JP3518283B2 - ペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents

ペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はペースト用塩化ビニ
ル系樹脂の製造方法に関するものである。更に詳しく
は、ペースト用塩化ビニル系重合体を網面固定式風力篩
を用いて、前記重合体中に含まれる粗大粒子を除去する
際に、該網面状での目詰まりを抑制し、効率よく粗大粒
子を除去することのできるペースト用塩化ビニル系樹脂
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル、または塩化ビニルを主体と
しこれと共重合し得る他の不飽和化合物との混合物を乳
化重合または微細懸濁重合して得られる塩化ビニル系重
合体は、通常その製造工程において、重合反応中、ある
いは乾燥中の重合体の凝集などにより生成した粗大粒子
を含む。このような粗大粒子は、前記塩化ビニル系重合
体を可塑剤等の配合剤とともに混合してプラスチゾルを
調整する場合においては、ゾルの分散性や均一性を低下
させる原因となり、また種々の製品に加工された後にお
いては、表面の傷やブツなど製品の品質を悪化させる原
因となる。
【0003】従って、このような粗大粒子の含有量を低
下させるため、一般的には乾燥して得られる塩化ビニル
系重合体を粉砕処理している。しかしながら、粉砕処理
を行うと微粉末が多く発生し、粉塵により作業環境が悪
化し、流動性が悪いことと、嵩比重が小さいために作業
性も悪くなる。また、乾燥時において温度などの乾燥条
件を緩やかにして、粒子の凝集を防ぎ、硬い粗大粒子の
生成を抑制する方法もあるが、乾燥効率が低く、生産性
が悪いという問題がある。
【0004】また、特開平5−117404号公報で
は、乾燥後の塩化ビニル系重合体の粉粒体(以下、「粉
粒体」という。)から網面固定式風力篩を用いて粗大粒
子を除去する方法が提案されている。しかしながらこの
方法においては、粉粒体を空気輸送して該金網面を通過
させる際に静電気が発生し、金網およびケーシング内壁
(特に金網の上流側)へ粉粒体が付着、滞積して篩粉の
効率が低下するという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に
鑑み、ペースト用塩化ビニル系重合体中に含まれる粗大
粒子を効率よく、安定に除去する方法、即ち、実質的に
粗大粒子を含まないペースト用塩化ビニル系樹脂の効率
的な製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、塩化ビニル、
または塩化ビニルを主体としこれと共重合し得る他の不
飽和化合物との混合物を乳化重合または微細懸濁重合し
て得られる塩化ビニル系重合体の水性分散液を噴霧乾燥
して、該重合体の粉粒体とし、次いで該粉粒体を網面固
定式風力篩を用いて粗粒を除去するペースト用塩化ビニ
ル系樹脂の製造方法において、網面固定式風力篩として
ケーシング内壁面の表面粗さが5μm以下のものを使用
し、かつ該粉粒体を相対湿度が55%以上〜100%未
満である輸送空気で、網面固定式風力篩の金網面を0.
5〜10m/秒の速度で通過させることを特徴とするペ
ースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法、に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の塩化ビニルを主体とし、これと共重合し
得る不飽和化合物との混合物における塩化ビニルの割合
は、50重量%以上である。共重合し得る不飽和化合物
としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリ
ン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタク
リル酸などの一価不飽和酸類;これらの一価不飽和酸の
アルキルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビ
ニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニ
ルエーテル等のビニルエーテル類;マレイン酸、フマル
酸、イタコン酸などの二価不飽和酸類;これらの二価不
飽和酸のアルキルエステル類;塩化ビニリデン等のハロ
ゲン化ビニリデン;不飽和ニトリル等が挙げられ、これ
らは一種または二種以上用いることができる。また本発
明の塩化ビニル系重合体は、乳化重合または微細懸濁重
合によって製造される。
【0008】本発明において塩化ビニル系重合体の製造
に用いる重合開始剤として、乳化重合の場合は、過硫酸
ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の
過硫酸塩、過酸化水素等の水溶性過酸化物、またはこれ
らの水溶性過酸化物と水溶性還元剤(例えば亜硫酸ナト
リウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウ
ム、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスル
ホキシレートなど)とからなる水溶性レドックス開始剤
等が挙げられ、微細懸濁重合の場合は、アゾビスイソブ
チロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニト
リル、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ
ピバレート等の油溶性開始剤、又はこれらの油溶性開始
剤と前記の水溶性還元剤との組み合わせからなるレドッ
クス開始剤が挙げられる。
【0009】また乳化重合および微細懸濁重合時に用い
られる乳化剤としては、例えば高級アルコール硫酸エス
テル塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)、アルキル
ベンゼンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム
塩)、高級脂肪酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム
塩)、その他のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面
活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられる。これらの
界面活性剤は一種類を用いても良いし、二種以上の併用
も可能である。
【0010】上記の方法で得られる塩化ビニル系重合体
の水性分散液を噴霧乾燥して粉粒体とする。噴霧乾燥機
は、ペースト用塩化ビニル樹脂の製造に用いる周知のも
のでよく、例えば噴霧形式も回転円盤形アトマイザー、
二粒体ノズル型、加圧ノズル型いずれの形式でも良い。
乾燥後の粉粒体の平均粒子径は、通常5〜150μmで
あるが、重合中、または乾燥中などに粉粒体が凝集して
生成した粗大粒子を少量含有することがある。
【0011】本発明方法においては、この粉粒体中に含
まれる粗大粒子を網面固定式風力篩を用いて特定の条件
下で除去することを特徴とする。網面固定式風力篩と
は、例えば「最新粉粒体プロセス技術集成<基礎技術編
>」昭和49年3月15日、第一版第1刷、株式会社産
業技術センター発行、51頁〜68頁「2.ふるい分
け」の項、特に第53頁表2.4のNo.2および57
頁2.3b)に記載があるごとく、網面を垂直に固定さ
せておき、これに気流にのせて粉粒体を供給してふるう
構造の篩である。具体例としては、秦工社のブロワーシ
フター、新東京機械(株)のハイボルター、近畿工業の
エアスクリーン等がある。
【0012】網面固定式風力篩で除去できる粗粒の粒径
は、網の目開きの大きさで決まり、目開きを変更するこ
とで任意の粒径の粗粒を除去できるが、運転時間の経過
とともに静電気等により粉粒体が金網およびケーシング
内壁(特に金網の上流部)へ付着、滞積して効率が低下
するという問題が起こる。本発明において用いる網面固
定式風力篩のケーシング内壁面の表面粗さ(中心線平均
粗さ:JIS B 0601)は5μm以下、好ましく
は3μm以下である。表面粗さが5μmを越えると重合
体粒子がケーシング内壁面に付着、滞積しやすくなる。
表面粗さは、機械研磨、電解研磨、ライニング等により
調整することができる。
【0013】本発明において用いる輸送空気の相対湿度
は、55%以上〜100%未満であり、好ましくは60
%〜95%である。相対湿度が55%未満では、静電気
により付着が発生しやすく、100%を越えると粉粒体
中の水分が多くなり、品質への悪影響が起こる上、粉体
流動性が低下し、付着の発生も多くなる。湿度の調整方
法は、「工場操作シリーズ、No.20調温・調湿編」
(昭和43年11月1日、化学工業社発行)の頁16記
載の加湿装置等いずれでも良いし、大気湿度が上記範囲
であれば特に調湿する必要はない。また温度については
特に調整する必要はないが−5〜50℃の範囲であるこ
とが好ましい。この範囲外では湿度調整が困難となる傾
向がある。
【0014】輸送空気の金網面での平均速度(風量/金
網の開口面積)は、0.5〜10m/秒であり、好まし
くは1〜5m/秒である。平均速度が0.5m/秒未満
では、金網への付着により、金網未通過量が増え篩粉の
効率が低下し、10m/秒を越えると輸送空気のランニ
ングコストが増加したり、粉粒体が壊れる等の弊害が発
生する。また粉粒体の供給速度(供給量/金網の開口面
積)は、0.1〜1.5kg/m2・秒で行うのが好ま
しい。供給速度が0.1kg/m2・秒未満では生産性
が低下し、1.5kg/m2・秒を越えると金網未通過
量が増え、篩分の効率が低下する傾向がある。
【0015】網面固定式風力篩の運転時間が経過すると
ともに重合体粒子が金網に付着または目詰まりを起こす
傾向があるので、本発明においては、金網の裏側に逆洗
用エアーブラシを備えるのが好ましい。逆洗用エアーブ
ラシは、モーターにより回転する中空の棒に幾つかの孔
が金網方向に開いた構造になっており、該中空の棒の長
さは金網の直径にほぼ等しいために、圧力エアーを供給
することによって、金網の全面にわたって、付着または
目詰まりした粉粒体を除去できるようになっている。金
網の材質は、好ましくはステンレス金網であるが、市販
の網なら何でも良く、必ずしも金属でなくても良い。ま
た、平織、綾織、平畳織等の種類は問わない。
【0016】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明
する。ここで行った評価方法は、次に示すとおりであ
