JP3505165B2 - ナトリウム−硫黄電池の初期コンディショニング方法及び初期性能検査方法 - Google Patents
ナトリウム−硫黄電池の初期コンディショニング方法及び初期性能検査方法Info
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Description
二次電池として利用されるナトリウム−硫黄電池(以
下、単に「電池」ともいう)を組立てた後、組立てられ
た電池を炉内にて昇温し、電池の起電力により放電して
電池の初期コンディショニングを行う方法及び初期検査
を行う方法に関し、さらに詳しくは、コストの削減及び
時間の短縮を図ったナトリウム−硫黄電池の初期コンデ
ィショニング方法及び初期性能検査方法に関する。
能を実現するための電力貯蔵システムにナトリウム−硫
黄電池が使用されているが、そのナトリウム−硫黄電池
の構造は、図1にその断面図を模式的に示した通りのも
のである。
状のベータアルミナ固体電解質管10がその上端外周面
でα−アルミナの絶縁リング11の内周面とガラス接合
され、更に、絶縁リング11の上面に接合された陰極金
具12及びその陰極金具12に溶接された陰極蓋13と
絶縁リング11とベータアルミナ固体電解質管10とで
区画された陰極室14に、有底筒状の金属性安全管15
とその安全管15の内側にナトリウム及びアルゴンなど
の不活性ガスを収納したナトリウム収納容器16を配設
し、一方、陽極室17は、絶縁リング11の下面に接合
された陽極金具18と、その陽極金具18に溶接された
陽極容器19と、更にはその陽極容器19に溶接された
底蓋20と、絶縁リング11と、ベータアルミナ固体電
解質管10とで区画され、硫黄を含浸したカーボンマッ
ト21が配設され、その上部には窒素、あるいはアルゴ
ンなどの不活性ガスが充填された構造である。
度までの昇温過程で、ナトリウム収納容器16内のナト
リウムは溶融し、ナトリウム収納容器内の上部に内包さ
れているアルゴンなどの不活性ガスの圧力によりナトリ
ウム収納容器の底部に設けられている小孔16aより溶
融ナトリウムが陰極室内に流出して陰極室内を充填状態
にする。
〜350℃の高温でその電池機能を発揮するが、電池組
立て直後のナトリウム−硫黄電池は300℃〜350℃
まで昇温しただけでは放電が不可能である。硫黄は絶縁
材であり、陽極側の固体電解質管表面近傍の抵抗が高い
からである。また、硫黄に導電性を付与すべく、硫黄は
グラファイトフェルト等の陽極導電材に含浸させた状態
で使用される。
製造直後に、組み立てた電池を昇温、通電して、電池の
初期コンディショニングを行う必要があり、また、初期
性能検査も行う。また、実際的には、初期コンディショ
ニングと初期性能検査は、それぞれを兼ねて、ひとつの
作業をもって行われることが多い。
0℃〜350℃の高温下で直流電源により一定電流を流
す定電流放電方式を用いて、定格容量まで放電後、さら
に定格容量まで充電させる。さらに詳しく述べると、先
ず、電池の電気抵抗を下げるため、小さな電流により初
期微小放電を行い、多硫化ナトリウムを形成させ、次
に、初期微小放電より電流を大きくした定格電流にて定
格放電容量まで放電し、その後、定格電流にて充電する
方式が一般的であった。このことにより、陰極活物質の
金属ナトリウムはナトリウムイオンとして固体電解質管
中をイオン伝導させ陽極側の固体電解質表面近傍で溶融
硫黄と反応させて、多硫化ナトリウムNa2Sxを生成さ
せ、このNa2Sxが電子導電材であるカーボンマットの
繊維の表面を充分濡らすことにより、放電及び充電を可
能とするものであり、この状態にて初期コンディショニ
ングが終了したと判断している。定電流方式の初期コン
ディショニングに関しては、特開平9−134737号
公報にも開示されており、初期コンディショニングの電
流密度と放電量を充電終了時点の残留電気量の大小でも
って、合否判断している。
る方法は、直流電源、充放電リレー、充放電制御装置等
の多くの装置が必要であり、大規模な設備となるため、
大きなコストがかかるという問題があり、また、この方
法では、少なくとも定格容量まで放電し、再度充電する
必要があるため、長く時間がかかるという問題があっ
た。
来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする
ところは、抵抗放電方式により、電池自体の起電力によ
