JP3485801B2 - ダブルリブベルトの製造方法 - Google Patents

ダブルリブベルトの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム層内に心線が
埋設されたベルトスリーブからダブリブベルトを製造す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のダブルリブベルトの製造方法とし
ては、例えば特開平7−124856号公報に記載され
ているものが提案されている。この製造方法は、ゴム層
内に心線(クッションゴム層)を有するベルトスリーブ
を2つの同径のロールで走行させ、走行中のベルトスリ
ーブの表面に研削ホイールによってリブ谷部とリブ山部
とを研削する。続いて、ベルトスリーブを裏返して、再
び各ロールで走行させることで、ベルトスリーブの他の
面に研削ホイールによってリブ谷部とリブ山部を研削す
るものである。また、ベルトスリーブの他の面を研削す
る場合、上下リブ谷部のピッチズレ(ミスピッチ)を軽
減するために、ロールに装着されるカートリッジの溝
部、突起部にリブ山部、リブ谷部を嵌合させることで、
研削中に横ズレを生じさせないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のダブルベルトの
製造方法では、ベルトスリーブの両側の研削代を調整す
ることなくリブ谷部とリブ山部を研削して目標厚さ(製
品厚さ)のダブルベルトを製造しているので、ゴム層に
対する心線にズレが生じていると、研削されたダブルリ
ブベルトの上下リブ谷部(リブ山部)のピッチズレを軽
減できても、ゴム層内の心線をベルト厚み方向の中央部
に位置させることができない。この心線の厚み方向のズ
レは、一対のプーリに掛け回転することでダブルリブベ
ルト外周長さ(POC)を測定する上で、正転時と反転
時とで大きな誤差を生じる。この誤差はダブルリブベル
トを用いて動力などを伝達する際に、ベルトが掛けられ
るプーリなどの回転比を大きく狂わせる原因となってい
る。
【0004】本発明は、心線をゴム層の厚み方向の中央
に位置させることのできるダブルリブベルトの製造方
提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のダブルリブベル
トの製造方法は、ゴム層の厚み方向に心線を埋設してな
るベルトスリーブからダブルリブベルトを製造するもの
で、ベルトスリーブの両周面に研削によってリブ谷部、
リブ山部を形成してなるものにおいて、ベルトスリーブ
を異なる径からなる2つのロールに掛け該ロールの回転
で走行させる第1工程と、各ロールの回転比から走行さ
れるベルトスリーブの心線中心位置を求め該心線中心位
置に基づいてベルトスリーブの各周面の研削値を心線が
ダブルリブベルトのゴム層の厚み方向中央に位置する様
に演算する第2工程と、ベルトスリーブの各周面に各研
削値によって研削することでリブ谷部、リブ山部を形成
する第3工程とを含んでなるものである。心線中心をゴ
ム層の中央位置にする各研削値によってベルトスリーブ
の各周面を研削するので、例えベルトスリーブの心線中
心がゴム層中央に対してズレていても、ダブルリブベル
トを心線ズレのないものに製造できる。
【0006】第2工程で演算される各研削値:γ1,γ
2は、ロール外周から前記ベルトスリーブの心線中心位
置:α,前記ベルトスリーブの厚さ:2w,前記ダブル
リブベルトの製品厚さ:2βから、γ1=2w−(α+
β)、γ2=α−βで求められるものである。異なる径
の2つのロールによってベルトスリーブを走行させて、
各ロールの回転数(回転比)から求められる心線中心位
置αと、各ベルトの厚さ2w,2βから容易に、各研削
値を算出できる。
【0007】第3工程は、各ロールで走行される前記ベ
ルトスリーブの外周面に、一方の研削値によって研削す
ることでリブ谷部、リブ山部を形成し、ベルトスリーブ
を裏返して、前記各ロールに掛けて走行させると供に、
該裏返された外周面に、他方の研削値によって研削する
ことでリブ谷部、リブ山部を形成するものである。ベル
トスリーブの外周面を研削した後に、ベルトスリーブを
裏返すことで裏返された外周面も研削できる。
【0008】
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態におけるベルト
製造方法、及びダブルリブベルトについて、図面を参照
しつつ説明する。
【0010】本発明は、図1のベルトスリーブBSから
