JP3520463B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

インクジェット式記録装置

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JP3520463B2
JP3520463B2 JP7911698A JP7911698A JP3520463B2 JP 3520463 B2 JP3520463 B2 JP 3520463B2 JP 7911698 A JP7911698 A JP 7911698A JP 7911698 A JP7911698 A JP 7911698A JP 3520463 B2 JP3520463 B2 JP 3520463B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット式
記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドから空吐出、も
しくは吸引されたインクを吸収するインク吸収材を備え
たキャップ装置を有するインクジェット式記録装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録ヘッドを搭載した記
録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さな
ドットを高い密度で形成できるため、カラー印刷を含め
た多くの印刷に使用されている。このような記録装置
は、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴
として記録用紙に吐出させてドットを形成している。こ
のため、印字品質の向上を図るためには記録用紙上での
滲みを防止する必要があり、インク溶媒の割合を可及的
に少なくしたり、蒸発しやすい材料が使用されている。
そのため、印刷中にノズル開口からインク溶媒が蒸発し
てインクの粘度が上昇したり、また非印刷時においても
ノズル開口からインク溶媒が蒸発してノズル開口のイン
クの粘度が上昇し、インクの吐出に支障を来す。
【0003】これを防止するため、従来のインクジェッ
ト式記録ヘッドでは、非印刷時には記録ヘッドに対して
キャップ装置を密着させ、インク溶媒の蒸発を防止する
と共に、印刷時には前記キャップ装置に対してインクの
空吐出を行い、ノズル開口の先端部のインク粘度の増加
を抑えている。そして、このようなインクジェット式記
録装置にあっては、密着状態から、また回復動作後、キ
ャップ装置を記録ヘッドから引き離す際に、ノズル開口
内へ気泡が侵入しないこと、キャップ装置からのインク
の飛散がないこと等が要求されている。これら要求に答
えるため、各種提案がなされ、例えば、特公平3−43
066号公報に記載されているような、キャップ装置内
にインクを吸収するための吸収部材を備えたものも提案
されている。
【0004】次に従来のインクジェット式記録装置に装
着されているキャップ装置及びインク吸収材について、
図14乃至図16に基づいて説明する。なお、図14は
従来のキャップ装置の一例を示す平面図、図15は図1
4のA−A線による断面図(インク吸収材が装着された
状態図)、図16は図14のB−B線による断面図(イ
ンク吸収材を省略した状態図)である。
【0005】これらの図において、キャップ装置を構成
するキャップ部材101は、記録ヘッド100のノズル
開口を囲い、かつその先端部分が記録ヘッド100に密
着する周壁部101aと、前記周壁部101aの下端部
を閉塞する底壁部101bとで構成されている。そして
また、前記周壁部101aの内側には、2枚のインク吸
収材102,103を積層した状態で固定保持するため
の爪部102cが、前記周壁部101aの上部の周縁部
に沿って複数設けられている。
【0006】前記インク吸収材102,103は記録ヘ
ッド100から空吐出、もしくは吸引されたインクを吸
収するため、通常不織布、紙等からなる有機材料のイン
ク吸収材が用いられている。
【0007】また図において、爪部102cは8か所設
けられ、前記底壁部101bには、ポンプ(図示せず)
よってノズルより吸引されたインクをキャップ装置外に
排出するためのインク吸引口104と、弁(図示せず)
によって大気と連通あるいは遮断される開放口105が
設けられている。なお、図中、106は接続管を示し、
インク吸引口104にその一端が嵌合し、他端は図示し
ないポンプに接続されている。図示しないが同様に開放
口105には、弁と接続された接続管が嵌合している。
また、101cはインク吸収材102,103を収容す
る収容部を示している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のイン
クジェット式記録装置に用いられているインク吸収材
は、前記したように有機材料であるポリビニ−ルアルコ
−ル、不織布、紙等が用いられているため、インク吸収
材は、インクを吸収することにより膨潤する。
【0009】そのため、前記インク吸収材の外形寸法
は、前記膨潤を考慮してキャップ部材に形成されたイン
ク吸収材の収容部の寸法より、小さく設定される。すな
わち、キャップ部材とインク吸収材との間に、インク吸
収材の変形(膨潤)を吸収する隙間を設ける必要があ
り、また前記インク吸収材をキャップ部材に固定するた
めの爪部を設ける必要がある。
【0010】このように構成された従来のインクジェッ
ト式記録装置にあっては、前記隙間がインク吸収材によ
り閉塞されない状態でインクの吸引を行うと、前記隙間
では毛細管力が小さく、インクと置換されにくいために
連続して気泡が発生し、キャップ部材内のインクが泡立
つという問題があった。
【0011】また、インク吸収材の膨潤によって、イン
ク吸収材の表面の平坦度が変わり、その結果、記録ヘッ
ド(ノズル形成面)との距離が変わり、ノズルから吐出
したインクがノズル形成面に付着する、あるいは膨潤し
てインク吸収材とキャップ部材、特に底壁部の間に隙間
が発生し、キャップ部材内のインクが泡立つ等の不都合
があった。
【0012】更に、爪部の上面と記録ヘッドの下面間
に、図15において二点鎖線で示すように、インク滴I
が付着して残ることがある。このインク滴Iは前述した
インク吸収部材と接しないため、前記インク吸収部材に
よっては前記インク滴Iを吸収することはできない。こ
のように爪部の上面にインク滴Iが残ると、ノズルの回
復動作後、記録ヘッドを印字動作状態に復帰させるため
にキャリッジを移動させ、キャップ周壁部101aを密
