JP3486496B2 - 樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

樹脂粒子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂粒子の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】水溶性
樹脂からなる樹脂粒子や、水溶性物質を芯材料としたマ
イクロカプセルを製造するためには、非水系媒体中で油
中水型の樹脂粒子を製造することが必要になる。
【0003】このような油中水型の樹脂粒子を製造する
方法として、特開平4−339805号公報では、分散
安定剤とpHを操作することにより、懸濁重合法で均一
な粒子径分布を有する樹脂粒子を得る方法が開示されて
いる。しかしながら、得られる粒子は粒子径1000μ
m程度の大きな粒子であり、また粒子の樹脂がアクリル
樹脂に限定されてしまうという問題があった。
【0004】特開平1−213351号公報では、高圧
衝突式の乳化機を用いて高い剪断力を粒子に与え、粗大
粒子をカットすることにより、均一な粒子径分布を有す
る樹脂粒子を製造する方法が開示されている。
【0005】また特開昭63−80338号公報では、
芯物質と反対電荷を有する物質を媒体中に分散または溶
解させ、乳化分散させた後、芯物質を溶解した溶剤を除
去することにより樹脂粒子を得る方法が開示されてい
る。
【0006】上記各公報による方法に従えば、比較的粒
子径の小さな油中水型の樹脂粒子を得ることが可能であ
るが、十分に狭い粒子径分布の樹脂粒子を得ることがで
きないという問題があった。
【0007】本発明の目的は、非水系溶媒中で粒子径分
布の狭い樹脂粒子を製造することができる方法を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、第
1の有機溶媒系中で樹脂溶液または樹脂前駆体を、少な
くとも1種類の分散安定剤の存在下に懸濁させて、油中
水型の微粒子を形成する工程と、第1の有機溶媒系をそ
の組成の変化により第2の有機溶媒系にする工程と、第
2の有機溶媒系中の微粒子を樹脂化して樹脂粒子にする
工程とを備え、上記少なくとも1種類の分散安定剤とし
て、第1の有機溶媒系中で溶解し第2の有機溶媒系中で
相分離または液滴状態となる分散安定剤を用いることを
特徴としている。
【0009】有機溶媒 本発明において第1の有機溶媒系から第2の有機溶媒系
に変換する方法としては、大きく分けて2つの方法が考
えられる。
【0010】第1の方法は、第1の有機溶媒系として、
溶解性パラメーターの異なる少なくとも2種類の有機溶
媒を混合した混合溶媒を用いる方法である。このような
方法においては、この混合溶媒から少なくとも1種類の
有機溶媒を選択的に除去することにより、その系全体の
溶解性パラメーターを第1の有機溶媒系と異ならせ、第
2の有機溶媒系とすることができる。
【0011】第2の方法は、第1の有機溶媒系に少なく
とも1種類の有機溶媒を混合し、その系全体の溶解性パ
ラメーターを第1の有機溶媒系と異ならせ、第2の有機
溶媒系とする方法である。
【0012】上記第1の方法及び第2の方法は、例えば
2種類の有機溶媒A及び有機溶媒Bを用いて実施するこ
とができる。すなわち、第1の方法では、第1の有機溶
媒系として、有機溶媒A及び有機溶媒Bを混合した混合
溶媒を用い、混合溶媒から選択的に有機溶媒A及び有機
溶媒Bのうちの沸点の低い方の有機溶媒を除去すること
により、残りの有機溶媒の含有量が相対的に多い組成で
ある、第2の有機溶媒系とすることができる。第1の方
法においては、有機溶媒A及び有機溶媒Bのうちの一方
を選択的に蒸発させ易いような組み合わせとすることが
好ましい。
【0013】有機溶媒Aの溶解性パラメーターとして
は、例えば12〜8.5が好ましく、有機溶媒Bの溶解
性パラメーターとしては、例えば9以下が好ましい。ま
た有機溶媒Aと有機溶媒Bの溶解性パラメーターの差
は、0.5以上であることが好ましい。また有機溶媒A
と有機溶媒Bとは、互いに溶解し合うことが必要であ
る。
【0014】有機溶媒Aと有機溶媒Bの混合比率は、4
/1〜1/4が好ましく、さらに好ましくは2/1〜1
/2である。また有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計の使
用量は、樹脂溶液または樹脂前駆体を含めた全体量に対
し50〜98重量%が好ましく、さらに好ましくは70
〜90重量%である。
【0015】第1の有機溶媒系から第2の有機溶媒系へ
変換する第2の方法においても、上記の有機溶媒A及び
有機溶媒Bを用いることができる。例えば、有機溶媒A