図2のダブルリブベルトWBを製造するものである。ベ
ルトスリーブBSは、図1に示す様に、円筒状の成形ド
ラム外周にアミラード繊維などからなるカット繊維、内
周ゴム層BG、クッションゴム層NG、同層NGに螺旋
状に巻き付けられた心線R(ロープ)、更に外周ゴム層
KGを巻回積層し、加硫することで厚さ2wの円筒体に
成形されたものである。そして、ベルトスリーブBSの
外内周面にリブ谷部、リブ山部を研削して形成する際
に、各ゴム層BG,KGの研削値(研削代)を制御する
ことで、心線Rの中心がベルト厚み方向の中央に位置す
るダブルリブベルトWBを製造する(図2参照)。
【0011】先ず、図4のベルト製造装置1は、直径A
の駆動ロール2と、駆動ロール2と異なる直径B(A>
B)の従動ロール3と、ベルトスリーブBSの両周面に
複数のリブを形成する研削ホイール4と、ベルトスリー
ブBSからの研削粉などを排出する吸引器5とからな
り、これら各部2,4,5を装置1の制御システム6
(図5参照)で制御する。
【0012】駆動ロール2は、図示しない回転機で回転
されるもので、従動ロール3との間に掛け渡されたベル
トスリーブBSを所定張力で走行(巡回)させる。また
駆動ロール2の回転数ω1と、ベルトスリーブBSで回
転される従動ロール3の回転数ω2とは、ロータリエン
コーダなどの検出センサ7,8で検出されて上記制御シ
ステム6に出力される。各ロールの回転数ω1,ω2の
関係は、その直径の相違A>Bからω2>ω1となる。
【0013】研削ホイール4は、駆動ロール2に接近し
た位置に配置され、各ロール2,3で走行されるベルト
スリーブBSに接離自在にされ、且つ回転自在にされて
いる。研削ホイール4の作動は、制御システム6からの
駆動指令を受けて駆動する駆動機(図示しない)によっ
て行なわれる。また研削ホイール4の外周面には、図3
に示す様に、ベルトスリーブBSの両周面にリブ谷部、
リブ山部を連続して形成するリブ溝4AとV字上の鋭角
突起4Bを有している。研削ホイール4はダクト(図示
しない)に通じるカバー体9で覆われており、研削時に
ベルトスリーブBSから研削粉がベルト製造装置1内に
飛散しない様にされている。また研削粉はカバー体9か
らダクトで吸引されて外部に排出される。
【0014】除去器5(図4参照)は、制御システム6
からの駆動指令で駆動する回転ブラシ10、バキューム
11からなる。回転ブラシ10は各ロール2,3間でベ
ルトスリーブBSに接触されて、ベルトスリーブBSに
付着する研削粉をカバー部材13内に払い落とすもので
ある。カバー部材13は回転ブラシ10を部分的に覆っ
て、挿入されたバキューム11によって内部に払い落と
された研削粉を吸引してベルト製造装置1の外部に排出
する。
【0015】制御システム6は、図5に示す様に、駆動
ロール2、研削ホイール4及び除去器5の作動を制御す
るコントローラ14と、各検出センサ7,8の検出信号
(回転数ω1,ω2)などを受けて心線Rの中心位置と
研削値(研削代)を演算する演算器15とで構成され
る。コントローラ14は、オペレータなどによって入力
される稼働指令で駆動ロール2、除去器5の駆動を制御
すると供に、演算器15で演算された研削値の結果に基
づいて研削ホイール4の駆動を制御する。
【0016】また演算器15は、各検出センサ7,8の
検出信号(回転数ω1,ω2)の他に、各ロール2,3
の直径A,B、ベルトスリーブBSの厚さ2w(図1参
照)、ダブルリブベルトWBの製品厚さ2β(図2参
照)が入力される。そして、演算器15は、これらの情
報ω1,ω2、A,B、2w、2βに基づいて、図7に
示す様に、心線中心位置α(ゴム層中央に対する心線R
の中心ズレ)、ベルトスリーブBSの両周面に対する研
削値γ1,γ2(研削代)を求める。
【0017】心線中心位置αは、各ロール2,3の回転
比iに基づいて求められ、 i=(ω1/ω2)=(A+2α)/(B+2α)・・・・・・・(1) であり、式(1)から α=(ω1・A−ω2・B)/〔2・(ω2−ω1)〕・・・・・(2) となる。これで、図7に示す様に、各ロール2,3間を
走行するベルトスリーブBSの外周からの心線Rの中心
位置(ゴム層中央に対する心線Rの中心ズレ)が把握で
きる。
【0018】心線中心位置αに基づいて、ベルトスリー
ブBSの各周面に対する研削値γ1,γ2を決定する
(図7参照)。研削値γ1は、心線Rの中心を境にして
製品厚さ2βの半分の厚さβを有する様に、求められ、 γ1=2w−(α+β)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) 研削値γ2は、心線Rの中心をゴム層中央に位置させる