着状態から開放する際、前記インク滴Iが飛散し、記録
ヘッド下面、すなわちノズル形成面にインクが付着し、
時としてノズル開口に達し、吐出不良を起こしたり、ま
たキャップ装置の周辺をインクで汚すという不都合があ
った。
【0013】本発明は、上記したような技術的課題を解
決するためになされたものであり、インク吸収材を膨潤
作用を呈しない金属あるいは無機材料によって形成する
ことにより、記録ヘッドのノズル形成面に付着するイン
ク量を極力減らし、前記インクがノズル開口内に逆流す
るのを防止する共に、またノズル開口内への気泡の侵入
を防止し、更にはキャップ部材からのインクの飛散を防
止したインク吸収材を備えたインクジェット式記録ヘッ
ドを提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
になされた本発明は、インクを吐出するインクジェット
式記録ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドのノ
ズル形成面と密着状態を確保するキャップ部材と、ノズ
ルから吐出されたインクを吸引する吸引手段を備えると
共に、前記キャップ部材内にインク吸収材を収容したイ
ンクジェット式記録ヘッドにおいて、前記インク吸収材
が金属もしくは無機質の材料から構成されていることを
基本的構成としている。
【0015】このように、前記インク吸収材が金属もし
くは無機質の材料から構成されているため、インクの吸
収によって膨潤することはない。したがって、インク吸
収材とキャップ部材の間に従来のような隙間を形成する
必要がなく、また膨潤してインク吸収材とキャップ部材
の間に新たな隙間が発生することがないため、キャップ
部材のインクの泡立ちを防止することができる。また、
インク吸収材が膨潤作用を呈しないため、インク吸収材
の表面の平坦度を一定に維持することができ、ノズルか
ら吐出したインクがノズル形成面に付着する等の不都合
も防止することができる。
【0016】ここで、前記キャップ部材には複数枚のイ
ンク吸収材が収容され、前記記録ヘッドのノズル形成面
側に配置されるインク吸収材のセル数が、キャップ部材
の底壁部側に配置されるインク吸収材のセル数よりも小
さいことが望ましい。このようにノズル形成面側に配置
されるインク吸収材のセル数を、キャップ部材の底壁部
側に配置されるインク吸収材のセル数よりも小さく設定
することにより、毛細管力の差によって、ノズル形成面
側に配置されるインク吸収材が保持するインクを底壁部
側インク吸収材に移動させることができ、効率よくイン
クをノズル形成面に対向するインク吸収材から排出する
ことができる。
【0017】また、前記キャップ部材には複数枚のイン
ク吸収材が収容され、前記複数枚のインク吸収材のう
ち、少なくともノズル形成面側に配置されるインク吸収
材のノズル形成面側に撥水処理が施されていることが望
ましい。このように、少なくともノズル形成面側に配置
されるインク吸収材のノズル形成面側に撥水処理を施す
ことにより、ノズル形成面側に配置されるインク吸収材
が保持するインクを減少させ、効率よくインクを排出す
ることができる。
【0018】更に、前記キャップ部材に収容されるイン
ク吸収材の外形の少なくとも一部が、キャップ部材に形
成された収容部よりも大きく形成されていることが望ま
しい。このように、インク吸収材の外形が、キャップ部
材に形成された収容部よりも大きく形成されているた
め、前記キャップ部材の変形によって、インク吸収材を
キャップ部材の収容部に固定することができる。その結
果、従来のような爪部を設ける必要もなく、爪部上面に
インク滴Iが付着することによる弊害、例えば、インク
滴Iの飛散、記録ヘッド下面のインクの付着、キャップ
装置の周辺のインクの汚れを防止することができる。な
お、キャップ部材は従来と同様、ゴム等の弾性体からな
り、インク吸収体は前記キャップ部材を変形させた際に
も、変形しない剛性を有する金属もしくは無機質の材料
から構成される。
【0019】また上記目的を達成するためになされた本
発明は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド
と、前記インクジェット式記録ヘッドのノズル形成面と
密着状態を確保するキャップ部材と、ノズルから吐出さ
れたインクを吸引する吸引手段を備えると共に、前記キ
ャップ部材内にインク吸収材を収容したインクジェット
式記録ヘッドにおいて、前記キャップ部材に複数枚のイ
ンク吸収材を収容し、前記記録ヘッドのノズル形成面側
に金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材を配
置すると共に、キャップ部材の底壁部側に有機材料から
なるインク吸収材を配置したことを基本的構成としてい
る。このように、前記記録ヘッドのノズル形成面側の前
記インク吸収材を金属もしくは無機質の材料から構成し
ているため、インクの吸収によって膨潤することはな
い。また、ノズル形成面側のインク吸収材が膨潤しない
ため、インク吸収材の表面の平坦度が変わることによっ
て生ずる、ノズルから吐出したインクがノズル形成面に
付着する等の不都合も防止することができる。
【0020】また、前記有機材料からなるインク吸収材
の周縁部に1又は複数の舌片部が形成され、前記舌片部
は金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材の周
縁部に形成された1又は複数の切欠部に挿通され、前記
舌片部の先端がキャップ部材の周壁部の上部に位置する
ように配置されていることが望ましい。このように、前
記有機材料からなるインク吸収材の舌片部の先端がキャ
ップ部材の周壁部の上部に位置するように配置されてい
るため、記録ヘッドのノズル形成面に付着したインクを
吸収することができ、しかも記録ヘッドのノズル形成面
にインク吸収材を押し当てた場合にも、前記ノズル形成
面を傷をつけることはない。
【0021】更に、前記キャップ部材に収容される金属
もしくは無機質の材料からなるインク吸収材の外形の少
なくとも一部が、キャップ部材に形成された収容部より
も大きく形成され、かつ有機材料からなるインク吸収材
の外形が、キャップ部材に形成された収容部よりも小さ
く形成されていることが望ましい。
【0022】このように、金属もしくは無機質の材料か
らなるインク吸収材の外形が、キャップ部材に形成され
た収容部よりも大きく形成されているため、前記キャッ
プ部材の変形によって、有機材料からなるインク吸収材
