JP2008021905A - 半導体レーザ素子、半導体レーザ素子の製造方法および応用システム - Google Patents

半導体レーザ素子、半導体レーザ素子の製造方法および応用システム Download PDF

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Abstract

【課題】素子抵抗が低く、発光特性に優れた半導体レーザ素子、その半導体レーザ素子の製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた応用システムを提供する。
【解決手段】n型の導電型を示すn型半導体部と、p型の導電型を示すp型半導体部と、n型半導体部とp型半導体部との間に位置する活性層部と、を含み、n型半導体部の一部にドナー不純物とドナー不純物とは異なる不純物とを共に含む高抵抗部を有しており、高抵抗部はn型半導体部の高抵抗部以外の部分よりも電気抵抗が高い半導体レーザ素子、その半導体レーザ素子の製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた応用システムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体レーザ素子、その半導体レーザ素子の製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた応用システムに関する。
近年、青緑色〜紫外にかけての波長域のレーザ光を発振する半導体レーザ素子の開発が進められており、特に、波長405nm付近のレーザ光を発振する窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体レーザ素子については光ピックアップ用光源として実用化段階に入りつつある。青緑色〜紫外にかけての波長域でワット級の大きな光出力を得ることができれば、照明分野、画像表示機器分野、加工分野および医療分野などにおいて半導体レーザ素子の利用範囲がさらに広がることが期待される。
ワット級の大きな光出力を得ることができる半導体レーザ素子としては、ブロードエリア型の半導体レーザ素子について研究が進められており、たとえば、非特許文献1および非特許文献2には、GaN基板上に形成されたGaInN多重量子井戸を活性層とする波長400nm帯のブロードエリア型の半導体レーザ素子が報告されている。
これらの文献で報告されているブロードエリア型の半導体レーザ素子の電流狭窄幅は10μm、50μmおよび100μmであって、1ワット程度の非常に高い光出力が得られている。
また、これらの文献で報告されているブロードエリア型の半導体レーザ素子は、n型のGaN基板上にn型の導電型を示すn型半導体部としてn型AlGaNからなる下クラッド層、p型の導電型を示すp型半導体部としてp型AlGaNからなる上クラッド層およびこれらの層の間に位置するInGaNを井戸層とする多重量子井戸構造の活性層部を有している。そして、このブロードエリア型の半導体レーザ素子においては、p型の導電型を示す上クラッド層を凸形状に加工し、絶縁性誘電体で凸形状の凸部の頂点以外を覆うことによって電球狭窄構造が形成されている。
特開平10−321949号公報 特開平9−283854号公報 特開2002−84035号公報 特開2001−291930号公報 S.Goto et al., "Super high-power AlGaInN-based laser diodes with a single broad-area stripe emitter fabricated on a GaN substrate", phys. stat. sol.(a)200, No.1(2003), p.122-p.125 M.TAKEYA et al., "High-power AlGaInN lasers", phys. stat. sol.(a)192, No.2(2002), p.269-p.276
青緑色〜紫外にかけての波長域のレーザ光を発振する半導体レーザ素子は、窒化物系III−V族化合物半導体から構成されることが多いが、この材料はアクセプタ不純物の活性化率が低く、低抵抗のp型半導体部を得ることが難しい。そのため、上記の非特許文献1および非特許文献2で報告されたブロードエリア型の半導体レーザ素子のようにp型の導電型を示すp型半導体部(上クラッド層)で電流狭窄を行なうと、電流狭窄部分での直列抵抗の大幅な上昇、オーミック電極での接触抵抗の大幅な上昇が生じ、素子抵抗の上昇による消費電力の増大や発熱による特性劣化などが生じるという問題があった。
この問題を解決するため、たとえば特許文献1においては、p型のGaN基板上に、p型クラッド層、活性層およびn型クラッド層の順に積層して層構造を形成し、最表面の低抵抗なn型層にて電流狭窄を行なう構成が開示されている。しかし、低抵抗なp型のGaN基板は現在のところ製造が困難である。
