JP3535924B2 - 発光素子用半導体及びその製造方法 - Google Patents

発光素子用半導体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光ダイオード,
半導体レーザ等の発光素子の材料となる発光素子用半導
体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】希土類元素を添加したIII-V族化合物半
導体は、発光素子への応用や発光メカニズムの解明のた
めに広く研究されている。なかでも、希土類元素として
エルビウム(Er)を用いたものは、Er3+の4f殻の4I
13/24I15/2による発光波長が石英系ファイバの最低損
失波長1.54μmに一致するため、光通信用発光素子の材
料として大いに期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、バンド
ギャップの狭いIII-V族化合物半導体にエルビウムを添
加した場合、その狭いバンドギャップゆえに温度上昇に
伴い発光強度が大幅に低下するので、室温での発光は難
しい。そのため、バンドギャップの広いIII-V族化合物
半導体にエルビウムを添加する試みがなされているが、
現在まで十分な結果は得られていない。
【0004】
【発明の目的】そこで、本発明の目的は、バンドギャッ
プの広いIII-V族化合物半導体にエルビウムを添加した
場合に十分な発光強度を達成し、これにより室温での使
用に好適な発光素子を実現できる発光素子用半導体及び
その製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る発光素子用
半導体は、ガリウムリン(GaP)単結晶に,エルビウ
ム(Er)及び窒素(N)からなる複合体を発光中心と
して含むことを特徴とするものである。本発明に係る発
光素子用半導体の製造方法は、本発明に係る発光素子用
半導体を製造する方法であって、前記エルビウム及び窒
素をイオン注入法により前記ガリウムリン単結晶に導入
した後、このガリウムリン単結晶にアニール(焼きなま
し)処理を施すことを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に係る発光素子用半導体及
びその製造方法の一実施形態を、以下に説明する。
【0007】本実施形態の発光素子用半導体は、図1に
示す工程図に従って製造した。まず、ガリウムリン単結
晶としてLEC undoped-GaP(100)基板(以下、「GaP基
板」と略称する。)を用意した。そして、GaP基板を
温度350 ℃に保ちながら、このGaP基板にエルビウム
のイオンをドーズ量1×1013cm-2かつエネルギ1MeV で
イオン注入法により導入した(工程〔1〕)。このと
き、射影飛程(Rp),射影分散(ΔRp)は、それぞ
れ229.3nm ,68.5nm程度となった。さらに、このGaP
基板を温度350 ℃に保ちながら、このGaP基板に窒素
のイオンをイオン注入法により導入した(工程
〔2〕)。このときは、ドーズ量を1×1013〜1×1016
cm-2の範囲で選択し、かつエルビウムと同じ射影飛程と
なるように、エネルギを100keVとした。最後に、イオン
注入後のGaP基板に対して、アニール温度を600 〜11
00℃の範囲で選択し、アルゴン雰囲気中で10分間のアニ
ール処理を施した(工程〔3〕)。
【0008】このようにして、窒素依存性及びアニール
温度依存性を調べるための試料を作製した。すなわち、
アニール温度を1000℃一定として、窒素のドーズ量に応
じて〔イ〕3×1015cm-2,〔ロ〕1×1015cm-2,〔ハ〕
1×1014cm-2,〔ニ〕1×1013cm-2の四種類の試料を作
製した。また、窒素のドーズ量を3×1015cm-2一定とし
て、アニール温度に応じて〔へ〕1000℃,〔ト〕900
℃,〔チ〕800 ℃,〔リ〕700 ℃の四種類の試料を作製
した。さらに、比較のために、〔ホ〕窒素なしかつアニ
ール温度を800 ℃とした試料も作製した。
【0009】これらの試料についてフォトルミネッセン
ス(PL)法により評価した結果を、図2乃至図4に示
す。フォトルミネッセンス法は、アルゴンイオンレーザ
の波長457.9nm の光により試料を励起し、試料から発す
るPL光を回折格子により分光し、液体窒素で冷却した
ゲルマニウムp-i-n ダイオードでPLスペクトルを受光
することにより行った。
【0010】図2は、試料〔イ〕〜〔ニ〕すなわち窒素
依存性についての評価結果である。この図面から次のこ
とがわかる。(1).窒素のドーズ量は、多いほどPL強
度が高まる傾向がある。(2).特に、試料〔イ〕は、窒
素なしの試料〔ホ〕に比べて、約8倍のPL強度が得ら
れた。(3).ドーズ量が1×1014cm-2(試料〔ハ〕)以
下では、エルビウム及び窒素が発光中心となりにくい。
(4).図示しないが、窒素のドーズ量が5×1015cm-2
上では、逆にPL強度が低くなる傾向がある。(5).し
たがって、窒素のドーズ量は、1×1015cm-2(試料
〔ロ〕)以上が好ましく、3×1015cm-2(試料〔イ〕)
以上がより好ましく、かつ、5×1015cm-2以下が好まし
い。(6).PL強度のピークが生じる波長は、試料
〔ホ〕では1538.5nmであるのに対して、試料〔イ〕及び
〔ロ〕では1528.3nm,1540.7nm及び1554.7nmである。し
たがって、試料〔イ〕及び〔ロ〕では、エルビウム及び
