JP3539660B2 - 分岐光線路試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐光線路試験装置に係わり、特に、光アクセス網を経済的に構築するために有望とされるPDS光伝送システムの建設・保守に必要となる光パルス試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ通信網の建設あるいは保守にあたり、局内のケーブル成端部からユーザ設備直前に到るまでの光ファイバ心線単位の試験が必須となっている。この作業には、建設工事時に光ファイバ心線の良否を判定する光パルス試験、故障発生時に通信設備とユーザ設備との故障判定を行う設備故障切り分け試験、故障位置を特定するための故障探索試験、あるいは現用回線の予防保全を目的とした定期試験等がある。
【0003】
現在、ユーザービルあるいは各家庭までを光化するにあたって、映像分配サービスなどを安価に提供できるように、1つの局内伝送装置と複数の加入者伝送装置とをスターカプラ等の波長無依存型の光分岐器を用いて接続するPDS(Passive Double Star)光伝送システムの開発が進められている。
【0004】
このPDS光伝送システムは実用実験段階にあり、マルチメディア通信実験が一部の地区で実施されている(『OPTICAL FIBER LINE TEST AND MEASUEMENT SYSTEM FOR PASSIVEDOUBLE STAR NETWORKS AND WDM TRANSMISSION SYSTEMS』,44th IWCS Proceedings,pp.640−646参照)。
【0005】
このような波長無依存型の光分岐器は、試験光を分岐光ファイバの各々に等しく分配するため、波長無依存型の光分岐器が使用される従来のPDS光伝送システムにおいては、分岐前の光ファイバから各分岐光ファイバの損失分布を個別に測定することができない。唯一、各分岐光ファイバの長さを全て異なるように設計し、各分岐光ファイバからの端末反射光の位置情報とそのレベル変化から、通信設備が故障なのか、あるいはユーザ設備が故障なのかの設備故障判定が、現在行われている。このため、波長無依存型の光分岐器が使用される従来のPDS光伝送システムにおいては、建設・保守の信頼性が低下するばかりでなく、PDS光伝送システムの設計自由度が制限されることになる。
【0006】
前記問題点を解消するために、1つの局内伝送装置と複数の加入者伝送装置とを波長依存性のある波長選択型光分岐器を介して接続するPDS光伝送システムとその試験方法が検討されている。
【0007】
この通信形態の光分岐器には、石英系ガラス導波路で作られたアレー光導波路格子(AWG;Arrayed Waveguide Grating)で構成される光分岐器(以下、AWG分岐器と称する。)が使用される。このAWG分岐器の透過帯域ポート(チャンネル)は、周期的に繰り返されるため、その中の1周期を試験波長帯域に用い、各分岐光ファイバの各々に異なる試験波長(試験チャンネル)を割り当てることができる。したがって、光パルス試験装置から出力される試験光の波長を目的の試験波長に合わせることにより、各分岐光ファイバを個別に試験することが可能となる(特願平7−270025号参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したPDS光伝送システムにおいては、AWG分岐器の透過帯域が温度変化によって変化(以下、ドリフトと称する。)するという問題点があった。即ち、AWG分岐器が温度変化を伴うような環境(屋外など)に設置された場合、その試験チャンネルにドリフトが生じるため、温度制御を行わずにAWG光分岐器を用いると、所定の波長の試験光を光パルス試験装置から出力した場合に、AWG光分岐器のドリフトによって異なるチャンネルに入力されたり、あるいは異なる試験チャンネルに入力されないまでも実効的な透過損失が増加し、分岐光ファイバの損失分布が測定できない恐れがあった。
【0009】
前記問題点を解決するため、任意の温度環境下にあるAWG光分岐器の試験チャンネルを光パルス試験装置によって予め検知し、各分岐光ファイバの個別試験を実施する方法が提案されている。
【0010】
図8は、PDS光伝送システムの試験チャンネルドリフトを補正する従来の方法を説明するための図である。
【0011】
以下、図8を用いて、PDS光伝送システムの試験チャンネルのドリフトを補正する従来の方法について説明する。
【0012】
同図において、1は単一光ファイバ、2−1,2−2,…,2−nは分岐光ファイバ、3は波長選択型光分岐器(AWG光分岐器)、4−1,4−2,…,4−(n−1)は光バンドパスフィルタ、5−1,5−2,…,5−(n−1)は加入者伝送装置、6は光パルス試験装置、7は試験光入出力手段、8は局内伝送装置、17はミラーである。
【0013】
同図に示すように、波長選択型光分岐器3に接続された1本の分岐光ファイバ(2−n)(以下、参照チャンネルと称する。)に全面反射処理したミラー17を設置する。そして、光パルス試験装置6から出力される試験光を試験チャンネルの全てを含む波長範囲で掃引すると、光パルス試験装置6からの試験光は、参照チャンネルにおいてはミラー17で反射されるので、戻ってくる反射光は、参照チャンネルにおいて相対的に強く反射される。
【0014】
