JP3535182B2 - 窒化けい素摺動部品およびその製造方法 - Google Patents
窒化けい素摺動部品およびその製造方法Info
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Description
部品およびこの摺動部品に用いる窒化けい素焼結体を製
造する製造方法に関する。
は、高強度、軽量および耐摩耗性に優れた窒化けい素
(βーSi3 N4 )焼結体で形成することが行われてい
る。その一例としては、高速化を要求されるころがり軸
受の転動体や内外輪などの軸受部品、例えば図1に示す
ように玉軸受の玉1、外輪2および内輪3を窒化けい素
焼結体で形成することが行われている。
従来からこれを原料とする軸受部品などの摺動部品の信
頼性を高めるために種々の改良が施されている。例えば
軸受部品の強度および耐久性に影響を与える因子である
空孔および焼結助剤の偏析については、焼結による高密
度化、HIP処理工程の導入などの対策がとられてい
る。
らなる摺動部品において耐久性についてはさらに高い要
求がなされており、この面の特性の向上を図った摺動部
品の開発が必要とされている。本発明の目的は、耐久性
に優れた窒化けい素摺動部品およびその製造方法を提供
することにある。
窒化けい素焼結体からなる摺動部品の耐久性の向上につ
いて研究を重ねてきた。まず、摺動部品について軸受部
品を例にとり種々研究を重ねてきた。
耐久性を阻害する因子として窒化けい素の原料粉末に含
まれる不可避の不純物元素、および軸受部品を製造する
工程中に原料粉末や成形体に混入する不純物元素に着目
した。そして、窒化けい素焼結体における不純物元素の
含有量よりも不純物元素の大きさが、窒化けい素焼結体
の耐久性に大きな影響を与えることを見出した。
スであるが故の構造敏感性を有している。このため、窒
化けい素焼結体に不純物が存在すると、焼結体はその場
所が起点となって破壊し、この結果強度などの特性が低
下する。そして、不純物の大きさが大きい程窒化けい素
焼結体の強度の低下の度合いが大きいことが分かった。
これらの不純物元素としては具体的には、Fe、Cr、
Ni、Cu、Zr、Yおよびその窒化物、炭化物、酸化
物などが挙げられる。このような認識に基づいて、発明
者は転動体や内外輪などの軸受部品の表面を観察したと
ころ、様々な大きさの不純物の存在を確認できた。
素焼結体の強度との関係を調べるために、図3に示す転
がり疲労試験機を用いて転動体の寿命試験を行った。こ
の転がり疲労試験機は、台11、板12、回転軸13、
内輪14および保持器15を備えたもので、試験すべき
玉16を台11と内輪14との間に介在させ、回転軸1
3が玉16に荷重を加えながら回転する。これにより玉
16も回転される。試験条件は玉16の直径が3/8イ
ンチ、回転軸13の荷重が400Kgf、回転軸13の
回転数1200rpmである。
玉16に存在する不純物の大きさと玉16の寿命との関
係を調べた。この結果を図2の線図に示す。この線図に
よれば、玉16に存在する不純物の大きさと玉16の寿
命とに相関関係があることが分かった。そして、玉16
の直径が3/8インチの場合に、下記の計算式で求めら
れる計算寿命(L10)は31時間であり、図2の線図
により計算寿命を超えない範囲の不純物の大きさが20
0μm以下であることが分る。 計算寿命(L10)=16667/n×(C/P)3 ただし、n:回転数、C:基本動定格荷重、P:動等価
荷重本発明 はこのような知見に基づいてなされたものであ
る。
して窒化けい素からなるものであって、不可避の不純物
または製造工程中に混入する不純物は、その大きさが最
大200μmを超えるものが存在せず、最大200μm
以下の磁性を持つ不純物が偏析せずに均一に分散されて
いることを特徴とするものである。本発明の窒化けい素
摺動部品によれば、部品の寿命に影響を及ぼす200μ
mを超える不純物が存在しないので、高い寿命を有して
信頼性を高めている。
において摺動運動を行う部品に広く適用できる。この摺
動部品としては例えば軸受部品が挙げられる。この例と
しては、ころがり軸受の転動体(玉、ころ)、内外輪材
などが対象になる。
が加わり、このため部品が曲げられたり、折れたりする
危険性がある部品については、不可避の不純物または製
造工程中に混入する不純物の大きさを最大100μm 以
下にする。