単独あるいは有機溶媒Aが多量に含まれる混合溶媒を第
1の有機溶媒系とし、これに有機溶媒Bを多量に添加し
て第2の有機溶媒系とすることができる。
【0016】なお、第1の方法は、第2の方法に比べ、
溶媒組成の変化をより均一に行うことができるので好ま
しい。上記第1の方法及び第2の方法において用いられ
る有機溶媒Aとしては、例えばメチルイソブチルケトン
(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、キシレ
ン、トルエン、イソブタノールなどを挙げることができ
る。
【0017】また有機溶媒Bとしては、オクタン、イソ
オクタン、デカン、イソデカン、ドデカン、アイソパー
G,H,M(エクソン化学社製)、シェルゾール70及
びシェルゾール71(シェルオイル社製)、アムスコO
MS及びアムスコ460(スピリッツ社製)、シリコー
ンオイルなどを挙げることができる。
【0018】分散安定剤 本発明においては、少なくとも1種類の分散安定剤とし
て、第1の有機溶媒系中で溶解し、第2の有機溶媒系中
で相分離または液滴状態となる分散安定剤を用いる。本
発明において有機溶媒に溶解するとは、透明な状態で混
合することを意味する。また本発明において相分離また
は液滴状態になるとは、透明な状態溶解せず濁った状態
あるいは分離した状態で混ざり合う状態をいう。このよ
うな相分離または液滴状態は、有機溶媒の混合溶液を遠
心分離機(500G×1時間)で分離した場合に沈降す
る状態に対応している。また溶解状態は、このような条
件で分離しようとした場合にも沈降しない状態に対応し
ている。
【0019】本発明においては、第1の有機溶媒系及び
第2の有機溶媒系の両方に溶解する他の分散安定剤を併
用してもよい。第1の有機溶媒系に溶解し第2の有機溶
媒系に溶解しない分散安定剤と、両方に溶解する他の分
散安定剤の比率は、1/9〜10/0であることが好ま
しく、分散安定剤の合計の使用量は、樹脂溶液または樹
脂前駆体と分散安定剤の合計重量に対し1〜20重量%
であることが好ましい。この範囲を逸脱する場合には、
得られる樹脂粒子の粒子径の分布が広くなる場合があ
る。
【0020】分散安定剤としては、一般に親水部と疎水
部を有する両親媒性物質が用いられる。具体的には、ア
ニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン
性界面活性剤、両性界面活性剤、及び高分子分散剤など
が挙げられる。
【0021】アニオン性界面活性剤としては、アルキル
硫酸エステルナトリウム、アルキルナフタレンスルホン
酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホ
ン酸塩、オレイン酸アミドスルホン酸塩、ジアルキルス
ルホコハク酸塩、硫酸化ヒマシ油、ジアルキルリン酸エ
ステル、ジアリールリン酸エステル、アルキルリン酸エ
ステル、アリールリン酸エステルなどが挙げられる。
【0022】カチオン性界面活性剤としては、ハロゲン
化トリメチルアミノエチルアルキルアミド、アルキルピ
リジニウム硫酸塩、ハロゲン化アルキルトリメチルアン
モニウムなどが挙げられる。
【0023】ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチ
レングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコ
ールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコー
ル脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール、ポリエ
チレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビ
タン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、シ
ョ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルな
どが挙げられる。
【0024】両性界面活性剤としては、アルキルトリメ
チルアミノ酢酸、アルキルジエチレントリアミノ酢酸、
レシチンなどが挙げられる。高分子分散剤としては、エ
チルセルロース、硫酸化セルロース、硫酸化メチルセル
ロース、酸化ポリエチレン、カルボキシメチルセルロー
ス、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、無水マレイン酸
系共重合体、アクリル酸系、メタクリル酸系あるいはク
ロトン酸系重合体及び共重合体などが挙げられる。
