JP3472352B2 - 製紙用添加剤 - Google Patents

製紙用添加剤

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JP3472352B2
JP3472352B2 JP21326794A JP21326794A JP3472352B2 JP 3472352 B2 JP3472352 B2 JP 3472352B2 JP 21326794 A JP21326794 A JP 21326794A JP 21326794 A JP21326794 A JP 21326794A JP 3472352 B2 JP3472352 B2 JP 3472352B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は製紙用添加剤に関するも
のであり、さらに詳しくはアミジン単位を有する特定の
両性高分子を紙料スラリー中に添加することにより、従
来の添加剤に較べ飛躍的に濾水性、紙力、サイズ度、填
料歩留率等が向上する製紙用添加剤に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より製紙工程に添加する高分子とし
ては、ポリエチレンイミン(PEIと略す)、(メタ)
アクリル酸ジメチルアミノエチルやその4級塩、ジメチ
ルジアリルアモンニウムクロリド(DMDACと略す)
とアクリルアミドとの交互共重合体、さらに(メタ)ア
クリル酸を加えた両性高分子、またポリアクリルアミド
のホフマンおよびマンニッヒ変性物などが使用されてい
る。またN−ビニルホルムアミドの単独重合体あるいは
共重合体の部分変性物であるポリビニルも特許としては
提案されている(米国特許第4,421,602号、米
国特許第4,774,285号、米国特許第4,95
7,977号、特開昭63−6198号公報など)。
【0003】しかし、これらの高分子はそれぞれ欠点が
ある。例えば濾水性向上剤として使用されるPEIはプ
レス脱水性、いわゆる搾水性は良いが、分子量が低いた
め濾水度が上がらず、また泡立ちも多いし、紙力効果も
低い。アクリル系あるいはDMDAC系のカチオン性ま
たは両性高分子は搾水性が悪く、濾水性向上剤としては
不向きであり、親水性が高すぎるためサイズ剤類の定着
剤としては必ずしも適当ではない。ポリアクリルアミド
のマンニッヒ変性物は安定性に問題があり、やはり搾水
性が悪く、濾水性向上剤、また親水性の点からサイズ定
着剤には不向きである。ポリアクリルアミドのホフマン
変性物は安定性に問題があり、重合度の点から填料歩留
剤には適当ではない。また新たに提案されたポリビニル
アミン系重合体はモノマーのコストが比較的高いため、
重合体も割高になり、また重合度が上がりにくい一方、
濾水性向上剤として使用した時、紙力を低下させる場合
がある。
【0004】こうした欠点を補うため、アミジン構造を
有するカチオン性高分子が濾水性向上剤、紙力増強剤、
填料歩留剤などを目的として提案されている(特開平6
−123096号公報)。しかし、アミジン構造を有す
るカチオン性高分子は実質的にカチオン性であるが、紙
力増強剤は一般的には両性の方が効果が高い場合が多
い。また、濾水性向上剤として使用する場合、主な応用
分野は板紙工場であり、抄紙は主にpH5〜8であるの
で、カチオン性より両性のほうが効果が優れている場合
が多い。両性高分子は、pH5〜8で分子内および分子
間イオン複合体を生成し、これらが独自の効果を発揮す
るからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、製紙
原料スラリー中に添加して使用することにより、抄紙系
の多様な条件変化に対応して、濾水性、サイズ効果、紙
力、填料歩留などに優れた効果を示す製紙用添加剤を提
供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
本発明者等は鋭意研究を行なった結果、アミジン構造を
有する特定の両性高分子を製紙工程の紙料スラリー中に
添加することにより、濾水性、サイズ効果、紙力増強、
填料歩留率等に優れた効果を示すことを発見し本発明を
成すに到った。
【0007】本発明の請求項1の発明は、下記(1)お
よび/または(2)で表される繰り返し単位を20〜9
0モル%、下記(3)で表される繰り返し単位を0〜4
0モル%、下記(4)で表される繰り返し単位を0〜7
0モル%、下記(5)で表される繰り返し単位を0〜7
0モル%、下記(6)で表される繰り返し単位を5〜2
0%含有し、1規定の食塩水中0.1g/dlの溶液と
して25℃で測定した還元粘度の値が0.1〜10dl
/gである水溶性高分子からなる製紙用添加剤であっ
て、製紙原料スラリー中に添加して使用することを特徴
とする製紙用添加剤である。
【0008】
【化7】
【0009】
【化8】
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
【0012】
【化11】
【0013】
【化12】
【0014】(式中R1 ,R2 は水素またはメチル基、
3 は炭素数1から4のアルキル基、R4 は水素原子、
メチル基またはカルボキシメチル基、X- は陰イオン、
YはCOOM,C64 SO3 M,CH2 SO3 M,C
