JP3505574B2 - チタニア超薄膜およびその製造方法 - Google Patents

チタニア超薄膜およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状チタン酸化物
微結晶を剥離して得られる薄片粒子からなるチタニアナ
ノシート(以下、適宜「チタニアナノシート」という)
の多層構造からなる超薄膜およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】通常、チタニア薄膜はチタン塩の加水分
解によるゾル・ゲル法や気相反応によるCVD法、スパ
ッター法、レーザーアブレーション法などによって作製
されている。この場合の膜厚は大部分がサブμm以上で
あるとともに、得られた薄膜は球状微粒子が密に集合し
たものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、先に、
チタニアナノシートとポリマーを液相から基板上にサブ
nm〜nmの厚みで交互に積層することにより得られる
チタニア多層超薄膜およびその製造方法について発明
し、特許出願(特願2000-083654)を行った。このチタ
ニア多層超薄膜およびその製造方法は、従来の酸化チタ
ン微粒子からなる薄膜と比べて微細組織、膜厚などの制
御性、光吸収性などの物性が大きく異なり、以下のよう
な優れた特徴を有する。
【0004】(1)サブnm〜nmの精度で厚みをコン
トロールできること。 (2)レイヤーバイレイヤーで製膜可能であり、薄膜の
組成、構造を自由度高く制御できること。 (3)液相から吸着・累積を行うため、低コスト、省エ
ネルギー、低環境負荷であること。 (4)分子レベルの薄さ、μmサイズの横幅という極め
て高い2次元異方性の高いナノシートを用いるため、従
来の球形超微粒子が密に集合した薄膜とは大きく異なる
物性を示すこと。例えば光吸収強度は従来の数十倍。
【0005】以上のように、従来技術にはない数多くの
利点を持つ薄膜ではあるが、ポリマーがナノシートのバ
インダー的な役割で薄膜の中に積層されていることか
ら、熱的安定性、化学的安定性、機械的強度に欠けると
いう側面があり、用途によっては実用化の障害になりか
ねない問題点を有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
有機ポリマーを除去することを発想し、鋭意努力の末、
紫外線などの電磁波照射または加熱処理によって上記の
長所を損なわず、安定性に優れた無機膜を作製すること
に成功した。すなわち、本発明は、層状チタン酸化物微
結晶を剥離して得られる薄片粒子からなるチタニアナノ
シートの多層構造からなりポリマー介在層を有しないこ
とを特徴とするチタニア超薄膜である。また、本発明
は、ナノシートが加熱処理によりアナターゼまたはルチ
ルに変換されたものであることを特徴とする上記のチタ
ニア超薄膜である。また、本発明は、薄片粒子が組成式
Ti1-dO2(0≦d≦0.5)で示されることを特徴とする上記の
超薄膜である。また、本発明は、波長300nm以下の紫
外光をモル吸光係数10000mol-1dm3cm-1以上の高効率で
吸収することを特徴とする上記の超薄膜である。また、
本発明は、紫外光下で超親水性を呈することを特徴とす
る上記の超薄膜である。
【0007】さらに、本発明は、層状チタン酸化物微結
晶を剥離して得られる薄片粒子とカチオン性ポリマーを
それぞれ液相から基板上に交互に積層してチタニアナノ
シートと介在層のポリマーが積層した多層構造の膜を作
製し、該多層構造の膜からポリマーを除去することを特
徴とする上記のチタニア超薄膜の製造方法である。ま
た、本発明は、多層構造の膜に加熱処理または電磁波照
射を行うことによってポリマーを除去することを特徴と
する上記のチタニア超薄膜の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法においては、ま
ず、チタニアナノシートが懸濁したゾルとカチオン性ポ
リマー溶液に基板を交互に浸漬する操作を反復すること
により、基板上にナノシートとポリマーをそれぞれサブ
