
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、被覆工程に直接搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0117】
IV
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成する部材からなる中間部材、及びパイプから選択される1種類又はそれ以上の部材を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0118】
V
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、この分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の1種類又はそれ以上を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0119】
以上、I〜Vの全てにおいて、好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、又は、
体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全てに粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、
又は、前記I及びIIにおいて、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うものである。
【0120】
前記、被覆されたセラミックス粒子は、被覆された粒子の被覆形成物質を介して、接触状態で集合塊を形成する場合がある。この被覆されたセラミックス粒子からなる粉体は、単一粒子状態の被覆された粒子と、この単一粒子状態の被覆された粒子が数個から数十個接触した集合塊、更に多数個の単一粒子状態の被覆された粒子が接触した集合塊から構成され、その形状及び大きさが不均一で不規則になる。この単一粒子状態の被覆された粒子からなる集合塊は、解砕及び/又は破砕してから成形又は焼結処理に供するのが好ましい。この被覆されたセラミックス粒子の集合塊の解砕及び/又は破砕には、種々の解砕手段、例えば、ボールミル、振動ボールミル、乳鉢、ジェットミル等が利用可能である。たま、単一粒子状態の被覆された粒子と、この単一粒子状態の被覆された粒子の集合塊とを選択分離して、単一粒子状態の被覆された粒子のみを成形又は焼結処理に供してもよい。
【0121】
本発明によれば、上記のようにして得られた被覆セラミックス粉体粒子はセラミックス粒子焼結のための慣用の圧力および温度で焼結されてセラミックス基の焼結体とされる。
【0122】
本発明で用いる被覆されたセラミックス粒子は、上記したように気相法によりその表面を被覆するので基本的に被覆形成物質に制限はない。セラミックス基焼結体を、用途に応じて任意に材料設計する上で必要に応じて、被覆を施す前に、セラミックス粒子表面に事前に、同種及び/又は異種の被覆形成物質を同種及び/又は異種の被覆方法により被覆を施してもよい。
【0123】
例えば、セラミックス粒子表面に、目的とする金属の炭化物からなる被覆を形成する場合、事前に炭素で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子を使用すればよい。事前に物質を被覆する方法は、特に制限するものではないが、例えば、特開平2−252660号公報に記載の溶融塩浸漬法を始め、電気メッキ法、無電解メッキ法、クラッド法、物理蒸着法(スパッタリング法、イオンブレーティング法等)や化学蒸着法等が好適である。目的とする金属化合物の金属の種類は、本発明の結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質として適用可能の範囲であれば特に制限されない。
【0124】
セラミックス基焼結体
本発明に係る、セラミックス基焼結体は、被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結することにより製造される。
このセラミックス基焼結体は、被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を、好ましくは、射出成形、型押し、泥漿鋳込み等の選択される一種以上で成形される。必要により、予備焼結を施して仮焼結体とし、これを更に加工した後、本焼結に共することもできる。
【0125】
この成形処理を施した被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物は、従来公知の焼結法により焼結する。具体的には、真空焼結法又は雰囲気焼結法、大気中常圧焼結法又は、ホットプレス法、カプセルHIP法、擬HIP法、カプセル・フリーHIP法、カプセル超高圧HIP法、カプセル・フリー超高圧HIP法、超高圧焼結法等の一種以上で焼結される。
【0126】
一例として、ガラスカプセルを用いたカプセルHIP法について更に詳しく述べる。
先ず、セラミックス粒子表面に被覆形成物質の被覆を施した被覆されたセラミックス粒子を型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填したパイレックスガラス製のカプセルに配置し、脱気後封入する。
このカプセルを、HIP装置に配置し、カプセルが軟化する温度まで昇温し、その後加圧しながら所定の焼結温度まで加熱し、所定時間、圧力、温度を保持して焼結する。しかる後、炉冷し、圧力を開放して、焼結体を取り出す。
【0127】
このようにして、セラミックスの粒子サイズが制御され或は更に結合材及び/又は焼結助剤及び/又は表面改質剤の分布が制御された均一で緻密で、高度に制御された微組織を有する特徴的なセラミックス基焼結体を得る。
焼結温度は使用する個々のセラミックスによって異なり、例えばほうろうの650゜程度の温度からアルミナセラミックスの1700℃またはそれ以上に至る温度が使用される。
【0128】
被覆形成物質による粒界制御で、高めの温度でも粒成長なしに強固に焼結できるので、焼結温度を高めに設定可能である。
或いはまた上記した成形を行うことなく、ホットプレスを用いて焼結と成形を同時に行うこともできる。
【0129】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
【0130】
実施例1
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を炭化チタン(TiC)で被覆した。
使用した装置は、図6及びその部分拡大図である図7に示したものであり、図5(a)に示した構成の具体例である。
【0131】
本例の装置は、プラズマトーチ3−A、プラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室の冷却槽3−B、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室冷却槽3−C、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室の冷却槽3−D、被覆粒子冷却室3−d、被覆形成物質の原料の供給側に、供給装置3−E1、芯粒子粉体の供給側に、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1、細管分散機107及び被覆粒子回収部3−Gより成る。供給装置3−E1は被覆形成物質の原料粉体の供給槽112に、撹拌式分散機3−F1は芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111にそれぞれ結合される。本例における被覆室は、定義ではプラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室3−dから構成されており、ここではこれらを広義の被覆室と称する。広義の被覆室の内、主に被覆処理の行われる室3−cを狭義の被覆室と称する。
【0132】
本例における微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機111、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1及び内径4mmのステンレス製細管分散機107で構成されており、図2(a)に示したものであり、図3(b)に示した構成に属する微粒子高分散処理手段群の具体例である。微粒子高分散処理手段群は、DM=1μmの((DM/5,5DM),≧90%)のセラミックス粒子の芯粒子粉体に対して出力時β≧70%を実現できるように構成されている。微粒子高分散処理手段群の最終処理手段である細管107は被覆室3−cに直結してあり、被覆空間の3−L2の被覆開始領域3−L1においてβ≧70%を実現できるように構成されている。
【0133】
プラズマトーチ3−Aの上部に設けられたガス噴出口101に供給源102からアルゴンガスを20リットル/分の割合で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ3−A内プラズマ室3−aでプラズマ焔を形成する。
【0134】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機112から供給した被覆形成物質の原料である平均粒子径2μmの炭化チタンの粉末は、5リットル/分のキャリアガス103に担持されて、プラズマトーチ3−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口104から、プラズマ焔中に0.5g/分の割合で導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室3−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0135】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111から2.0g/分で供給される平均粒子径1μmの硼化ジルコニウムの芯粒子を、撹拌式分散機3−F1により分散させ、5リットル/分の割合で供給されるキャリアガス105により担持され、10リットル/分の流量の分散ガス106によるエジェクター式分散機3−H1及び細管分散機107により分散度β=82%の分散状態に分散させ、被覆室に導入する。
高分散状態の硼化ジルコニウム粒子は、被覆空間の3−L2の被覆開始領域3−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0136】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室3−dを降下し、被覆粒子回収部3−Gに至る。この被覆粒子からなる製品は、フィルター110により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして、硼化ジルコニウム粒子に体積で20%の炭化チタンが被覆された被覆粒子が得られた。
【0137】
得られた被覆されたセラミックス粒子である、炭化チタン(TiC)で表面を被覆した硼化ジルコニウム(ZrB2)微粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図8に示す通り、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の炭化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0138】
実施例2
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を炭化チタン(TiC)で被覆した。
【0139】
使用した装置は、図9及びその部分拡大図である図10に示したものであり、図5(d)に示した構成の具体例である。本例の被覆形成物質前駆体を生成する装置の構成は実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機214、撹拌式分散機5−F1、細管分散機211及び衝突板を利用した分散機5−H2で構成されており、図2(a)に示したものであり、図3(b)に示した構成に属する微粒子高分散処理手段群の具体例である。細管分散機211は、内径4mmのステンレス製である。微粒子高分散処理手段群αの最終分散手段である衝突板を利用した分散機5−H2は、SiC製の衝突板213がステンレス製のホルダー212により設置された構成である。衝突板を利用した分散機5−H2は狭義の被覆室5−cの中に設けられており、微粒子高分散処理手段群αと狭義の被覆室5−cは共有の空間を有している。また、被覆空間5−L1及び被覆空間の被覆開始領域5−L2は、狭義の被覆室5−c内に設けてある。本装置の微粒子高分散処理手段群は、平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DMM5,5DMM〕,≧90%)の芯粒子粉体の粒子を、最終の分散処理である衝突板を利用した分散機5−H2の衝突板213を衝突直後、分散度β≧70%に分散できる。したがって、分散度β≧70%の状態で被覆が開始される。
【0140】
プラズマトーチ5−Aの上部に設けられたガス噴出口201に供給源202から20リットル/分のアルゴンガスを供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ5−A内プラズマ室5−aでプラズマ焔を形成する。
【0141】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機215から0.3g/分で供給した被覆形成物質の原料である平均粒子径2μmの炭化チタンの粉末は、5リットル/分のキャリアガス203に担持されて、プラズマトーチ5−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口204から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室5−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0142】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機214から2.0g/分で供給される硼化ジルコニウムの芯粒子は、撹拌式分散機5−F1により分散せしめ、20リットル/分の割合で供給されるキャリアガス205により担持され、細管分散機211を経て、被覆室中に設けた衝突板を利用した分散機5−H2によって、分散度β=82%に気中に分散させる。
高分散状態の硼化ジルコニウムの芯粒子は、被覆空間5−L2の被覆開始領域5−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0143】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室5−dを降下し、被覆粒子回収部5−Gに至る。被覆されたセラミックス粒子からなる製品は、フィルター210により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子に体積で15%の炭化チタン(TiC)が被覆された被覆粒子が得られた。
【0144】
得られた被覆粒子である、炭化チタンで表面を被覆した硼化ジルコニウム微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の炭化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0145】
実施例3
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を硼化チタン(TiB2)で被覆した。
【0146】
使用した装置は、図11及びその部分拡大図である図12に示したものであり、図5(b)に示した構成の具体例である。本例の被覆形成物質前駆体を生成する装置の構成は実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機313、分散手段である撹拌式分散機6−F1、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段であるサイクロン6−Iで構成されており、図2(b)に示したものであり、図3(d)に示した構成の具体例である。サイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の放出部は、搬送に不可避のパイプ307で狭義の被覆室6−cへ接続してあり、低分散芯粒子粉体部分の放出部は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを介して搬送管310で撹拌式分散機6−F1へ接続してある。本装置の微粒子高分散処理手段群によれば、体積基準の粒度分布として、平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の芯粒子粉体の粒子を、最終の処理手段であるサイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体流の放出部で、分散度β≧75%に分散できる。狭義の被覆室6−cに図11及び図12のごとく被覆空間6−L2及び被覆空間の被覆開始領域6−L1が設けてある。6−Cと6−Dを結合するフランジ部の制約による搬送に不可避のパイプ307による分散度βの低下は少なくとどめられる。したがって、被覆開始領域において、分散度β≧70%で被覆が開始される。
【0147】
プラズマトーチ6−Aの上部に設けられたガス噴出口301に供給源302からアルゴンガスを20リットル/分で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ6−A内プラズマ室6−aでプラズマ焔を形成する。
