JP3528740B2 - 鋼材の冷却装置 - Google Patents

鋼材の冷却装置

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JP3528740B2 JP2000042744A JP2000042744A JP3528740B2 JP 3528740 B2 JP3528740 B2 JP 3528740B2 JP 2000042744 A JP2000042744 A JP 2000042744A JP 2000042744 A JP2000042744 A JP 2000042744A JP 3528740 B2 JP3528740 B2 JP 3528740B2
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鶴和 有村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延材の厚鋼
板、熱延鋼板(鋼帯)、形鋼等の鋼材の冷却装置に
り、さらに詳しくは、熱間圧延中又は熱間圧延後の高温
鋼材を冷却水等の冷却媒体によって加速冷却等を行う鋼
材の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱間圧延中又は熱間圧延後の
高温鋼材面に、冷却媒体として冷却水を用いて冷却する
ことはよく知られており、熱間鋼材を搬送しながら冷却
することも行われている。この場合、厚鋼板では水膜状
の冷却液を落下して冷却を行うスリットラミナー冷却
が、熱延鋼板ではフルコーンスプレーノズルを配列した
スプレー群による冷却が行われ、また、形鋼の冷却、例
えばH形鋼のフランジの冷却についてもスプレー群によ
る冷却が行われていた。
【0003】しかし、近年、鋼材の機械的性質、加工
性、溶接性などを向上させるために、加速冷却手段には
高冷却能力、均一冷却性能が求められ、その手段の一つ
として、箱型に形成した冷却装置の冷却面側の板に径が
数mmの多数の噴射孔を設け、この冷却装置に冷却水等
を供給して噴射孔から噴射させる多孔板噴流タイプの冷
却装置(以下、多孔板冷却装置という)が使用されてい
る。なお、この多孔板冷却装置は、柱状噴流冷却装置と
呼ばれることもある。
【0004】従来の多孔板冷却装置の一例として、特開
昭62−259610号公報あるいは特開平10−26
3669号公報に開示された発明がある。特開昭62−
259610号公報に記載された発明は、列設ロール間
のスペースにおいて、鋼板の下面と平行しかつ近接して
配置した鋼板ガイドより直接噴射され、かつ鋼板幅員方
向に並列する柱状噴射冷却水列によって、ロール間の鋼
板下面を冷却するようにしたものである(従来技術
1)。
【0005】また、特開平10−263669号公報に
記載された発明は、鋼材に対してほぼ直角に設けた柱状
噴流ノズルを一定間隔の千鳥状に配置し、鋼材面に衝突
した後の流動水が、隣接する柱状噴流ノズルからの流動
水と衝突して発生する干渉流によって囲まれ、ノズル直
下を細胞核とみなす同一形状のハニカムセル状の冷却面
群を形成させたもので、柱状噴流ノズルからの柱状噴流
はハニカム状のセルに拘束されて、鋼材に衝突した後の
冷却水の流動挙動は集合流となり、不規則流動水による
偏冷却もなく、鋼材の幅方向に均一な冷却が可能となる
としている(従来技術2)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来技術1は、
狭いピッチで配置されたロール間に沈める鋼材の下面冷
却装置に多孔板冷却装置を用いて、鋼材の上面の冷却能
力と下面の冷却能力を均一にしようとしたものである
が、ロール間に冷却装置を沈めたのでは、空冷部分と冷
却部分の繰り返しとなるため冷却能力に限界があるた
め、高冷却能力を得ることは困難であり、さらに、高速
で移動する鋼材を冷却する際に問題があった。