ONHC(CH32 CH2 SO3 M、Mは陽イオンを
それぞれ表す。)
【0015】本発明の請求項2の発明は、繰り返し単
(1)及び/または(2)が40〜80モル%であるこ
とを特徴とする請求項1に記載の製紙用添加剤である。
【0016】本発明の請求項3の発明は、N−ビニルホ
ルムアミド、アクリロニトリルおよびアクリル酸からな
る共重合体の酸加水分解物からなることを特徴とする請
求項1あるいは請求項2に記載の製紙用添加剤である。
【0017】本発明の請求項4の発明は、濾水性向上剤
として使用することを特徴とする請求項1から請求3に
記載の製紙用添加剤である。
【0018】本発明の請求項5の発明は、サイズ剤の定
着剤として使用することを特徴とする請求項1から請求
項3に記載の製紙用添加剤である。
【0019】本発明の請求項6の発明は、紙力増強剤と
して使用することを特徴とする請求項1から請求項3に
記載の製紙用添加剤である。
【0020】本発明の請求項7の発明は、填料歩留向上
剤として使用することを特徴とする請求項1から請求項
3に記載の製紙用添加剤である。
【0021】上記の(1)と(2)で表されるアミジン
単位は、5員環からなるアミジン構造を有しており、核
磁気共鳴分光法(NMR)や赤外分光法(IR)などの
分析において通常、等価で観測されるものであり(1)
と(2)の総量として定量される。しかしながら下記の
概念図に示すように、後述する重合体のアミジン化反応
における生成高分子の繰り返し単位を考えた場合、
(1)と(2)で表される2種類の繰り返し単位を考慮
しなければならない。なお下記概念図においてCN基と
NH2 基はアミジン化反応に関与しなかったシアノ基単
位およびアミノ基単位を示している。
【0022】
【化13】
【0023】上記のアミジン構造を有する水溶性高分子
の製造方法は特に限定されるものではないが、一般的に
は1級アミノ基または変換反応により1級アミノ基が生
成しうる置換アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマ
ーとアクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルなど
ニトリル類との共重合体を製造し、さらに該共重合体中
のシアノ基と1級アミノ基を反応させてアミジン化する
ことにより得ることができる。
【0024】上記のエチレン性不飽和モノマーとして
は、一般式
【化14】CH2 =CR2 −NHCOR3 (式中、R2 は水素原子またはメチル基を、R3 は炭素
数1から4のアルキル基または水素原子を表す。)で表
される化合物が好ましい。共重合体中において、かかる
化合物に由来する置換アミノ基は、加水分解あるいは加
アルコール分解により容易に1級アミノ基に変換され
る。更にこの1級アミノ基は、隣接したシアノ基と反応
してアミジン化する。該化合物としては、N−ビニルホ
ルムアミド(R2 =H,R3 =H),N−ビニルアセト
アミド(R2 =H,R3 =CH3 )等が例示される。
【0025】これらのエチレン性不飽和モノマーとニト
リル類との共重合モル比は通常20:80から80:2
0であるが、もし所望ならばこの範囲外の重合モル比、
たとえば更にエチレン性不飽和モノマーの比率の大きい
重合モルを採用することもできる。製紙用添加剤として
の応用を考えた場合、水溶性高分子中に占めるアミジン
単位の比率が大きいほうが性能が高い。またアミン単位
も製紙用添加剤としての性能に寄与していると考えられ
る。従って製紙用添加剤として好適な共重合体を与える
エチレン性不飽和モノマーとニトリル類との共重合モル
比は一般に20:80から80:20、特に40:60
から60:40である。
【0026】エチレン性不飽和モノマーとニトリル類と
の共重合の方法としては、通常のラジカル重合法が用い
られ、塊状重合、水溶液沈澱重合、懸濁重合、乳化重合
などのいずれも用いることができる。溶媒中で重合させ
る場合、原料モノマー濃度が通常5〜80重量%、好ま
しくは20〜60重量%で実施される。重合開始剤に
は、一般的なラジカル重合開始剤を用いることができる
が、アゾ化合物が好ましく、2,2′−アゾビス−2−
アミジノプロパンの塩酸塩などが例示される。また、重
合反応は一般に不活性ガス気流下、30〜100℃の温
度で実施される。得られた共重合体はそのままの状態あ
るいは希釈して、即ち、溶液状、あるいは懸濁状でアミ
ジン化反応に供することができる。また公知の方法で脱
溶媒、乾燥し、共重合体を固体として分離した後、固体
状でアミジン化反応に供することもできる。
【0027】アミジン化反応は、エチレン性不飽和モノ
マーとして前記一般式で示されるN−ビニルアミド化合
物を用いた場合には、共重合体の置換アミノ基を一級ア
ミノ基に変換し、次いで生成した一級アミノ基と隣接す
るシアノ基と反応させてアミジン構造を生成させるとい
う二段階反応により本発明に係わる水溶性高分子を製造
することができる。そして好ましくは、該共重合体を強
酸または強塩基の存在下、水またはアルコール溶液中で
加温して、一段階でアミジン構造を生成させる。この場
合においても、まず一級アミノ基が中間構造として生成
していると考えられる。
【0028】該反応の具体的条件としては、例えば共重
合体に対しその置換アミノ基に対して通常0.9〜5.
