JP3544914B2 - 光学顕微鏡装置および顕微鏡観察方法。 - Google Patents

光学顕微鏡装置および顕微鏡観察方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種材料の組織構造の観察に適した光学顕微鏡装置および顕微鏡観察方法に関するものである。本発明の光学顕微鏡装置および顕微鏡観察方法の観察対象となり得る材料のとして、ポリエチレンフィルム等の高分子材料や、植物、病理組織等の生体材料や、塗液、乳液等の懸濁液や、半導体材料等が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
各種材料の組織構造は、その物性と密接に相関していることから、その組織構造を正確に評価・解析することが重要となる。そのために、多くの手法が開発され活用されているが、光学顕微鏡装置はその中でも、利用のしやすさや得られる情報の多様性等から、材料の組織構造観察法として最も一般的に利用される手法となっている。
【0003】
そして、従来の光学顕微鏡装置では、被検査物に対する照明法として、被検査物を一様に照射し、かつ像の分解能を高めるために、平行光を入射するケーラー照明法が通常用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の光学顕微鏡装置による観察は、対物レンズによって被検査物の拡大された実像を単に形成し、それを接眼レンズでさらに拡大して行うだけである。すなわち、被検査物で反射あるいは透過した光の強度に起因する像を観察するだけなので、異方性の有無、配向度といった組織構造を観察できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学顕微鏡装置および顕微鏡観察方法はこのような課題を解決するためになされたものである。
【0006】
本発明の光学顕微鏡装置は、空間の一点に収束する収束光を照明光として照射する照明手段と、照明光の収束点の手前に被検査物を載置する被検査物載置台と、前記照明光が被検査物において透過または反射した光をひとたび収束点に収束させた後に入射するように配置された対物レンズと、収束点を含み照明光の光軸に直交する回折像面と被検査物との相対的な位置を任意に変更できる調整機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
このように、平行光に代わって収束光を照明光として用いると、極めてコントラストの高い、焦点深度の深い観察像を得ることができる。
【0008】
この場合、照明光の収束点を含み照明光の光軸に直交する面には、照明光による被検査物のフーリエ変換像すなわち回折像が形成される。この光学顕微鏡装置によれば、対物レンズの前方にこの回折像を形成させることができるので、回折像そのものを観察したり、回折像に対して操作を加えて所望の処理を施したりすることができる。
【0009】
従来の光学顕微鏡装置では、回折像は対物レンズの後側焦点面、すなわち、鏡筒内部に形成されるので、接眼レンズをはずさない限り観察できないし、いわんや操作を加えたりすることは不可能である。
【0010】
回折像には被検査物の構造情報が集約されている。換言すると、被検査物の組織構造に応じた回折像が形成され、被検査物の組織構造が異なっていれば、その回折像も異なったものとなる。したがって、組織構造と回折像との関係が判っていれば、回折像から逆に被検査物の組織構造を知ることができる。
この光学顕微鏡装置は、回折像面と被検査物との相対的な位置を任意に変更できる調整機構を備えている。通常は、収束する照明光の出射面となるコンデンサレンズの位置を変えることにより収束点の位置、すなわち回折像面の位置を変える。回折像面と被検査物との距離を変えると、回折像の大きさが変化する。距離を離すほど、回折像を大きくすることができる。
【0011】
対物レンズは、回折像面および被検査物のいずれにもに焦準(ピント)を合わせることができるようになっていることが望ましい。これにより、被検査物の実像と回折像を共に観察することができ、被検査物の構造情報の取得を増やすことができる。
【0012】
この光学顕微鏡装置は、回折像面の位置に配置され、照明光が被検査物において透過または反射した光の一部を選択的に遮蔽する空間絞りを備えることが望ましい。
【0013】
この空間絞りにより、所望の回折光を選択して対物レンズに入射させることができるからである。対物レンズの焦準を被検査物に合わせれば、選択された回折光のみによる被検査物の実像(暗視野像)を観察することができる。しかも、回折光の選択が自由なので、同一の被検査物について所望の回折光に応じた様々な暗視野像を観察することができる。なお、直接光を選択してやれば、明視野像になる。
【0015】
この光学顕微鏡装置は、空間絞りを通過した光の方向と対物レンズの光軸とを略一致させる調整機構を備えていることが望ましい。空間絞りにより光量が減少するが、この2つの光軸を略一致させることにより、ひずみの少ない明るい像を得ることができる。
【0016】
この光学顕微鏡装置は、照明光に単色光を用いてもよい。単色光を用いることにより、白色光では得られなかった、組織構造を知る上で重要な像を得ることができる。
【0017】
本発明の顕微鏡観察方法は、収束点を含む対物レンズの光軸に直交する回折像面に対物レンズの焦準を合わせることにより、回折像面上に形成された被検査物の照明光による回折像を観察するものである。
