JP3544066B2 - 照明装置および撮影用閃光発光装置 - Google Patents

照明装置および撮影用閃光発光装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光源からの射出光を効率よく制御する照明装置および撮影用閃光発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光源からの光を複数回反射させる光路を介して被写体に照射させる照明装置としては、特開平4−16833号公報に示されるように、近距離の被写体に対し拡散光を得ることを目的とし、光源から射出された光束をその前面に略平行に配置された複数の平面鏡で複数回反射させて拡散させた後、被写体に照射させるものが提案されている。
【0003】
また、本出願人が特開昭59−165037号公報で提案したように、閃光発光管から射出した光束を帯状に集光させ、その集光部にファイバーを配置し、これを適宜束ねることによって所定の配光が得られるように構成したものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記前者の従来例では、導光路として略平行に配置した拡散効果を有する平面鏡を用いているため、鏡面での反射の際に光損失が生じやすい。このため、接写等のように近距離の被写体を照明するのには、減光ができるため、都合が良いが、効率良く集光させるという目的に対しては不向きという課題があった。
【0005】
また、上記後者の従来例では、閃光発光管からの光束を反射傘で集光した位置にファイバーの入射部を配置して、光をファイバーの射出部に導くように構成しているが、ファイバーが円筒形状であり、隙間なく敷き詰めることができないため、光量ロスが生じる。又、ファイバーが極めて高価なこと、配光特性をファイバー内では制御できない(光入射時と光射出時で同様の集光状態)など課題があった。
【0006】
本発明は発光部としての光入射部と光射出部が離れた位置にある照明系であっても、導光路中での光の集光制御を該導光路の外形形状によらずに行わせることを目的とする。
【0007】
また、写真撮影用の照明として利用される閃光発光装置において、問題となる赤目現象を防止すると同時に光源からの光の集光制御を効率良く行うことを目的とする。
【0008】
さらに、写真撮影用の閃光発光装置の光源として利用される円筒形状の閃光発光管に対応した最適な集光光学系を得る。すなわち、光源に対応した薄い導光部を介して光線を導き、光源の発光エネルギーを効率良く被写体に照射することを目的とする。
【0009】
請求項1の発明の照明装置は、光源からの光束を集光させる集光部材と、該集光部材によって集光された光束を所定の射出位置まで導く導光部材を有し、該導光部材は、光入射面近傍において、光入射時の配光特性を調整する為の中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層を備えており、
該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記導光部材は、光射出面に近い部分に均一な屈折率分布を持つ層を有することを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記集光部材は、光射出方向に対して後方部が光源の中心を焦点とする放物面で形成され、光射出方向に対して前方部が光源を中心とする円筒面で構成されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記導光部材は、ガラス又は透明樹脂によって構成されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記導光部材は、光入射面近傍において、屈折率分布型の光学材料からなり、かつ、この屈折率分布型の層の長さは結像系の長さのほぼ半分の長さとなっていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項の発明において、前記導光部材の各異屈折率層の境界面は、各層の屈折率に近い透明接着材によって接着固定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項7の発明の撮影用閃光発光装置は、閃光を発する閃光発光管と、該閃光発光管からの射出光束を集光させる反射傘と、該反射傘の開口部と同等、又はそれより広い光入射面を有し、光束を所定の射出位置まで導く導光部材とからなり、該導光部材は少なくとも光入射面近傍において中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層から形成されており、
