JP3471879B2 - セリンキナーゼ活性の抑制方法、pi3−キナーゼのサブユニット間の結合活性の調整方法、pi3−キナーゼのサブユニット結合抗体、この抗体を生成するハイブリドーマ細胞系、核酸分子、プラスミド、アゴニスト、アンタゴニスト、pi3−キナーゼ活性を抑制するサブユニット結合分子、サブユニットの存在検出方法、pi3−キナーゼ活性の抑制剤製造方法、およびpi3−キナーゼ活性の抑制剤 - Google Patents

セリンキナーゼ活性の抑制方法、pi3−キナーゼのサブユニット間の結合活性の調整方法、pi3−キナーゼのサブユニット結合抗体、この抗体を生成するハイブリドーマ細胞系、核酸分子、プラスミド、アゴニスト、アンタゴニスト、pi3−キナーゼ活性を抑制するサブユニット結合分子、サブユニットの存在検出方法、pi3−キナーゼ活性の抑制剤製造方法、およびpi3−キナーゼ活性の抑制剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はセリンキナーゼ活性の抑
制方法、ホスファチジル−イノシトール3−キナーゼ
(以下、PI3−キナーゼと称する)のサブユニット間
の結合活性の調整方法、PI3−キナーゼのサブユニッ
ト結合抗体、この抗体を生成するハイブリドーマ細胞
系、核酸分子、プラスミド、アゴニスト、アンタゴニス
ト、PI3−キナーゼ活性を抑制するサブユニット結合
分子、サブユニットの存在検出方法、PI3−キナーゼ
活性の抑制剤製造方法、およびPI3−キナーゼ活性の
抑制剤に関し、詳しくは、PI3−キナーゼのp110
およびp85サブユニット間の結合活性を抑制する方法
に関する。この発明は、PI3−キナーゼ活性を調整す
る方法を提供するものであり、外部刺激に対する細胞の
反応を調節するものである。より具体的には、p85サ
ブユニットのSH2間ドメインに位置する残留基を従来
手段によって無効化することによって、前記サブユニッ
ト間の結合活性に干渉し、その結果、PI3−キナーゼ
活性を調整する。
【0002】本発明は、更に、PI3−キナーゼのセリ
ンキナーゼ活性配列に関し、PI3−キナーゼのセリン
キナーゼ活性を調整する方法に関し、これは前記p11
0サブユニットのDRHNSN配列を無効化することに
よって達成される。この方法は、PI3−キナーゼ活性
全体に影響を与えるのに使用できる。
【0003】更に、本発明は、前記p85サブユニット
の、608位置のセリン残留基における燐酸化を刺激す
るアゴニストを提供し、ここで、前記セリン残留基に於
ける燐酸化の結果、PI3−キナーゼの活性が抑制され
る。
【0004】本発明は、更に、PI3−キナーゼの活性
に対するアゴニスト(作動体)及びアンタゴニスト(拮
坑体)にも関する。
【0005】
【従来の技術】最近、信号変換分子と細胞表面レセプタ
に結合した二次メッセンジャ系の構造及び作用に関する
我々の知識に大きな進歩があった。ポリペプチド成長因
子レセプタのサブセットは、プロテインチロシンキナー
ゼ族に属し、リガンド結合後におけるこれらレセプタの
活性は、レセプタの自己燐酸化と、数多くの細胞間基質
プロテインの燐酸化とを伴う(Ullrich,A e
t al.1990参照)。これまでレセプタの自己燐
酸化の重要性は不明であったが、最近のいくつかの研究
所から提供された証拠によれば、これはレセプタプロテ
インと、推定成長調節プロテインとの間の複合物質、例
えば、ホスホリパーゼ Cγ(PLCγ)(Meise
nhelder et al. 1989)、ホスファ
チジルイノシトールPI3−キナーゼ(Coughli
n,S.R. et al.1989)GTPase−
活性化プロテイン(GAP)(Kaplan et a
l.1990)、セリン/トレオニンキナーゼ Raf
(Morrison etal.1989)、及び、プ
ロテインチロシンキナーゼのsrc族の構成要素(Ky
pta, RM et al. 1990)(Cant
ley,Lc etal. 1991参照)等の形成を
媒介している可能性があることが示唆されている。
【0006】PIの回収率が高いために、PIキナーゼ
活性と活性化レセプタとの関係が注目されており、その
燐酸化誘導体が、ホルモンや成長因子の作用や、DNA
及びRNAウィルスによる細胞の形質転換に暗示(im
plicated)されてきた(Whitman,M
et al.1988; Cantley et a
l. 1991参照)。
【0007】PIキナーゼは、複数種のものが存在する
ことが知られている。繊維芽細胞は少なくとも二つのP
Iキナーゼ活性を有し、これらはその界面活性剤に対す
る感度と運動特性とによって区別される(Whitma
n,M et al.1987)。即ち、タイプI(非
イオン界面活性剤によって抑制される)とタイプII
(非イオン界面活性剤によって刺激され、アデノシンに
よって抑制される)である。最近、ウシ属の脳内におい
て第三の別のタイプ(タイプIII)が発見されている
が、その性質についてはまだよく判っていない(End
erman,Get al. 1987)。プロテイン
チロシンキナーゼに会合する二次メッセンジャ系の探求
において、一つのタイプのPIキナーゼ活性が特に注目
されている。というのは、この活性が活性化した、血小
板から誘導された成長因子(PDGF)レセプタ(Ka
plan,D R et al.,1987; Cou
ghlin, SR et al.,1989)および
ポリオマミドルT抗原/pp60c-src複合体(Whi
tman,M et al.1985)と免疫沈降する
ことが証明されたからである。この活性は、イノシトー
ルリングのD−3位置において燐酸化される新規なイノ
シトール脂質を生成するタイプIのPIキナーゼによる
ものであることが証明された(Whitman, M.
et al.,1988)。より最近では、この酵素
が、更に、CSF−1レセプタ,kitや(Varti
covski, L. et al.,1989)、表
皮成長因子(EGF)レセプタ(Bjorge et
al.,1990)や、PDGFアルファ−レセプタ
(Yu et al.,1991)や、インスリンレセ
プタ(Ruderman et al.,1990)、
肝細胞成長因子レセプタ、met(Graziani
et al.,1991)や、更に、活性化非−レセプ
タプロテイン−チロシンキナーゼ(Fukui及びHa
nafusa,1989; Chan et al.,
1990; Varticovski etal.,1
991)とも会合することが判った。
【0008】PI3−キナーゼ活性は、生体外及び生体
内の両方で、会合したプロテイン−チロシンキナーゼに
よってチロシン残留基上で燐酸化可能な免疫沈降物内に
おける85kDプロテインの存在と密接に関連づけられ
てきた(Kaplan,DRet al.,1987;
Courtneidge SA et al.,19
87; Cohen et al.,1990)。最
近、ウシの脳からのPI3−キナーゼの650倍精製が
記載され、それは最高純粋調整物に存在する他のタンパ
ク質のうちでも、PDGF及びEGFレセプタの生体外
基質であることが証明された85kDのタンパク質を含
有していた(モーガン・エス・ジェィ他1990(Mo
rgan,S J et al.1990))。このタ
ンパク質由来のトリプシンペプチドからの配列情報を使
用して、p85α及びP85βと命名された2つの相同
のウシp85タンパク質(Otsu.M et al.
