JP3541047B2 - バイオリアクターの防腐剤および測定法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は臨床化学の分野における生化学分析に関する。詳しくは生体試料等の検体中の微量成分を測定するために用いられる固定化酸化酵素および固定化ペルオキシダーゼから構成されるバイオリアクターの防腐剤及び検体中の微量成分の測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酵素を粒子状担体や膜に固定化してバイオリアクター(あるいはバイオセンサー)とし、これを用いて生体試料中の微量成分を測定する方法が盛んに行われるようになり、臨床化学の分野に役だっている。
【0003】
しかし、固定化酵素は、長時間連続使用あるいは保存すると固定化酵素に細菌等の微生物が付着、増殖し、酵素が資化されることにより、活性が低下するなどの問題が生じる。
【0004】
さらに生化学分析で多用されている、測定対象物質に酸化酵素を作用させて発生した過酸化水素をペルオキシダーゼにより色素、蛍光物質あるいは発光物質に変換して測定する酸化酵素とペルオキシダーゼを組み合わせた系においては、増殖した微生物が有するカタラーゼ様活性物質が、酸化酵素の作用で生成した過酸化水素を分解し、測定に著しく影響を及ぼすことが知られている。
【0005】
この様な問題を改善するためには、酵素活性や測定に影響を及ぼさない防腐剤を測定試薬溶液やバイオリアクターの保存液中に添加する必要がある。しかし、ある酵素に対して使用可能な防腐剤も本発明のように酸化酵素とペルオキシダーゼを組み合せて用いる系では使用できないことが多い。
【0006】
たとえば、ペルオキシダーゼの保存に通常用いられるチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)はピラノースオキシダーゼの阻害剤であり、逆にピラノースオキシダーゼの保存に使用されるアジ化ナトリウムはペルオキシダーゼを失活させる。このように、二種類以上の酵素を使用する場合には、そのいずれに対しても影響を及ぼさない防腐剤を用いる必要があるが、現在のところ、酸化酵素及びペルオキシダーゼのいずれに対しても影響を及ぼさずかつ微量成分の正確な測定を可能とする防腐剤は見出されていない。
【0007】
第4級アンモニウム塩に殺菌作用のあることは広く知られている。固定化酵素の殺菌剤として第4級アンモニウム塩を用いた記載もいくつかある。
【0008】
たとえば食品化学の分野において、特開昭56−92791号公報には「ハロゲン誘導体、有機酸、第4級アンモニウム化合物、ビグアニジンポリマー等のようなその他の既知の殺菌剤は酵素を部分的あるいは完全に不活性とするので不適当でる。」旨、特公昭62−33873号公報には「プロピレングリコール等中に固定化酵素を浸漬しバブリングしながら洗浄・殺菌した後、更に第4級アンモニウム塩等で殺菌すると、より万全である。」旨、特開平1−228454号公報には「該先行技術では、固定化生体触媒の洗浄後第4級アンモニウム塩等の界面活性剤にて殺菌していたが、殺菌効果は十分でなかった。」旨記載されている。
【0009】
しかし、これらの方法は細菌等の微生物の混入の起こりにくい閉鎖系で、酵素反応を行う前工程として固定化酵素の殺菌操作を述べたものであり、防腐剤の存在下に酵素反応を行うものではなく、又、殺菌剤と酵素の接触時間も比較的短時間である。更に、酸化酵素及びペルオキシダーゼに対する影響及び微量成分の正確な測定に対する影響について何ら述べられていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
臨床化学の分野において生体試料等の微量成分を測定するために用いられるバイオリアクターは開放系で使用され、細菌等の微生物の混入は避けられない。
【0011】
本発明者らは固定化酸化酵素と固定化ペルオキシダーゼを含むバイオリアクターの使用中又は保存中に反応試薬溶液または保存液等に添加して、酵素反応に影響を与えることなく、細菌等の微生物の増殖を抑制する防腐剤およびその存在下における検体中の微量成分の測定法について鋭意研究を重ねてきた。
【0012】
本発明は、バイオリアクターを長期間連続使用する間、酵素活性に影響を与えず、かつ細菌等の微生物に起因する測定値の変動を抑制し、再現性良く安定に測定できる試薬およびそれを用いる測定法を提供することにある。
【0013】
さらに、バイオリアクターは測定装置に装着し測定に使用されるまで、安定な酵素活性を維持し、静菌的に保存されなければならず、そのための防腐剤を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは種々の防腐剤を検討した結果、第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤が固定化酸化酵素及び固定化ペルオキシダーゼの酵素活性に影響を与えることなく、細菌等の微生物の増殖を抑制する効果が大きいことを見いだし本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、
(1) 第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤から成る、酸化酵素とペルオキシダーゼを含む固定化酵素リアクターの防腐剤、
(2) 酸化酵素が、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼである上記(1)の防腐剤、