【0148】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機314から0.4g/分で供給した被覆形成物質の原料である硼化チタン粉末は、5リットル/分のキャリアガス303に担持されて、プラズマトーチ6−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口304から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室6−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0149】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機313から2.0g/分で供給される硼化ジルコニウムの芯粒子は、撹拌式分散機6−F1により分散させ、15リットル/分のキャリアガス305により担持されパイプ306を介してサイクロン6−Iに搬送される。サイクロン6−Iは、微粉側の最大粒子径が1.5μmとなるように調節されており、主に単一粒子からなるβ=85%の分散状態の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を、搬送に不可避のパイプ307を介し放出口308から狭義の被覆室6−cに放出させる。一方、サイクロン6−Iにより選択分離した低分散芯粒子粉体部分は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを経て、10リットル/分のキャリアガス309によりパイプ310中を搬送され、撹拌式分散機6−F1へフィードバックする。
高分散状態の硼化ジルコニウムの芯粒子は、被覆空間6−L2の被覆開始領域6−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0150】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室6−dを降下し、被覆粒子回収部6−Gに至る。被覆されたセラミックス粒子からなる製品は、フィルター312により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして、硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子に体積で20%の硼化チタン(TiB2)で被覆を施された被覆されたセラミックス粒子が得られた。
【0151】
得られた被覆されたセラミックス粒子である、硼化チタンで表面を被覆した硼化ジルコニウム微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の硼化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0152】
実施例4
実施例1で得られた粒子表面を炭化チタン(TiC)で被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を用いて焼結体を製造した。
すなわち、この被覆された硼化ジルコニウム粒子を、直径16mm、厚さ6mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填した黒鉛製の型を装備するホットプレス(HP)装置に配置し、10-3torrで200℃まで脱気後、アルゴンガスを流しながら、焼結温度1800℃、焼結圧力20MPaで3時間保持して焼結した。しかる後、炉冷し、圧力を開放して、焼結体を取り出した。
焼結体は、測定誤差内で密度が100%で大変緻密であり、しかもビッカース微小硬度は、Hv(0.5/10)約2400と大変高硬度であった。
【0153】
このようにして得られた焼結体の研磨面に観察のための通常の金蒸着を施した研磨面の電子顕微鏡写真(×5000)を図13に示す。図13から焼結体には未焼結部や気孔、欠陥等は全くなく、ZrB2粒子及びTiCが認められる微細で高度に制御された微組織からなることが分かる。
【0154】
比較のために実施例1で用いた硼化ジルコニウム粒子で炭化チタン未被覆のものと、相当する量の炭化チタン微粒子とを用いて実施例4と同一の焼結条件で焼結を行った。このようにして得られた焼結体の研磨面に同様の金蒸着を施し、電子顕微鏡でその表面を観察したところ、図14を得た。
この図から同一の焼結条件にもかかわらず粒子は粒成長して粗大となり、しかも気孔が多数認められ、微組織が全く制御されてないことが分かる。
【0155】
実施例5
実施例2で得られた、体積で15%の炭化チタンで被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム粒子をガラスカプセル法で脱気封入化し、これをHIP装置を用いて焼結して焼結体を製造した。
すなわち、この被覆硼化ジルコニウム粒子を、直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体をパイレックスガラス製のカプセルに配置し、10-6torr、400℃で12時間脱気後にカプセルを溶封した。このカプセルをアルゴンガスを圧力媒体とするHIP装置に配置し、焼結温度1800℃、焼結圧力200MPaで3時間保持して焼結した。その後、冷却、圧力開放ののち、焼結体を取り出した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2300と大変高硬度であった。
第4実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0156】
実施例6
実施例3で得られた、体積で20%の硼化チタンで被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム粒子を、焼結温度を2000℃とする以外は実施例4で行った操作と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2800と大変高硬度であった。
本焼結体は、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく、また硼化チタンが硼化ジルコニウム粒子の周りに均一に分布し、硼化ジルコニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0157】
実施例7
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム粒子を実施例3の操作でその表面を硼化チタンで被覆し、ZrB2:TiB2=90:10(vol%)の硼化チタンで被覆された硼化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆硼化ジルコニウム粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、パイレックスガラス製のカプセルに配置し、10-6torr、400℃で12時間脱気後にカプセルを溶封した。このカプセルをアルゴンガスを圧力媒体とするHIP装置に配置し、焼結温度1950℃、焼結圧力200MPaで3時間保持して焼結した。その後、冷却、圧力開放ののち、焼結体を取り出した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2700と大変高硬度であった。
本焼結体は実施例6と同様で、未焼結部、、気孔、欠陥が全くなく、また硼化ジルコニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0158】
実施例8
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、ZrC:TiC=80:20(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆炭化ジルコニウム粒子を実施例4で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2200であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また炭化ジルコニウム粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0159】
実施例9
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、ZrC:TiC=85:15(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆炭化ジルコニウム粒子を実施例5で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2100であった。
本実施例の焼結体においても、実施例8と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0160】
実施例10
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を窒化チタンで被覆し、ZrN:TiN=75:25(vol%)の窒化チタンで被覆された窒化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆された窒化ジルコニウム粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填した黒鉛製の型を装備したホットプレス(HP)装置に配置し、10-3torrで200℃に加熱して脱気後窒素ガスを流しながら焼結温度1700℃、焼結圧力20MPaで3時間保持して焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約1900であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化ジルコニウム粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0161】
実施例11
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化ジルコニウム粒子を実施例2の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、ZrN:AlN=75:25(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆された窒化ジルコニウム粒子を実施例10と同様に、但し焼結温度を1700℃で焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約1700であった。
本実施例の焼結体においても、実施例10と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0162】
実施例12
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化タングステン粒子を実施例1の操作で炭化チタンおよびコバルトでその表面を被覆し、WC:TiC:Co=86:5:9(vol%)の炭化チタンおよびコバルトで被覆された炭化タングステン粒子を得た。
この被覆された炭化タングステン粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体をホットプレス装置に配置し、10-3torrで200℃に加熱して脱気し、真空中で焼結温度1500℃、焼結圧力20MPaで2時間保持した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約1500であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また炭化チタンが炭化タングステン粒子の周りに均一に分布し、炭化タングステン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0163】
実施例13
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化チタン粒子を実施例3の操作でその表面を窒化チタンで被覆し、TiB2:TiN=80:20(vol%)の窒化チタンで被覆された硼化チタン粒子を得た。
この被覆された硼化チタン粒子を実施例4で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3100であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等か全くなく、また窒化チタンが硼化チタン粒子の周りに均一に分布し、硼化チタン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0164】
実施例14
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化チタン粒子を実施例1の操作でその表面をチタン金属で被覆し、TiB2:TiN換算で80:20(vol%)に相当する量のチタンで被覆された硼化チタン粒子を得た。
この被覆された硼化チタン粒子を焼結温度が1600℃であることを除いては実施例10の焼結条件と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3300であった。
本実施例の焼結体においても、実施例13と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0165】
実施例15
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、TiN:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子を焼結温度を1800℃とする以外は実施例10で行った操作と同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約1800であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化チタン粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0166】
実施例16
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、TiN:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子をHIP装置を用い焼結温度1800℃、焼結圧力200MPaで3時間保持し、焼結体を得た。密度100%、Hv(0.5/10)約1800であった。
第15実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0167】
実施例17
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を酸化アルミニウムで被覆し、TiN:Al2O3=80:20(vol%)の酸化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子を焼結温度を1600℃とする以外は実施例5で行った操作と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2300であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また酸化アルミニウムが窒化チタン粒子の周りに均一に分布し、窒化チタン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0168】
実施例18
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化けい素を実施例1の操作でその表面をチタン金属及び炭素で被覆し、SiC:TiC換算で80:20(vol%)に相当する量のチタン金属・炭素で被覆された炭化けい素粒子を得た。
この被覆された炭化けい素粒子を実施例4で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2900であった。第17実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0169】
実施例19
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化けい素を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、SiC:TiC=80:20(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化けい素粒子を得た。
この被覆された炭化けい素粒子を実施例5で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3000であった。
本焼結体は、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく、また炭化チタンが炭化けい素粒子の周りに均一に分布し、炭化けい素粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0170】
実施例20
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化けい素粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、SiN4:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化けい素粒子を得た。
この被覆された窒化けい素粒子を実施例11で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2200であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化けい素粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0171】
実施例21
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の酸化アルミニウム粒子を実施例1の操作でその表面を酸化マグネシウムで被覆し、Al2O:MgO=97:3(vol%)の酸化マグネシウムで被覆された酸化アルミニウム粒子を得た。
この被覆された酸化アルミニウム粒子を1600℃の焼結温度、20MPaの圧力で3時間大気中でHP焼結に付し、焼結体を得た。密度100%、Hv(0.5/10)約2300であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥が全くなく、また酸化アルミニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0172】
【発明の効果】