1991)が最近クローン化されている。他の2つのグ
ループが別々に、異なる方法を用いてネズミ及びヒトp
85α同族体をクローン化している(Escobed
o,JA et al.,1991b; Skolni
ck,E Y etal.,1991)。これら両方の
p85タンパク質は、生体外で燐酸化PDGFレセプタ
と直接結合することが証明し得る(Otsu. M e
t al.1991; Escobedo J A e
t al.,1991b)。これらのタンパク質は、種
々の細胞系で発現する際にPI3−キナーゼ活性のレセ
プタ結合サブユニットとして作用すると考えられてい
る。しかし、p85タンパク質に対して生成された抗体
を使用した、125I標識されたウシ脳PI3−キナーゼ
の免疫沈降は、85kDのタンパク質と共に分子量が1
10kDの第2のタンパク質を沈降させる(Otsu
M. et al.1991)。
【0009】PI3−キナーゼは、リガンド刺激、また
は細胞の形質転換の結果として活性化されるプロテイン
チロシンキナーゼと会合する、数が増大しつつある潜在
的シグナリングタンパク質の一つである。PI3−キナ
ーゼは、又、様々な種類のレセプタと直接的又は間接的
に関連する細胞間信号処理において重要な働きをしてい
る可能性があり、更に、いくつかの細胞内においては、
有糸分裂の原因となる現象における重要な規定能である
可能性もある(Fantl et al.,1992;
Valius and Kazluuskas,19
93)。PI3−キナーゼは、PIのイノシトールリン
グのD3位置及びその燐酸化誘導体を燐酸化し、PI
(3)P,PI(3,4)P2,及びPI(3,4,
5)P3を生成する。鎮静状態の細胞が、血小板由来の
成長因子(PDGF)や表面性(EGF)等のペプチド
成長因子によって刺激された時において、PI(3,
4)P2,及びPI(3,4,5)P3のレベルの急激
な上昇が観察された。
【0010】上述の理由及びPI3−キナーゼの潜在的
利用価値のために、PI3−キナーゼの主構造、即ち、
そのPI3−キナーゼ活性、p85とp110サブユニ
ット間におけるサブユニット間相互作用、及びp110
サブユニットに内在すことが判っている新規なセリンキ
ナーゼ活性を調べるために実験を行った。p85及びp
110サブユニットの結合ドメインと、p110サブユ
ニットの新規なプロテインセリンキナーゼ発生の発見
は、PI3−キナーゼ活性の調節の研究において大きな
可能性を有するものである。
【0011】PI3−キナーゼの主構造の確定は、その
信号変換プロセスにおける機能を理解する基本であっ
た。脳又は肝臓由来の精製ウシPI3−キナーゼは、8
5及び110kDaの異種二量体(heterodim
er)である(Carpenter et al.,1
990; Fry et al.,1992; Mor
gan et al.1990; Shibasaki
et al.,1991)。cDNAクローン化によ
って、触媒活性を持たない、それぞれp85α及びp8
5βと命名された二つの形状のp85が記載されている
(Otsu etal.,1991)。p85の一次配
列の分析は、src族のタンパク質の形質転換の研究の
最初に記載されている、多数の非触媒ドメインを有する
マルチドメイン構造を備えたタンパク質を示している。
そのN末端には、Src相同領域3ドメイン(SH3)
が存在し(Pawson and Schlessin
ger,1993参照)、その隣には、ブレークポイン
トクラスタ領域遺伝子BCRの生成物に非常に類似した
配列を備えた領域が存在している(Otsu eta
l.1991)。BCRタンパク質にはラスに対するG
AP活性を有しているので、p85のこの領域は、小さ
なGTP結合タンパク質と相互作用する可能性がある
(Fry1992参照)。前記分子のC末端側半分は、
二つのSH2ドメインによって支配され(Pawson
and Gish,1992参照)、これらのドメイ
ンの間にはらせん状配座を有することが予測された領域
が存在する(Panayotou et al.199
2)。これらの互いに異なった作用ドメインが存在する
ことは、p85タンパク質が多重の相互作用的及び調節
的機能を有していることを示唆している。p85のモジ
ュラ構造によって、このタンパク質の構造の研究と作用
の研究との両方が容易になり、これによって、そのPI
3−キナーゼ複合体における機能に関する我々の理解が
急速に進んだ。
【0012】最近までp110タンパク質に関しては、
ほとんどなにも知られていなかった。今日までただ一つ
の形状のp110タンパク質しかクローン化されておら
ず、その発現研究によれば、これのみでタンパク質にP
I3−キナーゼ活性をエンコードすることが可能である
ことが明らかである。この働きはHiles eta
l.1992に記載されており、この文献の内容全体を
参考資料とする。クローン化されたp110は、空胞化
タンパク質分類に関係するイーストPI3−キナーゼ、
Vps34pと相同である(Herman and E
mr,1990; Schu et al.,199
3)。p110の配列分析によれば、Vps34pとの
余剰キナーゼのモチーフ及び配列比較が明らかとなり、
更に最近になってクローン化されたTor2、即ち、G
I進行に必要であるもう一つの推測イーストPI3−キ
ナーゼ相同体によって、触媒ドメインを、タンパク質の
C末端領域に指定することが可能となった(Hiles
et al.,1992)。p110のN末端領域の
配列分析によれば、如何なる周知のタンパク質に対して
も大きな相同性が認められず、この領域は調節的機能を
果たしている可能性がある。
【0013】PI3−キナーゼは、例えば、PI3−キ
ナーゼの最終的に基質へのアクセスを備えた細胞膜への
トランスロケーションや、それに続く、タンパク質チロ
シンキナーゼ(PTKs)との会合及びそれによる燐酸
化等の一連の事象によって調節されている可能性がある
(Panayoto and Waterield,1
992)。PI3−キナーゼがそのSH2ドメインを介
してPTKsのホスホチロシン含有配列と結合すること
によって、独立的に、ある程度の酵素の活性を生じさせ
ることができる。インシュリンレセプタ基質上の潜在的
PI3−キナーゼ位置に対応するチロシン燐酸化ペプチ
ド、IRS−1あるいは、非損傷IRS−1タンパク質
が生体内においてPI3−キナーゼを活性化することが
証明された(Backer et al.,1992;
Giorgetti et al.,1993)。同
様に、公知の生体内結合位置である前記PDGFBレセ
プタのY751に対応するホスホチロシン−含有ペプチド
の追加は、更に、生体外のPI3−キナーゼ活性をも生
じさせる(Carpenter et al. 199
3)。更に、このY751−ホスホペプチドの結合の直後
において、PI3−キナーゼのp85サブユニットと、
特にそのN末端SH2ドメインが配座変化を受けること
が示された(Panayotou et al.,19
92)。p85タンパク質におけるこの誘発された配座
変化は、会合p110サブユニットに伝達され、従って
その活性化に貢献する可能性がある。
【0014】p85はそのSH2ドメインを介してレセ
プタと結合するので、酵素を基質へのアクセスを備えた
膜に位置移動させたり、あるいは、p110サブユニッ
トに固有のPI3−キナーゼ活動の活性化をもたらす前
記サブユニット間の相互作用によって、会合触媒サブユ
ニットに固有の酵素活性を調節することが可能である。
PTKsへの結合によってp85タンパク質に誘発さ
れ、次に会合触媒ドメインに伝達されてその活性化を生
じさせる変化を提供するもう一つ別のメカニズムが存在
する。このような変化は、PI3−キナーゼのp85サ
ブユニット、特に、そのN末端SH2ドメインが、新規
なPI3−キナーゼの結合位置である、PDGF B−
レセプタのY751に対応するホスホチロシン含有ペプチ
ドに結合する時に検出された(Panayotou e
t al.,1992)。
【0015】更に、p85又はp110サブユニット、
例えばチロシン、セリンまたはトレオニン残基における
燐酸化によってキナーゼ活性を調節できることが発見さ
れた。酵素をホスホチロシルプロテインホスファターゼ
によって処理した後においてPI3−キナーゼ活性が減
少するという報告は、活性化PTKによってPI3−キ
ナーゼをチロシン燐酸化することによってPI3−キナ
ーゼ活性を増加させることが可能であるという考えに一
致している(Ruiz−Larrea etal.,1
993)。
【0016】PI3−キナーゼ複合体の成分のセリン及
びトレオニン燐酸化は、酵素を調節する機能をも有して
いる可能性がある。というのは、鎮静状態の細胞から免
疫沈降されたPI3−キナーゼのp85αサブユニット
が、セリン及びトレオニン残基において燐酸化されるこ
とが複数の研究によって示されたからである(Kapl
an et al.,1987;Roche et a
l.,1993)。PI3−キナーゼの精製されたウシ
脳調剤が、会合タンパク質セリンキナーゼと共同精製