0倍、好ましくは1.0〜3.0倍当量の強酸、好まし
くは塩酸を加え、通常80〜150℃、好ましくは90
〜120℃の温度で、通常0.5〜50時間加熱するこ
とによりアミジン単位を有する水溶性高分子とすること
ができる。一般に置換アミノ基に対する強酸の当量比が
大きいほど、かつ、反応温度が高いほどアミジン化が進
行する。またアミジン化に際しては、反応に供する共重
合体に対し、通常10重量%以上、好ましくは20重量
%の水を反応系内に存在させる。
【0029】本発明に係る両性高分子からなる製紙用添
加剤は、最も典型的には上記で説明したところに従い、
N−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとを共重合
させ生成した共重合体を通常、水懸濁液として塩酸の存
在下に加熱して置換アミノ基と隣接するシアノ基からア
ミジン単位を形成させることにより製造される。そして
共重合に供するN−ビニルホルムアミドとアクリロニト
リルとのモル比、および共重合体のアミジン化条件を選
択することにより、各種の組成の高分子からなる製紙用
添加剤を製造することができる。
【0030】本発明に係る両性高分子からなる製紙用添
加剤の代表的なものの一つは、前記(1)および/また
は(2)で表される繰り返し単位を20〜90モル%、
前記(3)で表される繰り返し単位を0〜20モル%、
前記(4)で表される繰り返し単位を0〜70モル%お
よび前記(5)で表される繰り返し単位を0〜70モル
%、(6)で表される繰り返し単位を5〜20モル%含
有しており、かつ0.1〜10dl/gの還元粘度を有
している。なお、本発明において、還元粘度は1規定の
食塩水中0.1g/dlの溶液として、25℃で測定す
るものとする。
【0031】上述の製紙用添加剤において、性能に大き
く寄与するのはアミジン単位であると考えられる。アミ
ジン単位の比率が大きいほど、製紙用添加剤としての性
能は一般的に向上する傾向にある。しかし上述の共重合
体を塩酸水溶液中で加熱する方法などではアミジン単位
が90モル%を越える比率のものを製造することは困難
である。従って製紙用添加剤に占めるアミジン単位の比
率は、通常20〜85モル%であるのが好ましい。
【0032】繰り返し単位(3)はアクリロニトリルに
比して高価なN−ビニル化合物に由来するが、その存在
は製紙用添加剤としての性能に有利には貢献していない
ようである。また繰り返し単位(3)が多くなると、濾
水性や搾水性機能が低下する場合がある。しかしなが
ら、アミジン単位の比率が50モル%以上の場合には、
繰り返し単位(3)が多量に存在していても性能の優れ
た製紙用添加剤となる。生成する水溶性高分子は、一般
にはそのままでは安定性が悪いので、強酸を添加して繰
り返し単位(1),(2)および(5)のカチオン性単
位を完全に中和しておくことが好ましい。繰り返し単位
(4)の製紙用添加剤としての性能に及ぼす影響は明ら
かではないが、搾水性の向上あるいはサイズ定着効果に
多少とも良い影響を与えていることが推定され、少なく
とも悪影響はないと考えられる。
【0033】本発明に係わる製紙用添加剤において、繰
り返し単位(4)とアミジン単位とのモル比[(1)+
(2)]/(4)は一般に0.5〜10.0の範囲にあ
るべきである。なぜならばアミジン単位の多い方が一般
的に製紙用添加剤としての機能は優れていると考えられ
るからである。繰り返し単位(5)はカチオン性であ
り、アミジン単位と同じく搾水性向上としての機能に有
効に作用していると考えられる。繰り返し単位(5)は
水溶性高分子中に0〜70モル%、好ましくは5〜60
モル%存在する。繰り返し単位(1),(2)および
(5)はいずれも繰り返し単位(3)から誘導されるも
のである。従って一般的にいってできるだけ多くの繰り
返し単位(3)が、繰り返し単位(1),(2)または
(5)に変換されているのが好ましい。
【0034】製紙用添加剤に占める繰り返し単位
(1),(2)および(5)の合計は一般に30モル%
以上、好ましくは40〜95モル%である。これは水溶
性高分子を構成する各繰り返し単位のうち、添加剤に有
利に貢献すると考えられる繰り返し単位が大部分を占め
ることを意味する。なお、本発明に係わる製紙用添加剤
において繰り返し単位(5)とアミジン単位とのモル比
[(1)+(2)]/(5)は、一般に0.5〜10.