及び金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材を
キャップ部材の収容部に固定することができる。その結
果、従来のような爪部を設ける必要もなく、爪部上面に
インク滴Iが付着することによる弊害、例えば、インク
滴Iの飛散、記録ヘッド下面のインクの付着、キャップ
装置の周辺のインクの汚れを防止することができる。こ
のとき、キャップ部材と有機材料からなるインク吸収材
との間には従来の場合と同様隙間が形成されるが、前記
隙間の上部には金属もしくは無機質の材料からなるイン
ク吸収材が配されるため、インクの泡立ちを抑制するこ
とができる。
【0023】また前記金属もしくは無機質の材料からな
るインク吸収材の少なくともノズル形成面側に撥水処理
が施されていることが望ましい。このように撥水処理が
施されているため、金属もしくは無機質の材料からなる
インク吸収材が保持するインクを減少させ、効率よくイ
ンクを排出することができる。
【0024】更に、前記金属材料からなるインク吸収材
は、ニッケルもしくはニッケルクロム多孔質体であり、
無機質の材料からなるインク吸収材はセラミックス多孔
質体もしくはガラス多孔質体であることが望ましく、ま
た前記有機材料からなるインク吸収材は、剛性の小さ
い、ポリビニ−ルアルコ−ル、紙、不織布、ポリウレタ
ン多質体であることが望ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、この発明の第1の実施形態
を図1乃至図9に基づいて説明する。ここで、図1はイ
ンクジェット記録装置の概略を示す斜視図、図2はイン
クジェット記録装置の回復機構部分を示す平面図、図3
は回復機構の一例を示す平面図、図4および図5は動作
説明図である。また図6はこの発明の第1実施形態であ
るキャップ部材を示す平面図、図7は図6に示したキャ
ップ部材の底面図、図8は図6のキャップ部材(インク
吸収材を収納した状態)のC−C線による断面図、図9
は図6のD−D線による断面図である。
【0026】まず、図1乃至図5に基づいてインクジェ
ット記録装置の概略及びキャップ装置の回復機構につい
て説明する。図中、符号1はキャリッジで、ガイド部材
2に支持されるとともに、タイミングベルト3を介して
パルスモータ23に接続されていて、プラテン5に平行
に往復動可能に構成されている。
【0027】キャリッジ1には黒色インクを吐出するノ
ズル開口列を備えた第1インクジェット式記録ヘッド7
と、カラーインクを吐出するノズル開口列を備えた第2
インクジェット式記録ヘッド8(図4)とが、印刷方
向、キャリッジ1の移動方向に一定の間隔で設けられ、
これら各記録ヘッド7、8の上部には黒色インクカート
リッジ9と、カラーインクカートリッジ10が着脱自在
に搭載されている。また、印刷領域外には各記録ヘッド
7、8を封止するキャップ装置12が設けられている。
【0028】このような構成によりフレキシブルケーブ
ル11を介して図示しないヘッド駆動回路からの駆動信
号を受けると、インクカートリッジ9、10からインク
の供給を受けながら記録ヘッド7、8が対向配置された
印刷用紙6に黒色、及び有色のドットを形成する。
【0029】図2は、前述のキャップ装置近傍の上面を
示す図であって、図中符号20は、紙送りローラで、回
転軸21の一端に固定された歯車22により紙送りとポ
ンプ駆動を兼ねたパルスモータ24に接続されていて、
印刷用紙6を印刷工程に合わせて搬送するものである。
図中符号12は、前述のキャップ装置で、キャリッジ1
の移動に連動して2つの記録ヘッド7、8のノズル開口
面を覆うキャッピング位置と、ノズル開口面から離れる
非キャッピング位置との2位置を占めるスライダ30
に、弾性材料によりカップ状に形成された第1キャップ
部材31、第2キャップ部材32が設けられている。こ
れらキャップ部材31、32は、それぞれ対応する第1
記録ヘッド7と第2記録ヘッド8を密封可能で、しかも
離間した状態で各記録ヘッド7、8から吐出されるイン
ク滴を確実に受け止めることができる開口面積に設定さ
れている。なお、図示しないが、前記第1キャップ部材
31、第2キャップ部材32は、キャップ受け部材を介
してスライダ30に設けても良い。
【0030】第1、第2キャップ部材31、32は、そ
の吸引口31a、32a(図3)をそれぞれポンプ3
7、38の一部を構成するチューブ33、34の一端に
接続されていて吸引力を受けるようになっている。
【0031】第1、第2のチューブポンプ37、38
は、輪列40を介してパルスモータ24に選択的に接続
されて、モータ24の逆転時には第1チューブポンプ3
7だけが吸引動作を、また正転時には第2チューブポン
プ38だけが吸引動作を行うようになっている。
【0032】図3、及び図4は、それぞれ上述したキャ
ップ装置12の一例を示すものであって、図中符号30
はスライダで、キャリッジ1に搭載された2つの記録ヘ
ッド7、8の間隔に一致させて第1、第2のキャップ部
材31、32が、軸31c、32cにより揺動可能に設
けられている。
【0033】図中符号41、42は、第1、第2ガイド
片で、キャリッジ1の第1、第2記録ヘッド7、8の幅
に合わせて両側に配置され、またキャリッジ1が所定位
置にセットされた時、各記録ヘッド7、8をキャップ部
材31、32に対して位置決めする機能を有する。また
スライダ30の先端、図中では右端には、キャリッジ1
が第1、第2キャップ部材31、32と第1、第2の記
録ヘッド7、8とが対向する位置に移動したとき、キャ
リッジ1の下端の突起44に当接するフラッグ片45が
さらに先端には係合片46が設けられていて、基台53
に取り付けられたガイド部材47に当接し、案内、支持
されるようになっている。
【0034】ガイド部材47には、スライダ30の抜け
を防止する凸部47aと、スライダ30を記録ヘッド
7、8の下端と空吐出に適した一定の間隔を形成する平
面47bと、キャップ部材31、32を記録ヘッド7、
8に弾接する位置を形成する平面47cとが形成されて
いる。
【0035】一方、スライダ30は、その下部の中央に
キャリッジ1の移動方向に直交する軸50が設けられて
いて、この軸50の両側を、下端が長溝52aを介して
基台53の軸54に揺動可能に取り付けられたレバー5
2に遊嵌されている。そしてスライダ30は、下端が基
台53に固定されて印刷領域側に傾斜して非印刷領域側
に座屈ぎみにセットされたコイルバネ56の上端に取り
付けられている。
【0036】これにより図5に示すように、非キャッピ