けい素焼結体の曲げ強度との関係を示している。この線
図によれば、窒化けい素焼結体に含まれる不純物の大き
さが100μmを超えると、曲げ強度が急激に低下する
ことが分る。このことから、上記のように摺動部品の曲
げや折れの発生を考慮した場合には、窒化けい素焼結体
に含まれる不純物の大きさを100μm以下とする。さ
らに、窒化けい素焼結体に含まれる不純物は、後述する
ように均一に分散していることが好ましい。発明者は、
本発明に係る摺動部品に用いる耐久性に優れた窒化けい
素焼結体を製造する方法について種々研究を重ねてき
た。
い素焼結体に用いる原料粉末を作製するに際して、不可
避の不純物および粉末調合工程から混入する不純物を取
り除くことに着目した。
する形態と、原料粉末を作製する方法との関係について
着目した。そして、窒化けい素焼結体の強度に与える影
響が最も少ない形態で不純物が存在するように原料粉末
を作製する方法についてを研究した。
素焼結体に不純物が偏析して存在していると、窒化けい
素焼結体の強度の低下の度合が大きい。また、窒化けい
素焼結体における不純物の含有量が多くても、小さい不
純物が窒化けい素焼結体に均一に分散していれば、窒化
けい素焼結体の強度の低下の度合が小さい。
品に用いる原料粉末を作製するに際して、粉末中に存在
する不純物を取り除く場合には、大きなサイズの不純物
を取り除き、さらに小さい不純物を分散させることが必
要であることが分かった。本発明に係る窒化けい素摺動
部品の製造方法は、このような知見に基づいてなされた
ものである。
品の製造方法は、主として窒化けい素粉末からなる原料
粉末を作製するに際して、前記窒化けい素粉末に対して
湿式除鉄処理を行い、次いで前記窒化けい素粉末をふる
いに通すことにより最大200μmを超える不純物を除
去し、その後、前記窒化けい素粉末に対して脱磁処理を
行うことにより最大200μm以下の不純物の偏析を防
ぐことを特徴とするものである。本発明の原料粉末を作
製する工程を図4を参照して説明する。まず、窒化けい
素粉末にイットリア、アルミナなどの助剤を添加し、ボ
ールミルなどの混合機で湿式混合してスラリーを作製す
る。
ーを電磁石または永久磁石21で形成される磁界の中に
設けられたふるい22に通し、スラリーに存在する磁性
を持った不純物23を除去する。これを湿式除鉄とい
う。次に、図4(b)に示すようにスラリーをふるい2
4に通し、スラリーに含まれる200μmを超える大き
さの磁性を持たない不純物25を取り除く。例えばスラ
リーを開き目37μmのふるいに通して100μmを超
える大きさの磁性を持たない不純物を取り除く。
を励磁コイル26で形成される交流磁界中に通す。そう
すると、スラリーに含まれる200μm以下の大きさの
磁性を持つ不純物27が磁気の影響により均一に分散さ
れる。
きさの磁性を持たない不純物を取り除いた場合には、ス
ラリーに100μm以下の大きさの不純物が残る。この
ため、この工程では100μm以下の大きさの磁性を持
つ不純物27が磁気の影響により均一に分散される。
は、大きさ200μm以下の磁性を持った不純物27
は、凝集、偏析を起す。この状態は最終的に窒化けい素
焼結体の強度を低下させることになる。
る不可避の不純物および混合工程中から混入する不純物
のうち、窒化けい素焼結体の寿命に悪影響を及ぼす20
0μmを超える大きさの不純物を除去し、また200μ
m以下の大きさの不純物を均一に分散させる。
動部品の中で、曲げられたり折れたりする危険性がある
部品については、不可避の不純物または製造工程中に混
入する不純物の大きさを最大100μm以下にする。こ
のため、前記のようにスラリーをふるい24に通す工程
において、100μmを超える大きさの磁性を持たない
不純物を取り除く。
けい素焼結体の寿命に悪影響を及ぼす200μmを超え
る大きさの不純物が存在せず、窒化けい素焼結体の寿命
に影響を及ぼすことが大変小さい200μm以下の大き
さの不純物が均一に分散された窒化けい素の原料粉末を
得ることができる。
体を成形し、この成形体を焼結して焼結体を得る。得ら
れた窒化けい素焼結体は不純物の存在による強度の低下
がなく、破壊に強く優れた耐久性を有している。
2 O3 2重量%を添加し、アルコールを加えてボールミ
ルで湿式混合してスラリーを得る。このスラリーに10
000ガウスの磁力で湿式除鉄を行い、さらにメッシュ
が48μm のふるいに通す。この湿式除鉄を3回行う。
