JP3505860B2 - 光磁気記録再生方法およびこれに用いる光磁気記録媒体 - Google Patents

光磁気記録再生方法およびこれに用いる光磁気記録媒体

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JP3505860B2 JP19214595A JP19214595A JP3505860B2 JP 3505860 B2 JP3505860 B2 JP 3505860B2 JP 19214595 A JP19214595 A JP 19214595A JP 19214595 A JP19214595 A JP 19214595A JP 3505860 B2 JP3505860 B2 JP 3505860B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は記録情報に応じて照
射する光の単位面積当たりのエネルギーを変調すること
によってデータの記録を行い、偏光されたレーザビーム
によって、磁気光学効果を用いて情報の読み出しを行
う、いわゆる光変調記録方式による光磁気記録再生方法
およびこれに用いる光磁気記録媒体に係わる。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば従来のISOフォーマット
光磁気記録再生装置の分野においては、光源には波長が
680nm(赤色)のレーザダイオードを用いて、記録
容量を従来の4倍とするシステムの規格化が進み商品化
が間近になっているとともに、さらに高転送レート化や
高記録密度化の要望が高まっている。
【0003】上述の要望の実現のためには、光源の波長
をさらに短くすることが最も効果的であり、このような
光源に対応した光磁気記録媒体の開発が急がれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、短波長
のレーザダイオードは原理的に波長が短くなるほど高出
力化が困難になるのに対して、光検出器の感度が短波長
化に伴い低下することから、短波長領域では検出器に入
射する光量を従来よりも大きく、すなわち出力を大きく
しないと充分なS/N(C/N)を得ることができな
い。これに対応するために記録媒体は、記録感度を高く
して低出力でも記録できるようにする一方、再生信号出
力を大きくするために、性能指数を大きくしたり、ある
いは高い再生パワーでも記録が消去されないようにする
必要がある。しかしながら、これら記録感度の向上と再
生信号出力の向上とは、互いに相反するものである。
【0005】このような状況において、これまでは再生
時の特性改善に注目し、例えばPtCo系材料を用いる
ことにより、短波長域における磁気光学効果の増大を図
る等の検討が数多くなされてきた。
【0006】しかし、短波長領域における記録材料の磁
気光学効果の増大だけでは、性能指数の向上は図ること
ができるが、高い記録感度と再生光による記録の書き換
えの抑制とが互いに相反する要因となって残り、システ
ム設計上充分なパワーマージンが得られないでいる。
【0007】本発明はこのような点を考慮してなされた
もので、記録感度の向上かつ再生時の書き換えの防止を
ともに実現できる光磁気記録再生方法および光磁気記録
媒体を提案し、システム設計上充分なパワーマージンを
得ようとするものである。
【0008】上述の課題を解決する目的で、特開平4−
48450号公報および特開平4−61049号等によ
り提案されているように、2層の磁性層を有し、基板側
の磁性層である第1の磁性層のキュリー点が室温におい
て他方の磁性層である第2の磁性層のキュリー点より低
く、また保磁力は逆に第1の磁性層の方が第2の磁性層
より高く、かつ室温で界面磁壁が安定に存在することが
可能な記録媒体を用いて、レーザ光の照射により高温に
なった部分の界面磁壁を消失させて記録磁区を安定化さ
せる光磁気記録方法が提案されている。
【0009】ところが、上述のカー回転角は磁性層のキ
ュリー点が高いほど角度が大きくなり光磁気記録におけ
る再生信号が大きくなるため、このように基板側にキュ
リー点が低い磁性層を配置すると、キュリー点が高い磁
性層を基板側に配置した場合と比較して、再生信号強度
が小さくなってしまう。一方、キュリー点が高く保磁力
が小さい磁性層を基板側に配置した場合は大きな再生信
号強度が得られるが、基板と反対側のキュリー点が低い
磁性層に記録された磁区を転写しなければ記録情報の再
生ができないため、記録の直後にベリファイ(記録の確
認)を行うことが困難になる。このベリファイは記録密
度が高密度になるほど、記録におけるパワーマージンが
減少して書き込みに失敗する可能性が増大することか
ら、高密度になるほどその重要性が大きくなる。
【0010】また、界面磁壁を安定に保持するために
は、通常の反射膜を用いる記録媒体と比較して磁性層の
膜厚をかなり厚く形成する必要がある。磁性層の膜厚が
厚くなると、レーザ光の吸収により磁性層が温度上昇す
る際に、磁性層全体が光の吸収により温度上昇するので
はなく、膜厚方向に熱伝導によって温度上昇するように
なる。このため磁性層の膜厚方向に温度勾配が生じ、レ
ーザ入射側の方が到達温度が高く温度分布も鋭くなる。
従って、レーザ光を照射することにより磁化の向きが反
転する磁性層はレーザ光の入射側に配置することが好ま
しく、再生信号強度を高くするために高キュリー点、低
保磁力の磁性層をレーザ入射側に設けてしまうのは好ま
しくない。
【0011】本発明は、このような課題を解決した上
で、さらに前述のように記録感度の向上かつ再生時の書
き換えの防止をともに実現できる光磁気記録再生方法お
よび光磁気記録媒体を提案し、システム設計上充分なパ
ワーマージンを得ようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、光磁気記録媒
体に対して、光変調によって情報の記録がなされ、磁気
光学効果によって情報の読み出しなされ、光磁気記録
媒体として基板上に垂直磁気異方性を有する少なくとも
第1および第2の磁性層が交換結合して積層された多層
膜構成を有してなり、第1の磁性層は、第2の磁性層よ
り基板側に形成され、第1の磁性層は、第2の磁性層に