該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴としている。
請求項8の発明の撮影用閃光発光装置は、略円筒形状の有効発光部を有する閃光発光管と、該閃光発光管からの射出光束を集光させる反射傘と、該反射傘に設けられた略矩形の開口部と同等又はそれより広い光入射面と光を被写体方向に照射させるための光射出面およびこの光入射面と光出射面間を結ぶほぼ一定厚みの平滑面からなる導光部材とからなり、該導光部材は、少なくとも光入射面近傍において、中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層から形成されており、
該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴としている。
【0011】
請求項9の発明は、請求項7又は8の発明において、前記導光部材は、ガラス又は透明樹脂によって構成されていることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項7又は8の発明において、前記導光部材は、光入射面近傍において、屈折率分布型の光学材料からなり、かつ、この屈折率分布型の層の長さは結像系の長さのほぼ半分の長さとなっていることを特徴としている。
請求項11の発明は、請求項7から10のいずれか1項の発明において、前記導光部材の各異屈折率層の境界面は、各層の屈折率に近い透明接着材によって接着固定されていることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
【0013】
実施の形態例1
図1〜図4はこの発明を写真撮影用カメラに適用した場合の構成を示す図であり、図1はカメラ全体の斜視図、図2は図1の要部の拡大透視図、図3は撮影状態を示す横断面図、図4は不撮影状態を示す横断面図である。
【0014】
図1において、1はカメラ本体、2は撮影レンズ鏡筒部、3は携帯時、図4に示すように撮影レンズ鏡筒部2を保護する鏡筒バリアであり、写真撮影時には図3に示すように、カメラ本体上部に設けたヒンジ部4を中心に回動して上方に退避し、所定位置に保持固定される。
【0015】
カメラ本体1の内部には図2に示すように、光源としての閃光発光管5及び該閃光発光管からの光束を集光させる集光部材としての反射傘6とからなる閃光発光部が配置されている。また、鏡筒バリア3内には、カメラ本体1の内部に形成された閃光発光部からの射出光束を、所定の位置に導く導光部材7が配置されている。
【0016】
図3、4に示す断面図において、8は導光部材7を保持して鏡筒バリア3を形成する外装部材、9は導光部材7の外装部材8とは反対側の面を保持する保持部材であり、外装部材8に固定されている。尚、導光部材7は外装部材8、保持部材9と所定間隔離れた状態で保持され、外力による破損を防止すると共に、手や他の物の接触による光損失を防止している。
【0017】
10はカメラ本体1に設けた上記閃光発光部の開閉部材であり、撮影状態では図3に示すように、鏡筒バリア3の動きに対応して、カメラ本体内の機構部材(不図示)により駆動されて閃光発光部の前面より待避する。一方、不撮影状態では図4に示すように閃光発光部の前面を覆い隠す位置に移動し、カメラ本体1の不使用時に閃光発光部周辺にゴミ、ホコリ等の侵入を防止する。
【0018】
また、図3は閃光発光管より射出する代表光束の光線追跡も示している。図示のように、閃光発光管から射出した光束は、導光部材7にその光入射面7aから入射し、全反射を繰り返した後、光射出面7bより射出される。図示のように導光部材7は、外観形状に対応した形状に形成できるが、厚み変化がない状態での配光特性の制御は容易ではない。以下、この配光特性の制御について説明する。
【0019】
図5、図6は導光部材7内の屈折率変化により、集光性を変化させる過程を説明する図である。図5は円筒状の閃光発光管5に対して垂直方向に切断した場合の閃光発光部の断面図であり、図6は比較のために導光部材に屈折率変化部がない単一屈折率の材料を使用した場合の閃光発光部の断面図である。
【0020】
図5、図6において、閃光発光管5からの発光光束を集光させる反射傘6は、光射出方向に対して後方部が閃光発光管5の中心を焦点とする楕円面で形成され、光射出方向に対して前方部が閃光発光管5を中心とする円筒面で構成されている。
【0021】
