JP3539137B2 - 電池用電極グリッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、電極グリッド、特に、電池用電極グリッドに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
例えば鉛蓄電池の電極は、主に、グリッドと、それに塗り付けられた活物質とを備えている。ここで、グリッドは、活物質を保持するための格子部を多数有するものであり、最近は所謂エキスパンドグリッドが多く採用されている。エキスパンドグリッドは、金属シートに多数の切れ目を設けて展延することにより形成されるものであり、多数のワイヤー部と、そのワイヤー部が交差する多数の交点と、ワイヤー部と交点とにより囲まれた多数の格子部とを有する網状に形成されている。
【0003】
このようなエキスパンドグリッドは、集電部位に近い部分が電流の集中により腐食し易いため、通常、集電部位近傍の交点およびワイヤー部の厚さが太く設定され、集電部位から離れるに従って交点およびワイヤー部の厚さが細くなるように設定されている。エキスパンドグリッドにおいて、交点およびワイヤー部の厚さをこのように設定するのは、例えば、金属シートに設ける切れ目の幅を集電部に向けて徐々に拡大すると達成することができる。
【0004】
ところで、上述のエキスパンドグリッドに対して塗付けられる活物質の厚さは、通常、全体的に略均一になるように設定されるので、集電部位から離れるに従って交点およびワイヤー部の厚さとの差が徐々に大きくなる。このため、活物質は、集電部位から離れるに従ってエキスパンドグリッドの両面に均等に配置されにくくなり、結果的に脱落しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、エキスパンド材からなる電池用電極グリッドについて、電極の厚さを均一に設定するのを容易にし、また、活物質の脱落が起こりにくいようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電池用電極グリッドは、活物質を保持するためのものであり、集電部を有するフレーム部と、金属シートに多数の切れ目を設けて展延することにより形成された、多数のワイヤー部、ワイヤー部が交差する多数の交点およびワイヤー部と交点とにより構成された多数の格子部を有する、フレーム部と一体に形成されたエキスパンド部とを備えている。ここで、交点は、金属シートの展延方向において、フレーム部と概ね平行な複数の列上に配置されており、フレーム部の直近の列を第1の列、フレーム部から最も離れて位置する列を第2の列とした場合、第1の列、第2の列、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列、および、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列のうち第1の列に最も近い列と第1の列との間の列の上にそれぞれ配置されたものの厚さが同じになるようかつフレーム部よりも大きく設定されており、かつ、その厚さに比べて他の列の上に配置されたものの厚さが小さく設定されている。
【0007】
【作用】
本発明に係る電池用電極グリッドのエキスパンド部は、上述の通り、第1の列、第2の列、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列、および、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列のうち第1の列に最も近い列と第1の列との間の列の上にそれぞれ配置された交点の厚さが同じになるようかつフレーム部よりも大きく設定されており、かつ、その厚さに比べて他の列の上に配置された交点の厚さが小さく設定されているため、全体に渡って活物質を均一な厚さに塗付けるのが容易になり、また、両端部近傍の両面に活物質を均等に配置することができる。この結果、活物質は、エキスパンド部に対して安定に保持されることになり、エキスパンド部から脱落しにくくなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明に係る電池用電極グリッドの実施の一形態を説明する。図において、電池用電極グリッド1は、集電部2aを有するフレーム部2と、当該フレーム部2と一体に形成されたエキスパンド部3とを主に備えている。
【0009】
エキスパンド部3は、多数の交点4により交差した多数のワイヤー部5を有する網状に形成されており、ワイヤー部5および交点4により区画された概ね菱形状の多数の格子6を有している。なお、交点4は、フレーム部2と概ね平行な複数の列上に配置されている。
【0010】
このようなエキスパンド部3は、図2(図1のII矢視図:なお、この図では、説明の便のために一部を省略している)に示すように、フレーム部2の直近の第1の列l1(図1)上に位置する各交点4aの厚さt1と、フレーム部2から最も離れて位置する第2の列l2(図1)上の各交点4bの厚さt2とが同じに設定されている。また、交点4aが位置する第1の列l1と交点4bが位置する第2の列l2との間の距離を略3等分した列l3,l4(図1)上に位置する各交点4c、4dの厚さも交点4a、4bの厚さと同じに設定されている。さらに、交点4a、4b、4c、4dの厚さは、フレーム部2よりも大きく設定されている。
【0011】
なお、交点4aが位置する第1の列l1と、交点4cが位置する、列l3,l4のうち第1の列l1に最も近い列l3との間の列上にある交点4の厚さは、腐食が起こりにくいようにするため、交点4aおよび交点4cと略同じに設定されている。一方、交点4cと交点4dとの間の列上にある交点4の厚さは、交点4cと交点4dとの略中間部の列上の交点4の厚さが最も小さくなるように交点4cから交点4dに向けて徐々に小さくなって行き、当該中間部の交点4から交点4dに向けて徐々に大きくなるように設定されている。交点4dと交点4bとの間の列上にある交点4の厚さについても略同様に設定されている。
【0012】
すなわち、このようなエキスパンド部3は、厚さが同じに設定された交点4a、4b、4cおよび4dの他に、これらの交点よりも厚さが小さく設定された交点4を有している。
【0013】
このような電池用電極グリッド1は、例えば鉛や鉛合金(例えば鉛−錫合金や鉛−カルシウム合金)からなりかつ集電部2aに相当する突出部を構成し得る金属シートを用意し、これに対してエキスパンド材を形成するための通常の手法、例えばレシプロ式法を適用すると形成することができる。より具体的には、当該金属シートに多数の切り目を設けて展延し、これを厚さ方向にプレス加工すると製造することができる。なお、金属シートに対して設ける切り目は、通常、展延方向に対して直角方向の切り目である。また、上述の各交点4a、4b、4cおよび4dの厚さの調整およびこれらの各交点間の列上の交点4の厚さの設定は、切り目の間隔を適宜調整することにより容易に達成することができる。
【0014】
上述の電池用電極グリッド1は、例えば図2に一点鎖線で示すように、エキスパンド部3に対して所定の活物質ペーストPを塗り付け、当該活物質ペーストPを各格子6に充填すると、電池用電極となる。ここでは、エキスパンド部3の交点が上述のように設定されているため、交点4a、4b、4cおよび4dの厚さにより活物質ペーストPの厚さが規制される。この結果、エキスパンド部3に対し、活物質ペーストPを均一な厚さで容易に塗付けることができる。
【0015】
このようにして、電池用電極グリッド1に塗付けられた活物質ペーストPは、上述のように厚さが同じに設定された交点4a、4b、4cおよび4d付近においてエキスパンド部3の両面に均等に配置され得る。この結果、活物質は、交点4a、4b、4cおよび4d付近においてエキスパンド部3に対して安定に保持されることになり、エキスパンド部3から脱落しにくくなる。
【0016】
なお、エキスパンド部3の交点4a、4b、4cおよび4dは、上述のように活物質の脱落を有効に抑制するために作用するだけではなく、電極全体の機械的強度を高めるためにも有効に機能し得る。
【0017】
また、交点4a、4b、4cおよび4d付近以外の部位においても、活物質はエキスパンド部3を挾み込むような状態で配置されることになるため、電解液による電池用電極グリッド1の腐食が活物質により有効に抑制される。この結果、この電池用電極グリッド1を用いた電極では、不均一な充放電による湾曲が起こりにくくなり、このような湾曲に起因する活物質の脱落も生じにくくなる。
【0018】
上述の電池用電極グリッド1を用いて製造される電池用電極は、通常、電解液による腐食を受け易い極、即ち正極用として好ましく用いられる。特に、この電極は、電極の厚さの均一性が電池特性に大きな影響をもたらす密閉型鉛蓄電池用として好ましく用いられる。
【0019】
〔他の実施の形態〕
(1)上述の実施の形態では、交点4a、4b間にこれらと厚さが同じに設定された交点4c、4dを設けたが、交点4a、4b間に設けるこれらと厚さが同じ他の交点は、交点4a、4b間に略均等間隔に位置する1または3以上の列上に設けられてもよい。なお、エキスパンド部3が長尺の場合は、活物質をより安定に保持することができるようにするために、このような他の交点を多めの列上に設けるのが好ましい。
【0020】
(2)上述の実施の形態では、交点4cと交点4dとの間の交点4および交点4dと交点4bとの間の交点4の厚さを上述のように設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、これらの交点の厚さは、交点4cから交点4dにかけておよび交点4dから交点4bにかけて徐々に小さくなるように設定されていてもよい。
【0021】
(3)上述の実施の形態では、金属シートに設ける切り目の間隔を調整することにより交点4cと交点4dとの間の交点4および交点4dと交点4bとの間の交点4の厚さがこれらの交点4c,4dおよび4bよりも小さくなるように設定したが、交点4cと交点4dとの間および交点4dと交点4bとの間の交点は、プレス加工することにより厚さを小さく設定することもできる。
【0022】
【発明の効果】
本発明の電池用電極グリッドは、エキスパンド部において、上述の通り、第1の列、第2の列、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列、および、第1の列と第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列のうち第1の列に最も近い列と第1の列との間の列の上にそれぞれ配置された交点の厚さが同じになるようかつフレーム部よりも大きく設定されており、かつ、その厚さに比べて他の列の上に配置された交点の厚さが小さく設定されているため、活物質を安定に保持することができ、活物質の脱落が起こりにくくなる。また、このような電池用電極グリッドを用いれば、均一な厚さの電極を容易に作製することができ、電池特性のばらつきを少なくすることができる。