様に、求められ、 γ2=α−β・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) となる。
【0019】研削値γ1,γ2を算出した演算器15
は、この結果を研削信号としてコントローラ14に出力
する。研削信号を入力したコントローラ15は、研削ホ
イール4の作動を制御することで、ベルトスリーブBS
の各周面に対して研削値γ1,γ2だけ研削させて複数
のリブ谷部RVとリブ山部RMが形成されたダブルリブ
WB(図2参照)を製造する。
【0020】次に、ダブルリブベルトの製造方法につい
て、図1〜図3、図5に基づいて説明する。
【0021】図2のダブルリブベルトWBを製造するに
は、円筒体に加硫成形されたベルトスリーブBSを各ロ
ール2,3に掛け渡し、制御システム6に入力される稼
働指令に基づいて駆動ロール2を回転させることで、ベ
ルトスリーブBSを走行させる。ベルトスリーブBSが
走行されると、各検出センサ7,8が各ロール2,3の
回転数ω1,ω2を検出し、制御システム6に出力す
る。これで、制御システム6の演算器15は、回転数ω
1,ω2の検出データと、予め入力される各情報A,
B、2w,2βに基づいて、上記式(2)から心線中心
位置αを求め、且つ上記式(3),(4)から研削値γ
1,γ2(研削代)を決定して、コントローラ14に出
力する。
【0022】研削値γ1,γ2の研削信号を入力したコ
ントローラ14は、図3(a)に示す様に、研削ホイー
ル4の作動を制御することで、ベルトスリーブBSの外
周面から研削値γ1となるまで外周ゴム層KGを研削し
てリブ谷部RV,リブ山部RMを連続形成する。これ
で、ベルトスリーブBSの外周面には、心線Rの中心か
らの厚さがβとなるゴム層NG,KGを有する複数のリ
ブが形成される。尚、コントローラ14は、研削ホイー
ル4の作動と同時に、除去器5を作動させることで研削
粉を回転ブラシ10によってベルトスリーブBSから払
い落として、バキューム11で払い落とされた研削粉を
ベルト製造装置1の外部に排出させる。
【0023】ベルトスリーブBSの外周面の研削が終了
すると、一旦ベルトスリーブBSを各ロール2,3から
取り外して裏返しにする。続いて、裏返されたベルトス
リーブBSを、再び各ロール2,3に掛け渡して走行さ
せる。これで、コントローラ14は、研削信号に基づい
て研削ホイール4の作動を制御することで、ベルトスリ
ーブBの内周部(裏返された外周部)から研削値γ2と
なるまで内周ゴム層BGを研削してリブ谷部RV,リブ
山部RMを連続形成する。これで、ベルトスリーブBS
の内周面には、心線Rの中心から厚さβとなるゴム層N
G,BGを有する複数のリブが形成される。
【0024】ベルトスリーブBSの両周面の研削が終了
すると、コントローラ14は研削ホイール4を離間させ
る。そして、各ロール2,3からベルトスリーブBSを
取り外し、所望の幅に切断することで図2に示されるダ
ブルリブベルトWBを得ることができる。このダブルリ
ブベルトWBは、心線Rの中心を境にする各厚みをβと
し、心線Rの中心がゴム層BG,KGの厚み方向中央部
に位置されるものである。
【0025】この様に、本発明のベルト製造方法によれ
ば、ベルトスリーブBSの心線Rにズレが生じても、心
線Rの中心位置をゴム層の厚み方向中央に位置すること
ができる。従って、ダブルリブベルトを一対のプーリに
掛けて回転することで、その外周長さ(POC)を測定
しても、正転時と反転時とで誤差を生じることがないこ
とから、プーリなどの回転比を狂わすことなく精度良く
動力を伝達することが可能なものとなる。
【0026】また、既存のベルト製造装置に対して、異
なる径の2つのロール2,3を配置し、各ロール2,3
の回転数を検出するだけで、ダブルリブベルトの心線R
の中心をゴム層中央に位置させて製造できる。従って、
既存設備の大幅な改造を必要とすることなく、回転比
i、各ベルトBS,WBの厚さ2w,2βから容易に、
心線Rの中心ズレを補正する各研削値γ1,γ2を演算
できる。
【0027】更に、各研削値γ1,γ2に基づいて、各
ロール2,3にベルトスリーブBSを2回掛けるだけ
で、ベルトスリーブBSの各周面に複数のリブを形成し
つつ心線Rの中心をゴム層中央に位置させれる。
【0028】
【実施例】次に、ダブルリブベルトを、従来技術の製造
方法(従来例)と本発明の製造方法(実施例)とで製造