その後、スラリをスプレードライヤにより乾燥して調合
粉末の製造工程を終了する。
成形体を脱脂した後焼結、HIP処理を行う。得られた
焼結体を所定の仕様の玉軸受に用いる寸法の玉になるよ
う機械加工する。
評価を行い、さらに顕微鏡による表面観察を行った。ま
た、比較例として従来の窒化けい素軸受部品である不純
物を除去しなかった玉に対しても同様に試験および観察
を行った。この試験結果および観察結果を次の表1に示
す。
00μmを超える大きさの不純物が存在するものがあ
り、玉の寿命も大きくばらついていることが分かる。こ
れに対して本実施例の玉には200μmを超える大きさ
の不純物がなく、寿命のばらつきがないことが分る。次
に、本発明の製造方法に関する実施例について説明す
る。
部、Al2 O3 2部の割合でセラミックス原料粉末を調
合し、この原料粉末に溶剤、バインダーを加えて混合、
攪拌を行い原料スラリーを作製した。この時、スラリー
の不純物の含有量は130ppm である。
成された磁界、好ましくは10000ガウス以上の磁界
の中に通して脱磁を行った。次にスラリーを開き目32
μmのふるいに通した。次にスラリーを交流磁界中を通
して脱磁を行った。その後、スプレードライヤーを用い
てスラリーを球状の造粒粉末にした。
で加圧して成形体を成形した。得られた成形体を電気炉
に入れて加熱し、成形体に含まれるバインダーを蒸発分
解した。その後、成形体を焼結炉にて焼結して焼結体を
作製した。得られた焼結体は、大きさが100μmを超
える不純物を含まないものである。
所定の寸法形状に仕上げた。この仕上げ加工による摺動
部品の形状、状態は、JIS R1601ファインセラミックス
の曲げ強さ試験方法に基づくものとする。
(1) である窒化けい素摺動部品を作製した。また、比較
例として粉末調合工程で本発明による不純物除去処理を
行わないで原料粉末を作製し、この原料粉末を用いて上
記例と同じ方法で窒化けい素摺動部品を作製した。
と比較例品である窒化けい素摺動部品とをJIS R1601で
定められた方法により曲げ強さ試験を行った。この試験
結果を図6の線図に示す。この線図は横軸に曲げ強度
を、縦軸に破壊確率を夫々設定している。この線図によ
れば、本発明例品(1)は比較例品に比較して曲げ強度特
性が高く、特に最低曲げ強度が格段と向上していること
が分かる。
における最低曲げ強度サンプルの破壊起点を調査した。
この結果、比較例品からは大きさ135μm のFeが見
出された。これは比較例品の窒化けい素焼結体にFeが
不純物として存在していたため、その存在箇所の強度が
低く、存在から破壊が発生したことを表している。これ
に対して本発明例品(1) の最低曲げ強度サンプルの破壊
起点からはFeをはじめとする不純物を検出することが
できなかった。
00ppm の低純度粉末を使用して上記本発明例品(1) を
作製した工程と同じ工程により本発明例品(2) を作製し
た。本発明例品(2) に対してJIS R1601で定め
らた方法により曲げ強度試験を行った。その試験結果を
図7の線図に示す。この線図によれば本発明例品(2)は
本発明例品(1) とほぼ同等の値を得ることができる。な
お、本発明例品(2) は曲げ強度の値が本発明例品(1) の
それに比較して若干低いのは材料粉末の粒径が粗いため
である。
よび比較例品に対して、夫々に大きさ100μmを超え
る不純物が存在するか否かを観察した。観察に際して
は、本発明例品(1)、本発明例品(2)および比較例品を形
成する各窒化けい素焼結体にRmax0.2〜0.3μ
mのラップ加工を施した。そして、各窒化けい素焼結体
の表面を顕微鏡により観察して不純物の大きさを判定し
た。この結果を表2に示す。
μmの大きさの不純物をはじめとする100μm以上の
大きさの不純物が多く存在する。これに対して、本発明
例品(1),(2)は、100μmを超える大きさの不純物の
存在を確認できなかった。
より作製した窒化けい素焼結体は、曲げ強度特性におけ
るばらつきが格段に少なく、低純度粉末を用いても飛躍
的に高い品質を安定して有している。
よる強度の低下がなく、破壊に強く優れた耐久性を有す
る窒化けい素摺動部品を得ることができる。
ある玉軸受を示す図。
に存在する不純物の大きさと玉の寿命との関係を示す線
図。
おける工程を説明する図。
窒化けい素焼結体における強度との関係を示す線図。
との関係を示す線図。
との関係を示す線図。
Claims (7)
