JP3541429B2 - スルホン酸基を有する縮合ヘテロ環式化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、各種中間体として有用な新規化合物及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は化学工業の多くの分野における反応原料、反応中間体として用いられる他に、電気、電子工業の分野において加工性要求度の高い電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学素子、光電変換素子、帯電防止剤のほか、各種導電材料あるいは光学材料として有用な導電性重合体の単量体として適した化合物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
縮合ヘテロ環式化合物、例えば、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及びそれらの類似誘導体は、これまでにも多数報告されている(例えば、Advances in Heterocyclic Chemistry誌第10巻(A.R.Katrizky and A.J.Boulton編;Academic Press、New York、1969年))。関連する合成法としては、例えば、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェンでは、o−ジブロモキシレン、o−ジクロロキシレン、2,3−ビスブロモメチルナフタレン及びそれらの置換体を硫化ナトリウムで閉環する方法(Recl. Trav. Chim. Pays-Bas誌、87巻(10)、1006頁、1968年)が一般的に知られている。さらに、前記ジハロゲノ化合物に硫化リチウムを用いた閉環反応や、無水チオフタル酸の還元反応なども報告されている。
【0003】
しかしながら、前記1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及びそれらの類似誘導体は、反応性が高く空気中室温下長期にわたって保存できないとの欠点(自発的な酸化的脱水素反応が不完全におこり、望ましくない低重合反応あるいは重合反応による黒色化が起ること)があった。
そのため、置換基を芳香環に導入する場合には、予め前駆体に所望の置換基を導入した後で、前記のジハロゲノ化合物に導き、前述の方法等で閉環反応を行い、置換基を有する1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン及び1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン誘導体を合成する方法が取られている(特開平2−308847号)。
【0004】
置換基を有する例として、スルホン酸アミド基を有する1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン誘導体が、EP291269−A1に記載されているが、製造方法に関して何ら具体的に開示されていない。スルホン酸基を有する縮合ヘテロ環式化合物としては、縮合しているベンゼン環と1位及び3位炭素が共役しているベンゾ[c]チオフェン(別称イソチアナフテン)構造を有する化合物が特開平2−252727号に記載されているが、その具体的な製造法や該化合物の特性について何ら記載されておらず、また、本発明に係る、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェンや1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及びそれらの誘導体のスルホン酸置換化合物の如き、スルホン酸基を有し且つ1,3−ジヒドロチオフェン骨格を有する縮合ヘテロ環式化合物に関する報告もない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、本発明は、空気中室温下長期にわたって安定に保存できる安定な縮合ヘテロ環式化合物及びその製造方法に関するものである。本発明のスルホン酸基を有する縮合ヘテロ環式化合物は、空気中室温下長期にわたって安定に存在する化合物であり、さらにはその有益性として、導電性高分子材料の単量体として期待されるばかりか、その他の工業分野(農薬、医薬、食品工業など)における反応原料、反応中間体としても用い得る。
本発明の課題は、スルホン酸基を導入することによって室温保存性のある新規な縮合ヘテロ環式スルホン酸置換化合物、例えば、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェンおよびそれらの縮合ヘテロ環式類似構造を有するスルホン酸置換化合物を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特にπ電子共役系導電性高分子材料の製造に有益な単量体を探求すべく鋭意検討した結果、縮合ヘテロ環式化合物、例えば、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及びそれらの各種置換誘導体に直接スルホン化することで保存安定性の優れた化合物が得られることを見いだし、また、本発明の新規なスルホン酸基を有する縮合ヘテロ環式化合物を製造する方法を開発するに至った。
すなわち、本発明は一般式(I)
【化6】
(式中、置換基R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立にH(水素)、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の、アルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、SO3 -M、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。但し、R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 からなる置換基群には、SO3 -Mが同時に2つ以上含まれることはない。R1 、R2 、R3 、R4 またはR5 の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に、少なくとも1つ以上の3乃至7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を少なくとも1つ以上形成してもよい。R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。