(copurify)することが示され、更に、Car
penter et al.1993の最近の報告は、
PIKキナーゼと称される類似の活性が、ラットの肝臓
PI3−キナーゼと共同精製し、それを調節する可能性
があることを示した。
【0017】会合タンパク質−セリンキナーゼの性質お
よびPI3−キナーゼの調節におけるその推定される役
割を明らかにするために、いくつかの実験が行われた。
具体的には、単体又は複合体としての、野生型及び突然
変異体の組換え型PI3−キナーゼのサブユニットは、
p85タンパク質に対する変異性を備えた、PI3−キ
ナーゼの内在的ホスホイノシタイド(phosphoi
nositide)キナーゼ活性とタンパク質−セリン
キナーゼ活性の両方を有していることを示す。更に、燐
酸化の高い化学量論数によって、p85タンパク質にお
いて一つのセリン燐酸化位置が設定される。PI3−キ
ナーゼと会合したタンパク質セリンキナーゼ活性の操作
によって、PI3−キナーゼ活性を抑制する方法をここ
に提供する。会合タンパク質セリンキナーゼ活性の作用
物質及びアンタゴニストも提供される。PI3−キナー
ゼ活性を調節する手段を提供する、調節性p85サブユ
ニットとp110触媒ドメインとの間の相互作用を操作
する方法が開発された。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主要課題の一
つは、p85サブユニットとp110サブユニットとの
間の相互作用を操作してPI3−キナーゼ活性を調節す
る方法を提供することにある。具体的には、p85及び
p110サブユニット間の会合または結合を阻止するこ
とが、下流側の信号形質導入経路を調節する手段とな
る。その結合位置を明らかにすることは、この相互作用
のインヒビタ、即ち、アンタゴニストの分析にも役立
つ。本発明は、p85及びp110サブユニット間の相
互作用を妨げるアンタゴニストをも提供する。これらの
アンタゴニストは、通常、p110サブユニットとの結
合を阻止するp85サブユニットの臨界領域と結合、相
互反応または会合する。これらのアンタゴニストを使用
することにより、p85及びp110サブユニット間の
相互作用が阻止され、更に、触媒活性が減少する。更
に、これらのアンタゴニストは、拮坑的結合分析による
PI3−キナーゼのサブユニットの存在検出にも利用可
能である。
【0019】本発明のもう一つの課題は、核酸分子を含
有する発現ベクターを提供する。前記アンタゴニストの
ためのそのコードが、ここに開示される。本発明の更に
別の課題は、上記発現ベクターとトランスフェクション
されるホスト細胞を提供することである。
【0020】本発明は、更に、p110サブユニットが
その基質、即ちp85サブユニットと高い親和力で結合
する場合にのみ検出可能な新規な内在性タンパク質−セ
リンキナーゼ活性を操作することによって、PI3−キ
ナーゼ活性を抑制する方法をも提供する。不十分なPI
3−キナーゼ活性によって特徴付けられる病状に苦しむ
患者を治療する薬剤は、PI3−キナーゼ活性を増加さ
せるためにアゴニストを含有する薬用構成物を含む。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するた
め、本発明にかかるセリンキナーゼ活性の抑制方法の特
徴構成は、PI3−キナーゼ酵素のセリンキナーゼ能力
を抑制する方法であって、PI3−キナーゼのDRHN
SN配列を無効化する工程を有する点にある。
【0022】前記配列が標的変異によって、もしくはセ
リンキナーゼ作用を抑制する分子との相互作用によって
無効化されるものであることが好ましい。
【0023】前記分子が、前記PI3−キナーゼ酵素の
主要サブユニットの前記DRHNSN配列に特定的に結
合する抗体、もしくは前記DRHNSN配列に特定的に
結合するモノクローナル抗体であると都合がよい。
【0024】本発明にかかるPI3−キナーゼのサブユ
ニット間の結合活性の調整方法の特徴構成は、PI3−
キナーゼのp85サブユニットとp110サブユニット
との間の結合を抑制する方法であって、前記PI3−キ
ナーゼのp85サブユニットのSH2間領域を無効化す
る工程を有する点にある。
【0025】前記PI3−キナーゼのp85βサブユニ
ットのアミノ酸残基445〜アミノ酸残基485を有す
る領域を無効化する工程を有するか、もしくは前記PI
3−キナーゼのp85αサブユニットのアミノ酸残基4
78〜アミノ酸残基513を有する領域を無効化する工
程を有することが好ましい。
【0026】本発明にかかるアンタゴニストの特徴構成
は、PI3キナーゼのp85サブユニットに結合するリ
ガンドのための分離アンタゴニストであって、このアン
タゴニストが、前記p85サブユニットに結合すること
によってセリンである位置608に於ける燐酸化が阻止
され、これによってPI3−キナーゼ活性が減少すると
共に、前記アンタゴニストが無効化されたDRHNSN
配列に対応するアミノ酸配列を有する点にある。
【0027】本発明にかかるPI3−キナーゼのサブユ
ニット結合抗体の特徴構成は、p85サブユニットのS
H2間領域に位置するエピトープにおいてPI3−キナ
ーゼの前記p85サブユニットに特定的に結合する分離
抗体であって、この抗体は、前記PI3−キナーゼの前
記p85サブユニットとp110サブユニットとの間の
結合に干渉する点にある。
【0028】前記抗体は、少なくとも前記PI3−キナ
ーゼの前記p85βサブユニットのアミノ酸残基445
〜アミノ酸残基485を有するエピトープに特定的に結
合すること、もしくは少なくとも前記PI3−キナーゼ
の前記p85αサブユニットのアミノ酸残基478〜ア
ミノ酸残基513を有するエピトープに特定的に結合す
るが好ましい。
【0029】更に、前記抗体がモノクローナル抗体であ
ると都合がよい。
【0030】本発明にかかるハイブリドーマ細胞系の特
徴構成は、請求項10の抗体を生成ものである点ある。
【0031】本発明の核酸分子の特徴構成は、PI3−
キナーゼのp85サブユニットのSH2間領域へ遺伝暗
号を指定する核酸分子に対合し、その発現を抑制する分
離核酸分子である点にある。
【0032】前記分離核酸分子が、前記PI3−キナー
ゼのp85βサブユニットのアミノ酸残基445〜アミ
ノ酸残基485を有する領域に遺伝暗号を指定するこ
と、もしくは前記PI3−キナーゼのp85αサブユニ
ットのアミノ酸残基478〜アミノ酸残基513を有す
る領域に遺伝暗号を指定することが好ましい。
【0033】更に、本発明にかかるPI3−キナーゼの
サブユニット間の結合活性の調整方法は、PI3−キナ
ーゼのp85サブユニット及びp110サブユニット間
の結合を抑制する方法であって、p85を含有するサン
プルを請求項10の抗体に接触させる工程を有する点に
ある。
【0034】更に、本発明にかかるセリンキナーゼ活性
の抑制方法の特徴構成は、PI3−キナーゼ酵素のセリ
ンキナーゼ活性を抑制する方法であって、前記PI3−
キナーゼのp85サブユニットの位置608においてセ
リン残基を無効化、又はこれに干渉する工程を有する点
にある。
【0035】前記セリンキナーゼ活性の抑制方法は、前
記セリン残基が標的変異によって無効化されると都合が
よい。
【0036】本発明にかかるアゴニストの特徴構成は、
PI3キナーゼのp85サブユニットに結合するリガン
ドのための分離アゴニストであって、前記アゴニストが
前記p85サブユニットに結合することによってセリン
であるアミノ酸残基位置608に於ける燐酸化が刺激さ
れ、これによって前記PI3−キナーゼのキリンキナー
ゼ活性が増加し、前記アゴニストが、少なくとも、前記
PI3−キナーゼ活性を示す前記PI3−キナーゼの前
記p110サブユニットの領域に対応するPI3−キナ
ーゼ触媒活性を備えたドメインを有する点にある。
【0037】本発明の核酸分子の特徴構成は、前記アゴ
ニストに遺伝暗号を指定する分離核酸分子である点にあ
る。
【0038】本発明のプラスミドの特徴構成は、前記核
酸分子を含有する点にある。
【0039】本発明の細胞系の特徴構成は、請求項22
の核酸分子にトランスフェクションした細胞系であっ
て、前記核酸分子によってエンコードされたタンパク質
を発現する点にある。
【0040】前記細胞系が、請求項23のプラスミドに
トランスフェクションした細胞系であって、前記核酸分
子によってエンコードされたタンパク質を発現するも
の、もしくは真核細胞系であってもよい。
【0041】本発明にかかるPI3−キナーゼ活性を抑
制するサブユニット結合分子の特徴構成は、PI3キナ
ーゼのp85サブユニットに結合する分子であって、こ
の分子が前記サブユニットに結合することによりセリン
である位置608における、事前の燐酸化が保護され、
これによってPI3−キナーゼ活性を抑制するものであ
る点にある。
【0042】前記分子が抗体であり、前記抗体がモノク
ローナル抗体であることが好ましい。そして、本発明の
ハイブリドーマ細胞系の特徴構成は、請求項29のモノ
クローナル抗体を生成する点にある。