本発明によれば、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下のセラミックス微粒子からなる芯粒子粉体を気中に分散させ、この分散した芯粒子粉体の粒子を分散度βが70%以上である分散状態で被覆形成物質前駆体と接触又は衝突させることによって、単一粒子状態でその表面を被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が得られる。この被覆セラミックス粒子を焼結することにより、均一で、緻密で、且つ強固に焼結された、高度に制御された微組織を有する高性能なセラミックス基焼結体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉体粒子の分布図であり、(a)は分散度βを表わし、(b)は粒径D1〜D2の範囲の粒子が体積で90%を占める粉体の粒径対体積基準頻度を表わす。
【図2】 (a)〜(c)は微粒子高分散処理手段群の基本構成を示すブロック図。
【図3】 (a)〜(g)は微粒子高分散処理手段群の構成をより詳細に説明するブロック図。
【図4】 (a)〜(e)は芯粒子粉体に被覆が開始される態様を示す図。
【図5】 (a)〜(g)は被覆されたセラミックス粒子を製造するための装置の構成を説明するブロック図。
【図6】実施例1で用いる装置を示す図。
【図7】実施例1で用いる装置の部分拡大図。
【図8】実施例1で得られた被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図9】実施例2で用いる装置を示す図。
【図10】実施例2で用いる装置の部分拡大図。
【図11】実施例3で用いる装置を示す図。
【図12】実施例3で用いる装置の部分拡大図。
【図13】実施例4で得られた焼結体の研摩面の走査電子顕微鏡写真。
【図14】比較例の焼結体の研摩面の走査電子顕微鏡写真。
【産業上の利用分野】
本発明は、セラミックス微粒子表面に被覆形成物質を被覆した被覆されたセラミックス粒子、この被覆されたセラミックス粒子又はこの被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結するセラミックス基焼結体の製造法、及びこの方法で得られるセラミックス基焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス基焼結体の高性能化には、このセラミックス基焼結体の微組織を高度に複合化した上で、その組織の微細化及び均質化といった微組織のミクロな領域での制御が必要である。そのためには原料粉体の段階でのその目的に合致する原料粉体の調製が不可欠である。
【0003】
従来、この原料の調製は、ボールミル法や振動ミル法を始めとする粉体混合法により行われてきた。しかし、粉体混合法は、混合時の不純物の混入が避けられないのみならず、原理的に組織の均一化に限度があり、焼結助剤を始めとする種々の添加物質の粉体粒子が微細であっても理想的な均一な混合、即ちセラミックス粒子に添加物質の粉体粒子がむらなく行き渡る均一な分散は極めて困難である。仮にこの均一な分散が表現されたとしても、添加物質の粉体粒子が粒子単位で混合されるために、粒子個々のレベルでは均一の意味にも限界がある。特に相対的にその量が少ない場合、分布むらが必然的に出来る。
【0004】
現実には、多くの場合、セラミックス粉体粒子や添加物質の粉体粒子は凝集してセラミックス基焼結体中に塊状に存在したり、或いは焼結体中で偏在してセラミックス基材料の性能を著しく低下させる。
【0005】
従って、均質化を実現するためには、セラミックス粉体粒子一個一個に確実に目的のセラミックス基材料とする前記添加物質を分布させる必要があり、そのために、セラミックス粉体粒子一個一個に添加物質を被覆法により均一に被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の製造、及びこの被覆されたセラミックス粒子を焼結することによる高性能セラミックス基焼結体の製造が強く望まれている。
【0006】
被覆法としては気相法、湿式メッキ法など種々の方法があるが、中でも気相法は、原理的に、(1)雰囲気の制御が容易である、(2)基本的に目的のセラミックス基焼結体とする前記添加物質を被覆形成物質とする被覆形成物質の選択に制限がなく、活性金属を始めとする金属単体物質、窒化物、炭化物、硼化物、酸化物など、いろいろな種類の物質を被覆できる、(3)目的とする被覆形成物質を、不純物を混入することなく被覆できる、(4)被覆量を任意に制御できるなど、他の被覆法では成し得ない大きな利点がある。
【0007】
しかし気相法では、セラミックス粉体粒子が、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子でなる個々のセラミックス粒子への被覆は、以下の理由により不可能であった。
【0008】
即ち、微粒子のセラミックス粒子である、芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、セラミックス粒子同士の付着力が強いため凝集性が高く、殆どの単一粒子が凝集体を形成する。そしてこの凝集体は、その凝集力を上回る特別な作用を加えないと崩し壊すことができないために、凝集体をそのままで被覆形成物質で被覆しても、一個一個の粒子表面への前記被覆形成物質での被覆は不可能で、結局その表面が被覆形成物質で被覆された被覆凝集体が生成することになる。
【0009】
これにより凝集体を形成する個々の粒子は、凝集体表面に位置する粒子では粒子表面は被覆量は多いものの被覆むらが生じたり、凝集体内部に位置する粒子では全く被覆されないという問題があった。
【0010】
上記の問題を解決しようとして、被覆されるべきセラミックス粒子が微粒子である場合のこの被覆されるべき芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の個々の表面に被覆する目的で粒子を分散させて被覆するという試みは既になされていた。
【0011】
例えば、特開昭58−31076号公報に開示されている装置・方法によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を電磁気的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子を転動させながらPVD法により被覆する。又、特開昭61−30663号公報に開示されている装置によれば、PVD装置内に設置された容器の中に芯粒子粉体の粒子を入れ、容器を機械的な方法により振動させ、前記容器内の芯粒子を転動させながらPVD法により被覆することができるとされている。しかし、これらの容器の振動により芯粒子粉体の粒子を転動させながら被覆する装置或いは方法では、実際には、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子の凝集体を崩すに要するその凝集力を上回る作用を加えることができないため、凝集体を崩せずに、むしろ造粒作用が働き、容器内に導入する前以上に、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0012】
特開平3−153864号公報に開示されている装置及び方法は、内面に障壁及び/又は凹凸を備えた回転容器内に粒子を入れ、回転容器を回転させながら蒸着法により芯粒子表面に被覆を行うことを目的とするものであるが、このような装置或いは方法においては、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子の凝集体を崩すのに要する凝集力を上回る作用を加えることができないため、凝集体を壊すことができないばかりか、より多く、或いはより大きな凝集体を形成するだけであった。
【0013】
特開昭58−141375号公報には、反応ガス雰囲気中に置かれた粉体を反応ガスの流れと重力の作用とによって浮遊させて、反応ガスの化学反応により生成される析出物質によって粉体の表面を被覆する装置が開示されている。又、特開平2−43377号公報には、微粒子を減圧下において流動化させながら、熱化学反応処理を行い被覆を行う方法が開示されている。これらの気流による流動層を利用する装置或いは方法では、微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなるセラミックスの芯粒子粉体の粒子一個一個を流動化させることが事実上不可能で、このセラミックス粒子の凝集体を崩せなかった。
【0014】
特開昭54−153789号公報には、金属の蒸気を発生させた真空容器内を粉末材料を落下させ金属を被覆する装置が開示されている。又、特開昭60−47004号公報には真空槽中の高周波プラズマ領域にモノマーガスと粉体粒子を導入し、プラズマ重合により有機物の被覆膜を形成させる方法が開示されている。これらの装置或いは方法の如く、単に導入するだけでは微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子凝集体を壊せなかった。
【0015】
特開昭64−80437号公報には、低・高周波合成音波により芯粒子粉体の凝集体を崩して流動化させ被覆する方法が開示されている。しかし、流動層に振動を与える方法では、微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であるセラミックス粒子凝集体を崩せなかった。
【0016】
特開昭62−250172号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室に滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室に自然落下で導入し、ターゲットを垂直に設けた円筒状のスパッタリング室に自然落下させて被覆する装置及び方法が開示されている。又特開平2−153068号公報には、前処理として、ジェットミル処理した粉体を、減圧加熱処理室で滞留させ、ここで加熱処理を施した後、粉体フィーダーでスパッタリング室のスパッタリング源を納めた回転容器に単一粒子でない粉体状で導入し、容器を回転さた状態でスパッタリングする装置及び方法が開示されている。これらの装置及び方法では、ジェットミル処理によりその時だけ粉体は一時的に分散されるが、被覆前の加熱工程で、この粉体を滞留させる構造であり、そのような方法のため、仮にジェットミル処理で一時的に一次粒子状態に分散しても加熱工程でのこの粉体の滞留のため再凝集し、結局、被覆工程に導入される時には凝集したままである。
【0017】
以上のように、これまでのものでは、いずれも微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子に被覆する装置或いは方法としての問題解決はなされておらず、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、現実には凝集体を形成していてこれを崩すことができず、そのために単一粒子状態に分散した状態で微粒子のセラミックス粒子の表面を被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の製造方法及び装置は知られていなかった。そのため、セラミックス粒子一個一個に結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として、気相被覆法により均一に被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が作製できず、前記高性能なセラミックス基焼結体も製造できなかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
従って、現実に、被覆されるべきセラミックス粒子であって、例えば10μm以下の平均粒子径の粒子である微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として被覆を施した被覆されたセラミックス粒子の提供と、この被覆されたセラミックス粒子による高性能なセラミックス基焼結体及びその製造方法が強く求められている。
【0019】
本発明は、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子へ単一粒子単位に、結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質を被覆形成物質として被覆を施された被覆セラミックス粒子、及びこの被覆されたセラミックス粒子による、組織が微細でかつ均質であり、そして高性能なセラミックス基焼結体及びその製造法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、微粒子のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子のセラミックス粒子からなる芯粒子粉体の粒子の単一粒子単位に、目的のセラミックス基焼結体製造のための添加物質を被覆形成物質として被覆させるためには、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下のセラミックス粒子である芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子に、分散度βが70%以上である高い分散状態の被覆空間の被覆開始領域で、被覆を開始しなければならないことを見い出した。
【0021】
すなわち、本発明の被覆されたセラミックス粒子は、セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体を被覆空間に投入し、気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆して得られる被覆されたセラミックス粒子であって、
(A) 微粒子高分散処理手段群の最終処理手段が、
(a) この芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、および
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により選択分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
から選ばれる微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
からなる被覆手段によって調製された被覆セラミックス粒子に関する。
【0022】
更に本発明は、前記被覆されたセラミックス粒子が、被覆されたセラミックス粒子の被覆形成物質を介して接触状態で集合塊を形成した被覆されたセラミックス粒子の集合塊を、解砕及び/又は破砕する被覆されたセラミックス粒子集合塊の解砕・破砕工程、及び/又は
被覆されたセラミックス粒子集合塊と一次粒子単位の被覆されたセラミックス粒子とを選択分離する選択分離工程
を更に経て調製されたものであることを特徴とする、被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0023】
更に本発明は、前記セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないものである被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0024】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程を設け、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を被覆工程に直接放出するか、又は分散工程と被覆工程の間に、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する放出部から、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成せしめる部材からなる中間部材、及びパイプから選択される1種類またはそれ以上の部材を介して搬送するか、及び/又は、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、前記分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物の内の、低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の1種又はそれ以上を介して搬送して調製されたものであることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0025】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群による分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うことにより調製されたものであることを特徴とする、被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0026】
更に本発明は、被覆されたセラミックス粒子が、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子のすべての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめるか、又は体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置せしめることにより調製されたものであることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0027】
更に本発明は、使用する、芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)であることを特徴とする被覆セラミックス粒子にも関するものである。
【0028】
そして本発明は、上記した被覆されたセラミックス又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結することを特徴とするセラミックス基焼結体の製造法にも関する。
【0029】
そして本発明はまた上記したセラミックス基焼結体の製造法により製造したセラミックス基焼結体にも関する。
【0030】
