JP3545291B2 - ミキサ回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの高周波信号を入力とし、これらを多重した周波数信号を出力するミキサ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のミキサ回路を用いた送信器のブロック図を図5に示す。図5において、11はミキサ回路、20は所望の周波数成分の信号だけを通すバンドパスフィルタ(以下、BPFと表記)、30はパワーアンプ、40はアンテナである。BBはベースバンド信号であり、その周波数はωBである。説明を簡単にするため、ベースバンド信号BBをBB=cosωBtで表すことにする。LOはローカル信号であり、その周波数はω0である。説明を簡単にするため、ローカル信号LOをLO=cosω0tで表すことにする。
【0003】
以下、図5の送信器の動作を簡単に説明する。ベースバンド信号BBとローカル信号LOはミキサ回路11によって掛け合わされ、周波数成分cos(ω0+ωB)t+cos(ω0−ωB)tの信号がミキサ回路11から出力される。ミキサ回路11の出力をBPF20に入力すると、BPF20により周波数成分cos(ω0+ωB)tの信号だけが抽出される。これで、ベースバンド信号BBとローカル信号LOのそれぞれの周波数を足した周波数の信号が得られる。そして、BPF20の出力信号をパワーアンプ30によって増幅し、無線電波としてアンテナ40から送出する。このようにミキサ回路11は、2つの高周波信号を入力とし、これらの高周波信号を掛け合わせた周波数の信号を出力することができる。
【0004】
図6にミキサ回路11の回路図を示す。図6において、Q5〜Q10はNchMOS電界効果トランジスタ、Rは抵抗素子、Iは定電流源、BBN,BBPはベースバンド信号、LON,LOPはローカル信号、RFN,RFPはミキサ回路11の出力無線信号である。図6の回路は、位相が互いに180度ずれた信号(以下、差動信号と表記)を用いる、差動型のギルバートセルと呼ばれるものである。すなわち、ベースバンド信号BBN,BBPは位相が互いに180度ずれた差動信号であり、同様にローカル信号LON,LOPも差動信号である。
【0005】
実際のミキサ回路では、入力されたベースバンド信号BBやローカル信号LOが出力無線信号に漏れ出す。これらの信号は、出力無線信号としては不要な信号であるが、必要な信号(例えば、cos(ω0+ωB)t)に近い周波数を有するため、BPF20で取り除くことが現実には難しい。そこで、図6の回路のように差動信号を用いることで、この不要信号を相殺でき、理想的なミキサ回路に近い特性を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のミキサ回路では、高い無線周波数の信号を出力しようとすると、その特性から高い周波数のローカル信号LOが必要になる。高周波のローカル信号LOを生成するには、高い発振周波数をもった水晶発振子が必要になったり、水晶発振子の限界を超える高い周波数ではPLL(位相同期ループ)回路が必要になったりする。水晶発振子やPLL回路は、高価な部品であり、また品薄な部品となることもある。その結果、従来のミキサ回路を無線機器に使用すると、大量生産ができない場合があり、またコストが高くなってしまうという問題点があった。
本発明の目的は、上述の問題を解決するべく、低い周波数の入力信号で高い周波数の信号を生成することができるミキサ回路を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のミキサ回路は、入力端子に主信号となるベースバンド信号(BB)が入力され、第1の出力端子が第1の電源に接続された第1の導電性の第1のトランジスタ(Q1)と、第1の出力端子が第1の電源に接続され、第2の出力端子が信号出力端子となる第1の導電性の第2のトランジスタ(Q2)と、入力端子に前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するためのローカル信号(LO)が入力され、第1の出力端子が第1のトランジスタの第2の出力端子に接続され、第2の出力端子が第2のトランジスタの入力端子に接続された第2の導電性の第3のトランジスタ(Q3)と、一端が第2の電源に接続され、他端が第1のトランジスタの第2の出力端子と第3のトランジスタの第1の出力端子との接続点に接続された抵抗素子(R)とを有し、前記第1、第2、第3のトランジスタをMOS電界効果トランジスタとし、前記第1、第2、第3のトランジスタの入力端子をゲート端子とし、第1の出力端子をソース端子とし、第2の出力端子をドレイン端子とするものである。