【0043】本発明にかかるサブユニットの存在検出方
法の特徴構成は、サンプル中におけるp85サブユニッ
トの存在検出方法であって、以下の工程を有する点にあ
る。即ち、 a)請求項21のアゴニストを有する前記サンプルを、
前記分離アゴニストと特定的に結合可能な既知量の前記
p85サブユニットと接触させる工程、 b)前記アゴニストの前記既知量のp85サブユニット
との結合の競合的抑制を、前記サンプル中におけるp8
5サブユニットの存在を示すものとして検出する工程。
【0044】本発明にかかるPI3−キナーゼ活性の抑
制剤製造方法の特徴構成は、PI3−キナーゼ活性を抑
制するための薬剤を製造する方法であって、PI3−キ
ナーゼ酵素のDRHNSN配列に結合、又はこれに干渉
することが可能な物質を選択し、この物質を医療用に調
合する工程を有する点にある。
【0045】更に、本発明にかかるPI3−キナーゼ活
性の抑制剤の特徴構成は、不十分なPI3−キナーゼ活
性によって特徴付けられる病状を有する患者を治療する
薬剤であって、それを必要とする患者に、PI3−キナ
ーゼ活性を増加させる作用を有する請求項21に記載の
アゴニストを有する点にある。
【0046】
【作用】本発明は、前記PI3−キナーゼのp85サブ
ユニットとp110サブユニットとの結合を抑制する方
法に関する。この発明は、PI3−キナーゼ活性を調節
し、更に細胞の外部刺激に対する反応を調節する方法を
提供するものである。即ち、p85サブユニットのSH
2間ドメイン、詳しくは、PI3−キナーゼの、p85
αサブユニットのアミノ酸残基478からアミノ酸残基
543を含む領域に位置する残基と、p85βサブユニ
ットのアミノ酸残基445〜485残基を、従来手段に
よって無効化することによって、セリンキナーゼ活性を
減少させる。アンタゴニスト分子としてこれらの結合領
域に干渉することによって、更に、前記両サブユニット
間の結合に影響を与え、PI3−キナーゼ活性を抑制す
る。特に、前記臨界領域に結合する抗体は、前記両サブ
ユニット間の結合に干渉することが可能である。
【0047】サブユニット間結合領域及び会合PI3−
キナーゼ及びセリンキナーゼ活性に関する上述の発明に
基づき、前述の活性を抑制又は増強する作用を有する、
本発明のアンタゴニスト及びアゴニスト分子を生成、使
用して、PI3−キナーゼ活性の効果を模倣する(アゴ
ニスト)ことによって、あるいは両サブユニット間の相
互作用を阻止する(アンタゴニスト)ことによって、上
述したp85及びp110サブユニット間の相互作用を
研究することが可能である。アンタゴニスト分子は、前
述したように、一つのサブユニット、即ち、p85、と
の接触時に、サブユニットp110との相互作用を阻止
する特定結合領域を対象とする抗体として構成すること
が出来る。これらの抗体は、従来の方法によってハイブ
リドーマ細胞系を生成することによって作られるモノク
ローナル抗体とすることが可能である。
【0048】前記アンタゴニストは、又、セリンキナー
ゼ燐酸化に関与する特定の残基を阻止するp85サブユ
ニット用アンタゴニストとして構成することが可能であ
る。特に好ましいのは、上述したようにp85サブユニ
ットのセリン608残基に結合、またはこれを阻止する
アンタゴニストである。これらの分子のアンタゴニスト
作用は、これら分子が過剰な、又は好ましくないキナー
ゼ活性に特徴付けられる状況において利用可能であるこ
とを示唆するものである。
【0049】特定の結合領域のための遺伝暗号を指定す
る核酸分子に対合または、その発現を抑制する核酸分子
を生成することも可能であり、特に好ましいのは、SH
2間領域のための遺伝暗号を指定する核酸配列に対合す
る分子であり、最も好ましいのは、p85βのアミノ酸
残基445〜485及びp85αのアミノ酸残基478
〜513に対合する分子である。
【0050】前記アゴニスト分子は、更に、病態障害に
よって活性度が正常よりも低い場合、即ち、化学療法に
おいて有用である。アゴニストは、好ましくは、位置6
08のセリン残基に於けるp85サブユニットの燐酸化
を刺激し、該セリン残基に於ける燐酸化によってPI3
−キナーゼ活性が抑制される。前記アゴニストは、好ま
しくは、互いに異なったキナーゼ族間の配列の保存に基
づく領域由来のアミノ酸配列を含む。
【0051】アンタゴニスト又はアゴニスト分子及びそ
の配列の同定後、これらの特定配列を発現させる方法
は、これら配列、即ち、それらに組み込まれた分子を発
現するためのプラスミドトランスフェクション細胞を含
有するベクターを生成することによって行うことが出来
る。
【0052】従って、要約すると、以上の記載によっ
て、p85とp110サブユニット間の結合を抑制する
ことにより、PI3−キナーゼ活性を調節可能であるこ
とが立証されたのである。又、p110サブユニットの
DRHNSN配列を調節、または無効化することによっ
て、P110サブユニットのタンパク質セリンキナーゼ
活性に影響を与えることが可能である。セリンキナーゼ
活性の増大はPI3−キナーゼ活性を低下させる。リガ
ンド用のアゴニストは、p85サブユニットに結合する
ことによって、セリンキナーゼ活性を増加させ、p85
サブユニットの燐酸化を刺激する。このようなアゴニス
トは、恐らく、生体内におけるセリンキナーゼ活性量の
増加を提供するか、あるいは、p85サブユニットによ
り効率的に結合するものである。好ましくは、このアゴ
ニストは、p110サブユニットの前記触媒ドメインに
対応する配列の少なくとも一部を含有している。
【0053】特定の結合領域及び特定領域に存在する新
規なセリンキナーゼ活性の知見は、PI3−キナーゼ活
性を制御し、シグナル変換路を調節するための、治療/
診断補助手段及び分析手段の提供において大きな可能性
を与えるものである。更に、p85サブユニットのセリ
ン608残基を変化させる方法は、セリンキナーゼ活性
を抑制する手段を提供するものである。この変化は、公
知の方法、即ち、当業者にとって周知の、場所−指定、
標的変異、欠失、その他の方法によって行うことができ
る。
【0054】更に、両サブユニット間の結合、及び、p
110サブユニットのセリンキナーゼ活性を抑制する方
法と、サブユニットの構造の解明とによって、これらの
サブユニットに結合するリガンドのためのアゴニスト及
びアンタゴニストの同定が可能になる。本発明は、前記
アゴニスト及びアンタゴニスト、これらアゴニスト又は
アンタゴニストに遺伝暗号を指定する核酸分子、核酸分
子を含有する、前記バキュロウィルスベクター等の発現
ベクターをも提供するものである。更に、本発明は、前
記核酸分子を発現するための、発現ベクター又はプラス
ミドも含む。
【0055】更に、p85サブユニットのSH2間領域
を含むアンタゴニストのために遺伝暗号を指定する核酸
分子に対合するantisense核酸分子を、その発
現の抑制の為に利用することが出来る。このように、p
85とそのp110触媒ドメインとの結合が抑制される
のである。
【0056】本発明は、更に、前記ベクターとトランス
フェクション感染可能な細胞又は細胞系を提供するもの
であり、これらの細胞は、真核及びほ乳類細胞から由来
させることが可能である。例えば、アゴニスト分子とト
ランスフェクションしたSf9細胞内のバキュロウィル
ス発現系がその一例として挙げられる。
【0057】更に、本発明は前記両サブユニット間の結
合に干渉する分子又は抗体を提供する。
【0058】本発明は、又、許容可能なアジュバント、
希釈液、キャリアとともに、及び/又は単位投与量状態
での薬用として調合されたアンタゴニスト又はアゴニス
トとして実施可能である。適当な調合又は複合を行うた
めに、従来式の薬事慣行を利用することが出来る。
【0059】従って、本発明の調合剤は、静脈注射、皮
下注射、筋内注射、眼内注射、点眼(opthalmi
c)、心室内注射、頭がい内注射、きょう膜内注射、脊
髄内注射、脳槽内注射、腹膜内注射、局所注射、鼻こう
内注射、噴霧投与、乱切投与等の非経口的投与や、経口
投与、口内投与、直腸又はちつ内投与に適用可能であ
る。
【0060】本発明の調合剤は、更に、本発明の核酸分
子発現のホスト細胞の患者への移植による投与、又は、
本発明の調合剤を放出する外科的インプラントの使用に
よる投与に適用可能である。移植は、特定の腫瘍箇所に
行うことも可能である。
【0061】非経口投与用調合剤は、溶液又は懸濁液と
して形成することが出来、又、経口投与用には、錠剤又
はカプセルとして形成し、更に、鼻こう内投与用として
は、粉末、鼻こう点滴剤、又は噴霧剤として形成するこ
とができる。調合剤を製造する周知技術は、例えば、”
Remington’s Pharmaceutica
l Sciences”誌に記載されている。
【0062】一般的に、本発明のアゴニスト又はアンタ
ゴニストタンパク質フラグメントは、非経口投与用とし
て、約0.1〜10% w/vの化合物を含有する水溶
性生理的バッファ溶液として提供可能である。一般的な
投与量の範囲としては、一日につき、体重1kg当り約
1μg〜1gの範囲であり、好ましい用量は約0.01