0の範囲にある。繰り返し単位(5)よりもアミジン単
位の方が性能により有効に作用すると考えられるので
[(1)+(2)]/(5)は2.0〜5.0の範囲に
ある方が好ましい。
【0035】本発明に係る製紙用添加剤は繰り返し単位
(6)のようなアニオン性繰り返し単位を含有する。例
えば下記の繰り返し単位(7)で表されるカルボキシル
基は繰り返し単位(4)の加水分解によって、一般的に
は0〜5モル生成するが、本発明の両性高分子を製造す
る場合はアクリル酸、メタクリル酸、アリルスルホン
酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メ
チルプロパンスルホン酸あるいはイタコン酸のようなア
ニオン性モノマーを共重合する方が一般的である。一般
に5〜20モル%が好適であるが、5〜10モル%が更
に好ましい。20モル%以上になるとアニオン性が強く
なりすぎアミジン構造の特徴が発現されず実用的ではな
い。
【0036】本発明に係る製紙用添加剤には、前述の繰
り返し単位の他、更に他の繰り返し単位が含まれていて
もよい。しかし前述の繰り返し単位(1)〜(6)の合
計が90モル%以上を占めるべきである。本発明に係る
製紙用添加剤に含まれ得る他の繰り返し単位としては下
記(8)〜(10)のようなものがあげられる。繰り返
し単位(8)は繰り返し単位(4)の加水分解によって
生成するが、通常0〜5モル%の範囲にある。繰り返し
単位(9)および(10)は繰り返し単位(5)と繰り
返し単位(8)によって生成し、通常0〜5モル%生成
する。
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】本発明に係る両性高分子からなる製紙用添
加剤の還元粘度は、前述の如く0.1〜10dl/g、
好ましくは0.5〜10dl/gの範囲にある。この理
由としては、粘度があまり高すぎると、紙の地合いが悪
くなるなとという副作用がでる。一方、粘度が低すぎる
と濾水度が上がらなくなり、実用的ではなくなる。本発
明に係る製紙用添加剤は一般の酸性、中性、アルカリ性
抄紙の条件、すなわちpH4〜10、好ましくは4.5
〜9、さらに好ましくは5.5〜8.5で顕著な効果を
発揮する。たとえば、紙力増強、濾水性向上、填料歩留
向上、サイズ剤定着向上など粘度組成、カチオン性基と
アニオン性基のモル分率およびその比率などを変えるこ
とにより、種々の紙質向上を達成することができる。
【0042】本発明に係る製紙用添加剤の添加量として
は、通常、紙原料固形分当たり、0.001重量%〜
0.5重量%であり、好ましくは0.01重量%から
0.5重量%である。また紙料スラリー中に添加する場
合、製紙用添加剤の0.1重量%〜3重量%の水溶液を
調製して添加するとよい。濾水性向上剤、サイズ定着
剤、填料歩留剤として使用する場合は紙原料固形分当た
り、0.01重量%〜0.1重量%、紙力増強剤の場合
は0.1重量%〜0.5重量%が目安となる。
【0043】本発明に係る製紙用添加剤を紙料スラリー
中に添加する場合、他の製紙用薬剤、例えば填料、顔
料、染料、紙力増強剤、サイズ剤、硫酸バンド、歩留向
上剤、濾水性向上剤、界面活性剤、消泡剤、製紙用粘剤
等との併用は可能である。
【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明はその要旨をこえない限り以下の実
施例に限定されるものではない。なお、実施例において
「%」は特に断らないかぎり、「重量%」を意味する。
【0045】(実施例1〜8)(比較例1〜2)(製紙
用添加剤の製造例1) 攪拌機、窒素導入管、コンデンサーを備えた反応装置に
表1に示すような組成で単量体20g、脱塩水133.