この反射光の波長を読み取ることによって、任意の温度状況下における参照チャンネルの最大透過波長を測定できる。ここで、参照チャンネルを含む各試験チャンネル相互の間隔は温度変化によってほとんど変化しないため、任意の温度での参照チャンネルが検知できれば、参照チャンネル分岐光ファイバを個別に試験することが可能となる(特願平5−230266号;光分岐線路監視システム、参照)。
【0015】
しかしながら、この試験方法においては、分岐光ファイバの1つをドリフト監視用の参照ポートとして全反射処理をしているため、通信用チャンネルが1つ減り、PDS光伝送システムの経済化効果が減少する。また、参照チャンネルから生じる反射光は、PDS光伝送システムを構成する他の光部品より強い反射を伴うため、局内伝送装置への影響を考慮したPDS光伝送システムの設計が必要となるという問題点があった。
【0016】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、PDS光伝送システムに使用される分岐光線路試験装置において、屋外環境等の温度変化が原因で波長選択型光分岐器の試験チャンネルにドリフトが生じた場合にも、各光分岐ファイバを個別に試験することが可能となる技術を提供することにある。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0019】
局内伝送装置と、異なる複数の波長の通信光および試験光を、各々の波長に応じて複数の相異なる光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器と、前記局内伝送装置と前記波長選択型光分岐器との間に設けられ前記通信光および試験光を伝搬させる1本の光ファイバと、複数の加入者伝送装置と、前記波長選択型光分岐器と複数の加入者伝送装置との間に設けられる複数の分岐光ファイバとを具備するPDS光伝送システムに使用される分岐光線路試験装置であって、試験光を出力する光パルス試験装置と、前記光パルス試験装置からの試験光を前記1本の光ファイバに入出力させる光結合器と、前記複数の加入者伝送装置の直前に設置され、前記試験光を遮断する光フィルタとを備え、前記光パルス試験装置は、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長範囲の試験光を出力する波長可変光源と、前記波長可変光源からの試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光を検出する受光器と、前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有する。
【0020】
また、前記光パルス試験装置は、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長を含む広帯域の試験光を出力する少なくとも1つの試験用光源と、前記少なくとも1つの試験用光源からの広帯域の試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光の中から、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域内の波長を個別に選択して出力する透過波長可変型光バンドパスフィルタと、前記透過波長可変型光バンドパスフィルタからの透過光を検出する受光器と、前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有する。
【0021】
さらに、前記光パルス試験装置は、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長を含む広帯域の試験光を出力する少なくとも1つの試験用光源と、前記少なくとも1つの試験用光源から出力される広帯域の試験光の中から、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域内の波長を個別に選択して出力する透過波長可変型光バンドパスフィルタと、前記透過波長可変型光バンドパスフィルタからの試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光を検出する受光器と、前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有する。
【0022】
即ち、本発明は、波長選択型光分岐器が使用されるPDS光伝送システムにおいて、波長選択型光分岐器の温度変化に伴う試験チャンネルドリフトを、ある特定の分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは光フィルタからの反射光の最大強度の波長を測定することによって、全ての分岐光ファイバに割り当てられた試験チャンネルを推定し、試験対象となる分岐光ファイバの試験波長光を光パルス試験装置から出力することにより、各分岐光ファイバを個別に試験できるようしたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本発明の一実施の形態である分岐光線路試験装置が使用されるPDS光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【0026】
同図において、1は単一光ファイバ、2−1,2−2,…,2−nは分岐光ファイバ、3は波長選択型光分岐器(AWG光分岐器)、4−1,4−2,…,4−nは光バンドパスフィルタ、5−1,5−2,…,5−nは加入者伝送装置、6は光パルス試験装置、7は試験光入出力手段、8は局内伝送装置である。