比してキュリー点および保磁力がともに高く、膜厚およ
び磁化の大きさがともに小さい磁性層によって構成さ
れ、室温近傍の温度範囲で、外部磁界により第2の磁性
層の磁化のみを反転し界面磁壁を生じさせることがで
き、かつ界面磁壁が外部磁界を取り除いた状態で存在で
き、界面磁壁が存在する状態で、各磁性層のキュリー点
より低く室温近傍の温度範囲より高い温度まで昇温する
ことによって第1の磁性層の磁化のみを反転させて界面
磁壁を消失でき、室温近傍の温度範囲で、外部磁界の印
加によって第2の磁性層の磁化のみを反転して界面磁壁
を消失できるようになされた光磁気記録媒体が用いら
れ、光磁気記録媒体に対する情報の記録および消去を、
界面磁壁が存在する状態において、各磁性層のキュリー
点よりも低く、室温近傍の温度範囲より高い温度まで昇
温して第1の磁性層の磁化のみを反転させ界面磁壁を消
失させることによりなし、光磁気記録媒体に対する情報
記録の再生を、室温近傍の温度範囲において外部磁界の
印加によって第2の磁性層の磁化のみを反転して界面磁
壁を消失させた状態で行うことを特徴とする光磁気記録
再生方法である。
【0013】また本発明は、基板上に垂直磁気異方性を
有する少なくとも第1および第2の磁性層が交換結合し
て積層された多層膜構成を有してなり、第1の磁性層
は、第2の磁性層より基板側に形成され、第1の磁性層
は、第2の磁性層に比してキュリー点および保磁力がと
もに高く、膜厚および磁化の大きさがともに小さい磁性
層によって構成され、室温近傍の温度範囲で、外部磁界
により第2の磁性層の磁化のみを反転し界面磁壁を生じ
させることができ、かつ界面磁壁が外部磁界を取り除い
た状態で存在でき、界面磁壁が存在する状態で、各磁性
層のキュリー点より低く室温近傍の温度範囲より高い温
度まで昇温することによって第1の磁性層の磁化のみを
反転させて界面磁壁を消失でき、室温近傍の温度範囲
で、外部磁界の印加によって上記第2の磁性層の磁化の
みを反転して界面磁壁を消失できるようになされた光磁
気記録媒体である。
【0014】上述の本発明の構成によれば、基板上に垂
直磁気異方性を有する少なくとも第1および第2の磁性
層が交換結合して積層された多層膜構成を有してなり、
第1の磁性層は、第2の磁性層より基板側に形成され、
第1の磁性層は、第2の磁性層に比してキュリー点およ
び保磁力がともに高く、膜厚および磁化の大きさがとも
に小さい磁性層によって構成されることから、光磁気記
録媒体が次の(1)〜(3)に示す特性を有する。 (1)基板側の磁性層のキュリー点が高いため、前述の
ように再生信号強度が大きくなる。 (2)基板側の磁性層の保磁力が高いため、記録を行う
際にレーザ光の照射により磁化の向きが反転する磁性層
が基板側になり、転写を経ないで容易に記録直後のベリ
ファイを行うことができる。 (3)磁化Msと磁性層の膜厚hと界面磁壁エネルギー
σw から、Hw=σw/2×Ms×hと表され、磁性層
に蓄えられたエネルギーに基づく実効的な磁界Hwにつ
いて、Hwは磁性層の膜厚hおよび磁化の大きさMsと
反比例する関係にある。従って、第1の磁性層が第2の
磁性層と比較して、膜厚と磁化の大きさがともに小さい
磁性層で構成することから、Hwの値が相対的に第1の
磁性層は大きく、第2の磁性層は小さくなる(Hw1>
Hw2)。このHwの値の大きさは、磁性層の磁化の反
転の際の実効的な保磁力を左右し、磁化の反転のしやす
さに影響するものである。すなわち第2の磁性層のHw
の値を小さくすることから、後述するように第2の磁性
層が外部磁界の印加による反転が容易になる一方、外部
磁界が印加されていない状態では記録のための温度上昇
によっても第2の磁性層が反転しないようにできるもの
である。
【0015】また、光磁気記録媒体の磁性層について、
室温近傍の温度範囲、すなわち通常の保管状態程度の温
度範囲で、外部磁界(第1の外部磁界)の印加により第
2の磁性層の磁化のみを反転し界面磁壁を生じさせるこ
とができ、かつ界面磁壁が外部磁界を取り除いても存在
できるようにしたことから、第1の外部磁界の印加によ
って第2の磁性層の磁化を反転させ、一方第1の磁性層
の磁化は保持されて界面磁壁を生じさせた状態とするこ
とができ、この状態を外部磁界を除去しても安定して存
在させることができる。
【0016】光磁気記録媒体の磁性層間に界面磁壁が存
在する状態において、各磁性層のキュリー点より低く室
温近傍の温度範囲より高い温度まで昇温することによっ
て、第1の磁性層の磁化のみを反転させて界面磁壁を消
失させることができるようにしたことから、レーザ光を
照射してレーザ光の吸収により昇温させた部分の第1の
磁性層においてその磁化を反転させて、この部分の界面
磁壁を消失させることができる。ここでは、磁性層間に
生じている界面磁壁に蓄えられた界面磁壁エネルギーに
より、第1の磁性層が各磁性層のキュリー点より低い温
度で反転できる。
【0017】さらに室温近傍の温度範囲において外部磁
界(先の第1の外部磁界とは別の第2の外部磁界)の印
加によって第2の記録層の磁化のみを反転させ界面磁壁
を消失させることができるようにしたことから、上述の
昇温させたことにより第1の磁性層の磁化を消失させた
部分以外の部分について、第2の外部磁界の印加により
第2の記録層の磁化のみを反転させて、界面磁壁を消失
させることができる。
【0018】この界面磁壁が存在する状態において、各
磁性層のキュリー点よりも低く、室温より高い温度まで
昇温し、第1の磁性層の磁化のみを反転させて界面磁壁
を消失させることにより、情報の記録および消去を行え
ば、界面磁壁エネルギーを利用して、各磁性層のキュリ
ー点以下において記録や消去を行うことができる。
【0019】情報記録の再生は、室温近傍の温度範囲に
おいて外部磁界、すなわち前述の第2の外部磁界の印加
によって第2の磁性層の磁化のみを反転して界面磁壁を
消失させた状態において行うことにより、この再生時に
おける記録磁区の反転温度は第2の磁性層のキュリー点
と等しくなる。上述のように、記録および消去時の記録
磁区の反転温度は第2の磁性層のキュリー点より低いこ
とから、再生時における記録磁区の反転温度を記録およ