【0025】これらの分散安定剤の中でも、特に親水部
がポリアルキレングリコールからなり、疎水部が炭素数
4以上のアルキル基からなる両親媒性ポリマーが好まし
い。このような両親媒性ポリマーとしては、例えば、ポ
リアルキレングリコールを有するアクリルモノマーと、
炭素数4以上の長鎖アルキル基を有するアクリルモノマ
ーとを共重合させた共重合体が挙げられる。ポリアルキ
レングリコールを有するアクリルモノマーとしては、日
本乳化剤社製、商品名「MA−50」、「MA−10
0」、及び「MA−150」などが挙げられる。長鎖ア
ルキル基を有するアクリルモノマーとしては、ラウリル
メタクリレート、セチルメタクリレート、n−ブチルメ
タクリレートなどが挙げられる。
【0026】上記共重合体からなる分散安定剤が、特定
の有機溶媒に対し溶解状態となるか、あるいは相分離ま
たは液滴状態となるかは、共重合するモノマーの比率に
よって調整することができる。また、必要に応じて、ヒ
ドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、N,N
−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製、
商品名「DMAPAA」)などの極性基を有するモノマ
ーを共重合させることができる。
【0027】樹脂溶液または樹脂前駆体 樹脂溶液または樹脂前駆体は、第1の有機溶媒系及び第
2の有機溶媒系に対し実質的に溶解しないものを用いる
ことが好ましい。
【0028】また樹脂溶液及び樹脂前駆体は液状である
ことが好ましく、その形態は、液体、溶液、及び分散液
のいずれであってもよい。溶液及び分散液に用いられる
溶剤は、第1の有機溶媒系及び第2の有機溶媒系に対し
溶解しにくいものが好ましく、第1の有機溶媒系及び第
2の有機溶媒系に対し溶解する割合が溶剤全体の30重
量%以下であることが好ましい。このような樹脂溶液及
び樹脂前駆体に用いられる溶剤としては、水、グリコー
ル、低級アルコールなどが挙げられる。
【0029】本発明において、微粒子中の樹脂溶液また
は樹脂前駆体を樹脂化し、樹脂粒子とする方法として
は、例えば、液中乾燥法、界面重合法、及びin situ 重
合法などが挙げられる。以下、これらの方法について説
明する。
【0030】(1)液中乾燥法 微粒子内の樹脂溶液中の溶媒を除去することにより微粒
子を樹脂化する方法である。樹脂溶液中に用いる樹脂と
しては、水溶性樹脂や水分散性樹脂が適している。この
ような樹脂は、一般に親水性官能基として、水酸基、カ
ルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、ア
ミド基、ポリアルキレンオキサイドを含んでいる。
【0031】樹脂の具体例としては、スチレン−無水マ
レイン酸共重合体、カルボキシル化ポリオレフィン樹
脂、アクリルアミドまたはアクリルアミド共重合体、ポ
リビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、
カルボキシメチルセルロース、ゼラチンなどが挙げられ
る。また樹脂溶液の溶剤としては、水、グリコール、低
級アルコールなどが挙げられる。
【0032】(2)界面重合法 微粒子中に含まれる第1の樹脂前駆体(以下「樹脂前駆
体A」という)と、第2の有機溶媒系に含まれる第2の
樹脂前駆体(以下「樹脂前駆体B」という)とを液滴界
面で重合させる方法である。
【0033】このような界面重合法により得られる樹脂
としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウ
レア樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げ
られる。
【0034】樹脂前駆体Aとしては、多価アルコール、
多価フェノール、ポリアミン、多塩基酸などが挙げられ
る。多価アルコール及び多価フェノールとしては、エチ
レングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレン
グリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレング
リコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリ
コール、水素化ビスフェノールA、ハイドロキノン、レ
ゾルシノール、グリセリン、トリメチロールエタン、ト
リメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペン
タエリスリトール、テトラヒドロキシアントラセン、フ
ェノール樹脂などが挙げられる。
