JP3479096B2 - D−ビオチン中間体の製造方法 - Google Patents

D−ビオチン中間体の製造方法

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JP3479096B2
JP3479096B2 JP2906193A JP2906193A JP3479096B2 JP 3479096 B2 JP3479096 B2 JP 3479096B2 JP 2906193 A JP2906193 A JP 2906193A JP 2906193 A JP2906193 A JP 2906193A JP 3479096 B2 JP3479096 B2 JP 3479096B2
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  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はD−ビオチンの製造用中
間体の製造方法に関する。D−ビオチンはビタミンHと
も称され、高等動物および多くの微生物によって必要と
される水溶性のビタミンである。D−ビオチンは、下式
で表される公知の化合物である。
【0002】
【化6】
【0003】
【従来の技術】D−ビオチンの合成法としては、例え
ば、糖を出発原料とする方法[テトラヘドロン・レター
ズ(Tetrahedron Letters)2765(1975)]ある
いはL−システインを出発原料とする方法[ジャーナル
・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.A
m.Chem.Soc.)97,5936(1975)]が知られ
ている。これらは、出発原料に光学活性体を用い、立体
選択的な反応で光学活性なD−ビオチンを得る方法であ
る。また、D−ビオチンの他の製造方法としては、例え
ば、反応式:
【0004】
【化7】
【0005】に示すように、ハーフエステルのカルボキ
シル基のみを選択的に還元して得られる光学活性ラクト
ンを用い、D−ビオチンを製造する方法(特開昭59−
84888号公報)、 反応式:
【0006】
【化8】
【0007】に示すように、光学活性アミドカルボン酸
からエステル化、還元および加水分解により得られる光
学活性ラクトンを用い、D−ビオチンを製造する方法
(特公昭60−3387号公報)がある。また、特開昭5
7−198098号公報は、エステル加水分解酵素を用
いて、対応するジエステルを不斉水解することによる光
学活性モノエステルモノカルボン酸の製造法を開示す
る。この光学活性モノエステルモノカルボン酸は、水素
化ホウ素リチウム等で還元し、さらにラクトン化するこ
とにより、D−ビオチン製造用中間体として使用される
シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロ−1H−フロ
[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオンに変換するこ
とができる。さらに、テトラヘドロン(Tetrahedron)、
46,7667(1990)には、反応式:
【0008】
【化9】
【0009】で示される反応によるD−ビオチンの製造
方法および式:
【0010】
【化10】
【0011】で表される化合物をトリエチルシラン、三
フッ化ホウ素により還元し、式:
【0012】
【化11】
【0013】で表される化合物とした後、ハロゲン化を
行い上記ハロゲン体を得る製造方法が記載されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】これらの方法は、いず
れも反応の工程数が多く、しかも反応操作が煩雑で、通
算収率が低いため、D−ビオチンの工業的製造方法とし
て適当ではない。
【0015】
【課題を解決するための手段】かかる事情に鑑み、本発
明者らはD−ビオチン製造方法について鋭意研究し、光
学活性中間体の有利な製造方法について検討を重ねた結
果、酵素を触媒とする速度論的光学分割法が、D−ビオ
チン中間体である(3aα,6aα)−テトラヒドロ−
1,3−(非置換または置換)ジベンジル−4−アシル
オキシ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2
(3H)−オンおよびその4−ヒドロキシ体の光学異性
体製造に極めて有効であることを見い出した。すなわ
ち、細菌由来のエステラーゼがアシル基供与体の存在下
でD−ビオチン中間体(ラセミ体)の一方を立体特異的に
アシル化し、光学純度の高いD−ビオチン中間体を生成
することを見い出した。その後、これらの知見に基づ
き、さらに研究を続けた結果、糸状菌由来のエステラー
ゼが上記の反応を触媒することを見い出し、これらの酵
素を用いて、効率的かつ安価な光学活性なD−ビオチン
中間体の製造法を確立した。一般に、糸状菌のエステラ
ーゼは培地中に著量に生産されるために安価であり、ま
た、耐熱性のものが多いために酵素反応に用いる場合に
極めて有利である。かくして、本発明は、D−ビオチン
製造用中間体の工業的に有利な製造方法を提供するもの
である。すなわち、本発明は、(1)イミダゾール環の
2つの窒素原子が、置換基を有していてもよいベンジル
基で保護された(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4
−ヒドロキシ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール
−2(3H)−オンの(+)−異性体および(−)−異
性体の混合物に、アシル基供与体の存在下、いずれか一
方を他方より速やかにアシル化する能力を有する糸状菌
由来のエステラーゼを接触させることを特徴とする、イ
ミダゾール環の2つの窒素原子が、置換基を有していて
もよいベンジル基で保護された(+)−または(−)−
(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4−アシルオキシ
−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)
−オンの製造方法、特に、一般式:
【0016】
【化12】 [式中、Xはアルキル基、ニトロ基またはアルコキシ基
を、nは0〜3の整数を示す]
【0017】で表わされる化合物の混合物を用い、一般
式:
【0018】
【化13】
【0019】で表わされる化合物を製造する方法、
(2)イミダゾール環の2つの窒素原子が、置換基を有
していてもよいベンジル基で保護された(3aα,6a
α)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−1H−チエノ
[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オンの(+)
−異性体および(−)−異性体の混合物に、アシル基供
与体の存在下、いずれか一方を他方より速やかにアシル
化する能力を有する糸状菌由来のエステラーゼを接触さ
せ、生成したイミダゾール環の2つの窒素原子が、置換
基を有していてもよいベンジル基で保護された(−)−
または(+)−(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4
−アシルオキシ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾー
ル−2(3H)−オンを除去することを特徴とする、イ
ミダゾール環の2つの窒素原子が、置換基を有していて
もよいベンジル基で保護された(+)−または(−)−
(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−
1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−
オンの製造方法、特に、式[I']および[I"]で表わされ
る化合物の混合物を用い、生成する、速やかにアシル化
された一般式[II']または[II"]で表わされる化合物
を除去し、式[I']または[I"]で表わされる化合物を得
る製造方法を提供するものである。(3aα,6aα)
−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−1H−チエノ[3,4
−d]イミダゾール−2(3H)−オンは次の構造式で
示される。
【0020】
【化14】
【0021】一般式[II']および[II"]において、
【0022】
【化15】
【0023】で示されるアシル基としては、有機モノカ
ルボン酸から誘導されるアシル基、例えばホルミル基、
低級アルキルカルボニル基(低級アルカノイル基)、好ま
しくはC1-6アルキル−カルボニル基(例、アセチル、プ
ロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソ
バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル等)などが挙げら
れる。
【0024】本発明においては、出発化合物および目的
化合物のイミダゾール環の窒素は、置換基を有していて
もよいベンジル基で保護されており、当該置換基は直接
反応に関与するものではなく、本発明所期の反応を妨げ
ない限り特に限定するものではない。かかる置換基の例
としては、化合物[I']、[I'']、[II']および[I
I'']におけるXで示すごとく、アルキル基(好ましく
はメチル基等の低級アルキル基)、ニトロ基またはアル
コキシ基(好ましくはメトキシ基等の低級アルコキシ
基)が挙げられる。これらの置換基は該ベンゼン環の置
換可能ないずれの位置にあってもよく、また、複数、例
えば、2〜3個あってもよい。勿論、該ベンジル基は非
置換でもよい。以下、イミダゾール環の2つの窒素原子
が、置換基を有していてもよいベンジル基で保護された
(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−
1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−
オンおよび(3aα,6aα)−テトラヒドロ−4−ア
シルオキシ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−
2(3H)−オンの例として化合物[I’]、[I”]、
[II’]および[II”]を用いて本発明を具体的に説明
する。
【0025】本発明においては、化合物[II']または
[II"]は、化合物[I']および[I"]の混合物をそのい
ずれか一方を他方より速やかにアシル化する能力を有す
る糸状菌由来のエステラーゼで、アシル基供与体の存在
下で特異的にアシル化することにより製造できる。糸状
菌由来のエステラーゼとしては、化合物[I']および
[I'']のいずれか一方を他方より速やかにアシル化する
能力を有するものが用いられる。エステラーゼを産生す
る糸状菌としては、例えばムコール(Mucor)属、リゾー