被検査物について、回折像と組織構造との関係を予め取得しておけば、回折像を直接観察することにより、回折像のパターンの特徴から被検査物の組織構造を知ることができる。
このような光学顕微鏡装置を用いた本発明の顕微鏡観察方法の一つは、対物レンズの焦準を被検査物に合わせて被検査物を観察するものである。収束光を照明光として用いるので、極めてコントラストの高い、焦点深度の深い観察像を得ることができる。
【0018】
このような光学顕微鏡装置を用いた本発明の他の顕微鏡観察方法は、空間絞りを用いて回折像面上の所望の領域のみの光を通過させ、空間絞りを通過した光について対物レンズの焦準を被検査物に合わせて被検査物を観察するものである。
【0019】
空間絞りで選択された回折光のみによる被検査物の実像(暗視野像)を観察することができる。回折光の選択が自由なので、同一の被検査物について回折光に応じた様々な暗視野像を観察することができる。これにより被検査物の組織構造をさらに詳しく知ることができる。
【0022】
本発明の他の顕微鏡観察方法は、回折像面に対物レンズの焦準を合わせることにより、回折像面上に形成された被検査物の照射光による回折像を観察し、回折像の所望の領域のみの光を通過させるように空間絞りを調整した後、対物レンズの焦準を被検査物に合わせることにより、空間絞りを通過した光によって被検査物を観察するものである。
【0023】
回折像に基づいて実像(暗視野像)の観察に用いる回折光を選択するので、いかなる回折光に基づく暗視野像かを知ることができる。これにより被検査物の組織構造をさらに詳しく知ることができる。
【0024】
本発明の顕微鏡観察方法では、対物レンズが回折像面の近傍に位置したときに被検査物に焦準が合うように回折像面の位置を調整して被検査物を観察することが望ましい。回折像面は照射光が収束する位置なので、そこに対物レンズが置かれたときに回折光をロスすることなく最も像が明るくなるためである。
【0025】
空間絞りの形状または回折像面上での位置を変えることにより、もしくは、対物レンズの光軸に対する照明光の光軸の角度を変えることにより、対物レンズによる被検査物の実像形成にあずかる回折光を選択して被検査物を観察することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態である光学顕微鏡装置の基本構成を示す図である。光源1とコンデンサレンズ2によって、空間の一点4に収束する収束光を照明光として照射する照明手段3が構成されている。光源1から出力される光は、白色光でもよいし、単色光でもよい。
【0027】
照明手段3の上方には、被検査物(標本)6を載置する被検査物載置台(ステージ)5が配置されている。ステージ5は、その中央に照明手段3からの照明光を透過する開口を有し、照明光はこの開口を通ってさらに上方の収束点4で収束する。これにより、収束点4を通り照明光の光軸7に垂直な平面8には、被検査物6の照明光によるフーリエ変換像すなわち回折像が形成される。ここでは、この平面8を回折像面と呼ぶことにする。
【0028】
コンデンサレンズ2は、ステージ5に対して光軸7の方向に移動可能となっている。コンデンサレンズ2を光軸7の方向に移動させることにより、ステージ5に載置された被検査物6と収束点4との距離、すなわち、被検査物6と回折像面8との距離を変化させることができる。
【0029】
回折像面8上またはその近傍の位置には、回折像面8と平行に空間絞り9が設けられている。図2は空間絞り9の平面図であり、遮光板の中央に、たとえば直径数百ミクロンの円形開口が形成されている。この空間絞り9は、光軸7に直交する方向に移動可能となっており、回折像面8上に形成される回折像の観察視野を選択できる。また、この空間絞り9は観察途中でも、容易に脱着可能となっている。
【0030】
なお、遮光板に形成する開口形状すなわち観察視野は、必ずしも円形でなくてもよい。目的に応じて方形、半円形、扇形等を適宜選択することができる。
【0031】
空間絞り8のさらに上方には、対物レンズ10、結像レンズ11および接眼レンズ12を備えた鏡筒13が配置されている。この鏡筒13の内部構成自体は、従来からある一般的なものであり、光軸7の方向に移動させることにより、焦準合わせを行うことができるようなっている。
【0032】
しかし、焦準合わせのための鏡筒移動可能範囲は、従来の一般的な顕微鏡に比べて十分に長いことが必要である。すなわち、少なくとも被検査物6と回折像面8の両方に焦準合わせができるようになっている。
【0033】
対物レンズ10は、被検査物6に焦準を合わせたときの位置が空間絞り9よりも後方(上方)になるような焦点距離を有している。したがって、焦準合わせ動作において、空間絞り9が邪魔になることがない。
【0034】
なお、図3に示すように、対物レンズ10が空間絞り9に最も近づいたときに被検査物6に焦準が合うように、回折像面8の位置を調整すると、最も明るい像を得ることができる。
【0035】
対物レンズ10が捕らえた像は、結像レンズ11の後方にある中間像位置14に形成され、接眼レンズ12はこの像を観察できるように焦準が調整されている。
【0036】
図4は、この光学顕微鏡装置のより実際的な構成を示す図であり、図1と同一の要素に同一の符号を付すことにより、詳細な説明は省略する。
【0037】
つぎに、この光学顕微鏡装置を用いた顕微鏡観察方法の一つを説明する。ステージ5に被検査物6を載置し、照明手段3によって点4に収束する照明光を被検査物6に照射する。
【0038】
なお、以後の説明を容易にするために、被検査物6として、図5の顕微鏡写真に示すような、縦横に複数の線が等間隔に配列されたテストパターンを用いる。