【0035】ポリアミンとしては、エチレンジアミン、
フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチレント
リアミン、ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタ
ミンなどが挙げられる。
【0036】また多塩基酸としては、コハク酸、アジピ
ン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など
が挙げられる。樹脂前駆体Bとしては、多塩基酸ハライ
ド、ポリイソシアネート、及びエポキシ化合物などが挙
げられる。
【0037】多塩基酸ハライドとしては、アゼラオイル
クロライド、アジポイルクロライド、テレフタロイルク
ロライド、セバコイルクロライド、ドデカンジオール酸
クロライド、ベンゼンスルホニルジクロライド、ベンゼ
ンテトラシドクロライド、トリメゾイルクロライドなど
が挙げられる。
【0038】ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリ
メチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジ
イソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキ
シルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、
メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリ
レンジイソシアネート、トリレジイソシアネート、4,
4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロン
ジイソシアネート、及びこれらの多量体やプレポリマー
などが挙げられる。エポキシ化合物としては、エポキシ
樹脂などが挙げられる。
【0039】(3)in situ 重合法 微粒子の内部もしくは第2の有機溶媒系から重合触媒を
作用させ、微粒子内の樹脂前駆体を重合させる方法であ
り、ラジカル重合を利用した方法、及び重縮合を利用し
た方法などがある。
【0040】ラジカル重合を利用する場合の樹脂前駆体
としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒ
ドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピル
アクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、
ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタ
アクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコー
ル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン
酸、マレイン酸、フマル酸、ジメチルアミノエチルアク
リレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジ
メチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプ
ロピルメタアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタ
アクリルアミド、アクリル酸アミド、メタアクリル酸ア
ミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメ
チルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0041】ラジカル重合を利用する場合において、微
粒子内部に存在させる触媒としては、過硫酸カリ、過硫
酸アンモニウム、4,4´アゾビス(4−シアノ吉草
酸)2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジ
ン)などが挙げられる。
【0042】また第2の有機溶媒系から作用させる触媒
としては、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベン
ゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t
−ブチルパーベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリ
ル、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリ
ル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニ
トリルなどが挙げられる。
【0043】上記樹脂前駆体を用いた場合には、アクリ
ル樹脂がラジカル重合により得られる。重縮合を利用す
る場合には、樹脂前駆体として、例えば、メラミンや尿
素とホルムアルデヒドの初期縮合物を用いることができ
る。この場合の触媒としては、アルキルベンゼンスルホ
ン酸などのスルホン酸化合物等の酸性触媒を用いること
ができる。このような初期縮合物によりアミノ樹脂を重
合させることができる。
【0044】本発明において製造される樹脂粒子は、マ
イクロカプセルであってもよい。すなわち、微粒子が芯
材料を含有し、微粒子が樹脂化することにより、芯材料
がマイクロカプセル化されてもよい。本発明の製造方法
によれば、非水系媒体中でマイクロカプセルを製造する
ことができるので、非水系媒体に溶解しない水溶性物質
を芯材料として用いることができる。従って、顔料、染
料、触媒などの機能性物質を芯材料とすることができ
る。
【0045】本発明において、第1の有機溶媒系中で油
中水型の微粒子を形成する際には、高速乳化機や加圧乳
化機を使用することができる。このような乳化機として
は、ポリトロン(KINETICA社製)及びMICR
OFLUIDIZER(マイクロフルイディック社製)
などが挙げられる。
【0046】本発明の製造方法においては、第1の有機
溶媒系中で油中水型の微粒子を形成した後、第1の有機
溶媒系の組成を変化させることにより第2の有機溶媒系
にする。また、少なくとも1種類の分散安定剤として、
第1の有機溶媒系中で溶解し、第2の有機溶媒系中で相
分離または液滴状態となる分散安定剤を用いている。本
発明の製造方法によれば、このような工程を備えること
により、粒子径分布の狭い樹脂粒子を製造することがで
きる。本発明の製造方法により、粒子径分布の狭い樹脂
粒子が製造することができる詳細な理由は明らかではな
いが、第1の有機溶媒系中で形成される微粒子が、第2
の有機溶媒系中で会合することにより均一な粒子径にな
るものと推測される。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明に従う実施例により
本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例及
び比較例において部は重量部を意味する。
【0048】実施例1(液中乾燥法による製造) 2−エチルヘキシルアクリレート65部と、ポリアルキ
レングリコール含有アクリルモノマー(商品名「MA−
100」、日本乳化剤社製)35部を、重合開始剤(商
品名「V−601」、和光純薬社製)を用い、メチルエ
チルケトン(MEK)中で70℃で7時間反応させるこ
とにより共重合ポリマーを得た。これを分散安定剤(A
−1)とする。
【0049】同様の重合開始剤及び有機溶媒を用い同様
の方法で、セチルメタクリレート70部と、ポリアルキ
レングリコール含有アクリルモノマー(商品名「MA−
150」)30部の共重合ポリマーを得た。これを分散
安定剤(B−1)とする。
【0050】分散安定剤(A−1)5部と、分散安定剤
(B−1)3部を、MEK100部及びドデカン120
部の混合有機溶媒中に溶解し、これにポリビニルアルコ
ール(商品名「ゴーセノールGL−03」、日本合成化
学社製)の20重量%水溶液100部を混合し、乳化機
(ポリトロン)を用い8000rpmの回転速度で10
分間乳化し、微粒子を形成した。
【0051】次に、得られた溶液をナスフラスコに移
し、エバポレーターで50℃、20Torrの条件で、
20分間MEKを除去した。さらに、70℃、10To
rrの条件で60分間水を除去した。
【0052】得られた樹脂粒子の粒子径及び粒子径分布
を、粒子径測定装置(SALAD2000A、島津製作
所社製)を用いて測定した。平均粒子径は5.4ミクロ
ンであり、変動係数は25%であった。
【0053】なお、分散安定剤(A−1)は第1の有機
溶媒系であるMEK100部とドデカン120部の混合
溶媒に溶解するが、第2の有機溶媒系であるドデカンに
は溶解せず、相分離または液滴状態となる。分散安定剤
(B−1)は第1の有機溶媒系及び第2の有機溶媒系の
両方に溶解する。
【0054】実施例2(界面重合法による製造) n−ブチルメタクリレート80部と、ポリアルキレング
リコール含有アクリルモノマー(商品名「MA−15
0」)20部と、ヒドロキシエチルメタクリレート10
部とを、重合開始剤(商品名「V−601」)を用い
て、トルエン中で80℃7時間反応させることにより共
重合ポリマーを得た。これを分散安定剤(A−2)とす