MはH+ またはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンまたはNH4 +、NH (CH3)3 +、N (CH3)4 +、NH (C2 H5)3 +、N (C6 H5)4 +、PH4 +、P (CH3)4 +、P (C6 H5)4 +、AsH4 +、As (CH3)4 +、As (C6 H5)4 +等のVb族元素の非置換またはアルキル置換型もしくはアリール置換型カチオンを表す。kはジヒドロチオフェン環と置換基R1 乃至R3 を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0乃至3の整数値である。式中の縮合環には、窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。置換基X1 、X2 、X3 及びX4 はそれぞれ独立にH(水素)、ハロゲン、炭素数1乃至5の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表す。X1 、X2 、X3 またはX4 のアルキル基には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造を有する縮合ヘテロ環式化合物を提供する。
【0007】
また、本発明は、一般式(II)
【化7】
(式中、R1 、R2 、R3 、M、X1 、X2 、X3 及びX4 は一般式(I)と同じ。)で表される化学構造を有する新規ベンゾ[c]チオフェン誘導体及び一般式(III)
【化8】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、M、X1 、X2 、X3 及びX4 は一般式(I)と同じ。)で表される化学構造を有する新規ナフト[2,3−c]チオフェン誘導体を提供する。
【0008】
更にまた、本発明は、一般式(IV)
【化9】
(式中、置換基R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立にH(水素)、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の、アルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。R1 、R2 、R3 、R4 またはR5 の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に、少なくとも1つ以上の3乃至7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を少なくとも1つ以上形成してもよい。R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。kはジヒドロチオフェン環と置換基R1 乃至R3 を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0乃至3の整数値である。式中の縮合環には、窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。置換基X1 、X2 、X3 及びX4 はそれぞれ独立にH(水素)、ハロゲン、炭素数1乃至5の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表す。X1 、X2 、X3 またはX4 のアルキル基には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造を有する化合物にスルホン化剤を作用させることにより前記一般式(I)で表される化学構造を有する縮合ヘテロ環式化合物を製造する方法を提供する。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
ジヒドロチオフェン環と縮合ベンゼン環を有する化合物は、特に、π電子共役系導電性高分子の単量体もしくは前駆体として有用であり、とりわけ、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェンや1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェンは、それぞれ酸化的重合反応を経て、ポリ(ベンゾ[c]チオフェン)(別名、ポリイソチアナフテン)やポリ(ナフト[2,3−c]チオフェン)を与える(特開昭63−118323号)。特に、ポリ(ベンゾ[c]チオフェン)は、半導体としてのバンドギャップが最小(1eV)であるため、少ないドーパント量で高い導電性を示す導電性高分子として注目されている。
【0010】
スルホン酸基を有するπ電子共役系導電性高分子の例としては、ポリ[2−(3−チエニル)エタンスルホン酸]及びポリ[4−(3−チエニル)ブタンスルホン酸]が知られており、スルホン酸基を有する特性から、これらのポリマーは水溶性を示すと共に外来のドーパントを必要としない自己ドープポリマーであることが報告されている(Synthetic Metals誌、20巻、151頁、1987年(Elsevier Sequoia社)。
【0011】
次に、本発明化合物を詳細に説明する。
前記一般式(I)における置換基R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 として、特に有用な例を挙げれば、水素、ハロゲン、SO3 -M、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、飽和アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、飽和アルキルエステル基、不飽和アルキルエステル基が挙げられる。これらの置換基を更に詳しく例示すれば、ハロゲンとしては塩素、臭素、弗素、よう素等、アルキル基及びアルキルエステル基の炭化水素としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、メトキシエチル、エトキシエチル、アセトニル、フェナシル等、アルコキシ基としてはメトキシ、(2−メトキシ)エトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等の基が挙げられる。
【0012】
また、置換基R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 として上記以外の例として、メチルアミノ、エチルアミノ、ジフェニルアミノ、アニリノ等のアミノ基、トリフルオロメチル、フェニル、トシル、キシリル、クロロフェニル、アセトアミド等の基が挙げられる。
【0013】
一般式(I)において、Mとして、特に有用な例を挙げれば、H+ またはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンまたはNH4 +、NH (CH3)3 +、N (CH3)4 +、NH (C2 H5)3 +、N (C6 H5)4 +等のアンモニウムイオンが挙げられる。
【0014】