【0039】
まず、空間絞り9をはずした状態で、対物レンズ10の焦準を回折像面8に合わせる。図6の顕微鏡写真はこのときに得られた像である。すなわち、回折像面8に形成された、図5のテストパターンの回折像である。
【0040】
なお、図5は空間絞り9をはずした状態で、対物レンズ10の焦準を被検査物6に合わせたときの写真であるが、従来の光学顕微鏡装置のような照明光に平行光を用いた場合に比べてコントラストの高い像となっている。
【0041】
続いて、空間絞り9を装着し、回折像の観察視野を選択する。図6において、中央に6角形の高輝度領域があり、その上下左右の4箇所に中央の高輝度領域とほぼ同様の形状で少し暗い領域(回折スポット)がぼんやりと見える。
【0042】
ついで、空間絞り9を動かして、この4つの回折スポットのいずれかに観察視野を絞る。その後、その観察視野において、対物レンズ10の焦準を被検査物6に合わせる。図7および図8の顕微鏡写真は、このときに得られたものである。このように、観察視野の選び方によって、被検査物6の像が異なる。これは、回折光の一部を用いて像が形成されるからである。
【0043】
ちなみに、回折像における高輝度領域の上下いずれかの少し暗い領域に観察視野を絞った場合には、図7に示すような左右に延びる直線を選択的に観察でき、高輝度領域の左右いずれかの少し暗い領域に観察視野を絞った場合には、図8に示すような上下に延びる直線を選択的に観察できる。
【0044】
なお、高次の回折光を用いて結像させようとすると、結像に与る光が対物レンズの光軸と大きくずれてしまい、得られる像はひずみの大きい像になる。したがって、このような場合、たとえばコンデンサレンズを調整するなどして、選択された回折光をできるだけ光軸に近づけると好ましい結果が得られる。
【0045】
説明を容易にするために被検査物6にテストパターンを用いたが、実際の被検査物の場合には、回折像の観察視野を適宜選択することにより、組織構造や配向状態が強調された像を観察することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、照明光を被検査物に照射し、透過した光を用いて観察しているが、反射した光を観察してもよい。これは、透過率の極めて低い被検査物の表面組織構造の観察等に適している。
【0047】
また、本実施形態では、コンデンサレンズ2の光軸と対物レンズ10の光軸を平行に保っているが、対物レンズ10の光軸に対するコンデンサレンズ2の光軸の角度を可変にできるように構成してもよい。コンデンサレンズ2の光軸の角度を変えることにより観察に与る回折光を変化させることができ、組織構造や配向を知るための像情報を増やすことができる。
【0048】
本発明による被検査物としては、高分子材料(たとえば、ポリエチレン等のポリマーフィルム)、生体材料、セラミックス、金属他を挙げることができるが、組織構造を観察し得るという点で、ポリマーフィルムは最も典型的な対象材料である。
【0049】
そこで、被検査物としてポリマーフィルムを観察したときの具体的な実施例を説明する。
【0050】
100 W ハロゲンランプおよび口径 100μm の円形のピンホールからなる点光源1の前方に、開口数 0.4 のコンデンサーレンズ2を配置することにより収束する照明光を得た。本コンデンサーレンズ2は光軸7と平行な方向に最大 25 mm 以上移動させることができるようにした。なお、光源に単色化のためのフィルターは取り付けなかった。
【0051】
コンデンサーレンズ2の後方にステージ5を配置し、その上にポリマーフィルムを固定したスライドグラスを載せた。ステージ5は光軸7と平行な方向に固定した。一方、光軸7と垂直な方向には、観察視野を選択するために移動することができるようにした。
【0052】
さらにステージ5の後方に空間絞り9として口径 800μm の円形のピンホールが設けられた遮光板を配置した。この遮光板は、試料(ポリマーフィルム)を透過した光の中から遮蔽する直接光または散乱光を選択するために光軸7と垂直でかつ互いに直角に交わる2方向にそれぞれ 最大 5 mm 移動させることができるようにした。また、収束面(回折像面)8とピンホール面を一致させるために光軸7と平行な方向に最大 5 mm 移動させることができるようにした。
【0053】
空間絞り9の後方に長作動距離の対物レンズ10((株)ニコン製 CF IC EPIPlan5×、作動距離 22.5 mm、開口数 0.13、倍率 5 倍)、および三眼鏡筒13((株)ニコン製 TI )をこの順番で配置した。
【0054】
三眼鏡筒13には図示省略した写真撮影装置((株)ニコン製 H−3 )および接眼レンズ12((株)ニコン製 CFWN10×、倍率 10 倍)を取り付け、肉眼による観察、および写真撮影ができるようにした。対物レンズ10および三眼鏡筒13は一体となって光軸7と平行な方向に移動することにより、焦準を試料像あるいは回折像にそれぞれ合わせることができるようにした。
【0055】
観察結果は、高感度インスタント白黒フィルム(富士写真フィルム(株)製FP−3000B SUPER SPEEDY、ISO 3200)を用い、回折像および試料像それぞれについて一定の露光時間にて写真撮影した。
【0056】
<試料(被検査物)>