って僅かに放電することのみにより、電池の初期コンデ
ィショニングを行うとともに、初期ピーク抵抗を評価
し、別途、定電流方式で求めた電池の初期ピーク抵抗と
平均内部抵抗及び初期ピーク抵抗と充放電効率との相関
関係により初期ピーク抵抗を計測するのみで、電池の初
期特性の評価を行うことで、コストの削減及び時間の短
縮を図ったナトリウム−硫黄電池の初期コンディショニ
ング方法及び初期性能検査方法を提供することにある。
れば、陽極容器と、同陽極容器の内部に配設された固体
電解質管と、同固体電解質管の内部に収容された金属ナ
トリウムからなる陰極活物質と、前記固体電解質管と前
記陽極容器間に収容された硫黄からなる陽極活物質を含
浸した陽極導電材と、同陽極導電材と前記固体電解質管
の間に形成された高抵抗層を備えたナトリウム−硫黄電
池を組立てた後、同電池を加熱炉内で昇温し、放電して
初期コンディショニングを行う方法であって、抵抗放電
方式により、前記電池の初期ピーク抵抗が得られるまで
放電を行い、完全充放電を行わずに、電池を初期化する
ことを特徴とするナトリウム−硫黄電池の初期コンディ
ショニング方法、が提供される。
に当り、初期ピーク抵抗が得られるまでに放電電流の電
流値を多段階に分けて行い、段階を経る毎に、固体電解
質管の表面積当りの電流密度を大きくして放電を行うこ
とが好ましい。
として、前記初期放電の電気量を放電するまでに放電電
流の電流値を少なくとも2段階に分けて、固体電解質管
の表面積当りの電流密度を、第1段階の放電が0.00
5A/cm2以下、最終段階の放電が0.1A/cm2以
下で放電を行うことが好ましい。
同陽極容器の内部に配設された固体電解質管と、同固体
電解質管の内部に収容された金属ナトリウムからなる陰
極活物質と、前記固体電解質管と前記陽極容器間に収容
された硫黄からなる陽極活物質を含浸した陽極導電材
と、同陽極導電材と前記固体電解質管の間に形成された
高抵抗層を備えたナトリウム硫黄電池を組立てた後、同
電池を加熱炉内で昇温し、放電して電池の初期検査を行
う方法であって、抵抗放電方式又は定電流方式により、
前記電池の初期ピーク抵抗が得られるまで放電を行い、
初期ピーク抵抗を求め、一方、初期ピーク抵抗と平均内
部抵抗との相関関係及び初期ピーク抵抗と充放電効率と
の相関関係を求め、初期ピーク抵抗により、前記平均内
部抵抗及び充放電効率の特性を評価することを特徴とす
るナトリウム−硫黄電池の初期性能検査方法、が提供さ
れる。
いて説明するが、本発明が以下の実施形態に限定される
ものではないことはいうまでもない。
能検査方法は、図1に示すように、有底筒状の固体電解
質管10内面と固体電解質管10の開口端部の外周面に
接合された絶縁リング11と絶縁リング11の上面に接
合された陰極蓋13とで区画された陰極室14内にナト
リウムが収納され、一方、固体電解質管10外面と絶縁
リング11と絶縁リング11の底面に接合された陽極金
具18とその陽極金具18に溶接された円筒状の陽極容
器19とその陽極容器19に溶接された円盤状の底蓋2
0とで区画された陽極室17内には硫黄を含浸した電子
導電材が収納されて構成されるナトリウム−硫黄電池1
を組立てた後、組立てられた電池1を加熱炉内で昇温
し、次いで抵抗放電方式により、電池の初期ピーク抵抗
が得られるまで初期放電させ、電池の初期コンディショ
ニングを行うとともに、初期ピーク抵抗を評価する。一
方、定電流方式で求めた電池の初期ピーク抵抗と平均内
部抵抗及び初期ピーク抵抗と充放電効率との相関関係を
用いて電池の平均内部抵抗及び充放電効率を評価するこ
とを特徴とする。このようにして、電池の初期性能検査
を、電池自体の起電力によって僅かに放電する間に現れ
る初期ピーク抵抗を測定することと、別途求めた電池の
初期ピーク抵抗と平均内部抵抗及び充放電効率との相関
関係を用いて電池の特性評価を行うことができることと
なる。従って、定格放電容量まで放電をし、その後、充
電をして初期性能検査を行っていた従来の初期検査方法
に比べて、大幅なコストの削減と時間の短縮とを図るこ
とができる。なお、時間に関しては1/10程度に短縮
できる。
−硫黄電池が、上述のような簡便な方法により特性評価
できるようになった背景には、最近のナトリウム−硫黄
電池が、電池設計の見直し・改良及び電池の造り込みに
より、ばらつきが小さく、信頼性の高いものが生産でき
るようになってきたことにもよる。
ナトリウム−硫黄電池Eと、放電抵抗器Rを備え、電池