【0027】
ここで、局内伝送装置8は、1つ、あるいは異なる複数の波長の通信光を用いて送受信する局内伝送装置である。また、波長選択型光分岐器3は、異なる複数の波長の通信光および試験光を、各々の波長に応じて複数の相異なる分岐光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器、あるいは、1つの波長の通信光を複数の相異なる光ファイバに等しく分配させ、かつ、異なる複数の波長の通信光および試験光を、各々の波長に応じて複数の相異なる分岐光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器である。
【0028】
図2は、図1に示す波長選択型光分岐器3の試験チャンネルの透過スペクトラムを示すグラフである。
【0029】
分岐数は14で、#1,#2,…,#14は、各分岐光ファイバに割り当てられた透過チャンネルを表わす。試験チャンネルの半値全幅は約0.4nm、各試験チャンネルの間隔は約1nm、また挿入損失は平均で約7.5dBである。
【0030】
図3は、図1に示す波長選択型光分岐器3における、温度と試験チャンネルドリフト量との関係を示すグラフである。
【0031】
図3は、1番チャンネルと8番チャンネルの温度特性を測定したものであるが、各チャンネルのドリフト量はほぼ同じであり、1℃あたり約0.0149±0.0006nmである。
【0032】
図4は、本実施の形態の光パルス試験装置6の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
同図において、9は波長可変光源、10は音響光学スイッチ、11は受光素子、12はタイミング発生装置、13は主制御/識別部、14は光源駆動回路、15は加算器である。
【0034】
同図に示す光パルス試験装置6において、光源駆動回路14は、主制御/識別部13の制御を受け、波長可変光源9をパルス変調駆動する。波長可変光源9から出力されたパルス試験光は、タイミング発生装置12によって光源駆動回路14のパルス変調駆動と同期をとりながら動作する音響光学スイッチ10を通過する。ここで、音響光学スイッチ10は、パルス試験光とそれによって生じる戻り光との送受信の切り替えを行う。
【0035】
このようにして、光パルス試験装置6から出力されたパルス試験光は、試験光入出力手段7を介して単一光ファイバ1に入射され、さらに波長選択型光分岐器3によって、パルス試験光の波長に応じて、分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に振り分けられる。
【0036】
即ち、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルを選択的に通過したパルス試験光は、さらに分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を伝搬し、加入者伝送装置(5−1〜5−n)の直前に設置された光バンドパスフィルタ(4−1〜4−n)によって遮断され、また同時に端末反射光として反射され、その前に単一光ファイバ1や分岐光ファイバ(2−1〜2−n)で生じた戻り光とともに、パルス試験光と同じ経路を逆に伝搬し、再び光パルス試験装置6へ回帰し、受光素子11で受光される。受光された戻り光(レイリー後方散乱光、あるいは端末反射光)は、タイミング発生装置12と同期して動作している加算器15によって加算処理され、主制御/識別部13の中にあるモニタにOTDR波形として表示される。
【0037】
次に、本実施の形態の各試験チャンネルの推定方法について説明する。本実施の形態では、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルをできる限り精度よく推定するため、チャンネル損失変化が最も急峻なポート(#8)を監視用チャンネルに用いる。また、このチャンネル(#8)の特定温度Tcにおける初期条件を、光パルス試験装置6に取得させておく。
【0038】
即ち、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルの参照波長;λ8、試験チャンネルポートの最小挿入損失;Gc、試験チャンネルの半値全幅;Wc、各試験チャンネル相互の間隔;Δλ1,Δλ2,…,Δλ(n−1)を光パルス試験装置6に取得させておく。ここで、全ての試験チャンネルは温度変化に対して一様にドリフトすると仮定する。
【0039】
各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に割り当てられた試験チャンネルが、波長選択型光分岐器3の温度変化によりドリフトした場合、参照チャンネル(#8)に割り当てられた試験波長を、主制御/識別部13の制御を受けた波長可変光源9が、試験チャンネル(#8)の半値全幅の半分より小さな刻みで試験波長を変化させながらパルス試験光を出力し、その各々によって生じる分岐光ファイバからの戻り光を受光素子11で測定し、その戻り光の最大強度を主制御/識別部13で識別する。その時の最大強度の波長と、光パルス試験装置6に予め初期条件として取得しておいた波長選択型光分岐器3の参照波長(λ8)との差から、主制御/識別部13でドリフト量(Δλt)を求める。
【0040】