表1に示すブレンド比を持つ4種類の直鎖状低密度ポリエチレン( LLDPE ) /低密度ポリエチレン( LDPE )ブレンド系について、表2に示す条件でインフレーション法により加工されたポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼を作成した。得られたフィルムから約 1 cm × 1 cmの大きさにはさみで切り出したものを、フィルムの引き取り方向が後述の写真の上下方向となるようにかつしわが生じないように粘着テープでスライドグラスに貼り付けて試料とした。得られた試料の試料像を本発明の光学顕微鏡装置で観察した。
【0057】
【表1】
Figure 0003544914
【0058】
【表2】
Figure 0003544914
【0059】
観察例1
空間絞り9を光軸7から取り除いたのち収束する照明光を試料6に照射し、透過した光束の直径をトレーシングペーパー等で確認することにより、収束面すなわち回折像面8の位置が試料6と対物レンズ10の間になるようにコンデンサーレンズ2の位置を調整した。次に、対物レンズ10の焦準を収束面8に合わせることにより回折像を得た。図9〜図12はそれぞれポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼に対応する回折像の顕微鏡写真である。ヘイズが大きい試料ほど散乱光が大きく広がるとともに、直接光の強度が小さくなった。図13〜図16は、このとき、対物レンズ10の焦準をそれぞれポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼に合わせたときの顕微鏡写真である。このときの試料像には不均一構造は見られなかった。
【0060】
観察例2
図9〜図12の回折像を得たのち、空間絞りとして口径800 μm の円形のピンホールを有する遮光板9を収束面8と同一面上に挿入することにより、直接光の右側にある散乱光以外を遮蔽した。図17〜図20は、このときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼についての回折像を示す顕微鏡写真である。そののち、顕微鏡の焦準を試料位置まで移動させることにより、試料像として空間絞り9を透過した光のみで形成させた像を得た。その結果、得られた試料像に間隔約 200 μm 〜 1 mmでかつフィルムの引き取り方向に平行な不均一構造が観察された。図21〜図24の顕微鏡写真は、それぞれこのときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼の像を示す。本構造はヘイズを大きく増大させることはなかった。
【0061】
観察例3
図9〜図12の回折像を得たのち、空間絞り9として口径800 μm の円形のピンホール有する遮光板を収束面8と同一面上に挿入することにより、直接光の上側の散乱光以外を遮蔽した。図25〜図28は、このときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼についての回折像を示す顕微鏡写真である。そののち、顕微鏡の焦準を試料位置に合わせることにより、試料像として空間絞り9を透過した光のみで形成させた像を得た。図29〜図32の顕微鏡写真は、それぞれこのときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼の像を示す。その結果、ポリマーフィルム▲3▼および▲4▼すなわち LLDPE / LDPE 比 50 / 50 および 0 / 100の試料については、得られた試料像に間隔約10 μmでフィルムの引き取り方向に対し約 30 度傾いた不均一構造が観察された(図31、図32)。本構造の方向は LLDPE / LDPE 比 50 / 50 および 0 / 100の試料(ポリマーフィルム▲3▼、▲4▼)における強い散乱光の方向と対応しており、このことが LLDPE / LDPE 比 90 / 10 の試料すなわちポリマーフィルム▲2▼よりもヘイズが増大したおもな原因と考えられる。
【0062】
観察例4
図9〜図12の回折像を得たのち、観察例2および3のときと同じ空間絞り9を収束面8と同一面上に挿入することにより、直接光およびその付近の散乱光以外を遮蔽した。図33〜図36は、このときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼についての回折像を示す顕微鏡写真である。そののち、顕微鏡の焦準を試料位置に合わせることにより、試料像として空間絞り9を透過した光のみで形成させた像を得た。その結果、試料間のヘイズの違いに対応する明暗の違いが見られた。図37〜図40の顕微鏡写真は、それぞれこのときのポリマーフィルム▲1▼〜▲4▼の像を示す。特にLLDPE / LDPE ブレンド比 = 100 / 0の試料(ポリマーフィルム▲1▼)はヘイズ値が高く、球晶の規則構造が観察され、写真の暗さも際立っていることがわかる。
【0063】
比較例1
観察例1において述べたように、図13は空間絞り9を取り除いた状態でポリマーフィルム▲1▼に対物レンズ10の焦準を合わせたときの顕微鏡写真であり、不均一構造は見られなかった。しかし、照明光に平行光を用いた従来の光学顕微鏡装置により得られた図41に示す顕微鏡写真と比較すると、コントラストの高い像が得られていることが判る。
【0064】