【0008】
また、本発明のミキサ回路は、入力端子に主信号となるベースバンド信号(BB)が入力され、第1の出力端子が第1の電源に接続された第1の導電性の第1のトランジスタ(Q1)と、第1の出力端子が第1の電源に接続され、第2の出力端子が信号出力端子となる第1の導電性の第2のトランジスタ(Q2)と、入力端子にベースバンド信号を高周波信号に変換するためのローカル信号(LO)が入力され、第1の出力端子が第1のトランジスタの第2の出力端子に接続され、第2の出力端子が第2のトランジスタの入力端子に接続された第2の導電性の第3のトランジスタ(Q3)と、入力端子にベースバンド信号が入力され、第1の出力端子が第2の電源に接続され、第2の出力端子が第1のトランジスタの第2の出力端子と第3のトランジスタの第1の出力端子との接続点に接続された第2の導電性の第4のトランジスタ(Q4)とを有し、前記第1、第2、第3、第4のトランジスタをMOS電界効果トランジスタとし、前記第1、第2、第3、第4のトランジスタの入力端子をゲート端子とし、第1の出力端子をソース端子とし、第2の出力端子をドレイン端子とするものである。
【0009】
また、本発明のミキサ回路の1構成例は、請求項1または2記載のミキサ回路を2つ用い、2つの第2のトランジスタの第2の出力端子同士を接続し、ベースバンド信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの第1のトランジスタの入力端子に入力し、ローカル信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの第3のトランジスタの入力端子に入力するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
[実施の形態の1]
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態となるミキサ回路を用いた送信器のブロック図である。図1において、10はミキサ回路、20は所望の周波数成分の信号だけを通すバンドパスフィルタ(以下、BPFと表記)、30はパワーアンプ、40はアンテナである。BBは主信号となるベースバンド信号であり、その周波数はωBである。説明を簡単にするため、ベースバンド信号BBをBB=cosωBtで表すことにする。LOはベースバンド信号BBを高周波信号に変換するためのローカル信号であり、その周波数はω0/nである(nは2以上の正の整数)。説明を簡単にするため、ローカル信号LOをLO=cos(ω0/n)tで表すことにする。
【0011】
以下、図1の送信器の動作を簡単に説明する。ミキサ回路10は、従来のミキサ回路11と異なり、入力されたローカル信号LOの高調波成分を発生させるようにしている。ベースバンド信号BBとローカル信号LOはミキサ回路10によって掛け合わされ、ベースバンド信号BBの基本波成分あるいは高調波成分とローカル信号LOとが掛け合わされた、cos(ω0/n+ωB)t+cos(ω0/n−ωB)t+cos(2ω0/n+ωB)t+cos(2ω0/n−ωB)t・・・・+cos(ω0+ωB)t+cos(ω0−ωB)tの信号がミキサ回路10から出力される。
【0012】
BPF20の通過帯域は、周波数ωBとω0とを足した周波数の信号が通過するように設定される。これにより、ミキサ回路10の出力をBPF20に入力すると、BPF20により周波数成分cos(ω0+ωB)tの信号だけが抽出され、ベースバンド信号BBの周波数ωBとローカル信号LOのn倍の周波数ω0とを足した周波数の信号が得られる。そして、BPF20の出力信号をパワーアンプ30によって増幅し、無線電波としてアンテナ40から送出する。このように、入力されたローカル信号LOの高調波成分をミキサ回路10によって発生させるようにしているため、結果としてローカル信号LOの周波数を従来の1/nにすることができる。
【0013】
図2に本実施の形態のミキサ回路10の回路図を示す。図2において、Q1,Q2はNchMOS電界効果トランジスタ、Q3はPchMOS電界効果トランジスタ、Rは抵抗素子、RFは出力無線信号、VDDは電源電圧である。また、Gはゲート端子、Sはソース端子、Dはドレイン端子である。
以下、図2のミキサ回路10の動作を簡単に説明する。まず、ベースバンド信号BBによって制御されるトランジスタQ1と抵抗素子Rとで決まる電圧信号を、トランジスタQ3を介してトランジスタQ2のゲート端子Gに入力する。
【0014】
