JP3500838B2 - 材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材およびその製造方法 - Google Patents

材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材およびその製造方法

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JP3500838B2
JP3500838B2 JP05714696A JP5714696A JP3500838B2 JP 3500838 B2 JP3500838 B2 JP 3500838B2 JP 05714696 A JP05714696 A JP 05714696A JP 5714696 A JP5714696 A JP 5714696A JP 3500838 B2 JP3500838 B2 JP 3500838B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建築、海洋構造
物、パイプ、造船、貯槽、土木、建設機械等の分野で使
用される、厚みが30mm以上の厚鋼板、鋼帯、形鋼または
棒鋼などの鋼材、特に材質ばらつきが少なくかつ溶接性
に優れた高強度鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】厚鋼板に代表される肉厚の鋼材は、上記
のように、様々な分野で使用され、高強度化や高じん性
化などの特性の改善がはかられているが、近年では、こ
れらの特性が厚み方向において均一でありかつ鋼材間で
のばらつきも小さいことが、要求されている。
【0003】例えば、「鉄と鋼 第74年(1988)第6
号」の第11〜21頁には、建築物の高層化が進むにつれ、
巨大地震に対して建築物の変形により振動エネルギーを
吸収し倒壊を防ぐ設計がとられるようになってきたこと
が報告されている。具体的には、地震発生時に建築物の
骨組みを所定形状で崩壊させ、この骨組み材の塑性化に
よって建物の倒壊を防ぐものである。すなわち、地震発
生時に建築物の骨組みが、設計者の意図した挙動を示す
ことが前提になり、建築物の柱や梁などの鋼材の耐力比
を設計者が完全に把握していることが必要である。従っ
て、柱や梁などに用いる鋼板やH形鋼などの鋼材は均質
であることが不可欠であり、鋼材の強度ばらつきは大き
な問題となる。
【0004】ここで、建築や造船などに供する鋼材には
高張力かつ高じん性が要求されるところから、この種の
鋼材は、制御圧延制御冷却法、いわゆるTMCP法に従って
製造されるのが通例である。しかし、このTMCP法によっ
て肉厚の鋼材を製造すると、圧延後の冷却処理における
冷却速度が厚み方向あるいは各鋼材間で異なって組織が
変化するため、得られた鋼材の厚み方向あるいは各鋼材
間で材質のばらつきが発生するのである。材質のばらつ
きとしては、特に厚鋼板において厚み方向に現れるもの
のほか、H形鋼におけるウェブおよびフランジ間での冷
却が不均一になってウェブおよびフランジ間に現れるも
の、または各ロット間に現れるもの等がある。
【0005】そこで、特開平4−224623号公報では、Nb
を添加し、また圧延後の冷却速度を3℃/s以上とする
とともに、冷却停止温度の上限を500 ℃とすることによ
り、板厚方向の組織をフェライトとベイナイトの混合し
た組織として、板厚中心部の強度を上昇して板厚方向の
硬度差を小さくすることが提案されている。しかしなが
ら、冷却速度を板厚中心部においても3℃/s以上に厳
密に制御しなくてはならず、板厚方向に冷却速度分布が
生じると、直ちに材質のばらつきとなるため、その製造
を厳格に制御する必要があり、工業的規模での製造には
不向きであった。
【0006】一方、特開昭62−130215号公報には、Cuの
析出強化によって強度を確保し、さらに熱間圧延後に0.