る。
【0055】同様の重合開始剤及び有機溶媒を用い同様
の方法で、セチルメタクリレート60部と、ポリアルキ
レングリコール含有アクリルモノマー(商品名「MA−
150」)30部と、ヒドロキシエチルメタクリレート
10部の共重合ポリマーを得た。これを分散安定剤(B
−2)とする。
【0056】分散安定剤(A−2)3部と、分散安定剤
(B−2)7部とを、トルエン100部とアイソパーM
80部の混合溶媒中に溶解し、これにジエチレングリコ
ール60部を混合し、これを乳化機(MICROFUR
UIDIZER)を用いて乳化し、微粒子を形成した。
【0057】次に、この溶液をナスフラスコに移し、エ
バポレーターを用いて、55℃、50Torrの条件
で、30分間でトルエンを除去した。これを反応容器に
移した後、ジブチル錫フタレート0.05部を加え、ト
ルエンジイソシアネート(商品名「TDI80」、三菱
化成社製)の30重量%アイソパー溶液を、上記ジエチ
レングリコールに対して当量になるように、室温で1時
間滴下した。滴下終了2時間後、温度を45℃まで上昇
し、さらに2時間重合した。
【0058】得られた樹脂粒子の粒子径及び粒子径分布
を、上記実施例1と同様の粒子径測定装置により測定し
た。平均粒子径は7.1ミクロンであり、変動係数は1
9%であった。
【0059】なお、上記分散安定剤(A−2)は第1の
有機溶媒系であるトルエン100部とアイソパーM80
部の混合溶媒に溶解するが、第2の有機溶媒系であるア
イソパーMには溶解せず、相分離または液滴状態とな
る。また上記分散安定剤(B−2)は第1の有機溶媒系
及び第2の有機溶媒系の両方に溶解する。
【0060】実施例3(in situ 重合による製造) n−ブチルアクリレート65部と、ポリアルキレングリ
コール含有アクリルモノマー(商品名「MA−50」)
30部と、アクリル酸5部を、重合開始剤(商品名「V
−601」)を用いて、キシレン中で75℃7時間反応
させて、共重合ポリマーを得た。これを分散安定剤(A
−3)とする。
【0061】同様の重合開始剤及び有機溶媒を用い同様
の方法で、ラウリルメタクリレート60部と、ポリアル
キレングリコール含有アクリルモノマー(商品名「MA
−150」)30部と、ヒドロキシエチルメタクリレー
ト10部の共重合ポリマーを得た。これを分散安定剤
(B−3)とする。
【0062】分散安定剤(A−3)3部と、分散安定剤
(B−3)4部を、キシレン100部とアイソパーG1
00部の混合溶媒中に溶解し、この溶液と、ポリアルキ
レングリコール含有アクリルモノマー(商品名「MA−
100」)50部と4,4´アゾビス(4−シアノ吉草
酸)0.5部を溶解した溶液を混合し、乳化機(MIC
ROFURUIDIZER)で乳化し、微粒子を形成し
た。
【0063】次に、この溶液をナスフラスコに移し、エ
バポレーターで、60℃、10Torrの条件でキシレ
ンを30分間除去した。この後、反応容器に溶液を移
し、窒素気流下、80℃まで昇温して5時間重合した。
【0064】得られた樹脂粒子の粒子径及び粒子径分布
を、上記実施例1と同様の粒子径測定装置で測定した。
平均粒子径は15.4ミクロンであり、変動係数は21
%であった。
【0065】なお、分散安定剤(A−3)は第1の有機
溶媒系であるキシレン100部とアイソパーG100部
の混合溶媒に溶解するが、第2の有機溶媒系であるアイ
ソパーGには溶解せず、相分離または液滴状態となる。
また分散安定剤(B−3)は第1の有機溶媒系及び第2
の有機溶媒系の両方に溶解する。
【0066】実施例4(界面重合法によるマイクロカプ
セルの製造) セチルメタクリレート40部と、ポリアルキレングリコ
ール含有アクリルモノマー(商品名「MA−150」)
50部と、ヒドロキシエチルメタクリレート10部と
を、重合開始剤(商品名「V−601」)を用いて、ト
ルエン中で80℃5時間反応させ、共重合ポリマーを得
た。これを分散剤(A−4)とする。
【0067】また、フタロシアニンブルー(商品名「シ
アニンブルー4966」、大日精化工業社製)20g
と、トリエチレングリコール80gと、顔料分散剤とし
ての市販の樹脂(商品名「solspers1700
0」、ZENEKA社製)5gと、ガラスビーズ(商品
名「GB502M」、東芝バロティーニ社製)120g
とを、サンドグラインダー中に仕込み、2000rpm
で、3時間分散を行い、顔料ペーストを得た。
【0068】上記の分散安定剤(A−4)4部を、トル
エン150部とアイソパーM150部の混合溶媒中に溶
解し、この溶液と、上記の顔料ペースト65gを混合
し、乳化機(MICROFURUIDIZER)で乳化
し、微粒子を形成した。