また、特許文献2〜4には、n型の基板上にn型クラッド層を形成し、そのn型クラッド層中に電流狭窄構造を設け、その上に活性層およびp型クラッド層を形成した構造の半導体レーザ素子が開示されている。これらの半導体レーザ素子においては、低抵抗のn型層の部分に電流狭窄構造を設けているので、電流狭窄構造部での消費電力の損失や発熱がほとんど生じず、また、p側電極の面積を大きくすることができるために電極の接触抵抗を低減することができる。
しかしながら、特許文献2〜4に開示されている半導体レーザ素子の製造には、凹状のエッチング溝上への再成長や選択成長といった技術が必要となっており、凹状のエッチング溝上への再成長や選択成長によって得られる結晶の品質は、平坦な表面に成長した結晶の品質と比べて大きく劣るという問題があった。したがって、特許文献2〜4に開示されている半導体レーザ素子においては、良好な特性を有する高品質な活性層を得ることが困難であり、半導体レーザ素子の発光特性が低くなるという問題があった。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、素子抵抗が低く、発光特性に優れた半導体レーザ素子、その半導体レーザ素子の製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた応用システムを提供することにある。
本発明は、n型の導電型を示すn型半導体部と、p型の導電型を示すp型半導体部と、n型半導体部とp型半導体部との間に位置する活性層部と、を含み、n型半導体部の一部にドナー不純物とドナー不純物とは異なる不純物とを共に含む高抵抗部を有しており、高抵抗部はn型半導体部の高抵抗部以外の部分よりも電気抵抗が高い半導体レーザ素子である。
ここで、本発明の半導体レーザ素子において、高抵抗部はアクセプタ不純物を含むp型の導電型を示す部分であってもよい。
また、本発明の半導体レーザ素子において、高抵抗部はイオン注入により形成することができる。
また、本発明の半導体レーザ素子において、イオン注入により注入されるイオンとしては、亜鉛イオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、炭素イオン、水素イオンおよびヘリウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
また、本発明の半導体レーザ素子において、n型半導体部は、n型の導電性基板を含んでいてもよい。
また、本発明の半導体レーザ素子において、n型半導体部、p型半導体部および活性層部が窒化物系III−V族化合物半導体から形成されていることが好ましい。
また、本発明の半導体レーザ素子から発振するレーザ光の水平横モードに、1次以上の高次モードが含まれていてもよい。
また、本発明の半導体レーザ素子の電流狭窄幅は5μm以上100μm以下であることが好ましい。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の半導体レーザ素子を製造するための方法であって、n型半導体部の一部にドナー不純物とは異なる不純物をイオン注入するイオン注入工程と、n型半導体部上に活性層部を形成する活性層部形成工程と、活性層部上にp型半導体部を形成するp型半導体部形成工程と、を含む、半導体レーザ素子の製造方法である。
ここで、本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、イオン注入工程と活性層部形成工程との間に1000℃以上1300℃以下の温度にn型半導体部を加熱する加熱工程を含んでいてもよい。
また、本発明は、上記の半導体レーザ素子と、その半導体レーザ素子から発振したレーザ光の少なくとも一部を吸収してレーザ光とは異なる波長の光を発する物質と、を含む、応用システムである。
ここで、本発明の応用システムにおいて、上記の物質としては、半導体レーザ素子から発振した波長が420nmよりも短いレーザ光の少なくとも一部を吸収して白色の光を発する蛍光体を用いることができる。
さらに、本発明は、上記の半導体レーザ素子を光源とした画像表示機構を有する応用システムである。
本発明によれば、素子抵抗が低く、発光特性に優れた半導体レーザ素子、その半導体レーザ素子の製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた応用システムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
(実施の形態1)
図1に、本発明の半導体レーザ素子の一例の模式的な斜視図とその一部の模式的な拡大図を示す。この半導体レーザ素子100は、電流狭窄幅wが10μmのブロードエリア型の半導体レーザ素子であり、波長405nmで高次の水平横モードのレーザ光を発振する。