10は導光部材であるが、説明を容易にするため、前記図1〜図4に示した導光部材7より短く、また、平板で構成している。この導光部材10は3種の屈折率の異なる層10A〜10Cによって形成されており、10Aは光入射面から光射出面まで伸びる屈折率の高い層、10Cは光入射面の最外周部に位置する屈折率の低い層、10Bは上記両層10A、10Cの中間の屈折率を有する層(以下、中屈折率層と称する)である。上記中屈折率層10Bと低い層10Cは光入射部に所定の長さのみ構成されている。
【0022】
一方、比較として図6に示した導光部材11は、単一の屈折率層であり、図5との比較が容易となるように導光部材10の高屈折率層10Aと同一の材料を用いている。なお、導光部材10及び11は、ガラス又は透明樹脂によって構成され、導光部材10の各異屈折率層の境界面T1、T2は、各層10A・10B、10B・10Cの屈折率に近い透明接着材によって接着固定されている。
【0023】
次に図5、図6について、光線追跡の状態を説明する。まず、図5において、楕円反射面6aの第1の焦点位置に配置した閃光発光管5の中心から射出し後方に進んだ光束は、反射傘6の反射面6aが楕円形状であるため、楕円の第2の焦点位置Fに集光する(説明を簡単にするため、閃光発光管5のガラス厚は十分に薄いものとして、その屈折の影響は無視した)。この第2の焦点位置Fの近傍に導光部材10の入射面が配置されているので、この焦点位置Fに集光した反射光は、導光部材10の中央部に位置する高屈折率部10Aに入射する。まず、入射面において屈折し、入射後の角度の小さい成分についてはそのまま高屈折率部10を進み光射出面から射出する。この成分は、本来、画面のほぼ中央部を照射される成分であり、これ以上の集光制御をされない成分であり、入射時と同一の角度で射出する。また、図示のように導光部材10に入射後屈折した成分で、入射した高屈折率層10Aから隣りの中屈折率層10Bに当る成分でも、入射角が所定値以下の場合、高屈折率層10Aと中屈折率層10Bの境界面T1で全反射し入射時と同一の角度で射出する。この入射角度による後の制御の分類は、隣接する異屈折率層の屈折率の比によって決定される。すなわち、入射後の照射角度の第一次の規制はこの屈折率比によって決定される。
【0024】
図示の例では、高屈折率層10Aのほぼ中央から入射する成分について説明したが、高屈折率層10Aの中央から外れた成分(閃光発光管5の中心より外れた位置から射出した成分又は直接光で発生する成分についても同様であり、所定角度以下の入射成分)は、上述の第一次の規制(高屈折率層10Aと中屈折率層10Bの境界面T1)により、入射時と同一の角度成分で射出される。
【0025】
次に、入射時に所定角度以上の成分については、中屈折率層10B又、更に入射角度の大きい成分については低屈折率層10Cまで光が進み別制御となる。
【0026】
以下、この光線追跡について説明する。
【0027】
高屈折率層10Aと中屈折率層10Bとの境界面T1で所定以上の入射角の場合には全反射せず屈折する。この時、屈折光は高屈折率層10Aからそれより低い屈折率層10B、10Cに入射するため、屈折後の光線は光軸方向に近い角度の成分に変換される。この屈折後の光線はそのまま中屈折率層10Bの端面から射出、または中屈折率層10Bと低屈折率層10Cの境界面T2で全反射した後、中屈折率層10Bの端面から射出される。この一連の光路により、光線は光軸方向に曲げられ、必要画角内の成分に変換される。この場合も中屈折率層10Bと低屈折率層10Cの屈折率の比を適宜調整することによって制御される角度成分が限定される。
【0028】
次に中屈折率層10Bと低屈折率層10Cの境界で全反射しえない、つまり初期状態で導光部材10への入射角の大きい成分については、さらに中屈折率層10Bから低屈折率層10Cへ屈折して入射し、そのまま又は空気層との境界面T3で全反射した後、この低屈折率層10Cの端面から射出する。この場合も上記高屈折率層10Aから中屈折率層10Bへ入射した時と同様屈折後の光束は光軸の方向に曲げられ、必要画角内の成分に変換される。
【0029】
以上、説明したように、導光部材10の入射光部近傍の中央部に高屈折率層10A、周辺に低屈折率層10B、10Cを配置し、低屈折率層10B、10Cを入射光の特性に応じて所定の長さに設定することにより、たとえ入射時の光線の方向にばらつきあっても、導光部材射出後は、方向の揃った光束、すなわち、任意の必要画角範囲に対応した照射を行うことができる。
【0030】
なお、この中低屈折率層10B、10Cの長さ及び層の厚さは、一度、中、低屈折率層10B、10Cに入射した光束が、全反射により再度現在の屈折率層より高い屈折率層に再入射するのを防止できる形状となっている。このため、入射光の角度のばらつき具合、また、入射位置のばらつき等によって最適値は異なる。