プス(Rhizopus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、
アスペルギルス(Aspergillus)属、フミコーラ(Humico
la)属、フィコマイセス(Phycomyces)属に属するものが
挙げられる。このうちムコール属菌が好ましい。具体的
には、例えばムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)(英
国特許第1577833号)などが挙げられる。
【0026】該エステラーゼは通常の方法で調製でき
る。糸状菌からエステラーゼを調製するには、糸状菌を
通常の方法で培養し、得られた培養物を遠心分離して培
養上清と菌体を得る。上記の培養上清から有機溶媒沈
澱、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、吸着ク
ロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマト
グラフィーなどによって、エステラーゼの精製標品を得
る。本反応に用いるエステラーゼは未精製標品(例え
ば、上記の培養上清など)、部分精製標品または単一な
精製標品のいずれでもよい。また、エステラーゼは培養
液のまま、あるいは培養液または培養上清を調製したも
のを用いてもよい。本発明で用いられるエステラーゼと
しては市販品でもよく、例えば、ムコール属菌由来の固
定化エステラーゼ(リポザイムIM60、ノボ・ノルデ
ィスク(Novo Nordisk)、製品リスト、1992年)と
して購入できる。上記のエステラーゼはそのままアシル
化反応に用いてもよいが、適当な担体に固定させてもよ
い。担体としては、例えば、セルロースなどの多糖誘導
体、アミノ酸共重合物、無水マレイン酸誘導体やスチレ
ン系樹脂などの合成高分子、活性炭、多孔性ガラス、ケ
イソウ土、アルミナ、シリカゲルなどの無機物が挙げら
れる。
【0027】本発明においては、化合物[I']はそのま
まD−ビオチンの合成原料となるため、エステラーゼと
しては化合物[I"]を化合物[I']よりも速やかにアシル
化するものが好ましいが、化合物[I']を化合物[I"]よ
りも速やかにアシル化するものであっても、反応によっ
て得られた化合物[II']を回収し、これを化学的あるい
は酵素的に脱アシル化して化合物[I']に変換すること
ができる。
【0028】本発明におけるアシル基供与体は、化合物
[I']および[I"]をアシル化するものであればいずれで
もよい。アシル基供与体としては、対応するアシル基を
供与するものであれば特に限定されないが、酸無水物、
酸エステルなどが有利に使用される。該アシル基供与体
は、アシル基がアセチル基の場合は、例えば無水酢酸、
酢酸エチル、酢酸ビニルが、アシル基がプロピオニル基
の場合は、無水プロピオン酸、プロピオン酸エチル等が
好ましく使用される。
【0029】本発明におけるアシル化反応は水中でも進
行するが、有機溶媒中の方が好ましい。有機溶媒として
は、アシル化反応を阻害しない溶媒であれば、いずれの
ものでも用いられる。反応を阻害しない有機溶媒として
は、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン
類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサ
ン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ベ
ンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジメチル
ホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジ
クロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン
等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは1種
のみ、あるいは2種以上を適当な割合で混合して用いて
もよい。本反応において、反応液中の化合物[I']およ
び[I"]の濃度は約0.1〜100mg/ml、好ましくは
約1〜10mg/mlである。反応温度は約15〜80℃、
好ましくは約24〜42℃である。反応時間は約10分
〜72時間、好ましくは約1〜24時間である。反応液
中に、所望により、酵素安定剤、モレキュラーシーブス
等の脱水剤、あるいはDMSO、ホルムアミド、エチレ
ングリコール等の水代替物を添加してもよい。反応は静
置、振盪、撹拌のいずれの条件でもよい。また、エステ
ラーゼを担体に固定化した場合には、バイオリアクター
で反応させてもよい。
【0030】反応生成物は公知の手段、例えば溶媒抽
出、液性変換、転溶、塩析、晶出、再結晶、クロマトグ
ラフィー等によって単離精製することができる。混合物
から所望の化合物[I']を分離するには、自体公知の方
法またはそれに準じる方法が適用される。それらの方法
としては、例えば溶解性、結晶性などの差を利用した分
別法、クロマトグラフィーによる分離法等が用いられ
る。例えば、分別法を利用して化合物[I']を得る方法
を次に示す。上記の光学異性体の混合物を、特定の溶媒
中加熱溶解して過飽和溶液を調製し、これを冷却、濃縮
あるいは化合物[I']の溶解度を減少させる溶媒を添加
することにより、化合物[I']のみを分別晶出させる。
この分別晶出は不活性溶媒中で行われるが、特定の溶媒
を用いた時にのみ効率よく化合物[I']を晶出させるこ
とができる。