この半導体レーザ素子100は、n型GaNからなる導電性の基板101の表面上に、層厚0.5μmのn型GaNからなるバッファ層102、層厚2μmのn型Al0.05Ga0.95Nからなる第1下クラッド層103a、層厚0.3μmのn型Al0.05Ga0.95Nからなる第2下クラッド層103b、層厚0.05μmのノンドープGaNからなる下ガイド層104、層厚5nmのInGaNからなるウエル層105、層厚10nmのInGaNからなるバリア層106、層厚5nmのInGaNからなるウエル層107、層厚0.05μmのノンドープGaNからなる上ガイド層108、層厚0.02μmのp型Al0.3Ga0.7Nからなるキャリアブロック層109、層厚0.05μmのp型GaNからなる光導波層110、平均層厚0.5μmのp型Al0.05Ga0.95Nからなる上クラッド層111および層厚0.1μmのp型GaNからなるコンタクト層112が順次積層されており、コンタクト層112の表面上には層厚15nmのPd層と層厚15nmのMo層とがこの順序で積層されてなるオーミック電極113が形成され、基板101の裏面上には層厚5nmのHf層と層厚150nmのAl層とがこの順序で積層されてなるオーミック電極114が形成された構成を有している。なお、バッファ層102、第1下クラッド層103aおよび第2下クラッド層103bにはドナー不純物としてSi(シリコン)がドーピングされており、キャリアブロック層109、光導波層110、上クラッド層111およびコンタクト層112の形成にはアクセプタ不純物としてMg(マグネシウム)がドーピングされている。
また、この半導体レーザ素子100においては、下ガイド層104、ウエル層105、バリア層106、ウエル層107、上ガイド層108およびキャリアブロック層109から活性層部120が形成されている。
また、上記半導体の積層体の両端面が劈開されることによってファブリペロー共振器が得られており、ファブリペロー共振器を構成する反射鏡となる積層体の両端面はそれぞれ共振器長方向に直交するように位置している。そして、光出射側の前端面には、発振するレーザ光の反射率が5%となる厚さ80nmのAl23からなる低反射膜(図示せず)が形成されており、前端面の反対側にある後端面には、SiO2膜とTiO2膜とのペア4対からなり、発振するレーザ光の波長の1/4の厚みを有し、発振するレーザ光の反射率が95%となる高反射膜(図示せず)が形成されている。また、ファブリペロー共振器の共振器長(前端面と後端面との間の最短距離)は、たとえば800μmとすることができる。
ここで、この半導体レーザ素子100は、第1下クラッド層103aの両側部(電流通路となる電流狭窄幅wを除く部分)に、共振器長方向に沿って、ドナー不純物であるSiとともにアクセプタ不純物であるZnを含む高抵抗部115(図1の斜線部)を有していることを特徴としている。なお、高抵抗部115はp型の導電型を示しており、高抵抗部115は第1下クラッド層103aの高抵抗部115以外の部分(図1の第1下クラッド層103aの斜線部以外の部分)よりも電気抵抗が高くなっている。
図1に示す半導体レーザ素子100は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、図2(a)の模式的断面図に示すように、基板101の表面上に、バッファ層102および第1下クラッド層103aを第1回目のMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により結晶成長して形成する。
次に、第1下クラッド層103aの成長後のウエハを取り出し、フォトリソグラフィ技術を利用して、図2(b)の模式的断面図に示すように、第1下クラッド層103aの表面の一部にフォトレジストマスク116を形成する。ここで、フォトレジストマスク116は、図3の模式的上面図に示すように、幅wが10μmのストライプ状に形成されている。
続いて、フォトレジストマスク116で覆われていない第1下クラッド層103aの表面にZnイオンをイオン注入により導入して、高抵抗部115を形成する。ここで、イオン注入は、たとえば、150keVのZnイオンを1×1015cm-2のドーズ量で注入して行なうことができる。また、イオン注入時には、チャネリングを防ぐ目的で、ウエハをたとえば7度程度傾けることができる。
そして、イオン注入後はフォトレジストマスク116を剥離し、MOCVD炉内で常圧の窒素雰囲気下で、イオン注入後の第1下クラッド層103aを1200℃に加熱し、この温度を30分間保持して、イオン注入によって生じた結晶のダメージを回復させ、高抵抗部115が形成された第1下クラッド層103aの表面を平坦にする。
続いて、図2(c)の模式的断面図に示すように、平坦化された第1下クラッド層103aの表面上に、第2下クラッド層103b、活性層部120、光導波層110、上クラッド層111およびコンタクト層112を第2回目のMOCVD法により結晶成長させて形成する。
その後、基板101の厚さをたとえば100μmにまで薄層化した後、図2(d)の模式的断面図に示すように、コンタクト層112の表面上にオーミック電極113を形成し、基板101の裏面上にオーミック電極114を形成する。そして、上記のオーミック電極形成後のウエハを劈開することによってレーザバーを形成し、その劈開によって得られたレーザバーの前端面に低反射膜を形成するとともに後端面に高反射膜を形成する。