これにより、任意の温度環境下にある波長選択型光分岐器3の試験チャンネルに対しても、そのドリフト量(Δλt)を、波長選択型光分岐器3の各試験チャンネルの初期条件に補正を加えることによって、各試験チャンネルの最大透過波長を推定することができるため、光パルス試験装置6から目的とする分岐光ファイバ(2−1〜2−n)の試験波長光を出力させることにより、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することが可能となる。
【0041】
図5は、波長選択型光分岐器3の温度変化に伴う、8番分岐光ファイバからの後方散乱光の強度変化(OTDR波形)を測定したグラフである。
【0042】
図5(a)は、波長選択型光分岐器3の温度が25℃で、試験波長が1648.1nmのときのOTDR波形を表し、これは本実施の形態の波長選択型光分岐器3の8番分岐光ファイバにおいて、25℃の時の試験光の最大透過波長(参照波長)であり、そのときの波長選択型光分岐器3の透過損失(以後、レベル差と呼ぶ)は約7dBであった。
【0043】
図5(b)は、波長選択型光分岐器3の温度が40℃で試験波長が1648.1nmのときの、即ち、波長選択型光分岐器3が25℃から40℃へ温度変化した後のOTDR波形を表している。この図5(b)から、波長選択型光分岐器3の温度が変化し、それにより、波長選択型光分岐器3の透過損失が増加し、試験チャンネルが1648.1nmから変化(移動)したことが分かる。このときの透過損失は約11dBであった。
【0044】
図5(c)は、波長選択型光分岐器3の温度が40℃で試験波長が1648.2nmのときOTDR波形を表わしている。この図5(c)は、温度変化に伴う試験チャンネルのドリフト方向を判断するため、参照波長からわずか+0.1nmだけ変化させた時のOTDR波形である。そのときの透過損失は約9dBであった。このときレベル差が減少する方向にあることから、試験チャンネルが長波長側へドリフトしていることが確認できる。
【0045】
図5(d)は、波長選択型光分岐器3の温度が40℃で試験波長が1648.4nmのときのOTDR波形を表わしている。この図5(d)は、図5(c)の作業を繰り返し、透過損失が最小になる試験波長を求めた結果であり、参照波長のときと同じ様な透過損失7dBを1648.4nmのときに見い出すことができた。即ち、波長選択型光分岐器3の温度が、25℃から40℃へ変化したことによる試験チャンネルドリフト値Δλtは0.3nm程度であった。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、屋外環境などの温度変化によって波長選択型光分岐器3のチャンネルがドリフトするようなPDS光伝送システムにおいて、光パルス試験装置6によって特定の試験チャンネルのドリフトを監視し、そのドリフト量で各試験チャンネルの初期条件を補正することによって、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することができる。これにより、屋外などの温度変化に制約されない設計自由度のあるPDS光伝送システムを構築することが可能となる。
【0047】
[実施の形態2]
図6は、本実施の形態の光パルス試験装置6’の概略構成を示すブロック図である。
【0048】
本実施の形態は、前記実施の形態1における光パルス試験装置6を、図6に示す光パルス試験装置6’と置き換えた以外は、前記実施の形態1と同じである。
【0049】
図6において、6’は光パルス試験装置、9’は広波長スペクトル幅光源、10は音響光学スイッチ、11は受光素子、12はタイミング発生装置、13は主制御/識別部、14は光源駆動回路、15は加算器、16は波長選択用光バンドパスフィルタである。
【0050】
図6に示す光パルス試験装置6’において、光源駆動回路14は、主制御/識別部13の制御を受け、広波長スペクトル幅光源9’をパルス変調駆動する。広波長スペクトル幅光源9’から出力されるパルス試験光は、タイミング発生装置12によって光源駆動回路14のパルス変調駆動と同期しながら動作する音響光学スイッチ10を透過する。ここで、音響光学スイッチ10は、パルス試験光とそれによって生じる戻り光の送受信の切り替えを行うものである。
【0051】
このようにして、光パルス試験装置6’から出力されたパルス試験光は、試験光入出力手段7を介して単一光ファイバ1に入射され、さらに波長選択型光分岐器3によって、パルス試験光の波長に応じて、分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に振り分けられる。
【0052】
即ち、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルを選択的に通過したパルス試験光は、さらに各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を伝搬し、加入者伝送装置(5−1〜5−n)の直前に設置した光バンドパスフィルタ(4−1〜4−n)によって遮断され、また同時に端末反射光として反射され、その前に単一光ファイバ1や分岐光ファイバ(2−1〜2−n)で生じた戻り光とともに、パルス試験光と同じ経路を逆に伝搬され、再び光パルス試験装置6’へ回帰し、受光素子11で受光される。
【0053】
