JP3490190B2 - 義歯安定剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は義歯の固定に使用する義
歯安定剤に関し、経時的な変色が抑制された義歯安定剤
に関する。

【０００２】

【従来の技術】義歯安定剤は、総義歯あるいは部分義歯
使用において、経時的要因による歯ぐきへの適合性を補
うものとして使用される。現在、粉末状、非水系ペース
ト状あるいは合成樹脂を用いた義歯安定剤が使用されて
いる。その中でも合成樹脂、例えば酢酸ビニル樹脂を用
いた義歯安定剤は使用感、機能性に優れていることから
多く使われている。しかしながら、酢酸ビニル樹脂を基
材とする義歯安定剤は、経時的にしばしば黄色あるいは
褐色に着色する場合があり、特に高温保存時において変
色が起こりやすいという欠点がある。このような酢酸ビ
ニル樹脂を用いた義歯安定剤の変色の原因は、酢酸ビニ
ル樹脂自体または使用感の改良のために配合する成分に
よるものと考えられる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、経時
的な変色の少ない義歯安定剤を提供することである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸ビニル樹脂
を基材とする義歯安定剤に、トコフェロール類を配合す
ることによって、経時な変色が抑制された義歯安定剤が
得られることを見いだし、本発明を完成させるにいたっ
た。したがって本発明は、酢酸ビニル樹脂を基材とする
ペースト状義歯安定剤であって、トコフェロール類が配
合されていることを特徴とする義歯安定剤である。本発
明の義歯安定剤の基材である酢酸ビニル樹脂は、従来よ
り義歯安定剤に使用されているものを使用することがで
きる。一般に低重合度酢酸ビニル樹脂、中重合度酢酸ビ
ニル樹脂、高重合度酢酸ビニル樹脂のように分類され、
その中から単独で、あるいはこれらの重合度の異なる酢
酸ビニル樹脂を適宜組み合わせて使用してもよい。本発
明の義歯安定剤における酢酸ビニル樹脂の配合量は、通
常使用されるような配合量でよく、義歯安定剤の全重量
に対して一般に３０〜８０重量％が適当であって、さら
に好ましくは４０〜７０重量％配合される。

【０００５】本発明に使用するトコフェロール類として
は、α−トコフェロールが好適に用いられる。α−トコ
フェロールとしては、例えばｄｌ−α−トコフェロー
ル、酢酸ｄｌ−α−トコフェロール、コハク酸ｄｌ−α
−トコフェロールなどが挙げられる。さらにこれらの塩
類、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、具体
的には酢酸ｄｌ−α−トコフェロールカルシウム、酢酸
ｄｌ−α−トコフェロールナトリウム、酢酸ｄｌ−α−
トコフェロールカリウム、酢酸ｄｌ−α−トコフェロー
ルマグネシウム、コハク酸ｄｌ−α−トコフェロールカ
ルシウム、コハク酸ｄｌ−α−トコフェロールナトリウ
ム、コハク酸ｄｌ−α−トコフェロールカリウム、コハ
ク酸ｄｌ−α−トコフェロールマグネシウムなどが挙げ
られる。これらのトコフェロール類を単独で、あるいは
２種以上を組み合わせて使用してもよい。上記のトコフ
ェロール類は市場で一般に入手でき、本発明ではそのよ
うな市販品を使用することができる。本発明に使用する
トコフェロール類の配合量は特に制限されるものではな
いが、義歯安定剤の全重量に対して0.０１〜１0.０重量
％が適当であり、さらに0.１〜5.０重量％が好ましい。
0.０１重量％未満であると目的とする効果が十分に達成
されず、また１0.０重量％を越えても効果の向上は見ら
れない。