mg〜100mgの範囲である。好ましい投与量は、恐
らく、治癒されるべき状態のタイプ、進行状態、患者の
全体的健康状態、調製剤の組成および投与の経路等によ
って変化する。
【0063】これらのアンタゴニスト及びアゴニスト分
子は、更に、サンプル中の分子からp85タンパク質を
選別する手段を提供するものである。この方法は、既知
量の本発明のアゴニスト又はアンタゴニストを、ある量
のサンプルタンパク質に接触させ、サンプル中に存在す
るp85タンパク質と前記アゴニスト又はアンタゴニス
トとの結合を測定するものである。
【0064】本発明は、更に、不十分なPI3−キナー
ゼ活性によって特徴付けられる病状を有する患者を治療
するためのアゴニストの使用を提供するものである。P
I3−キナーゼ活性のためのアゴニストを有するのに加
えて、この合成物には、前記アゴニストの取り込みを容
易にするための、キャリア、アジュバント、希釈剤、補
形薬等を含ませることが出来る。本発明は、更に、p8
5サブユニットへの結合のためのp110と競合するア
ゴニスト又はアンタゴニストを提供する。
【0065】公知の技術を使用してp85及びp110
サブユニットの構造及びこれらの相互作用を研究するこ
とによって、p110フラグメントの作用を模倣する分
子を設計することが可能になる。
【0066】
【発明の効果】PI3−キナーゼのセリンキナーゼ活性
を調節する方法は、p110サブユニットのDRHNS
N配置を無効化したり、あるいはこれに干渉することに
よって達成され、PI3−キナーゼ活性全体に影響を与
えるのに利用できる。
【0067】以下の例を参照することによって、本発明
はより良く理解されるであろう。但し、これらの例は例
示の目的のためにのみここに開示されるものであって、
本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【0068】
【実施例】以下の例は、p110サブユニットがp85
αまたはp85βと再構成されて活性PI3−キナーゼ
複合体を形成可能であることを示すものである。両サブ
ユニット間の結合が起こることを確証した後、p85α
のSH2間領域がp110への結合に必要であることが
判明した。正確な結合位置を確かめるためにマッピング
実験を行うことによって、前記SH2間領域内の領域
が、サブユニット間相互作用に寄与していることが判明
した。p110に対するp85の具体的結合位置及びp
85の前記SH2間領域の構造も、上記のように明らか
にされた。
【0069】p85/p110結合領域に対する知見に
より、PI3−キナーゼ活性を制御、調節するためこの
結合に干渉するメカニズムが提供される。結合が無い場
合には、以下の実験によってPI3−キナーゼ活性が測
定不能であることが示される。「PI3−キナーゼ活
性:サブユニット間相互作用の構造及び機能の分析」
(以下、「サブユニット間相互作用」と称する)、EM
BO Journal,vol13,No.3(199
4年2月1日発行予定)を参照。この文献の内容全体を
参考資料とする。更に、具体的な結合領域の知見によっ
て、p85及びp110間の相互作用に対するアンタゴ
ニストを調合して、PI3−キナーゼ活性を調節する性
質と方法を更に研究することができる。
【0070】以下の実験例は、更に、Sf9細胞に発現
した組換え体PI3−キナーゼが会合タンパク質キナー
ゼを示し、タンパク質−セリンキナーゼ活性が前記p1
10サブユニットに内在的であることを示している。
「PI3−キナーゼは二重変異性酵素である。:内在タ
ンパク質−セリンキナーゼ活性による自己調節」と題す
るDhand et al.の論文(以下「二重変異
性」と称する)、EMBOJournal,vol1
3,No.3(1994年2月1日発行予定)参照。こ
の文献の内容全体を参考資料とする。
【0071】例 1 PI3−キナーゼのp85及びp110サブユニットの
PI3−キナーゼ活性における関係及び役割をよりよく
理解するために、これらサブユニット間の相互作用と結
合現象を調べた。p110サブユニットに関する一連の
実験によって、p110が、生体内と生体外との両方に
おいて、p85αまたはp85βと再構成して、活性P
I3−キナーゼ複合体を形成することが判った。p85
αサブユニットとp110サブユニットとは、Sf9細
胞内において共同発現された時、安定的な複合体を形成
することが知られている(Hiles,et al.1
992)。p85βもp110タンパク質と再構成して
活性複合体を形成するか否かを確かめるため、昆虫細胞
を、p85α及びp110またはp85β及びp110
組換え体バキュロウィルスと共同感染させた。
【0072】より具体的には、サマーズとスミス(Su
mmers and Smith1987)に記載され
ているように、昆虫細胞を培養内に維持し、p85α及
びp85βタンパク質を、前述のようにバキュロウィル
スベクターを使用して昆虫細胞内で発現させた(Gou
t et al.1992; Otsu et al.
1991)。p110発現組換え体バキュロウィルス
は、ヒルズら(Hiles et al.1992)に
記載されている。
【0073】会合分析は以下の要領で行った。Sf9細
胞を、適当なバキュロウィルスに感染させた(Gout
et al.1992;Hiles et al.1
992に記載の通り)。感染して2日後、細胞を収穫し
て50mM Tris HCl,(pH7.4)、15
0mM NaCl,50mM NaF,5mM EDT
A、1%Triton X−100,500μM オル
トバナジウム酸ナトリウム塩、2mM PMSF、及び
アプロチニンの100カリクレイン インヒビタ単位
内、にて溶離した。次に、溶離物を、適当な抗体を使用
して免疫沈降させるか、あるいはPI3−キナーゼが結
合することが示されているヒトPDGF−βレセプタの
チロシン751を包囲する配列由来のホスホペプチド親
和性カラム、DY751VPML(G)に適用した(Fr
y etl al.1992; Ostu et a
l.1991)。
【0074】Hiles et al.1992に記載
の方法でp110抗血清を飼養した。SDS−PAGE
精製p85αに対して飼養された親和性精製ポリクロー
ナル抗体は、Gout et al.1992に記載さ
れている。p85α及びp85βタンパク質用のモノク
ローナル抗体は、End et al.1993に記載
されており、この文献の内容全体をここに参考資料とす
る。免疫沈降は、前述したようにOtsu et a
l.1993に記載の方法で行った。
【0075】具体的には、Sf9細胞を、図1に示すよ
うに、Ai(レーン1)、p85α(レーン2)、また
はp110(レーン3)ウィルスと感染されるか、ある
いは、p85α及びp110ウィルス(レーン4−6)
またはp85β及びp110ウィルス(レーン7−9)
と共同感染させた。これらの細胞の溶離物を、p85α
(レーン1及び4)に対して飼養されたポリクローナル
親和性精製抗体、p85β(レーン2及び7)に対して
飼養されたモノクローナル抗体、p110(レーン3,
5,8)に対して飼養されたポリクローナル親和性精製
抗体を使用して免疫沈降させるか、あるいは、固定Y
751ホスホペプチド親和性ビーズ(レーン6及び9)に
固定させた。酵素複合体を、クーマシーブルー染色7.
5%SDS−PAGEゲルによって分析するか、もしく
は、PI3−キナーゼ分析を行った。PI3−キナーゼ
分析は、上述の方法で免疫沈降物に対して行った(図
1、Aii参照)。
【0076】バキュロウィルス発現p85α及びp11
0の二重感染物において、両方のタンパク質が、ant
i−p85αまたはanti−p110免疫沈降物内
に、又は、前記酵素がY751ホスホペプチド親和性ビー
ズに固定された時に検出された。図1のAi、レーン
4,5及び6参照。又、すべての親和性及び免疫沈降物
がPI3−キナーゼ活性を有していることが判明した。
図1のAii、レーン4,5及び6参照。PI3−キナ
ーゼ分析は、End et al.1993に記載され
ている方法で行った。
【0077】ウィルス発現p85β及びp110におい
ても類似の結果が得られた。p85β又はp110サブ
ユニットに向けられた、あるいはY751ホスホペプチド
親和性ビードに固定された抗体と免疫沈降した感染細胞
溶離物は、SDS−PAGEによって分析された時に、
p85βとp110との両方を含有していることが判っ
た。図1のAi、レーン7,8及び9参照。これらのサ
ンプルのPI3−キナーゼ活性もテストしたところ、そ
のp85β/p110複合体が酵素的に活性であること
が判った。図1のAi、レーン7,8及び9参照。
【0078】p85β/p110複合体中で沈降された
クーマシーブルー染色タンパク質のレベルは、同量のp
110抗体又はY751ホスホペプチド親和性ビーズを使
用した場合にp85α/p110複合体中において沈降
することが観察されるレベルと実質的に同じである。p
85αとp85βとの両方が昆虫細胞内においておよそ
同じレベルで発現するので、(Gout et al.