窒素からなる効率的な新しい発光中心が形成されたこと
がわかる。
【0011】図3は試料〔ヘ〕〜〔リ〕すなわちアニー
ル温度依存性についての評価結果である。この図面から
次のことがわかる。(1).アニール温度は、高いほどP
L強度が高まる傾向がある。(2).特に、試料〔ヘ〕
は、窒素なしの試料〔ホ〕に比べて、約8倍のPL強度
が得られた。(3).アニール温度が800 ℃(試料
〔チ〕)以下では、エルビウム及び窒素が発光中心とな
りにくい。(4).図示しないが、アニール温度が1100℃
以上では、逆にPL強度が低くなる傾向がある。(5)
したがって、アニール温度は、900 ℃(試料〔ト〕)以
上が好ましく、1000℃(試料〔ヘ〕)以上がより好まし
く、かつ、1100℃以下が好ましい。
【0012】図3において、900 ℃(試料〔ト〕)以上
となると、スペクトルの形状が変わることから、エルビ
ウム及び窒素からなる効率的な新しい発光中心が形成さ
れることがわかる。ガリウムリン中の窒素は900 〜1000
℃においてリンと置換すること、及び、エルビウムと窒
素は1000℃付近で反応することから、この発光中心は、
Er-Nコンプレックス(complex :複合体)と考えられ、
Nが捕獲した励起子の再結合エネルギを効率的に受け取
っているものと考えられる。
【0013】図4は、試料〔イ〕及び〔ホ〕についての
PL強度積分値の測定温度依存性を示すグラフである。
PL強度積分値とは、PL強度を全波長に対して積分し
た値である。試料〔イ〕及び〔ホ〕ともに、室温(300
K)では20K に比べてPL強度積分値が約1/5に低下
した。しかし、試料〔イ〕は、室温でも試料〔ホ〕の三
倍以上のPL強度積分値を示した。
【0014】なお、本発明は、いうまでもないが、上記
実施形態に限定されるものではない。例えば、エルビウ
ムのイオンのドーズ量は、1×1013cm-2一定としたが、
これに限られるわけではない。すなわち、エルビウムの
イオンのドーズ量と窒素のイオンのドーズ量との比が1
対100 〜300 であればよい。その理由は、ガリウムリン
単結晶中にEr-Nコンプレックスを結晶性を損なわずに導
入できればよいからである。また、ガリウムリン単結晶
中に酸素,フッ素,水素等の軽元素を導入してもよい。
【0015】
【発明の効果】本発明に係る発光素子用半導体及びその
製造方法によれば、ガリウムリン単結晶に、エルビウム
及び窒素からなる複合体を発光中心として含ませたこと
により、従来の化合物半導体にエルビウムのみを含むも
のに比べて、PL強度を飛躍的に向上できる。したがっ
て、ガリウムリンのバンドギャップが広いことから、室
温でも高い発光効率を維持でき、これにより室温での使
用に好適な発光素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発光素子用半導体の製造方法の一
実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明に係る発光素子用半導体の一実施形態に
ついて窒素依存性を評価した結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る発光素子用半導体の一実施形態に
ついてアニール温度依存性を評価した結果を示すグラフ
である。
【図4】本発明に係る発光素子用半導体の一実施形態に
ついて測定温度依存性を評価した結果を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−21510(JP,A) 特開 昭59−146492(JP,A) 特開 平5−175592(JP,A) 特開 平4−233782(JP,A) 特開 昭64−73788(JP,A) Nucl Instrum Meth ods Phys Res Sect B,Vol.127/128(1997),p. 541−544 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 33/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガリウムリン単結晶に、エルビウム及び
    窒素からなる複合体を発光中心として含むことを特徴と
    する発光素子用半導体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の発光素子用半導体を製造
    する方法であって、前記エルビウム及び窒素をイオン注
    入法により前記ガリウムリン単結晶に導入した後、この
    ガリウムリン単結晶にアニール処理を施すことを特徴と
    る発光素子用半導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記エルビウムのイオンのドーズ量と前
    記窒素のイオンのドーズ量との比が1対100 〜300 であ
    ることを特徴とする請求項2記載の発光素子用半導体の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記エルビウムのイオンのドーズ量が約
    1×1013cm-2であり、前記窒素のイオンのドーズ量が約
    1×1015〜5×1015cm-2であり、前記アニール処理の温
    度が約900 〜1100℃であることを特徴とする請求項2記
    載の発光素子用半導体の製造方法。
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