E自身の起電力により放電させる方式をいう。図3に示
すように、この抵抗放電方式においては、組立直後のナ
トリウム−硫黄電池について放電電流の電流値を多段階
に分けて行い、段階を経る毎に、固体電解質管の表面積
当りの電流密度を大きくして電流密度を変化させる。例
えば第1〜第4段階に分けて初期微小放電を行い、初期
ピーク抵抗が得られるまで初期微小放電を行う。この初
期微小放電で止めた複数の電池をモジュールに組んで充
放電試験を行った結果と、前記初期微小放電を行った
後、さらに定格容量まで放電し、その後充電した、すな
わち完全充放電した複数の電池をモジュールに組んで充
放電試験を行った結果を表1に示す。
m2)」とは、固体電解質管の単位表面積当りの放電電
流及び充電電流を意味する。表1によれば、抵抗放電方
式により初期ピーク抵抗が得られるまで放電を行い、そ
の後、モジュールに組んで充放電を行った場合と、前記
抵抗放電により初期微小放電を行った後、定格容量まで
放電、さらに充電し、その後、モジュールに組んで充放
電した場合と比較して、モジュール電池の残留電気量の
差異は殆どなく、ともに良好である。
に大きくすることが好ましい。ただし、初期放電の第1
段階での電流密度が0.005A/cm2を超える場
合、あるいは、最終段階での電流密度が0.1A/cm
2を超える場合は、モジュール電池の残留電気量が大き
くなり、好ましくない。
検査方法について説明する。図4は、ナトリウム−硫黄
電池E、放電抵抗器R、及び直流電源Vを備え、直流電
源Vにより一定電流を流す定電流放電方式の回路を示す
回路図である。本測定では、図5に示すように、組立直
後のナトリウム−硫黄電池について電流密度を変化させ
て、第1〜第4段階の初期微小放電を行い、初期ピーク
抵抗を測定する。また、定電流放電方式で初期ピーク抵
抗と平均内部抵抗、初期ピーク抵抗と充放電効率の相関
関係を求める際に使用している「全放電電気量」、「残
留電気量」、「定格放電容量」、「フル放電電気量」と
いう用語の意味は、図6に示す通りである。
て、所定の電流で充放電した場合の電池電圧(V)と放
電深度(Ah)の関係を示しており、「全放電電気量」
とは、所定放電深度まで放電される電気量(図6の放電
電圧曲線1を参照)を意味し、「充電電気量」とは、電
池電圧が所定の電圧に到達するまでに充電される電気量
(図6の充電電圧曲線2を参照)を意味し、「定格放電
容量」とは、定格時間放電できる電気量を意味してい
る。また、「残留電気量」とは、充電終了時点で陽極室
内に残存するナトリウム量に対応し、グラフ3は「理論
開路電圧」を示している。
電として第1段階ではナトリウム−硫黄電池の全放電電
気量に対して0.2%まで放電し、第2段階においてフ
ル放電電気量に対して0.2〜0.5%まで放電し、第
3段階においてフル放電電気量に対して0.5〜1.5
%まで放電し、第4段階においてフル放電電気量に対し
て1.5〜フル放電電気量まで放電している。
ム−硫黄電池における平均内部抵抗と初期ピーク抵抗と
の関係を示すグラフである。図7に示すように、初期ピ
ーク抵抗と電池の平均内部抵抗とは良い相関関係(図中
の相関直線:Y=0.81X−0.94)を示すことが
分かる。また、図8は、上記の測定から得られたナトリ
ウム−硫黄電池における充放電効率と初期ピーク抵抗と
の関係を示すグラフである。図8に示すように、初期ピ
ーク抵抗と電池の充放電効率とは良い相関関係(図中の
相関直線:Y=−0.57X+54.6)を示すことが
分かる。このことより、電池の初期ピーク抵抗を測定す
ることにより、その電池の平均内部抵抗と充放電効率と
を評価できることが分かる。尚、本測定に用いた電池
は、直径90mmφ、高さ520mm、定格容量630
Ahのものであり、本測定は単電池を4本直列に接続し
て行ったものである。本発明者らは、まず1本の単電池
のみで同様の測定を行い、更に単電池を4本直列に接続
して行ったところ、同等の相関関係が得られたことか
ら、測定の効率化という観点から、複数の単電池を直列
に接続して測定を行っている。これらのことより、初期
検査及び初期コンディショニングを、単電池毎に行わな
くとも、本発明を用いれば4本程度まとめて行えること
がわかる。
による初期ピーク抵抗(図5参照)と、電池の起電力に
よって放電された抵抗放電方式による初期ピーク抵抗
(図3参照)との関係を説明する。初期ピーク抵抗は、