ング時には、スライダ30は、一端をガイド部材47の
斜面47bの最下端に、また中央部をレバー52に規制
されながらコイルバネ56により印字領域側に付勢され
て、各キャップ部材31、32を記録ヘッド7、8に接
しさせることなく、空吐出に適した間隔gを形成できる
位置を維持することができる。
【0037】また、スライダ30は、そのケース61側
に各キャップ部材31、32に設けられている大気開放
口31b、32bと接続するバルブユニット60が設け
られていて、バルブユニット60からは作動杵62が突
出している。これによりスライダ30をキャッピング位
置まで移動させることにより、作動杵62をケース61
に弾接させて、常時開放状態にあるバルブユニット60
を閉弁させて大気開放口31b、32bを閉塞できる。
【0038】次に、キャップ部材31、32の構造につ
いて、図6乃至図9に基づいて説明する。なお、キャッ
プ部材31とキャップ部材32とは基本的に同一の構成
を有するため、キャップ部材31を例にとって説明す
る。ここで、図6はキャップ部材の一例を示す平面図、
図7は図6に示したキャップ部材の底面図、図8は図6
のC−C線による断面図(インク吸収材を収容した状
態)、図9は図6のD−D線による断面図である。
【0039】これらの図において、キャップ部材31は
前記した従来のキャップ部材と同様、記録ヘッドのノズ
ル開口を囲い、かつその先端部分が記録ヘッドに密着す
る周壁部31cと、前記周壁部31cの下端部を閉塞す
る底壁部31dとで構成され、また前記底壁部31dに
は、ポンプ(図示せず)よって空吐出されたインクをキ
ャップ装置外に排出するためのインク吸引口31aと、
弁(図示せず)によって大気と連通あるいは遮断される
開放口31bが設けられている。
【0040】また、前記周壁部31cには、2枚のイン
ク吸収材82,83を積層した状態で保持するためのア
ンダ−カット部31eが、前記周壁部31cの内側側部
に複数設けられている。図6には、前記アンダ−カット
部31eが6か所設けられた例を示している。このアン
ダ−カット部31eは、前記した周壁部31cの内側側
部を切欠いたものであって、前記アンダ−カット部31
eに対して、インク吸収材82、83の周縁部から突出
した突出部82a、83aが挿入され、アンダ−カット
部31eが前記突出部82a、83aを保持することに
よって、インク吸収材82、83がキャップ部材31に
固定される。
【0041】また、周壁部31cの内周面には略一定の
間隔をもって複数のインク誘導手段としての溝31fが
形成されている。前記溝31fは周壁部31cの内側に
対して開拡した三角形状をなし、第1、第2記録ヘッド
7、8に接触する周壁部31cの先端側から底壁部31
に至るように形成されている。この溝31fの形状は
特に限定されるものではないが、インク滴Iが誘導され
易い形状であればよい。
【0042】また溝31fは必ずしも第1、第2記録ヘ
ッド7、8に接触する周壁部31cの先端側から底壁部
31dにわたって形成される必要はなく、少なくとも第
1、第2記録ヘッド7、8に接触する周壁部31cの先
端側から上側に配置されたインク吸収材83と接する位
置まで形成されていればよい。前記溝31fを伝わって
誘導されたインク滴Iがインク吸収材83に円滑に吸収
されるためである。誘導されたインク滴がインク吸収材
82、83により円滑に、より早く吸収されるために、
好ましくは、前記溝31fは底壁部31dまで形成され
るのがよい。
【0043】このようにキャップ部材31に溝31fが
形成されているため、記録ヘッドと周壁部31c上部と
の間のインク滴Iはこの溝31fを伝わって、キュップ
部材31の底壁部側へ誘導され、前記インク吸収材8
2、83によって吸収される。また、キャップ部材31
の底壁部31dの外面にはインク吸引口31aを囲んで
第1凹部31gが形成され、また開放口31bを囲んで
第2凹部31hが形成されている。このように、インク
吸引口31a、開放口31bの周囲には凹部31g、3
1hが形成されているため、その周囲は肉薄になる。
【0044】このインク吸引口31aには、一端側にチ
ューブ33が接続された接続管26の他端側が圧入され
ることによって、チューブ33はキャップ部材31に取
り付けられる。また同様に、この開放口31bには、弁
と接続される接続管(図示せず)が圧入されることによ
って、キャップ部材31に取り付けられる。
【0045】このようにインク吸引口31aに接続管2
6を圧入することによって取り付けられるが、このとき
インク吸引口31aと接続管26との間に位置ずれが生
じたとしても、インク吸引口31aの部分(凹部31
g)が変形し、その位置ずれを吸収するため、自動機等
により容易に組立を行うことができる。また第1凹部3
1gでインク吸引口31a部分の変形が吸収されるの
で、インク吸引口31a部分の変形がキャップ部材31
の他の部分に対して悪影響を及ぼすことがない。特に、
記録ヘッドとキャップ部材31の周壁部31c上部との
密着性に悪影響を及ぼすことがない。
【0046】また同様に、開放口31bに接続管を圧入
することによって取り付けられるが、開放口31bと接
続管との間に位置ずれが生じたとしても、開放口31b
の部分(凹部31h)が変形し、その位置ずれを吸収す
るため、自動機等により容易に組立を行うことができ
る。また第2凹部31hで開放口31b部分の変形が吸
収されるので、開放口31b部分の変形がキャップ部材
31の他の部分に対して悪影響を及ぼすことがない。特
に、記録ヘッドとキャップ部材31の周壁部31c上部
との密着性に悪影響を及ぼすことがない。
【0047】次に、前記インク吸収材82、83につい
て説明すると、インク吸収材82、83は金属多孔質体
あるいはセラミックスのような無機質多孔質体から構成
されている。このインク吸収材82、83の両者を金属
多孔質体で形成しても良く、また両者をセラミックスの
ような無機質多孔質体で形成しても良い。また、インク
吸収材82とインク吸収材83のいずれか一方を金属多
孔質体とし、他方を無機質多孔質体の多孔質体としても
よい。
【0048】この金属多孔質体は、例えば発泡樹脂に導
電処理を施した後、前記発泡樹脂の表面に対して、例え
ばニッケル等の金属をメッキし、その後、発泡樹脂を熱
処理によって消失させることによって作成される。この
インク吸収材としての金属多孔質体は、孔径0.1mm
〜0.3mm、セル数(個/インチ)80〜230、の
特性を有するのが好ましい。