【0031】
また、導光部材射出後の照射範囲は、上述したように各屈折率層10A〜10Cの比によって制御される。さらに、最初に入射する高屈折率層10Aの値によって、中、低屈折率層10B、10Cの長さが規制される。
【0032】
上述の実施の形態例1では、屈折率層として、高、中、低の3種の屈折率層10A〜10Cを設定しているが、必ずしもこの3層に限定されるわけではなく、より細かく屈折率を区分することにより、より細かな配光制御を実現でき、ムラのない均一な照明とすることができる。
【0033】
また、上記の形態例1の効果を検証するため、図5及び図6は同一条件で光線トレースを行っている。まず、図6に示すように導光部材11として単一の屈折率の材料を使用した場合、導光部材11に入射する前と後は同一成分として射出する。(図中、入射時の最大の角度成分を射出面で2点鎖線で示し、より明確に示した)
これに対し、上記の実施の形態例1の場合は図5に示すように、入射時の最大の角度(2点鎖線)に対し、極めて狭い角度の光線の集まりとして集光しているのがわかる。図中の代表光線は閃光発光管5の中心部分から出た光線が後方の反射面で反射し、一点に集光した状態での光束を示しているが、実際には閃光発光管5の大きさが有限であり、また閃光発光管5のガラス管の面での屈折の影響があり、必ずしも、この光束だけには限らず、高屈折率部10Aの広い面から色々の角度成分の光が入射する。この場合にも上述の説明と同様の光線の制御により大多数の光束が、正常に規制される。すなわち、導光部材10の入射角の大きい成分は光軸方向に近い角度成分に変換される。
【0034】
以下、上記説明の内容に基づく導光部材の構成の望ましいの例を、実際の数値をあてはめて図7を用いて説明する。
【0035】
図7において、12は導光部材であり、高屈折率nH の材料12Aに中屈折率nM の材料12B、低屈折率nL の材料12Cを光入射側の端面の両側に貼り合わせた形で構成されている。
【0036】
まず、形状決定に当って各定数を以下のように定める。閃光発光管5から発光し反射傘6で集光された光束は、ある一定の狭い範囲で導光部材12に入射する。この入射部の間口を点P、点Q間の幅aから入射すると仮定する。中屈折率層12Bの幅をb、低屈折率層12Cの幅をcとし、導光部材12全体の幅をd、中、低屈折率層12B、12Cの長さを
【0037】
【外1】
Figure 0003544066
とする。また中屈折率層12Bの端面と反対側の交点をR、S、導光部材射出後の光束の最大角度の目標値をαとする。
【0038】
基本的に入射光のうち、入射角がα以下の角度の成分については、高屈折率層12A内でのみ制御され、入射角度と同一角度で射出面から射出する。この時、中屈折率層12Bに当った場合でも全反射し、中屈折率層12Bに侵入しないように該中屈折率層の屈折率nM を設定している。
【0039】
また、入射光のうち、入射角がα以上β以下の角度の成分については、高屈折率層12Aから中屈折率12Bには入射するが、中屈折率層12Bと低屈折率層12Cとの境界T2では全反射する成分である。同様に、入射光のうち、入射角がβ以上、γ以下の角度の成分は、高屈折率層12Aから、中屈折率層12B、低屈折率層12Cのすべてに入射しうる成分であり、低屈折率層12Cと空気との境界面T3で全反射する成分である。
【0040】
上記条件に加え、中、低屈折率層12B、12Cで制御する光束をこの層にすべて侵入させるための該中、低屈折率層の長さlの条件、また、中、低屈折率層12B、12Cの端面から射出する光束が、導光部材射出後、所定の角度α以内に収まるようにする条件、さらに一度、中、低屈折率層12B、12Cに入射した光束が、より高い屈折率の層に戻らないための中、低屈折率層12B、12Cの厚みの条件等、各種条件を満たすことによってより効率良く集光させることが可能である。
【0041】
以下に各条件式を示す。
【0042】
・入射面での関係式
sinα=nH ・sinθα (1−1)
sinβ=nH ・sinθβ (1−2)
sinγ=nH ・sinθγ (1−3)
・中、低屈折率層12B、12Cの入射成分が直接抜けないための条件(lの長さ)。
【0043】
【数1】
Figure 0003544066
・屈折率変化境界面での条件式
H ・sin(90°−θβ)=nM ・sinφβ (3−1)
H ・sin(90°−θγ)=nM ・sinφγ (3−2)
M ・sinφγ=nL ・sinψγ (3−3)
・中、低屈折率層12B、12Cの端面から、高屈折率層12Aに再入光する際、射出光の最大値が目標値以下とするための条件(最終射出光としてα以下とする条件)。
