JP3497220B2 - ブラック石英ガラスの製造法 - Google Patents

ブラック石英ガラスの製造法

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誠一 鈴木
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分光光度計用セル、あ
るいは、半導体製造用石英ガラス治具の炉芯管等に用い
るブラック石英ガラスの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、分光光度計用セルの材料や半
導体用炉芯管等の高温材には、五酸化バナジウムを含有
するブラック石英ガラスが用いられている(特開昭54
−157121号公報)。
【0003】しかし、五酸化バナジウムを含有するブラ
ック石英ガラスは、高温で結晶化部分を生じるため使用
に耐え得るブラック石英ガラスを得るには、歩留まりが
悪く、コスト高になる。また、ガラス加工上さらに高温
熱処理工程が必要な製品では、この結晶化は致命的欠陥
となっていた。
【0004】このため、本出願人は、熱処理時にも結晶
化することなく、光による熱伝導をほぼ100%カット
し、かつ、均熱効果があるブラック石英ガラスを開発し
た(特開平5−262535号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、五酸化ニオブ
を含有するブラック石英ガラスは、例えば、五塩化ニオ
ブを原料の水晶粉にドープし、さらに高温での還元処理
が必要となるなど操作が煩雑で製造原価も高い。
【0006】また、ブラック石英ガラスは、迷光を防止
するため蛍光分析用セルとして用いられ、紫外線(18
0nm〜400nm)をセル中の被検査液に透過させ、
被検査物が発する蛍光から定性・定量する方法が広く用
いられている。
【0007】しかし、近年半導体技術や医療技術の高度
化に伴い高精度分析に対応した製品の提供が不可欠とな
り、試料の蛍光を調べる蛍光分析用セルも従来にない高
精度高品質化が必要になってきた。ところが従来のブラ
ック石英ガラスを用いたセルはセル自体のブラック石英
ガラスから紫外線透過時に蛍光が生じるため蛍光分析の
測定が不可能あるいは正しい数値が得られなくなり、精
度の高い蛍光を調べることが出来ず、紫外線を当てても
蛍光を発しないブラック石英ガラスの提供が望まれてい
た。
【0008】本発明は、光を完全に遮断しセルに用いて
も迷光をカットでき、均熱効果があり、また、熱処理時
に結晶化することがなく、さらに、紫外線を照射しても
蛍光を発しないブラック石英ガラスを安価に提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、バナ
ジウム、ニオブ、タンタルのいずれかの金属塊を粉砕媒
体として水晶粉または合成シリカ粉末を粉砕して均一に
混合し、酸水素火炎溶融法あるいは電気炉中でガラス化
することによって、均一な黒色度の高いブラック石英ガ
ラスが安価に得られるとの知見を得て本発明を完成し
た。
【0010】
【0011】 前記金属を選択したのは、多原子化をと
りえて還元性が強く、ガラス化時に熱還元効果により、
鮮やかな黒色を呈すること、水晶粉や合成シリカ粉末に
よって容易に粉砕されて均一に分散し、かつ安定な金属
としてガラス中に存在できること、また、電子ビーム溶
解精製などにより市販品として高純度のものが容易に得
られるからである。前記金属は、単体または2種以上を
混合して用いることができる。
【0012】 金属の混合量は、500〜40,000
ppm、さらに好ましくは1,000〜6,000pp
mである。添加量が500ppm未満では、黒色度が充
分でなく、また40,000ppmを超えると、結晶化
して石英ガラスの性質を損ない、また、色が不均一とな
り好ましくない。
【0013】合成シリカとしては、四塩化珪素やシリコ
ンアルコキシドなどを原料として得たアモルファス等を
用いることができるが、純度がよく微粉化できるもので
あればどの様なものでも構わない。
【0014】 本発明の特色は、従来の方法がニオブ塩
化物をアルコール溶液に溶解させ、この溶液を水晶粉も
しくは合成シリカ粉末に添加し、これを湿潤・乾燥さ
せ、高温で還元処理する工程をとっていたが、本発明で