1gを仕込んだ。窒素ガス気流中下、60℃に昇温後3
0分間保持した後、2,2′アゾビスアミジノプロパン
2塩酸塩の10%水溶液0.19gを添加し、攪拌下6
0℃に4時間保持し、水中に重合体が析出した懸濁物を
得た。なお重合度調節のため連鎖移動剤として2−メル
カプトエタノールを重合体NO.1とNO.2は対単量
体0.2%、重合体NO.3とNO.4および重合体N
O.7〜NO.10は0.02%、重合体NO.5とN
O.6は0.005%それぞれ重合時添加した。重合体
NO.9(比較例1)およびNO.10(比較例2)は
カチオン性高分子である。重合後、該懸濁物に重合体中
のホルミル基に対して表1のような当量の塩酸を添加し
て攪拌しつつ、90℃に4時間保持し重合体をアミジン
化した。得られた重合体の溶液をアセトン中に添加し、
析出せしめこれを乾燥して固体状重合体NO.1〜N
O.10を得た。該重合体NO.1〜NO.10につき
以下に示す方法により各重合体の組成と還元粘度を測定
した。各重合体の組成を表1にあわせて示す。
【0046】〔組成の分析法〕アミジン化を行う前の各
重合体の組成は13C−NMRスペクトル(13C−核磁気
共鳴スペクトル)の各モノマー単位に対応した吸収スペ
クトルの積分値より算出した。アミジン化後の重合体N
O.1〜NO.10の組成は13C−NMRスペクトルの
各繰り返し単位に対応した吸収ピークの積分値より算出
した。なお繰り返し単位(1)と(2)は区別すること
なく、その総量として求めた。繰り返し単位(9)と
(10)は区別することなくその総量として求めた。ま
た繰り返し単位(1)と(2)、(8)および(9)と
(10)の吸収ピークは170ppm〜185ppm付
近に近接した位置に認められたため、以下のような方法
により各吸収ピークに対応する構造を帰属した。即ち、
重合体の元素分析、水分量の測定により重量収支を確認
し、更に重合体の13C−NMRスペクトルの他にIRス
ペクトルも測定し、重合体のスペクトルとアミジン基、
アミド基およびラクタム基などを既知化合物でのスペク
トルとを詳細に比較検討する方法を採用したものであ
る。
【0047】〔還元粘度の測定〕重合体NO.1〜N
O.10につき、1規定の食塩水中0.1g/dlの溶
液として25℃でオストワルトの粘度計を用いて測定し
た。
【0048】
【表1】
【0049】(実施例9〜16)(比較例3〜4)(製
紙用添加剤の製造例2) 表2に示す単量体を仕込み(モル%)、製造例1と同様
にしてアミジン構造を含有する両性高分子およびカチオ
ン性高分子(重合体No.19、No.20)(比較例
3〜4)を製造した。製造例1と同様にして各重合体の
組成と還元粘度を測定し、結果を表2にあわせて示す。
【0050】
【表2】
【0051】(実施例17〜24)(比較例5〜6)
(製紙用添加剤の製造例3) 表3に示す単量体を仕込み(モル%)、製造例1と同様
にしてアミジン構造を含有する両性高分子およびカチオ
ン性高分子(重合体No.29、No.30)(比較例
5〜6)を製造した。製造例1と同様にして各重合体の
組成と還元粘度を測定し、結果を表3にあわせて示す。
【0052】
【表3】
【0053】(実施例25〜32)本発明の両性高分子
(重合体No.1〜No.8)を用いて下記の条件で
(1)濾水性試験、(2)搾水性試験、(3)紙力およ
びサイズ度の試験を行い、結果を表4に示す。 (1)濾水性試験 ライナー表層紙料(pH5.5、パルプ濃度3.25
%、NO.5C濾紙により測定)を清水により0.3%
に希釈する。このスラリー1リットルをメスシリンダー
に採り、強化ロジンサイズ剤、0.3%(対パルプ重量
%、以下同様)、アニオン性紙力増強剤0.2%、液体
硫酸バンドを(アルミナ純分8%)有姿(以下同様)で
1.5%、濾水性向上剤として本発明の両性高分子を添
