JP3505633B2 - 表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒子とその製造方法 - Google Patents

表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒子とその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非晶質リン酸カルシ
ウム凝集粒子と表面処理剤とを分散混合して表面処理し
た非晶質リン酸カルシウム粒子とその製造方法に関し、
更に詳しくは化粧料、塗料、インキ、トナー、機械用グ
リース、プラスチック、食品、セラミックス等の充填剤
もしくは添加剤として使用することで各種の基材との親
和性、分散性、流動性、付着性等を改質することができ
るものである。
【0002】
【従来の技術】ハイドロキシアパタイト〔式:Ca
10(PO46(OH)2〕は歯や骨の無機質を組成が類
似しており、これらのハイドロキシアパタイトを焼成し
た焼成体は人工歯根等に使用しうるとされている。ま
た、ハイドロキシアパタイトと類似する組成である非晶
質リン酸カルシウム〔式:Ca3(PO4)2・nH2O〕
は、上記のハイドロキシアパタイトと比較して結晶水を
含んでいるので、静電気的に活性な物質であり、皮膚の
老廃物や皮脂等に対する優れた吸着性能を発揮すること
ができる特徴を有する。
【0003】また、一般的に粉体を表面処理する方法と
して、例えば、特開昭61−276902号公報に表面
処理剤の存在下で、粉砕し、粉砕と同時に粉体表面を処
理する製造方法が開示されている。これは、顔料、体質
顔料、染料、天然及び合成高分子物質、金属粉などを粉
砕直後の表面活性の大きな面に表面処理剤をつけると容
易にこの表面に吸着できるというものであり、粉砕機と
してボールミル、ローラーミル、エロフォールミル、ク
ライオミル、ジェットミル、ターボミル、アトマイザ
ー、ラボミル、ピンミルなど主に乾式および半乾式で使
用でき、しかも細粉砕、微粉砕のできるものであれば使
用できるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような表面処理剤の存在下で、粉砕し、粉砕と同時に粉
体表面を処理する方法では、ハイドロキシアパタイトの
焼成体等の硬い結晶質の粒子に応用することはできて
も、結晶水を含み、静電気的に活性である非晶質リン酸
カルシウムには応用することができないことが判った。
すなわち、乾式ミル等の粉砕機によって粉砕を行いなが
ら表面処理を行うと、このような粉砕ミルにより粒子を
粉砕しても、非晶質リン酸カルシウムのもつ分子活性、
さらには吸湿性によって、再凝集してしまうことが多い
ため、与えた解砕エネルギーに対して充分な効果が得ら
れず、ひいてはボールやミル壁にその粒子が付着し固結
を起こすという問題点を生じた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、これらの問題
点を解決したもので、平均一次粒子径が0.04〜1μ
mである非晶質リン酸カルシウムの凝集粒子と表面処理
としてステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜
鉛、ステアリン酸アルミニウムの少なくとも1種を使用
して分散混合して得た表面処理した非晶質リン酸カルシ
ウム粒子であって、特に、その平均粒子径が0.04〜
7μmである上記表面処理剤で処理した非晶質リン酸カ
ルシウム粒子と、非晶質リン酸カルシウム凝集粒子と
表面処理剤とを分散混合することを特徴とする非晶質
リン酸カルシウム表面処理粒子の製造方法である。
【0006】まず、本発明でいう分散混合について説明
する。一般に、混合には単なる均一混合である分配混合
と、大きい粒子を小さくする混合である分散混合、並び
にこれらを組み合わせた混合とがある。本願における分
散混合とは、大きい粒子を小さくする混合である分散混
合もしくは前述の分配混合と分散混合とを組み合わせた
混合であって、特に前述のようなボールミル、ローラー
ミル、エロフォールミル、クライオミル、ジェットミ
ル、ターボミル、アトマイザー、ラボミル、ピンミル等
の粉砕機を使用しないことを特徴とする。これは、前記
のような粉砕機を使用した場合には、結晶水を含み、静