び消去時の記録磁区の反転温度よりも高くすることがで
きる。これにより、再生時に温度上昇などに対する記録
磁区の安定化を図り、従来の場合より高い再生出力とす
ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の概要について説明する。
【0021】1.本発明による光磁気記録再生方法の要
点 本発明による光磁気記録再生方法の要点を、次の1)〜
3)に示す。
【0022】1)界面磁壁エネルギーを利用して、光磁
気記録媒体のキュリー点よりも低い温度で記録および記
録の消去を可能とする。すなわち記録、消去の各プロセ
スが各磁性層のキュリー点以下で行われる。
【0023】2)記録消去時以外は界面磁壁を無くし、
記録磁区が反転する温度を記録消去時の温度よりも高く
することによって、特に温度上昇に対する記録磁区の安
定化を図り、従来よりも高いレーザパワーで再生でき
る。このとき、消去開始パワー(最小消去パワー)より
高い再生パワーであってもよい。
【0024】3)界面磁壁のある状態および界面磁壁の
ない状態は、レーザ照射位置近傍に設けられた外部磁界
発生装置によって得られる外部磁界、すなわち第1の前
述の外部磁界および第2の外部磁界の大きさおよび向き
によって制御される。レーザパワーの制御に比して、外
部磁界の制御に要する時間は一般に長くなる可能性が高
く、このために記録や消去の開始直前および記録や消去
の終了直後は、界面磁壁が存在している可能性が高い。
従って、これら記録や消去の直前直後の状態において
は、各種サーボ信号とプリピット情報が得られるものと
し、かつ消去開始パワー(最小消去パワー)よりも低い
再生パワーとする過程を設けることによって誤消去を防
止して、界面磁壁がなくなった時点で、あるいは記録さ
れたデータの再生が必要になった時点で、前述の相対的
に高い再生パワーとするという具合に、再生パワーを異
なる2値に制御する。
【0025】2.本発明による光磁気記録媒体 次に本発明による光磁気記録媒体について説明する。
【0026】図1は、上述の本発明による光磁気記録媒
体の一例の概略断面図を示す。本発明においては、少な
くとも交換結合した2つの磁性層を有する光磁気記録媒
体を構成する。図1において、この光磁気記録媒体14
は、例えばポリカーボネート樹脂等よりなる透明な基板
11に、例えばSiNよりなる誘電体層12、第1の磁
性層1、第2の磁性層2、誘電体層12、例えばAlよ
りなる高熱伝導率層(ヒートシンク層)13が積層され
た構造からなり、この第1の磁性層1と第2の磁性層2
とが交換結合した構造をなす。
【0027】この図1に示したような光磁気記録媒体
は、前述の光磁気記録再生方法に適用するものであり、
次の1)〜8)に示す特徴を有するものとする。 1)垂直磁気異方性を有する2層以上の磁性層が交換結
合している磁性多層膜を有する。 2)基板側の磁性層(第1の磁性層1)のキュリー点
を、基板と反対側の磁性層(第2の磁性層2)のキュリ
ー点より高くする。 3)第1磁性層1の保磁力を、第2の磁性層2の保磁
力より高くする。 4)第1の磁性層1の膜厚を、第2の磁性層2の膜厚よ
り薄くする。 5)第1の磁性層1の磁化の大きさを、第2の磁性層2
の磁化の大きさより小さくする。 6)室温近傍の温度範囲で外部磁界により第2の磁性層
2の磁化のみを反転し界面磁壁を生じさせることが可能
で、かつ界面磁壁が外部磁界を取り除いても存在可能と
する。 7)界面磁壁が存在する状態において、各磁性層のキュ
リー点より低く室温より高い温度まで昇温することによ
って、第1の磁性層1の磁化のみを反転させて界面磁壁
を消失させることができる。 8)室温近傍の温度範囲において外部磁界によって第2
の磁性層2の磁化のみを反転し界面磁壁を消失させるこ
とが可能とする。
【0028】これらをもとに、本発明による光磁気記録
再生方法およびこれに用いる光磁気記録媒体についてさ
らに詳しく説明する。
【0029】本発明による光磁気記録再生方法を実施す
る装置は、例えば図2にその要部の模式図を示すよう
に、本発明構成の光磁気記録媒体によるディスク15の
下にそれぞれ第1の外部磁界Hex1および第2の外部磁
界Hex2の印加を行う、第1の外部磁界発生装置16a
および第2の外部磁界発生装置16bが配置され、上方
にある光源からディスク15上にレーザ光Lを照射し
て、信号の記録及び再生が行われる構成とされる。ディ
スク15上のレーザ光Lの照射位置は、第1の外部磁界
発生装置16aと第2の外部磁界発生装置16bとの間
に位置するように配置されている。
【0030】第1の外部磁界発生装置16aおよび第2
の外部磁界発生装置16bは、例えば永久磁石や電磁石
により構成し、印加する磁界の向きを反転させたり、印
加する磁界の大きさを変えられるようにする。永久磁石
で印加する磁界の大きさを変えるには、例えば光磁気媒
体との距離を可変できるようにすればよい。
【0031】図3は、本発明の光磁気記録再生方法にお
ける光磁気記録媒体内の各記録消去過程の領域をI〜VI
の領域で示した模式図である。以下に、本発明の光磁気
記録再生方法における、最も特長的で重要な部分である
記録および消去の方法について、図3中のI〜VIの各領
域に対応した各磁性層の磁化の変化に基づいて説明す
る。
【0032】図3において、ディスク15は左方から右
方に回転進行するもので、I〜VIの各領域は次に示す過
程を表す。外部磁界発生装置すなわち第1の外部磁界発
生装置16aおよび第2の外部磁界発生装置16bから
はそれぞれ第1の外部磁界Hex1(図3では下向き)、
第2の外部磁界Hex2(図3では上向き)が発生し、デ
ィスク15に印加される。Iは初期化過程で、第1の外
部磁界発生装置16aからの第1の外部磁界Hex1が印
加され、記録の初期化がなされる。IIは初期化状態でI
の状態から第1の外部磁界Hex1が除去されるが、初期
化された状態はそのまま保持される。III は記録過程
で、レーザ光Lの照射により信号の記録がなされる。IV
は冷却化過程で、レーザ光Lの照射を終えて照射された
箇所が冷却される。Vは転写過程で、第2の外部磁界H
ex2の印加の下で、記録の転写がなされる。VIは安定化
過程で、第2の外部磁界Hex2が除去された状態で、記