加後、転倒攪拌3回を行いタッピスタンダードフリーネ
ステスターを用いて濾水量を測定する。 (2)搾水性試験 紙料を清水により1.0%に希釈し、400ml採り、
300rpm攪拌下、強化ロジンサイズ剤0.3%、ア
ニオン性紙力増強剤0.2%、液体硫酸バンド1.5
%、濾水性向上剤として本発明の両性高分子0.03%
(又は0.06%)の各々を15秒間隔で添加混合した
後、タッピスタンダードシートマシーンにて坪量200
g/m2 の紙を抄紙する。その後ウェットシートを2枚
の毛布で挟みテスト用カレンダー(熊谷理機製)に通し
た後の含水率を求める。 (3)紙力およびサイズ度の試験 紙料の0.33%スラリーを調製し、300mlを採取
し300rpmで攪拌しつつ、強化ロジンサイズ剤、
0.3%、アニオン製紙力増強剤0.2%、液体硫酸バ
ンド1.5%を各々15秒の間隔で添加し、最後に本発
明の両性高分子を0.03%(又は0.06%)添加、
10秒間攪拌した後、坪量70g/m2 の紙を抄紙し破
裂強度(JIS8131)およびサイズ度(JIS81
22)を測定した。
【0054】(比較例7〜12)実施例25〜32と同
様にして、カチオン性高分子の重合体NO.9(比較例
7)およびNO.10(比較例8)、市販ポリエチレン
イミン系濾水性向上剤(重合体NO.11)(商品名:
ポリミンSK)(比較例9)、メタクロイルオキシエチ
ルトリメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド
(50モル%、50モル%)共重合体[重合体濃度0.
5%、4%食塩水中粘度20cp(25℃)](重合体
NO.12)(比較例10)、ジメチルジアリルアンモ
ニウムクロライド−アクリルアミド(50モル%、50
モル%)共重合体[重合体10%濃度時、4%食塩水中
粘度55,000cp(25℃)](重合体No.1
3)(比較例11)の各々の重合体について試験を行っ
た。比較例12は無添加で試験を行った。これらの結果
を表4にまとめて示す。
【0055】
【表4】
【0056】(実施例33〜40)実施例25〜32と
同様な操作を行い、ライナー中層用紙料(pH6.5、
パルプ濃度3.5%、NO.5Cの濾紙により測定)に
つき、本発明の両性重合体(重合体No.1〜No.
8)を濾水性向上剤として0.03%(又は0.06
%)添加した場合(その他の薬品は無添加)の濾水量、
搾水性、破裂強度を測定した。結果を表5にまとめて示
す。
【0057】(比較例13〜18)実施例33〜40と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.9
(比較例13)およびNO.10(比較例14)、市販
ポリエチレンイミン系濾水性向上剤(重合体NO.1
1)(商品名:ポリミンSK)(比較例15)、メタク
ロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
−アクリルアミド(50モル%、50モル%)共重合体
[重合体濃度0.5%、4%食塩水中粘度20cp(2
5℃)](重合体NO.12)(比較例16)、ジメチ
ルジアリルアンモニウムクロライド−アクリルアミド
(50モル%、50モル%)共重合体[重合体10%濃
度時、4%食塩水中粘度55,000cp(25℃)]
(重合体No.13)(比較例17)の各々の重合体に
ついて試験を行った。比較例18は無添加で試験を行っ
た。これらの結果を表5にまとめて示す。
【0058】
【表5】
【0059】(実施例41〜48)本発明の両性高分子
(重合体NO.1〜NO.8)を用いて下記の条件で酸
性抄紙用ロジンサイズ剤の定着試験を行った。CSF:
400mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)の0.