は、ボールミル等の粉砕混合機にボールの代わりに金属
塊を粉砕媒体として用い、水晶もしくは合成シリカを粉
砕することによって自らも粉砕され、均一な混合体を得
ることにある。
【0015】従来の塩化物や酸化物を用いるものは、酸
化物とする過程で充分な酸化が行われず、塩化物が残存
して結晶化したり、ガラス化する過程で酸化物が充分還
元されずに残存して結晶化が生じていたと思われる。こ
れに対して本発明は、金属塊とシリカ粉末の混合によっ
て、これらの化学的な反応を起こさせず、シリカ粉末に
金属を分散した状態にして結晶化を防止したものであ
る。
【0016】
【0017】 また、金属ロッドを粉砕媒体としてロッ
ドミル方式で、水晶粉、または、合成シリカ粉末の粉砕
と同時にロッドからの微細な金属を一体的な連続プロセ
スとして均一に混合することができ、このときの金属の
粒度は100μm以下、望ましくは70μm以下の微粉
末となって原料粉と粉砕混合されるようにロッドミルの
運転条件を設定する。
【0018】また、混合する水晶粉または合成シリカ粉
末の粒度は特に問わないが、遷移金属とより均一な粉砕
混合体を得る上であらかじめ60〜300μm、望まし
くは70〜250μmに粒度調整をしておくことが好ま
しい。
【0019】 従来、石英ガラス製品の製造において
は、粒度を細かくすることは発泡につながるとして避け
られていたが、本発明は金属の添加量や粒度を特定する
ことにより、石英ガラス内に均一に分散させ、色むらの
無い優れた製品を提供することを実現した。
【0020】得られた混合物を酸水素溶融法あるいは電
気炉中でガラス化してブラック石英ガラスを得る。
【0021】
【効果】本発明によれば、製造時における結晶化が起こ
りにくく、また、1,000℃以上での再加熱による熱
処理に対しても結晶化することなく、接着などの加工性
が良い。半導体用耐熱炉芯管などに使用すると、光透過
率が、180nm〜5,000nmの波長域において厚
さ1mmで1%以下と吸収が大きいため、輻射熱を吸収
し、放射熱として均一に熱を放出するため、炉芯管の均
熱効果があがる。また、これを分光光度計用セルに使用
した場合、ほとんど光を吸収するのでセル内の迷光をほ
ぼ0におさえられる。
【0022】また、紫外線を照射しても蛍光を発するこ
とがないので蛍光分析用のセルとして高精度の分析が可
能となり、紫外から赤外までの広範囲の波長域における
遮光性に優れ高精度の蛍光分析用セルなどの製品を提供
できる。
【0023】さらに、蛍光の発生メカニズムは定かでは
ないが、不純物による構造欠陥とされており、高純度の
原料を選定すれば、市販の遷移金属は純度が高いので、
構造欠陥の原因となる不純物の影響も避けられる。
【0024】 本発明は、混合粉体の粒径分布を適宜制
御でき、混合粉体の粒径を100μm以下、望ましくは
70μm以下、さらに好ましくは、40μm以下の範囲
にシャープな粒度分布のピークを有するように設定する
ことができる。
【0025】
【0026】
【実施例】以下に、実施例を用いてさらに具体的に説明
するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】実施例1 原料として、金属バナジウム、及び、表1に示す粒度調
整をした水晶粉を用いた。水晶粉に対する金属バナジウ
ムの混合濃度は2,000ppmとし、水晶粉および金
属バナジウムの混合粉末を乳鉢で70μm以下の微粉末
になるように充分に混合した後、酸水素火炎溶融法によ
り溶融し、サイズ100mmφ×100mmのブラック
石英ガラスインゴットを得た。得られたブラック石英ガ
ラスの見かけ比重は2.2であり、完全な黒体であっ
た。
【表1】
【0028】得られたブラック石英ガラスから厚さ1m
mの研磨板を作成し、分光光度計を用い透過率を測定し
たところ波長180nmから5,000nmまでの光を
全く透過しないことが確認された。また、蛍光光度計に
おいて200nm〜500nmの波長で励起しても蛍光
を発しなかった。
【0029】実施例2 原料として、表2に示す粒度調整をした合成シリカ粉末
(日東化学製)500gをアルミナ製のボールミルポッ
ト(日本化学陶業製)に入れ、金属タンタル小塊(1m
m〜30mm)を粉砕媒体として、混合粉の粒度を70
μm以下になるように50時間合成シリカ粉末を粉砕