【0044】
M ・sin(90°−φβ)≦nH ・sinθα (4−1)
L ・sin(90°−ψγ)≦nH ・sinθα (4−2)
・中、低屈折率層12B、12Cに入射し、全反射後、高屈折率層12Aに再入光しないための条件
【0045】
【数2】
Figure 0003544066
・中、低屈折率層12B、12Cの端面から完全に制御されていない成分が抜け出るのを防止するための条件
【0046】
【数3】
Figure 0003544066
以上のすべての条件を満たすことが望ましいが、実際には厚く大型化してしまうため、上記いくつかの条件を満たす形で実際の計算例を示す。
(数値計算例1)
入射光開口幅a、高屈折率部12Aの屈折率nH 、射出後の最大照射角αをそれぞれ
a=2.0 nH =1.60 α=30°
として初期値として与える。
【0047】
また、条件として、中、低屈折率層12B、12Cの長さlを最短とするために前記(2−2)式より
【0048】
【数4】
Figure 0003544066
また、条件として、制御しうる最大の角γを大きくとる(端面からの射出を最大値θαと一致)ために、前記(4−1)より
M ・sin(90°−φβ)=nH ・sinθα (8−1)
L ・sin(90°−ψγ)=nH ・sinθα (8−2)
さらに、条件として、中、低屈折率層入射後は、高屈折率層に再入光せず、最も薄くするために(5−1)式より、
【0049】
【数5】
Figure 0003544066
(5−2)式より、
【0050】
【数6】
Figure 0003544066
前記(3−1)〜(3−3)の条件式で所定角で全反射する条件、すなわち
入射角αで高屈折率層12Aと中屈折率層12Bとの境界T1で全反射、射出角βで中屈折率層12Bと低屈折率層12Cとの境界T2で全反射する条件は、φβ=0、ψγ=0となり、次式となる
M =nH ・sin(90°−θα) (10−1)
L =nH ・sin(90°−θβ) (10−2)
以上の関係から、以下の順序で各定数を求める。
(1−1)式と(7−1)式より
【0051】
【数7】
Figure 0003544066
【0052】
【数8】
Figure 0003544066
一方、図7より、
d=a+2b+2c (19)
以上より計算結果は、
α=30.0°, β=45.0°, γ=59.9°, a=2.0
b=1.06 , c=0.75 , d=5.62 , l=6.08
H =1.6000,nM =1.5199,nL =1.4353
となる。図7はこの数値を元にして画いた図である。
【0053】
また、高屈折率部12Aの屈折率のみをnH =1.5に変更して同様の計算をすると、次のような数値計算例2となる。すなわち、
α=30.0°, β=45.0°, γ=60.0°, a=2.0
b=1.07 , c=0.76 , d=5.69 , l=5.66
H =1.5000,nM =1.4142,nL =1.3229
となり、中、低屈折率層12B、12Cの長さが0.4mm短く他はほぼ同様の値となる。
【0054】
上記数値の形態例では、導光部材射出後の最大角度30°として均一配光となり、かつ損失が少ないように各定数を設定している。このため、幅が厚くなっているが、導光部材12の射出光の分布を中央重点の分布とし、ある程度損失光を許容することができればより薄く構成することができる。
【0055】
また、上記説明のように、屈折率の異なる層を光軸に対し平行に配置し、かつ入射光部の屈折率を高く、周辺に向うに従って屈折率を下げることによって、入射時の角度成分によって分類し、各々別々に光線方向を制御することが可能となる。この時、異なる屈折率層を多数配置することにより、光をより細かく制御でき、最終的な導光部材射出後の角度を狭くできると共に、入射時の角度に関しても広い角度の成分まで制御可能となる。
【0056】
次に、上記の実施の形態例1の数値計算例3を説明する。前記数値計算例1では、中、低屈折率層の長さを最短とするための条件を(7−1)式で与えたが、数値計算例3では、数値計算例1でわずかに生じる中、低屈折率層の端面から、完全に制御されない状態で抜け出る成分をなくす形状について説明する。
【0057】
この条件を満たし中、低屈折率部の長さを短くするには(6−1),(6−2)式より
【0058】
【数9】
Figure 0003544066
この条件に加え、制御し得る拡大の角度γを大きくとるための条件(8−1),(8−2)式、中、低屈折率層入射後、高屈折率層に再入射しない条件(9−1),(9−2)式、所定角度で全反射する条件(10−1),(10−2)式また、各屈折面での定義式(1−1)〜(1−3),(3−1)〜(3−3)式より所定値を計算する。