nm〜nmレベルの厚さに吸着させ、該成分が交互に繰
り返す多層膜を累積する。
【0009】実際の操作としては、基板を(1)チタニ
アゾル溶液に浸漬→(2)純水で洗浄→(3)有機ポリ
カチオン溶液に浸漬→(4)純水で洗浄するという一連
の操作を1サイクルとしてこれを必要回数分反復する。
有機ポリカチオンとしては、ボリジメチルジアリルアン
モニウム塩化物(PDDA)、ポリエチレンイミン(P
EI)、塩酸ポリアリルアミン(PAH)などが適当で
ある。
【0010】チタニアナノシートは負電荷を持つため、
正電荷を持つポリマー(ポリジメチルジアリルアンモニ
ウム塩化物(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、塩
酸ポリアリルアミン(PAH)など)と組み合わせること
により、適当に処理した基板表面上に自己組織化的に交
互にそれぞれモノレイヤーとして吸着させることが可能
となる。この操作を反復することによりレイヤーバイレ
イヤーでチタニア超薄膜を構築することができる。
【0011】基板上に交互に積層する原料となるチタニ
アナノシートは、レピドクロサイト型チタン酸塩(Csx
Ti2-x/4O4(ここで 0.5≦x≦1), AxTi2-x/3Lix/3O4(但
し、A= K, Rb, Cs;0.5≦x≦1)をはじめとして、三チタ
ン酸塩(Na2Ti37)、四チタン酸塩(K2Ti4O9)、五チ
タン酸塩(Cs2Ti5O11)などの層状チタン酸化物を水素
型(HxTi2-x/4O4・nH2O, H4x/3Ti2-x/3O4・nH2O, H2Ti3O7
・nH2O, H2Ti4O9・nH2O,H2Ti5O11・nH2O)に変換後、適当
なアミンなどの水溶液中で振盪して単層剥離することに
より得られる。
【0012】この水素型に変換する化学処理は、酸処理
とコロイド化処理を組み合わせた処理である。すなわ
ち、層状構造を有するチタン酸化物粉末に塩酸などの酸
水溶液を接触させ、生成物をろ過、洗浄後、乾燥させる
と処理前に層間に存在したアルカリ金属イオンがすべて
水素イオンに置き換わり、水素型物質が得られる。
【0013】次に得られた水素型物質をアミン等の水溶
液に入れ攪拌すると、コロイド化してゾル溶液となる。
このとき、層状構造を構成していた層が1枚1枚にまで
剥離することとなる。このゾル溶液中には母結晶を構成
していた層、すなわちナノシートが一枚ずつ水中に分散
している。ナノシートの厚みは、その出発母結晶の結晶
構造に依存するが、1nm前後と極めて薄い。一方、横
サイズはμmオーダーであり、非常に高い2次元異方性
を有する。
【0014】基板は水溶液中で安定な固体物質であれば
基本的に問題な<、大きさも原理的に制限はない。石英
ガラス板、Siウエハー、マイカ板、グラファイト板、
アルミナ板等を例としてあげることができる。積層操作
の前に、基板表面を清浄にする。通常洗剤による洗浄、
有機溶剤による脱脂、濃硫酸などによる洗浄を行う。こ
れに引き続き、基板を有機ポリカチオン溶液に浸漬し
て、ポリカチオンを吸着させることにより、正電荷を基
板表面に導入する。これは、以後の積層を安定に進める
ために必要である。
【0015】上記吸着サイクルのプロセスパラメーター
のうち、溶液の濃度、pH、浸漬時間が、良質の超薄膜
を合成するうえで重要となる。チタニアゾルの濃度は5
wt%以下、特に0.1wt%以下であることが望まし
い。また、酸性側でナノシートは凝集する傾向があるの
でpHは5以上であることが必要で、安定した製膜には
7以上が望ましい。有機ポリカチオンの濃度は10wt
%以下、pHはチタニアゾルと同一に調整することが望
ましい。浸漬時間は10分以上の必要がある。これより
短いと基板表面が充分にナノシートまたはポリマーで吸
着・被覆されないおそれがある。以上の条件が満足され
ると、非常に安定に製膜を行うことができる。
【0016】上記の操作で得られた多層超薄膜はナノシ
ートとポリマーがサブnmの厚みで繰り返しており、ポ
リマーが介在層となっている。次の工程でこのポリマー
層を除去する。このポリマー成分の除去は紫外線照射ま