そして、低反射膜および高反射膜の形成後のレーザバーをたとえば横幅400μm、奥行き800μmのチップ状に分割することによって、図1に示す半導体レーザ素子100が得られる。
本発明によれば、n型の導電型を示すn型半導体部の一部にドナー不純物とドナー不純物とは異なる不純物とを共に含む高抵抗部を形成することによって、n型半導体部に電流狭窄構造を形成することができるため、素子抵抗を大幅に低減することができる。
また、本発明においては、イオン注入後に結晶性の回復のために加熱されて平坦化したn型半導体層の表面上に成長した活性層部は、凹凸面上への再成長や選択成長によって得られる従来の活性層部と比べて、結晶性に優れ、ひいてはその発光特性も優れたものとなる。したがって、本発明により得られる半導体レーザ素子は、活性層部の下で電流狭窄を行ないながらも優れた発光特性が得られるようになる点で優れている。特に、n型半導体部、p型半導体部および活性層部がAlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z≠1)の組成式で表わされる窒化物系III−V族化合物半導体から形成されている場合には、他の半導体材料から形成されている場合と比べて、下地の面方位とその上に結晶成長される結晶の品質との相関が強いため、結晶性の良好な活性層部を得るためには面方位が制御された平坦な表面上に結晶成長を順次行なっていく必要があり、その点で下地に凹凸の加工を行なう必要がない本発明の方法は、良好な結晶からなる活性層部を形成するための有効な方法となる。
なお、イオン注入後にはその注入部分の結晶性が悪化しているために結晶性を回復させるための処置をすることが好ましく、本実施の形態においてはイオン注入後にMOCVD炉内で1200℃に加熱する場合について説明したが、結晶性を回復させる観点からは1000℃以上1300℃以下の温度に加熱することが好ましい。また、レーザアニールなどの手段によって加熱するのも有効である。
また、本実施の形態においては亜鉛イオンをイオン注入することによって高抵抗部を形成したが、本発明においては、たとえば、亜鉛イオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、炭素イオン、水素イオンおよびヘリウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種をイオン注入することによってn型半導体部の一部に高抵抗部を形成することができる。なお、亜鉛イオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオンまたは炭素イオンをイオン注入した場合にはそのドーズ量によってn型半導体部の一部をp型化することが可能になる。
また、本発明においては、イオン注入により電流狭窄構造を形成することができ、水平方向には強く屈折率差で光を閉じ込める導波路構造を作りつける必要がないため、屈折率導波型の導波路ではなく、利得導波型の導波路を形成することができる。そのため、本発明の半導体レーザ素子は、水平横モードがマルチモード化しても差し支えのないブロードエリア型の半導体レーザ素子に適用されることが好ましい。本発明者の検討においては、本発明の半導体レーザ素子を図1に示す電流狭窄幅wが5μm以上100μm以下であって、水平横モードに1次以上の高次モードが含まれたブロードエリア型の半導体レーザ素子に適用した場合に、良好な素子特性を有することが確認されている。
また、本実施の形態においては、フォトレジストマスクのパターンとして図3に示すパターンを採用した場合について説明したが、フォトレジストマスクのパターンとしては図4〜図6の模式的上面図に示すパターンを採用することもできる。
すなわち、図4に示すパターンは、高抵抗部をn型半導体部の両側部に共振器長方向に沿って形成するとともに、共振器の両端面の電流狭窄部分における電流通路の幅が共振器の中央部の電流狭窄部分における電流通路の幅よりも広くなるようにすることができるフォトレジストマスクのパターンである。図4に示すパターンを採用した場合には、光出射側の前端面における発光面積が広くなるため、前端面の光損傷が抑制され、高出力のレーザ光を取り出すことができるようになる。なお、図4に示すように、電流通路の幅が変化するパターンを採用した場合には、本発明における電流狭窄幅wは中央部における電流狭窄部分の幅wとなる。
また、図5に示すパターンは、高抵抗部をn型半導体部の両側部に共振器長方向に沿って形成するとともに共振器の両端面の近傍にも形成して、共振器の両端面に相当する部分に電流が注入されないようにすることができるフォトレジストマスクのパターンである。図5に示すパターンを採用した場合には、共振器の両端面に電流が注入されなくなるため、これらの端面における発熱が抑制され、端面の損傷が少なくなり、長寿命の半導体レーザ素子を得ることができるようになる。
図6に示すパターンは、高抵抗部をn型半導体部の両側部に共振器長方向に沿って形成するとともに共振器の一方の端面の近傍にも形成して、共振器の一方の端面に相当する部分に電流が注入されないようにするフォトレジストマスクのパターンである。図6に示すパターンを採用した場合には、電流が注入される部分と注入されない部分とを一体で作ることができるようになり、電流が注入されない部分を変調器などに用いることができるようになる。