【0007】従来技術2は、鋼材の搬送方向と直交する
幅方向に縞模様に発生する温度ムラを解消するために、
柱状噴流群のノズルを一定間隔で千鳥状に配置して、隣
どうしの冷却水の干渉によって発生するハニカム状の冷
却面群を形成させるようにしたものであり、ノズルの間
隔は、ノズル口径dに対して3d〜10dが望ましいと
している。
【0008】しかしながら、この冷却方法では、高速で
移動する鋼材を冷却する際に次のような問題があった。
図15は従来技術2における多孔板冷却装置の平面図及
びこれによって冷却した鋼板の各種の搬送速度による冷
却後の幅方向の温度分布を示す線図で、20は冷却装
置、21はこれに設けた多数の柱状噴射ノズルの噴射孔
を示し、径4mmの噴射孔21を、冷却装置20の幅方
向W(鋼材の搬送方向と直交する方向)に間隔40mm
(=10d)、長手L方向(鋼板の搬送方向)に間隔2
5mm(≒6d)で千鳥状に設けたものである。
【0009】図15(a),(b)は、搬送方向の長さ
Lが1mの冷却装置20により、搬送速度約30mpm
の鋼板を2秒間冷却した場合の冷却後の鋼板の幅方向の
表面温度分布を、また、図15(c),(d)は搬送方
向の長さLが2mの冷却装置20により、搬送速度約6
0mpmの鋼板を2秒間冷却した場合の冷却後の鋼板の
幅方向の表面温度分布を示す。さらに、図15(e),
(f)は、搬送方向の長さLが4mの冷却装置20によ
り、搬送速度120mpmの鋼板を2秒間冷却した場合
の冷却後の鋼板の幅方向の表面温度分布を示すものであ
る。図から明らかなように、鋼板の搬送速度が早くなる
ほど温度ムラが大きくなることがわかる。これは冷却装
置20から噴出する冷却水の挙動が大きく影響している
ためである。
【0010】図16に従来技術2の冷却装置の冷却水の
被冷却面での挙動を示す。図16において、噴射孔21
より噴射された冷却水が被冷却面に直接当る部分を直下
域A、被冷却面に当った冷却水が直下域Aから被冷却面
上を放射状に広がって流れる領域を流水域Bと呼び、ま
た、被冷却面上を流れる冷却水が隣接する噴射孔21か
ら噴射した冷却水と衝突する領域を干渉域Cと呼ぶ。
【0011】上記のような冷却挙動において、それぞれ
の冷却領域の冷却能力は、被冷却面が停止している場
合、直下域Aが最も高く、次に干渉域Cが高く、流水域
Bが最も低い。干渉域Cが流水域Bより冷却能力が高い
のは、隣どうしの冷却水が衝突した干渉域Cの冷却面上
で冷却水が攪拌されるためと考えられる。
【0012】ところが、被冷却面が高速で移動すると、
直下域Aでは衝突力が強いためもともと高い冷却能力を
有するが、干渉域Cでは冷却能力が低下する。さらに、
搬送速度を速くしていくと、干渉域Cの冷却能力は流水
域Bの冷却能力と同等の冷却レベルになる。これは、干
渉域Cでの被冷却面が高速で移動するために、冷却水の
攪拌効果がなくなり、干渉域Cも流水域Bと同じように
冷却水が被冷却面上を流れている状態になるためであ
る。
【0013】したがって、被冷却面を高速搬送すればす
るほど、冷却能力は噴射孔21の直下域Aのみに支配さ
れるようになり、図17に示すように、ノズルの直下域
Aだけが冷却が促進されて他の領域は冷却が全く進まな
くなる。なお、図17は被冷却面を高速搬送した場合の
被冷却面の表面温度分布を示すもので、20は冷却装
置、21は噴射口、22は冷却水の送水管、24は被冷
却材23の被冷却面を示し、線図は被冷却面24の冷却
後の幅方向の表面温度分布を示すものである。
【0014】特に、膜沸騰現象が伴う約500℃以上の
温度の被冷却面では、直下域Aでは冷却能力の低い膜沸
騰状態が、被冷却面の温度が下がることにより遷移沸騰
状態を経て冷却能力の高い核沸騰状態となる。一方、流
水域Bでは、被冷却面の温度が下がらないために膜沸騰
状態から核沸騰状態になりにくい。さらに、干渉域Cで
は、被冷却材の搬送速度が遅いときは、膜沸騰状態から