録が保持されている。
【0033】記録を消去する場合には、第1の外部磁界
Hex1の向きが記録する場合と反対になる。さらにIII
記録過程が記録消去過程となり、レーザ光Lの照射に
より記録磁区を反転した後に冷却することにより、第2
の外部磁界Hex2の印加による転写は行わなくとも記録
の消去がなされる。
【0034】本発明方法においては、光磁気記録媒体例
えばディスク15の各磁性層の磁気特性の組み合わせに
よって多くの場合が考えられる。これらの組み合わせに
ついて詳しく述べるに先立ち、本発明の光磁気記録再生
方法に好ましいと思われる磁性層の磁気特性について説
明する。
【0035】本発明による光磁気記録方法において、情
報の記録を行う際には、光磁気記録媒体の積層した磁性
層の間に界面磁壁が存在していなければならない。この
界面磁壁が存在する状態を実現することと、さらにこの
状態を室温近傍から記録温度領域までの範囲で安定化す
ることが必要である。
【0036】さらに以下に本発明による光磁気記録媒体
に対して、上述の各過程で求められる特性について説明
する。
【0037】初期化過程において、外部磁界Hex1によ
って反転する磁性層(以後初期化層(N層)とする)
は、記録時の磁化の方向の基準となる層であり、記録時
には初期化層Nの磁化方向が温度や周囲の磁界の変動に
よって変化しないことが必要である。
【0038】従って、初期化層Nにおいては、記録温度
範囲(室温RT〜初期化層のキュリー点TcN)では、
温度上昇に伴う初期化層Nの保磁力(HcN)の減少の
度合いが少ないか、あるいは温度上昇により保磁力Hc
Nが増加することが必要である。
【0039】一般に垂直磁気異方性を有する磁性層が、
遷移金属−希土類金属合金組成からなる場合には、磁性
層全体の磁化の向きおよび大きさは、合金内部の遷移金
属原子(TM)のスピンの向き・大きさと希土類金属原
子(RE)のスピンの向き・大きさとの関係で決定され
る。これらのスピンは、合金内での相互作用によって向
きが必ず逆になっている。従って、両スピンの大きさが
等しいときには合金外部に現れる磁化は0となり、両ス
ピンの大きさが異なるときには、合金外部に現れる磁化
の向きは、いずれか大きいスピンの向きに一致し、その
大きさは両スピンの大きさの差に等しい。
【0040】この両スピンの大きさが異なるとき、室温
において強度の大きいスピンを有する方をとって、その
希土類金属のスピンが優勢な合金組成をRErich、
遷移金属のスピンが優勢な合金組成をTMrichと称
する。
【0041】また、磁性層を構成する遷移金属−希土類
金属合金の組成によっては、室温とキュリー点との間
に、保磁力が無限大に増加してまた降下する特性を持つ
場合がある。この保磁力が無限大になる温度を補償温度
(Tcomp. )と呼ぶ。この補償温度においては、希土類
金属および遷移金属それぞれの副格子磁化の大小関係で
決まる磁化の向きが、補償温度を境にして反転する特性
を有する。この補償温度においては上述の遷移金属元素
のスピンの大きさと重希土類元素のスピンの大きさが等
しくなり、合金外部に現れる磁化が0となっている特徴
を有する。
【0042】そして補償温度は、合金中の希土類金属
(RE)の増加に伴い高くなるものであり、TMric
hの組成においては、補償温度が室温以下となる。RE
richの組成においてはREの比率により補償温度が
決まり、キュリー点より低い場合と、キュリー点より高
い場合(実際には補償温度がない場合)に分類される。
【0043】TMrichの組成においては、温度の上
昇に伴い保磁力が急激に減少する。一方、RErich
の組成においては温度の上昇に伴う保磁力の減少が少な
く、補償温度がキュリー点より低い場合には補償温度に
近づくにつれて保磁力が増加する。
【0044】以上のことから、初期化層Nについてその
安定性を考えた場合に、保磁力HcNが温度上昇によっ
ても急変しない、補償温度が室温以上である組成すなわ
ちRErichの組成が好ましい。
【0045】一方、初期化層(N層)と対向して設けら
れた磁性層(以後記録層(R層)という)は、初期化過
程および安定化過程の行われる温度範囲で磁化が反転し
なければ、その組成などを限定する必要はないが、初期
化過程および安定化過程では従来の光磁気記録の場合よ
り比較的大きな外部磁界が働くために、この磁界の下で
も安定に動作することを保証することが重要である。
【0046】前述のように、初期化過程は界面磁壁が生
じる過程であり、安定化過程は界面磁壁が消失する過程
である。ここでそれぞれの過程で必要な外部磁界の大き
さHex1およびHex2は、界面磁壁エネルギーに相当す
る分だけ異なり、初期化過程の方がより大きい外部磁界
を必要とする。すなわちHex1>Hex2である。従っ
て、光磁気記録媒体が最も大きな外部磁界にさらされる
のは初期化過程であり、このとき記録層Rの反転を防止
し界面磁壁を安定化する組成が好ましい。
【0047】ところで、前述した複数の垂直磁気異方性
を有する磁性層からなる積層膜を含有する光磁気記録媒
体においては、室温近傍から記録温度までの温度範囲に
おいて、それぞれの磁性層における磁化の方向が同じ向
きのときが安定であるパラレルタイプ(Pタイプ)と、
磁化の方向が互いに逆向きのときが安定であるアンチパ
ラレルタイプ(Aタイプ)との2つのタイプがある。
【0048】初期化過程で記録層Rの反転を防止し、界
面磁壁が外部磁界Hex1の存在下でより安定化するため
には、初期化層Nと記録層Rのそれぞれの磁化の向きが
反対であるとき、すなわち室温において初期化層Nと記
録層Rにおける希土類元素の副格子磁化と遷移金属元素
の副格子磁化との大小関係が互いに異なるときが安定で
ある、アンチパラレルタイプの記録媒体となる組成であ
ることが望ましい。アンチパラレルタイプの記録媒体と
なる組成であれば、初期化過程において初期化層Nの磁
化と記録層Rの磁化が共に外部磁界Hex1と同じ向きに
なった状態が界面磁壁が存在する状態になるため、外部
磁界Hex1の存在下で界面磁壁がより安定化する。
【0049】従って、具体的には初期化層NがREri
chの組成のときは記録層RをTMrichの組成に
