JP3475607B2 - 球状黒鉛鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法 - Google Patents
球状黒鉛鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法Info
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Description
ンキィ黒鉛晶出防止方法に係り、特に大物厚肉球状黒鉛
鋳鉄の製造に際して、チャンキィ黒鉛の晶出を防止する
球状黒鉛鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法に関するも
のである。
元素を添加し、本来溶湯中のカーボンが片状黒鉛として
晶出するところを、球状黒鉛として晶出させた鋳鉄材料
である。一方、球状化元素として工業的に使用可能な元
素には、Mg,Ce,Caがある。これら三元素の中
で、黒鉛の球状化に最も効果的で製造条件に適している
元素は、Mgである。金属MgとしてMg単体で添加す
る場合もあるが、一般的にはFe−Si−Mg、Ni−
Mg、Cu−Mg等の合金の形で添加される。これらの
うち、最も多く使われているのはFe−Si−Mg合金
である。Ce、Caは、黒鉛球状化の補助元素としてF
e−Si−Mg合金に少量含有されている。
金;ミッシュメタル)の形で含有されている。しかし、
このREM(あるいはCe)を含有するFe−Si−M
g合金は、小・中物の球状黒鉛鋳鉄の黒鉛球状化には効
果的であるものの、たとえば、肉厚が80mm以上の、
あるいはモジュラスM(体積/放熱表面積)が4cm以
上の大物厚肉の球状黒鉛鋳鉄の場合には、チャンキィ黒
鉛を晶出させる欠点をもっている。図4は、従来技術に
よる、重量40トン、最大肉厚245mmの厚肉球状化
黒鉛鋳鉄内に晶出したチャンキィ黒鉛組織の顕微鏡写真
の模写図であり、組織中に微細な粒状のチャンキィ黒鉛
晶出が観測される。
あり、Caが促進元素とされている。このチャンキィ黒
鉛が発生すると、良好な球状黒鉛組織を有する鋳物に比
べて靱性が著しく劣るため、材料としての信頼性を大幅
に欠くことになる。また、鋳物の内部に晶出したチャン
キィ黒鉛は、製造過程の最終工程である機械加工で発見
されるため、製品を廃却せざるを得ない場合が生じ、損
害が大きい。チャンキィ黒鉛晶出部は、加工肌が粗く、
光沢も不均一である。以上のため、チャンキィ黒鉛晶出
防止対策として、球状化処理後の残留Ce量に化学量論
的に相当する量の黒鉛球状化阻害化元素(Bi、As、
Sb、Pb、Te、Se、Sn等)を添加し、金属間化
合物としてCeの影響を相殺する方法が採られてきた。
現在、最も多く使用されている相殺元素は、Sbであ
る。
の方法には、下記のような問題がある。 (1)たとえば、0.010〜0.020%REM含有
の溶湯にSbを相殺元素として添加する場合、その添加
量は溶湯1トン当たり40〜80gとされている。この
量は溶湯量に対して極めて少ない量であり、溶湯への歩
留まり量(添加量に対する正味溶け込み量の比率)が不
安定である。 (2)Sbが仮に100%溶け込むことが出来たとして
も、その量は0.004〜0.008%という微量であ
り、分析による鋳込前の確認も鋳込後の確認と同様に難
しい。このことは、他の相殺元素についても同様であ
る。 (3)REM相殺元素の添加により、製品厚肉部のチャ
ンキィ黒鉛晶出は防止されるが、REM相殺元素は同一
製品内の薄肉部、製品本体供試材、別鋳込供試材に対し
て、パーライト析出を促進することが知られている。こ
の結果、製品内に強度不均一が発生する。また、供試材
と製品本体との強度格差が大きくなり、供試材としての
役割を果たし得なくなる。 (4)添加量が過多になるか、あるいはSbを含む戻り
屑銑の使用による蓄積が起こることにより、片状黒鉛が
晶出し、黒鉛球状化率が低下する。 (5)現在、最も多く使用される相殺元素であるSb
は、単独では人体に有害である。また、これ以外の相殺
元素であるAsやPbも同様に人体に有害であり、その
取扱に注意を要する。 本発明では、上述のような種々の弊害を排除して、安定