1992)、Sf9細胞内におけるp85β/p110
複合体の形成は、恐らく、p85α/p110複合体の
形成と同じ程度に効率的である。p85α/p110複
合体とp85β/p110複合体とのいずれとも比較可
能な量のPI3−キナーゼ活性が沈降されたので、恐ら
く、p110は昆虫細胞内においていずれのp85イソ
フォーム(イソ型タンパク質:isoforms)とも
安定した活性PI3−キナーゼ複合体を形成することが
出来るものと考えられる。
【0079】例 2 前記PI3−キナーゼ複合体の二つのサブユニットが生
体外において翻訳後に会合することが可能か否かを確か
めるために、結合分析を行った。前記PI3−キナーゼ
複合体のサブユニットの一方を、先ず、適当なマトリッ
クスに固定し、次に、これを溶液中にて他のサブユニッ
トに結合させた。先ず、イソフォーム変異性モノクロー
ナル抗体を使用して感染昆虫細胞から免疫沈降したp8
5タンパク質を、プロテインAセファロースビーズに収
集した。次に、これらの免疫複合体を、予めp110ウ
ィルスによって感染させておいた昆虫細胞の溶離物と培
養した。次に、これらを洗浄し、SDS−PAGE又は
PI3−キナーゼ分析によって分析した。又、これに代
えて、p110を感染昆虫細胞から免疫沈降させ、溶離
物発現のp85αと温置し、次に上述の方法で処理し
た。
【0080】SDS−PAGE後のクーマシーブルー染
色によって、p85αとp85βとの両方がp110と
結合することが観察された(図1のBi、レーン1及び
2参照)。PI3−キナーゼ活性が分析された(図1の
Bii,レーン1および2)p110が固定された場合
においても類似の結果が得られ、結合p85αタンパク
質は、生体外における結合後のSDS−PAGEにおい
てクーマシーブルーによって染色されたタンパク質とし
て検出される(図1、Biii,レーン2参照)。
【0081】例 3 p110の結合の原因となるp85αの特定領域を求め
るために、前記相互作用に関連するp85のドメインの
分析を行った。
【0082】p85αの様々なサブドメインのGST溶
融タンパク質を構成し、グルタチオン−セファロースビ
ーズ上に固定した(図2,A参照)。これらのタンパク
質を、組換え体バキュロウィルス発現p110によって
感染させたSf9細胞から調合された細胞溶離物ととも
に、親和性分析に使用した。これら複合体を洗浄し、P
I3−キナーゼ活性分析を行った。GST単体、およ
び、野生型溶離物と培養したグルタチオン−セファロー
スビーズに固定されたGSTαp85とが、対照として
使用された。
【0083】図2Bは、キナーゼ活性が、全長GSTp
85αタンパク質(レーン1)か、あるいはp85αの
SH2間領域(レーン3)のいずれかとのみ関連してい
ることを示す。PI3−キナーゼ活性は、GST単体
(レーン7)には結合せず、内生昆虫細胞PI3−キナ
ーゼ活性は、対照溶離物と培養した場合には全長GST
p85αタンパク質に固定しなかった(データ図示せ
ず)。
【0084】例 4 p85タンパク質全体におけるp85αとp110のS
H2間領域間の相互作用を調べるために、SH間領域内
のエピトープに結合するモノクローナル抗体を、サブユ
ニット間会合を阻止するのに使用した。昆虫細胞からの
p85αを、p85αのSH2間領域に位置するエピト
ープに結合する二つのモノクローナル抗体U9およびU
15、又はBCRドメインを認識する二つの対照抗体を
使用して、免疫沈降させた(End et al.,1
993)。これらの免疫複合体を洗浄し、予めp110
ウィルスに感染させておいた昆虫細胞の溶離物と培養し
た。結合したタンパク質を、次に、SDS−PAGE及
びPI3−キナーゼ分析により分析した。
【0085】4種すべての抗体によって類似量のp85
αが、免疫沈降していることがクーマシーブルー染色に
よって観察された(図3,A,レーン1−4参照)。し
かしながら、SH2間領域を認識する二つの抗体によっ
て免疫沈降されたp85αに固定されたPI3−キナー
ゼ活性の量(図3,B,レーン3及び4)は、BCRド
メインに対する抗体によって免疫沈降されたp85αに
結合された活性の量(図3,B,レーン1及び2)より
もかなり少なかった。このデータから、p110サブユ
ニットへの結合には、p85αのSH2間領域が必要で
あることと、SH2領域に対しての変異性を有する抗体
が両サブユニット間の結合を抑制することとが明らかで
ある。
【0086】例 5 SH2間領域のどのサブ領域が、p110サブユニット
の直接結合に関係しているかを調べるために、p85α
のSH2間領域の両端部に、欠失を導入し、この領域の
大きさを175アミノ酸(425−600)から104
残基(451−555)へと縮小させた(図4,A参
照)。GST融合タンパク質として発現する裁頭SH2
間領域を、グルタチオン−セファロースビーズに固定
し、次に、予めP110に感染させておいた昆虫細胞の
溶離物と温置した。会合PI3−キナーゼ活性を測定し
た。
【0087】GST−p85α融合タンパク質の構造 PI3−キナーゼのウシP85 サブユニット(Ots
u et al.1991)のSH3ドメイン(アミノ
酸1−86)、BCR相同領域(アミノ酸125−32
2)、及びヘリカルSH2間ドメイン(アミノ酸425
−600,425−555,451−616,451−
600,451−555)に対応する配列を、PCRに
よって増幅し、pGEX−2Tベクター(Pharma
cia)へクローン化した。クローン化を容易にするた
めに、オリゴヌクレオチドのN−及びC−末端にBam
HI及びEcoRI位置をそれぞれ含ませた。5’から
EcoRI位置への各クローン化配列の末端には、終止
コドンを含ませた。配列システム(US Bioche
micals)を使用してPCRフラグメントを確認し
た。全長p85α(アミノ酸1−724)を、BgII
I及びEcoRIでpGEX−2T−SH3を消化する
ことにより、pGEX−2Tへサブクローン化し、この
フラグメントを、p85αタンパク質の残りのコード化
領域を含有するブルー・スクリプト・ベクター(Ots
u et al.,1991)内のp85αからの類似
切断されたカートリッジによって置き換えた。p85α
のC−及びN−末端SH2ドメインとp85αN−C構
造とが記載されている(Yonezawa et a
l.,1992)。
【0088】その結果は図4,B(レーン2−6)に示
され、SH2間領域のいずれかの端部からのアミノ酸の
欠失によって、結合PI3−キナーゼ活性の量が徐々に
減少する。SH2間構造を分裂させることは、恐らく、
推定ドメインを不安定化させ、タンパク質間相互作用を
妨げる。更に、その結果によって、p85αのSH2間
ドメインの残基451−555間の104アミノ酸の構
造要素、即ち、p110タンパク質と会合PI3−キナ
ーゼ活性に直接に結合可能な要素が明らかになった(図
4,B,レーン6)。
【0089】更に、N−末端SH2ドメインの3’端部
からC−末端SH2ドメインの5’端部へのGSTp8
5βの一連の組欠失を、SH2領域内における結合位置
を特定するために構成した。つぎに、これらのGST融
合タンパク質とp110との間の相互作用を、上述の方
法によって測定した。
【0090】GST p85β 融合タンパク質の構造 全長p85β、p85β(445−724)、p85β
(486−724)及びp85β(516−724)が
Yonezawa et al.1992に記載されて
いる。図5参照。p85β△486−516を求めるた
めに、GSTp85β(1−724)をBamIII及
びBgIIIと消化し、フラグメント残基486−51
6を除去し、次に自己結合させた。p85β△445−
485及びp85β△445−469を、p85β c
DNAからの二つのPCT生成物(p85β△445−
485用としてP3と、p85β△445−469用と
してP4)を増幅することによって構成した。P3は、
ヌクレオチド1457−1966を、そしてP4はヌク
レオチド1408−1966を包囲し、両方が5’端部
に導入されたAccIを有していた。P3とP4との両
方を、AccIとKpnIとによって消化し、次に、A
ccI及びKpnI消化GSTp85β1−724にそ
れぞれ結合させた。
【0091】SH2領域の大半を含有する、全長GST
p85β(1−724)及びGSTp85β(445−
724)は、PI3−キナーゼ活性に結合可能であるこ
とが明らかであった(図5,B,レーン1及び2参
照)。しかしながら、GSTp85β(486−72
4)やGSTp85β(516−724)の欠失等の、
SH2領域内に進行する欠失を備えた突然変異体はPI
3−キナーゼ活性に結合することが出来なかった(図
5,B,レーン3および4参照)。これらの結果は、p
85βの71アミノ酸領域(残基445−516)が、
p85βタンパク質とp110との間の相互作用に関係
していることを示している。
【0092】p85β内における結合位置をより正確に
調べるために、この領域、例えば、GST−85β△4
86−516、GST−85β△445−485及びG
ST−85β△445−469、において欠失を有する
突然変異体を構成した(図5,A、突然変異体5,6及
び7参照)。これらの突然変異体の機能を上述の方法で
分析した。結合後、PI3−キナーゼ活性は、GST−
85β△486−516とGST−85β△445−4
69との両方が、野生型のGSTp85βと比較して、
約65%のPI3−キナーゼ活性とまだ結合可能である
ことを示した(図5,B,レーン5及び7参照)。しか
しながら、欠失突然変異体GST−85β△445−4
85(p85αにおける残基452−492と相同)
は、検出可能なPI3−キナーゼ活動と結合することは