(3) 第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤が、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩である上記(1)または(2)の防腐剤、
(4) 少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩が塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムである上記(3)の防腐剤、
(5) 検体中の微量成分に固定化酸化酵素を作用させ発生した過酸化水素を固定化ペルオキシダーゼを用いて検出する検体中の微量成分の測定法において、酵素反応系への供給液中に第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤を存在させることを特徴とする微量成分の測定法、
(6) 固定化酸化酵素が、固定化ピラノースオキシダーゼ又は固定化L−ソルボースオキシダーゼである上記(5)の測定法、
(7) 第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤が、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩である上記(5)または(6)記載の測定法、
(8) 少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩が塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムである上記(7)の測定法に関する。
【0016】
本発明の防腐剤は、固定化された酸化酵素及びペルオキシダーゼのいずれの酵素活性に対しても実質的に悪影響を及ぼさず、かつ、細菌等の微生物の増殖を抑制することができる。又、本発明の測定法において、第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤は、固定化された酸化酵素及びペルオキシダーゼのいずれの酵素活性に対しても実質的に悪影響を及ぼさないばかりでなく、検体中の微量成分の測定値に対する悪影響もなく、更に、長期間連続使用中における微生物の増殖も抑制するため、本発明の測定法によれば、長期間再現性よく安定に正確に検体中の微量成分を定量することができる。
【0017】
先ず、本発明の防腐剤について詳細に説明する。
【0018】
第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤としては種々のものが使用でき特に限定されないが、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩が好ましい。その場合、長鎖アルキル基の数は1又は2であることが好ましく、特に2であることが好ましい。長鎖アルキル基の数が2である場合、それらは同一であってもよく、又、異なっていてもよい。長鎖アルキル基の炭素数は8〜18であることが好ましい。第4級アンモニウム塩中の他のアルキル基はメチル基、エチル基等の低級アルキル基又はベンジル基であることが好ましい。また、第4級アンモニウム塩構造は、ピリジニウム塩構造のようなものであってもよい。対イオンは通常塩素イオン等のハロゲンイオンであるが、その他の陰イオンであってもよい。第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤としては、保存液中に溶解又は分散させることができるものが好ましい。これらの化合物としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム等が挙げられ、特に好ましくは塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムが挙げられる。
【0019】
これらは単独でもまた組み合わせて使用しても良い。
【0020】
酸化酵素とペルオキシダーゼを含む固定化酵素リアクターを保存する場合、本発明の防腐剤(第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤)を水、ホウ酸水溶液あるいは弱酸性、中性、塩基性の緩衝液に添加し、これを保存液とし、リアクター中にこの保存液を充填して保存を行なう。緩衝液の例としてはリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等が挙げられる。本発明の防腐剤は、保存液中に0.001〜10重量%存在させるのが好ましく、特に0.005〜1重量%存在させるのが好ましい。保存液中には、さらに必要に応じて通常0.001〜10重量%の非イオン界面活性剤や陽イオン界面活性剤を添加することができる。酵素活性を保ち腐敗を防止するためには固定化酵素が十分この保存液に浸かっていることが必要であり、乾燥等に注意しなければならない。保存は0〜40℃で行なうのが好ましいが特に限定されない。
【0021】
酸化酵素とは酸素の存在下、測定対象物質を酸化して過酸化水素を生成する酵素であり、たとえばピラノースオキシダーゼ(EC 1.1.3.10)、L−ソルボースオキシダーゼ(EC 1.1.3.11)、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)、コレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)、ウリカーゼ(EC 1.7.3.3)、プトレシンオキシダーゼ(EC 1.4.3.10)等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0022】
ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)としては、その起源、由来は特に限定されない。植物、動物、微生物由来のペルオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ様活性物質が使用できる。これらのペルオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ様活性物質は単独あるいは組み合わせて使用できる。
【0023】
酸化酵素およびペルオキシダーゼは、水に不溶性の担体に固定化し、固定化酵素リアクターとして使用される。酵素を固定化する水に不溶性の担体としては種々のものが使用でき、特に限定されない。たとえば、担体の材質としてはガラス、シリカゲル、合成ポリマー、セルロース、デキストラン、キトサン、アガロース、セラミック、金属等いずれでも良く、また、担体の形状としては、粒子状、ビーズ状、繊維状、フィルム状、板状、管状等いずれでも良く、目的に応じて、適当な材質および形状のものが選択して使用される。
【0024】
酵素の担体への固定化は常法によって行うことができ、その方法は特に限定されるものではない。たとえば、吸着法、包括法、架橋法、共有結合法などの固定化方法が一般的に用いられるが、なかでも反応中に酵素の脱離の起こらない共有結合法が好ましい。共有結合法においても種々の方法が適用できる。たとえば、シアン化ブロム法、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、シラン化法、カルボキシ基を活性エステルにした後結合する方法、エポキシ基、ホルミル基、トレシル基などの官能基を有する担体と結合させる方法が適用できる。
【0025】
酸化酵素とペルオキシダーゼは両方とも同一の担体に固定しても良く、あるいは酸化酵素とペルオキシダーゼを別々の担体に固定化しても良い。固定化酵素を充填または設置してリアクター(バイオリアクター)とする容器は、担体の形状により適宜選択すれば良い。たとえば粒子状の担体の場合、通常のカラムやチューブが使用できる。固定化酸化酵素と固定化ペルオキシダーゼは両方とも同一のカラムに充填して固定化酵素リアクターとしても良く、あるいは固定化酸化酵素と固定化ペルオキシダーゼを別々のカラムに充填し配管でつないで固定化酵素リアクターとしても良い。
【0026】
次に、本発明の測定法について詳細に説明する。
【0027】
検体中の微量成分に固定化酸化酵素を作用させ発生した過酸化水素を固定化ペルオキシダーゼを用いて検出する検体中の微量成分の測定法としては、特に限定されず、公知のいかなる方法も採用できる。
【0028】
検体としては種々のものが使用でき、特に限定されない。例えば血清、血漿、血液、膵液、胸水、腹水、髄液などの体液や尿などの排泄物、便などの希釈物から固形分を除去したもの、各種組織の抽出液などの生体試料や、これら生体試料から、微量成分の検出を妨害する物質を除去した処理液等が挙げられる。
【0029】
検体中の測定する微量成分としては、1,5−AG(1,5−アンヒドログルシトール)、グルコース等の糖類、ポリアミン、ピルビン酸、コレステロール、尿酸等が挙げられ、これらは体液中に通常1000μg/ml以下存在する。
【0030】
固定化酸化酵素及び固定化ペルオキシダーゼとしては、前記のものが使用できる。酸化酵素とペルオキシダーゼは、同一の担体に固定されていてもよく、又、別々の担体に別々に担持されていてもよい。又、固定化酸化酵素と固定化ペルオキシダーゼは、同一のリアクターに充填又は配置されていてもよく、又、それぞれ別々のリアクターに充填又は配置し、両者を配管で結合して用いてもよい。
【0031】
発生した過酸化水素を固定化ペルオキシダーゼを用いて検出する方法としては、公知の方法が使用でき特に限定されない。例えば、吸光光度法、蛍光光度法、化学発光法、電気化学検出法等が挙げられる。
【0032】
第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤としては、前記のもの(防腐剤)が使用でき、試薬溶液又はキャリヤー液に溶解又は分散させることができるものが好ましい。この第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤は、酵素反応系への供給液中に、好ましくは0.001〜10重量%、特に好ましくは0.005〜1重量%存在させる。
【0033】
説明を簡単にするため吸光光度法を検出原理とするフローインジェクション分析法による生体試料中の微量成分の測定を例として本発明の測定法をより詳細に説明する。
【0034】
フローインジェクショ分析装置は送液装置、試料注入装置、バイオリアクター(固定化酵素リアクター)、吸光度検出器、およびそれらをつなぎ試薬溶液やキャリヤー液などを移送するチューブ類やジョイント類と吸光度検出器で得られたシグナルを指示・記録する装置より構成される
酸化酵素の作用により生成した過酸化水素はペルオキシダーゼの作用によりペルオキシダーゼの発色基質と反応し、該基質が発色色素に変換されるが、そのための発色基質を含む試薬溶液は送液装置により試料注入装置を通り、バイオリアクターへ通液される。バイオリアクターからの流出液はさらに吸光度検出器へ導かれる。または、検査試料(検体)を移送するキャリヤー液の送液装置を発色基質を含む試薬溶液を移送する送液装置とは別に設け、キャリヤー液を試料注入装置に通し、検査試料(検体)をキャリヤー液で移送し、発色基質を含む試薬溶液とキャリヤー液をバイオリアクターに入る前の配管上で合流させてバイオリアククターに通液しても良い。試薬溶液及び/又はキャリヤー液からなる供給液のバイオリアクター(酵素反応系)への通液量は通常0.001〜20ml/分程度である。