し、各ダブルリブベルトを一対のプーリに掛けて正転し
た時と反転した時の外周長さ(POC)、ゴム層中央に
対する心線の中心のズレを測定した実験結果を図8に示
す。また、図8では、製造条件として、ダブルリブベル
トの厚さを6.3mm、リブ山部の高さ2mm、外周長
さ(POC)を1195mmとしたものを示す。
【0029】図8において、実施例のダブルリブベルト
の正転時と反転時の誤差は、0.2mmであり、従来例
の4.1mmよりはるかに優れていることが確認され
た。これは、実施例のダブルリブベルトの心線中心のズ
レは、従来例の0.33mmに対して0.02mmと極
めて精度良く心線の中心をゴム層の厚み方向中央に位置
していることに起因するものである。尚、心線中心のズ
レ、正転時と反転時の外周長さ(POC)の差εの関係
は、ε=4・Π・a(Π:円周率、a:心線中心のズ
レ)で表されるものである。
【0030】この様に、図8の実験結果から実証された
通り、本発明のベルト製造方法によってダブルリブベル
トを製造すると、心線の中心位置をゴム層の厚み方向中
央に位置させることができ、もって掛けられる各プーリ
などの回転比を狂わせることなく、ベルト本来の機能で
ある動力伝達を精度良く達成できるダブルリブベルトを
提供することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】本発明では、ベルトスリーブの心線にズ
レが生じても、心線の中心位置をゴム層の厚み方向中央
に位置させることができる。従って、ダブルリブベルト
を一対のプーリに掛けて回転することで、その外周長さ
(POC)を測定しても、正転時と反転時とで誤差を生
じることがないことから、プーリなどの回転比を狂わす
ことなく精度良く動力を伝達することが可能なものとな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルトスリーブの断面図である。
【図2】ダブルリブベルトを示す斜視図である。
【図3】ベルトの製造方法を説明するための拡大図であ
る。
【図4】ベルト製造装置を示す模式図である。
【図5】ベルト製造装置の制御器を示す模式図である。
【図6】ベルト製造装置の研磨ホイールを示す断面図で
ある。
【図7】制御システムにおける演算器での演算を説明す
るための模式図である。
【図8】従来例と実施例の実験結果を示す表である。
【符号の説明】
2 駆動ロール 3 従動ロール α 心線位置 2β ダブルリブベルトの製品厚さ γ1,γ2 研削値 2w ベルトスリーブの厚さ KG 外周ゴム層 BG 内周ゴム層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム層の厚み方向に心線を埋設してなる
    ベルトスリーブからダブルリブベルトを製造するもの
    で、前記ベルトスリーブの両周面に研削によってリブ谷
    部、リブ山部を形成してなるダブルリブベルトの製造方
    法において、 前記ベルトスリーブを、異なる径からなる2つのロール
    に掛け、該ロールの回転で走行させる第1工程と、 前記各ロールの回転比から走行されるベルトスリーブの
    心線中心位置を求め、該心線中心位置に基づいて、前記
    ベルトスリーブの各周面の研削値を前記心線が前記ダブ
    ルリブベルトのゴム層の厚み方向中央に位置する様に演
    算する第2工程と、 前記ベルトスリーブの各周面に、前記各研削値によって
    研削することでリブ谷部、リブ山部を形成する第3工程
    と、 を含んでなるダブルリブベルトの製造方法。
  2. 【請求項2】 第2工程で演算される各研削値:γ1,
    γ2は、 前記ロール外周から前記ベルトスリーブの心線中心位
    置:α,前記ベルトスリーブの厚さ:2w,前記ダブル
    リブベルトの製品厚さ:2βから、 γ1=2w−(α+β)、γ2=α−βで求められる請
    求項1に記載のダブルリブベルトの製造方法。
  3. 【請求項3】 第3工程は、 前記各ロールで走行される前記ベルトスリーブの外周面
    に、一方の研削値によって研削することでリブ谷部、リ
    ブ山部を形成し、 前記ベルトスリーブを裏返して、前記各ロールに掛けて
    走行させるとともに、該裏返された外周面に、他方の研
    削値によって研削することでリブ谷部、リブ山部を形成
    する請求項1に記載のダブルリブベルトの製造方法。
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