而して、本発明によれば、セラミックスの微粒子からなる芯粒子粉体の粒子又は主に同微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であって、その表面が被覆形成物質で被覆されたものを、焼結してセラミックス基焼結体を製造するに際して、上記した表面が被覆形成物質で被覆されたセラミックス粒子として、気相法により気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段により気中に分散させた平均粒子径10μm以下の微粒子からなる高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とを、被覆空間の被覆開始領域で、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の分散度がβ≧70%である分散状態で合流させ、接触及び/又は衝突させてセラミックス粒子の表面を被覆形成物質で被覆したものを用いることにより、これまでに得られなかった組織が微細で均質でありそして高性能なセラミックス基焼結体を得ることができた。そして、上記した被覆芯粒子の調製に際して、被覆形成物質前駆体は、原子、分子、イオン、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン等からなる気相状態の、或は気相を経て生成したばかりのもので、高分散状態のセラミックス粒子と接触及び/又は衝突を始めることにより、一次粒子状態の個々の芯粒子の表面に被覆形成物質は強固に結合し、その結果、芯粒子の表面を被覆形成物質により単一粒子単位で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が製造できるのである。
【0031】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書中に使用する用語をはじめに定義することにし、そして必要によってその用語の具体的内容を説明し、次いで被覆形成物質で被覆されたセラミックス粒子の調製がどのような技術的手段によって行なわれるものであるのかの説明を行うことにする。
【0032】
被覆されたセラミックス粒子
被覆されたセラミックス粒子とは、被覆が施された下記するセラミックス粒子をいう。例えば、具体的には、被覆形成物質が、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上の形態で芯粒子としてのセラミックス粒子に被覆された粒子をいう。
【0033】
セラミックス粒子用原料粉体粒子
本発明に係る、セラミックス粉体粒子が微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子でなるセラミックス粒子の表面に、被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子用のセラミックス粒子の原料粉体粒子には、セラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子が選択される。
このセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子とは、ダイヤモンド粒子及び高圧型窒化硼素粒子を除くセラミックス粒子のことである。この理由は以下の通りである。
【0034】
ダイヤモンド、及び高圧型窒化硼素は、何れも高圧安定相で超高硬度物質である。これらは、常圧下では何れも準安定に存在し、高温下では、それぞれ極めて軟質のグラファイト、及びグラファイト型相に相転移する。しかも何れも超難焼結性である。従って、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素の優れた特性を生かした焼結体を作製するためには、これらが熱力学的に安定な超高圧力を印加しなければならない等、これらの焼結は特別厳しい。
このことに比べ、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素を除くセラミックスは、例えば、上記の如く相転移によって突出した優れた特性を著しく失うということはなく、しかも、ダイヤモンドや高圧型窒化硼素以上に難焼結性のものはないので焼結が特別厳しいということはない。
【0035】
従って、このセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないセラミックス粒子とは、ダイヤモンド粒子及び高圧型窒化硼素粒子を除くセラミックス粒子を言う。
このセラミックス粒子は、被覆形成物質と反応及び/又は固溶等をしないセラミックス粒子を始め、一種類以上の被覆形成物質と反応及び/又は固溶して目的とする無機化合物、合金、金属間化合物等の一種類以上を生成するセラミックスが選択できる。
【0036】
気相被覆法
気相被覆法とは、被覆形成物質の原料が、分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気、エアロゾルの一種以上からなる気相状態を少なくとも一度は経て被覆する方法、又は気相状態の被覆形成物質の原料により被覆する方法をいう。
【0037】
芯粒子
芯粒子とは、被覆を施す対象物となるセラミックス粒子をいう。これはまた、母材粒子、種粒子或は被覆される粒子ともいう。
この芯粒子を構成する物質は、周期律表第1a、2a、3a、4a、5a、6a、7a、1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8族の金属、半導体、半金属、希土類金属、非金属の元素の一種類または二種類以上を構成成分とする無機化合物からなるもので、その具体例にはTiC、ZrC、HfC、WC、SiC、B4C、TaC、NbC、Si3N4、TiN、ZrN、AlN、HfN、TaN、TiB、TiB2、ZrB2、HfB、HfB2、BP、Al2O3、Al2SiO5(ムライト)、ZrO2(Y2O3、MgO又はCaO安定剤を添加したジルコニア:PSZ又は正方晶ジルコニア多結晶体:TZP)、MgAl2O4(スピ ネル)、グラファイト、無定形炭素、アモルファス炭素などが挙げられる。
そしてこれらのセラミックス粒子を構成する物質のビッカース硬度は40000を越えないものとする。
【0038】
芯粒子粉体
芯粒子粉体とは、芯粒子からなる粉体をいう。芯粒子粉体の粒子とは、芯粒子粉体を構成する粒子をいう。本発明において被覆に供する微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子は、平均粒子径が体積基準頻度分布で10μm以下である。
好ましくは、平均粒子径をDMとしたとき、DMが10μm以下で、粒度分布が体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)のものである。このような比較的分布の幅の狭い粉体では、平均粒子径で粉体の分散特性又は凝集特性が特徴付けられ、DMの値に適した条件で微粒子高分散処理手段群を作動させれば分散できる。
【0039】
平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、幅広い分布又は互いに離れた複数のピークを持つ分布の粉体では、好適には適当な選択分離処理、例えば分級処理を行ってそれぞれ分級された粉体ごとに、被覆処理を施す。これにより、それぞれ分級された粉体ごとに上記条件の下で、被覆空間の被覆開始領域で分散度βが70%以上の状態で被覆が開始され、芯粒子粉体の粒子一つ一つの粒子に被覆が可能となる。
【0040】
被覆形成物質
被覆形成物質とは、被覆を施す対象物に被覆を形成する物質をいう。例えば、具体的には、超微粒子状、島状、連続質状、一様な膜状、突起物状等の内の一種以上からなる形態で芯粒子粉体の粒子に被覆を形成する物質をいう。
特に、被覆形成物質の形態が超微粒子状の場合、当該超微粒子の粒子径は、例えば0.005μm〜0.5μmの範囲のものをいう。
【0041】
この被覆形成物質は、被覆形成物質自体がそのままで被覆を形成するか、又は被覆形成物質と芯粒子のセラミックスとが反応して及び/又はセラミックス粒子に固溶して及び/又は二種類以上の被覆形成物質同志が反応して及び/又は固溶して被覆を形成するための目的とする無機化合物、合金、金属間化合物等の一種類又はそれ以上を生成し、被覆されたセラミックス粒子の焼結を促進する焼結助剤及び/又は結合材となる単体物質及び/又は化合物及び/又はセラミックス粒子の表面改質剤となる単体物質及び/又は化合物から選択される。セラミックス粒子の粒界を制御させる表面改質剤を被覆形成物質としても選択可能である。必要に応じて、例えばセラミックス粒子と焼結助剤及び/又は結合材との化学結合性を高めたり、又は個々のセラミックス粒子を任意の物質から隔離させ、これにより、セラミックス粒子と任意の物質との反応を抑止させることができる。
何れも、焼結助剤及び/又は結合材としての被覆形成物質の選択の幅が飛躍的に大きく広がり好適である。
【0042】
これらの被覆形成物質は、周期律表1a、2a、3a、4a、5a、6a、7a、1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8族の金属、半導体、半金属、希土類金属、非金属、及びその酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、炭窒化物、酸炭窒化物、硼化物、珪化物の一種類又はそれ以上、例えばAl、B、Si、Fe、Ni、Co、Ti、Nb、V、Zr、Hf、Ta、W、Re、Cr、Cu、Mo、Y、La、TiAl、Ti3Al、TiAl3、TiNi、NiAl、Ni3Al、SiC、TiC、ZrC、B4C、WC、W2C、HfC、VC、TaC、Ta2C、NbC、Mo2C、Cr3C2、Si3N4、TiN、ZrN、Si2N2O、AlN、HfN、VxN(x=1〜3)、NbN、TaN、Ta2N、TiB、TiB2、ZrB2、VB、V3B2、VB2、NbB、NbB2、TaB、TaB2、MoB、MoB2、MoB4、Mo2B、WB、W2B、W2B5、LaB6、B13P2、MoSi2、BP、Al2O3、ZrO2、MgAl2O4(スピネル)、Al2SiO5(ムライト)の一種類又はそれ以上を含むことができる。
【0043】
この被覆されたセラミックス粒子表面を被覆する被覆形成物質の被覆による添加量は、何れの焼結法を選択しても特に制限はなく、微量から多量までの任意の量を選択できる。
【0044】
被覆空間に投入の定義
被覆空間に投入とは、例えば、自由落下等の落下によって芯粒子粉体を被覆空間に導入することをいう。搬送ガスにより投入する場合には、芯粒子粉体を芯粒子粉体の粒子・気体混合物の流れの方向に乗せて導入したり、気体に乗せて流れの方向へ、或いは気体に乗り方向が変えられて導入することをいう。または、搬送ガスの作用を受けて導入することをもいう。例えば、搬送ガスの波動現象、具体的には非線系波動によって導入することをもいう。或いは、ガス中の音波、超音波、磁場、電子線等によって被覆空間に導入することをもいう。また、外場、例えば電場、磁場、電子線等により導入することをもいう。具体的には、電場、磁場、電子線等により粉体粒子を帯電させ、または帯磁させ引力又は斥力により被覆空間に導入することをもいう。また、ガスの背圧や減圧によって吸い込まれ、導入することも含む。
【0045】
被覆空間
被覆空間とは、被覆形成物質の原料から気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体と芯粒子粉体の粒子が接触及び/又は衝突する空間をいう。あるいは、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する空間領域をいう。
【0046】
被覆室
被覆室とは、被覆空間を一部以上有する室をいう。より具体的には、被覆室とは、被覆空間を含む仕切られた、又は略仕切られた(略閉じた、半閉じた)室であって、被覆空間を一部以上含む室である。
【0047】
気中
気中とは、真空又は気相状態の空間内をいう。ここで、本発明において、気相状態とは、分子流、イオン流、プラズマ、ガス、蒸気などの状態をいう。真空とは、技術的には、減圧状態をさす。どんな減圧下でも、厳密にはガス、分子、原子、イオン等が含まれる。
【0048】
被覆形成物質前駆体
被覆形成物質前駆体とは、被覆形成物質の前駆体である。より詳しくは、気相状態の被覆形成物質の原料がそのまま、又は被覆形成物質の原料から気相を経て形成及び/又は合成され、被覆を施す対象物となる粒子である芯粒子に被覆を形成する直前までの物質をいう。被覆形成物質前駆体は、被覆形成物質の原料から、気相を経て形成及び/又は合成する限り、状態の制限はない。被覆形成物質の原料が気相の場合、この原料が被覆形成物質前駆体にもなりうる。被覆形成物質前駆体そのものが気相であってもよい。また、被覆形成物質前駆体が反応性物質の場合は、反応前でも良く、反応中でもよく、反応後でもよい。被覆形成物質前駆体の具体例としては、イオン、原子、分子、クラスター、原子クラスター、分子クラスター、クラスターイオン、超微粒子、ガス、蒸気、エアロゾル等が挙げられる。
【0049】
被覆形成物質の原料
被覆形成物質の原料とは、気相を経て被覆を形成する物質となる原料物質をいう。被覆形成物質の原料の形態の具体例として、塊状の固体、粉体粒子、気体、液体等が挙げられる。
【0050】
分散度β
分散度βとは、粉体分散装置の分散性能を評価する指数として増田、後藤氏らが提案(化学工学、第22回、秋季大会研究発表講演要旨集、P349(1989)参照)したように、全粒子の重量に対する、見かけの一次粒子状態の粒子の重量の割合と定義する。ここで、見かけの一次粒子状態の粒子とは、任意の分散状態の粉体粒子の質量基準の頻度分布fm2と完全分散されている粉体粒子の質量基準の頻度分布fm1のオーバーラップしている部分の割合を示し、次の式のβで表される。
【0051】
【数1】
上式において、粒子径の単位(μm)は規定されるものではない。
【0052】
上式は質量基準で表した粒度分布を基準にして分散度を評価しているが、本来分散度は体積基準で表した粒度分布を基にして評価されるべきものである。しかし粉体粒子密度が同じである場合には質量基準で表した粒度分布と体積基準で表した粒度分布は同じになる。そこで実用上測定が容易な質量基準の粒度分布を測定し、それを体積基準の粒度分布として用いている。従って本来の分散度βは次の式及び図1(a)の斜線部分の面積で表される。
【0053】
【数2】
上式において、粒子径の単位(μm)は規定されるものではない。
そして芯粒子粉体の分布及び平均粒子径は、特に断らない限り基本的には体積基準を用いることとする。
【0054】
体積基準頻度分布
体積基準頻度分布とは、粒子径の分布をある粒子径に含まれる体積割合をもって表したものをいう。
【0055】
(〔D1,D2〕,≧90%)の定義
(〔D1,D2〕,≧90%)分布とは、D1、D2を粒子径、但しD1<D2とするとき、D1以上でD2以下の粒子が体積で90%以上含まれる分布を表し、図1(b)のように斜線の部分の割合が90%以上である粒子からなる粉体を表す。
【0056】
体積基準頻度分布(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の定義
粒度分布が、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)分布とは、DMを体積基準の平均粒子径とするとき、DMの1/5倍の粒子径以上、DMの5倍の粒子径以下の粒子を体積で90%以上含む分布を表す。例えば、平均粒子径DMが5μmで体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)とは、体積基準の平均粒子径が5μmで、1μm以上且つ25μm以下の粒子径の粒子が体積で90%以上含まれるような分布を表す。ここで、体積基準の平均粒子径DMは、
【数3】
又は技術的には、ある粒子径間隔をDi±△Di/2(△Diは区分の幅)内にある粒子群の体積をviとすると、
DM=Σ(viDi)/Σvi
と表される。
【0057】
被覆開始領域
微粒子高分散処理手段群の最終処理後、初めて被覆が開始される領域を被覆開始領域という。従って、微粒子高分散処理手段群の最終処理以前では、始めて被覆が開始される領域でも、ここでいう被覆開始領域ではない。
【0058】
被覆開始領域での分散度β
本発明では、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とした領域に被覆空間の被覆開始領域を位置せしめる被覆室を設ける。被覆空間の被覆開始領域における分散度であれば、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、実質的に粒子一個一個の単位に気中に分散して被覆に供することができ、被覆空間の被覆開始領域を通過する全ての芯粒子粉体の粒子の表面の少なくとも一部と、被覆形成物質前駆体とは接触及び/又は衝突するため、必ず粒子一個一個の単位に被覆形成物質を付けることができる。
【0059】
好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを80%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域での分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子に対して事実上芯粒子同士による閉ざされた部分がなく、一個一個の粒子の表面のいたるところに被覆形成物質前駆体を接触及び/又は衝突させることが可能であり、一個一個の粒子表面にほぼ一様に被覆できる。
【0060】
より好適には、被覆空間の被覆開始領域において、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を、微粒子高分散処理手段群の最終の分散処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを90%以上とする。この被覆空間の被覆開始領域の分散度であれば、芯粒子粉体の粒子が体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子の芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子であっても事実上凝集しておらず、一個一個の粒子の表面全てに事実上一様に被覆できる。
【0061】
特に、処理能率が低くてもよいから、高品位な被覆を行いたいときは、分散度は、95%以上がより好ましい。
【0062】
微粒子高分散処理手段群
微粒子高分散処理手段群とは、
(A) 少なくとも分散手段を1以上有し、
(B) 最終の処理手段として、