的に、かつ確実にチャンキィ黒鉛晶出を防止する方法を
提供することを目的としている。
るために、本発明においては、第1の発明では、肉厚が
80mm以上であるか、またはモジュラスMが4cm以
上の大物厚肉球状黒鉛鋳鉄の製造において、希土類元素
を全く含有しないMg球状化剤を用いて球状化処理し、
かつ、希土類元素を全く含有しない接種剤を用いて接種
処理をすることにより、厚肉部に0.035〜0.07
0%Mgを残留させることをとした。また、第2の発明
では、第1の発明における球状化処理と接種処理を同時
に行なうか、あるいは球状化処理の後に接種処理を行な
った後、25分以内に鋳込を完了させることとした。さ
らに、第3の発明では、球状化処理と接種処理を行なう
前に、溶解炉内で成分調整とCO反応温度域への加熱に
よる溶解処理を実施するようにした。
m以上であるか、またはモジュラスMが4cm以上の大
物厚肉球状黒鉛鋳鉄の製造において、鋳鉄溶湯中に希土
類元素を全く含有しないMg球状化剤を添加して球状化
処理するとともに、接種剤を添加して接種処理するよう
にしたので、厚肉部に0.035〜0.070%Mgを
残留させ、凝固に際して黒鉛が生成し易く球状黒鉛粒数
が多く晶出し易い溶湯とし、問題点の多いSb等のRE
M相殺元素を添加することなく、大物厚肉球状黒鉛鋳鉄
へのチャンキィ黒鉛の晶出を防止する。さらに、第2の
発明では、球状化処理効果および接種処理効果を維持さ
せて凝固開始に導くことが出来るように、各々の処理後
の25分以内に鋳込を完了させ、大物厚肉球状黒鉛鋳鉄
へのチャンキィ黒鉛の晶出を防止する。また、第3の発
明では、球状化処理と接種処理の前に溶解炉内で成分調
整とCO反応温度域への加熱による溶解処理を行なうこ
とによって、溶湯中の酸素濃度を下げて、Mg酸化やS
i酸化を防止し溶け込み量を増大させるとともに、接種
効果を向上させる。
る。図1は本発明の実施例に係る大物厚肉球状黒鉛鋳鉄
の製造工程を示す工程図である。REM(希土類元素合
金;ミッシュメタル)は、下記のような特性を有する。 球状化阻害元素を相殺する働きがある。 Mgのフェーディングを抑制する。 黒鉛粒数を増加する。 Mg反応の抑制目的でMg系球状化剤に添加されて
いる。 しかしながら、純度の高いスクラップが入手容易になっ
たことや、その純度を高精度の分析機器を使用して分析
できるようになったことにより、上記項目の目的を果
たす必要がなくなった。また、大物厚肉球状黒鉛鋳鉄の
球状化処理温度と接種温度が小・中物品に比べて低いこ
とから、Mgのフェーディングの進行速度が遅くなるの
で、項目についても殆ど考えなくてもよい。すなわ
ち、接種効果のフェーディング防止対策を実施すると、
Mgのフェーディング問題は自動的に解決される。項目
のREM添加による黒鉛粒数の増加は、凝固時間の短
い10mm以下の薄肉製品等に当てはまる現象であり、
本発明が対象としている凝固時間の長い大物厚肉品には
当てはまらない。大物の球状化処理は、比較的低温(1
400℃)で行われるため項目の問題も殆ど考えなく
てよい。
球状化処理にとって、REMの添加は必要ないことにな
る。黒鉛の球状化にとって、あくまでも欠くことの出来
ない元素はMgであり、接種処理が黒鉛の球状化を促進
する。球状化剤によって添加されたMgは、溶湯中の酸
素、硫黄、窒素と化合あるいは溶湯の2次酸化、2次窒
化により生成した介在物の形態以外は、その殆どが気泡
として溶液中に懸濁し、その気泡に黒鉛が晶出して球状
黒鉛を形成する。本発明でいう接種処理とは、凝固に際
して黒鉛晶出を促進し、球状黒鉛粒数を増加させること
である。一方、接種剤であるFe−Si合金によって添
加されたSiは、溶湯中にSiのミクロ的な濃度班(む
ら)を与える。球状黒鉛は、ミクロ的にSi濃度が高い
領域内のMg気泡に優先的に生成する。しかし、球状化
処理および接種処理から鋳込までに要する時間が長くな
るにつれて、Mg気泡は浮上して溶湯中における個数を
減らし、Siは拡散し均一化することによって濃度班が
なくなる。これらは、溶湯中にREMが存在しない場合
でも、チャンキィ黒鉛を晶出させる。このような観点か
ら、チャンキィ黒鉛の晶出防止を対象とする研究はこれ