たは加熱処理により行うことができる。紫外光源として
は各種高圧水銀ランプ、キセノンランプなどを用いるこ
とができる。照射による外観上の変化はなく、数十時間
照射後もサンプルは照射前と同様、高い透明性を示す。
【0017】ポリマーの除去速度は薄膜の組成・構造、
紫外線強度などのパラメータに依存するが、代表的な薄
膜、すなわち、レピドクロサイト型チタン酸を剥離して
得たナノシートTi1-dO2とPDDAがそれぞれ10層交互に積
層した多層薄膜(総膜厚:14nm)を例にとると、波長30
0 nm以下の紫外線強度が1 mW cm-2の光を照射した場
合、約24時間でポリマー成分を分解・除去できる。その
際のX線回折データの変化は図1に示す通りである。図
1の2θ = 15〜30°のハロは石英ガラス基板によるもの
である。
【0018】照射前サンプルはナノシートとポリマーの
繰り返し周期に相当する面間隔1.4nmの回折ピークを与
えるが、これに紫外線照射を行うと、面間隔が時間とと
もに縮小し、約1日で0.94 nmの一定値に達する(図
2)。この面間隔の縮小はポリマーがチタニアナノシー
トの光触媒作用により分解されたためと考えることがで
きる。また、回折線がシャープになるとともに、2次、
3次の反射が検出可能となることも、ナノシートの積層
秩序性が高くなったことを意味しており、構造の乱れに
よる回折線のブロードニングの原因となっていたポリマ
ーが除去されたことを間接的に示唆している。
【0019】より直接的な証拠は、赤外吸収スペクトル
(図3)およびX線光電子分光データ(図4)により得
ることができる。照射前の赤外スペクトルは水分子およ
びポリマーの存在を明確に示すのに対して、照射後は大
きく変化して、ポリマーに由来する3000〜2800 cm-1
よび1500〜1350 cm-1の吸収バンドは消失する。代わっ
てNH4 +の存在を示すスペクトルが得られる。このこと
は、PDDAが光分解され、最後にナノシートの負電荷を補
償する陽イオンとしてNH4 +が生成したと説明することが
できる。
【0020】また、X線光電子分光データでは照射によ
る炭素成分の大幅な減少が見られポリマーの除去が示唆
される。一方、窒素成分には大きな変化がないこと、そ
のケミカルシフト値もNH4 +のそれにほぼ一致し、赤外吸
収データと符合した。以上のことより、チタニアナノシ
ート/ポリマー多層超薄膜に紫外線を照射することで、
ポリマーが光分解され無機成分のみからなる超薄膜に変
換できることが裏付けられた。
【0021】一方、加熱処理によってもポリマーの分解
は可能である。ナノシート/ポリマー多層超薄膜を加熱
すると、200℃付近より面間隔の縮小が始まり、400℃で
は0.95 nmとなる。この値は本ナノシートの母結晶であ
るHxTi2-x/4O4・nH2Oの面間隔、すなわち、剥離前のホス
ト層間隔と一致することから、この温度でポリマーはほ
ぼ熱分解除去されたと考えられる。500℃では0.94 nmの
回折ピークも消失し、無定形状態の薄膜に変化する。さ
らに加熱を続けると、600℃以上でアナターゼ、900℃以
上ではルチルからなる薄膜を得ることができる。
【0022】チタニアナノシートはシャープで強い吸収
ピークを紫外域に示す。これは、ナノシートが酸化チタ
ン系で量子サイズ効果が発現するとされる領域である1n
m以下の分子レベルの薄さにまで微細化されていること
に主に起因していると考えられる。紫外線照射または加
熱処理(<400℃)によりポリマーが除去された薄膜はこ
のチタニアナノシートに特徴的な吸収スペクトルを与え
る(図5,図7参照)。
【0023】レピドクロサイト型チタン酸化物HxTi
2-x/4O4・nH2Oを剥離して得られるチタニアナノシートを
累積した超薄膜の場合、ナノシート1レヤー当たりの吸
光度は0.14に及ぶ。ナノシートの厚みは 0.75 nmである
ことから、チタニア1nmあたりの吸光度は0.18を超え
る。これはモル吸光係数に換算すると24000mol-1dm3cm
-1に相当する。
【0024】ちなみに、平均径 3 nmのチタニア超微粒
子を積層した薄膜について相当する吸光度として約0.00