電気的に活性である非晶質リン酸カルシウムと表面処理
剤とが粉砕機中で再凝集してしまうためである。
【0007】本願における分散混合する手段について、
さらに具体的に説明すると、例えば逆円錐系の容器の内
部に自転、公転するスクリューを持つナウターミキサ
ー、円筒形の槽の底部に高速で回転する攪拌翼を備えた
高速ミキサー、螺旋状のリボン型の攪拌翼を備えたリボ
ン型ブレンダー等は分散混合する手段として好適であ
り、また、さらに、前記のスクリューや各種の攪拌翼を
装備した縦型、横型、V型、S型等のタンブラー等も分
散混合する手段として使用することができる。このよう
な分散混合手段を使用した場合、結晶水を含み、静電気
的に活性である非晶質リン酸カルシウムと表面処理剤と
が再凝集することなく、表面処理した非晶質リン酸カル
シウム粒子を得ることができる。
【0008】なお、本発明は平均一次粒子0.04〜1
μmである非晶質リン酸カルシウムの凝集粒子と表面処
理剤とを分散混合して表面処理した非晶質リン酸カルシ
ウム粒子を得るものであるが、平均一次粒子径が0.0
4〜1μmである非晶質リン酸カルシウムの凝集粒子を
使用するので、特に粉砕機等による大きな解砕エネルギ
ーを与えることなく、上記したような分散混合すること
によって、比較的大きい粒子径を持つ前記の凝集粒子を
小さくし、かつ均一な表面処理した非晶質リン酸カルシ
ウム粒子とすることができる。
【0009】また、本発明で使用する非晶質リン酸カル
シウムの凝集粒子は、焼成していないことを特徴とする
ものであって、焼成していないが故に、非常に微細な一
次粒子であって、かつ粒子の比表面積を大きく保つこと
ができ、優れた吸着効果を発揮することができるもので
ある。また、本発明で使用する非晶質リン酸カルシウム
は、粉末X線回折法による回折パターンから、結晶水を
含むリン酸三カルシウム〔式:Ca3(PO4)2・nH
2O〕であることが分かり、また、そのパターンがブロ
ードであることから、非晶質であることが確認されてい
る。さらに、上記ACP粒子は結晶水を含むことから、
静電気的に活性な物質であると思われ、優れた皮膚の老
廃物や油脂の吸着性能を発揮するとともに表面が帯電し
ている種々の菌体やウイルスや、アルデヒド基、アンモ
ニア基等を有する異臭物質やSOx,NOx等を吸着し
易い。
【0010】このような非晶質リン酸カルシウム(Amor
phous Calcium Phosphate :以下、ACPと略すことが
ある。)は、攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液(以下、
スラリーと称することがある。)に、中性又は弱アルカ
リ性の水溶性高分子分散剤、例えば、弱アルカリ性のト
リアクリル酸アンモニウム塩等を添加して混合溶液を得
た後、その混合溶液を撹拌しながらリン酸水溶液を滴下
して、pHを11〜5に調整することにより、非晶質リ
ン酸カルシウムとしてを得ることができる。
【0011】特に、攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液に
上記した水溶性高分子分散剤を添加してACPを合成す
ることで、非晶質リン酸カルシウムの平均一次粒子径を
0.04〜1μmに任意に調整することができる。ま
た、上記した水溶性高分子分散剤の添加量は水酸化カル
シウム懸濁液に対して0.1〜10重量%、好ましくは
0.1〜3重量%に設定することが望ましい。しかしこ
こで、水酸化カルシウム懸濁液の濃度が20%以下であ
れば水溶性高分子分散剤を必ずしも使用しなくても良
い。
【0012】また、ACPを合成するに際して、スラリ
ー温度を50℃以下に保つことは、より小さな平均一次
粒子径を有する多孔質のACPを得るために有利であ
る。なお、本発明における粒子の粒径は、レーザー回折
法により測定したものである。
【0013】上記の平均一次粒子径を0.04〜1μm
の非晶質リン酸カルシウム粒子を含むスラリーを乾燥し
て、本発明で使用する非晶質リン酸カルシウム凝集粒子
を得るが、このような乾燥法としては、噴霧乾燥造粒法
等を用いることができる。
【0014】 また、本発明に用いる表面処理剤として
、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ス
テアリン酸アルミニウムの少なくとも1種の金属石鹸が