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の正面図。
【図2】図1のII矢視図。
【符号の説明】
1 電池用電極グリッド
2 フレーム部
2a 集電部
3 エキスパンド部
4 交点
4a、4b、4c、4d 交点
5 ワイヤー部
6 格子
l1 第1の列
l2 第2の列

Claims (1)

  1. 活物質を保持するための電池用電極グリッドであって、
    集電部を有するフレーム部と、
    金属シートに多数の切れ目を設けて展延することにより形成された、多数のワイヤー部、前記ワイヤー部が交差する多数の交点および前記ワイヤー部と前記交点とにより構成された多数の格子部を有する、前記フレーム部と一体に形成されたエキスパンド部とを備え、
    前記交点は、前記金属シートの展延方向において、前記フレーム部と概ね平行な複数の列上に配置されており、前記フレーム部の直近の列を第1の列、前記フレーム部から最も離れて位置する列を第2の列とした場合、前記第1の列、前記第2の列、前記第1の列と前記第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の列、および、前記第1の列と前記第2の列との間に略均等間隔に位置する1以上の前記列のうち前記第1の列に最も近い列と前記第1の列との間の列の上にそれぞれ配置されたものの厚さが同じになるようかつ前記フレーム部よりも大きく設定されており、かつ、その厚さに比べて他の列の上に配置されたものの厚さが小さく設定されている、
    電池用電極グリッド。
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