5が報告されており(Liu et al. J. Phys. Chem. B, 10
1, 1385,1997)、本薄膜が極めて高効率の紫外光吸収能
を有していることがわかる。このような高効率の紫外光
吸収は、紫外線カットコーティング、太陽電池部材、フ
ォトルミネッセンス材料、センサーなどとしての用途に
も非常に有効であることを示唆する。
【0025】一方、酸化チタンはその優れた光触媒能を
利用した環境浄化材、さらには光誘起超親水化を利用し
た各種コーティング材としての応用も大いに有望視され
ており、一部は実用化レベルに達している。チタニアナ
ノシートはその特異な構造、特性ゆえに、この分野への
展開に関しても、酸化チタン超微粒子などの従来型の素
材以上の高機能化も可能と期待される。
【0026】実際、本発明のチタニア超薄膜は、図8に
示す通り、微弱な紫外線照射下短時間で水滴の接触角が
0°に近くなることが見いだされ、超親水性薄膜として
の有効性を示している。この光触媒、超親水性に関連す
る用途においてはポリマーが薄膜中に介在するとその変
性、分解などの観点からこれらの機能に悪影響を与える
ことが懸念されるところであるが、図8からも明らかな
通り、ポリマーが存在した薄膜では超親水化にかかる時
間が3倍程度必要なことがわかる。
【0027】よって、本発明により化学的に不安定なポ
リマーを除去して、ナノシートを主成分とする無機膜化
できたことは、チタニアナノシートの優れた特性をこの
方面に応用する道を拓くものとも言える。
【0028】
【実施例】次に本発明の実施例を示す。 [実施例1]組成式CsxTi2-x/4O4(x〜0.7)で示されるレ
ピドクロサイト型層状チタン酸セシウムを酸処理して得
られる層状チタン酸粉末(HxTi2-x/4O4・nH2O)0.5gをテ
トラブチルアンモニウム水酸化物溶液100cm3に加えて室
温で1週間程度振盪(150 rpm)し、乳白色のチタニア
ゾルを得た。
【0029】これを50倍に希釈した溶液と、2 wt%のポ
リジメチルジアリルアンモニウム(PDDA)塩化物水溶液
を調製し、そのpHを9に調整した。適当なサイズのSiウ
エハー板もしくは石英ガラス板を中性洗剤、メタノール
/塩酸(1:1)、濃硫酸で処理した後、Milli-Q純水で充
分に洗浄した。最後に、基板を濃度0.25wt%のポリエチ
レンイミン水溶液中に20分間浸漬し、水洗後乾燥した。
【0030】このようにして洗浄・前処理を行った基板
を(1)上記のチタニアゾル溶液に浸漬する。(2)20
分経過後、Milli-Q純水で充分に洗浄し、アルゴン気流
を吹きつけて乾燥する。(3)次に、この基板をPDDA溶
液に20分間浸漬する。(4)続いて、Milli-Q純水で充
分に洗浄するという操作を反復することにより、チタニ
アナノシートとPDDAが交互に累積した多層超薄膜を合成
した。
【0031】得られた薄膜試料に三栄電機製Xeランプ
(XEF-501S)を用いて紫外線照射を行った。ナノシートの
主な光吸収域である300 nm以下の紫外光強度は、サンプ
ルを紫外光源から15 cmの位置に置くことにより基板表
面で約1 mW cm-2とした。紫外線照射にともなって多層
膜のナノシートとポリマーの繰り返し周期を反映する回
折線が高角度側に徐々に移動し、図2に示すような面間
隔の減少が観測された。
【0032】照射後24時間で面間隔はほぼ一定値0.94 n
mに達し、回折線もシャープになると同時に高次反射ま
で検出可能となった(図1)。以上のデータはポリマー
がチタニアナノシートの光触媒作用により分解された結
果と解釈される。照射前後のFT-IRスペクトルを図3に
示す。照射前のスペクトルにおいて3500 cm-1を中心と
したブロードな吸収と、1630 cm-1付近のバンドは水分
子の伸縮振動および変角モードに帰属され、水和水の存
在が示唆された。
【0033】さらに、3024, 2959, 2926, 2853 cm-1
シグナルは-CH3, -CH2-の伸縮振動に、1468, 1356 cm-1
のバンドはそれらの変角振動と帰属でき、ポリマーの存
在を明瞭に確認することができた。これに対して、照射