放電方式が異なっても、ある放電電気量(放電深度)ま
で放電すれば必ず測定される。初期ピーク抵抗とは、
(理論回路電圧−放電時の最高電圧)÷放電電流の計算
式で求められるものであり、放電方式が異なっていて
も、同一の電池であれば、初期ピーク抵抗は同一の値が
得られる。
期ピーク抵抗と、定電流方式によって求めた平均内部抵
抗及び充放電効率は各々相関があることとなり、電池の
初期性能検査は、定電流方式はもとより、抵抗放電方式
においても、電池自体の起電力によって僅かに放電する
ことのみにより行うことができるようになる。
て、電池自体の起電力によって僅かに放電することのみ
により、電池の初期コンディショニングを行うととも
に、電池の初期ピーク抵抗と平均内部抵抗及び充放電効
率との相関関係により電池の特性の評価を行うことで、
コストの削減及び時間の短縮を図ったナトリウム−硫黄
電池の初期コンディショニング方法及び初期性能検査方
法を提供することができる。
図である。
備え、ナトリウム−硫黄電池E自身の起電力により放電
させる抵抗放電方式の回路を示す回路図である。
って初期放電させ、初期コンディショニングを行うこと
を示すグラフである。
び直流電源Vを備え、直流電源Vにより一定電流を流す
定電流放電方式の回路を示す回路図である。
よって第1〜第4の初期放電を行い、初期ピーク抵抗を
測定後、定格容量までの放電、さらに充電をすることを
示すグラフである。
所定の電流で充放電した場合の電池電圧(V)と放電深
度(Ah)の関係、及び充電電圧曲線、理論開路電圧、
放電電圧曲線等を説明するグラフである。
と初期ピーク抵抗との関係を示すグラフである。
初期ピーク抵抗との関係を示すグラフである。
0…ベータアルミナ固体電解質管、11…絶縁リング、
12…陰極金具、13…陰極蓋、14…陰極室、15…
安全管、16…ナトリウム収納容器、16a…小孔、1
7…陽極室、18…陽極金具、19…陽極容器、20…
底蓋、21…硫黄を含浸したカーボンマット(陽極導電
材)。
Claims (4)
- 【請求項1】 陽極容器と、同陽極容器の内部に配設さ
れた固体電解質管と、同固体電解質管の内部に収容され
た金属ナトリウムからなる陰極活物質と、前記固体電解
質管と前記陽極容器間に収容された硫黄からなる陽極活
物質を含浸した陽極導電材と、同陽極導電材と前記固体
電解質管の間に形成された高抵抗層を備えたナトリウム
−硫黄電池を組立てた後、同電池を加熱炉内で昇温し、
放電して初期コンディショニングを行う方法であって、 抵抗放電方式により、前記電池の初期ピーク抵抗が得ら
れるまで放電を行い、完全充放電を行わずに、電池を初
期化することを特徴とするナトリウム−硫黄電池の初期
コンディショニング方法。 - 【請求項2】 前記初期放電を行うに当り、初期ピーク
抵抗が得られるまでに放電電流の電流値を多段階に分け
て行い、段階を経る毎に、固体電解質管の表面積当りの
電流密度を大きくして放電を行う請求項1に記載の初期
コンディショニング方法。 - 【請求項3】 前記初期放電の電気量を放電するまでに
放電電流の電流値を少なくとも2段階に分けて、固体電
解質管の表面積当りの電流密度を、第1段階の放電が
0.005A/cm2以下、最終段階の放電が0.1A
/cm2以下で放電を行う請求項2に記載の初期コンデ
ィショニング方法。 - 【請求項4】 陽極容器と、同陽極容器の内部に配設さ
れた固体電解質管と、同固体電解質管の内部に収容され
た金属ナトリウムからなる陰極活物質と、前記固体電解
質管と前記陽極容器間に収容された硫黄からなる陽極活
物質を含浸した陽極導電材と、同陽極導電材と前記固体
電解質管の間に形成された高抵抗層を備えたナトリウム
−硫黄電池を組立てた後、同電池を加熱炉内で昇温し、
放電して電池の初期検査を行う方法であって、 抵抗放電方式又は定電流方式により、前記電池の初期ピ
ーク抵抗が得られるまで放電を行い、初期ピーク抵抗を
求め、一方、初期ピーク抵抗と平均内部抵抗との相関関
係及び初期ピーク抵抗と充放電効率との相関関係を求
め、初期ピーク抵抗により、前記平均内部抵抗及び充放
電効率の特性を評価することを特徴とするナトリウム−
硫黄電池の初期性能検査方法。
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Cited By (1)
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