このように、イオン注入する部分の形状を適宜設定することにより、半導体レーザ素子に様々な機能を付加することが可能となる。
また、本発明の半導体レーザ素子の構造ならびに本発明の半導体レーザ素子を構成する層の材質および層厚は上記のものに限定されないことは言うまでもない。なかでも、n型半導体部、p型半導体部および活性層部がAlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z≠1)の組成式で表わされる窒化物系III−V族化合物半導体から形成されている場合には本発明の効果を十分に得ることができる。なお、この組成式において、xはAl(アルミニウム)の混晶比を示し、yはGa(ガリウム)の混晶比を示し、zはIn(インジウム)の混晶比を示す。また、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z≠1)の組成式で表わされる窒化物系III−V族化合物半導体については、適宜、組成式に表記された元素以外のIII族元素(ボロンなど)およびV族元素(砒素、リンまたはビスマスなど)が混晶化されていてもよく、不純物元素(亜鉛、ベリリウム、テルル、マグネシウム、硫黄、セレンまたはシリコンなど)を適宜添加することもできる。
また、本発明の半導体レーザ素子においては、n型半導体部およびp型半導体部はそれぞれ単層であってもよく、複数層であってもよい。また、本発明の半導体レーザ素子においては、活性層部の構造は特に限定されず、たとえば、単一量子井戸構造(SQW)または多重量子井戸構造(MQW)などを適用することができる。また、活性層部を構成する層の歪量または井戸層厚に関しても特に制限はなく、活性層部を構成するバリア層に圧縮または引っ張りの歪を導入してもよい。
また、本発明の半導体レーザ素子において、発振するレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に合わせて適宜調整することができる。
また、本発明の半導体レーザ素子に用いられる基板にとしては、上記以外にもたとえば、サファイア基板、炭化シリコン基板、シリコン基板または砒化ガリウム基板などの単結晶基板を用いることも可能である。なお、基板上に結晶成長によって層構造を形成する場合、任意の原料を用いた任意の結晶成長方法により形成することができる。なお、本明細書において、「上」は基板から離れる方向を示し、「下」は基板に近づく方向を示すものとする。
(実施の形態2)
図7に、本発明の半導体レーザ素子の他の一例の模式的な斜視図とその一部の模式的な拡大図を示す。この半導体レーザ素子200は、n型GaNからなる導電性基板の両側部(電流通路となる電流狭窄幅wを除く部分)に共振器長方向に沿って、高抵抗部115(図7の斜線部)が形成されていることに特徴がある。なお、半導体レーザ素子200は、実施の形態1とは異なり、n型Al0.05Ga0.95Nからなる下クラッド層103が単層となっている。
図7に示す半導体レーザ素子200は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、図8(a)の模式的断面図に示すように、基板101の表面の一部にフォトレジストマスク116を形成し、フォトレジストマスク116で覆われていない基板101の表面にZnイオンをイオン注入により導入して、高抵抗部115を形成する。
次に、イオン注入後はフォトレジストマスク116を剥離し、MOCVD炉内で常圧の窒素雰囲気下で、イオン注入後の基板101を1200℃に加熱し、この温度を30分間保持して、イオン注入によって生じた結晶のダメージを回復させ、高抵抗部115が形成された基板101の表面を平坦にする。
続いて、図8(b)の模式的断面図に示すように、平坦化された基板101の表面上に、バッファ層102、下クラッド層103、活性層部120、光導波層110、上クラッド層111およびコンタクト層112をMOCVD法により結晶成長させて形成する。
その後、基板101の厚さをたとえば100μmにまで薄層化した後、図8(c)の模式的断面図に示すように、コンタクト層112の表面上にオーミック電極113を形成し、基板101の裏面上にオーミック電極114を形成する。そして、上記のオーミック電極形成後のウエハを劈開することによってレーザバーを形成し、その劈開によって得られたレーザバーの前端面に低反射膜を形成するとともに後端面に高反射膜を形成する。
そして、低反射膜および高反射膜の形成後のレーザバーをたとえば横幅400μm、奥行き800μmのチップ状に分割することによって、図7に示す半導体レーザ素子200が得られる。
このように、基板に予めイオン注入によって電流狭窄構造を作りつけておくことによって、1回の結晶成長で半導体レーザ素子を製造することができるため、製造工程を簡略化することができる点で優れている。その他の説明は、実施の形態1と同様である。