核沸騰状態へと遷移するが、搬送速度が速くなると流水
域Bと同様に膜沸騰状態から核沸騰状態への遷移がしに
くくなる。このため、直下域Aだけ冷却が進んで、流水
域Bと干渉域Cは冷却が進まなくなる。このことが、高
温の被冷却面での不均一冷却の大きな原因になってい
る。
【0015】一般に、製造過程における鋼材の搬送速度
は、圧延機の回転数や鋼材の製品の長さ、鋼材の厚み、
温度低下の防止等によって異なり、特に仕上りが薄い鋼
材ほど搬送速度が速い場合が多く、したがって薄い鋼材
ほど不均一冷却が発生し易い。近年では高生産性が重要
視されており、搬送速度を速くすることも重要になって
いる。
【0016】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたもので、高冷却能力を有する多孔板冷却装置にお
いて、搬送速度が異なっても均一冷却を実現することの
できる鋼材の冷却装置を提供することを目的としたもの
である。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に係る鋼材の冷却
装置は、沸騰現象を伴う高温鋼材に向って冷却を噴射
する多数のノズル噴射孔を有し、前記鋼材の製造ライン
に該鋼材の搬送方向と平行に設置された冷却装置であっ
て、前記多数のノズル噴射孔を有する面の搬送方向の一
部又は全面に所定の間隔で幅方向に、スリットノズル又
は前記ノズル噴射孔の幅方向の間隔より密にノズル噴射
孔を配置したノズル群を設けたものである。
【0018】
【0019】
【0020】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]図1は本発明の
実施の形態1に係る鋼材の冷却装置の説明図である。図
において、10は所定の間隔で鋼材である厚鋼板11の
製造ラインに設置された搬送ロールである。1は搬送ロ
ール10の間において、厚鋼板11の上下に対向して設
置された箱状の多孔板冷却装置(以下、単に冷却装置と
いう)で、厚鋼板11と対向する面2(以下、冷却面と
いう)には多数のノズル噴射孔3が設けられており、こ
のノズル噴射孔3から送水管8によって供給された冷却
媒体(以下、冷却水という)を噴射して、搬送中の厚鋼
板11を冷却する(なお、以下の説明及び図面には、冷
却装置1の送水管8は省略してある)。
【0021】図2は図1の冷却装置の平面図である。こ
の冷却装置1は、厚鋼板11の搬送方向(矢印Sで示
し、以下単に搬送方向という)の長さL、幅Wの冷却面
2に、径dの多数のノズル噴射孔3を、搬送方向の間隔
DL、幅方向の間隔DWで千鳥状に設けたものである
が、搬送方向の各ノズル列4の先端部のノズル噴射孔3
aと、後端部のノズル噴射孔3nとを結んだ線を搬送方
向と平行に配置せず、斜行させたものである。
【0022】すなわち、各ノズル列4の先端部のノズル
噴射孔3aを固定軸とし、後端部のノズル噴射孔3n
を、ノズル噴射孔3aを固定軸とする搬送方向の軸線5
(以下、基準線という)から、幅方向のノズル間隔DW
分ずらせて配置し、ノズル噴射孔3aと3nを結ぶ線上
に、それぞれ間隔2DLで複数のノズル噴射孔3を設け
て、各ノズル列4を形成したものである。
【0023】本実施の形態においては、例えば、搬送方
向の長さL:1100mm、幅W:3000mmの冷却
装置1の冷却面2に、径d:4mmのノズル噴射孔3
を、搬送方向に間隔DL:25mm、幅方向に間隔D
W:30mmで千鳥状に設け、かつ、各ノズル列4を、
その後端部のノズル噴射孔3nを基準線5に対して30
mmずつずらせて、斜行して配列した。これにより、各
ノズル列4の搬送方向に隣接するノズル噴射孔3は互い
に0.5mmオーバーラップするため、厚鋼板21の被
冷却面上には必ず冷却直下域A(投影部)が存在する。
【0024】[実施例1]冷却面2における冷却部が、
搬送方向約1000mm、幅方向約2800mmの冷却