し、表2に示す粒度分布の混合微粉末を得た。このと
き、金属タンタルの減量から、1,600ppmの金属
タンタルが合成シリカ粉末に混合されたことを確認し
た。
【表2】
【0030】実施例3 原料として、表3に示す粒度調整をした合成シリカ粉末
(日東化学製)500gをアルミナ製のボールミルポッ
ト(日本化学陶業製)に入れ、金属バナジウム小塊(1
mm〜30mm)を粉砕媒体として、混合粉の粒度を7
0μm以下になるように120時間合成シリカ粉末を粉
砕し、表3に示す粒度分布の混合微粉末を得た。このと
き、金属バナジウムの減量から、2,800ppmの金
属バナジウムが合成シリカ粉末に混合されたことを確認
した。
【表3】
【0031】実施例4 原料として、表4に示す粒度調整をした合成シリカ粉末
(日東化学製)500gをアルミナ製のボールミルポッ
ト(日本化学陶業製)に入れ、金属ニオブ小塊(1mm
〜30mm)を粉砕媒体として、混合粉の粒度を70μ
m以下になるように120時間合成シリカ粉末を粉砕
し、表4に示す粒度分布の混合微粉末を得た。このと
き、金属ニオブの減量から、2,800ppmの金属ニ
オブが合成シリカ粉末に混合されたことを確認した。
【表4】
【0032】実施例5 原料として、表5に示す粒度調整をした合成シリカ粉末
(日東化学製)200gをアルミナ製のボールミルポッ
ト(日本化学陶業製)に入れ、金属ニオブ小塊(1mm
〜30mm)を粉砕媒体として、混合粉の粒度を70μ
m以下になるように50時間合成シリカ粉末を粉砕し、
表5に示す粒度分布の混合微粉末を得た。このとき、金
属ニオブの減量から、5,500ppmの金属ニオブが
合成シリカ粉末に混合されたことを確認した。
【表5】
【0033】実施例1〜5で得られた粉末を、それぞれ
カーボン製の容器にいれ、電気炉中で1,800℃で3
0分間ガラス化を行い、50mmφ×20mmのブラッ
ク石英ガラスを得た。得られたブラック石英ガラスはい
ずれも完全な黒体であり、1mmの研磨板とし透過率を
測定したが、どれも波長180nm〜5,000nmで
全く光を透過しなかった。また、254nmの紫外線を
照射したところいずれも蛍光は発せられなかった。
【0034】得られたサンプルについて、結晶化防止、
加工性について試験を行った。
【0035】[結晶化防止]実施例1〜5で得られたブ
ラック石英ガラスと五酸化バナジウムを着色剤としたブ
ラック石英ガラスを大気中で1,200℃および1,2
50℃に再加熱し、結晶化について比較したところ、五
酸化バナジウムを着色剤とした製品は、1,200℃で
結晶化して外観上好ましくなく商品価値上問題があった
が、本発明品は、いずれも1,250℃においても結晶
化が起こらなかった。
【0036】[加工性]実施例1〜5で得られたブラッ
ク石英ガラスは、高温加熱による結晶化がおきない為、
五酸化バナジウム添加物と比較して接着等の高温加工が
行い易くなり、また、切削等の加工は石英ガラスと同等
であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 21/22 501 H01L 21/22 501M (56)参考文献 特開 平5−178624(JP,A) 特開 平1−172240(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 20/00 C03C 1/00 - 14/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バナジウム、ニオブ、タンタルのいずれか
    の金属塊を粉砕媒体として水晶粉または合成シリカ粉末
    を粉砕して均一に混合し、酸水素火炎溶融法あるいは電
    気炉中でガラス化することを特徴とするブラック石英ガ
    ラスの製造法。
  2. 【請求項2】請求項1において、混合粉の粒度を100
    μm以下とすることを特徴とするブラック石英ガラスの
    製造法。
  3. 【請求項3】請求項1および2のいずれかにおいて、金
    属の混合量は、500〜40,000ppmであること
    を特徴とするブラック石英ガラスの製造法。
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