【0035】
本発明で用いる第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤は試薬溶液とキャリヤー液の両方あるいは一方に添加して使用することができるが、タンパク質等を含む生体試料を検体に用いる場合、配管上でも微生物の増殖が起こるので両方に添加することが好ましい。
【0036】
試薬溶液としては、弱酸性、中性、塩基性の種々のものが使用でき、たとえば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等にペルオキシダーゼの基質等を添加したもの等が挙げられる。試薬溶液には、検体中に含まれるタンパク質等の吸着を避けるため、必要に応じて非イオン界面活性剤や陽イオン界面活性剤を添加することができる。添加量は通常0.001から10重量%である。キャリヤー液としては試薬溶液で用いられる緩衝液が使用でき、その他に水、ホウ酸水溶液等も使用できる。キャリヤー液にも、必要に応じて通常0.001から10重量%の非イオン界面活性剤や陽イオン界面活性剤を添加することができる。
【0037】
ペルオキシダーゼの基質としては種々の発色基質が使用できるが、それ以外にも、種々の蛍光基質、発光物質を使用することもでき、特に限定されない。発色基質の例としてはN−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェニルアミン ナトリウム塩(DA−64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−フェノチアジン ナトリウム塩(DA−67)、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、10−N−メチルカルバミル−ジメチルアミノ−10H−フェノチアジン(MCDP)、4−アミノアンチピリンとフェノール類やN置換芳香族アミン誘導体を組み合わせたトリンダー系試薬などが挙げられる。基質の使用濃度は測定対象物の濃度や基質の種類によって適宜選択される。
【0038】
本発明の測定法はタンパクや糖などを含み腐敗し易い検体を用いる場合特に有効である。その例として生体試料等がある。検体の注入量は通常0.1〜100μl程度である。
【0039】
リアクターにおける酵素反応は通常0〜80℃、好ましくは4〜40℃で行なう。
【0040】
【実施例】
以下に実施例および比較例をあげて、本発明をより具体的に説明する。
【0041】
合成例1 固定化ピラノースオキシダーゼの調製
1gのアミノプロピル−CPG(ポアーサイズ1400オングストローム フナコシ(株)販売)に2.5%グルタルアルデヒド水溶液10mlを添加し、1時間室温で反応させた後、十分水洗した。これに7000ユニットのピラノースオキシダーゼ(PROD)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)10mlを加え、室温で4時間撹拌しながら反応させた。得られたPROD固定化担体粒子を上記リン酸緩衝液で洗浄し未反応のPRODを除去し、PROD固定化酵素を作製した。
【0042】
合成例2 固定化ペルオキシダーゼの調製
合成例1で使用したアミノプロピル−CPG1gに、過ヨウ素酸法により活性化した10000ユニットのホースラデシュペルオキシダーゼ(HRP)を含む0.01M炭酸緩衝液(pH9.5)10mlを添加し、4℃4時間反応させた。得られたHRP固定化担体粒子を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)で洗浄し未反応のHRPを除去し、HRP固定化酵素を作製した。
【0043】
実施例1 塩化ジデシルジメチルアンモニウムの効果
図1に示したフローインジェクション分析装置により、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(防腐剤)を添加した発色試薬溶液を用いて、1,5−アンヒドロ−D−グルシトールの連続注入試験を行った。
【0044】
この分析装置においては防腐剤およびHRPの発色基質を含む緩衝液(X1)をポンプ(X2)を用いて固定化酸化酵素カラム(X4−1)、次いで固定化ペルオキシダーゼカラム(X4−2)に導通し、固定化酸化酵素カラムで生成した過酸化水素は固定化ペルオキシダーゼカラムで発色基質と反応させ発色色素に変換させ、これを吸光度検出器(X5)で検出する。ポンプと固定化酸化酵素カラムの間に設けられた自動試料注入装置(X3)から検査試料(検体)が連続的に注入され、ピーク面積として指示・記録装置(X6)に記録される。
【0045】
固定化酸化酵素カラムとしては合成例1で調製したPROD固定化酵素150μlを内容積150μlのカラムに充填したものを、固定化ペルオキシダーゼカラムとしては合成例2で調製したHRP固定化酵素150μlを内容積150μlのカラムに充填したものを用い、これらを分析装置に装着した。
【0046】
防腐剤として0.04w/v%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを添加した100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液としてポンプで1ml/minの供給速度で導通し、5μg/mlの1,5−アンヒドロ−D−グルシトール水溶液10μlを自動試料注入装置から2.5分間隔で連続注入し727nmの吸光度からピーク面積を測定した。測定は室温で行った。