出来なかった(図5,B,レーン6参照)。従って、P
I3−キナーゼのp85βへの結合には40アミノ酸領
域が必須であると確定された。
【0093】p110タンパク質への結合にp85αの
類似の領域が関係しているか否かを調べるために、p8
5βにおいて生成されたものと相同の欠失を構成し(図
5,A,突然変異体10参照)、そのPI3−キナーゼ
活性に対する結合能力を分析した。この欠失突然変異体
GSTp85α−NC2△478−513(p85βの
アミノ酸残基471−501と相同)は、欠失の無い類
似の構造体GSTp85αNC(図5、B,レーン9参
照)と比較して、PI3−キナーゼ活性と結合すること
は出来なかった(図5、B,レーン10参照)。これら
の結果は、p110触媒サブユニットの結合を仲介する
のに必要なp85αにおける35アミノ酸領域を特定す
るものである。従って、p85αのアミノ酸残基478
−513とp85βのアミノ酸残基445−485と
が、p110とPI3−キナーゼ活性の結合に必須であ
る。
【0094】例 6 p85結合領域に生体外分析を行って、PI3−キナー
ゼの野生型と突然変異体p85αとの生体内会合を調べ
た。全長p85αと、その結合位置(p85α△478
−513)内に欠失を有する突然変異体p85αを、マ
ウス−L細胞において一時発現させるために構成した。
【0095】野生型ウシp85α(Wp85α)の発現
用のSRαプラスミド(Takebe et al.1
988)、または、p110用の結合場所を有さない突
然変異体ウシ全長p85α(p85α△478−51
3)を記載の方法で構成し(Hara et al.刊
行物として提出)、それぞれ、SRα−Wp85α
(W)及びSRαp85α△478−513(M)と指
定した。半集密性マウスL−細胞を、DEAEデキスト
ラン法を使用して、10μgのSRα−Wp85αまた
はSRαp85△478−513プラスミドとトランス
フェクション感染させた。60時間後、20mMのTr
is(pH7.6)、1%のノニデット(Nonide
t)P−40、10%のグリセロール、137mMのN
aCl、1mMのMgCl2、1mMのCaCl2、1m
MのDTT、1mMのPMSF、1mMのオルトバナデ
ートナトリウム塩、それに、タンパク質−Gアガロース
に結合したマウスp85α(Yonezawa et
al.1992)の認識不能なanti−p85αモノ
クローナル抗体(G12)2μgと免疫沈降した一時発
現ウシp85αを含有するバッファ内で、細胞を溶離し
た。次に、これらのサンプルを、p85αのC末端を認
識するポリクローナル抗体を使用したウェスタン・ブロ
ッティング又はPI3−キナーゼ分析によって分析し
た。
【0096】図6,Aは、同等量の野生型(W)と突然
変異体p85α(M)とがこれらの細胞から免疫沈降さ
れたことを示しており(レーン2及び3参照)、トラン
スフェクション感染されていない対照マウス細胞(NM
G)(レーン1)からは外生マウスp85αは免疫沈降
されなかった。しかしながら、PI3−キナーゼ活性
は、野生型p85αとのみ会合することが判り(図6、
B、レーン3参照)、突然変異体p85α(図6、B、
レーン4参照)、あるいは、トランスフェクション感染
されていない細胞(図6、B、レーン1参照)の免疫沈
降においてはPI3−キナーゼ活性は観察されない。
【0097】例 7 PI3−キナーゼ活性への結合の原因となるp85α及
びp85βの臨界領域の特定後、p85α及びp85β
と相互作用するp110の比較領域の研究を行った。様
々なp110の領域を包囲するGSTp110融合タン
パク質を準備した(図7、A参照)。そして、昆虫細胞
発現システムに発現されるp85に結合するこれらのp
110融合タンパク質の能力を評価した。
【0098】GST−p110融合タンパク質の構造 アミノ酸1−128(p110−1)、123−458
(p110−2)、577−1068(p110−
3)、601−960(p110−4)、760−96
0(p110−5)、760−1069(p110−
6)、1−49(p110−1.1)、1−81(p1
10−1.2)、1−108(p110−1.3)、2
0−81(p110−1.4)、および20−108
(p110−1.5)に対応するp110 cDNAの
領域(Hiles et al.1992)をPCRに
よって増幅した。クローン化を容易にするために、Ba
mIIIとEcoRIとを、5’および3’オリゴヌク
レチドにそれぞれ添加した。増幅後、PCR生成物がB
amIIIとEcoRIとともに切断され、pGEX−
2T(Pharmacia)へ結合された。アミノ酸1
−35(p110−1.6)及び37−128(p11
0−1.7)発現のGST融合構成物は、以下から構成
された。プラスミドp110−1.6のために、p11
0−1がBamIII及びEcoRIと消化され、その
端部を、T4 DNA ポリメラーゼによる処理によっ
て平滑に切断し、このプラスミドをT4 DNAリガー
ゼによって環状にした。プラスミドp110−1.7の
ために、p110−1がBamIIIと消化され、その
端部を、T4 DNA ポリメラーゼによる処理によっ
て平滑に切断した。両端部にはBgIIIリンカー(1
2−mers: New England Biola
bs)が添加され、プラスミドを更にBamIIIで制
限した。プラスミド含有バンドをゲル精製し、このプラ
スミドをT4 DNAリガーゼによって環状にした。発
現構造体は、E.coli XL1−blue(Str
atagene)で形質転換された。グルタチオンS−
トランスファラーゼ(GST)融合タンパク質の発現
は、前述の方法によって行った(Smith及びJoh
nson,1988)。
【0099】図7,Bは、6つの融合タンパク質p11
0.1−p110.6の内、p110.1のみが高い親
和性で、p85α(レーン16)とp85β(レーン1
7)とに結合することができたことを示している。対照
Sf9細胞溶離物においては結合は検出されず、その他
の構造体のいずれにおいてもいずれのサブユニットとの
結合も観察されなかった。このことは、p110のアミ
ノ酸残基1−128からなる領域がp85タンパク質に
対する結合箇所を有していることを示すものである。
【0100】p110の最初の128アミノ酸の様々な
領域を包む7つの他のGST融合タンパク質p110−
1.1−p110−1.7が構成された(図8参照)。
これらの内の、p110−1.3とp110−1.5と
が、p85αとp85βとの両方に結合した(図9,レ
ーン20,21及び14,15をそれぞれ参照)。その
他の構造体は、どれも、いずれのp85サブユニットに
対しても結合能力を示さなかった。これらの結果は、p
110のアミノ酸残基20−108が、p85サブユニ
ットとの結合における最小構造体であることを示す。
【0101】例 8 p85とp110サブユニットの結合領域に基づいて、
SH2間領域の構造を更に調べた。SH2間領域は、主
にその性質がα−ヘリカルであり、4つのヘリカル束が
存在しているかもしれないことが示唆されている(Pa
nayotou et al.,1992)。SH2間
領域の配列を、Owl 19.0データベースにおいて
アミノ酸配列をサーチするのに使用した(Protei
n Engineering Club, Leeds
University,U.K.)。上から20番目
までの内の12の対が、coiled−coil領域を
有するタンパク質ミオシン又はパラミオシンからの配列
を有していた。上位5対は、p85のイソフォーム(イ
ソ型タンパク質)を備えていた。一列配置されたアミノ
酸配列間における百分率配列一致は比較的低く、しばし
ばヘプタッド反復が一列配列されていた。
【0102】タンパク質構造に関するブルックヘーブン
・データバンクのアミノ酸配列(Bernstein
et al.,1977)もサーチした。類似している
ことが判った上位3配列の内の2つは、その構造が15
オングストローム分解に分解された2ストランドα−ヘ
リカルcoiled−coil筋肉タンパク質であるト
ロポミオシンを備えていた(Philips et a
l.1979)。同様に、トロポミオシンに一致するア
ミノ酸配列はきわめて低かった(175以上のアミノ酸
残基中において20%)が、SH2間領域におけるヘプ
タッド反復及びトロポミオシンのそれは、配置のかなり
の部分において一致していた。トロポミオシンの配列分
析(Hodges et al.,1972; Par
ry,1975; McLachlan及びStewa
rt,1979)は、残基a及びdが疎水性残基として
保存されたヘプタッド反復のこわされていない列(a,
b,c,d,e,g)nを示しており、これはその構造
が coiled−coilのα−ヘリックスである可
能性があることを示唆している。p85αおよびp85
βのヘリカルドメインのより古い配列分析(Panay
otou et al.,1992 その全内容をここ
に組み入れる)は、aおよびdが疎水性である形状の二
つの長いこわされていないヘプタッド反復(a,b,
c,d,e,f,g)nの存在を示した。
【0103】p85のSH2間領域におけるヘプタッド
反復と、その、トロポミオシン、パラミオシン、ミオシ
ン等のcoiled−coil配列を備えたアミノ酸配
列の類似性は、ドメインが coiled−coilの
α−ヘリックスから構成されていることを示唆するもの
である。SH2間領域の更なる分析は、その配列が、二
つの70−残基α−ヘリックスのアンチ−パラレルco
iled−coilである構造と一致していることを示
した(p85αにおける残基441−512及び518
−588)(図10及び図11参照)。
【0104】p85α及びp85βタンパク質における