(a) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させる分散手段、又は
(b) 芯粒子粉体の粒子を気中に分散させた芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体部分を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とこの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段により分離された低分散芯粒子粉体部分を微粒子高分散処理手段群中の分散手段の内の最終分散手段及び/又は最終分散手段以前の処理手段に搬送するフィードバック手段とを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、
を有するものである。
【0063】
好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とし、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有するものである。
前記被覆開始領域における種々の分散度、例えばβ≧70%、80%、90%、に対応してそれらと同等以上の分散性能の微粒子高分散処理手段群を設けることにより、被覆開始領域において、各分散度に応じた商品位な被覆を施すことができる。
【0064】
最終処理手段
微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が分散手段の場合、分散処理手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。又、微粒子高分散処理手段群の最終の処理手段が、微粒子高分散処理手段の最終の分散手段へ、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段、又は最終の分散手段より前の処理手段に、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択処理工程時に於いて低分散状態であったために選択分離された部分を搬送するフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の場合、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を微粒子高分散処理手段群の最終処理手段という。
【0065】
尚、微粒子高分散処理手段群の最終処理手段であるフィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段より前に設ける(例えば、フィードバック手段を備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段と最終分散手段の間、或いは最終分散手段より前)高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段は、フィードバック手段の有無にかかわらず微粒子高分散処理手段群の構成要素である。
【0066】
分散手段
微粒子を分散するために用いる手段を分散手段という。この分散手段は、少しでも或いは僅かでも分散効果を有するものは分散手段として使用可能であり、これを分散手段とする。例えば、一般に供給手段として用いる空気輸送用のロータリーフィーダーやインジェクションフィーダー(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P568、P571)は、分散効果も有するので、分散目的の手段として使用する場合は分散手段である。後述の分散維持・促進手段も分散目的で(βを高める目的で)使用する場合は分散手段となる。そしてこの分散手段は単一の装置、機器である場合も、複合された装置、機器である場合もあり、これらを総称して微粒子高分散処理手段群と呼ぶ。
【0067】
この微粒子高分散処理手段群は、芯粒子粉体の粒子の加速及び/又は速度勾配に置く気流による分散、芯粒子粉体の粒子の静止障害物及び/又は回転体でなる障害物への衝突による分散、芯粒子粉体の粒子の流動層及び/又は脈流及び/又は回転ドラム及び/又は振動及び/又は掻取りからなる機械的解砕による分散等の選択された一種類以上の分散の機構を備えたものをいう。
【0068】
具体的には、微粒子高分散処理手段群は、エジェクタ型分散機、ベンチュリ型分散機、細管、撹拌機、気流中の障害物を利用した分散機、ジェットの吹付けを利用した分散機、螺旋管、回転羽根を利用した分散機、回転するピンを利用した分散機(ケージミル)、流動層型分散機、脈流を利用した分散機、回転ドラムを利用した分散機、振動を利用した分散機、振動ふるい、スクレーパによる掻き取りを利用した分散機、SAEI、Gonell式分散機、中条式分散機、Roller式分散機、オリフィス型分散機、B.M式分散機、Timbrell式分散機、Wright式分散機等の選択された一種以上からなる分散手段を備えたものである(粉体工学会編:“粉体工学便覧”、日刊工業新聞社(1986)P430)。
【0069】
また、特開昭56−1336号に記載の撹拌羽根を利用した分散機、特開昭58−163454号に記載の高速気流と分散ノズルを利用した分散機、特開昭59−199027号に記載の回転羽根による分散作用とプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−207319号に記載のプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−216616号に記載のエジェクタとプラズマイオンによる分散作用を利用した分散機、特開昭59−225728号に記載のエジェクタとイオン流の分散作用を利用した分散機、特開昭59−183845号に記載のプラズマイオンの分散作用を利用した分散機、特開昭63−166421号に記載の分散羽根と圧力気体による分散作用を利用した分散機、特開昭62−176527号に記載のライン状又はリング状スリット型噴出口を用いた分散機、特開昭63−221829号に記載の網状羽根を利用した分散機、特開昭63−1629号に記載の噴射ノズルからの高速気流による分散作用を利用した分散機、実開昭63−9218号に記載の多数の細孔を利用した分散機、実開昭62−156854号に記載のエジェクタ型分散機、実開昭63−6034号に記載の細孔とオリフィスを利用した分散機等の公報に記載のものも使用可能である。
微粒子高分散処理手段群に好適な分散手段として、特願昭63−311358号、特願平1−71071号、特願平2−218537号等に記載の装置が挙げられる。
【0070】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段とは、芯粒子粉体の粒子・気体混合物から、低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、主に単一粒子状態の微粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する手段をいう。一次粒子の集合体である凝集粒子は、見かけの粒子径が一次粒子の粒子径に比べ大きくなることから、例えば乾式分級手段により分離が可能である。高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力を利用した分級手段、慣性力を利用した分級手段、遠心力を利用した分級手段、静電気を利用した分級手段、流動層を利用した分級手段等から一種以上選択された乾式分級手段が挙げられる。
【0071】
この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の例としては、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機、サイクロン、エアセパレータ、ミクロンセパレータ、ミクロプレックス、ムルチプレックス、ジグザグ分級機、アキュカット、コニカルセパレータ、ターボクラシファイア、スーパセパレータ、ディスパージョンセパレータ、エルボジェット、流動層分級機、バーチュアルインパクタ、O-Sepa、ふるい、バイブレーティングスクリーン、シフタ(粉体工学会編:“粉体工学便覧”日刊工業新聞社、P514(1986))等が挙げられる。
【0072】
芯粒子粉体の粒子・気体混合物
芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、(a)芯粒子粉体の粒子が気中に一様に浮遊した均質流れ(一様な浮遊流れ)、(b)芯粒子粉体の粒子が気中のある領域で非一様な分布を示す不均質流れ(非均質浮遊流れ)、(c)芯粒子粉体の粒子の摺動層を伴う流れ(摺動流れ)、又は(d)芯粒子粉体の粒子の静止層を伴う流れをいう。
【0073】
低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、芯粒子粉体の粒子・気体混合物の内、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態以外の状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。
【0074】
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物
高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とは、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する芯粒子粉体の粒子・気体混合物をいう。高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、極めて高分散であっても、実際には凝集粒子を含む。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、実際には、凝集していない単粒子を含み、選択分離して低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物と高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物に分けられる。低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物は、凝集粒子の選択分離及び/又は再分散により、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物となる。
【0075】
回収手段
被覆空間で被覆した被覆粒子を取り出す手段を回収手段という。回収手段の内で回収処理の行われる部分を回収部という。被覆空間の被覆開始領域を通過して被覆した被覆粒子は、気中から直接取り出して回収するか、又は気中から取り出して一時的に蓄えてから回収するか、又は、気体と共に回収される。
【0076】
回収手段の回収部としては、隔壁(障害物)を利用した回収手段の回収部、重力を利用した回収手段の回収部、慣性力を利用した回収手段の回収部、遠心力を利用した回収手段の回収部、帯電による引力を利用した回収手段の回収部、熱泳動力を利用した回収手段の回収部、ブラウン拡散を利用した回収手段の回収部、ガスの背圧や減圧等による吸引力を利用した回収手段の回収部等が利用可能である。
この回収手段の回収部の好適な例として、重力集塵機、慣性集塵機、遠心力集塵機、濾過集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機、粒子充填層、サイクロン、バグフィルター、セラミックスフィルター、スクラバー等が挙げられる。
【0077】
次に、本発明で用いる被覆セラミックス粒子を調製する場合に採用される微粒子高分散処理手段群を添付の図面に基づいて説明することにする。
【0078】
微粒子高分散処理手段群の図の説明
図2(a)は被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の一例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素dで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である分散手段Aの処理後、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の芯粒子粉体に対し、分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成のものである。
【0079】
図2(b)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の第2の例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aへ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の分散処理手段群の構成要素d、最終分散手段と最終選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素eとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0080】
図2(c)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の第3の例を表すブロック図である。芯粒子粉体の粒子を分散させる最終の分散手段A、最終の分散手段Aより前の処理手段へ芯粒子粉体の粒子が、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηをフィードバックさせるフィードバック手段Cを備えた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段B、最終の分散手段以前の微粒子高分散処理手段群の構成要素d、最終の分散手段と最後の選択手段の間の微粒子高分散処理手段群の構成要素eで構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。構成要素dとしては、分散手段、供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素dとしては、分散手段以外の処理手段、例えば供給手段、選択手段等任意の処理手段を単独又は組み合わせて使用できる。構成要素d及びeは、必ずしも設けなくとも良い。微粒子高分散処理手段群は、好適には最終の処理手段である選択手段Bによる処理後、前記分布の芯粒子粉体に対し分散度が分散度βで70%以上を実現できる構成である。
【0081】
なお、以上のような構成であるから、供給槽、芯粒子生成手段等の粉体の供給源も本微粒子高分散処理手段群の構成に含めてもよい。例えば図2(c)の場合、フィードバック手段Cのフィードバック先を供給槽とする構成も高分散処理手段群の構成として良いことは言うまでもない。又、微粒子高分散処理手段群の分散工程の前に、芯粒子粉体の粒子を解砕及び/又は粉砕する解砕工程を入れても良いことは言うまでもない。
【0082】
上記した微粒子高分散処理手段群の基本的な構成の具体的な代表例をより詳細にしたブロック図に基づいて更に詳しく説明することにする。
【0083】
構成1
図3(a)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第1の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0084】
構成2
図3(b)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第2の構成を説明するブロック図であって図2(a)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段Aから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0085】
構成3
図3(c)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第3の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、分散手段aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックさせるフィードバック手段C、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を最終の分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、から構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0086】
構成4
図3(d)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第4の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0087】
構成5
図3(e)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第5の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0088】
構成6
図3(f)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第6の構成を説明するブロック図であって図2(b)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を取り除き、主に高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分散手段Aへ導入する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段b、選択分離された芯粒子粉体の粒子を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段Aへフィードバックさせるフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0089】
構成7