一般式(I)において、置換基X1 、X2 、X3 及びX4 として、特に有用な例を挙げれば、水素、ハロゲン、アルキル基またはフェニル基が挙げられる。これらの置換基を更に詳しく例示すれば、ハロゲンとしては塩素、臭素、弗素等、アルキル基としてはメチル、エチル等の基から選ばれる。また、X1 、X2 、X3 及びX4 として上記以外の例としてトシル基、カルボン酸基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0015】
一般式(I)において、kはジヒドロチオフェン環と置換基R1 乃至R3 を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し0乃至3の整数値である。置換基R1 、R2 、R3 、R4 またはR5 の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に、少なくとも1つ以上の3乃至7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖、例えば、それぞれ非置換または置換基を有する、メチレン、エチレン、ビニレン、トリメチレン、プロペニレン、テトラメチレン、ブテニレン、ブタジエニレン、ブチニレン、ペンタメチレン、ペンテニレン、ペンタジエニレン、ペンチニレン、ジオキシメチレン等の二価鎖、を少なくとも1つ以上形成してもよい。また、縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよく、例としては、チエノ[3,4−b]キノキサリン、チエノ[3,4−b]キノキサリン−4,9−ジオキシド等が挙げられる。
【0016】
以下に、一般式(I)で表される化合物の縮合環の基本骨格の代表例を示すが、これらに限定されるものではない。
【化10】
【0017】
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【化11】
【化12】
【0018】
以下に、一般式(III)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【化13】
【化14】
【0019】
次に一般式(I)で表される化合物の製造方法について説明する。
一般式(I)で表される化合物は、一般式(IV)
【化15】
(式中、置換基R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立にH(水素)、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の、アルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。R1 、R2 、R3 、R4 またはR5 の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に、少なくとも1つ以上の3乃至7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を少なくとも1つ以上形成してもよい。R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。kはジヒドロチオフェン環と置換基R1 乃至R3 を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0乃至3の整数値である。式中の縮合環には、窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。置換基X1 、X2 、X3 及びX4 はそれぞれ独立にH(水素)、ハロゲン、炭素数1乃至5の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表す。X1 、X2 、X3 またはX4 のアルキル基には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造を有する化合物にスルホン化剤を作用させることによって製造される。具体的には、一般式(IV)で表される化合物に対してスルホン化置換反応が起こり、一般式(I)で表される化学構造の化合物が得られる。
【0020】
その詳細について、一般式(I)においてkが0であり、X1 、X2 、X3 及びX4 が全てHである、一般式(II)で表される化合物を例に用いて説明する。
一般式(II)の化学構造で表される化合物の前駆体である、一般式(IV)におけるkが0である化合物は既に公知であり、その製造方法は、例えば置換基X1 、X2 、X3 及びX4 が全てHである化合物は、Recl. Trav. Chim. Pays-Bas誌、87巻(10)、1006頁、1968年に記載されている。また、置換基X1 、X2 、X3 及びX4 が全てCl、あるいはFである化合物は、J. Gen. Chem. USSR誌、36巻、1421頁、1966年に記載されている。
【0021】
本発明において、スルホン化置換反応に用いるスルホン化剤としては、一般に硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等が挙げられ、中でも発煙硫酸、三酸化硫黄が好ましい。また、複数のスルホン化試剤を混合して用いても良い。スルホン化試剤の使用量は、一般式(IV)で表される化学構造を有する化合物やスルホン化試剤の種類によって異なるので一概には決められないが、一般には前記一般式(IV)で表される化合物1モル当たり等モル量から20倍モル量の範囲で用いるのが望ましく、1.1倍から5倍モル量の範囲が特に望ましい。
【0022】
また、スルホン化剤として、硫酸、発煙硫酸等の液体状のスルホン化剤を用いた時はスルホン化剤が溶媒としての役割を果たすので必ずしも溶剤を加える必要はないが、反応温度や反応時間を調節するために反応溶媒を用いることができる。用いる溶媒は、化合物及びスルホン化試剤を溶解し、かつスルホン化置換反応を阻害しないならば、如何なる溶媒であっても良い。例えば具体的には水、硫酸、発煙硫酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸、あるいはテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒等が用いられる。さらにはこれらの混合溶媒を用いることもできる。
【0023】
本製造法に用いられる前記一般式(IV)で表される化学構造を有する化合物の濃度は、その化合物の種類や反応スケールまたは用いる溶媒の種類によって異なるが、一般には10-3から10モル/リットルの範囲が望ましく、10-2から1モル/リットルの範囲が特に望ましい。
【0024】