【0049】なお前記セル数とは、直線1インチ間に並
んでいる金属の骨格で形成されるセルの数を意味する。
また金属の種類としては、特に限定されないが、インク
との関係から腐食等が発生しないものであれば良い。例
えばニッケル、ニッケル−クロ−ムを例示することがで
きる。
【0050】また、無機質多孔質体としては、ガラス質
多孔質体、セラミックス多孔質体を例示することができ
る。例えばセラミックス多孔質体は、ポリウレタンフォ
−ム等の発泡樹脂をセラミックスのスラリ−液に浸漬
し、乾燥後焼成することによって作成される。このイン
ク吸収材としての無機質多孔質体は、孔径0.1mm〜
0.3mm、セル数(個/インチ)80〜230の特性
を有するのが好ましい。
【0051】なお前記セル数とは、金属多孔質体の場合
と同様、直線1インチ間に並んでいるセラミックス、ガ
ラスの骨格で形成されるセルの数を意味する。またセラ
ミックスの種類としては、特に限定されないが、例えば
アルミナ質、ジルコニア質、ジルコニア−ムライト質、
ムライトSiC質をを例示することができる。
【0052】また、インク吸収材83の記録ヘッドのノ
ズル形成面に対峙する面(ノズル形成面側)に、テフロ
ン層あるいはシリコン層をコ−ティング処理等によって
形成し、撥水性を高めるのが好ましい。前記テフロン層
あるいはシリコン層等の撥水層は、記録ヘッドのノズル
形成面側以外にインク吸収材83の他の面に形成しても
良く、また好ましくはインク吸収材82に撥水層を形成
するのが良い。
【0053】更に、記録ヘッド側に配置されるインク吸
収材83のセル数は、インク吸収材82のセル数よりも
小さい。このように記録ヘッド側に配置されるインク吸
収材83のセル数がインク吸収材82のセル数よりも小
さいため、すなわち記録ヘッド側に配置されるインク吸
収材83の孔径の方がインク吸収材82の孔径よりも大
きいため、ポンプの吸引力の他、毛細管力の差によって
もインクをインク吸収材83の表面からキャップ部材3
1の底壁部側に移動させることができ、より効率よくイ
ンクをキャップ部材31の外へ排出することができる。
【0054】また、前記した撥水層がインク吸収材83
の記録ヘッドのノズル形成面と対峙する面に形成されて
いる場合には、より容易にインクをインク吸収材83の
表面からキャップ部材31の底壁部側に移動させること
ができ、より効率よくインクをキャップ部材の外へ排出
することができる。
【0055】次に、記録ヘッドのノズル開口からのイン
クの空吐出動作について説明する。
【0056】まず、第1、第2記録ヘッド7、8を搭載
したキャリッジ1が、印刷領域から図5の矢印方向へ、
すなわち印刷領域外方向へ移動し、キャリッジ1が印刷
領域外に位置するスライダ30に到達すると、第1記録
ヘッド7が第2ガイド片42に係合する。
【0057】この状態でさらにキャリッジ1が移動する
と、第1記録ヘッド7が第1ガイド片41に、また第2
記録ヘッド8が第2ガイド片42に係合することによ
り、スライダ30がキャリッジ1に対応する姿勢に整列
される。
【0058】さらに、キャリッジ1が移動すると、突起
44がフラッグ片45に当接することにより、図5に示
すように、第1、第2キャップ装置31,32は、第
1、第2記録ヘッド7、8のノズル開口を覆うことが可
能な位置に、一定の間隔gを隔てて第1、第2記録ヘッ
ド7、8と対向する。
【0059】この状態でインクの空吐出が行われる。す
なわち、印刷工程中に所定時間経過した場合に、ノズル
開口のインク溶媒の蒸発を防止するため、第1、第2記
録ヘッド7、8からのインクの空吐出をキャップ部材3
1、32に対して行う。
【0060】このとき、従来のようなキャップ部材に爪
部が形成されていないため、爪部と記録ヘッド7、8の
間につながるようなインク滴Iは形成されない。また周
壁部31c、32cの内側上方にインク滴Iが付着して
も、溝31f、32fが設けられているので、インク滴
Iは溝31f、32fによってインク吸収材82、83
に誘導され、周壁部31c、32cの内側上方にインク
滴が溜まることもない。
【0061】次に、記録ヘッドのノズル開口からインク
を吸引排出する動作を説明する。
【0062】まず、第1、第2記録ヘッド7、8を搭載
したキャリッジ1が、印刷領域から図5の矢印方向へ、
すなわち印刷領域外方向へ移動すると、図2に示される
ようにレバー72が斜面73に接触して軸71を中心に
回動することにより、スライド歯車74がコイルスプリ
ング75の付勢力に抗して移動し、輪列40に係合す
る。
【0063】このようにスライド歯車74が輪列40に
係合すると、紙送り兼ポンプモータ24の動力が第1ポ
ンプ37または第2ポンプ38へ伝達される状態にな
る。
【0064】そして、この状態からさらにキャリッジ1
が移動すると、スライダ30は、フラッグ片45が突起
44で押されることにより、スライダ30は、軸50を
回動支点として後部(印刷領域側)が持ち上がり、第2
キャップ装置32が第2記録ヘッド8に当接する。この
とき、第2キャップ装置32は、スライダ30に揺動可
能に取り付けられ、スライダ30もレバー52を介して
基台53に揺動可能に取り付けられているので、第2記
録ヘッド8にガイドされながら上昇し、第2記録ヘッド
8のノズル開口を覆うように当接する。
【0065】さらに、キャリッジ1がケース61側へ移
動すると、コイルスプリング56はキャリッジ1の力に
抗し切れなくなって座屈し始め、スライダ30を持ち上
げることになるので、スライダ30は、第2キャップ装
置32を第2記録ヘッド8に嵌装させたまま持ち上げら
れ、第1キャップ装置31を第1記録ヘッド7に当接さ
せる。このようにしてさらにキャリッジ1が移動する
と、スライダ30は、第1、第2記録ヘッド7、8に規
制されながら水平にケース61側へ移動し、作動杆62
がケース61に当接することにより、第1、第2キャッ
プ装置31,32の開放口31b,32bを閉塞し大気
と遮断する。
【0066】この状態ではコイルスプリング56が大き
く座屈し、スライダ30をコイルスプリング56の付勢
力で持ち上げるため、第1、第2キャップ部材31,3
2は第1、第2記録ヘッド7、8に弾接し、確実に密封
する。このように記録ヘッド7、8に対してキャップ部
材31、32装置を密着させ、インク溶媒の蒸発を防止
している。
【0067】このように第1、第2キャップ部材31,
32が第1、第2記録ヘッド7、8に弾接している状態
では、レバー72によって紙送り兼ポンプモータ24が
輪列40に接続され、図示を省略した切換機構によって