【0047】
試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0048】
実施例2 塩化ジオクチルジメチルアンモニウムの効果
防腐剤として0.04w/v%の塩化ジオクチルジメチルアンモニウムを添加した100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例1と同様にして測定をした。
【0049】
試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0050】
実施例3 塩化ベンザルコニウムの効果
防腐剤として0.04w/v%の塩化ベンザルコニウムを添加した100μMDA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例1と同様にして測定をした。
【0051】
試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0052】
実施例4 塩化ベンゼトニウムの効果
防腐剤として0.04w/v%の塩化ベンゼトニウムを添加した100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液にして、実施例1と同様の測定をした。試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0053】
比較例1 防腐剤を添加しない場合
100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例1と同様にして測定をした。
【0054】
試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0055】
比較例2 チメロサールの添加効果
防腐剤として0.04w/v%のチメロサールを添加した100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例1と同様にして測定をした。
【0056】
試料注入開始後1回目と2000回目のピーク面積を表1に示す。
【0057】
表1に示したように、実施例1〜4ではピーク面積の変化は見られず安定な測定ができた。比較例1及び2では明らかなピーク面積の減少が見られた。
【0058】
比較例3 クロラムフェニコールの効果
50μg/mlのクロラムフェニコールと100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例1と同様にして測定をした。
【0059】
試料注入1回目の結果を表1に示す。注入1回目からピーク面積は低かった。
【0060】
【表1】
【0061】
試験例1 生菌数の測定
実施例1〜4と比較例1,2で使用した固定化酸化酵素カラムおよび固定化ペルオキシダーゼカラムからそれぞれ固定化酵素粒子を抜き出し6mlの生理食塩水に懸濁した。良く混合した後10分間静置して得られた上清中の生菌数を、グルコース−酵母エキスをベースとした培地を使用し、平板培養法で測定した。
【0062】
結果を表2に示す。
【0063】
実施例1〜4では細菌の増殖は認められなかった。防腐剤を添加していない比較例1では明らかに細菌の増殖が認められた。チメロサールを添加した比較例2では細菌の増殖は認められなかったが、前記のとおりピーク面積は減少しており、チメロサールが酵素活性に影響を与えたことが判る。
【0064】
【表2】
【0065】
合成例3
合成例1においてPRODの代わりにグルコースオキシダーゼ(GOD)を用い、その他は合成例1と同様にしてGOD固定化酵素を調製した。
【0066】
実施例5 塩化ジデシルジメチルアンモニウムの効果
実施例1と同様にして、図1に示したフローインジェクション分析装置により、塩化ジデシルジメチルアンモニウムを添加した発色試薬溶液を用いて、血清中のグルコースの測定をした。
【0067】
固定化酸化酵素カラムとしては合成例3で調製したGOD固定化酵素150μlを内容積150μlのカラムに充填したものを使用した。
【0068】
防腐剤として0.04w/v%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを添加した100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液としてポンプで1ml/minの供給速度で導通し、リン酸生理食塩水で50倍に希釈したヒト血清10μlを自動試料注入装置から2.5分間隔で連続注入し727nmの吸光度からピーク面積を測定した。測定は室温で行った。
【0069】
試料注入開始後1回目と1000回目のピーク面積を表3に示す。
【0070】
比較例4 防腐剤を添加しない場合
100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液として用い、その他は実施例5と同様にして測定した。
【0071】
試料注入開始後1回目と1000回目のピーク面積を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
試験例2 生菌数の測定(2)