このとき、トランジスタQ3のゲート端子Gにローカル信号LOを入力してトランジスタQ3を制御することにより、トランジスタQ3がローカル信号LOに応じて導通状態または非導通状態に変化する。したがって、トランジスタQ3が導通状態のとき、トランジスタQ2のゲート端子Gには、トランジスタQ1と抵抗素子Rとで決まる電圧が印加される。また、トランジスタQ3が非導通状態のとき、トランジスタQ2のゲート端子Gの電圧は、トランジスタQ2のゲート端子Gの寄生容量によって保持される。このような動作をサンプル−ホールドと呼び、本発明のミキサ回路はサンプル−ホールド型のミキサ回路である。
【0015】
このように、ベースバンド信号BBで制御された信号をローカル信号LOでサンプリングすると、ローカル信号LOの高調波成分が多数発生する。この高調波成分の信号とベースバンド信号BBが多重されるため、前述のようにcos(ω0/n+ωB)t+cos(ω0/n−ωB)t+cos(2ω0/n+ωB)t+cos(2ω0/n−ωB)t・・・・+cos(ω0+ωB)t+cos(ω0−ωB)tの出力無線信号RFが得られる。
本回路を用いた場合、ローカル信号LOの例えば3次高調波を効率良くつくりだすことができる。その結果、ローカル信号LOとしては、従来に比べて1/3の周波数でよいことになる。
【0016】
[実施の形態の2]
図3は本発明の第2の実施の形態となるミキサ回路の回路図である。図3において、Q1,Q2はNchMOS電界効果トランジスタ、Q3,Q4はPchMOS電界効果トランジスタである。本実施の形態では、抵抗素子Rの代わりにトランジスタQ4を用いることが実施の形態の1と異なる。本ミキサ回路の動作は実施の形態の1とほぼ同じである。
【0017】
ただし、本実施の形態では、ベースバンド信号BBによって制御されるトランジスタQ1,Q4に導電性の異なるものを用いている。したがって、トランジスタQ1,Q4はベースバンド信号BBに応じて交互にオン/オフするので、電源からの直流電流がトランジスタQ1,Q4を介してGND(接地)に流れることがなくなる。その結果、実施の形態の1に比べて低電力化することができる。
【0018】
[実施の形態の3]
図4は本発明の第3の実施の形態となるミキサ回路の回路図である。図4において、Q1N,Q1P,Q2N,Q2PはNchMOS電界効果トランジスタ、Q3N,Q3PはPchMOS電界効果トランジスタ、RN,RPは抵抗素子、Cはコンデンサ、Lはインダクタである。また、ベースバンド信号BBN,BBPは位相が互いに180度ずれた差動信号であり、同様にローカル信号LON,LOPも差動信号である。
【0019】
本実施の形態のミキサ回路は、実施の形態の1のミキサ回路を2つ用い、2つのトランジスタQ2N,Q2Pのドレイン端子D同士を接続して、差動化したものである。このように接続することで、差動信号出力を電流加算することができ、図6で示したミキサ回路と同様にベースバンド信号BBやローカル信号LOの漏れを相殺することができる。なお、コンデンサCとインダクタLによる回路は負荷回路の1例であり、これに限るものではない。また、実施の形態の1のミキサ回路の代わりに実施の形態の2のミキサ回路を2つ用いてもよい。
【0020】
なお、以上の実施の形態では、Q1(Q1N,Q1P),Q2(Q2N,Q2P)にNchMOS電界効果トランジスタ、Q3(Q3N,Q3P),Q4にPchMOS電界効果トランジスタを用い、第1の電源をGND(接地)、第2の電源をVDDとしているが、トランジスタの導電性を入れ替えて、Q1(Q1N,Q1P),Q2(Q2N,Q2P)にPchMOS電界効果トランジスタ、Q3(Q3N,Q3P),Q4にNchMOS電界効果トランジスタを用いてもよい。この場合には、第1の電源をVDD、第2の電源をGNDとすればよい。
【0021】
また、以上の実施の形態では、ミキサ回路の使用例として送信器を用いて説明しているが、本発明のミキサ回路を受信器に用いても同様にローカル信号LOの周波数を1/nにできる効果がある。以上のように、本発明のミキサ回路を用いれば、入力されたローカル信号LOの高調波成分を効率よく発生させ、それを用いて周波数多重を行うことができるため、入力信号の周波数を低減できる効果がある。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、第1の導電性の第1のトランジスタ、第1の導電性の第2のトランジスタ、第2の導電性の第3のトランジスタ及び抵抗素子を設けることにより、入力されたローカル信号の高調波成分を効率よく発生させ、それを用いて周波数多重を行うことができるため、ローカル信号の周波数を低減できる効果がある。そのため、本発明のミキサ回路を無線機器に用いれば、PLL回路を用いる必要がなく、安価で安定的に供給される周波数の低い水晶発振子を用いることができ、大量生産や低コスト化を図ることができ、効果大である。