(実施の形態3)
図9に、本発明の応用システムの一例である白色照明装置の一例の模式的な構成を示す。ここで、白色照明装置500は、半導体レーザ素子と同様の構成の半導体レーザ素子501と、レンズ系502と、蛍光体503と、を含んでいる。
このような構成の白色照明装置500において、半導体レーザ素子501から発振した波長405nmのレーザ光は、レンズ系502を通過した後に蛍光体503に照射され、蛍光体503によってその少なくとも一部が吸収される。そして、蛍光体503によって吸収されたレーザ光はその波長が変換されて白色光504を発光する。
ここで、半導体レーザ素子501としては、実施の形態1または実施の形態2で示されたような構成を有する本発明の半導体レーザ素子を用いることができる。また、蛍光体503としては、たとえば半導体レーザ素子501から発振した波長405nmのレーザ光の少なくとも一部を吸収して赤色の光を発光する赤色蛍光体(Y22S:Eu3+)、波長405nmのレーザ光の少なくとも一部を吸収して緑色の光を発光する緑色蛍光体(ZnS:Cu,Al)、および波長405nmのレーザ光の少なくとも一部を吸収して青色の光を発光する青色蛍光体((Sr、Ca、Ba、Mg)10(PO46Cl2:Eu2+)を混合したものなどを用いることができる。
この白色照明装置500においては、蛍光体の励起光源として本発明の半導体レーザ素子501が用いられていることから、半導体レーザ素子501での消費電力が著しく小さくなり、電気−光変換効率が高く、発熱が抑制された、小型で高輝度な点光源が得られる。
また、半導体レーザ素子を励起光源に用いた白色照明装置は、従来の蛍光灯や白熱灯などの白色照明装置に比べて電気−光変換効率が高く、長寿命であり、かつ水銀などの有毒物質を含まない点で優れている。したがって、本発明の半導体レーザ素子501を備えた白色照明装置500は、蛍光灯および白熱灯の代替装置として有用である。
また、半導体レーザ素子501から発振されるレーザ光の波長は必ずしも405nmである必要はなく、蛍光体の吸収線に合わせて調節することができる。たとえば、波長420nmよりも短い波長を有する可視の青色のレーザ光(波長404〜406nm)を発振する本発明の半導体レーザ素子と、この半導体レーザ素子から発振した青色のレーザ光の一部を吸収し、少なくとも赤色および緑色のスペクトル成分を有する光を発する蛍光体とを含む構成とすることにより、白色照明装置を構成することも可能である。この白色照明装置は、小型、高輝度で、電気−光変換効率が高く、寿命が長いなど、特性に優れた白色照明装置となる。
また、蛍光体の形態には特に制限はなく、板面上あるいは曲面上に塗布された蛍光体であってもよく、光ファイバなどの部品の少なくとも一部に含有されていてもよい。
(実施の形態4)
図10に、本発明の応用システムの一例である画像受像機の一例の模式的な構成を示す。この画像受像機600は、半導体レーザ素子601を光源としている。ここで、半導体レーザ素子601は、少なくとも赤色、緑色または青色のレーザ光をそれぞれ発振する3種類から構成されており、そのうちの青色または青色と緑色の光源に実施の形態1または実施の形態2で示されたような構成を有する本発明の半導体レーザ素子が適用されている。
半導体レーザ素子601から発振した可視レーザ光は、ミラー602などの光学手段によりデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などの光制御素子603に導入され、レンズ系などの投影手段604によって、スクリーン605に画像が投影されることになる。
ここで、画像信号606は、画像解析回路607により解析され、光制御素子603が制御されるとともに、光制御回路608を通して光源である半導体レーザ素子601が制御される。
図10に示すように、本発明の半導体レーザ素子を光源とした画像表示機構を有する画像受像機600においては、光源の色純度が高いために色再現性が高く、また、本発明の半導体レーザ素子が適用されているために光源の高発光特性と低消費電力とを実現することができる。
なお、本発明の半導体レーザ素子を備える応用システムは、実施の形態3または実施の形態4に示す応用システムに限られるものではなく、レーザメスおよび各種加工用レーザなど、あるいは各種励起光源などの高出力かつ高効率のレーザ光を必要とする各種応用システムに適用することができる。励起光源として用いられる本発明の半導体レーザ素子から発振するレーザ光の波長は必ずしも405nmでなくてもよく、応用形態に合わせて適宜選択することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の半導体レーザ素子を用いることによって、小型、高輝度で、電気−光変換効率が高く、寿命が長いなどの特性に優れた白色照明装置および画像受像機などの応用システムを提供することができる。