【０００６】本発明の義歯安定剤にはさらに、通常使用
される添加剤を通常の配合量で添加することができる。
例えば、ミツロウ、キャンデリラワックス、マイクロク
リスタリンワックス、パラフィン、ワセリン、カルナバ
ロウ等の油脂・ワックス類、グリセリン、ポリエチレン
グリコール、プロピレングリコール、ソルビット液、
１，３−ブチレングリコール等の湿潤剤を0.１〜１0.０
重量％、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリ
ン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化
剤を0.５〜１0.０重量％、炭酸カルシウム、リン酸水素
カルシウム、無水ケイ酸、ハイドロキシアパタイト、セ
ルロースパウダー等の粉体を0.５〜１5.０重量％、水、
エタノール等の溶剤を１0.０〜３5.０重量％、その他、
色素、香料等を添加してもよい。本発明の義歯安定剤
は、上記の成分を使用して常法に従って製造することが
できる。また、義歯安定剤を充填する容器に特に制限は
なく、通常用いることができるアルミニウムチューブ、
ラミネートチューブ、プラスチックチューブ等が使用で
きる。本発明の義歯安定剤はその適量を義歯床に塗り使
用することができる。

【０００７】

【発明の効果】酢酸ビニル樹脂を基材とするペースト状
義歯安定剤に、トコフェロール類を配合することによ
り、経時的な変色が抑制された義歯安定剤を提供するこ
とができる。

【０００８】比較例及び実施例１〜１２ 以下比較例と実施例により本発明をより詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。義歯安
定剤を表１及び表２に示す組成で（単位：重量％）、常
法に従って製造した。なお、精製水は全量が100 重量％
となるように加えた。製造後、ラミネートチューブ及び
アルミチューブに充填し、５℃及び５０℃で各々１か月
保存した後、着色のない５℃を対照物として５０℃にお
ける着色度合について官能評価を行った。結果を表中に
併せて示す。なお、着色度合の評価基準は下記のとおり
である。 ◎：全く着色なし ○：ほとんど着色なし △：やや着色あり ×：着色あり

【０００９】

【表１】 ──────────────────────────────────── 実 施 例 成 分 名 比較例 ──────────────────── 1 2 3 4 5 6 7 ──────────────────────────────────── 酢酸ビニル樹脂 65 65 65 65 65 65 70 60 エタノール 17 17 17 17 17 17 20 15 ミツロウ 1 1 1 1 1 1 1 1 炭酸カルシウム 5 5 5 5 5 5 5 5 モノグリセリン 2 2 2 2 2 2 2 2 脂肪酸エステル 酢酸dl−α-トコフェロール - 0.01 0.05 0.1 0.5 1 0.5 0.5 精製水 残 残 残 残 残 残 残 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ラミネート × ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 着色 チューブ 度合 アルミ × ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ チューブ ────────────────────────────────────

【００１０】

【表２】 ─────────────────────────────── 実 施 例 成 分 名 ────────────────── 8 9 10 11 12 ─────────────────────────────── 酢酸ビニル樹脂 65 70 60 65 65 エタノール 17 20 15 17 17 ミツロウ 1 1 1 1 1 炭酸カルシウム 5 5 5 5 5 モノグリセリン 2 2 2 2 2 脂肪酸エステル dl−α−トコフェロール 0.5 0.5 0.5 - - コハク 酸dl−α-トコフェロール - - - 0.5 - コハク 酸dl−α-トコフェロールカルシウム - - - - 0.5 精製水 残 残 残 残 残 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ラミネート ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 着色 チューブ 度合 アルミ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ チューブ ─────────────────────────────── ─

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−206604（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−99512（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−262503（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−92830（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−217153（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−181005（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−197735（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−65061（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−247124（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−254150（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−39684（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61K 6/00 A61C 13/23

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 酢酸ビニル樹脂を基材とするペースト状
   義歯安定剤であって、トコフェロール類が配合されてい
   ることを特徴とする義歯安定剤。
2. 【請求項２】 トコフェロール類がｄｌ−α−トコフェ
   ロールである請求項１記載の義歯安定剤。
3. 【請求項３】 トコフェロール類が酢酸ｄｌ−α−トコ
   フェロール及びその塩類から選ばれる請求項１記載の義
   歯安定剤。