5 ℃/s以上の冷却速度で300 〜700 ℃に冷却し、次い
で500 〜650 ℃の温度域に一定時間保持した後、室温ま
で冷却することにより、低温じん性を改善することが、
提案されている。しかし、この技術は、低温じん性の改
善を目指したものであり、上記した様々な形での材質の
ばらつきを抑えることによって、近年の構造用鋼などに
要求される、材質の均一性を満足することは難しい。
【0007】また、上記した用途の鋼材では、特に高強
度化をはかることも重要である。従来、鋼の高強度化に
は、再加熱焼き入れ焼き戻し処理によって焼き戻しマル
テンサイト組織を得る手法、および制御圧延による手法
が、主に用いられている。しかし、焼き戻しマルテンサ
イト組織を得る手法は、再加熱焼き入れ焼き戻し処理に
要するコストが高く、また焼き入れ性を増大させるため
に溶接性の指標である、溶接割れ感受性指数(Pcm)が
高くなり、溶接性が不利となる。また、制御圧延法で
は、強度の上昇が限られるところが問題となる。
【0008】一方、特公昭63−58906 号公報には、B、
VおよびMo等の焼入れ性を増大する元素を添加するとと
もに、焼き入れ焼き戻し処理によって、強度上昇をはか
ることが示されているが、やはりPcmが高くなるため、
溶接性が問題になる。さらに、特開昭62-158817 公報に
は、NbおよびTiの析出を利用しかつ、急冷後の焼き戻し
処理を施して、比較的低いPcmの下に高強度を実現して
いるが、やはり急速冷却によるコスト上昇が懸念され
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の問
題を解消した、すなわち圧延後の冷却速度における制約
のない、厚み方向および鋼材間などでの材質ばらつきが
少なく、しかも引張強さ700MPa以上の溶接性に優れた鋼
材およびその製造方法について提案することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】肉厚の鋼材、その典型例
である厚鋼板の材質ばらつきは、冷却工程における、鋼
板表面から中心部までの厚み方向冷却速度の大幅な変化
あるいは製造条件のばらつきによる冷却速度の変化か
ら、組織変動が発生することに起因している。この組織
変動を回避するには、広い冷却速度範囲で均質の組織を
得ることが肝要である。
【0011】そこで、発明者らは、製造条件が変化して
も均質の組織を得る手法に関して、原点に立ち戻って検
討を重ねたところ、成分組成を新たに設計し直すことに
よって、冷却速度の変化にかかわらず厚み方向の組織を
一定とした、材質ばらつきの少ない鋼板が得られること
を知見するに至った。すなわち、Mn,TiおよびBを適量
添加することによって、組織を冷却速度に依存すること
なく、ベイナイト単相組織とした。
【0012】さらに、良好な溶接性を得るために、C量
を極端に少なくする一方、C量の低減による強度不足
は、Pcmを大きく上昇させない手法である、ベイナイト
組織強化およびCuによる析出強化の併用にて補った。な
お、従来、 2.0mass%より多くのCu添加は靱性に悪影響
をおよぼすと考えられていたが、極低C化、さらには熱
間圧延条件の制御によって、十分な靱性が得られること
も見出し、これらを総合して上記課題を解決した。
【0013】すなわちこの発明は、 (1) C:0.001 〜0.02mass%、Si:0.60mass%以下、M
n:1.0 〜3.0 mass%、Ti:0.005 〜0.20mass%、B:
0.0003〜0.0050mass%、Cu:2.0 をこえ3.0 mass%以下
およびAl:0.10mass%以下を含み、残部鉄および不可避
的不純物の成分組成になる材質ばらつきが少なくかつ溶
接性に優れる高強度鋼材(第1発明) (2) 第1発明において、鋼材が、さらにCr:0.2 mass%
以下、Ni:3.0 mass%以下、Mo:0.2 mass%以下、W:
0.5 mass%以下、V:0.005 〜0.20mass%およびNb:0.
20mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含
有する組成になる材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優
れる高強度鋼材(第2発明) (3) 第1発明または第2発明において、鋼材が、さらに
Ca:0.006 mass%以下およびREM:0.02mass%以下のうち
から選んだ1種または2種以上を含有する組成になる材
質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材(第
3発明)である。
【0014】また、上記の鋼材は、第1発明ないし第3
発明のそれぞれに規定された成分に準じた、種々の組成
になる鋼素材を用いて、次の3手法によって製造するこ
とができる。すなわち、 (A) 鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加熱後、800 ℃
から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上となる熱間圧
延を施し、その後冷却を行うことを特徴とする製造方法 (B) 鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加熱後、800 ℃
から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上となる熱間圧
延を施し、その後の冷却過程にて500 〜650 ℃の温度範
囲で1200〜6000s保持することを特徴とする製造方法 (c) 鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加熱後、800 ℃
から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上となる熱間圧
延を施し、その後室温まで冷却してから500 〜650 ℃に
再加熱して1200〜6000s保持することを特徴とする製造
方法である。
【0015】
【作用】次に、この発明の鋼材の各化学成分の限定理由
について説明する。 C:0.001 〜0.02mass% Cは、強度を確保するために0.001 mass%以上の含有量
が必要であるが、0.02mass%をこえると、溶接性を著し
く害するため、0.001 〜0.02mass%とした。
【0016】Mn:1.0 〜3.0 mass% Mnは、実質上冷却速度に依存することなしに、均質なベ
イナイト組織を得るとともに、固溶強化により強度を上
昇するために、1.0 mass%以上は必要である。一方、3.
0 mass%をこえる含有は、靱性を劣化するため、1.0 〜
3.0 mass%の範囲とする。
【0017】Ti:0.005 〜0.20mass% Tiは、ベイナイト組織を形成するためおよび溶接熱影響
部(HAZ) の靭性の向上のために0.005 mass%以上は必要
であるが、その効果は0.20mass%をこえると飽和するか
ら、コスト削減の観点から0.20mass%を上限とする。
【0018】B:0.0003〜0.0050mass% Bは、微量の添加によって鋼の焼入れ性を高めてベイナ
イト組織の形成に寄与する成分であり、少なくとも0.00
03mass%は必要である。一方、0.0050mass%をこえる
と、BNなどのB化合物を形成して靱性を劣化するため、
0.0003〜0.0050mass%に限定する。
【0019】Cu:2.0 mass%をこえ3.0 mass%以下 Cuは、析出強化および固溶強化により引張強さを700MPa
以上に上昇するのに2.0 mass%をこえる含有が必要であ
る。一方、3.0 mass%をこえると、コストの上昇をまね
くため、3.0 mass%以下とする。
【0020】Al:0.10mass%以下 Alは、脱酸のために好ましくは0.01mass%以上は必要で
ある。しかし、0.10mass%を超えて添加した場合には鋼
の清浄度が劣化するため、上限は0.10mass%とする。
【0021】この発明は、上記の基本組成に成分調整を
することによって、特に圧延後の冷却速度にほとんど依
存しないで、均質な組織、具体的には90%以上がベイナ
イトの組織が得られるところに特徴がある。この特徴
は、図1に結果を示す実験から、明らかである。
【0022】すなわち、この発明に従う成分に調整した
鋼(発明例)と、建築材料に用いられる在来の鋼(従来
例)とに関して、製造工程における冷却速度を、0.1 〜
50℃/sの間で種々に変化させて得た鋼板の引張り強さ
を調査した結果について、図1に示す。同図から、この
発明に従う成分に調整することによって、冷却速度に依
存しないで一定した強度が得られることがわかる。特
に、従来では予測できないほど広範囲の冷却速度におい
て、Y.S およびT.S 値のばらつきが少なくなる。これ
は、上述のとおり、Mn,TiおよびBを適量添加が寄与す
るところである。従って、厚鋼板の厚み方向で冷却速度
が変化しても、冷却速度に依存して強度が変化すること
がなく、厚み方向に材質ばらつきの少ない厚鋼板が得ら
れるのである。
【0023】なお、発明例は、C:0.009 mass%、Si:
0.25mass%、Mn:1.8 mass%、Ti:0.01mass%、B:0.