【0031】好適な溶媒としては、アセトンなどのケト
ン類、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、お
よび酢酸エチルなどのエステル類とヘキサン等の炭化水
素類との混合溶媒などが用いられる。特に好適な溶媒と
しては、アセトンなどのケトン類を挙げることができ
る。分別晶出により化合物[I']のみを得る場合、化合
物[I']の含量が高い方が望ましい。アセトンを溶媒と
して用いた場合には、化合物[I']の含量が上記の混合
物中の化合物[II"]に対して14重量%程度であって
も差し支えない。温度は約−20℃ないしその溶媒の沸
点が好ましい。化合物[I']の結晶化温度以下が有利で
ある。また、化合物[I']の種晶を接種することも可能
であるが、この過飽和溶液においては化合物[I']の自
然起晶が起こるため、必ずしも必要としない。一方、上
記の反応で生成した場合、化合物[II"]は脱アシルオ
キシ反応によって、化合物[IV]に変換してもよい。
【0032】本発明の脱アシルオキシ反応は、次の反応
【0033】
【化16】
【0034】に示すように、化合物[II"]を加水分解
により化合物[I"]とし、次いでハロゲン体へと導き、
これを還元することにより化合物[IV]とする。上記の
反応式に示した化合物[II"]の化合物[I"]への加水分
解は通常の塩基性下で任意の有機溶媒中で行うことがで
きる。好適な溶媒としては、メタノール、エタノール等
の低級アルコール類、さらにジエチルエーテル、テトラ
ヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類などが挙げら
れる。塩基としては、通常のものを任意に用いることが
できるが、好適な塩基としては、例えば炭酸ナトリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ
金属炭酸塩、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、例え
ば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアル
カリ土類金属水酸化物などである。塩基の使用量は約1
ないし10モル、好ましくは約1ないし3モルである。
この加水分解において反応温度は特に制限はなく、約0
から100℃、好ましくは約15から40℃で行われ
る。反応温度は数分から数十時間程度である。
【0035】化合物[I"]のハロゲン化は通常の任意の
ハロゲン化剤で行うことができる。ハロゲン化剤として
は、例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲ
ン化水素、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン、五臭
化リン、三ヨウ化リン等のハロゲン化リン、塩化チオニ
ル、臭化チオニル等のハロゲン化チオニル、塩化スルフ
リル等のハロゲン化スルフリル、トリフェニルフォンス
フィン−四塩化炭素、ジフェニルトリハロゲノホスホラ
ン、トリフェニルフォスフィンジハロゲニド、フォスフ
ォン酸トリフェニルジハロゲニド等の活性なハロゲン化
アルキル等を挙げることができる。ハロゲン化剤の使用
量は通常約0.3ないし10モル、好ましくは約0.3な
いし3モルである。この反応に使用しうる代表的な溶媒
としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニ
トリル類、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸エ
チル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、
1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類が挙
げられる。これらは単独でも、あるいは2種以上を適当
な割合で混合して用いてもよい。反応温度は特に制限さ
れないが、通常、約−30から100℃、好ましくは、
約−10から30℃である。反応時間は数分から数十時
間である。また、このハロゲン体は単離することが可能
であるが、特に精製せずにそのまま次工程に供すること
もできる。
【0036】ハロゲン体の還元は接触水素添加、あるい
は水素化物還元剤により行うことができる。接触水素添
加は通常の任意の方法により行うことができる。触媒と
しては、例えば、木炭担持パラジウム、硫酸バリウム担
持パラジウム、白金およびラネーニッケル等である。接
触水素添加に使用される溶媒としては、通常の有機溶
媒、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコー
ル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキ
サン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、
ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸エチル等のエ
ステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジ
クロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸等の有機
酸が挙げられる。これらの溶媒は単独でも、あるいは2
種以上の混合物として用いてもよい。反応温度および圧