【0023】
また、抵抗素子の代わりに第2の導電性の第4のトランジスタを用いることにより、低電力化することができる。
【0024】
また、ミキサ回路を2つ用い、2つの第2のトランジスタの第2の出力端子同士を接続し、ベースバンド信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの第1のトランジスタの入力端子に入力し、ローカル信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの第3のトランジスタの入力端子に入力することにより、ベースバンド信号やローカル信号の信号出力端子への漏れを相殺することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態となるミキサ回路を用いた送信器のブロック図である。
【図2】図1のミキサ回路の回路図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態となるミキサ回路の回路図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態となるミキサ回路の回路図である。
【図5】従来のミキサ回路を用いた送信器のブロック図である。
【図6】従来のミキサ回路の回路図である。
【符号の説明】
10…ミキサ回路、20…バンドパスフィルタ、30…パワーアンプ、40…アンテナ、BB、BBN、BBP…ベースバンド信号、LO、LON、LOP…ローカル信号、Q1、Q2、Q1N、Q1P、Q2N、Q2P…NchMOS電界効果トランジスタ、Q3、Q4、Q3N、Q3P…PchMOS電界効果トランジスタ、R、RN、RP…抵抗素子。
Claims (3)
- 入力端子に主信号となるベースバンド信号が入力され、第1の出力端子が第1の電源に接続された第1の導電性の第1のトランジスタと、
第1の出力端子が第1の電源に接続され、第2の出力端子が信号出力端子となる第1の導電性の第2のトランジスタと、
入力端子に前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するためのローカル信号が入力され、第1の出力端子が前記第1のトランジスタの第2の出力端子に接続され、第2の出力端子が前記第2のトランジスタの入力端子に接続された第2の導電性の第3のトランジスタと、
一端が第2の電源に接続され、他端が前記第1のトランジスタの第2の出力端子と前記第3のトランジスタの第1の出力端子との接続点に接続された抵抗素子とを有し、
前記第1、第2、第3のトランジスタをMOS電界効果トランジスタとし、前記第1、第2、第3のトランジスタの入力端子をゲート端子とし、第1の出力端子をソース端子とし、第2の出力端子をドレイン端子とすることを特徴とするミキサ回路。 - 入力端子に主信号となるベースバンド信号が入力され、第1の出力端子が第1の電源に接続された第1の導電性の第1のトランジスタと、
第1の出力端子が第1の電源に接続され、第2の出力端子が信号出力端子となる第1の導電性の第2のトランジスタと、
入力端子に前記ベースバンド信号を高周波信号に変換するためのローカル信号が入力され、第1の出力端子が前記第1のトランジスタの第2の出力端子に接続され、第2の出力端子が前記第2のトランジスタの入力端子に接続された第2の導電性の第3のトランジスタと、
入力端子に前記ベースバンド信号が入力され、第1の出力端子が第2の電源に接続され、第2の出力端子が前記第1のトランジスタの第2の出力端子と前記第3のトランジスタの第1の出力端子との接続点に接続された第2の導電性の第4のトランジスタとを有し、
前記第1、第2、第3、第4のトランジスタをMOS電界効果トランジスタとし、前記第1、第2、第3、第4のトランジスタの入力端子をゲート端子とし、第1の出力端子をソース端子とし、第2の出力端子をドレイン端子とすることを特徴とするミキサ回路。 - 請求項1または2記載のミキサ回路を2つ用い、2つの前記第2のトランジスタの第2の出力端子同士を接続し、前記ベースバンド信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの前記第1のトランジスタの入力端子に入力し、前記ローカル信号として位相が互いに180度ずれた差動信号を2つの前記第3のトランジスタの入力端子に入力することを特徴とするミキサ回路。
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