JP3544726B2 - ワイヤ緊張装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、ワイヤを2点間にたるみなく張り渡すためのワイヤ緊張装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
2点間に張り渡したワイヤのたるみを除去する調整要素としては、ねじやばねが用いられる。例えば実開昭62−109669号公報や特開平5−164195号公報には、引張りコイルばねを調整要素としたワイヤ緊張具が開示されている。圧縮コイルばねでたるみを除去するワイヤ緊張具もある(実開平3−118053号)。そこではボールチャックが装着されるリテーナとばねとの間にスラストベアリングを介装している。ねじを調整要素とするワイヤ緊張具は、実開昭57−12815号公報や実開平3−55761号公報に公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ばねを調整要素としてワイヤのたるみを除去する形態では、例えばばねを伸長操作し、その一端に連結したボールチャックにワイヤを挿通してクランプするだけで、簡単にしかも速やかにワイヤをぴんと張り渡すことができる。しかし、ワイヤに大きな外力が作用すると、ばねがたわみ変形してその分だけワイヤにたるみを生じやすい。この点、ねじを調整要素とする場合には、ワイヤが伸び変形しない限りたるみを生じることはない。反面、ワイヤの張り渡しに手間を要すること、ねじを締め込む際にワイヤがねじと同行回転してその縒りが解けやすいことなどの欠点を避けられない。
【0004】
本発明の目的は、調整要素としてばね及びねじの双方を備えていて、ワイヤの張り渡しを簡単にしかも速やかに行いながら、ワイヤを張り渡した後にはたるみを生じることのないワイヤ緊張装置を提供するにある。本発明の目的は、ねじを締め込んでワイヤをぴんと張り渡す際に、ワイヤの縒りが解け、あるいは過剰に捻じられてその強度が低下するのを解消できるワイヤ緊張装置を得るにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のワイヤ緊張装置は、図1に示すごとくワイヤ1の一端を固定保持するワイヤ固定具2と、ワイヤ1の他端をワイヤ固定具2から遠ざかる側へ緊張操作するワイヤ緊張具3を備えている。
ワイヤ固定具2は、ワイヤ1の端部に固定したエンド金具4を受け止める圧縮ばね5およびスラストベアリング6と、エンド金具4、圧縮ばね5、およびスラストベアリング6を収容する筒状のケース7と、ケース7の開口端に装着した取付金具9とを含む。ワイヤ緊張具3は、ワイヤ1の遊端部をクランプ固定するボールチャック12と、取付対象に連結具を介して連結固定される取付金具15とを含む。
ボールチャック12は、ケース16の外面に締緩操作用の操作部24を有し、ケース16の一端が緊張ねじ14を介して取付金具15にねじ込み連結してある。ワイヤ1を張り渡した状態における緊張ねじ14のねじ込み代を、圧縮ばね5の圧縮代と同じかこれより大きく設定する。
【0006】
具体的には、各取付金具9・15の端壁に、取付対象に設けたブラケット28を挿嵌するための連結穴10・25を通設する。連結穴10・25に挿通したブラケット28にピン30を固定して、各取付金具9・15を取付対象に連結固定する。ケース16の一端に操作部24を設けてあり、この操作部24の外面を覆う防護キャップ13がケース16にねじ込まれている。
【0007】
【作用】
ワイヤ1を張り渡す場合には、例えば各取付金具9・15を取付対象に連結し、これらにワイヤ固定具2およびワイヤ緊張具3を装着して、ワイヤ1を仮張設する。次に、操作部24に工具を当てがって、ボールチャック12を緊張ねじ14を介して取付金具15にねじ込み、ワイヤ固定具2に設けた圧縮ばね5を全圧縮させて、ワイヤ1がたるむ余地を無くす。
【0008】
仮張設時には、ワイヤ固定具2に設けた圧縮ばね5が圧縮変形するので、ワイヤ1を容易に引き寄せ操作できる。緊張ねじ14を完全に締め込んで、圧縮ばね5を全圧縮した状態では、それ以上ワイヤ1を引き寄せ操作できないので、ワイヤ1に外力が作用してもたるむことはない。ワイヤ1に作用するねじり力はスラストベアリング6で逃がすことができる。
取付金具9・15内にブラケット28を挿入し、これらをピン30で連結する構造によれば、ピン30が取付金具9・15で隠されるので、いたずらを受けにくい。ケース16に防護キャップ13をねじ込み、ケース16に設けた操作部24を覆い隠すことも、いたずら防止に役立つ。
【0009】
【発明の効果】