力は特に制限がないが、各々約5℃〜100℃、大気圧
〜100気圧である。反応時間は数分から数十時間であ
る。
【0037】水素化物還元剤による還元では、水素化ホ
ウ素ナトリウム、水素化ホウ素マグネシウム、ジボラン
等のホウ素化水素化物、アルミニウムリチウム水素化
物、ジイソブチルアルミニウム水素化物、ジエチルアル
ミニウムナトリウム水素化物等のアルミニウム水素化物
により行うことができる。溶媒としては反応条件下に還
元剤に対して不活性であり、反応剤が少なくとも一部可
溶である溶媒が好ましく、通常の有機溶媒、例えばジエ
チルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエ
チレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類、
ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジクロロメタン、
クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化
炭化水素類が用いられる。水素化ホウ素ナトリウムのよ
うな水性溶媒中で使用可能な還元剤に対しては、水およ
びメタノール、エタノール、ジエチレングリコール等の
アルコール類も有効である。これらの溶媒は単独でも、
あるいは2種以上の混合物としても使用できる。反応温
度は特に制限がないが、約−10から100℃が好まし
い。反応時間は数分から数十時間である。
【0038】上記の方法で得られた化合物[IV]は公知
の方法、例えば、テトラヘドロン(Tetrahedron)46
7667(1990)に記載されているクロル化、加水分
解による方法を用いて化合物[I']を得、これはスワン
酸化、その他により下記スキーム中の化合物[III]に
変換できる。
【0039】化合物[III]は特公昭53−27279
号公報に示された方法、例えば、次の反応工程によりD
−ビオチンに誘導することができる。
【0040】
【化17】
【0041】[式中、Bzは置換基を有していてもよいベ
ンジル基を示す]D−ビオチンはビタミンHとも称さ
れ、医薬品、飼料添加用に広く用いられている。
【0042】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。NMRスペクトルは内部基準としてテトラメチルシ
ランを用いて日本分光 JNM−GSX270(270
MHz)型スペクトルメーターで測定し、全δ値をppmで
示した。混合溶媒において( )内に示した数値は各溶媒
の容量混合比である。%は特記しない限り、重量パーセ
ントを意味する。実施例中の記号は以下の意味を有す
る。s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、
q:クワルテット、dd:ダブルダブレット、m:マルチプレ
ット、br:幅広い、J:カップリング定数、ph:フェニル
基、Ac:アセチル基 化合物[I']+化合物[I"]から化合物[II']+[II"]
への変換率は、高速液体クロマトグラフィーで反応液中
の各々の成分含量を測定し、この測定値から下式により
求められる。
【0043】
【数1】
【0044】具体的には、反応液を適当な有機溶媒
(例、酢酸エチル)で抽出し、この抽出液をキラルカラム
(例、キラルセルOD、ダイセル工業(株)製)を用いる高
速液体クロマトグラフィーに付すことにより実施され
る。
【0045】実施例1 (±)−(3aα,4α,6aα)−テトラヒドロ−1,3−ジ
ベンジル−4−ヒドロキシ−1H−チエノ[3,4−d]イ
ミダゾール−2(3H)−オン(1.0g)をトルエン(50
0ml)に溶解し、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)
の固定化エステラーゼ(リポザイムIM60、Novo N
ordisk社)(10g)、酢酸ビニル(1.0ml)、モレキュラ
ーシーブス4A 1/16(5.0g)を1リットル容三
角フラスコに加えて、37℃で20時間撹拌した。得ら
れた反応液をメンブランフィルター(ポアサイズ0.45
μm、アドバンテック製)を用いて濾過し、固定化エステ
ラーゼおよびモレキュラーシーブスを濾去した。濾液を
高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率
は61%で、(−)−(3aα,4α,6aα)−テトラヒドロ
−1,3−ジベンジル−4−ヒドロキシ−1H−チエノ
[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オン[I"]のピー
クは認められなかった。高速液体クロマトグラフィーの
パターンを図1に示す。次いで、反応液を減圧下濃縮
し、晶出した結晶を濾過したところ、(+)−(3aα,4
α,6aα)−テトラヒドロ−1,3−ジベンジル−4−ヒ
ドロキシ−1H−チエノ−[3,4−d]イミダゾール−2
(3H)−オン[I'](285mg、収率:28.5%)が得ら
れた。構造確認は融点、IR、NMRおよび比旋光度に
より行った。
【0046】融点: 166〜168℃。 IR(KBr)cm-1: 3300、1680。 NMR(CDCl3): 1.7(1H,br.s,OH)、2.86
(1H,d,J=12.7,C(6)−H)、3.01(1H,dd,
J=12.7,4.7,C(6)−H)、4.02(1H,d,J=
7.9,C(3a)−H)、4.21(1H,dd,J=7.9,4.