装置を、厚鋼板製造ラインの圧延機の前面に、搬送方向
に沿って上下にそれぞれ25台ずつ設置した。そして、
これらの冷却装置1によって、板厚55mm、板幅22
00mm、長さ5.8m、平均温度850℃の厚鋼板1
1の温度を下げて圧延制御を行うべく、ノズル噴射孔3
から平均水量密度3000l/min m2 の冷却水を噴射
し、上下の冷却装置1の間を搬送速度60mpmで厚鋼
板11を通過させた。冷却時間は約25秒である。冷却
10秒後に放射温度計で測定した厚鋼板11の幅方向の
上面温度分布は図3に示す通りで、温度ムラを生ずるこ
となく冷却することができた。これにより厚鋼板の機械
的性質、加工性、溶接性、残留応力特性などを大幅に向
上させることができる。
【0025】[実施の形態2]本実施の形態は、図4に
示すように、本発明に係る冷却装置を鋼材であるH形鋼
12のフランジ外面の冷却に適用したものである。な
お、実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号が付
してある。本実施の形態は、H形鋼製造ラインの両側
に、冷却装置1の冷却面2をフランジ外面とそれぞれ対
向して設置し、搬送中のH形鋼12のフランジを冷却す
るようにしたものである。
【0026】この冷却装置1は、図5に示すように、H
形鋼12の搬送方向の長さL、幅方向Wからなる冷却面
2に、径dのノズル噴射孔3を搬送方向に間隔DL、幅
方向に間隔DWで千鳥状に設けたものであるが、搬送方
向の各ノズル列4を搬送方向と平行に配置せず、斜行さ
せたものである。すなわち、各ノズル列4の搬送方向の
先端部のノズル噴射孔3aを固定軸とし、後部側を長さ
1 (以下、斜行配置区画という)ごとに、後端部のノ
ズル噴射孔3nを基準線5から幅方向のノズル間隔DW
分ずつずらせて、ノズル噴射孔3aと3nを結ぶ線上に
それぞれ間隔2DLで複数のノズル噴射孔3を設けて、
ノズル列4を形成したものである。
【0027】本実施の形態において、例えば、搬送方向
の長さL:4200mm、幅W:300mmの冷却装置
1の冷却面2に、径d:4mmのノズル噴射孔3を、斜
行配置区画L1 :1000mmごとに、搬送方向の間隔
DL:25mm、幅方向の間隔DW:30mmで千鳥状
に設け、かつ、各ノズル列4の後端部のノズル噴射孔3
nを、基準線5に対してそれぞれ30mmずらせて配置
し、この斜行配置区画L1 を図6に示すように搬送方向
に4区画設けて冷却装置1を構成した。これにより、各
ノズル列4の搬送方向に隣接するノズル噴射孔3は互い
に0.5mmオーバーラップするため、H形鋼12のフ
ランジ上には必ず冷却直下域Aが存在する。
【0028】[実施例2]上記のように構成した冷却装
置1を、仕上げ圧延機の後方15mからH形鋼製造ライ
ンの両側に対向してそれぞれ連続して6台設置した。そ
して、ウェブ高さ800mm、フランジ幅300mm、
ウェブ厚み14mm、フランジ厚み28mm、長さ60
mで、フランジ平均温度860℃のH形鋼22を、冷却
装置1から平均水量密度3000l/min m2 の冷却水
を噴射し、搬送速度120mpmで製造ライン上を通過
させた、冷却時間は約13秒である。冷却10秒後に放
射温度計で測定したフランジの幅方向の外面温度分布は
図7に示す通りで、温度ムラを生ずることなく冷却する
ことができた。これにより、H形鋼の機械的性質、加工
性、溶接性などを大幅に向上させることができる。
【0029】[実施の形態3]本実施の形態は、実施の
形態2の冷却装置1のノズル噴射孔3の配置を変更した
ものである。すなわち、図8(a)に示すように、例え
ば、H形鋼の搬送方向の長さL:4200mm、幅W:
300mmの冷却装置1の冷却面2に、径d:4mmの
ノズル噴射孔3をランダムに約840個設けたものであ
る。この場合、冷却するH形鋼のフランジの各部は、搬
送方向の延長線上でノズル噴射孔3の直下域Aを1回以
上必ず通過するようにした。