0012mass%、Cu:2.1 mass%、Nb:0.035 mass%および
Al:0.030mass %を含み、残部鉄および不可避的不純物
になる成分組成になり、一方、従来例は、C:0.14mass
%、Si:0.4 mass%、Mn:1.31mass%、Al:0.024 mass
%、Nb:0.015 mass%、Ti:0.013 mass%であった。そ
して、同じ製造工程における、冷却速度を変化させて、
厚み:50mmの厚鋼板を多数製造して、それぞれの厚鋼板
から採取した試験片にて引張り強さを測定した。
【0024】また、この発明においては、上記基本成分
に、所定の化学成分を添加することによって、強度やじ
ん性のレベルを自在に制御することができる。このと
き、既に獲得した均質な組織は、新たな成分の添加に影
響されることが少ないため、材質ばらつきの少ない高強
度および/または高じん性の厚鋼板が容易に得られるの
である。
【0025】まず、強度向上をはかるために、析出強化
成分として、Si:0.60mass%以下、Cr:0.2 mass%以
下、Ni:3.0 mass%以下、Mo:0.2 mass%以下、W:0.
5 mass%以下、V:0.005 〜0.20mass%、Nb:0.20mass
%以下の1種または2種以上を、添加することができ
る。これらの析出強化成分を添加した場合は、後述する
析出強化処理を施すことにより、さらなる強化が可能で
ある。なお、これらの成分は、微量でも効果があるた
め、V以外の下限については適宜設定することができ
る。
【0026】Si:0.60mass%以下 Siは、強度上昇のために0.05mass%以上添加するのが好
ましいが、0.60mass%を越えて添加すると溶接性を阻害
するため、上限は0.60mass%とする。
【0027】Cr:0.2 mass%以下 Crは、母材および溶接部の強度を高めるのに有効である
が、0.2 mass%をこえて添加すると溶接性や溶接熱影響
部(HAZ )の靱性が劣化するため、0.2 mass%以下の範
囲で添加する。
【0028】Ni:3.0 mass%以下 Niは、強度および靭性を向上し、またCuを添加した場合
には圧延時のCu割れを防止するのに有効であるが、高価
である上、過剰に添加してもその効果が飽和するため、
3.0 mass%以下の範囲で添加する。なお、0.05mass%未
満の添加では上記の効果が不十分であるため添加量は0.
05mass%以上とすることが好ましい。
【0029】Mo:0.2 mass%以下 Moは、常温および高温での強度を上昇する効果がある
が、0.2 mass%をこえると、溶接性が劣化するため、0.
2 mass%以下の範囲で添加する。
【0030】W:0.5 mass%以下 Wは、高温強度を上昇する効果があるが、高価である
上、0.5 mass%をこえると、じん性が劣化するため、0.