本発明の半導体レーザ素子の一例の模式的な斜視図とその一部の模式的な拡大図である。 図1に示す半導体レーザ素子の製造工程の一例の一部を示す模式的な断面図である。 本発明で用いられるフォトレジストマスクのパターンの一例を示す模式的な上面図である。 本発明で用いられるフォトレジストマスクのパターンの他の一例を示す模式的な上面図である。 本発明で用いられるフォトレジストマスクのパターンの他の一例を示す模式的な上面図である。 本発明で用いられるフォトレジストマスクのパターンの他の一例を示す模式的な上面図である。 本発明の半導体レーザ素子の他の一例の模式的な斜視図とその一部の模式的な拡大図である。 図7に示す半導体レーザ素子の製造工程の一例の一部を示す模式的な断面図である。 本発明の応用システムの一例である白色照明装置の一例の模式的な構成図である。 本発明の応用システムの一例である画像受像機の一例の模式的な構成図である。
符号の説明
100,200,501,601 半導体レーザ素子、101 基板、102 バッファ層、103 下クラッド層、103a 第1下クラッド層、103b 第2下クラッド層、104 下ガイド層、105 ウエル層、106 バリア層、107 ウエル層、108 上ガイド層、109 キャリアブロック層、110 光導波層、111 上クラッド層、112 コンタクト層、113 オーミック電極、114 オーミック電極、115 高抵抗部、116 フォトレジストマスク、120 活性層部、500 白色照明装置、502 レンズ系、503 蛍光体、504 白色光、600 画像受像機、602 ミラー、603 光制御素子、604 投影手段、605 スクリーン、606 画像信号、607 画像解析回路、608 光制御回路。

Claims (13)

  1. n型の導電型を示すn型半導体部と、p型の導電型を示すp型半導体部と、前記n型半導体部と前記p型半導体部との間に位置する活性層部と、を含み、
    前記n型半導体部の一部にドナー不純物とドナー不純物とは異なる不純物とを共に含む高抵抗部を有しており、
    前記高抵抗部は、前記n型半導体部の前記高抵抗部以外の部分よりも電気抵抗が高いことを特徴とする、半導体レーザ素子。
  2. 前記高抵抗部は、アクセプタ不純物を含むp型の導電型を示す部分であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
  3. 前記高抵抗部は、イオン注入により形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
  4. 前記イオン注入により注入されるイオンが、亜鉛イオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、炭素イオン、水素イオンおよびヘリウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の半導体レーザ素子。
  5. 前記n型半導体部は、n型の導電性基板を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
  6. 前記n型半導体部、前記p型半導体部および前記活性層部が窒化物系III−V族化合物半導体から形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
  7. 前記半導体レーザ素子から発振するレーザ光の水平横モードに、1次以上の高次モードが含まれることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
  8. 前記半導体レーザ素子の電流狭窄幅が5μm以上100μm以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の半導体レーザ素子を製造するための方法であって、前記n型半導体部の一部にドナー不純物とは異なる不純物をイオン注入するイオン注入工程と、前記n型半導体部上に前記活性層部を形成する活性層部形成工程と、前記活性層部上に前記p型半導体部を形成するp型半導体部形成工程と、を含む、半導体レーザ素子の製造方法。
  10. 前記イオン注入工程と前記活性層部形成工程との間に1000℃以上1300℃以下の温度に前記n型半導体部を加熱する加熱工程を含む、請求項9に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  11. 請求項1から8のいずれかに記載の半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子から発振したレーザ光の少なくとも一部を吸収して前記レーザ光とは異なる波長の光を発する物質と、を含む、応用システム。
  12. 前記物質は、前記半導体レーザ素子から発振した波長が420nmよりも短いレーザ光の少なくとも一部を吸収して白色の光を発する蛍光体であることを特徴とする、請求項11に記載の応用システム。
  13. 請求項1から8のいずれかに記載の半導体レーザ素子を光源とした画像表示機構を有する応用システム。
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