後においてはポリマー成分に由来するピークが消失し、
その光分解が裏付けられるともに、NH4 +の生成を示唆す
るブロードなバンドが3190, 3035, 2847, 1420 cm-1
現れた。
【0034】これは、PDDA中のNに由来するものであ
り、負電荷を帯びたナノシートの電荷補償の役割をにな
っていると考えられる。さらに、X線光電子スペクトル
を照射前後で測定した結果を図4に示す。照射前には多
層超薄膜を構成する元素C, N,Ti, Oのピークがすべて検
出された。
【0035】一方、照射後ではN, Ti, Oのピーク強度は
ほぼ変わらないのに対して、C成分のみ顕著に減少し
た。各元素の感度をもとにモル比を計算すると、照射前
の Ti: C : N = 1 : 3 : 0.22から照射後は Ti : C : N
= 1 : 0.48 : 0.21となる。XPSがCに極めて鋭敏な感
度を有し、バックグランド炭素を通常感知することを考
慮すれば、本データはポリマーが実効的に除去されたと
解釈できる。
【0036】以上のデータを総合して、ナノシート/ポ
リマー多層超薄膜は紫外線照射により、ナノシートがNH
4 +を間に挟む形で積層した無機薄膜に変換できたと結論
できた。得られた薄膜の紫外・可視吸収スペクトルは照
射前と変化なく、265 nmにピークをもつチタニアナノシ
ート由来のシャープで高強度のプロファイルを与えた
(図5)。
【0037】[実施例2]実施例1と同様の手順でチタ
ニアナノシートとPDDAの多層超薄膜を合成した後、電気
炉中で加熱しポリマーの除去を試みた。加熱処理は100
℃刻みで1000℃までの各温度で1時間保持して行った。
【0038】多層超薄膜の加熱処理に伴う変化をX線回
折法で追跡したX線回折パターンを図6に示す。図6の
●、▲はアナターゼ、ルチルのピークを示す。2θ = 15
〜30°のハロは石英ガラス基板によるものである。図6
に示されるように、ナノシート/ポリマーの繰り返し周
期1.4 nmが200℃から縮小しはじめ、300℃で1.02 nm、4
00℃で0.95 nmとなった。この値は剥離前のHxTi2-x/4O4
・nH2Oのホスト層間隔0.94 nmとほぼ等しく、この時点で
PDDAが分解・除去されたことを示唆している。
【0039】500℃になると多層面間隔を示すブラッグ
ピークは消失しアモルファス状態となった。さらに加熱
を続けると600℃で2θ = 25°, 48°付近にピークが出
現し、アナターゼの結晶化が確認された。800℃になる
とアナターゼからルチルへの相転移が始まり、900℃で
はルチル単相となった。
【0040】本加熱過程での紫外・可視吸収スペクトル
の変化を図7に示した。400℃まではナノシートに由来
するシャープな吸収プロファイルに大きな変化は見られ
なかったが、500℃以上でブロード化するとともに、吸
収端の長波長側へのシフトが観測され、900℃ではバル
クのルチルのスペクトルとほぼ一致した。これは上記の
XRDデータにより得られた相転移の結果とよく符合し
た。
【0041】実施例1および2で作製した薄膜試料(基
板:シリコン)に水滴をたらし、紫外光を照射した場合
の接触角の時間変化を測定した。接触角の測定には協和
界面科学製CA-XPを、紫外光源としては三栄電機製Xeラ
ンプ(XEF-501S)を用いその強度は0.6 mW cm-2とした。
【0042】その結果、図8に示す通り、紫外光照射も
しくは加熱処理によりポリマーを除去した薄膜は5分前
後で接触角が5°以下となり、いわゆる超親水性を示す
ことが明らかになった。これに対して、処理前の薄膜、
すなわち、ポリマーとチタニアナノシートの多層膜では
超親水性の発現に15分以上を要し、大きな差があること
がわかった。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、チタニアナノシート/
ポリマー多層超薄膜を紫外線照射または加熱などの二次
処理によりポリマーを除去して無機膜に改質することに
より、ナノシート/ポリマーコンポジット薄膜の特徴
(nm精度の微細な膜厚の制御、ナノシートに由来した