し、初期化層NがTMrichの組成のときは記録層R
をRErichの組成に選定することが好ましい。
【0050】光磁気記録媒体上における記録層Rと初期
化層Nの配置は、保磁力の大きい方を記録層R、保磁力
の小さい方を初期化層Nとすることから、図1に示した
断面構成図において、第1の磁性層1が記録層Rで第2
の磁性層2が初期化層Nである構成となる。
【0051】従って、第1の磁性層1と第2の磁性層2
において、希土類元素の副格子磁化と遷移金属元素の副
格子磁化との室温での大小関係が異なるアンチパラレル
タイプの光磁気記録媒体を構成するのが好ましいことに
なる。
【0052】ところで、記録層Rの補償温度(TcompR
)については、記録層Rの保磁力HcRと記録層Rに
蓄えられたエネルギーに基づく実効的な磁界HwRに対
して、記 録温度領域でHcR−HwR>0が成立しな
ければならないので、この記録温度 領域で記録層Rの
補償温度(TcompR )が存在するとHcR−HwR<0
となる温度が存在しやすくなることから、記録層Rにつ
いては、記録温度範囲に補償温度 (TcompR )が存在
しないことが好ましい。
【0053】また、前述のように初期化層NはREri
chの組成が好ましいことから、初期化層NがREri
chで記録層RがTMrichの組成という組み合わせ
がより好ましい組み合わせとなる。このとき第1の磁性
層1(記録層R)の補償温度は室温より低く(TcompR
<RT)、第2の磁性層2(初期化層N)の補償温度は
室温より高くなる(TcompN >RT)。
【0054】本発明に用いる光磁気記録媒体の構成は多
様であるが、ここでは媒体の構成の一例として、前述の
本発明に用いる光磁気記録媒体の特性に加えて、さらに
初期化層Nの補償温度がなく、記録層Rの補償温度が室
温より低い(TcompR <RT)場合について説明する。
図4A〜図4Dにこの場合の各磁性層の磁気特性の温度
依存性のグラフを示す。また、図5A〜図5Gにこの場
合の記録過程の模式図を示す。
【0055】図4中において、HwNおよびHwRは、
前述のようにそれぞれ初期化層と記録層に蓄えられたエ
ネルギーに基づく実効的な磁界を示し、各層の磁化の大
きさ、層の厚さ、および界面磁壁エネルギーに依存する
ものである。またTthR は記録層の外部磁界がない状態
での反転開始温度を示す。
【0056】このHw(HwN,HwR)値は、磁化M
sと磁性層の膜厚hと界面磁壁エネルギーσw から、H
w=σw /2×Ms×hと表され、これらの値Ms,
h,σ w および保磁力Hcを制御することによって、あ
る程度反転開始温度TthR を制御することが可能であ
る。従って本発明により膜厚hと磁化Msの値を、第1
の磁性層1すなわち記録層Rが第2の磁性層2すなわち
初期化層Nより小さくなるように選定することにより、
hおよびMsと反比例するHwの値について、HwR>
HwNとなる。このように初期化層Nの膜厚hと磁化M
sの値を大きくすればHwNを小さい値とすることがで
き、記録温度範囲においてHcN−HwN>0が成り立
ち、記録時に温度上昇によりHcN−HwN<0となっ
て初期化層Nの反転が生じる現象を防止することができ
る。また、HcN<HcRかつHwN<HwRであるか
らHcN+HwNが小さい値となるので、第1の外部磁
界Hex1および第2の外部磁界Hex2の印加による初期
化層Nの反転が行われやすくなる。
【0057】またこの例では、記録層RがTMrich
の組成、初期化層NがRErichの組成である。この
場合の記録媒体について、第1の外部磁界Hex1が印加
される前の初期化を行う前の状態は、図5Aに示すよう
に、記録層Rと初期化層Nとの間に界面磁壁がなく、磁
化Msの向きは互いに反対でアンチパラレルタイプの記
録媒体を構成し、遷移金属の副格子磁化の向きMtがそ
ろっている(図5Aでは下向き)状態である。
【0058】図5A〜図5Gを用いて、この場合の記録
の方法について説明する。 I)初期化過程(図5A→図5B) この過程は、室温RTから記録層Rの反転温度、すなわ
ち記録消去開始温度(図4Aおよび図4Bに示すTthR
)までの温度範囲において行われ、第1の外部磁界He
x1が存在する。第1の外部磁界Hex1の印加により、
初期化層Nが反転し、磁化Ms、遷移金属の副格子磁化
Mtが共に向きが反転して、図5Bに示すように記録層
Rとの間に界面磁壁Wが生じる。初期化のために印加さ
れる第1の外部磁界Hex1は、この温度範囲でHcN+
HwN<Hex1を満たすように選定される。この場合
は、図5Aに示すように、光磁気記録媒体が室温近傍に
おいて磁化の向きが反対である方が安定なアンチパラレ
ルタイプであるために、図5Bに示すように界面磁壁W
が存在する状態では、各磁性層の磁化Msの向きがいず
れも第1の外部磁界Hex1と同じ向きとなる。この状態
は非常に安定な状態であり、記録層Rが反転して界面磁
壁Wが消失することはない。
【0059】II)初期化状態(図5C) IIの状態では、温度が室温RTから記録層Rの反転温
度、すなわち記録消去開始温度(TthR )までの温度範
囲にあり、第1の外部磁界Hex1が除去された状態であ
る。この状態では初期化を行った全ての領域で界面磁壁
Wが存在するが、図4A〜図4Dからわかるように、H
cN−HwN>0、HcR−HwR>0が成立するの
で、界面磁壁Wは安定して存在することができる。
【0060】III )記録過程(図5C→図5D) この過程は、記録媒体の温度が記録層Rの反転温度すな
わち記録消去開始温度(TthR )近傍の範囲にあり、外
部磁界が存在しない。ここでは記録を行うために、記録
を行う箇所の記録媒体にレーザ光Lの照射が照射され、
記録媒体の温度が上昇する。記録媒体の温度の上昇に伴
って、図4Bに示すようにHcR−HwRの値が変化
し、TthR を越えるとHcR−HwR<0が成立し、記
録層Rの磁化Msの向きが反転し、記録が行われる。こ
の温度領域ではHcN−HwNは常に正の値となってい
るため、初期化層Nが反転して界面磁壁Wが消失するこ
とはない。
【0061】IV)冷却過程(図5D→図5E) この過程では、III )の過程でレーザー光Lの照射によ
ってTthR 以上に昇温された部分の界面磁壁Wは消失