6,C(6a)−H)、4.21、4.32、4.66、4.7
4(それぞれ1H,d,J=15.5,NCH2)、5.18(1
H,s,C(4)−H)、7.2−7.4(10H,m,Ph)。 比旋光度: [α]D 27=+71.7(C=0.87、クロロホ
ルム) さらに、母液を減圧下濃縮して油状物を得、これをシリ
カゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2
/1)により精製したところ、(+)−(3aα,4α,6a
α)−テトラヒドロ−1,3−ジベンジル−4−ヒドロキ
シ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−
オン(87mg、8.7%)および(−)−(3aα,4α,6a
α)−テトラヒドロ−1,3−ジベンジル−4−アセトキ
シ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−
オン(600mg、収率: 53.4%)が得られた。
【0047】
【発明の効果】本発明の化合物[I']および[I"]の混合
物に、アシル供与体存在下で糸状菌由来のエステラーゼ
を接触させることによって光学活性なD−ビオチン中間
体[I']が収率よく、かつ高純度で得られる。この化合
物[I']を原料として、光学活性なD−ビオチンが高収
率、高純度かつ安価に製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた反応液の高速液体クロマ
トグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す。図
の横軸は保持時間(単位:分)を示し、ピーク上には、
対応する化合物を示した。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−230066(JP,A) Tetrahedron,Vol. 46,No.23(1990),p.7667−7676 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 17/00 - 17/18 C07D 495/04 CA/REGISTRY(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イミダゾール環の2つの窒素原子が、置
    換基を有していてもよいベンジル基で保護された(3a
    α,6aα)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−1H−
    チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オンの
    (+)−異性体および(−)−異性体の混合物に、アシ
    ル基供与体の存在下、(−)−異性体を(+)−異性体
    よりも速やかにアシル化する能力を有する糸状菌由来の
    エステラーゼを接触させることを特徴とする、イミダゾ
    ール環の2つの窒素原子が、置換基を有していてもよい
    ベンジル基で保護された(−)−(3aα,6aα)−
    テトラヒドロ−4−アシルオキシ−1H−チエノ[3,4
    −d]イミダゾール−2(3H)−オンの製造方法。
  2. 【請求項2】 一般式: 【化1】 [式中、Xはアルキル基、ニトロ基またはアルコキシ基
    を、nは0〜3の整数を示す]で表わされる化合物の混
    合物を用い、一般式: 【化2】 で表わされる化合物を製造する請求項1記載の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 イミダゾール環の2つの窒素原子が、置
    換基を有していてもよいベンジル基で保護された(3a
    α,6aα)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−1H−
    チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オンの
    (+)−異性体および(−)−異性体の混合物に、アシ
    ル基供与体の存在下、(−)−異性体を(+)−異性体
    よりも速やかにアシル化する能力を有する糸状菌由来の
    エステラーゼを接触させ、生成したイミダゾール環の2
    つの窒素原子が、置換基を有していてもよいベンジル基
    で保護された(−)−(3aα,6aα)−テトラヒド
    ロ−4−アシルオキシ−1H−チエノ[3,4−d]イミ
    ダゾール−2(3H)−オンを除去することを特徴とす
    る、イミダゾール環の2つの窒素原子が、置換基を有し
    ていてもよいベンジル基で保護された(+)−(3a
    α,6aα)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−1H−
    チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オンの
    製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式: 【化3】 [式中、各記号は請求項2におけると同意義]で表わされ
    る化合物の混合物を用い、生成する一般式: 【化4】 で表わされる化合物を除去して、一般式: 【化5】 [式中、各記号は請求項2におけると同意義]で表わされ
    る化合物を得る請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 糸状菌がムコール属菌である請求項1ま
    たは3記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 アシル基がC1-6アルキル−カルボニル
    基である請求項1または3記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 アシル基がアセチル基である請求項
    載の製造方法。
  8. 【請求項8】 アシル基供与体がアセチル基供与体であ
    る請求項1または3記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 アシル基供与体が無水酢酸、酢酸エチル
    または酢酸ビニルである請求項記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 nが0である請求項2または4記載の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 Xがメチル基、ニトロ基またはメトキ
    シ基である請求項2または4記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 (+)−(3aα,6aα)−テトラ
    ヒドロ−1,3−ジベンジル−4−ヒドロキシ−1H−
    チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オンを
    得る請求項3記載の製造方法。
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