5 mass%以下の範囲で添加する。
【0031】V:0.005 〜0.20mass% Vは、析出強化のために、0.005 mass%以上は添加する
が、0.20mass%をこえて添加しても、その効果が飽和す
るため、0.20mass%を上限とする。
【0032】Nb:0.20mass%以下 Nbは、析出強化、そしてベイナイト組織の形成のために
添加するが、0.20mass%をこえると、その効果が飽和す
るため0.20mass%以下とする。
【0033】また、HAZ のじん性向上をはかるために、
CaおよびREM のうちから選んだ少なくとも1種を添加す
ることができる。 Ca:0.006 mass%以下 Caは、硫化物系介在物の形態制御してHAZ の靱性を向上
するのに有効であるが、0.006 mass%をこえると鋼中介
在物を形成して鋼の性質を悪化するため、0.006 mass%
以下とする。
【0034】REM :0.02 mass %以下 REM はフェライト析出核の形成に役立ち、またオキシサ
ルファイドとなってオーステナイト粒の粒成長を抑制し
てHAZ のじん性を向上するが、0.02mass%をこえて添加
すると鋼の清浄度を損なうため、0.02mass%以下とす
る。
【0035】なお、CaおよびREM は、0.001 mass%未満
の添加では上記HAZ 靱性向上効果が不十分であるため、
添加量は0.001 mass%以上とすることが好ましい。
【0036】上記成分組成の鋼板は、上述した基本組成
に成分調整をすることによって、均質な組織が得られる
ため、製造条件を厳密に制御する必要はなく、この種の
鋼板を製造する際の通例に従って製造すればよいが、材
質ばらつきの抑制に併せて、高強度および溶接性を確保
するには、次に示す製造工程が有利に適合する。
【0037】すなわち、上述した基本組成に成分調整し
た鋼スラブを、Ac3点〜1350℃の温度に加熱後、800 ℃
から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上となる熱間圧
延を施し、その後冷却を行う工程が、高強度化および溶
接性の向上に有効である。
【0038】ここで、加熱温度をAc3点〜1350℃とする
のは、ここで組織を一旦オーステナイトとし、引き続く
圧延工程にてベイナイト組織を得るためである。なお、
再結晶域での圧延を行うと、冷却後の組織が更に微細化
し靱性が良好になるので、再結晶域圧延を行ってもよ
い。
【0039】次に、 800から650 ℃の温度域での圧下率
が20%以上となる圧延を施す理由は、これ以上の温度域
での圧延では十分な靱性が得られないためである。また
650℃以下では鋼の変形抵抗が上昇し圧延が困難になる
ため、圧延温度の下限は 650℃とした。さらに、20%以
上圧延を行う理由は、20%未満の圧下量では組織が微細
化できず十分な靱性が得られないためである。
【0040】その後の冷却速度は、とくに限定しない
が、靱性を確保するには、30℃/sをこえないことが好
ましい。
【0041】なお、Cuの析出強化を所期して、圧延後の
冷却過程にて500 〜650 ℃の温度範囲で1200〜6000s保
持するか、または圧延後に室温まで冷却してから500 〜
650℃に再加熱して1200〜6000s保持することが、強度
を上昇するのに有効である。
【0042】すなわち、温度範囲は500 ℃以上でなけれ
ば十分なCuの拡散が行われず、逆に650 ℃を越えるとCu
が固溶してしまうため、析出強化しない。よって、保持
温度は500 ℃以上650 ℃以下とする。また、冷却途中あ
るいは冷却後、再加熱で1200s 以上保持しなければCu析
出が十分でなく、6000s を越えて保持すると過時効とな
り強度低下が起こるため、起こるため、保持時間は1200
s 以上6000s 以下とする。
【0043】
【実施例】実施例1 表1および2に示す種々の成分組成に調整した鋼スラブ
を用いて、表3および4に示す条件に従って、厚さ50mm
の厚鋼板を製造した。
【0044】かくして得られた各厚鋼板について、引張
試験およびシャルピー試験を行って、その機械的性質を
調査するとともに、厚み方向の強度のばらつきを評価す
るため、鋼板断面の硬さを表面より2mmピッチにて測定
して板厚方向の硬さ分布を調査した。また、HAZ のじん
性を評価するため、鋼板を1400℃に加熱後800 ℃から50
0 ℃まで10sで冷却する熱サイクル(50kJ/cmの入熱量
で溶接したときのHAZの熱履歴に相当)を施してから、
シャルピー試験片を採取し、0℃でのシャルピー吸収エ
ネルギーを測定した。
【0045】これらの各調査結果を、表3および4に併
記するように、この発明に従って得られた厚鋼板は、70
0MPa以上の引張強さを有しかつ組織が均一になるため、
厚み方向の硬さのばらつきが鋼材20〜35に比べて極めて
小さく、硬さの最大値と最小値との差がHv で20未満と
なることがわかる。また、析出強化成分を添加し析出処
理を施した鋼材1〜8は、析出強化成分を含まない鋼材
9,10と比べて、高い強度が得られている。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】また、図2に、発明例の溶接性を従来例と
比較した結果を示すように、発明例は従来例と同程度の
強度を Pcmで0.04mass%低い設計で得ることが可能であ
り、従来例よりも飛躍的に溶接性が向上していることが
わかる。
【0051】
【発明の効果】この発明によって得られる鋼材は、工業
的規模での生産における冷却工程で用いられる、いずれ
の冷却速度によっても、材質がばらつくことはない。従
って、今後需要増が予想される、厚み方向の材質ばらつ
きが極めて少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材を、工
業的に安定して供給できる。なお、この発明は形鋼の分
野にも有利に適合する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 厚鋼板における冷却速度と強度との関係を示
す図である。