【0069】次に、この溶液をナスフラスコに移し、エ
バポレーターで、70℃、10Torrの条件でトルエ
ンを30分間除去した。次に、得られた溶液を反応容器
に移した後、ジブチル錫フタレート0.05部を加え、
トルエンジイソシアネート(商品名「TDI80」、三
菱化成社製)の30重量%アイソパー溶液を、上記トリ
エチレングリコールに対して当量となるように室温で1
時間滴下した。滴下終了2時間後、温度を45℃まで上
昇し、さらに2時間重合した。
【0070】得られた樹脂粒子(マイクロカプセル)の
粒子径及び粒子径分布を、上記実施例1と同様の粒子径
測定装置で測定した。平均粒子径は4.9ミクロンであ
り、変動係数は29%であった。
【0071】実施例5(界面重合法による製造) 実施例2における分散安定剤(A−2)3部に代えて、
市販の非イオン性界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステ
ル、商品名「レオドールTW−O320」、花王社製)
2部を用いた以外は、上記実施例2と同様の方法で樹脂
粒子を製造した。
【0072】得られた樹脂粒子の粒子径及び粒子径分布
を、上記実施例1と同様の粒子径測定装置により測定し
た。平均粒子径は6.2ミクロンであり、変動係数は2
6%であった。
【0073】なお、本実施例で用いた市販の非イオン性
界面活性剤は、第1の有機溶媒系であるトルエン100
部とアイソパーM80部の混合溶剤には溶解するが、第
2の有機溶媒系であるアイソパーMには溶解せず、相分
離または液滴状態となる。
【0074】実施例6(界面重合法による製造) 実施例2における乳化後の溶液のエバポレーターによる
トルエンの除去を、70℃、10Torrの条件で20
分間行うことに変更した以外は、上記実施例2と同様の
方法で樹脂粒子を得た。
【0075】得られた樹脂粒子の粒子径及び粒子径分布
を、上記実施例1と同様の粒子径測定装置で測定した。
平均粒子径は3.5ミクロンであり、変動係数は21%
であった。
【0076】実施例7(界面重合法による製造) 実施例2において得られた第1の有機溶媒系中の微粒子
の溶液に、アイソパーM350部を室温で攪拌しながら
1時間かけて滴下した。アイソパーMの滴下後、反応容
器に移し、ジブチル錫フタレート、トルエンジイソシア
ネートを添加して重合し、樹脂粒子を得た。得られた樹
脂粒子の粒子径及び粒子径分布を、上記実施例1と同様
の粒子径測定装置で測定した。平均粒子径は11.2ミ
クロンであり、変動係数は37%であった。
【0077】本実施例においては、上述のように第1の
有機溶媒系であるトルエン100部とアイソパーM80
部の混合溶媒に、アイソパーM350部を添加すること
により第2の有機溶媒系にしている。
【0078】比較例1 分散安定剤(A−2)を用いない以外は、上記実施例2
と同様の方法で樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の粒
子径は0.9ミクロンであり、粒子径分布の広いもので
あった。
【0079】比較例2 実施例2におけるトルエン100部とアイソパーM80
部の混合溶媒を、トルエン300部とアイソパーM50
部に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂粒子を
得た。
【0080】得られた樹脂粒子の粒子径は12.4ミク
ロンであり、変動係数は82%であった。なお、分散安
定剤(A−2)は、上記のトルエン300部とアイソパ
ーM50部の混合溶媒には溶解せず、相分離または液滴
状態となる。
【0081】比較例3 実施例2におけるアイソパーMをキシレンに代えた以外
は、実施例2と同様の方法で樹脂粒子を得た。
【0082】得られた樹脂粒子の粒子径は1.2ミクロ
ンであり、粒子径分布の広いものであった。上記実施例
1〜7及び比較例1〜3の製造条件及び粒子径とその変
動係数を表1にまとめて示す。
【0083】
【表1】
【0084】また、実施例2で得られた樹脂粒子の粒子
径分布を図1に、比較例1で得られた樹脂粒子の粒子径
分布を図2にそれぞれ示す。図1及び図2の比較から明
らかなように、本発明に従い得られる樹脂粒子は、粒子
径分布が狭く均一な粒子径を有するものである。
【0085】また、実施例2及び実施例6の比較から明
らかなように、第1の有機溶媒系から沸点の低い溶剤を
揮発させ、第2の有機溶媒系へ組成を変化させる際の条
件を制御することにより、樹脂粒子の粒子径を制御する
ことができる。
【0086】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、粒子径分布
の狭い非水系溶媒中の油中水型の微粒子を形成すること