本発明では、圧縮ばね5を圧縮変形させてワイヤ1を仮張設し、さらにボールチャック12を取付金具15にねじ込んで圧縮ばね5を全圧縮させ、たるみを生じる余地のない状態でワイヤ1を張り渡すようにした。従ってワイヤ1を簡単にしかも速やかに張り渡すことができる。ワイヤ1を張り渡した後には、たとえ外力を受けてもワイヤ1がたるむことはなく、ぴんと張った状態を維持し続けることができ、従来のワイヤ緊張具に比べて取り扱いが容易で高度の緊張状態を維持できる。圧縮ばね5の一端をスラストベアリング6を介してケース7で受け止めているので、ワイヤ緊張具3を緊張ねじ14に沿って締緩操作するとき、ワイヤ1およびエンド金具4がねじられて、ワイヤ1の縒りが解けたり過剰に捻じられることを一掃し、その強度が低下することを解消できる。
【0010】
【実施例】
図1ないし図6は本発明に係るワイヤ緊張装置の実施例を示す。図1において符号1はワイヤ、2はワイヤ1の一端を固定保持するワイヤ固定具、3はワイヤ1の他端に設けたワイヤ緊張具である。
【0011】
ワイヤ固定具2は、ワイヤ1の端部にかしめ固定したエンド金具4を受け止める圧縮ばね5およびスラストベアリング6と、これら三者4・5・6を収容する有底筒状のケース7と、ケース7の開口端にねじ8を介して装着した取付金具9とからなる。ケース7、取付金具9、およびエンド金具4はそれぞれステンレス鋼で形成する。エンド金具4は、ワイヤ1に外嵌する軸部4aと、軸部4aの一端に設けたフランジ部4bとからなり、フランジ部4bで圧縮ばね5の一部を受け止める。軸部4aの長さは、圧縮ばね5の全圧縮寸法と同じか、これより僅かに小さく設定する。圧縮ばね5の他端はケース7の内奥端に装填したスラストベアリング6で受け止める。取付金具9は有底筒状に形成し、その端壁にブラケット28を挿嵌するための連結穴10を通設する。ケース7の筒端にはワイヤ通口7aを設ける。
【0012】
ワイヤ緊張具3は、ワイヤ1の遊端部をクランプ固定するボールチャック12と、そのケース16のワイヤ挿入端側にねじ込み装着した防護キャップ13と、ケース16の他端内面に緊張ねじ14を介してねじ込んだ取付金具15とからなる。
【0013】
ボールチャック12は、内面にテーパー面を有する多段筒状のケース16と、ケース16内に組み込んだホルダー17およびばね18と、ホルダー17内に組み込んだ大小2組のボール19・20と、ホルダー17用のロックナット21などで構成する。ケース16、ホルダー17、取付金具15、および防護キャップ13は、それぞれステンレス鋼で形成する。ボール19・20は図5に示すごとくそれぞれ3個ずつ設けてあり、各ボール19・20をホルダー17の中央に縦通したワイヤ穴22に臨む状態で、しかも各ボールチャック19・20の位相位置が60度ずつずれる状態で隣接配置する。ワイヤ1を2組のボール対で強固にクランプ固定するためである。
【0014】
ばね18は取付金具15とホルダー17との間に配置されて、ホルダー17を先に述べたテーパー面の側へ向かって移動付勢する。ホルダー17をばね18に抗してケース16内へ押し込むと、ボール19・20によるクランプ状態を解除でき、この解除移動を阻止するために、ケース16から突出するホルダー17の解除操作部にロックナット21をねじ込んでいる。
【0015】
防護キャップ13は、ケース16と同じ外径の有底筒状体からなり、その筒端にワイヤ通口13aを有する。防護キャップ13をケース16にねじ込んだ状態では、ロックナット21および操作部24の外面を防護キャップ13で覆えるのでいたずらを受けにくい。防護キャップ13がねじ込まれるケース16のねじ部側端に操作部24を設ける。図3および図4に示すように、操作部24はねじ軸の対向周面を平行に切除して形成する。この操作部24にスパナなどの工具を当てがって、緊張ねじ14を締緩操作する。
【0016】
取付金具15は有底筒状に形成し、その端壁にブラケット28を挿嵌するための連結穴25を通設する。この取付金具15の外周面に形成した雄ねじ14aと、ケース16の筒内面に形成した雌ねじ14bとで緊張ねじ14を構成する。緊張ねじ14のねじ込み代は、圧縮ばね5の圧縮代と同じか、これより大きく設定する。
【0017】
図6に示すように隣接する支柱27・27間にワイヤ1を張り渡す場合のワイヤ緊張装置の使用例を説明する。まず、ワイヤ固定具2およびワイヤ緊張具3の取付金具9・15をそれぞれケース7および16から分離し、さらに防護キャップ13およびロックナット21をケース16から分離しておく。支柱27・27にはそれぞれ断面長円状のブラケット28・28が対向する状態で溶接してある。各ブラケット28・28に取付金具9・15の連結穴10・25を挿通し、ブラケット28・28の先端のピン穴にピン30・30をそれぞれ打ち込んで、各取付金具9・15を支柱27・27と連結する(図2参照)。
【0018】
ボールチャック12のケース16を、図3に示すように緊張ねじ14のねじ山の数条がかみ合う状態で取付金具15にねじ込む。ケース16、防護キャップ13、ロックナット21の順にワイヤ1を挿通し、その遊端部をホルダー17のワイヤ穴22に差し込んでクランプ固定する。次にワイヤ固定具2をワイヤ緊張具3から遠ざかる向きに引っ張り操作しながら、ケース7を取付金具9にねじ込み、取付金具9の殆どをケース7内に位置させる。このとき、圧縮ばね5が圧縮変形するので、ワイヤ固定具2を容易に引き寄せ操作できる。