る。 (1)ケーシング内壁(金網の上流側)および金網への
付着の有無 運転終了後付着の発生状況を目視で観察した。付着、滞
積が著しい場合は、ゲージにて厚みを測定した。 (2)差圧 網面固定式風力篩の金網の上流側、下流側に差圧計を取
り付け、運転開始2時間後の差圧を測定した。
【0017】(3)金網未通過率 一定運転時間中に発生した金網未通過の粉粒体の重量を
測定し、粉粒体供給量に対する比率を求めた。 (4)平均粒子径 レーザー回折粒径分布測定装置(堀場製作所株式会社
製、LA−500)にフローセルホルダーをセットし、
分散媒として0.1%ポリオキシエチレンソルビタンモ
ノラウレート水溶液約200ミリリットルをバスに入
れ、撹拌、循環させる。回折像のブランクを測定し、次
いで各実施例、比較例で得られた粉粒体(金網通過分)
を少量バスに添加し、30秒間分散させた後、粒径分布
を測定し、得られた粒径分布から平均粒子径(メジアン
径:μm)を算出した。
【0018】<実施例1>播種乳化重合法により塩化ビ
ニル単量体を重合させて塩化ビニル重合体ラテックスを
製造した。用いた重合開始剤は過硫酸カリウム−ピロ亜
硫酸ナトリウムのレドックス系開始剤で、主乳化剤はラ
ウリル硫酸ナトリウムである。反応温度は55℃で、得
られたラテックスの固形分含量は45重量%、ラテック
ス中の平均粒子径は、1.1μmであった。また、生成
ポリ塩化ビニルの平均重合度は1200であった。
【0019】次いで、直胴部の直径が4mである乾燥塔
(チャンバー)に二流体ノズル6本を垂直下向きに配置
した乾燥機を用い、該二流体ノズルから該ラテックスお
よび噴霧用空気を供給し、該ラテックスを微噴霧した。
一方、乾燥用空気が乾燥機上部の整流器を通して乾燥機
内へ供給され、微噴霧された該ラテックス液滴は、乾燥
用空気により乾燥され塩化ビニル重合体の粉粒体が得ら
れた。該粉粒体は乾燥塔下部より排出され、捕集機(コ
レクター)にて分離された。乾燥条件は、乾燥用空気の
入り口温度が160℃、出口温度が55℃、該ラテック
ス流量がノズル1本当たり65kg/Hr、噴霧用空気
流量がノズル1本当たり130kg/Hrであった。
【0020】次いで、乾燥により得られた該粉粒体を網
面固定式風力篩(躍進機械製作所株式会社製)に175
kg/Hr(0.48kg/m2・秒)の供給速度で供
給して篩粉した。該風力篩の金網は、直径60cm、目
開き76μm、線径50μm、開口率36%のものを使
用した。該風力篩のケーシング内壁面は、機械研磨(#
150バフ)を行い表面粗さを4μmとした。
【0021】輸送空気は、金網面での平均速度が3.3
m/秒になるように排風機のダンパーを調節して流量を
調整した。輸送空気の湿度調整は、相対湿度40%の空
気と5kg/cm2Gの水蒸気とをフルコーン型一流体
ノズル(スプレーイングシステム株式会社製:孔径1m
m)5個を通して導入し、導入後の湿度を湿度計(神港
テクノス株式会社製:デジタル温湿度計DFT−500
TH)を用いて測定し、水蒸気導入量を手動バルブで調
整して、輸送空気の相対湿度を60%とした。評価結果
を表1に示す。
【0022】<実施例2および比較例1〜4>実施例1
に記載の粉粒体を用いて、表1のように条件を変えて篩
粉を行った。評価結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】本発明の方法によれば、粗大粒子を含ま
ない、粒径の揃ったペースト用塩化ビニル系樹脂を製造
することができる。また網面固定式風力篩運転の際、ケ
ーシング内壁および金網への塩化ビニル系粉粒体の付着
が起きず、長時間の連続運転が可能であり、生産性に優
れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B07B 4/08 C08J 3/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化ビニル、または塩化ビニルを主体と
    しこれと共重合し得る他の不飽和化合物との混合物を乳
    化重合または微細懸濁重合して得られる塩化ビニル系重
    合体の水性分散液を噴霧乾燥して、該重合体の粉粒体と
    し、次いで該粉粒体を網面固定式風力篩を用いて粗粒を
    除去するペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法におい
    て、網面固定式風力篩としてケーシング内壁面の表面粗
    さが5μm以下のものを使用し、かつ該粉粒体を相対湿
    度が55%以上〜100%未満である輸送空気で、網面
    固定式風力篩の金網面を0.5〜10m/秒の速度で通
    過させることを特徴とするペースト用塩化ビニル系樹脂
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 網面固定式風力篩が金網の裏にエアーブ
    ラシが装着された風力篩である請求項1に記載のペース
    ト用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  3. 【請求項3】 輸送空気の温度が−5〜50℃である請
    求項1または2に記載のペースト用塩化ビニル系樹脂の
    製造方法。
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