紙送り兼ポンプモータ24の正逆転により、第1ポンプ
37または第2ポンプ38が作動され、インク吸引動作
が行われる。このようにして吸引されたインクは、第1
チューブ32または第2チューブ33を通過して図示を
省略した廃インクタンクに排出される。
【0068】以上説明したように、前記キャップ部材3
1、32にはインク吸収材82とインク吸収材83とが
収容され、前記吐出されたインクを吸収する。しかも、
インク吸収材82、インク吸収材83は金属多孔質体、
あるいは無機質多孔質体によって構成されているため、
インクによって膨潤せず、従来のインク吸収材のような
膨潤による変形が生じないため、インク吸収材83の平
坦度は変わらず、記録ヘッドとの距離を一定に保つこと
ができる。その結果、インク吸収材83と記録ヘッドの
ノズル形成面との接触あるいは、吸引動作中のインクの
泡立ちによる記録ヘッドのノズル形成面へのインクの付
着を極力抑制することができる。
【0069】また、記録ヘッドのノズル形成面側に配置
されるインク吸収材83の孔径の方が、インク吸収材8
2の孔径のよりも大きいため、前記ポンプ37、38の
吸引力の他、毛細管力の差によってもインクをインク吸
収材83の表面からキャップ部材31、32の底壁部に
移動させることができる。また前記インク吸収材83の
記録ヘッド(ノズル形成面)の対峙した面に撥水層が形
成されている場合には、より容易にインクをインク吸収
材83の表面からキャップ部材31、32の底壁部に移
動させることができる。
【0070】更に、このインク吸引動作において、イン
ク吸収材がキャップ部材に対して隙間なく収容されてい
るため、インクの泡立ちを防止することができる。また
仮にインクが泡立ち、インクが飛散しても、従来のよう
な爪部が形成されていないため、爪部にはインク滴が付
着するようなこともない。
【0071】そして、所定時間のインク吸引動作が終了
した後、キャリッジ1を印刷領域側へ移動させると、作
動杆62がケース61から離れるため、開放口31b,
32bが大気に開放され、元の状態に戻る。この密着状
態から移動する際、従来のような爪部が形成されていな
いため、爪部と記録ヘッド7、8の間につながるような
インク滴は形成されない。したがって、そのようなイン
ク滴が飛散して、記録ヘッドのノズル開口へインクが付
着することがなく、またキャップ部材周辺をインクによ
って汚すこともない。
【0072】この後、前述と反対方向へ、すなわち印刷
領域方向へキャリッジ1が移動することにより、第1、
第2記録ヘッド7、8が記録領域へ移動し、元の状態に
なる。
【0073】上述したように、この発明の第1の実施形
態によれば、周壁部31c、32fの内側の周方向に複
数のアンダーカット部31e、32eを設け、このアン
ダーカット部31e、32eに突出部82a,83aを
挿入してインク吸収材82、83を固定させたので、従
来のようにインク吸収材82,83を固定させるための
爪部を設ける必要がない。
【0074】このように爪部102cを形成しないこと
により、周壁部の内側にインク滴Iの付着防止を図るこ
とができるため、インク滴Iが飛散することがなく、第
1、第2記録ヘッド7、8のノズル開口へインクが付着
することはない。またキャップ部材周辺をインクで汚す
こともない。その結果、安定したインクの吐出を確保
し、印刷用紙6を汚さず、高品質の記録を得ることがで
きる。
【0075】また、インク吸引口31a,32aの周囲
に第1凹部31g,32gを設けてインク吸引口31
a,32a部分の変形が他の部分へ伝わらないように構
成され、インク吸引口31a,32aへ接続管26を圧
入しても周壁部31c、32cが変形しないため、周壁
部31c、32cの第1、第2記録ヘッド7、8への密
着性を確保して確実に負圧とすることができ、確実なキ
ャッピングおよび回復動作を行わせることができる。ま
た同様に、開放口31b、32bに接続管を圧入するこ
とによって取り付けられるが、開放口31b、32bと
接続管との間に位置ずれが生じたとしても、開放口31
b、32bの部分(凹部31h、32h)が変形し、開
放口31b、32b部分の変形がキャップ部材31、3
2の他の部分に対して悪影響を及ぼすことがない。特
に、記録ヘッド7、8とキャップ部材31、32の周壁
部31c、32c上部との密着性に悪影響を及ぼすこと
がない。
【0076】さらに、周壁部31c、32cの内側に溝
31f、32fが設けられてるので、周壁部31c、3
2cの内側上方にインク滴Iが付着しても、インク滴I
は溝31f、32fによってインク吸収材82、83へ
誘導されるため、周壁部31c、32cの内側上方にイ
ンク滴Iが溜まることはない。よって、インク滴Iの飛
散を防止することができるため、第1、第2記録ヘッド
7、8のノズル開口へインクが付着することがなく、ま
たキャップ部材周辺のインク汚れを防止できるため、安
定したインクの吐出を確保し、印刷用紙を汚さず、高品
質の記録を得ることができる。
【0077】なお、上記した実施形態ではアンダーカッ
ト部31eを一定の間隔をもって設けたが、アンダーカ
ット部を周壁の内側に全周にわたって設けても、同様な
効果を得ることができる。インク吸収材82、83に設
ける突出部82a、83aは、アンダーカット部31e
に対応して設ければ良いが、アンダーカット部を周壁の
内側に全周にわたって設けた場合には、突出部82a、
83aを全周にわたって設ける必要はなく、数か所設け
たものであっても良い。また、2枚のインク吸収材を用
いて説明したが、1枚のインク吸収材であっても、ある
いは3枚以上のインク吸収材を用いてもよいことは言う
までもない。
【0078】次に、本発明にかかるインクジェット記録
装置にの第2の実施形態について、図10に基づいて説
明する。図10は、図8と同様にキャップ部材(インク
吸収材を収納した状態)の断面図である。なお、この第
2の実施形態、その後の第3、4の実施形態の説明にお
いて、キャップ部31、32は基本的に同一の構成を有
するため、キャップ部材31をとって説明する。
【0079】この実施形態にあっては、図8に示された
第1の実施形態と比べて、アンダーカット部31eが形
成されていないこと、またアンダーカット部31eが形
成されていないためキャップ部材31の先端部から略垂
直な周壁部31cが形成されていること、更にはインク
吸収材84、85が周壁部31cによって形成されるイ
ンク吸収材の収容部80の形状(寸法)より、わずかに
大きな寸法をもって形成されていることが相違する。な