ここで、光パルス試験装置6’へ回帰した戻り光は、分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に割り当てられた全ての試験波長スペクトラムを含んでいる。したがって、主制御/識別部13の制御の元に、波長選択用光バンドパスフィルタ16において、目的とする分岐光ファイバ(例えば、#8)の試験波長を選択し、受光素子11で受光する。受光された戻り光は、タイミング発生装置12と同期している加算器15によって加算処理され、主制御/識別部13の中にあるモニタにOTDR波形として表示する。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、光パルス試験装置6’から各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に割り当てられた試験波長の全てを含むパルス試験光を出力し、主制御/識別部13の制御の元に、光パルス試験装置6’の受光素子11の直前に設置した波長選択用光バンドパスフィルタ16を、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルの半値全幅の半分より小さな刻みで変化させ、特定の分岐光ファイバに割り当てられた試験チャンネルの戻り光を受光素子11で測定し、その戻り光の最大強度を主制御/識別部13で識別する。その時の最大強度の試験波長と、予め光パルス試験装置6’側で把握しておいた波長選択型光分岐器3の試験チャンネルの参照波長との差からドリフト量(Δλt)を求めることができる。
【0055】
これにより、任意の温度環境下にある波長選択型光分岐器3の試験チャンネルに対しても、そのドリフト量(Δλt)を、波長選択型光分岐器3の各試験チャンネルの初期条件に補正を加えることによって、各試験チャンネルの最大透過波長を推定することができるため、前記実施の形態1と同様にして、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することが可能となる。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、屋外環境などの温度変化によって波長選択型光分岐器3のチャンネルがドリフトするようなPDS光伝送システムにおいて、光パルス試験装置6’によって特定の試験チャンネルのドリフトを監視し、そのドリフト量で各試験チャンネルの初期条件を補正することによって、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することができる。これにより、屋外などの温度変化に制約されない設計自由度のあるPDS光伝送システムを構築することが可能となる。
【0057】
[実施の形態3]
図7は、本実施の形態の光パルス試験装置6’’の概略構成を示すブロック図である。
【0058】
本実施の形態は、前記実施の形態1における光パルス試験装置6を、図7に示す光パルス試験装置6’’と置き換えた以外は、前記実施の形態1と同じである。
【0059】
図7において、6’’は光パルス試験装置、9’’は広波長スペクトル幅光源、10は音響光学スイッチ、11は受光素子、12はタイミング発生装置、13は主制御/識別部、14は光源駆動回路、15は加算器、16は波長選択用光バンドパスフィルタである。
【0060】
図7に示す光パルス試験装置6’’おいて、光源駆動回路14は、主制御/識別部13の制御を受け、広波長スペクトル幅光源9’’をパルス変調駆動する。広波長スペクトル幅光源9’’から出力された試験光は、分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に割り当てられた全ての試験波長スペクトルを含んでいる。広波長スペクトル幅光源9’’から出力されたパルス試験光は、主制御/識別部13の制御を受けた波長選択用光バンドパスフィルタ16によって、特定の分岐光ファイバ(例えば、#8)の試験波長を選択し、タイミング発生装置12によって光源駆動回路14のパルス変調駆動と同期しながら動作する音響光学スイッチ10を通過する。ここで、音響光学スイッチ10は、パルス試験光とそれによって生じる戻り光の送受信の切り替えを行うものである。
【0061】
このようにして、光パルス試験装置6’’から出力されたパルス試験光は、試験光入出力手段7を介して単一光ファイバ1に入射され、さらに波長選択型光分岐器3によって、パルス試験光の波長に応じて、分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に振り分けられる。
【0062】
即ち、波長選択型光分岐器3の試験チャンネルを選択的に通過したパルス試験光は、さらに分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を伝搬し、加入者伝送装置(5−1〜5−n)の直前に設置した光バンドパスフィルタ(4−1〜4−n)によって遮断され、また同時に端末反射光として反射され、前に単一光ファイバ1や分岐光ファイバ(2−1〜2−n)で生じた戻り光とともに、パルス試験光と同じ経路を逆に伝搬され、再び光パルス試験装置6’’へ回帰し、受光素子11で受光される。受光された戻り光(レイリー後方散乱光、もしくは端末反射光)は、タイミング発生装置12と同期して動作している加算器15によって加算処理され、主制御/識別部13の中にあるモニタにOTDR波形として表示する。
【0063】