ができ、この微粒子を樹脂化することにより粒子径分布
の狭い樹脂粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施例2で得られた樹脂粒子の粒
子径分布を示す図。
【図2】比較例1で得られた樹脂粒子の粒子径分布を示
す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−339805(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 2/14 C08G 85/00 C08J 3/14

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の有機溶媒系中で樹脂溶液または樹
    脂前駆体を、少なくとも1種類の分散安定剤の存在下に
    懸濁させて、油中水型の微粒子を形成する工程と、 前記第1の有機溶媒系をその組成変化により第2の有機
    溶媒系にする工程と、 前記第2の有機溶媒系中の前記微粒子を樹脂化して樹脂
    粒子にする工程とを備え、 前記少なくとも1種類の分散安定剤として、前記第1の
    有機溶媒系中で溶解し、前記第2の有機溶媒系中で相分
    離または液滴状態となる分散安定剤を用いることを特徴
    とする樹脂粒子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の有機溶媒系が、溶解性パラメ
    ーターの異なる少なくとも2種類の有機溶媒の混合系か
    らなり、前記第2の有機溶媒系が、この混合系から少な
    くとも1種類の有機溶媒を選択的に除去することによ
    り、その系全体の溶解性パラメーターを前記第1の有機
    溶媒系と異ならせた系である請求項1に記載の樹脂粒子
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第2の有機溶媒系が、前記第1の有
    機溶媒系に少なくとも1種類の有機溶媒を混合し、その
    系全体の溶解性パラメーターを前記第1の有機溶媒系と
    異ならせた系である請求項1に記載の樹脂粒子の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記微粒子が樹脂溶液から形成され、樹
    脂溶液中の溶媒を除去することにより、前記微粒子が樹
    脂化される請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粒
    子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記微粒子中の樹脂前駆体を、前記微粒
    子中または前記第2の有機溶媒系中に含まれる重合触媒
    の作用により重合させることにより、前記微粒子が樹脂
    化される請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粒子
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記微粒子中に含まれる第1の樹脂前駆
    体と、前記第2の有機溶媒系に含まれる第2の樹脂先駆
    体とを界面重合させることにより、前記微粒子が樹脂化
    される請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粒子の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 前記微粒子が芯材料を含有し、前記微粒
    子が樹脂化することにより前記芯材料がマイクロカプセ
    ル化される請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂粒
    子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第1の有機溶媒系から前記第2の有
    機溶媒系への組成変化の条件を制御することにより、樹
    脂粒子の粒子径を制御する請求項1〜7のいずれか1項
    に記載の樹脂粒子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記第1の有機溶媒系及び前記第2の有
    機溶媒系の両方に溶解する他の分散安定剤を併用する請
    求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂粒子の製造方
    法。
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