【0059】
入射光開口幅a、高屈折率部13Aの屈折率nH 、射出後の照射角αをそれぞれ
a=2.0、 nH =1.60, α=30°
として、数値計算例1と同一の値を与え、図8に示すように低屈折率層13Bを1層とすると、
【0060】
【数10】
Figure 0003544066
(1−2)式より
β=sin-1(nH ・sinθβ)=44.9951
d=a+2b=4.8288
以上の結果をまとめると、
α=30.0°, β=45.0°, a=2.0, b=1.41
d=4.83,l=8.12, nH =1.6000,nM =1.5199となり、上記構成により所定範囲a内の90°の照射角の成分を60°の照射角に狭められる。
【0061】
上記各構成は、光量ロスを極力防止する構成を示したが、必ずしもこの形状に限定されることなく、光軸方向に対し略平行となるように屈折率の異なる層を形成し、かつ、入射部を高屈折率部、光軸から離れるにつれて屈折率を下げるように構成することによって、たとえ十分な厚みをとれない場合でも同様の効果が得られる。
【0062】
参考例1
図9〜図12は導光部材内の屈折率変化により、集光性を変化させる過程の参考例1を説明する図であり、全体の構成等は実施の形態例1と同様であるため、特徴的な部分のみの説明を行う。
【0063】
図9において、14は導光部材であり、屈折率の異なる4つの層14A、14B、14C、14Dから構成され、外形形状としては、平板状になっている。ここで14A、14Cは高屈折率層、14B、14Dは低屈折率層である。参考例1は実施の形態例1とは異なり、光軸方向に異屈折率材料を並設し、その接合面が曲面となっていることが特徴である。このように構成することによって、入射光面に複数の凸レンズを配置したような効果が得られる。
【0064】
以下、このような形状の導光部材14を利用した場合の光線追跡を図10〜図12について説明する。説明を簡単にするため、閃光発光管5の中央から射出した光線について示す。
【0065】
まず、図10に示すように、楕円反射傘6の第1の焦点位置に配置した閃光発光管5から射出した光束のうち、光軸の後方に向う光束は反射傘6の楕円面6aに当った後、楕円の第2の焦点位置Fに集光する(説明を簡単にするため、閃光発光管のガラス管の影響を無視する)。この第2の焦点位置Fの近傍に集光部材14の高屈折率部14Aが配置されているので、第2の焦点位置Fに焦光した反射光は高屈折率部14Aに入射し屈折する。次に、高屈折率部14Aと低屈折率部14Bの境界面T1に入射する。この境界面は曲面で構成されているため、入射角が小さく屈折の影響を受けにくい。
【0066】
さらに、低屈折率層14Bから高屈折率層14Cに進んで屈折する。最後は高屈折率層14Cから低屈折率層14Dに入射する。この時も境界面T2が曲面で構成されるため、入射角が小さく、屈折による角度の振れを抑えることができる。
【0067】
以上のように、導光部材14の入射面近傍に高屈折率層14A、低屈折率層14Bを順に配置し、かつ、高屈折率層14Aを凸レンズ形状、低屈折率層14Bを凹レンズ形状となるように構成することにより、集光効果を持たせることができる。
【0068】
図11は閃光発光管5の中央から射出した光束が直接、導光部材14に入射する場合の状態を示している。図示のように、高屈折率層14A、14Cがあたかも凸レンズの効果を有し、導光部材14から射出後、一点に集光するような特性を得ることができる。
【0069】
図12は閃光発光管5から出た光束が円筒状の反射面6bに当る成分を図示したものである。この光束は円筒状の反射面6bで反射後、再度閃光発光管5の中心を通って後方に向い楕円反射面6aで反射後、第2の焦点位置Fに集光する。以下は図10と同一の光路をとる。
【0070】
以上、説明したように、高屈折率部14A、14Cは中央が厚く周辺を薄くし、低屈折率部14B、14Dは中央が薄く周辺が厚い層を導光部材の入射面近傍に光軸方向に積層させることにより、外形形状は一定に保ちながら、集光特性を変化させることができる。
【0071】
参考例1では、高、低各屈折率層を各2層ずつ計4層形成したが、この層の数を増やすことも可能であり、また、2層だけで構成することも可能である。いずれも、高、低の屈折率の差及び曲率の大きさによって集光度合を可変させることができる。
【0072】
また、参考例1では、片面を平面としているが必ずしもこの形状に限定されることなく、鏡界面をすべて凸面、又は凹面で形成することもでき、この方が効率よく集光できる。また屈折率差も大きい方が効率良く集光させることができる。