図41の顕微鏡写真は、ポリマーフィルム▲1▼を、通常の光学顕微鏡装置((株)ニコン製 MICROPHOTFXA)に透過型偏光装置((株)ニコン製)、コンデンサレンズ((株)ニコン製ハネノケアクロマートコンデンサ)、対物レンズ((株)ニコン製CFP4×、開口数0.10、倍率4倍)、および接眼レンズ((株)ニコン製CFW10×、倍率10倍)を装備し、中間変倍部を1.25倍としたもので観察することにより、試料像を得たものである。このとき、光軸上に偏光子および検光子は挿入しなかった。観察結果は、高感度インスタント白黒フィルム(富士写真フィルム(株)製FP−3000B SUPER SPEEDY、ISO 3200)を用い、一定の露光時間にて写真撮影した。その結果、得られた試料像にはヘイズに対応する不均一構造は認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光学顕微鏡装置およびこれを用いた顕微鏡観察方法によれば、対物レンズの手前で一点に収束する照明光を用いるので、被検査物およびその回折像を対物レンズを光軸方向に移動するだけで選択的に観察できる。また、空間絞りを適当に挿入または移動させることにより、所望の回折光による被検査物の実像と回折像とを得ることができる。したがって、従来の光学顕微鏡装置では得られなかった組織構造情報や配向情報を実像または回折像として得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である光学顕微鏡装置の構成を示す図。
【図2】空間絞り9を示す平面図。
【図3】対物レンズ10を空間絞り9に近接させた状態の光学顕微鏡装置を示す図。
【図4】本発明の一実施形態である光学顕微鏡装置の一層具体的な構成を示す図。
【図5】被検査物として用いたテストパターンの実像を示す顕微鏡写真。
【図6】被検査物として用いたテストパターンの回折像を示す顕微鏡写真。
【図7】選択された一部の回折光によるテストパターンの実像を示す顕微鏡写真。
【図8】選択された一部の回折光によるテストパターンの実像を示す顕微鏡写真。
【図9】ポリマーフィルム▲1▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図10】ポリマーフィルム▲2▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図11】ポリマーフィルム▲3▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図12】ポリマーフィルム▲4▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図13】ポリマーフィルム▲1▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図14】ポリマーフィルム▲2▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図15】ポリマーフィルム▲3▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図16】ポリマーフィルム▲4▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図17】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図18】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図19】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図20】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図21】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図22】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図23】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図24】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図25】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図26】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図27】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図28】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図29】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図30】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図31】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図32】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図33】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図34】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図35】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図36】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の回折像を示す顕微鏡写真。