【0030】一例として、冷却装置1の冷却面2に、1
2 あたり660個のノズル噴射孔3をランダムに設け
ることにより、H形鋼のフランジの搬送方向の延長線上
における各部が、連設した2台の冷却装置1の間でノズ
ル噴射孔3の直下域Aを少なくとも8回通過するように
設定したが、通過回数が3回以上であれば、冷却の均一
性が高くなる。しかし、あまりノズル噴射孔3を増加す
ると、冷却水量が増えて不経済であり、また設備費も高
くなるので、冷却の均一性が保たれる範囲でノズル噴射
孔3の数を少なくすることが望ましい。
【0031】また、鋼材の搬送速度が速くなると、ノズ
ル噴射孔3の直下域Aを同じ回数通過しても冷却に温度
ムラが発生するので、鋼材の被冷却部の搬送方向の各部
が最低でも1回、望ましくは数回以上直下域Aを通過す
るようにノズル密度を決定し、ノズル噴射孔3を配置す
ればよい。鋼材の搬送速度と、ノズル噴射孔3の直下域
Aの最低通過数との関係の一例を図9に示す。図9から
明らかなように、搬送速度が早くなるほど、直下域Aを
通過する回数を増やす必要があることがわかる。なお、
図9の関係は、他の実施の形態においても適応するもの
である。
【0032】[実施例3]上記のように構成した冷却装
置1を、実施の形態2の場合(図4参照)と同様に、仕
上げ圧延機の後方15mからH形鋼製造ラインの両側に
ぞれぞれ連続して6台設置した。なお、ランダムに設け
たノズル噴射孔3の数は、1m2 あたり660個であっ
た。そして、ウェブ高さ800mm、フランジ幅300
mm、ウェブ厚み14mm、フランジ厚み28mm、長
さ60mで、フランジ平均温度860℃のH形鋼を、冷
却装置1から平均水量密度3000l/min m2 の冷却
水を噴射し、搬送速度120mpmで製造ライン上を通
過させた。冷却時間は約13秒である。冷却10秒後に
放射温度計で測定したフランジの幅方向の外面温度分布
は図8(b)に示す通りで、温度ムラを生ずることなく
冷却することができた。
【0033】[実施の形態4]本実施の形態は、実施の
形態2のノズル噴射孔の配置及びその一部の形状を変更
したものである。すなわち、図10(a)に示すよう
に、例えばH形鋼の搬送方向の長さL:4200mm、
幅W:300mmの冷却装置1の冷却面に、径d:4m
mのノズル噴射孔3を、搬送方向に間隔DL:25m
m、幅方向に間隔DW:30mmで千鳥状に、かつ搬送
方向のノズル列4を搬送方向と平行に設けると共に、搬
送方向の先端部側及びその後方1000mmごとに、幅
方向に幅2mmのスリットノズル6を2本並設したもの
である。したがって、1台の冷却装置1に8本のスリッ
トノズル6が設けられている。
【0034】[実施例4]上記のように構成した冷却装
置1を、実施の形態2の場合(図4参照)と同様に、仕
上げ圧延機の後方15mからH形鋼製造ラインの両側に
それぞれ6台設置した。そして、ウェブ高さ800m
m、フランジ幅300mm、ウェブ厚み14mm、フラ
ンジ厚み28m、長さ60mで、フランジ平均温度86
0℃のH形鋼を、冷却装置1から平均水量密度3000
l/min m2 の冷却水を噴射し、搬送速度120mpm
で製造ライン上を通過させた。冷却時間は約13秒であ
る。冷却10秒後に放射温度計で測定したフランジの幅
方向の外面温度分布は図10(b)に示す通りで、温度
ムラを生ずることなく冷却することができた。
【0035】本実施の形態においては、ノズル噴射孔3
を従来技術と同様に、搬送方向のノズル列4が搬送方向
と平行になるように千鳥状に設けたが、さらに、搬送方
向に所定の間隔で、幅方向の複数のスリットノズル6を
設けたので、H形鋼のフランジは、スリットノズル6の
直下域Aを1秒間に4回通過し、その都度幅方向の全域
が直下域Aによって一度に冷却されるため、温度ムラを
無くすことができたのである。なお、スリットノズル6
は1本ずつでもよく、その幅や間隔も適宜変更すること