【0073】
実施の形態例2
図13〜図15は本発明の実施の形態例2を説明するための図である。全体の構成等は実施の形態例1と同様であり、特徴的な部分についてのみ説明を加える。
【0074】
図13において、15は導光部材であり、15Aは高屈折率部、15Bは断面形状が3角形とした低屈折率部である。本実施の特徴は実施の形態例1、2の中間の特性を持つ構成であり、図14、15に示す光線追跡図をもとに形状の特性を説明する。まず図14に示すように閃光発光管5の中心から出た光束のうち後方の反射傘で反射した成分は楕円のもう一方の焦点Fに集光し、導光部材15に入射する。光軸近傍の光束は実施の形態例1同様、高屈折率部15Aに入射しそのまま射出する一方周辺に向った成分については参考例1で説明したように低屈折率部15Bの3角形の部分が凹レンズに相当する効果を持ち、ここの部分で特に入射角の大きい成分のみが制御され集光する。
【0075】
図15は閃光発光管5からの直接光であるが、この場合も上記低屈折率部15Bで形成された3角形の部分で効果的に集光され導光部材の端面から射出されていることがわかる。
【0076】
実施の形態例3
図16は本発明の実施の形態例3を説明するための図である。全体の構成等は実施の形態例1と同様であるから、特徴的な部分についてのみ説明する。
【0077】
図16において、16は導光部材であり、16Aは屈折率分布型の光学材料であり、中心部の屈折率が高く周辺部が低い屈折率を有し屈折率の変化が放物線状に変化を持たせた材質である。その長さは後述するように所定の長さに規制されている。16Bは屈折率分布層16Aの光軸端面に接続された単一の屈折率よりなる導光部であり、この長さは使用する光学系の長さに応じて任意の長さにすることが可能である。
【0078】
同図では、この光学系を利用した場合の理想的な光線トレースも同時に示している。
【0079】
閃光発光管5の中央から射出した光束のうち後方に向う成分は楕円のもう一方の焦点位置に集光する。この集光近傍に入射面を配置した導光部材16の導光部材の光軸中心付近に入射した光束は、屈折率分布層16Aにおいて、この層の長さを所定の長さに設定することにより、略平行化することができる。平行化された後は、単一の屈折率層16Bに入射し、この光線状態を保持したまま、所定位置まで光束を導く。
【0080】
この方式は光源からの光束が反射傘等によって十分に光軸上に集光されている状態、又は、それと等価となるように光源に対し、導光部材の入射面が広い場合に特に有効である。
【0081】
また屈折率分布層16Aの長さは、通常セルホック(商品名)レンズ、ロッドレンズ等で使われている屈折率分布型のレンズの結像関係時に使用する長さのちょうど半分になっていることが特徴的である。
【0082】
また、この長さについては、上記長さに限定されることなく、導光部材に入射する光線の特性に応じ最適な長さにすることが望ましい。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、導光部材の光入射部を複数の屈折率層で形成したので、導光部材の外形形状によらず、任意の集光特性の制御が可能となり、効率の良い照明光学系を実現できる効果がある。
【0084】
また、導光部材の長さを任意の長さとすることが可能なため、光射出部を撮影光軸から離すことが可能であり、閃光発光装置を利用した撮影時問題となる赤目現象を未然に防止することができる。
【0085】
さらに、導光部材は、光入射部近傍において、複数の屈折率層を形成しているので、薄型でコンパクトな発光部形態を実現でき、集光特性も最適状態に設定することが可能である。しかも、光学系の構成も比較的簡単であり、安価に構成できるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例1に係るカメラ全体の斜視図。
【図2】本発明の実施の形態例1に係る光学系のみを透視して示した斜視図。
【図3】本発明の実施の形態例1に係るカメラ使用状態の断面図。
【図4】本発明の実施の形態例1に係るカメラ携帯時の断面図。
【図5】本発明の実施の形態例1に係る照明光学系を説明するための断面図。
【図6】本発明の実施の形態例1に係る照明光学系を説明するための比較の断面図。
【図7】本発明の実施の形態例1に係る導光部材の特性を説明するための断面図。
【図8】本発明の実施の形態例1に係る導光部材の特性を説明するための他の断面図。
【図9】本発明の参考例1に係る照明光学系を説明するための断面図。