このように、本実施の形態では、光パルス試験装置6’’から、特定の分岐光ファイバ(2−1〜2−n)に割り当てられた試験波長のパルス試験光を選択的に出力し、主制御/識別部13の制御によって、波長選択用光バンドパスフィルタ16を波長選択型光分岐器3の試験チャンネルの半値全幅の半分より小さな刻みで変化させ、特定の分岐光ファイバに割り当てられた試験チャンネルの戻り光を受光素子11で測定し、その戻り光の最大強度を主制御/識別部13で識別する。その時の最大強度の試験波長と、予め光パルス試験装置6’’側で把握しておいた波長選択型光分岐器3の参照チャンネルの参照波長との差からドリフト量(△λt)を求めることができる。
【0064】
これにより、任意の温度環境下にある波長選択型光分岐器3の試験チャンネルに対しても、そのドリフト量(Δλt)を、波長選択型光分岐器3の各試験チャンネルの初期条件に補正を加えることによって、各試験チャンネルの最大透過波長を推定することができるため、前記実施の形態1と同様にして、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することが可能となる。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、屋外環境などの温度変化によって波長選択型光分岐器3のチャンネルがドリフトするようなPDS光伝送システムにおいて、光パルス試験装置6’’によって特定の試験チャンネルのドリフトを監視し、そのドリフト量で各試験チャンネルの初期条件を補正することによって、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することができる。これにより、屋外などの温度変化に制約されない設計自由度のあるPDS光伝送システムを構築することが可能となる。
【0066】
[実施の形態4]
本実施の形態は、前記実施の形態1で用いられる光バンドパスフィルタ(4−1〜4−n)を、通常のフレネル反射光より大きな反射強度特性をもつ反射機能付き光バンドパスフィルタと置き換える以外は、前記実施の形態1と同じである。
【0067】
反射機能付き光バンドパスフィルタによって生じる反射光は、通常のフレネル反射光、もしくは後方散乱光より強い反射光として光パルス試験装置6に回帰するため、光パルス試験装置6のダイナミックレンジを拡大できるばかりでなく、試験可能距離が長いPDS光伝送システムのチャンネルドリフトを監視する場合、あるいは監視に伴うアベレージング時間を短縮させる手段として有効である。
【0068】
このように、本実施の形態では、反射機能付き光バンドパスフィルタからの反射光をチャンネルドリフトの試験光に用いながら前記実施の形態1の手順に従って、PDS光伝送システムの特定の試験チャンネルのドリフトを監視し、そのドリフト量を各試験チャンネルの初期条件に補正を加えることによって、前記実施の形態1と同様にして、各分岐光ファイバ(2−1〜2−n)を個別に試験することができる。これにより、屋外などの温度変化に制約されない設計自由度のあるPDS光伝送システムを構築することが可能となる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0070】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0071】
(1)本発明によれば、屋外などの温度変化によって波長選択型光分岐器の試験チャンネルが、不可抗力的に変化するようなPDS光伝送システムにおいて、1つの通信チャンネルも犠牲にすることなく、光パルス試験装置のみによって試験チャンネルドリフトを検知しながら各分岐光ファイバを個別に試験することが可能となる。
【0072】
(2)本発明によれば、経済的で、かつ外部温度環境に制約されない設計自由度のあるPDS光伝送システムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である分岐光線路試験装置が使用されるPDS光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す波長選択型光分岐器の試験チャンネルの透過スペクトラムを示すグラフである。
【図3】図1に示す波長選択型光分岐器における、温度と試験チャンネルドリフト量との関係を示すグラフである。
【図4】本実施の形態1の光パルス試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】波長選択型光分岐器の温度変化に伴う、8番分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光の強度変化(OTDR波形)を測定したグラフである。
【図6】本実施の形態2の光パルス試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本実施の形態3の光パルス試験装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】PDS光伝送システムの試験チャンネルドリフトを補正する従来の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1…単一光ファイバ、2−1〜2−n…分岐光ファイバ、3…波長選択型光分岐器、4−1〜4−n…光バンドパスフィルタ、5−1〜5−n…加入者伝送装置、6,6’,6’’…光パルス試験装置、7…試験光入出力手段、8…局内伝送装置、9…波長可変光源、9’,9’’…広波長スペクトル幅光源、10…音響光学スイッチ、11…受光素子、12…タイミング発生装置、13…主制御/識別部、14…光源駆動回路、15…加算器、16…波長選択用光バンドパスフィルタ。