また、反応温度は、各々の反応方法によって定められるもので、特に限定できるものではないが一般には−80℃から80℃の温度範囲が望ましく、特に−30℃から50℃の温度範囲で行われることが望ましい。反応時間は反応方法及び反応温度、反応圧力あるいは化合物の化学構造等によって異なるので一概には規定できないが、通常は0.01時間から240時間が望ましく、0.1時間から20時間が特に望ましい。反応圧力は、10-5気圧から100気圧下で行うことが望ましく、1気圧から10気圧の範囲が更に望ましく、常圧で行われることが特に望ましい。
【0025】
スルホン化反応の副反応として起る、本発明の化合物からのスルホン結合を有する副生成物の生成を抑制するため、スルホン化反応を阻害しない範囲で公知のスルホン生成抑制剤、例えば脂肪酸、有機過酸、酸無水物、ピリジン、酢酸またはケトン等を0.01〜50重量%添加しても良い。
【0026】
このようにして製造した一般式(I)で表される化合物は、一般のスルホン酸化合物の製造に用いられている手法(例えば、日本化学会編「新実験化学講座・14、有機化合物の合成と反応(III)」丸善、1793頁〜1809頁(1978年)等に記載の手法)を用いて種々のスルホン酸誘導体へ誘導することが可能であり、スルホン酸誘導体、例えば、ハロゲン化スルホニル化合物、スルホン酸エステル、スルホン酸無水物、あるいはスルホン酸アミド等製造の原料あるいは中間体として用いることができる。
さらにその他の有益な用途として、一般式(I)で表される化合物は、酸化的重合反応により容易にπ電子共役系導電性高分子に導くことも可能である。
【0027】以上のように、本発明のスルホン酸置換基を有する縮合ヘテロ環式化合物は、具体的には、例えば1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン−スルホン酸(またはその塩)、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−スルホン酸(またはその塩)及びそれらの誘導体は、各種化合物の原料およびπ電子共役系導電性高分子の単量体として有益な新化合物であり、前記製造方法によって提供された。
【0028】
【実施例】
以下実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものでない。なお、下記の実施例中の%は、特に記述した場合以外は重量パーセントを表す。
(実施例1)
一般式(II)において、R1 =R2 =R3 =X1 =X2 =X3 =X4 =H、M=Na+ である化合物の合成例を以下に示す。 発煙硫酸(20%三酸化硫黄)4mlを20℃以下に保持し、公知な1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン1gを撹拌しながらゆっくりと加えた。放置して室温まで戻し4時間撹拌を続けたところ反応液は褐色を呈した。 反応混合物を氷水150mlに溶解し、塩化ナトリウム20gを加え加温して均一に溶かし、ゆっくりと塩析させ、遠心分離機により分離した。上澄み除去後、真空乾燥して1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン−5−スルホン酸ナトリウム650mg(灰色粉末)を得た。
IR(cm-1):3060、2900、2840、1480、1440、1400、1220、1170、1050
1H NMR(D2 O、ppm):4.30(s)、7.46(d)、7.65(d)、7.73(s)
13C NMR(D2 O、ppm):36.7、36.8、121.7、124.1、125.1、141.1、141.3、144.0
元素分析(%):
計算値 C 40.3、H 3.0、S 26.9、Na 9.7
実測値 C 39.5、H 3.5、S 26.1、Na 9.2
【0029】
(実施例2)
一般式(II)において、R1 =R2 =R3 =H、M=Na+ 、X1 =X2 =X3 =X4 =Clである化合物の合成例を以下に示す。
発煙硫酸(20%三酸化硫黄)4mlを0℃以下に保持し、公知な1,1,3,3−テトラクロロベンゾ[c]チオフェン1gを撹拌しながらゆっくりと加えた。放置して室温まで戻し24時間撹拌を続けたところ反応液は褐色を呈した。反応混合物を氷水150mlに溶解し、塩化ナトリウム20gを加え加温して均一に溶かし、ゆっくりと塩析させ、遠心分離機により分離した。上澄み除去後、真空乾燥して、1,1,3,3−テトラクロロベンゾ[c]チオフェン−5−スルホン酸ナトリウム450mg(灰色粉末)を得た。
IR(cm-1):1230、1180、1050
1H NMR(D2 O、ppm):7.46(d)、7.65(d)、7.73(s)
元素分析(%):
計算値 C 25.6、H 0.8、S 17.1、Na 6.1、Cl 37.7
実測値 C 24.9、H 1.1、S 16.7、Na 6.0、Cl 36.8
【0030】
(実施例3)
一般式(III)において、R1 =R2 =R3 =R4 =R5 =X1 =X2 =X3 =X4 =H、M=Na+ である化合物の合成例を以下に示す。
発煙硫酸(20%三酸化硫黄)2mlを20℃以下に保持し、公知な1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン0.5gを撹拌しながらゆっくりと加えた。放置して室温まで戻し4時間撹拌を続けたところ反応液は緑色を呈した。反応混合物を氷水100mlに溶解し、塩化ナトリウム20gを加え加温して均一に溶かし、ゆっくりと塩析させ、遠心分離機により分離した。上澄み除去後、真空乾燥して1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−6−スルホン酸ナトリウム350mg(灰色粉末)を得た。
IR(cm-1):3060、2900、2850、1480、1400、1220、1180、1050
1H NMR(D2 O、ppm):4.30(s)、7.3(d)−7.9(m)
元素分析(%):
計算値 C 50.0、H 3.2、S 22.2、Na 8.0
実測値 C 48.5、H 3.4、S 21.6、Na 7.7
【0031】
(実施例4)
一般的環境下における安定性試験結果を表1に示した。
【表1】
【0032】
【発明の効果】
本発明のスルホン酸基を有する縮合ヘテロ環式化合物は、電子吸引性のスルホン酸基を有することにより、空気中で極めて安定に存在し、各種中間体として有用な新規化合物として提供される。更に詳しくは、本発明の前記化合物は多くの工業分野において重要な反応原料、反応中間体として用いられ、特にπ電子共役系導電性重合体の単量体として好適に用いられる化合物である。
また、本発明による製造方法により、上記のとおり有用な新規な縮合ヘテロ環式化合物を容易に製造できる。
Claims (4)
- 一般式(I)
- 一般式(IV)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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