【図37】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲1▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図38】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲2▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図39】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲3▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図40】選択された一部の回折光によるポリマーフィルム▲4▼の実像を示す顕微鏡写真。
【図41】従来の光学顕微鏡装置によるポリマーフィルム▲1▼の実像を示す顕微鏡写真。
【符号の説明】
1…光源、2…コンデンサレンズ、3…照明手段、4…収束点、5…被検査物載置台(ステージ)、6…被検査物、7…光軸、8…回折像面、9…空間絞り、10…対物レンズ、12…接眼レンズ、13…鏡筒。

Claims (15)

  1. 空間の一点に収束する収束光を照明光として照射する照明手段と、前記照明光の前記収束点の手前に被検査物を載置する被検査物載置台と、前記照明光が前記被検査物において透過または反射した光をひとたび前記収束点に収束させた後に入射するように配置された対物レンズと、前記収束点を含み前記照明光の光軸に直交する回折像面と前記被検査物との相対的な位置を任意に変更できる調整機構とを備えたことを特徴とする光学顕微鏡装置。
  2. 前記対物レンズは、前記回折像面および前記被検査物のいずれにも焦準を合わせることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
  3. 前記回折像面の位置に配置され、前記照明光が前記被検査物において透過または反射した光の一部を選択的に遮蔽する空間絞りを備えたことを特徴とする請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
  4. 前記空間絞りを通過した光の方向と前記対物レンズの光軸とを略一致させる調整機構を備えていることを特徴とする請求項3に記載の光学顕微鏡装置。
  5. 前記照明光が単色光であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学顕微鏡装置。
  6. 請求項1に記載の光学顕微鏡装置を用いた顕微鏡観察方法において、
    前記対物レンズの焦準を前記被検査物に合わせて前記被検査物を観察することを特徴とする顕微鏡観察方法。
  7. 請求項1に記載の光学顕微鏡装置を用いた顕微鏡観察方法において、
    前記回折像面に前記対物レンズの焦準を合わせることにより、前記回折像面上に形成された前記被検査物の前記照明光による回折像を観察することを特徴とする顕微鏡観察方法。
  8. 請求項3に記載の光学顕微鏡装置を用いた顕微鏡観察方法において、
    前記空間絞りを用いて前記回折像面上の所望の領域のみの光を通過させ、前記空間絞りを通過した光について前記対物レンズの焦準を前記被検査物に合わせて前記被検査物を観察することを特徴とする顕微鏡観察方法。
  9. 請求項3に記載の光学顕微鏡装置を用いた顕微鏡観察方法において、
    前記回折像面に前記対物レンズの焦準を合わせることにより、前記回折像面上に形成された前記被検査物の前記照明光による回折像を観察し、前記回折像の所望の領域のみの光を通過させるように前記空間絞りを調整した後、前記対物レンズの焦準を前記被検査物に合わせることにより、前記空間絞りを通過した光によって前記被検査物を観察することを特徴とする顕微鏡観察方法。
  10. 対物レンズが前記回折像面の近傍に位置したときに前記被検査物に焦準が合うように前記回折像面の位置を調整して前記被検査物を観察することを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
  11. 前記空間絞りの形状または前記回折像面上での位置を変えることにより、もしくは、前記対物レンズの光軸に対する前記照明光の光軸の角度を変えることにより、前記対物レンズによる前記被検査物の実像形成にあずかる回折光を選択して前記被検査物を観察することを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
  12. 前記空間絞りを通過した光の方向と前記対物レンズの光軸とを略一致させて前記被検査物を観察することを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
  13. 前記照明光の収束点の位置を前記対物レンズの光軸方向において変えることにより、前記回折像の大きさを調整することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
  14. 前記照明光が単色光であることを特徴とする請求項6〜13のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
  15. 前記被検査物が高分子材料であることを特徴とする請求項6〜14のいずれか一項に記載の顕微鏡観察方法。
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