ができる。また、冷却装置1の冷却面2の全面に亘って
所定の間隔でスリットノズル6を設けた場合を示した
が、例えば、冷却装置1の先端部側など、その一部に設
けてもよい。
【0036】[実施の形態5]本実施の形態は、実施の
形態2のノズル噴射孔の配置を変更したものである。す
なわち、図11(a)に示すように、例えば、搬送方向
の長さL:4200mm、幅W:300mmの冷却装置
1の冷却面2に、径d:4mmのノズル噴射孔3を、搬
送方向の間隔DL:25mm、幅方向の間隔DW:30
mmで千鳥状に、かつ搬送方向のノズル列4を搬送方向
と平行に約840個設けると共に、搬送方向の先端部側
及びその後方1000mmごとに、幅方向に径d:4m
mのノズル噴射孔3を2列千鳥状に密に配置(幅方向の
間隔:6mm)してノズル群7を設けたものである。し
たがって、1台の冷却装置1に4列の密なノズル群7が
設けられている。ノズル群7における各ノズル噴射孔3
のオーバーラップ部は約1mmである。
【0037】[実施例5]上記のような冷却装置1を、
実施の形態2の場合(図4参照)と同様に、仕上げ圧延
機の後方15mからH形鋼製造ラインの両側に、それぞ
れ連続して6台設置した。そして、ウェブ高さ800m
m、フランジ幅300mm、ウェブ厚み14mm、フラ
ンジ厚み28mm、長さ60mで、フランジ平均温度8
60℃のH形鋼のフランジを、冷却装置1から平均水量
密度3000l/min m2 の冷却水を噴射し、搬送速度
120mpmで製造ライン上を通過させた。冷却時間は
約13秒である。冷却10秒後に放射温度計で測定した
フランジ幅方向の外面温度分布は図11(b)に示す通
りで、温度ムラを生ずることなく冷却することができ
た。
【0038】本実施の形態においては、ノズル噴射孔3
を従来技術と同様に、搬送方向のノズル列が搬送方向と
平行になるように千鳥状に設けたたが、さらに、搬送方
向の幅方向に所定の間隔で、2列のノズル孔3を千鳥状
に密に配置したノズル群7を設けたので、フランジはこ
のノズル群7の直下域Aを1秒間に約4回通過し、その
都度幅方向の全域が直下域Aによって一度に冷却される
ため、温度ムラをなくすことができたのである。なお、
冷却装置1の冷却面の全面に亘って所定の間隔でノズル
群7を設けた場合を示したが、例えば冷却装置1の先端
部側など、その一部に設けてもよい。
【0039】[実施の形態6]図12は本発明の実施の
形態6に係る鋼材の冷却装置の説明である。図におい
て、10は800mm間隔で鋼材である熱延鋼板13の
製造ラインに設置された外径280mmの搬送ロールで
ある。この搬送ロール10の間には、搬送方向の長さ
L、幅Wで、冷却面2に多数のノズル噴射孔3が設けら
れた箱状の下面冷却装置1aが設置されており、また、
この下面冷却装置1aと対向して同じ構造の上面冷却装
置1bが設置されている(以下の説明では、下面冷却装
置1aと上面冷却装置1bを合せて、単に冷却装置1と
いうことがある)。
【0040】図13(a)に冷却装置1の一例(但し、
冷却面だけ示してある)を示す。この冷却装置1は、搬
送方向の長さL:500mm、幅W:3000mmの冷
却面2に、径d:3mmの多数のノズル噴射孔3を、搬
送方向に間隔DL:15mm、幅方向に間隔DW:21
mmで千鳥状に設けたものであるが、実施の形態1の場
合と同様に、搬送方向の各ノズル列4の先端部のノズル
噴射孔3aと、後端部のノズル噴射孔3nを結んだ線
を、基準線5と平行にせず、斜行させたものである。
【0041】すなわち、各ノズル列4の後端部のノズル
噴射孔3nを、基準線5から幅方向のノズル間隔DW:
21mm分ずらせて配置し、ノズル噴射孔3aと3nを
結ぶ線上に間隔2DLで複数のノズル噴射孔3を設け
て、ノズル列4を形成したものである。これにより、各
ノズル列4の搬送方向に隣接するノズル噴射孔3は、互
いに0.7mmのオーバーラップする。