挙げられる。
【0015】
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例によって詳
細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0017】〔製造例1〕本発明における表面処理を行
ったACP粒子を次にようにして製造した。なお、この
ACP粒子の製造に用いた装置を図1に概略的に示す。
図1において、9はエアフィルター、10は電気ヒータ
であり、エアフィルター9を通り電気ヒータ10によっ
て加温された熱空気は、熱ガス室11からスプレードラ
イヤー5内に入り、スプレードライヤー5のアトマイザ
ー6により噴霧されるスラリー3を乾燥造粒しつつ、排
出孔12からサイクロン8に向けて流出するようになっ
ている。
【0018】攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液に対し、
水溶性高分子分散剤として弱アルカリ性のトリアクリル
酸アンモニウム塩を0.5重量%添加して、混合溶液を
得た。得られた混合溶液を攪拌機を使用して攪拌しなが
ら、リン酸水溶液を滴下し、pHを10に調整すること
により、平均一次粒子径約0.1μmのACP粒子1を
含むスラリーを得た。
【0019】上記のACP粒子1を含むスラリー3を攪
拌機を使用して、さらに15分間攪拌し、このスラリー
3を定量ポンプ4によりスプレードライヤー(大川原化
工機械社製L−8)5のアトマイザー6に供給した。そ
のアトマイザー6を高速回転させて、スプレードライヤ
ー5内の乾燥用の熱空気流中に上記混合スラリー3を噴
霧し、噴霧造粒乾燥法により造粒乾燥した。この造粒乾
燥によって、ACP粒子7を得た。得られたACP凝集
粒子は球状であり、平均粒子径は12μmであった。比
表面積をBET法により測定したところ、比表面積は8
0m2/gであった。
【0020】なお、上記造粒における操作条件は次の通
りであった。定量ポンプ4によるスラリー3の供給量は
1〜3kg/hであり、エアフィルター9を介して電気
ヒーター10によって加温された熱空気の温度は、熱ガ
ス室11の入口温度が150〜250℃に、サイクロン
8に繁がる排出孔12における出口温度が80℃を常に
超えるように制御され、また、アトマイザー6の回転数
は10000〜37000rpmの範囲内に設定した。
【0021】(実施例1)製造例1で得た平均粒子径は
12μmのACP凝集粒子(平均一次粒子径約0.1μ
m)15重量部に対して、ステアリン酸アルミニウム5
重量部を30リットルの攪拌翼を装備したV型タンブラ
ーで予備分散混合し、さらに、製造例1で得たACP粒
子80重量部を追加して、約1時間分散混合した。ここ
で、分散状態を確認するためにあらかじめステアリン酸
アルミニウム中に青色1号アルミニウムレーキで着色を
行った。この結果、均一分散していることが確認でき、
表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒子を得た。得ら
れた表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒子をレーザ
ー回折式粒度分布計を用いて測定したところ、平均粒子
径1μmであった。
【0022】(比較例1)製造例1で得た平均粒子径は
12μmのACP凝集粒子(平均一次粒子径約0.1μ
m)95重量部に対して、ステアリン酸カルシウム5重
量部を10リットルのボールミルに入れ、1時間攪拌し
た。この結果、ポット壁面にほとんどの粉体がへばりつ
き、ボールのみが中心部で回っている状態となり、表面
処理した非晶質リン酸カルシウム粒子を得ることができ
なかった。
【0023】(実施例2)実施例1で得た表面処理した
非晶質リン酸カルシウム粒子を使用して、下記の配合処
方にてファンデーションを作製した。なお、無機粉体は
全てパーフルオロアルキルリン酸エステル塩にて3重量
%処理した粉体を用いた。単位は重量%である。
【0024】(配合処方) 実施例1で得た表面処理粒子 8 酸化鉄 4.5 セリサイト 22 板状硫酸バリウム 32 酸化チタン 8 微粒子酸化チタン 2 タルク 10 シリコーンエラストマー 3 有機系紫外線吸収剤(パラソルMCX) 3 パーフルオロポリエーテル 5.5 グリセリン 0.5 白色ワセリン 1 防腐剤、香料 0.5 上記のファンデーションを肌につけ官能テストを実施し