図3(g)は、被覆されたセラミックス粒子を調製する際の微粒子高分散処理手段群の第7の構成を説明するブロック図であって図2(c)に対応するものである。本例は、被覆される芯粒子粉体を供給する供給槽100、被覆される芯粒子粉体を分散させる分散手段a、被覆される芯粒子粉体を分散させる最終分散手段A、最終分散手段Aで分散させた芯粒子粉体の粒子・気体混合物のうちから主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物、以外の低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物ηを分散手段aへフィードバックするフィードバック手段C、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を放出する最終の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段Bから構成されている。εは、芯粒子粉体の粒子の内、主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物である。
【0090】
このようにして達成された微粒子の高分散状態を維持するために、気中分散維持手段を微粒子高分散処理手段群と被覆室の間に付加することもできる。ここでいう気中分散維持手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子の再凝集を防止して分散度βを維持する手段をいう。又、このようにして達成された芯粒子の高分散状態を促進するために、気中分散促進手段を微粒子高分散処理手段群と被覆室の間に付加することもできる。ここでいう気中分散促進手段とは、気中に分散担持された芯粒子粉体の粒子のうち主に再凝集した粒子の再分散を促進し、分散状態の低下を鈍らせたり、一旦低下した分散状態を元の高分散の状態まで回復するように再分散を促す手段をいう。
この気中分散維持手段又は気中分散促進手段の好適な例としては、パイプ振動装置、パイプ加熱装置、プラズマ発生装置、荷電装置等が挙げられる。
【0091】
パイプ振動装置は、発振器を設置したパイプの振動により、気中に分散している粒子に分散機とは言えない振動を与えることで、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0092】
パイプ加熱装置は、加熱したパイプにより搬送気体の外側から熱を加えて搬送気体を膨張させ、分散機とは言えないほどに流速を加速して再凝集を抑制し、再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0093】
プラズマ発生装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中にプラズマを発生させ、そのプラズマイオンと芯粒子との衝突により、再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0094】
荷電装置は、芯粒子粉体を分散担持している気中に、コロナ放電、電子ビーム、放射線等の方法で単極イオンを発生させ、単極イオン雰囲気中を通過させることで粒子を単極に帯電させ、静電気の斥力により再凝集を抑制し高分散状態を維持する手段又は再凝集した粒子の分散を促進する手段である。
【0095】
このようにして形成された微粒子の高分散状態の芯粒子粉体は粒子の表面を被覆形成物質で被覆するために被覆室に送られる。この被覆室には被覆開始領域を含む被覆空間が設けられている。
【0096】
微粒子高分散処理手段群と被覆室とは直結することが望ましいが、搬送に不可避の中空部材及び/又はパイプを使って接続しても良い。この場合にも、被覆開始領域でのβ≧70%を実現することが不可欠である。
【0097】
微粒子高分散処理手段群と被覆室を別々に置いてその間を連結する場合は、芯粒子粉体をその分散状態のまま被覆室へ導入してやれば良い。そのためには、この間に芯粒子粉体の分散状態を維持するための装置である気中分散維持手段及び/又は分散状態を高めるための装置である気中分散促進手段及び/又は芯粒子粉体の粒子・気体混合物から、低分散芯粒子粉体部分を分離し、主に単一粒子状態の粒子を含む高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段を設けることもできる。
【0098】
又、被覆されたセラミックス粒子を調製するに際して、微粒子高分散処理手段群が、(1)被覆室、又は(2)被覆空間、又は(3)被覆開始領域と一部以上空間を共有することもできる。
例えば、微粒子高分散処理手段群中の分散空間と被覆室とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域を有する被覆空間とを、又は微粒子高分散手段群中の分散空間と被覆開始領域とを、空間的に共有することもできる。
【0099】
ここで被覆開始領域とは、β≧70%の分散状態で搬送された高分散状態の芯粒子粉体に気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体が接触及び/又は衝突し、被覆を開始する領域を指し、次の図4(a)〜(e)で示される態様が考慮される。
すなわち、図4(a)〜(e)において被覆開始領域は2で示される領域である。
【0100】
図4(a)において粉体に対してβ≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1を覆って設ける。
図4(b)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4が全て通る前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
上記の構成により、全ての芯粒子粉体の粒子はβ≧70%の分散状態で被覆が始められる。
図4(c)において微粒子高分散処理手段群又は微粒子高分散処理手段群の放出部1から放出される芯粒子粉体の粒子4の内、回収部5に入る粒子が必ず通過する前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(d)において回収部5を囲む前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を設ける。
図4(e)において高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子のみが到達可能な位置に回収部5を設ける。従って、ここでの領域6は重力を利用した選択手段となる。回収部に入る高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の粒子が、必ず通過する前記β≧70%の分散状態で被覆を始める被覆空間の被覆開始領域2を図の斜線部のように設ける。
【0101】
β≧70%の分散状態で被覆始めた芯粒子のみ回収でき、被覆開始領域を通っていない芯粒子と被覆開始領域を通過した被覆粒子とは混ざることはない。
【0102】
上記したところから、被覆されたセラミックス粒子を製造するための装置は、微粒子高分散処理手段群と被覆室、又は微粒子高分散処理手段群と被覆室と回収手段から構成されるものであるが、これらの装置の構成要素は、種々の組み合わせ方をすることが可能で、これらの装置の構成例を図面にもとづいて説明するとつぎのとおりである。
【0103】
装置の構成1
図5(a)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第一の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に直結してある。
【0104】
装置の構成2
図5(b)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第二の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、不可避の中空部材2−C2、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に不可避の中空部材2−C2を介して接続してある。
【0105】
装置の構成3
図5(c)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第三の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、気中分散維持手段2−C3、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1に気中分散維持手段2−C3を介して接続してある。
【0106】
装置の構成4
図5(d)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第四の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1と空間を共有している。
【0107】
装置の構成5
図5(e)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第五の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1は、被覆室2−B1中に設けている。
【0108】
装置の構成6
図5(f)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第六の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−Dから構成されている。微粒子高分散処理手段群2−C1の分散空間中に、被覆室2−B1を設けている。
【0109】
装置の構成7
図5(g)は、被覆されたセラミックス粒子を製造するための第七の装置の構成を説明するブロック図である。本例のこの装置は、被覆装置の製造装置本体2−A、被覆室2−B1、被覆空間2−B2、被覆開始領域2−B3、微粒子高分散処理手段群2−C1、回収手段2−D、再被覆供給手段2−Eから構成されている。回収手段2−Dから被覆後の被覆粒子を高分散処理手段群2−C1に再被覆供給手段2−Eにより搬送して、繰り返して被覆処理が行える。
かかる構成の装置のいずれかにより、被覆セラミックス粒子が製造されるものである。
【0110】
上記のようにしてセラミックス粒子である芯粒子粉体を被覆形成物質で被覆した被覆粒子について、再び被覆形成物質で被覆すること、またはこの再被覆を反復することもできる。この場合、被覆粒子は再被覆供給手段に送られる。ここで、再被覆供給手段とは、再被覆を行うために被覆後の被覆粒子を微粒子高分散処理手段群へ搬送する手段をいう。具体的には、(a)被覆粒子を回収する回収手段、及び(b)回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段を備えた手段である。または、(a)被覆粒子を回収する回収手段、(b)回収手段から微粒子高分散処理手段群に被覆粒子を搬送する被覆粒子搬送手段、(c)及び被覆後の被覆粒子を分級する被覆粒子分級手段を備えた手段である。被覆量が多い場合、被覆前の芯粒子粉体の粒子の粒度分布と被覆後の被覆粒子の粒度分布は変わってしまう。そこで、被覆後の被覆粒子の粒度分布を被覆粒子分級手段により調整し、再被覆処理を行えば効果的である。
【0111】
この再被覆処理は、必要によって繰り返すことができ、そして被覆形成物質の被覆量を所望のものに設定することができる。更に、この被覆形成物質の種類を変えてこの被覆処理を繰り返すことができ、このようにして複数成分の物質を被覆形成物質として多重被覆することもできる。
【0112】
本発明で用いる被覆粒子の製造装置は、被覆形成物質が、気相を経る気相法によって、芯粒子粉体の粒子表面に被覆される被覆粒子の製造装置であれば制限はない。例えば、化学蒸着(CVD)装置としては、熱CVD装置、プラズマCVD装置、電磁波を利用したCVD(可視光線CVD、レーザCVD、紫外線CVD、赤外線CVD、遠赤外線CVD)装置、MOCVD装置等、或いは、物理蒸着(PVD)装置としては、真空蒸着装置、イオンスパッタリング装置、イオンプレーティング装置等が適用可能である。より具体的には、例えば、特開平3−75302号公報の超微粒子で表面が被覆された粒子およびその製造方法に記載の被覆粒子製造装置が好適である。
【0113】
以上述べた通り、本発明ではセラミックス粒子である微粒子芯粒子粉体、又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を被覆空間に投入し気相を経て生成する被覆形成物質前駆体及び/又は気相状態の被覆形成物質前駆体をこの芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させてこの芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で被覆する被覆されたセラミックス粒子が製造されるが、本発明の基本的な工程を要約すると次の通りである。
【0114】
I
(A) 微粒子高分散処理手段群により、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0115】
II
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0116】
III
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、被覆工程に直接搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0117】
IV
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、搬送に不可避の、中空部材、中空を形成する部材からなる中間部材、及びパイプから選択される1種類又はそれ以上の部材を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0118】
V
(A) 体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程、
(B) この分散工程で分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、この分散性能で気中に分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を維持する気中分散維持手段、この高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の気中分散状態を高める気中分散促進手段、芯粒子粉体の粒子と気体との混合物において低分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を分離し、芯粒子粉体の粒子が主に単一粒子状態で気中に存在する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を選択する高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段の1種類又はそれ以上を介して搬送する搬送工程、
(C) この搬送工程で搬送した高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
を設けた被覆法。
【0119】
以上、I〜Vの全てにおいて、好適には、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、又は、
体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する空間領域の内の、回収手段の回収部に回収する全てに粒子が通過する面を含む空間領域に、被覆空間の被覆開始領域を位置させるか、
又は、前記I及びIIにおいて、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、微粒子高分散処理手段群により分散させた高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の芯粒子粉体の粒子の分散度βが70%以上を実現する微粒子高分散処理手段群により気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを、空間を一部以上共有して行うものである。
【0120】
前記、被覆されたセラミックス粒子は、被覆された粒子の被覆形成物質を介して、接触状態で集合塊を形成する場合がある。この被覆されたセラミックス粒子からなる粉体は、単一粒子状態の被覆された粒子と、この単一粒子状態の被覆された粒子が数個から数十個接触した集合塊、更に多数個の単一粒子状態の被覆された粒子が接触した集合塊から構成され、その形状及び大きさが不均一で不規則になる。この単一粒子状態の被覆された粒子からなる集合塊は、解砕及び/又は破砕してから成形又は焼結処理に供するのが好ましい。この被覆されたセラミックス粒子の集合塊の解砕及び/又は破砕には、種々の解砕手段、例えば、ボールミル、振動ボールミル、乳鉢、ジェットミル等が利用可能である。たま、単一粒子状態の被覆された粒子と、この単一粒子状態の被覆された粒子の集合塊とを選択分離して、単一粒子状態の被覆された粒子のみを成形又は焼結処理に供してもよい。
【0121】
本発明によれば、上記のようにして得られた被覆セラミックス粉体粒子はセラミックス粒子焼結のための慣用の圧力および温度で焼結されてセラミックス基の焼結体とされる。
【0122】
本発明で用いる被覆されたセラミックス粒子は、上記したように気相法によりその表面を被覆するので基本的に被覆形成物質に制限はない。セラミックス基焼結体を、用途に応じて任意に材料設計する上で必要に応じて、被覆を施す前に、セラミックス粒子表面に事前に、同種及び/又は異種の被覆形成物質を同種及び/又は異種の被覆方法により被覆を施してもよい。
【0123】
例えば、セラミックス粒子表面に、目的とする金属の炭化物からなる被覆を形成する場合、事前に炭素で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子を使用すればよい。事前に物質を被覆する方法は、特に制限するものではないが、例えば、特開平2−252660号公報に記載の溶融塩浸漬法を始め、電気メッキ法、無電解メッキ法、クラッド法、物理蒸着法(スパッタリング法、イオンブレーティング法等)や化学蒸着法等が好適である。目的とする金属化合物の金属の種類は、本発明の結合材となる物質及び/又は焼結助剤となる物質として適用可能の範囲であれば特に制限されない。
【0124】
セラミックス基焼結体