【図10】本発明の参考例1に係る照明光学系の後面反射光線トレース図。
【図11】本発明の参考例1に係る照明光学系の直接光線トレース図。
【図12】本発明の参考例1に係る照明光学系の前面反射光線トレース図。
【図13】本発明の実施の形態例に係る照明光学系を説明するための断面図。
【図14】本発明の実施の形態例に係る照明光学系の後面反射光線トレース図。
【図15】本発明の実施の形態例に係る照明光学系の植設光線トレース図。
【図16】本発明の実施の形態例に係る照明光学系を説明するための断面図。
【符号の説明】
5 閃光発光管(光源)
6 反射傘(集光部材)
7、10、11、12、13、14、15、16 導光部材
7a 光入射面
7b 光射出面
8 外装部材
9 保護部材
10A、12A、14A、14C、15A 高屈折率層
10B、12B 中屈折率層
10C、12C、14B、14D、15B 低屈折率層

Claims (11)

  1. 光源からの光束を集光させる集光部材と、該集光部材によって集光された光束を所定の射出位置まで導く導光部材を有し、該導光部材は、光入射面近傍において、光入射時の配光特性を調整する為の中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層を備えており、
    該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴とする照明装置。
  2. 前記導光部材は、光射出面に近い部分に均一な屈折率分布を持つ層を有することを特徴とする請求項1の照明装置。
  3. 前記集光部材は、光射出方向に対して後方部が光源の中心を焦点とする放物面で形成され、光射出方向に対して前方部が光源を中心とする円筒面で構成されていることを特徴とする請求項1の照明装置。
  4. 前記導光部材は、ガラス又は透明樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1の照明装置。
  5. 前記導光部材は、光入射面近傍において、屈折率分布型の光学材料からなり、かつ、この屈折率分布型の層の長さは結像系の長さのほぼ半分の長さとなっていることを特徴とする請求項1の照明装置。
  6. 前記導光部材の各異屈折率層の境界面は、各層の屈折率に近い透明接着材によって接着固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項の照明装置。
  7. 閃光を発する閃光発光管と、該閃光発光管からの射出光束を集光させる反射傘と、該反射傘の開口部と同等、又はそれより広い光入射面を有し、光束を所定の射出位置まで導く導光部材とからなり、該導光部材は少なくとも光入射面近傍において中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層から形成されており、
    該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴とする撮影用閃光発光装置。
  8. 略円筒形状の有効発光部を有する閃光発光管と、該閃光発光管からの射出光束を集光させる反射傘と、該反射傘に設けられた略矩形の開口部と同等又はそれより広い光入射面と光を被写体方向に照射させるための光射出面およびこの光入射面と光出射面間を結ぶほぼ一定厚みの平滑面からなる導光部材とからなり、該導光部材は、少なくとも光入射面近傍において、中心部に高屈折率部、外周部に低屈折率部を配列した複数の屈折率層から形成されており、
    該光源からの光束のうち、該光入射面の高屈折率部に入射した光束の一部は、該高屈折率部をそのまま通過し、光射出面から射出し、他の光束は該低屈折率部を通過した後、再び該高屈折率部を通過して、該光射出面から射出することを特徴とする撮影用閃光発光装置。
  9. 前記導光部材は、ガラス又は透明樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項7又は8の撮影用閃光発光装置。
  10. 前記導光部材は、光入射面近傍において、屈折率分布型の光学材料からなり、かつ、この屈折率分布型の層の長さは結像系の長さのほぼ半分の長さとなっていることを特徴とする請求項7又は8の撮影用閃光発光装置。
  11. 前記導光部材の各異屈折率層の境界面は、各層の屈折率に近い透明接着材によって接着固定されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項の撮影用閃光発光装置。
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