まで全く見当たらなかった。
ション実験を実施した。実験は、大物厚肉鋳物を想定し
たフラン鋳型に、球状化剤と接種剤で同時処理した溶湯
を、1310〜1330℃で鋳込んで凝固させた。溶解
材料は、ダクタイル用銑鉄、故銑、電磁鋼板、Fe−S
i、電極屑等を配合して、元湯化学成分となるようにし
た。球状化剤は、5.5%Mg合金にREMを4段階に
変化させたもの4種類であり、Mg添加量として0.0
70%、REM添加量として0.040%以下となるよ
うに添加した。接種剤は、Fe−75Siを使用した。
試験材の形状は、一辺が600mmの立方体で、モデュ
ラスM=10cm、重量は約1530kgであった。鋳
込終了から凝固完了までに要した時間は、9〜10時間
であった。
ンキィ黒鉛晶出状況を観察するため、試験材をバンドソ
ーで切断した。チャンキィ黒鉛の発生傾向とREM添加
量の関係を表1に示す。表1の番号1〜5は本発明例を
示し、番号6〜10は従来例を示す。表1によれば、R
EM無添加以外は、全てチャンキィ黒鉛が晶出した。
ついて説明する。まず、アーク炉により溶製した鋳鉄溶
湯を、置き注ぎ法により球状化処理した後、フラン鋳型
に鋳込んで実製品の確性試験を行なった。球状化剤は、
0%REMと1.5%REMを含有するMg系のものを
使用した。また、接種剤としてFe−75Siを、球状
化剤とともに置き注ぎ添加した。試験材は表1に示す4
種類の試験材を使用した。確性試験の結果、REM無添
加の試験材には、チャンキィ黒鉛が皆無であった。0.
025%REM添加の試験材には、多量のチャンキィ黒
鉛が晶出した。図3は、本発明の実製品の大物厚肉球状
化黒鉛鋳鉄の顕微鏡写真の模写図である。これに対し
て、図4は、従来技術による大物厚肉球状化黒鉛鋳鉄内
に晶出したチャンキィ黒鉛組織の顕微鏡写真の模写図で
ある。表1において、本発明例(番号4)と従来例(番
号9)の実体機械的性質を、表2および表3に示す。こ
れによると、チャンキィ黒鉛が発生すると、靱性が大幅
に低下することがわかる。
0mm以上であるか、またはモジュラスMが4cm以上
の大物厚肉球状黒鉛鋳鉄の製造において、希土類元素を
全く含有しないMg球状化剤および接種剤を鋳鉄溶湯に
添加することによって、チャンキィ黒鉛を発生させるこ
となく、大物厚肉球状黒鉛鋳鉄を製造できることが判明
した。
に、本発明の方法によれば、大型球状黒鉛鋳鉄の製造に
おいて、微細な製造管理、供試材の機械的に対する悪影
響の心配を排除して、チャンキィ黒鉛の生成を防止した
大物厚肉球状黒鉛鋳鉄を製造できる。
製造工程を示す工程図である。
片の採取箇所を説明する説明図である。
鏡写真の模写図である。
出したチャンキィ黒鉛組織の顕微鏡写真の模写図であ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 肉厚が80mm以上であるか、またはモ
ジュラスMが4cm以上の大物厚肉球状黒鉛鋳鉄の製造
において、希土類元素を全く含有しないMg球状化剤を
用いて球状化処理し、かつ、希土類元素を全く含有しな
い接種剤を添加して接種処理することにより、厚肉部に
0.035〜0.070%Mgを残留させることを特徴
とする球状黒鉛鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法。 - 【請求項2】 球状化処理と接種処理を同時に行なう
か、あるいは球状化処理の後に接種処理を行なった後、
25分以内に鋳込を完了させる請求項1記載の球状黒鉛
鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法。 - 【請求項3】 球状化処理と接種処理を行なう前に、溶
解炉内で成分調整とCO反応温度域への加熱による溶解
処理を実施する請求項1記載または請求項2記載の球状
黒鉛鋳鉄のチャンキィ黒鉛晶出防止方法。
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鋳物,日本,1985年,第57巻第8号,534−535頁 |
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