本発明に係る、セラミックス基焼結体は、被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を焼結することにより製造される。
このセラミックス基焼結体は、被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物を、好ましくは、射出成形、型押し、泥漿鋳込み等の選択される一種以上で成形される。必要により、予備焼結を施して仮焼結体とし、これを更に加工した後、本焼結に共することもできる。
【0125】
この成形処理を施した被覆されたセラミックス粒子又は被覆されたセラミックス粒子を含む混合物は、従来公知の焼結法により焼結する。具体的には、真空焼結法又は雰囲気焼結法、大気中常圧焼結法又は、ホットプレス法、カプセルHIP法、擬HIP法、カプセル・フリーHIP法、カプセル超高圧HIP法、カプセル・フリー超高圧HIP法、超高圧焼結法等の一種以上で焼結される。
【0126】
一例として、ガラスカプセルを用いたカプセルHIP法について更に詳しく述べる。
先ず、セラミックス粒子表面に被覆形成物質の被覆を施した被覆されたセラミックス粒子を型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填したパイレックスガラス製のカプセルに配置し、脱気後封入する。
このカプセルを、HIP装置に配置し、カプセルが軟化する温度まで昇温し、その後加圧しながら所定の焼結温度まで加熱し、所定時間、圧力、温度を保持して焼結する。しかる後、炉冷し、圧力を開放して、焼結体を取り出す。
【0127】
このようにして、セラミックスの粒子サイズが制御され或は更に結合材及び/又は焼結助剤及び/又は表面改質剤の分布が制御された均一で緻密で、高度に制御された微組織を有する特徴的なセラミックス基焼結体を得る。
焼結温度は使用する個々のセラミックスによって異なり、例えばほうろうの650゜程度の温度からアルミナセラミックスの1700℃またはそれ以上に至る温度が使用される。
【0128】
被覆形成物質による粒界制御で、高めの温度でも粒成長なしに強固に焼結できるので、焼結温度を高めに設定可能である。
或いはまた上記した成形を行うことなく、ホットプレスを用いて焼結と成形を同時に行うこともできる。
【0129】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
【0130】
実施例1
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を炭化チタン(TiC)で被覆した。
使用した装置は、図6及びその部分拡大図である図7に示したものであり、図5(a)に示した構成の具体例である。
【0131】
本例の装置は、プラズマトーチ3−A、プラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室の冷却槽3−B、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室冷却槽3−C、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室の冷却槽3−D、被覆粒子冷却室3−d、被覆形成物質の原料の供給側に、供給装置3−E1、芯粒子粉体の供給側に、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1、細管分散機107及び被覆粒子回収部3−Gより成る。供給装置3−E1は被覆形成物質の原料粉体の供給槽112に、撹拌式分散機3−F1は芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111にそれぞれ結合される。本例における被覆室は、定義ではプラズマ室3−a、被覆形成物質前駆体生成室3−b、狭義の被覆室3−c、被覆粒子冷却室3−dから構成されており、ここではこれらを広義の被覆室と称する。広義の被覆室の内、主に被覆処理の行われる室3−cを狭義の被覆室と称する。
【0132】
本例における微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機111、撹拌式分散機3−F1とエジェクター式分散機3−H1及び内径4mmのステンレス製細管分散機107で構成されており、図2(a)に示したものであり、図3(b)に示した構成に属する微粒子高分散処理手段群の具体例である。微粒子高分散処理手段群は、DM=1μmの((DM/5,5DM),≧90%)のセラミックス粒子の芯粒子粉体に対して出力時β≧70%を実現できるように構成されている。微粒子高分散処理手段群の最終処理手段である細管107は被覆室3−cに直結してあり、被覆空間の3−L2の被覆開始領域3−L1においてβ≧70%を実現できるように構成されている。
【0133】
プラズマトーチ3−Aの上部に設けられたガス噴出口101に供給源102からアルゴンガスを20リットル/分の割合で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ3−A内プラズマ室3−aでプラズマ焔を形成する。
【0134】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機112から供給した被覆形成物質の原料である平均粒子径2μmの炭化チタンの粉末は、5リットル/分のキャリアガス103に担持されて、プラズマトーチ3−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口104から、プラズマ焔中に0.5g/分の割合で導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室3−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0135】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機111から2.0g/分で供給される平均粒子径1μmの硼化ジルコニウムの芯粒子を、撹拌式分散機3−F1により分散させ、5リットル/分の割合で供給されるキャリアガス105により担持され、10リットル/分の流量の分散ガス106によるエジェクター式分散機3−H1及び細管分散機107により分散度β=82%の分散状態に分散させ、被覆室に導入する。
高分散状態の硼化ジルコニウム粒子は、被覆空間の3−L2の被覆開始領域3−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0136】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室3−dを降下し、被覆粒子回収部3−Gに至る。この被覆粒子からなる製品は、フィルター110により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして、硼化ジルコニウム粒子に体積で20%の炭化チタンが被覆された被覆粒子が得られた。
【0137】
得られた被覆されたセラミックス粒子である、炭化チタン(TiC)で表面を被覆した硼化ジルコニウム(ZrB2)微粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図8に示す通り、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の炭化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0138】
実施例2
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を炭化チタン(TiC)で被覆した。
【0139】
使用した装置は、図9及びその部分拡大図である図10に示したものであり、図5(d)に示した構成の具体例である。本例の被覆形成物質前駆体を生成する装置の構成は実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機214、撹拌式分散機5−F1、細管分散機211及び衝突板を利用した分散機5−H2で構成されており、図2(a)に示したものであり、図3(b)に示した構成に属する微粒子高分散処理手段群の具体例である。細管分散機211は、内径4mmのステンレス製である。微粒子高分散処理手段群αの最終分散手段である衝突板を利用した分散機5−H2は、SiC製の衝突板213がステンレス製のホルダー212により設置された構成である。衝突板を利用した分散機5−H2は狭義の被覆室5−cの中に設けられており、微粒子高分散処理手段群αと狭義の被覆室5−cは共有の空間を有している。また、被覆空間5−L1及び被覆空間の被覆開始領域5−L2は、狭義の被覆室5−c内に設けてある。本装置の微粒子高分散処理手段群は、平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DMM5,5DMM〕,≧90%)の芯粒子粉体の粒子を、最終の分散処理である衝突板を利用した分散機5−H2の衝突板213を衝突直後、分散度β≧70%に分散できる。したがって、分散度β≧70%の状態で被覆が開始される。
【0140】
プラズマトーチ5−Aの上部に設けられたガス噴出口201に供給源202から20リットル/分のアルゴンガスを供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ5−A内プラズマ室5−aでプラズマ焔を形成する。
【0141】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機215から0.3g/分で供給した被覆形成物質の原料である平均粒子径2μmの炭化チタンの粉末は、5リットル/分のキャリアガス203に担持されて、プラズマトーチ5−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口204から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室5−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0142】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機214から2.0g/分で供給される硼化ジルコニウムの芯粒子は、撹拌式分散機5−F1により分散せしめ、20リットル/分の割合で供給されるキャリアガス205により担持され、細管分散機211を経て、被覆室中に設けた衝突板を利用した分散機5−H2によって、分散度β=82%に気中に分散させる。
高分散状態の硼化ジルコニウムの芯粒子は、被覆空間5−L2の被覆開始領域5−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0143】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室5−dを降下し、被覆粒子回収部5−Gに至る。被覆されたセラミックス粒子からなる製品は、フィルター210により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子に体積で15%の炭化チタン(TiC)が被覆された被覆粒子が得られた。
【0144】
得られた被覆粒子である、炭化チタンで表面を被覆した硼化ジルコニウム微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の炭化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0145】
実施例3
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を硼化チタン(TiB2)で被覆した。
【0146】
使用した装置は、図11及びその部分拡大図である図12に示したものであり、図5(b)に示した構成の具体例である。本例の被覆形成物質前駆体を生成する装置の構成は実施例1と同一である。微粒子高分散処理手段群αは、供給槽を備えた供給機313、分散手段である撹拌式分散機6−F1、高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物選択手段であるサイクロン6−Iで構成されており、図2(b)に示したものであり、図3(d)に示した構成の具体例である。サイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物の放出部は、搬送に不可避のパイプ307で狭義の被覆室6−cへ接続してあり、低分散芯粒子粉体部分の放出部は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを介して搬送管310で撹拌式分散機6−F1へ接続してある。本装置の微粒子高分散処理手段群によれば、体積基準の粒度分布として、平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の芯粒子粉体の粒子を、最終の処理手段であるサイクロン6−Iの高分散芯粒子粉体流の放出部で、分散度β≧75%に分散できる。狭義の被覆室6−cに図11及び図12のごとく被覆空間6−L2及び被覆空間の被覆開始領域6−L1が設けてある。6−Cと6−Dを結合するフランジ部の制約による搬送に不可避のパイプ307による分散度βの低下は少なくとどめられる。したがって、被覆開始領域において、分散度β≧70%で被覆が開始される。
【0147】
プラズマトーチ6−Aの上部に設けられたガス噴出口301に供給源302からアルゴンガスを20リットル/分で供給する。このアルゴンガスは印加された高周波によってプラズマ化され、プラズマトーチ6−A内プラズマ室6−aでプラズマ焔を形成する。
【0148】
被覆形成物質の原料の供給槽を備えた供給機314から0.4g/分で供給した被覆形成物質の原料である硼化チタン粉末は、5リットル/分のキャリアガス303に担持されて、プラズマトーチ6−Aの下部に設けられた被覆形成物質の原料の投入口304から、プラズマ焔中に導入され、プラズマ焔の熱により蒸発して気相を経て、被覆形成物質前駆体生成室6−bで被覆形成物質前駆体となる。
【0149】
芯粒子粉体の供給槽を備えた供給機313から2.0g/分で供給される硼化ジルコニウムの芯粒子は、撹拌式分散機6−F1により分散させ、15リットル/分のキャリアガス305により担持されパイプ306を介してサイクロン6−Iに搬送される。サイクロン6−Iは、微粉側の最大粒子径が1.5μmとなるように調節されており、主に単一粒子からなるβ=85%の分散状態の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物を、搬送に不可避のパイプ307を介し放出口308から狭義の被覆室6−cに放出させる。一方、サイクロン6−Iにより選択分離した低分散芯粒子粉体部分は、ホッパー6−J、ロータリーバルブ6−Kを経て、10リットル/分のキャリアガス309によりパイプ310中を搬送され、撹拌式分散機6−F1へフィードバックする。
高分散状態の硼化ジルコニウムの芯粒子は、被覆空間6−L2の被覆開始領域6−L1において被覆形成物質前駆体とβ=82%の分散状態で接触及び/又は衝突し始める。
【0150】
このようにして生成した、被覆形成物質で表面に被覆を施された被覆されたセラミックス粒子は、気体と共に被覆粒子冷却室6−dを降下し、被覆粒子回収部6−Gに至る。被覆されたセラミックス粒子からなる製品は、フィルター312により気体と分離し、集められ取り出される。このようにして、硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子に体積で20%の硼化チタン(TiB2)で被覆を施された被覆されたセラミックス粒子が得られた。
【0151】
得られた被覆されたセラミックス粒子である、硼化チタンで表面を被覆した硼化ジルコニウム微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、個々の粒子は、いずれも、一様に0.005μm程度の硼化チタンが超微粒子状に被覆したものであった。
【0152】
実施例4
実施例1で得られた粒子表面を炭化チタン(TiC)で被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム(ZrB2)粒子を用いて焼結体を製造した。
すなわち、この被覆された硼化ジルコニウム粒子を、直径16mm、厚さ6mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填した黒鉛製の型を装備するホットプレス(HP)装置に配置し、10-3torrで200℃まで脱気後、アルゴンガスを流しながら、焼結温度1800℃、焼結圧力20MPaで3時間保持して焼結した。しかる後、炉冷し、圧力を開放して、焼結体を取り出した。
焼結体は、測定誤差内で密度が100%で大変緻密であり、しかもビッカース微小硬度は、Hv(0.5/10)約2400と大変高硬度であった。
【0153】
このようにして得られた焼結体の研磨面に観察のための通常の金蒸着を施した研磨面の電子顕微鏡写真(×5000)を図13に示す。図13から焼結体には未焼結部や気孔、欠陥等は全くなく、ZrB2粒子及びTiCが認められる微細で高度に制御された微組織からなることが分かる。
【0154】
比較のために実施例1で用いた硼化ジルコニウム粒子で炭化チタン未被覆のものと、相当する量の炭化チタン微粒子とを用いて実施例4と同一の焼結条件で焼結を行った。このようにして得られた焼結体の研磨面に同様の金蒸着を施し、電子顕微鏡でその表面を観察したところ、図14を得た。
この図から同一の焼結条件にもかかわらず粒子は粒成長して粗大となり、しかも気孔が多数認められ、微組織が全く制御されてないことが分かる。
【0155】
実施例5
実施例2で得られた、体積で15%の炭化チタンで被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム粒子をガラスカプセル法で脱気封入化し、これをHIP装置を用いて焼結して焼結体を製造した。
すなわち、この被覆硼化ジルコニウム粒子を、直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体をパイレックスガラス製のカプセルに配置し、10-6torr、400℃で12時間脱気後にカプセルを溶封した。このカプセルをアルゴンガスを圧力媒体とするHIP装置に配置し、焼結温度1800℃、焼結圧力200MPaで3時間保持して焼結した。その後、冷却、圧力開放ののち、焼結体を取り出した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2300と大変高硬度であった。