お、インク吸収材84、85は第1の実施形態のインク
吸収材と同様、金属もしくは無機質の材料から構成され
ている。
【0080】このように、インク吸収材84、85は、
周壁部31cによって形成されるインク吸収材の収容部
80の形状より、わずかに大きな寸法をもって形成され
ている。そのため、インク吸収材84、85をキャップ
部材の収容部80の周壁部31cを変形させることによ
って装着することができ、アンダーカット部31eを省
略することができる。その結果、金型等の作成を容易な
らしめると共に、アンダーカット部31e上のインクの
付着を防止することができる。
【0081】なお、キャップ部材はゴム等の弾性体から
なり、インク吸収体は前記キャップ部材を変形させた場
合にも変形しない剛性を有している。また、キャップ部
材31に収容されるインク吸収体の外形は少なくともそ
の一部が、キャップ部材の収容部の形状(寸法)より大
きな寸法をもって形成されていれば良い。更に、第1実
施形態に設けられている周壁部31cの内側の溝31f
は、この実施形態にあっては設けられていないが、第1
実施形態と同様、溝を形成してもよい。
【0082】また、インク吸収体に剛性があるため、吸
引装置によりキャップ部材内に負圧が発生した際に、周
壁部が内側に変形することがなく、信頼性の高い吸引動
作が実現できる。
【0083】次に、本発明にかかるインクジェット記録
置の第3の実施形態について、図11に基づいて説明
する。図11は、図10と同様にキャップ部材(インク
吸収材を収納した状態)の断面図である。
【0084】この実施形態にあっては、図10に示され
た第2の実施形態と比べて、キャップ部材31の底壁部
側のインク吸収材86は、従来のインク吸収材と同様、
ポリビニ−ルアルコ−ル、不織布、紙、ポリウレタン多
質体等の有機材料で構成されていることが相違する。
【0085】このように、インク吸収材86を不織布、
紙等の有機材料で構成した場合、従来と同様にアンダ−
カット、あるいは爪部等のインク吸収材固定手段を設け
る必要がある。しかし、この実施形態では記録ヘッド側
の、金属もしくは無機質の材料によって構成されるイン
ク吸収材85がインク吸収材の収容部の形状より、わず
かに大きな寸法をもって形成され、キャップ部材31の
収容部80の周壁部31cを変形させることによって、
装着固定される。その結果、不織布、紙等の有機材料で
構成されたインク吸収材86を、アンダ−カット、ある
いは爪部等のインク吸収材固定手段を設けることなく、
固定することができる。
【0086】なお、不織布、紙等の有機材料で構成され
たインク吸収材86とキャップ部材の収容部80の周壁
部31cとの間に、インク吸収材86の膨潤を考慮し
て、間隙111を形成する必要がある。しかし、インク
吸収材86が膨潤した場合にも、その上部にインク吸収
材85が装着されているため、平坦度は変化することは
なく、記録ヘッドのノズル面との距離を一定に維持する
ことができる。
【0087】次に、本発明にかかるインクジェット記録
装置にの第4の実施形態について、図12、図13に基
づいて説明する。図12は、図11に対応する図であ
り、図13は、インク吸収材87、88の平面図であ
る。
【0088】この実施形態にあっては、図11に示され
た第3の実施形態と比べて、キャップ部材31の底壁部
側の有機材料からなるインク吸収材88に舌片部88a
が形成され、金属もしくは無機質の材料によって構成さ
れるインク吸収材87の切欠部87aを挿通し、キャッ
プ部材31の先端部まで、前記舌片部88aが延設され
ていることが相違する。
【0089】このように、不織布、紙等の有機材料で構
成されたインク吸収材88がキャップ部材31の先端部
まで、前記舌片部88aが延設されているため、前記舌
片部88aを記録ヘッドのノズル形成面に押し当て、ノ
ズル形成面に付着したインクを吸収させることができ、
この場合記録ヘッドのノズル形成面に傷を付けることも
なく、記録ヘッドのノズル形成面の良好なクリ−ニング
を行うことができる。なお、舌片部及び切欠部は1つ限
定されるものではなく、インク吸収材の周縁部に複数設
けたものであっても良い。
【0090】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかるインクジ
ェット記録装置よれば、インク吸収材を膨潤作用のない
金属あるいは無機材料によって形成することにより、記
録ヘッドのノズル形成面に付着するインク量を極力減ら
し、前記インクがノズル開口内に逆流するのを防止する
共に、またノズル開口内への気泡の侵入を防止し、更に
はキャップ装置からのインクの飛散を防止することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の概略を示す斜視図で
ある。
【図2】図1に示されたインクジェット記録装置の回復
機構部分を示す平面図である。
【図3】図2に示されたキャップ装置の一例を示す平面
図である。
【図4】図3のキャップ装置の動作説明図である。
【図5】図3のキャップ装置の動作説明図である。
【図6】キャップ部材の一例を示す平面図である。
【図7】図6に示したキャップ装置の底面図である。
【図8】図6のC−C線による断面図(インク吸収材収
容状態)である。
【図9】図6のD−D線による断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す断面図であ
る。
【図11】本発明の第3の実施形態を示す断面図であ
る。
【図12】本発明の第4の実施形態を示す断面図であ
る。
【図13】図12に示したインク吸収材の平面図であ
る。
【図14】従来のキャップ部材の断面図である。
【図15】図14のA−A線による断面図である。
【図16】図14のB−B線による断面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ 2 ガイド部材 5 プラテン 7 第1記録ヘッド 8 第2記録ヘッド 9 黒色インクカートリッジ 10 カラーインクカートリッジ 31 (第1)キャップ部材 31a インク吸引口 31b 開放口 31c 周壁部 31d 底壁部 31e アンダーカット部 31f 溝 31g 第1凹部 31h 第2凹部 31i リブ 32 (第2)キャップ部材 32a インク吸引口 32b 開放口 32c 周壁部 32d 底壁部 32e アンダーカット部 32f 溝 32g 第1凹部 32h 第2凹部 82 インク吸収材(金属もしくは無機質) 83 インク吸収材(金属もしくは無機質) 84 インク吸収材(金属もしくは無機質) 85 インク吸収材(金属もしくは無機質) 86 インク吸収材(有機質) 87 インク吸収材(金属もしくは無機質) 87a 切欠部 88 インク吸収材(有機質) 88a 舌片部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/175 B41J 2/165 B41J 2/18 B41J 2/185