たところ、きしみ感が少なく、感触の優れたファンデー
ションであることが確認できた。
【0025】(比較例2)上記の製造例1で得た12μ
mのACP凝集粒子を使用して、下記の配合処方にてフ
ァンデーションを作製した。なお、無機粉体は全てパー
フルオロアルキルリン酸エステル塩にて3重量%処理し
た粉体を用いた。単位は重量%である。
【0026】(配合処方) ACP凝集粒子 8 酸化鉄 4.5 セリサイト 22 板状硫酸バリウム 32 酸化チタン 8 微粒子酸化チタン 2 タルク 10 シリコーンエラストマー 3 有機系紫外線吸収剤(パラソルMCX) 3 パーフルオロポリエーテル 5.5 グリセリン 0.5 白色ワセリン 1 防腐剤、香料 0.5 上記のファンデーションを肌につけ官能テストを実施し
たところ、きしみ感が若干残る感触のあることが確認さ
れた。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の表面処理
した非晶質リン酸カルシウム粒子は、平均一次粒子径が
0.04〜1μmである非晶質リン酸カルシウムの凝集
粒子と表面処理剤として、ステアリン酸マグネシウム、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムの少なく
とも1種を使用して、これを分散混合することで表面処
理するので、非晶質リン酸カルシウム粒子に効率よく、
短時間で表面処理することができる。また、このように
分散混合することで、比較的大きな凝集粒子の粒子径を
小さくし、かつ表面処理された非晶質リン酸カルシウム
粒子を簡単に得ることができる。
【0028】このように、本発明の表面処理された非晶
質リン酸カルシウム粒子は、皮膚外用剤例えば、化粧
品、医薬品、医薬用外品等に好適に使用できる。また、
ACPが生体内における骨などの構成材料であるので、
得られたACP粒子も充分な生体親和力を有し、歯科材
料や骨充填材などにも適用することが可能である。ま
た、塗料、インキ、トナー、機械などのグリース、プラ
スチックスの顔料、フィラー、食品、金属材料、電気、
磁性材料、セラミックスに利用でき基材との親和性、分
散性、流動性、付着性を向上する効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ACP粒子の製造に用いた装置の概略構成図
である。
【符号の説明】
1…ACP粒子、3…混合スラリー、4…定量ポンプ、
5…スプレードライヤー、6…アトマイザー、7…AC
P多孔質粒子、8…サイクロン、9…エアフィルター、
10…電気ヒータ、11…熱ガス室、12…排出孔
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 101/00 C08L 101/00 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 25/00 - 25/46 A61K 7/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均一次粒子径が0.04〜1μmであ
    る非晶質リン酸カルシウムの凝集粒子と表面処理剤と
    て、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ス
    テアリン酸アルミニウムの少なくとも1種を使用して
    散混合して得た表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒
    子。
  2. 【請求項2】 平均粒子径が0.04〜7μmである請
    求項1記載の表面処理した非晶質リン酸カルシウム粒
    子。
  3. 【請求項3】 非晶質リン酸カルシウム凝集粒子と表面
    処理剤としてステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸
    亜鉛、ステアリン酸アルミニウムの少なくとも1種と
    散混合することを特徴とする非晶質リン酸カルシウム表
    面処理粒子の製造方法。
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