第4実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0156】
実施例6
実施例3で得られた、体積で20%の硼化チタンで被覆を施した被覆された硼化ジルコニウム粒子を、焼結温度を2000℃とする以外は実施例4で行った操作と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2800と大変高硬度であった。
本焼結体は、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく、また硼化チタンが硼化ジルコニウム粒子の周りに均一に分布し、硼化ジルコニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0157】
実施例7
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化ジルコニウム粒子を実施例3の操作でその表面を硼化チタンで被覆し、ZrB2:TiB2=90:10(vol%)の硼化チタンで被覆された硼化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆硼化ジルコニウム粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、パイレックスガラス製のカプセルに配置し、10-6torr、400℃で12時間脱気後にカプセルを溶封した。このカプセルをアルゴンガスを圧力媒体とするHIP装置に配置し、焼結温度1950℃、焼結圧力200MPaで3時間保持して焼結した。その後、冷却、圧力開放ののち、焼結体を取り出した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2700と大変高硬度であった。
本焼結体は実施例6と同様で、未焼結部、、気孔、欠陥が全くなく、また硼化ジルコニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0158】
実施例8
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、ZrC:TiC=80:20(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆炭化ジルコニウム粒子を実施例4で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2200であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また炭化ジルコニウム粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0159】
実施例9
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、ZrC:TiC=85:15(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆炭化ジルコニウム粒子を実施例5で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約2100であった。
本実施例の焼結体においても、実施例8と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0160】
実施例10
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化ジルコニウム粒子を実施例1の操作でその表面を窒化チタンで被覆し、ZrN:TiN=75:25(vol%)の窒化チタンで被覆された窒化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆された窒化ジルコニウム粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体を、h−BN粉体を充填した黒鉛製の型を装備したホットプレス(HP)装置に配置し、10-3torrで200℃に加熱して脱気後窒素ガスを流しながら焼結温度1700℃、焼結圧力20MPaで3時間保持して焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約1900であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化ジルコニウム粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0161】
実施例11
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化ジルコニウム粒子を実施例2の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、ZrN:AlN=75:25(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化ジルコニウム粒子を得た。
この被覆された窒化ジルコニウム粒子を実施例10と同様に、但し焼結温度を1700℃で焼結した。得られた焼結体は、密度100%、Hv(0.5/10)約1700であった。
本実施例の焼結体においても、実施例10と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0162】
実施例12
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化タングステン粒子を実施例1の操作で炭化チタンおよびコバルトでその表面を被覆し、WC:TiC:Co=86:5:9(vol%)の炭化チタンおよびコバルトで被覆された炭化タングステン粒子を得た。
この被覆された炭化タングステン粒子を直径16mm、厚さ5mmの円盤状に型押し成形し、この成形体をホットプレス装置に配置し、10-3torrで200℃に加熱して脱気し、真空中で焼結温度1500℃、焼結圧力20MPaで2時間保持した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約1500であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また炭化チタンが炭化タングステン粒子の周りに均一に分布し、炭化タングステン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0163】
実施例13
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化チタン粒子を実施例3の操作でその表面を窒化チタンで被覆し、TiB2:TiN=80:20(vol%)の窒化チタンで被覆された硼化チタン粒子を得た。
この被覆された硼化チタン粒子を実施例4で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3100であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等か全くなく、また窒化チタンが硼化チタン粒子の周りに均一に分布し、硼化チタン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0164】
実施例14
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の硼化チタン粒子を実施例1の操作でその表面をチタン金属で被覆し、TiB2:TiN換算で80:20(vol%)に相当する量のチタンで被覆された硼化チタン粒子を得た。
この被覆された硼化チタン粒子を焼結温度が1600℃であることを除いては実施例10の焼結条件と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3300であった。
本実施例の焼結体においても、実施例13と同様、高度に制御された微組織が得られた。
【0165】
実施例15
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、TiN:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子を焼結温度を1800℃とする以外は実施例10で行った操作と同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約1800であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化チタン粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0166】
実施例16
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、TiN:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子をHIP装置を用い焼結温度1800℃、焼結圧力200MPaで3時間保持し、焼結体を得た。密度100%、Hv(0.5/10)約1800であった。
第15実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0167】
実施例17
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化チタン粒子を実施例1の操作でその表面を酸化アルミニウムで被覆し、TiN:Al2O3=80:20(vol%)の酸化アルミニウムで被覆された窒化チタン粒子を得た。
この被覆された窒化チタン粒子を焼結温度を1600℃とする以外は実施例5で行った操作と同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2300であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また酸化アルミニウムが窒化チタン粒子の周りに均一に分布し、窒化チタン粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0168】
実施例18
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化けい素を実施例1の操作でその表面をチタン金属及び炭素で被覆し、SiC:TiC換算で80:20(vol%)に相当する量のチタン金属・炭素で被覆された炭化けい素粒子を得た。
この被覆された炭化けい素粒子を実施例4で行ったのと同一の条件下に焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2900であった。第17実施例と同様で、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0169】
実施例19
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の炭化けい素を実施例1の操作でその表面を炭化チタンで被覆し、SiC:TiC=80:20(vol%)の炭化チタンで被覆された炭化けい素粒子を得た。
この被覆された炭化けい素粒子を実施例5で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約3000であった。
本焼結体は、未焼結部や気孔、欠陥等が全くなく、また炭化チタンが炭化けい素粒子の周りに均一に分布し、炭化けい素粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0170】
実施例20
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の窒化けい素粒子を実施例1の操作でその表面を窒化アルミニウムで被覆し、SiN4:AlN=80:20(vol%)の窒化アルミニウムで被覆された窒化けい素粒子を得た。
この被覆された窒化けい素粒子を実施例11で行ったのと同一の条件で焼結した。得られた焼結体は密度100%、Hv(0.5/10)約2200であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥等が全くなく、また窒化けい素粒子は粒成長することなく微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0171】
実施例21
平均粒子径DMが1μmで、体積基準頻度分布が(〔DM/5,5DM〕,≧90%)の酸化アルミニウム粒子を実施例1の操作でその表面を酸化マグネシウムで被覆し、Al2O:MgO=97:3(vol%)の酸化マグネシウムで被覆された酸化アルミニウム粒子を得た。
この被覆された酸化アルミニウム粒子を1600℃の焼結温度、20MPaの圧力で3時間大気中でHP焼結に付し、焼結体を得た。密度100%、Hv(0.5/10)約2300であった。
本焼結体は、未焼結部、気孔、欠陥が全くなく、また酸化アルミニウム粒子は粒成長することなく、微細で高度に制御された微組織が得られた。
【0172】
【発明の効果】
本発明によれば、体積基準頻度分布で平均粒子径が10μm以下のセラミックス微粒子からなる芯粒子粉体を気中に分散させ、この分散した芯粒子粉体の粒子を分散度βが70%以上である分散状態で被覆形成物質前駆体と接触又は衝突させることによって、単一粒子状態でその表面を被覆形成物質で被覆を施した被覆されたセラミックス粒子が得られる。この被覆セラミックス粒子を焼結することにより、均一で、緻密で、且つ強固に焼結された、高度に制御された微組織を有する高性能なセラミックス基焼結体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉体粒子の分布図であり、(a)は分散度βを表わし、(b)は粒径D1〜D2の範囲の粒子が体積で90%を占める粉体の粒径対体積基準頻度を表わす。
【図2】 (a)〜(c)は微粒子高分散処理手段群の基本構成を示すブロック図。
【図3】 (a)〜(g)は微粒子高分散処理手段群の構成をより詳細に説明するブロック図。
【図4】 (a)〜(e)は芯粒子粉体に被覆が開始される態様を示す図。
【図5】 (a)〜(g)は被覆されたセラミックス粒子を製造するための装置の構成を説明するブロック図。
【図6】実施例1で用いる装置を示す図。
【図7】実施例1で用いる装置の部分拡大図。
【図8】実施例1で得られた被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図9】実施例2で用いる装置を示す図。
【図10】実施例2で用いる装置の部分拡大図。
【図11】実施例3で用いる装置を示す図。
【図12】実施例3で用いる装置の部分拡大図。
【図13】実施例4で得られた焼結体の研摩面の走査電子顕微鏡写真。
【図14】比較例の焼結体の研摩面の走査電子顕微鏡写真。
Claims (7)
- 芯粒子粉体を被覆空間に投入し、該被覆空間において、被覆形成物質前駆体を、この芯粒子粉体の粒子に接触及び/又は衝突させて、芯粒子粉体の粒子の表面を被覆形成物質で均一に被覆して被覆セラミックス粒子を製造する方法であって、
(A)撹拌式分散機、エジェクタ型分散機、細管分散機よりなる分散手段を有する微粒子高分散処理手段群により、平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体の粒子又は主に微粒子からなる芯粒子粉体の粒子を、分散度βが70%以上の分散状態で気中に分散させて高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物とする分散工程と、
(B)この分散工程で分散させた芯粒子粉体の粒子を、前記被覆空間に直接放出することにより、分散度βが70%以上の分散状態で、被覆空間の被覆開始領域において被覆形成物質前駆体と接触及び/又は衝突させて被覆を開始する被覆工程、
によって、芯粉体の粒子の表面に均一な被覆を形成することを特徴とする、被覆セラミックス粒子の製造方法。 - 被覆セラミックス粒子の集合塊を解砕及び/又は破砕する工程及び/又はこの被覆セラミックス粒子の集合塊と一次粒子単位の被覆セラミックス粒子とを選択分離する選択分離工程を更に経て被覆セラミックス粒子を調製する、請求項1に記載の被覆セラミックス粒子の製造方法。
- 前記芯粒子粉体の粒子を構成する物質のビッカース硬度が4000を越えないものである、請求項1又は請求項2に記載の被覆セラミックス粒子の製造方法。
- 平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体を、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする分散性能を有する微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させる分散工程の一部以上と前記被覆工程の一部以上とを空間を一部以上共有して行うことにより被覆セラミックス粒子を調製する、請求項1に記載の被覆セラミックス粒子の製造方法。
- 平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の高分散芯粒子粉体の粒子・気体混合物中の芯粒子粉体の粒子の全ての粒子が通過する面を含む空間領域に被覆空間の被覆開始領域を位置せしめる工程、又は平均粒子径が10μm以下の微粒子芯粒子粉体を微粒子高分散処理手段群の最終処理により気中に分散させて、その芯粒子粉体の粒子の分散度βを70%以上とする空間領域の内の回収手段の回収部に回収する全ての粒子が通過する面を含む空間領域に被覆空間の被覆開始領域を位置せしめる工程、により被覆セラミックス粒子を調製する、請求項1又は請求項4に記載の被覆セラミックス粒子の製造方法。
- 使用する、芯粒子粉体の粒子の粒度分布が、平均粒子径をDMとしたとき、体積基準頻度分布で(〔DM/5,5DM〕,≧90%)である、請求項1、請求項4、又は請求項5に記載の被覆セラミックス粒子の製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の被覆セラミックス粒子又は被覆セラミックス粒子を含む混合物を焼結することを特徴とするセラミックス基焼結体の製造方法。
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