JP3486230B2 - 電気自動車用無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

電気自動車用無方向性電磁鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、電気自動車のモータ
ー用素材としてとりわけ好適な無方向性電磁鋼板の製造
方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】無方向性電磁鋼板は、モーターやトラン
ス等の鉄心材料として広く使用されている。近年、省エ
ネルギーの観点から、電気機器の高効率化が声高く叫ば
れているが、それに伴い鉄心材料についてもより一層の
鉄損低減が望まれるようになってきた。 【0003】電磁鋼板の鉄損低減手段としては、Si, Al
等の比抵抗上昇元素の添加による渦電流損低減策が安価
でかつ最も有効である。また、集合組織を改善すること
も有効で、たとえば特公昭56-22931号公報では冷間圧延
条件を改善することにより、特公昭58−3027号公報では
Snを添加することにより、特公昭57-59293号公報ではSb
を添加することによりそれぞれ、これを達成している。
その他、鋼中の介在物、析出物等は磁壁の移動を妨げる
ことによって履歴損を劣化させることから、特開昭59-7
4258号公報等では不純物の低減によりこれを達成してい
る。また、特開昭59-74256号公報, 特開昭60−152628号
公報および特開平3−104844号公報等では、介在物個数
を減少させることによって低鉄損化を達成している。 【0004】上記の方法はいずれも、W10/50 あるいは
15/50 といった特定条件下での鉄損を低減しようとす
るものである。しかしながら、このような電磁鋼板を用
いて電気自動車用のモーターを作製した場合に、必ずし
も良好なモーター特性とくに良好なモーター効率が得ら
れるわけではなかった。 【0005】この理由は、電気自動車用モーターは、通
常のモーターとは異なり、ある一定の駆動条件下で駆動
されるものではないからである。つまり自動車モーター
は、低速回転から高速回転あるいはその逆へと、回転数
を常に変化させる必要があり、そのたびに駆動周波数や
そのときの磁束条件が大幅に変動する。従って、素材の
ある一定条件下での特性たとえばW10/50 (1.0T, 50Hz
における鉄損)だけでは、電気自動車モーターの効率を
評価することはできない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、電
気自動車用モーターのモーター効率評価法を確立し、そ
れに基づいて高効率の電気自動車用モーターの素材とし
て有用な無方向性電磁鋼板を与えるところにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】さて発明者らは、素材の
特性を従来法によって評価するだけにとどまらず、実際
に各種素材を用いてモデルモーターを作成し、電気自動
車の駆動と同一条件下でこのモデルモーターを駆動さ
せ、効率その他あらゆる特性を吟味することによって、
まずモーター効率を評価した。その結果、駆動条件は種
々変化したとしても、トータルとしてのモーター効率
(ηTOT )は次式 ηTOT =0.5 η120 + 0.2(η60+η240 )+0.05(η30+η300 ) ここでηX :x Hz で駆動したときの効率 で表されることを明らかにした。 【0008】この結果をもとに、モーター効率ηTOT
素材特性との関係について、磁束密度:0.1 〜2.0 T、
周波数:10〜10000 Hzの広範囲にわたって綿密な調査を
行った。その結果、 1.5T, 50Hzおよび 0.5T, 1000Hz
における各鉄損W15/50 、W5/1000(W/kg)ならびに 5
000A/mにおける磁束密度B50(T)が所定の関係を満足
すれば、電気自動車用モーターとして極めて効率の良い
ものが得られることの知見を得た。この発明は、上記の
知見に立脚するものである。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】すなわち、この発明
、C:0.0050wt%以下、 Si:1.0 〜4.5 wt%、M
n:1.5 wt%以下を含有する組成になる鋼スラブを、熱
間圧延後、1回または中間焼鈍を含む2回の冷間圧延に
よって最終板厚としたのち、仕上焼鈍を施す一連の工程
によって無方向性電磁鋼板を製造するに当たり、最終板
厚を 0.10mm 以上 0.50mm 以下とすること、仕上焼鈍後の冷
却を、張力:0.15 0.3 kg/mm2、冷却速度変化:1〜
℃/s2の条件下で行うことからなる電気自動車用無方向
性電磁鋼板の製造方法である。 【0010】以下、この発明の基礎となった実験結果に
ついて説明する。C:0.0020wt%、Si:0.5 〜3.5 wt
%、Mn:0.5 wt%を含み、残部は実質的にFeの組成にな
る鋼スラブを、常法に従って熱間圧延ついで冷間圧延す
ることにより、板厚が0.05〜0.75mmの種々の冷延鋼板を
得た。ついで 800〜1000℃, 1 minの仕上焼鈍後、0.15
〜0.3 kg/mm2の張力下に冷却速度:20〜35℃/sでかつ冷
却速度変化:1〜5℃/s2 の条件で冷却した。得られた
各鋼板からモデルモーターを作製し、そのモーター効率
について調査した結果を、素材特性との関係で整理して
図1に示す。 【0011】同図から明らかなように、モーター効率η
TOT ≧80%を達成するためには、素材のW−B特性につ
き、次式 W15/50 +(W5/1000/10)≦ 7.0 W15/50 +(W5/1000/10)≦62・B50−97 の関係を満足させる必要があることが究明されたのであ
る。上記のような式でモーター効率をうまく評価できる
ことの理由は、今のところ明らかではないが、50Hzが低
周波域を、また1000Hzが高周波域を代表する鉄損となっ
ており、透磁率としては比較的高磁場域が重要なファク
ターとなっていることによるものと考えられる。 【0012】次に、上記のようなW−B特性を有する無
方向性電磁鋼板の製造条件について検討した。その結
果、所望特性を得るには、仕上焼鈍後の冷却条件とくに
冷却時における付加張力と冷却速度変化が重要であるこ
とが判明した。すなわち、冷却時における付加張力を0.