【0019】
上記のようにワイヤ1を仮張設した後、ロックナット21をホルダー17にねじ込んで、ホルダー17が解除方向へ移動するのを阻止する。この状態で操作部24にスパナ等の工具を当てがって、ボールチャック12を取付金具15にねじ込み、ワイヤ1を徐々に緊張させる。最終的には、圧縮ばね5が全圧縮するまでケース16をねじ込み操作して、ワイヤ1にたるみが生じる余地を無くす。なお、圧縮ばね5の全圧縮状態は、ケース16のねじ込み力が急激に増加することができる。もちろん、上記とは異なる手順でワイヤ1を張り渡してもよい。先に述べた圧縮ばね5の圧縮代とは、ワイヤ1を仮張設したのち圧縮ばね5が全圧縮するまでのたわみ量、あるいはエンド金具4の軸部4aがスラストベアリング6に接当するまでの圧縮ばね5のたわみ量のいずれかを意味する。
【0020】
ケース16をねじ込み操作する過程で、ワイヤ1にはねじり力が作用する。しかし、そのエンド金具4が圧縮ばね5を介してスラストベアリング6で受け止められているので、ねじ力はスラストベアリング6の回転動作によって解消され、ワイヤ1がねじり変形することはない。最後に防護キャップ13をケース16に完全にねじ込んで、操作部24およびロックナット21を覆い隠し、いたずらの余地を無くす。ブラケット28と各取付金具9・15を連結するピン30・30が、それぞれ取付金具9・15の内部に収容されることも、いたずらを排除することに役立っている。
【0021】
図7はワイヤ緊張具3の支柱27に対する連結構造を変更した別実施例を示す。そこでは、取付金具15にボルト31を挿通し、このボルト31をブラケット28に挿通したのちナット32で締結することによって、取付金具15を支柱27に固定した。この連結構造によれば、ナット32の締め込み量を調整してワイヤ1の張り具合を調整し、あるいは外気温の変化に伴うワイヤ1のたるみを除去できる。
【0022】
上記以外にスラストベアリング6は、エンド金具4のフランジ部4bと圧縮ばね5との間に配置してもよい。緊張ねじ14は、ケース16の外周面の雄ねじと、取付金具15の内周面の雌ねじとで構成することができる。本発明のワイヤ緊張具は、床と天井との間や壁面に沿ってワイヤを固定する場合などにも適用できる。ワイヤ1の張力や直径が小さい場合には、一組のボールを備えた通常形態のボールチャック12でワイヤ1をクランプ固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ緊張装置の縦断面図である。
【図2】ワイヤ固定具の縦断面図である。
【図3】ワイヤ緊張具の使用状態を示す一部破断正面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図1におけるB−B線断面図である。
【図6】ワイヤの使用態様例を示す正面図である。
【図7】ワイヤ固定具の別実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ
2 ワイヤ固定具
3 ワイヤ緊張具
4 エンド金具
5 圧縮ばね
6 スラストベアリング
7 ケース
9 取付金具
12 ボールチャック
14 緊張ねじ
15 取付金具
Claims (3)
- ワイヤ1の一端を固定保持するワイヤ固定具2と、ワイヤ1の他端をワイヤ固定具2から遠ざかる側へ緊張操作するワイヤ緊張具3を備えているワイヤ緊張装置であって、
ワイヤ固定具2は、ワイヤ1の端部に固定したエンド金具4を受け止める圧縮ばね5およびスラストベアリング6と、エンド金具4、圧縮ばね5、およびスラストベアリング6を収容する筒状のケース7と、ケース7の開口端に装着した取付金具9とを含み、
ワイヤ緊張具3は、ワイヤ1の遊端部をクランプ固定するボールチャック12と、取付対象に連結具を介して連結固定される取付金具15とを含み、
ボールチャック12は、ケース16の外面に締緩操作用の操作部24を有し、ケース16の一端が緊張ねじ14を介して取付金具15にねじ込み連結されており、
ワイヤ1を張り渡した状態における緊張ねじ14のねじ込み代が、圧縮ばね5の圧縮代と同じかこれより大きく設定してあるワイヤ緊張装置。 - 各取付金具9・15の端壁に、取付対象に設けたブラケット28を挿嵌するための連結穴10・25が通設されており、
連結穴10・25に挿通したブラケット28にピン30を固定して、各取付金具9・15が取付対象に連結固定してある請求項1記載のワイヤ緊張装置。 - ケース16の一端に操作部24が設けられており、
この操作部24の外面を覆う防護キャップ13が、ケース16にねじ込み固定してある請求項1又は2記載のワイヤ緊張装置。
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