5%スラリーに攪拌しつつ、タルク20%、酸性抄紙用
ロジンサイズ剤0.2%、アニオ性紙力増強剤0.3
%、液体硫酸バンド3%、本発明の両性高分子0.03
%、(または0.06%)の順に15秒間隔で添加す
る。このときの分散液のpHは6.0であった。最後に
高分子量ポリアクリルアミド系歩留向上剤を0.01%
添加、10秒間攪拌後、配向性抄紙機(熊谷理器製)に
より、ドラム回転スピード800m/min、トラバー
ス回数20回の条件で坪量70g/m2 の紙を抄紙し
た。その後3.5kg/cm2 、5分間でプレスし、1
00℃、2分で乾燥した。20℃、65%RHの条件で
24時間調湿後、ステキヒトサイズ度(JIS812
2)を測定した。これらの結果をまとめて表6に示す。
【0060】(比較例19〜23)実施例41〜48と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.9
(比較例19)およびNO.10(比較例20)、ジメ
チルジアリルアンモニウムクロライド(30モル%)・
アクリルアミド(70モル%)共重合体[10%の濃度
時粘度12000cp(25℃)](重合体NO.1
4)(比較例21)、アクリロイルオキシエチルトリメ
チルアンモニウムクロライド(50モル%)・アクリル
アミド(50モル%)共重合体[10濃度時粘度570
00cp(25℃)(重合体NO.15)](比較例2
2)の各々の重合体についても試験した。比較例23は
無添加で試験を行った。これらの結果を表6にまとめて
示す。
【0061】
【表6】
【0062】(実施例49〜56)本発明の両性高分子
(重合体NO.1〜8)を用いて中性ロジンサイズ剤の
定着試験を行った。カナディアンスタンダードフリーネ
ス(CSF)400mlの広葉樹クラフトパルプ(LB
KP)の0.5%スラリーに軽質炭酸カルシウム10
%、カチオン変性デンプン0.8%、液体硫酸バンド2
%、市販中性抄紙用ロジンサイズ剤0.5%、定着剤と
して本発明の両性高分子を0.03%(または0.06
%、0.1%)の順に15秒の間隔で添加する。最後に
高分子量ポリアクリルアミド系歩留向上剤を0.01%
添加、10秒間攪拌後、実施例41〜48と同様に抄
紙、プレス、乾燥、調湿、サイズ度測定を行った。これ
らの結果を表7にまとめて示す。
【0063】(比較例24〜27)実施例49〜56と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.9
(比較例24)およびNO.10(比較例25)、アク
リロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライ
ド(50モル%)−アクリルアミド(50モル%)共重
合体[10%濃度時粘度57000cp、(25℃)]
(比較重合体NO.15)(比較例26)の各々につい
て試験した。比較例27は定着剤無添加で行った。これ
らの結果を表7にまとめて示す。
【0064】
【表7】
【0065】(実施例57〜64)CSF(カナデイア
ンスタンダードフリーネス)=400mlに叩解した広
葉樹クラフトパルプを濃度0.6%の分散液とし、これ
を625ml採取し、液体硫酸バンド1%添加した後、
30秒間攪拌する。この時の分散液のpHは5.8であ
った。これに本発明の両性高分子(重合体No.11〜
No.18)を0.2%および0.4%添加して30秒
間攪拌後、TAPPI角型シートマシンで坪量60g/
2 の紙を抄紙し、ドラムドライヤーで3分間乾燥し
た。その後20℃、RH65%の恒温恒室にて24時間
調湿し、JISP8112にて破裂強度を測定し、比破
裂度を算出した。結果を表8にまとめて示す。
【0066】(比較例28〜31)実施例57〜64と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.19
(比較例28)およびNO.20(比較例29)、両性
紙力増強剤として、ジメチルアミノエチルアクリレート
(15モル%)−アクリル酸(5モル%)−アクリルア
ミド(80モル%)の組成からなる高分子(重合体N
O.16)(比較例30)について試験した。比較例3
1は無添加で試験を行った。これらの結果を表8にまと
めて示す。
【0067】
【表8】
【0068】(実施例65〜72)広葉樹クラフトパル
プ(LBKP)、カナデイアンスタンダードフリーネス
(SCF):400mlの0.3%スラリーに攪拌しな
がら、タルク20%、アニオン性紙力増強剤0.2%、
エマルジョン型ロジンサイズ剤0.2%、液体酸バンド
3%を15秒の間隔で添加し、最後に本発明の両性高分
子(重合体No.21〜No.28)を填料歩留向上剤
として0.01%(又は0.02%、0.03%)添加
し、10秒攪拌後、ダイナミック歩留試験機を用いて6
0メッシュブロンズ製ワイヤーにより濾過し、初期濾水
100ml採取して、総歩留率およびタルク歩留率を測
定した。結果を表9にまとめて示す。
【0069】(比較例32〜37)実施例65〜72と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.29
(比較例32)およびNO.30(比較例33)、アク
リロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライ
ド−アクリルアミド(30モル%、70モル%)共重合
体[重合体濃度0.5%時、4%食塩水中粘度23cp
(25℃)](重合体NO.17)(比較例34)、メ
タクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロラ
イド−アクリルアミド(20モル%、80モル%)共重
合体[重合体濃度0.5%時、4%食塩水中粘度31c
p(25℃)](重合体NO.18)(比較例35)、
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド(30モル
%、70モル%)共重合体[重合体濃度0.5%時、4
%食塩水中粘度20cp(25℃)](重合体NO.1
9)(比較例36)について試験した。比較例37は無
添加で試験を行った。これらの結果を表9にまとめて示
す。
【0070】
【表9】
【0071】(実施例73〜80)雑誌故紙40%、L
BKP60%の割合で混合しCSF:250mlに叩解
した後、0.3%スラリーに調製した。このスラリー1
リットルを採取し攪拌しながらタルク、10%、強化ロ
ジンサイズ剤0.2%、アニオン性紙力増強剤0.1
%、液体硫酸バンド3%の各々を15秒の間隔で添加し
た後、本発明の両性重合体(重合体No.21〜No.