Claims (4)
- 局内伝送装置と、異なる複数の波長の通信光および試験光を各々の波長に応じて複数の相異なる光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器と、複数の加入者伝送装置と、前記局内伝送装置と前記波長選択型光分岐器との間に設けられ前記通信光および試験光を伝搬させる1本の光ファイバと、前記波長選択型光分岐器と複数の加入者伝送装置との間に設けられる複数の分岐光ファイバとを具備するPDS光伝送システムに使用される分岐光線路試験装置であって、
試験光を出力する光パルス試験装置と、
前記光パルス試験装置からの試験光を前記1本の光ファイバに入出力させる光結合器と、
前記複数の加入者伝送装置の直前に設置され、前記試験光を遮断する光フィルタとを備え、
前記光パルス試験装置は、
前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長範囲の試験光を出力する波長可変光源と、
前記波長可変光源からの試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光を検出する受光器と、
前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有することを特徴とする分岐光線路試験装置。 - 局内伝送装置と、異なる複数の波長の通信光および試験光を各々の波長に応じて複数の相異なる光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器と、複数の加入者伝送装置と、前記局内伝送装置と前記波長選択型光分岐器との間に設けられ前記通信光および試験光を伝搬させる1本の光ファイバと、前記波長選択型光分岐器と複数の加入者伝送装置との間に設けられる複数の分岐光ファイバとを具備するPDS光伝送システムに使用される分岐光線路試験装置であって、
試験光を出力する光パルス試験装置と、
前記光パルス試験装置からの試験光を前記1本の光ファイバに入出力させる光結合器と、
前記複数の加入者伝送装置の直前に設置され、前記試験光を遮断する光フィルタとを備え、
前記光パルス試験装置は、
前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長を含む広帯域の試験光を出力する少なくとも1つの試験用光源と、
前記少なくとも1つの試験用光源からの広帯域の試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光の中から、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域内の波長を個別に選択して出力する透過波長可変型光バンドパスフィルタと、
前記透過波長可変型光バンドパスフィルタからの透過光を検出する受光器と、
前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有することを特徴とする分岐光線路試験装置。 - 局内伝送装置と、異なる複数の波長の通信光および試験光を各々の波長に応じて複数の相異なる光ファイバに振り分ける波長選択型光分岐器と、複数の加入者伝送装置と、前記局内伝送装置と前記波長選択型光分岐器との間に設けられ前記通信光および試験光を伝搬させる1本の光ファイバと、前記波長選択型光分岐器と複数の加入者伝送装置との間に設けられる複数の分岐光ファイバとを具備するPDS光伝送システムに使用される分岐光線路試験装置であって、
試験光を出力する光パルス試験装置と、
前記光パルス試験装置からの試験光を前記1本の光ファイバに入出力させる光結合器と、
前記複数の加入者伝送装置の直前に設置され、前記試験光を遮断する光フィルタとを備え、
前記光パルス試験装置は、
前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の全ての波長を含む広帯域の試験光を出力する少なくとも1つの試験用光源と、
前記少なくとも1つの試験用光源から出力される広帯域の試験光の中から、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域内の波長を個別に選択して出力する透過波長可変型光バンドパスフィルタと、
前記透過波長可変型光バンドパスフィルタからの試験光によって生じる前記分岐光ファイバからのレイリー後方散乱光、もしくは前記光フィルタからの反射光を検出する受光器と、
前記受光器の検出結果に基づき、前記分岐光ファイバの各々に割り当てられた試験波長帯域の中で最大透過波長を識別し、当該最大透過波長と、予め取得しておいた前記分岐光ファイバの各々の参照波長との差からドリフト量を求め、前記分岐光ファイバの各々の参照波長を補正する識別手段とを有することを特徴とする分岐光線路試験装置。 - 前記光フィルタは、前記通信光を透過させ、前記試験光を遮断かつ反射させる光バンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された分岐光線路試験装置。
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