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出するインクジェット式記録
    ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドのノズル形
    成面と密着状態を確保するキャップ部材と、ノズルから
    吐出されたインクを吸引する吸引手段を備えると共に、
    前記キャップ部材内にノズルから吐出されたインクを受
    けて吸収するインク吸収材を収容したインクジェット式
    記録装置であって、 前記キャップ部材は、弾性体で構成され、 前記インク吸収材は、金属もしくは無機質で、前記弾性
    体より剛性の高い多孔質体で構成され、 前記キャップ部材に収容される前記多孔質体で構成され
    たインク吸収材の外形の少なくとも一部が、前記キャッ
    プ部材に形成された収容部よりも大きく形成されて、前
    記弾性体からなるキャップ部材の変形によって前記剛性
    の高い多孔質体からなるインク吸収材が該キャップ部材
    の収容部に固定されていることを特徴とするインクジェ
    ット式記録装置。
  2. 【請求項2】 前記キャップ部材には複数枚のインク吸
    収材が収容され、前記記録ヘッドのノズル形成面側に配
    置されるインク吸収材のセル数が、キャップ部材の底壁
    部側に配置されるインク吸収材のセル数よりも小さいこ
    とを特徴とする請求項1に記載されたインクジェット式
    記録装置。
  3. 【請求項3】 前記キャップ部材には複数枚のインク吸
    収材が収容され、前記複数枚のインク吸収材のうち、少
    なくともノズル形成面側に配置されるインク吸収材自体
    のノズル形成面側に撥水処理が施されていることを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載されたインクジェ
    ット式記録装置。
  4. 【請求項4】 インクを吐出するインクジェット式記録
    ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドのノズル形
    成面と密着状態を確保するキャップ部材と、ノズルから
    吐出されたインクを吸引する吸引手段を備えると共に、
    前記キャップ部材内にノズルから吐出されたインクを受
    けて吸収するインク吸収材を収容したインクジェット式
    記録装置であって、 前記インク吸収材が金属もしくは無機質の材料から構成
    され、 前記キャップ部材には複数枚のインク吸収材が収容さ
    れ、前記記録ヘッドのノズル形成面側に配置されるイン
    ク吸収材のセル数が、キャップ部材の底壁部側に配置さ
    れるインク吸収材のセル数よりも小さいこと、及び、 前記複数枚のインク吸収材のうち、少なくともノズル形
    成面側に配置されるインク吸収材自体のノズル形成面側
    に撥水処理が施されていることを特徴とするインクジェ
    ット式記録装置。
  5. 【請求項5】 インクを吐出するインクジェット式記録
    ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドのノズル形
    成面と密着状態を確保するキャップ部材と、ノズルから
    吐出されたインクを吸引する吸引手段を備えると共に、
    前記キャップ部材内にインク吸収材を収容したインクジ
    ェット式記録装置において、前記キャップ部材に複数枚
    のインク吸収材を収容し、前記記録ヘッドのノズル形成
    面側に金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材
    を配置すると共に、キャップ部材の底壁部側に有機材料
    からなるインク吸収材を配置し、前記金属もしくは無機
    質の材料からなるインク吸収材自体の少なくともノズル
    形成面側に撥水処理が施されていると共に、 前記キャップ部材は、弾性体で構成され、 前記金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材
    は、前記弾性体より剛性の高い多孔質体で構成され、 前記キャップ部材に収容される前記多孔質体で構成され
    たインク吸収材の外形の少なくとも一部が、前記キャッ
    プ部材に形成された収容部よりも大きく形成され、かつ
    有機材料からなるインク吸収材の外形が、キャップ部材
    に形成された収容部よりも小さく形成されていて、前記
    弾性体からなるキャップ部材の変形によって前記剛性の
    高い多孔質体からなるインク吸収材が該キャップ部材の
    収容部に固定されている ことを特徴とするインクジェッ
    ト式記録装置。
  6. 【請求項6】 前記有機材料からなるインク吸収材の周
    縁部に1または複数の舌片部が形成され、前記舌片部は
    金属もしくは無機質の材料からなるインク吸収材の周縁
    部に形成された1又は複数の切欠部に挿通され、前記舌
    片部の先端がキャップ部材の周壁部の上部に位置するよ
    うに配置されたことを特徴とする請求項5に記載された
    インクジェット式記録装置。
  7. 【請求項7】 前記金属材料からなるインク吸収材は、
    ニッケルもしくはニッケルクロム多孔質体であり、無機
    質の材料からなるインク吸収材はセラミックス多孔質体
    もしくはガラス多孔質体であることを特徴とする請求項
    1乃至請求項6のいずれかに記載されたインクジェット
    式記録装置。
  8. 【請求項8】 前記有機材料からなるインク吸収材は、
    剛性の小さい、ポリビニールアルコール、紙、不織布、
    ポリウレタン多質体であることを特徴とする請求項5乃
    請求項7のいずれかに記載されたインクジェット式記
    録装置。
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