28)を填料歩留向上剤として対パルプ0.01%(又
は0.02%、0.03%)添加し10秒攪拌した後、
ダイナミック歩留試験機により60メッシュブロンズ製
ワイヤーで濾過し、初期濾水100mlを採取すること
により総歩留率およびタルク保留率を測定した。結果を
まとめて表10に示す。
【0072】(比較例38〜43)実施例73〜80と
同様にして、カチオン性高分子である重合体NO.29
(比較例38)およびNO.30(比較例39)、アク
リロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライ
ド−アクリルアミド(20モル%、80モル%)共重合
体[重合体濃度0.5%時、4%食塩水中粘度18cp
(25℃)](重合体NO.20)(比較例40)、メ
タクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロラ
イド−アクリルアミド(30モル%、70モル%)共重
合体[重合体濃度0.5%時、4%食塩水中粘度25c
p(25℃)](重合体NO.21)(比較例41)、
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−アクリルア
ミド(50モル%、50モル%)共重合体[重合体濃度
10%時、4%食塩水中粘度13400cp(25
℃)](重合体NO.22)(比較例42)について試
験した。比較例43は無添加で試験を行った。これらの
結果を表10にまとめて示す。
【0073】
【表10】
【0074】
【発明の効果】本発明のアミジン構造を有する特定の両
性高分子からなる製紙用添加剤を製紙工程中の原料スラ
リー中に添加することにより、抄紙系の多様な条件変化
に対応して、濾水性、サイズ効果、紙力増強、填料歩留
率などに優れた効果を得ることができるので、本発明の
製紙用添加剤は濾水性向上剤、サイズ剤の定着剤、紙力
増強剤、填料歩留向上剤などとして使用することがで
き、産業上の利用価値が高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 8/00 - 8/50

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)および/または(2)で表さ
    れる繰り返し単位を20〜90モル%、下記(3)で表
    される繰り返し単位を0〜40モル%、下記(4)で表
    される繰り返し単位を0〜70モル%、下記(5)で表
    される繰り返し単位を0〜70モル%、下記(6)で表
    される繰り返し単位を5〜20%含有し、1規定の食塩
    水中0.1g/dlの溶液として25℃で測定した還元
    粘度の値が0.1〜10dl/gである水溶性高分子か
    らなる製紙用添加剤であって、製紙原料スラリー中に添
    加して使用することを特徴とする製紙用添加剤。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 【化6】 (式中R1 ,R2 は水素またはメチル基、R3 は炭素数
    1から4のアルキル基、R4 は水素原子、メチル基また
    はカルボキシメチル基、X- は陰イオン、YはCOO
    M,C64 SO3 M,CH2 SO3 M,CONHC
    (CH32 CH2 SO3 M、Mは陽イオンをそれぞれ
    表す。)
  2. 【請求項2】 繰り返し単(1)及び/または(2)が
    40〜80モル%であることを特徴とする請求項1に記
    載の製紙用添加剤。
  3. 【請求項3】 N−ビニルホルムアミド、アクリロニト
    リルおよびアクリル酸からなる共重合体の酸加水分解物
    からなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に
    記載の製紙用添加剤。
  4. 【請求項4】 濾水性向上剤として使用することを特徴
    とする請求項1から請求3に記載の製紙用添加剤。
  5. 【請求項5】 サイズ剤の定着剤として使用することを
    特徴とする請求項1から請求項3に記載の製紙用添加
    剤。
  6. 【請求項6】 紙力増強剤として使用することを特徴と
    する請求項1から請求項3に記載の製紙用添加剤。
  7. 【請求項7】 填料歩留向上剤として使用することを特
    徴とする請求項1から請求項3に記載の製紙用添加剤。
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