し、それ以外の部分は界面磁壁Wが存在しており、初期
化層N層の磁化Msは全て同じ向きのままとなってい
る。ここでは、II)の過程と同様に界面磁壁Wが存在す
る箇所においてHcR−HwRとHcN−HwNとが共
に正の値をとるので、界面磁壁Wが安定に存在できる。
【0062】V)転写過程(図5E→図5F) この過程では、温度が室温近傍にあり、第2の外部磁界
Hex2が存在する。第2の外部磁界Hex2は、HcN−
HwN<Hex2を満足し、向きは第1の外部磁界Hex1
と反対である。IV)の冷却化過程で界面磁壁Wが消失せ
ずに残存した部分の初期化層Nを、この第2の外部磁界
Hex2により反転させ、記録媒体上の全ての界面磁壁W
を消失させ、記録磁区を安定化させる。ただし、未記録
部分の記録層Rが反転することによって界面磁壁Wが消
失することを防止するように、HcR−HwR=Hex2
となる温度TthR よりも低い温度でこの過程が行われる
必要がある。
【0063】IV)安定化過程(図5F→図5G) この過程では第2の外部磁界Hex2が除去され、このと
き先の界面磁壁Wが消失した状態が保たれる。これによ
り記録磁区が安定化され、外部磁界が加えられない限
り、高い再生パワーを照射しても記録磁区の破壊が起こ
りにくくなる。
【0064】記録の消去過程は、記録過程と反対の方向
に外部磁界Hex1を加えて、界面磁壁Wがある状態を実
現し、レーザ光Lを連続あるいはパルス照射することに
より記録の消去を行うもので、本質的には記録過程と同
じである。
【0065】実際に図4および図5に示した例では、図
6A〜図6Dに消去の過程の模式図を示すように記録の
消去を行う。まず、図6Bに示すように初期化過程にお
ける第1の外部磁界Hex1と向きが反対の第1の外部磁
界Hex1´を印加して、記録を消去したい領域の初期化
層Nを反転させて、この領域に界面磁壁Wを生じさせ
る。この後、図示しないが外部磁界Hex1´を除くが、
界面磁壁Wが生じた状態は保たれる。
【0066】次に図6Cに示すように、この領域にレー
ザ光Lを照射して、界面磁壁エネルギーにより記録層R
を反転させ、界面磁壁Wを消失させる。この後はそのま
ま冷却すれば、図6Dに示すように図5Aと同じ最初の
状態になり記録の消去が行われる。従って、消去の際に
は転写過程は必要としない。
【0067】上述のMs,Mt,Hex1およびHex2の
向きは、これらの向きの組み合わせが合っていれば、図
5および図6に示した場合と全て逆方向である構成とし
てもよく、その場合も同様にして記録および消去が行わ
れる。
【0068】上述の初期化過程から安定化過程までの各
過程において、初期化層Nおよび記録層Rの特性が満た
す関係式は、次の通りである。 I)初期化過程 II)初期化状態 HcN+HwN<Hex1かつHcR−HwR>Hex1 HcN−HwN>0 が室温近傍で同時に成立していること。 III )記録過程 HcR−HwR<0かつHcN−HwN>0 がTrthR<T<TcNで成立していること。 IV)冷却過程 HcR−HwR>0かつHcN−HwN>0 がRT<T<TrthRで成立していること。 V)転写過程 VI)安定化過程 HcN−HwN<Hex2 HcR−HwR>Hex2 HcN+HwN>Hex2 の関係が同時に成立していること。
【0069】上述の例では記録層Rと初期化層Nとが図
4に示すような磁気特性を有する例であったが、各磁性
層が前述の本発明による光磁気記録媒体の特性を有し、
かつこの各磁性層の特性の条件を満たしていれば、同様
にして記録および記録消去ができる。
【0070】レーザ光Lの照射は基板側すなわち記録層
R側から照射される。このときキュリー点の高い記録層
R側からレーザ光を照射するために、良好な再生信号が
得られることになる。
【0071】ここまでの説明では、すべてHc−Hwで
表される反転磁界のみを用いて説明してきたが、各磁性
層の膜厚や磁化、保磁力の温度特性やそれらの大小関係
によっては、Hc−Hwで表すことのできない過程を経
て磁化が反転する場合もある(T.Kobayashi et al.,Jap
anese Journal of Applied Physics,Vol.20,No.11,p208
9-2095(1981)参照)。しかし、この場合にも記録過程に
おいて初期化層Nの磁化が外部磁界Hexに対して同一方
向を向いてさえいれば、記録層Rの反転の過程によらず
正しい記録がなされる。ただし、このときの反転開始温
度は、先に説明した値とは多少異なることもある。
【0072】
【実施例】次に、本発明の光磁気記録再生方法と光磁気
記録媒体の具体的な実施例について説明する。
【0073】本実施例の光磁気記録媒体は、図10にそ
の断面図を示すように、第1の磁性層21、第2の磁性
層22、第3の磁性層23の異なる3つの磁性層からな
る。原理的には本発明の光磁気記録再生方法は、2つの
磁性層で実現可能であるが、2つの磁性層間にさらに中
間磁性層を付加することにより、界面磁壁エネルギーを
制御することが可能となり、記録特性や転写特性の向上
などが容易にできるものである。このような構成の光磁
気記録媒体は例えば、特開昭63−117354号等に
開示されているように、光強度変調オーバーライト用の
記録媒体として知られているが、本発明においては記録
媒体を用いた記録再生方法が、これらの従来方法とは全
く異なり、光磁気記録媒体の基本構成は類似するが、磁
気特性や組成の最適な構成は異なるものである。特に本
発明においては、TcR>TcNかつHcR>HcNで
あることが重要であり、この点において従来例とは全く
異なる記録媒体である。
【0074】(実施例1)図7に光磁気記録媒体の模式
断面図を示すように、ポリカーボネート樹脂からなる基
板11上にSiN膜からなる誘電体層12を形成した上
に、DCマグネトロンスパッタ法により、3層の磁性層
からなる磁性層30を、第1の磁性層1(すなわち記録
層R)としてGdTbFeCo膜を30nmの厚さに、
中間磁性層22としてGdFeCo膜を10nmの厚さ
に、第2の磁性層2(すなわち初期化層N)としてGd
TbFeCo膜を60nmの厚さにそれぞれ連続形成し