15 0.3 kg/mm2としかつ冷却速度変化を1〜5℃/s2
することによって、上掲式の関係が満足され、かくして
ηTOT≧80%という高いモーター効率が安定して得られ
ることが究明されたのである。この点、従来の冷却時に
おける付加張力は、 0.2〜0.5 kg/mm2程度であったた
め、安定して良好なモーター効率が得られなかったもの
と考えられる。 【0013】 【作用】この発明において、鋼板の成分組成を前記の範
囲に限定したのは、次の理由による。 C:0.0050wt%以下 Cは、磁気特性上好ましくない元素であり、50 ppmを超
えると特に鉄損の劣化が著しいので、50 ppm以下に限定
した。 【0014】Si:1.0 〜4.5 wt% Siは、比抵抗の高めることによって鉄損の低減に有効に
寄与するが、含有量が1.0 wt%に満たないとその効果に
乏しく、一方 4.5wt%を超えると冷間加工性の劣化を招
くので、1.0〜4.5 wt%の範囲に限定した。 【0015】Mn:1.5 wt%以下 Mnは、熱間圧延割れの防止に有効なだけでなく、比抵抗
を高めて鉄損の低減にも寄与する有用元素であるが、含
有量が 1.5wt%を超えると磁束密度を劣化させる等の不
利が生じるので、 1.5wt%以下の範囲に限定した。 【0016】以上、基本成分について説明したが、その
他この発明では、必要に応じてAlやP,Sb, Sn等を、下
記の範囲で含有させることもできる。 Al:1.0 wt%以下 Alは、比抵抗を高め、うず電流損の低減に有効に寄与す
るが、 1.0wt%を超えると磁束密度の低下を招くので、
1.0 wt%以下程度が好ましい。 P:0.08wt%以下 Pは、Al同様、比抵抗を高め、うず電流損を低減する有
用元素であるが、含有量が0.08wt%を超えると加工性が
劣化するので、0.08wt%以下で添加するのが好ましい。 Sb:0.08wt%以下 Sbは、集合組織の改善に有効に寄与するが、0.08wt%を
超えると粒成長性が阻害されるので、0.08wt%以下程度
が好ましい。 Sn:0.2 wt%以下 Snは、Sb同様、集合組織を改善する有用元素であるが、
0.2 wt%を超えると粒成長性が阻害されるので、0.2 wt
%以下で添加するのが好ましい。 【0017】また、この発明において、鋼板の板厚は0.
10mm以上0.50mm以下の範囲に制限する必要がある。とい
うのは、板厚が0.50mmを超えるとW−Bバランスが劣化
して所望のモーター効率を得ることが困難となり、一方
0.10mm未満ではモーターのコア積層時間が長くなるだけ
でなく、自動かしめ性等も劣化するからである。 【0018】次に、この発明の製造方法について説明す
る。スラブ製造に際しては、連続鋳造法または造塊−分
塊法いずれであっても良い。ついで、スラブ加熱後、熱
間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施してから、
1回または中間焼鈍を含む2回の冷間圧延を施して最終
板厚に仕上げる。しかるのち、 800〜1100℃で約1min
程度の仕上焼鈍を施すわけであるが、この発明では、こ
の仕上焼鈍における均熱処理後の冷却工程が特に重要で
ある。 【0019】すなわち、この冷却処理を、張力:0.15
0.3 kg/mm2、冷却速度変化:1〜5℃/s2 の条件下で行
うことが肝要である。というのは、付加張力および冷却
速度変化が上記の範囲を逸脱した場合には、前述したと
おり、理由は明確ではないが、良好なモーター効率が得
られないからである。なお、この時、冷却速度について
は特に限定されることはない。 【0020】 【実施例】表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブ
を、熱間圧延後、1回冷延法により板厚:0.10〜0.65mm
の冷延板とした。ついで、 800〜1000℃,1min の仕上
焼鈍後、表2に示す種々の条件で冷却した。得られた鋼
板を用いて3相6極、インバータ周波数:10〜400 Hz、
キャリア周波数:1〜20 kHzのモデルモータを作成し、
そのモーター効率ηTOT について調査した。得られた結
果を表2に併記する。 【0021】 【表1】 【0022】 【表2】 【0023】 【発明の効果】かくしてこの発明に従う無方向性電磁鋼
板は、回転数が常に変化する電気自動車用モーターに用
いて、従来に比べ格段に高いモーター効率を確保するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 モーター効率ηTOT に及ぼす素材のW−B特
性の影響を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H02K 1/02 H02K 1/02 Z (72)発明者 矢埜 浩史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 鉄鋼開発・生産本部 鉄 鋼研究所内 (72)発明者 高島 稔 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 鉄鋼開発・生産本部 鉄 鋼研究所内 (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 鉄鋼開発・生産本部 鉄 鋼研究所内 (72)発明者 大山 勇 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川鉄 テクノリサーチ株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−188115(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】C:0.0050wt%以下、 Si:1.0 〜4.5
    wt%、 Mn:1.5 wt%以下 を含有する組成になる鋼スラブを、熱間圧延後、1回ま
    たは中間焼鈍を含む2回の冷間圧延によって最終板厚と
    したのち、仕上焼鈍を施す一連の工程によって無方向性
    電磁鋼板を製造するに当たり、最終板厚を 0.10mm 以上 0.50mm 以下とすること、 仕上焼鈍後の冷却を、張力:0.15 0.3 kg/mm2、冷却速
    度変化:1〜5℃/s2の条件下で行うことを特徴とする
    電気自動車用無方向性電磁鋼板の製造方法。
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