- 【請求項1】 主として窒化けい素からなる摺動部品で
あって、不可避の不純物または製造工程中に混入する不
純物は、その大きさが最大200μmを超えるものが存
在せず、最大200μm以下の磁性を持つ不純物が偏析
せずに均一に分散されていることを特徴とする窒化けい
素摺動部品。 - 【請求項2】 前記不純物は、その大きさが最大100
μmを超えるものが存在しないことを特徴とする請求項
1に記載の窒化けい素摺動部品。 - 【請求項3】 前記磁性を持つ不純物の大きさは、最大
100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載
の窒化けい素摺動部品。 - 【請求項4】 前記磁性を持つ不純物は、Feであること
を特徴とする請求項1に記載の窒化けい素摺動部品。 - 【請求項5】 摺動部品が軸受部品であることを特徴と
する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の窒化け
い素摺動部品。 - 【請求項6】 主として窒化けい素粉末からなる原料粉
末を用いて摺動部品を作製するに際して、前記窒化けい
素粉末に対して湿式除鉄処理を行い、次いで前記窒化け
い素粉末をふるいに通すことにより、最大200μmを
超える不純物を除去し、その後、前記窒化けい素粉末に
対して脱磁処理を行うことにより最大200μm以下の
不純物の偏析を防ぐことを特徴とする窒化けい素摺動部
品の製造方法。 - 【請求項7】 前記脱磁処理を10000ガウス以上の
磁界で行うことを特徴とする請求項6に記載の窒化けい
素摺動部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27309392A JP3535182B2 (ja) | 1991-10-30 | 1992-10-12 | 窒化けい素摺動部品およびその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP28476691 | 1991-10-30 | ||
JP27309392A JP3535182B2 (ja) | 1991-10-30 | 1992-10-12 | 窒化けい素摺動部品およびその製造方法 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003199906A Division JP2004002197A (ja) | 1991-10-30 | 2003-07-22 | 摺動部品用窒化けい素焼結体および玉軸受用窒化けい素焼結体 |
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JPH05201770A JPH05201770A (ja) | 1993-08-10 |
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Family
ID=26550509
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27309392A Expired - Lifetime JP3535182B2 (ja) | 1991-10-30 | 1992-10-12 | 窒化けい素摺動部品およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3535182B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
GB9700527D0 (en) | 1997-01-11 | 1997-02-26 | Ecc Int Ltd | Processing of ceramic materials |
JP4820506B2 (ja) * | 2001-08-27 | 2011-11-24 | 株式会社東芝 | 電子機器用耐摩耗性部材とそれを用いた電子機器用ベアリング |
-
1992
- 1992-10-12 JP JP27309392A patent/JP3535182B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05201770A (ja) | 1993-08-10 |
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