た。さらにその上にSiN膜からなる誘電体層12、A
lからなる高熱伝導率層13を形成し光磁気記録媒体2
5を作製した。
【0075】各磁性層30の組成を、第1の磁性層1
(記録層R)のGdTbFeCo膜は(Gd0.25Tb
0.750.21(Fe0.7 Co0.3 0.79(キュリー点37
0℃)、中間磁性層22のGdFeCo膜はGd
0.27(Fe0.95Co0.050.73(キュリー点290
℃)、第2の磁性層2(初期化層N)のGdTbFeC
o膜は(Gd 0.8 Tb0.2 0.25(Fe0.85Co0.15
0.75(キュリー点250℃)としたとき、記録開始温度
(Trth)は120℃となった。このとき室温でのH
cR+HwRの値は3.5kOeであり、HcR−Hw
R>0であった。また室温におけるHcN−HwNおよ
びHcN+HwNは、20kOe以下の外部磁界Hexで
は測定できなかった。
【0076】次に本発明の実施例との比較を行うため
の、光磁気記録媒体の例を示す。いずれの場合も磁性層
が単層である光磁気記録媒体の例である。
【0077】(比較例1)図8に従来の光磁気記録媒体
の例の断面図を示すように、ポリカーボネート基板11
上にDCマグネトロンスパッタ法により、SiN膜から
なる誘電体層12、Tb0.21Fe0.79からなる磁性層2
7、SiN膜からなる誘電体層12、Al膜からなる高
熱伝導率層13を順次形成し、光磁気記録媒体35を作
製した。磁性層(TbFe層)27の厚さは、前述の実
施例1における全磁性層30の厚さと同一(100n
m)とした。この光磁気記録媒体の記録開始温度は、1
30℃で磁性層27のTb0.21Fe 0.79のキュリー点と
ほぼ一致した。また室温での保磁力Hcの値は、20k
Oe以上であった。
【0078】(比較例2)この例は比較例1と同様に磁
性層を単層とした例である。図8に示す光磁気記録媒体
の断面図において、磁性層27をTb0.21(Fe0. 7
0.3 0.79からなる磁性層とする外は実施例1と同様
にして光磁気記録媒体35を作製した。磁性層27の厚
さも比較例1と同じく、前述の実施例における全磁性層
30の厚さと同一(80nm)とした。この光磁気記録
媒体の記録開始温度は、280℃で磁性層27のTb
0.21(Fe0.7 Co0.3 0.79のキュリー点とほぼ一致
した。また室温での保磁力Hcの値は20kOe以上で
あった。
【0079】上述の実施例と比較例1および比較例2の
それぞれの光磁気記録媒体について、次の手法で記録特
性の評価を行った。
【0080】光源の波長が680nm、NA=0.55
である光学系を有する光磁気記録再生装置を用い、線速
度12.8m/sでマーク長0.82μmの磁区を記録
する実験を行い、このときの記録開始パワーPth(パル
ス幅40ns)、消去開始パワーPeth 、最大再生パワ
ーPrmaxを求めた。上述の実施例については記録消
去磁界の大きさを3.5kOeとし、各比較例について
は記録消去磁界の大きさを300Oeとした。またPr
maxの測定においては、各比較例については外部磁界
を取り除いて、実施例については安定化過程を経た後に
それぞれ測定を行った。
【0081】
【0082】この測定の結果から、本発明を適用するこ
とにより、従来の光磁気記録媒体より高い記録感度と、
再生パワーに対する高い耐久性を有する光磁気記録媒体
とすることができることがわかった
【0083】また上述の実施例では界面磁壁が存在する
状態の消去開始パワーPethが非常に低いことから、
記録消去の準備段階である界面磁壁の生成の際に記録磁
区を誤って消去するおそれがあるため、記録ないしは消
去を行う直前および直後の一定時間内において、通常の
記録の再生時のパワーおよび最小消去パワーより低いパ
ワーで再生を行う過程を設ける必要がある。従って、界
面磁壁の有無に応じて再生パワーを異なる2値に制御す
ることが不可欠である。
【0084】再生信号のキャリアレベルは、実施例では
比較例1より5dB以上大きい。これは実施例の場合、
各比較例よりも高いパワーで再生可能であり、また読み
出し側の磁性層(高保磁力層)のキュリー点が比較例の
場合より高くカー回転角が大きいことによるものであ
る。
【0085】また比較例2のように、単層膜の磁性層2
7で実施例と同等の再生信号強度や再生パワーへの耐久
性を得るためには、記録感度を大きく犠牲にしなければ
なさないことがわかる。
【0086】上述の実施例においては、各磁性層21、
22、23の材料をGdTbFeCo,TbFeCo,
GdTbFeCoとしたが、磁性層を積層したことによ
る特性が所定の条件を満たしていれば、磁性層の材料は
限定されるものではなく、既知の光磁気記録材料、例え
ば希土類−遷移金属アモルファス合金やPtCo系材料
等を用いてよい。また、耐食性や繰り返し記録消去に対
する信頼性を向上するために、Cr,Ti,Al,B,
C等の元素を少量添加してもよい。特に良好な磁気特性
を得るためには、磁性層が希土類元素としてGdおよび
Tb、遷移金属元素としてFeおよびCoを含むことが
好ましい。
【0087】基板の材料はポリカーボネート樹脂を用い
たが、ポリオレフィン等の樹脂やガラス等の材料や、ガ
ラスエッチング基板等を用いることもできる。
【0088】尚、上述の実施例は本発明の一例であり、
本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取
り得る。
【0089】
【発明の効果】上述の本発明によれば、高い記録感度お
よび消去感度が得られる。従って、記録パワーを低く抑
えることができ、これによって、光源としてより短波長
のレーザダイオードの使用が可能となる。また記録の安
定化が図られるので、大きな読み出しパワーでも記録の
消去がされないことから、再生出力の向上が図られる。
それにより、大きな光出力を得ることが困難な短波長の
レーザダイオードを用いた光磁気記録再生装置において
も充分な記録が可能となり、また再生パワーの向上が図
られパワーマージンを確保できる。
【0090】また、記録時の線速が非常に速くデータ転
送レートが大きい光磁気記録再生装置においても、充分
なパワーマージンを確保できる。従って、従来より安定