【0042】[実施例6]冷却面2における冷却部が、
搬送方向が約480mm、幅方向が約2800mmの下
面冷却装置1aを、熱延鋼板23の製造ラインの仕上げ
圧延機の後方10mから、搬送方向に沿って搬送ロール
10の間に40台設置すると共に、これと対向して40
台の上面冷却装置1bを設置した。
【0043】そして、これらの冷却装置1により、板厚
5.0mm、板幅2200mm、長さ5.8m、平均温
度880℃の熱延鋼板23を冷却すべく、上下それぞれ
40台の冷却装置1から平均水量密度5000l/min
2 の冷却水を噴射し、平均搬送速度約600mpmで
製造ライン上を通過させた。冷却時間は約3.2秒で、
熱延鋼板23は冷却装置1の間を通過する間に、ノズル
噴射孔3の直下域Aを上下それぞれ40回通過する。し
たがって、1秒間にノズル直下域を12回通過すること
になる。冷却10秒後に放射温度計で測定した熱延鋼板
23の幅方向の上面温度分布は13(b)に示す通り
で、温度ムラを生ずることなく冷却することができた。
これにより熱延鋼板の機械的性質、加工性、溶接性など
を大幅に向上させることができる。
【0044】[比較例]本発明に係る冷却装置と、従来
の冷却装置との鋼材の冷却効果を比較するために、実施
の形態2に係る冷却装置1のノズル噴射孔3の配置を変
更し、各ノズル列を鋼材であるH形鋼の搬送方向(基準
線)と平行に設けて、比較例の冷却装置を構成した。す
なわち、図14(a)に示すように、搬送方向の長さ
L:4200mm、幅W:300mmの箱状の冷却装置
1の冷却面2に、外径d:4mmのノズル噴射孔3を、
搬送方向の間隔DL:25mm、幅方向の間隔DW:3
0mmで、搬送方向と平行に、かつ千鳥状に約840個
設けた。
【0045】そして、実施の形態2の場合と同様に、仕
上げ圧延機の後方15mから搬送ラインの両側に対向し
てそれぞれ6台設置し、ウェブ高さ800mm、フラン
ジ幅300mm、ウェブ厚み14mm、フランジ厚み2
8mm、長さ60m、フランジ平均温度860℃のH形
鋼を、冷却装置から平均水量密度3000l/min m 2
の冷却水を噴射し、搬送速度120pmpで搬送ライン
上を通過させた。冷却時間は約13秒である。
【0046】冷却10秒後に放射温度計で測定したフラ
ンジ幅方向の外面温度分布を図14(b)に示す。図か
ら明らかなように、比較例の冷却装置においては、温度
差ΔTが約100℃に達する大きい温度ムラが発生し、
本発明の実施の形態2に係る冷却装置により冷却した場
合(図7)に比べて冷却効果が著しく劣ることがわかっ
た。また、後日このH形鋼のフランジの幅方向の硬度分
布について調査したところ、冷却温度のムラに起因した
約50Hvの硬度ムラがあることがわかった。
【0047】上記の説明において、実施の形態1では厚
鋼板を、実施の形態2〜5ではH形鋼を、また実施の形
態6では熱延鋼板をそれぞれ構造の異なる冷却装置で冷
却する場合を示したが、これら冷却装置は上記各鋼材に
専用のものではなく、適宜選択して使用することができ
る。また、主としてH形鋼のフランジの冷却について説
明したが、例えば溝形鋼や山形鋼等の形鋼さらにはその
他の鋼材を冷却することができる。
【0048】
【発明の効果】本発明は、沸騰現象を伴う高温鋼材に向
って冷却を噴射する多数のノズル噴射孔を有し、鋼材
の製造ラインにこの鋼材の搬送方向と平行に設置された
鋼材の冷却装置であって、多数のノズル噴射孔を有する
面の搬送方向の一部又は全面に所定の間隔で幅方向に、
スリットノズル又はノズル噴射孔を密に配置したノズル
群を設けたので、鋼材の被冷却部の冷却ムラがなくな
り、また、搬送速度の早い鋼材も均一に冷却することが
でき、これにより、厚鋼板、熱延鋼板、H形鋼等の形鋼
などの鋼材の機械的性質、加工性、溶接性、残留応力特
性などを大幅に向上させることができた。
【0049】