極めて強い紫外線吸収特性など)を損なわず、より化学
的安定性に優れた薄膜を合成することができる。
【0044】本発明のチタニア超薄膜は紫外線を高効率
で吸収するため、窓材その他の紫外線遮蔽コーティング
用として利用できる。また、超親水性表面を有する薄
膜、光電変換用薄膜、フォトクロミック材料、光触媒薄
膜およびセンサーとしても期待される。さらに、高屈折
率を有することおよび膜厚を微細に制御できることによ
り干渉効果による発色が可能であり、各種着色材、塗料
となり得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1のチタニアナノシート/PDDA
多層超薄膜に対する紫外線照射効果を示すX線回折パタ
ーンである。
【図2】図2は、実施例1のチタニアナノシート/PDDA
多層超薄膜の多層面間隔と紫外光照射時間との関係を示
すグラフである。
【図3】図3は、実施例1のチタニアナノシート/PDDA
多層超薄膜の紫外光照射前後のFT-IR吸収スペクトルグ
ラフである。
【図4】図4は、実施例1のチタニアナノシート/PDDA
多層超薄膜の紫外光照射前後のX線光電子スペクトルグ
ラフである。
【図5】図5は、実施例1のチタニアナノシート/PDDA
多層超薄膜の紫外光照射前後の紫外・可視吸収スペクト
ルグラフである。
【図6】図6は、実施例2のチタニアナノシート/ PDDA
多層超薄膜の加熱処理に伴うX線回折パターンの変化を
示すグラフである。
【図7】図7は、実施例2のチタニアナノシート/ PDDA
多層超薄膜の加熱処理に伴う紫外・可視吸収スペクトル
グラフである。
【図8】図8は、実施例1および実施例2の水滴の接触
角と紫外線照射時間の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 遵 茨城県つくば市並木1丁目1番 文部科 学省無機材質研究所内 (56)参考文献 特開2001−270022(JP,A) 特開 平10−167707(JP,A) 特開 平4−305018(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 - 57/00 B82B 1/00 B82B 3/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 層状チタン酸化物微結晶を剥離して得ら
    れる薄片粒子からなるチタニアナノシートの多層構造か
    らなりポリマー介在層を有しないことを特徴とするチタ
    ニア超薄膜。
  2. 【請求項2】 ナノシートが加熱処理によりアナターゼ
    またはルチルに変換されたものであることを特徴とする
    請求項1記載のチタニア超薄膜。
  3. 【請求項3】 薄片粒子が組成式Ti1-dO2(0≦d≦0.5)で
    示されることを特徴とする請求項1または2記載の超薄
    膜。
  4. 【請求項4】 波長300nm以下の紫外光をモル吸光係
    数10000mol-1dm3cm-1以上の高効率で吸収することを特
    徴とする請求項1乃至3のいづれかに記載の超薄膜。
  5. 【請求項5】 紫外光下で超親水性を呈することを特徴
    とする請求項1乃至4のいづれかに記載の超薄膜。
  6. 【請求項6】 層状チタン酸化物微結晶を剥離して得ら
    れる薄片粒子からなるチタニアナノシートとカチオン性
    ポリマーをそれぞれ液相から基板上に交互に積層してチ
    タニア超薄膜と介在層のポリマーが積層した多層構造の
    膜を作製し、該多層構造の膜からポリマーを除去するこ
    とを特徴とする請求項1乃至5のいづれかに記載のチタ
    ニア超薄膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 多層構造の膜に加熱処理または電磁波照
    射を行うことによってポリマーを除去することを特徴と
    する請求項6記載のチタニア超薄膜の製造方法。
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