【図2】 Pcmと引張強さとの関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川端 文丸 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平6−93371(JP,A) 特開 昭62−256916(JP,A) 特開 平6−93332(JP,A) 特開 昭62−130215(JP,A) 特開 平2−115352(JP,A) 特開 平7−331382(JP,A) 特開 平8−144019(JP,A) 特開 平9−157741(JP,A) 特開 平9−249915(JP,A) 特開 平9−176731(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 C21D 8/02

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.001 〜0.02mass% Mn:1.0 〜3.0 mass% Ti:0.005 〜0.20mass%、 B:0.0003〜0.0050mass%、 Cu:2.0 mass%をこえ3.0 mass%以下および Al:0.10mass%以下を含み、残部鉄および不可避的不純物の成分組成になる
    材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼材が、さらに Si:0.60mass%以下、 Cr:0.2 mass%以下、 Ni:3.0 mass%以下、 Mo:0.2 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 V:0.005 〜0.20mass%および Nb:0.20mass%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なる材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼
    材。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼材が、さ
    らに Ca:0.006 mass%以下および REM:0.02mass%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なる材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼
    材。
  4. 【請求項4】 C:0.001 〜0.02mass%、 Mn:1.0 〜3.0 mass%、 Ti:0.005 〜0.20mass%、 B:0.0003〜0.0050mass%、 Cu:2.0 mass%をこえ3.0 mass%以下および Al:0.10mass%以下 を含む組成になる鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加
    熱後、800 ℃から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上
    となる熱間圧延を施し、その後冷却を行うことを特徴と
    する材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼
    材の製造方法。
  5. 【請求項5】 C:0.001 〜0.02mass%、 Mn:1.0 〜3.0 mass%、 Ti:0.005 〜0.20mass%、 B:0.0003〜0.0050mass%、 Cu:2.0 mass%をこえ3.0 mass%以下および Al:0.10mass%以下 を含む組成になる鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加
    熱後、800 ℃から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上
    となる熱間圧延を施し、その後の冷却過程にて500 〜65
    0 ℃の温度範囲で1200〜6000s保持することを特徴とす
    る材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼材
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 C:0.001 〜0.02mass%、 Mn:1.0 〜3.0 mass%、 Ti:0.005 〜0.20mass%、 B:0.0003〜0.0050mass%、 Cu:2.0 mass%をこえ3.0 mass%以下および Al:0.10mass%以下 を含む組成になる鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加
    熱後、800 ℃から650 ℃の温度域での圧下率が20%以上
    となる熱間圧延を施し、その後室温まで冷却してから50
    0 〜650 ℃に再加熱して1200〜6000s保持することを特
    徴とする材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強
    度鋼材の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項4、5または6において、鋼素材
    が、さらに Si:0.6 mass%以下、 Cr:0.2 mass%以下、 Ni:3.0 mass%以下、 Mo:0.2 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 V:0.005 〜0.20mass%および Nb:0.20mass%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なる材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼
    材の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項4、5、6または7において、鋼
    素材が、さらに Ca:0.006 mass%以下および REM:0.02mass%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なる材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れる高強度鋼
    材の製造方法。
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