実施例5と比較例4で使用した固定化酸化酵素カラムおよび固定化ペルオキシダーゼカラムからそれぞれ固定化酵素粒子を抜き出し、試験例1と同様の操作を行い、生菌数を測定した。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例6 塩化ジデシルジメチルアンモニウムによる保存効果
合成例1で調製したPROD固定化酵素150μlを充填した内容積150μlのカラムと、合成例2で調製したHRP固定化酵素150μlを充填した内容積150μlのカラムに、防腐剤として0.04w/v%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムを添加した50mMリン酸緩衝液pH7.0をポンプにより1ml/minで30分間通液し、めくら栓をして10℃で1ヶ月保存した。その後これらのカラムを図1の分析装置に装着し、1,5−アンヒドロ−D−グルシトールの測定をした。100μM DA−64を含む50mMリン酸緩衝液pH7.0を発色試薬溶液としてポンプで1ml/minの供給速度で導通し、5μg/mlの1,5−アンヒドロ−D−グルシトール水溶液10μlを自動試料注入装置から注入し727nmの吸光度からピーク面積を測定した。測定は室温で行った。
【0076】
試料注入開始後1回目のピーク面積を表5に示す。
【0077】
比較例5 防腐剤を添加しない場合の保存安定性
実施例6と同様にして、PROD固定化酵素充填カラムおよびHRP固定化酵素充填カラムに50mMリン酸緩衝液pH7.0をポンプにより1ml/minで30分間通液し、めくら栓をして10℃で1ヶ月保存した。
【0078】
これらのカラムを用い実施例6と同様にして1,5−アンヒドロ−D−グルシトールの測定をした。結果を表5に示す。
【0079】
比較例6 アジ化ナトリウムによる保存効果
実施例6のPROD固定化酵素充填カラムおよびHRP固定化酵素充填カラムに防腐剤として0.02w/v%のアジ化ナトリウムを添加した50mMリン酸緩衝液pH7.0をポンプにより1ml/minで30分間通液し、めくら栓をして10℃で1ヶ月保存した。これらのカラムを用い実施例6と同様にして1,5−アンヒドロ−D−グルシトールの測定をした。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
試験例3 生菌数の測定(3)
実施例6および比較例5,6において1カ月保存したカラムからそれぞれ固定化酵素を抜き出し、試験例1と同様の操作を行い、生菌数を測定した。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【発明の効果】
本発明によると、固定化酸化酵素と固定化ペルオキシダーゼを使用する生体試料等の検体中の微量分析において、第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤を防腐剤として用いることで長期間安定に測定することが可能であり、又、酸化酵素とペルオキシダーゼを含む固定化酵素リアクターを長期間保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で使用したフローインジェクション分析装置の略図。
【符号の説明】
X1 緩衝液
X2 送液装置(ポンプ)
X3 試料注入装置
X4−1 固定化酸化酵素カラム
X4−2 固定化ペルオキシダーゼカラム
X5 吸光度検出器
X6 指示・記録装置
Claims (8)
- 酸化酵素とペルオキシダーゼを含む開放系固定化酵素リアクターの酵素反応系への供給液に添加して使用するための第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤から成る該固定化酵素リアクターの防腐剤。
- 酸化酵素が、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼである請求項1の防腐剤。
- 第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤が、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩である請求項1または2の防腐剤。
- 少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩が塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムである請求項3の防腐剤。
- 検体中の微量成分に固定化酸化酵素を作用させ発生した過酸化水素を固定化ペルオキシダーゼを用いて検出する検体中の微量成分の測定法において、酵素反応系への供給液中に第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤を存在させることを特徴とする微量成分の測定法。
- 固定化酸化酵素が、固定化ピラノースオキシダーゼ又は固定化L−ソルボースオキシダーゼである請求項5の測定法。
- 第4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤が、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩である請求項5又は6の測定法。
- 少なくとも一つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩が塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムである請求項7の測定法。
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