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鋼材の冷却装置の
説明図である。
【図2】図1の冷却装置の平面図である。
【図3】実施の形態1の冷却装置によって冷却した厚鋼
板の幅方向の上面温度分布を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る鋼材の冷却装置の
説明図である。
【図5】図4の冷却装置の一部平面図である。
【図6】図4の冷却装置の全体構成を示す平面図であ
る。
【図7】実施の形態2の冷却装置によって冷却したH形
鋼のフランジの幅方向の外面温度分布を示す線図であ
る。
【図8】本発明の実施の形態3に係る冷却装置の平面図
及びこれによって冷却したH形鋼のフランジの幅方向の
外面温度分布を示す線図である。
【図9】鋼材の搬送速度とノズル噴射孔の直下域の最低
通過数との関係を示す線図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る冷却装置の平面
図及びこれによって冷却したH形鋼のフランジの幅方向
の外面温度分布を示す線図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る冷却装置の平面
図及びこれによって冷却したH形鋼のフランジの幅方向
の外面温度分布を示す線図である。
【図12】本発明の実施の形態6に係る鋼材の冷却装置
の説明図である。
【図13】図12の冷却装置の平面図及びこれによって
冷却した熱延鋼板の幅方向の上面温度分布を示す線図で
ある。
【図14】本発明と比較する比較例の冷却装置の平面図
及びこれによって冷却したH形鋼のフランジの幅方向の
外面温度分布を示す線図である。
【図15】従来の多孔板冷却装置の例の平面図及びこれ
によって冷却した鋼板の幅方向の表面温度分布を示す線
図である。
【図16】従来の冷却装置の被冷却面での冷却水の挙動
を示す説明図である。
【図17】従来の冷却装置の被冷却面での冷却水の挙動
を示す説明図である。
【符号の説明】
1 冷却装置 2 冷却面 3 ノズル噴射孔 4 ノズル列 5 基準線 6 スリットノズル 7 ノズル群 8 送水管 10 搬送ロール 11 厚鋼板 12 H形鋼 13 熱延鋼板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C21D 9/573 101 C21D 9/573 101Z (72)発明者 槙ノ原 操 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−259610(JP,A) 特開 平8−238518(JP,A) 実開 昭63−149954(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 45/02 320

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 沸騰現象を伴う高温鋼材に向って冷却
    を噴射する多数のノズル噴射孔を有し、前記鋼材の製造
    ラインに該鋼材の搬送方向と平行に設置された冷却装置
    であって、 前記多数のノズル噴射孔を有する面の搬送方向の一部又
    は全面に所定の間隔で幅方向にスリットノズルを設けた
    ことを特徴とする鋼材の冷却装置。
  2. 【請求項2】 沸騰現象を伴う高温鋼材に向って冷却
    を噴射する多数のノズル噴射孔を有し、前記鋼材の製造
    ラインに該鋼材の搬送方向と平行に設置された冷却装置
    であって、 前記多数のノズル噴射孔を有する面の搬送方向の一部又
    は全面に所定の間隔で幅方向に、前記ノズル噴射孔の幅
    方向の間隔より密にノズル噴射孔を配置したノズル群を
    設けたことを特徴とする鋼材の冷却装置。
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