して正確な光磁気記録および再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光磁気記録媒体の一実施例の概略
断面図である。
【図2】本発明による光磁気記録媒体を適用する光磁気
記録再生装置の要部の模式図である。
【図3】本発明の光磁気記録再生方法における光磁気記
録媒体内の各記録消去過程の領域を示す模式図である。
【図4】本発明による光磁気記録媒体の一例における各
磁性層の磁気特性の温度依存性のグラフである。
【図5】図4に示す場合の光磁気記録媒体に対する記録
の各過程の模式図である。
【図6】図4に示す場合の光磁気記録媒体に対する消去
の各過程の模式図である。
【図7】本発明による光磁気記録媒体の一実施例の断面
図である。
【図8】従来の光磁気記録媒体の例の断面図である。
【符号の説明】
1 第1の磁性層 2 第2の磁性層 11 基板 12 誘電体層 13 高熱伝導率層 14、25、35 光磁気記録媒体 15 ディスク 16a 第1の外部磁界発生装置 16b 第2の外部磁界発生装置 L レーザ光 22 中間磁性層 27、30 磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 11/10 - 11/105

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光磁気記録媒体に対して、光変調によっ
    て情報の記録がなされ、磁気光学効果によって上記情報
    の読み出しなされ、 上記光磁気記録媒体として、 基板上に、垂直磁気異方性を有する少なくとも第1およ
    び第2の磁性層が交換結合して積層された多層膜構成を
    有してなり、 上記第1の磁性層は、上記第2の磁性層より上記基板側
    に形成され、 上記第1の磁性層は、上記第2の磁性層に比してキュリ
    ー点および保磁力がともに高く、膜厚および磁化の大き
    さがともに小さい磁性層によって構成され、 室温近傍の温度範囲で、外部磁界により上記第2の磁性
    層の磁化のみを反転し界面磁壁を生じさせることがで
    き、かつ該界面磁壁が上記外部磁界を取り除いた状態で
    存在でき、 該界面磁壁が存在する状態で、上記各磁性層のキュリー
    点より低く上記室温近傍の温度範囲より高い温度まで昇
    温することによって上記第1の磁性層の磁化のみを反転
    させて上記界面磁壁を消失でき、 上記室温近傍の温度範囲で、外部磁界の印加によって上
    記第2の磁性層の磁化のみを反転して上記界面磁壁を消
    失できるようになされた光磁気記録媒体が用いられ、 該光磁気記録媒体に対する情報の記録および消去を、上
    記界面磁壁が存在する状態において、上記各磁性層のキ
    ュリー点よりも低く、上記室温近傍の温度範囲より高い
    温度まで昇温して上記第1の磁性層の磁化のみを反転さ
    せ上記界面磁壁を消失させることによりなし、 上記光磁気記録媒体に対する上記情報記録の再生を、上
    記室温近傍の温度範囲において外部磁界の印加によって
    上記第2の磁性層の磁化のみを反転して上記界面磁壁を
    消失させた状態で行うことを特徴とする光磁気記録再生
    方法。
  2. 【請求項2】 上記記録消去を行う直前直後の一定時間
    内において、上記記録の再生時のレーザパワーおよび最
    小消去パワーより低いパワーで再生を行う過程を設ける
    ことを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録再生方
    法。
  3. 【請求項3】 基板上に、垂直磁気異方性を有する少な
    くとも第1および第2の磁性層が交換結合して積層され
    た多層膜構成を有してなり、 上記第1の磁性層は、上記第2の磁性層より上記基板側
    に形成され、 上記第1の磁性層は、上記第2の磁性層に比してキュリ
    ー点および保磁力がともに高く、膜厚および磁化の大き
    さがともに小さい磁性層によって構成され、 室温近傍の温度範囲で、外部磁界の印加により上記第2
    の磁性層の磁化のみを反転し界面磁壁を生じさせること
    が可能で、かつ該界面磁壁が上記外部磁界を取り除いた
    状態で存在可能でき、 該界面磁壁が存在する状態で、上記各磁性層のキュリー
    点より低く上記室温近傍の温度範囲より高い温度まで昇
    温することによって上記第1の磁性層の磁化のみを反転
    させて上記界面磁壁を消失でき、 上記室温近傍の温度範囲で、外部磁界の印加によって上
    記第2の磁性層の磁化のみを反転して上記界面磁壁を消
    失できるようになされたことを特徴とする光磁気記録媒
    体。
  4. 【請求項4】 上記第1の磁性層と上記第2の磁性層と
    において、互いに室温における希土類元素の副格子磁化
    と遷移金属元素の副格子磁化との大小関係が異なること
    を特徴とする請求項3に記載の光磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 上記第1の磁性層の補償温度が室温より
    低く、かつ上記第2の磁性層の補償温度が室温より高い
    ことを特徴とする請求項4に記載の光磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記第1の磁性層および上記第2の磁性
    層がともに、少なくとも希土類元素としてガドリニウム
    およびテルビウムを含んでなり、遷移金属元素として鉄
    およびコバルトを含んでなることを特徴とする請求項4
    に記載の光磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記第1の磁性層および上記第2の磁性
    層がともに、少なくとも希土類元素としてガドリニウム
    およびテルビウムを含んでなり、遷移金属元素として鉄
    およびコバルトを含んでなることを特徴とする請求項5
    に記載の光磁気記録媒体。
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