欠失を互いに比較し、これに対応する活性損失と考慮し
た場合、p85αのcoiled−coil残基478
−492のヘリックス−1の内の4分割の内の第三番目
が、PI3−キナーゼ活性と結合できない欠失突然変異
体のおいては存在しない二つのp85タンパク質の間の
共通領域であることが判明した(図10,A参照)。p
85αのヘリックス−1の上半分、残基452−476
(図10,D参照)、又はp85αのヘリックス−1の
下の四分の1の残基492−523(図10,C参照)
のいずれかを除去する欠失は、前記コイル状構造体を不
安定化し、p110タンパク質との会合の障害となる
が、その結合を完全に抑制するものではない。p85α
の残基478−492が除去された場合にのみ、機能の
完全な損失が観察され(図10,B参照)、p110タ
ンパク質がp85と結合しないことが判る。
【0105】両方のp85タンパク質の配列分析は、p
85αの残基478−492が、一つの保守アミノ酸変
化を除いたアミノ酸レベルにおける二つのタンパク質間
において、同等の三つのヘプタッド反復(p85αの残
基470−497)に含まれていることを示している
(図10,A参照)。p85αの残基470−497の
合成ペプチドを、セファロースビーズと化学的に結合さ
せたが、p110及びPI3−キナーゼ活性に結合させ
ることは出来なかった。p85欠失突然変異体のp11
0結合特性の分析は、SH2間領域のヘリックス−1が
主としてPI3−キナーゼ複合体の二つのサブユニット
間の相互作用の原因となっている一方、ヘリックス2は
恐らくヘリックス−1の折り畳みのための構造要素を提
供していることを示唆している。安定した構造体を生成
するためには、p85およびp110サブユニット間の
相互作用のために、恐らく、p85αのヘリックス−1
の470−497に対応する領域と、ヘリックス2の隣
接領域とが必要である。
【0106】表1は、ヘプタッド反復の各位置における
20のアミノ酸のそれぞれの発生率を示す。この表は更
に、ヘプタッド反復の7つの位置のそれぞれにおいて発
生する、無極性(Ala,Ile,Leu,Met,V
al,PheおよびTyr)、ベーシック(塩基性)及
び酸性残基の率も示している。表1は、更に、p85の
SH2間ドメインにおける二つの予想ヘリックスが、2
−ストランドα繊維性タンパク質と多くの共通した特徴
を有していることを示している(Tables,Con
way及びParry,1990参照)。
【0107】
【表1】
【0108】前記ヘプタッド反復のa及びdの位置にお
いて、その残基の75.6%は無極性である。ヘリック
スの外側位置(b,c,e,f,g)におけるアミノ酸
の49%が荷電しているのに対し、位置a及びdの残基
の僅かに12%のみが荷電している。他のcoiled
−coilタンパク質と比較して、位置a,dのIl
e,PheおよびTyrの比率が比較的高い(Conw
ay及びParry,1990)ことは、p85ヘリッ
クスがアンチーパラレルであるのに対し、他のcoil
ed−coilタンパク質におけるヘリックスはパラレ
ルであるという可能性に関係しているかもしれない。
【0109】p85及びp110タンパク質間の結合は
非常に親和性が高く、PI3−キナーゼ複合体の解離と
なる適当な状態は達成されていない(Fry et a
l.,1992, Ruiz et al.,199
3)。更に、これら二つのサブユニット間の相互作用
が、ホスホチロシンの存在とは無関係であることも知ら
れており(R.Dhand,未出版)、p85タンパク
質のための結合コンセンサスを提供するようなp110
領域の富プロリンモチーフは存在しない。Leads
Prediction Package(Eliopo
ulos,1989)を使用した二次的構造予想によれ
ば、p110タンパク質に直接結合することが証明され
ているN−末端120残基の約60%が、α−ヘリカル
形質転換を受け、約20%がβシート形質転換を受ける
であろうことが予測されている。従って、p110のN
−末端領域は、α/β領域から構成され、そこで、前記
α−ヘリクッスはp85のSH2間領域との相互作用を
形成する可能性がある。p85αにおける主な結合位置
は、ヘリックス−1の残基478−492の間であると
考えられるので、この領域に、Met−479(図1
0、Cにおける位置C)、Ala−483(図10,C
における位置G)、そしてAla−496(図10,C
における位置C)から形成される小さな疎水性ポケット
が存在していることが注目される。p110のN−te
rminusはその性質において約48%疎水性である
ので、このポケットがp110タンパク質との高い親和
性相互作用の形成に重要な役割を果たしている可能性が
ある。
【0110】p85タンパク質のSH2間領域における
脂質−結合位置も明らかにされた。この領域を特定的に
認識する二つのモノクローナル抗体が、特にPI 4,
5P 2〜p85サブユニットにおいて、燐脂質の結合を
抑制することが示された(End et al.,19
93)。アミノ酸配列分析は、p85αのSH2間領域
において、プロフィリンやゲルソリン等において見られ
るものと類似し、これらのタンパク質にPI 4,5P
2結合特性を与えることが示された、短いベーシックモ
チーフの存在を示している(Jamay et a
l.,1992;Yu et al.1992)。更
に、p85βにおいて相同残基がよく保存され、これ
は、それがこれらのタンパク質において調節的機能を果
たしていることを示唆している。p85タンパク質がS
H2間領域を介してp110と結合することが示されて
いるので、前記脂質結合位置は、恐らく、PI3−キナ
ーゼ、特にPI 4,5P2用の基質結合ポケットの一
部を形成するものである。
【0111】例 9 PI3−キナーゼのサブユニット間相互作用の研究に加
えて、ラット肝臓PI3−キナーゼにおいてタンパク質
セリン/トレオニンキナーゼ活性も報告されている(C
arpenter et al.,1993)。しかし
ながら、この研究は、この活性が、固く結合した細胞酵
素を示すものなのか、あるいは、PI3−キナーゼ複合
体の要素に内在するものかについては開示していない。
実際には、Carpenterは、セリンキナーゼ活性
はPI3−キナーゼと物理的に関連してはいるが、PI
3−キナーゼから識別不能であることを示唆している。
cDNAクローン化と、それに続く前記酵素の二つのサ
ブユニットの発現のプロセスによって、会合セリンキナ
ーゼのより詳細な研究が可能になった。これらの研究を
次に詳述する。
【0112】昆虫細胞(Sf9)を、p85α又はp8
5βのいずれかの単体の発現を仲介するバキュロウィル
スによって感染させるか、あるいは、p110発現のウ
ィルスと共同感染させた。これらのp85α/p110
およびp85β/p110複合体を、p85又はp11
0サブユニットのいずれかを対象とする抗体で免疫沈降
させるか、あるいは、これらの複合体を、Y751ホスホ
ペプチド親和性カラムに固定した(Otsu et a
l.,1991; Fry et al.,199
2)。固定されたタンパク質を次にタンパク質キナーゼ
分析に使用した。
【0113】具体的には、Sf9細胞を、野生型ウィル
ス(図12,レーン1−4);p85α(レーン5);
p85β(レーン6)に感染させるか、あるいは、p8
5α/p110ウィルス(レーン7,8及び9)又はp
85β/p110ウィルス(レーン10,11及び1
2)と共同感染させた。これらの細胞の溶離物を、p8
5αに対して飼養したポリクローナル、親和性精製抗体
(レーン1及び7)、p85βに対して飼養したモノク
ローナル抗体(レーン2及び10)、p110に対して
飼養した、あるいは固定Y751ホスホペプチド(レーン
4,5,6,9及び12)に固定したポリクローナル、
親和性精製抗体(レーン3,8及び11)、を使用して
沈降させた。そして、これらのサンプルの生体外タンパ
ク質キナーゼ分析を行い、更に、SDS−PAGE及び
オートラジオグラフィによって分析した。
【0114】その結果は、p110が存在しない場合に
おいては、p85αとp85βのいずれもが生体外にお
いて燐酸化されなかったことを示している(図12参
照)(レーン5及び6)。しかしながら、前記昆虫細胞
が、p110発現のウィルスと共同感染された場合にお
いては、p85αとp85βタンパク質の両方が、該複
合体のいずれかのサブユニット(図12,レーン7−8
および10−11)に対する抗体を使用した免疫沈降後
における、あるいは、前記ホスホペプチド・カラムへの
結合後(図12,レーン9及び12)の分析において、
かなり燐酸化されていることが判った。これらの状態に
おいて、p110タンパク質はあまり燐酸化されず、い
ずれの抗体においても、又は、対照感染細胞からのホス
ホペプチド親和性ビーズにおいてはその他の燐酸化タン
パク質は検出されなかった(図12,レーン1−4参
照)。
【0115】更に、p85α/p110ウィルスと共同
感染させた昆虫細胞の溶離物を、anti−85ポリク
ローナル抗体を使用して免疫感染させた。次に、これら
のサンプルを、Mn2+とMg2+との量を様々に変化させ
た状態でタンパク質キナーゼ分析し、SDS−PAGE
及びオートラジオグラフィによって分析した(データ図
示せず)。キナーゼ活性に対するMn2+およびMg2+
存在の効果を比較するこれらの実験の結果は、キナーゼ
活性がMn2+の存在に完全に依存していることを示し
た。これは、ラット肝臓から精製されたPI3−キナー
ゼと会合することが発見されたセリンキナーゼ活性にお
いて金属イオンが必要であることと一致している(Ca
rpenter et al.,1993)。
【0116】例 10 Y751ホスホペプチドを使用して親和性精製したPI3
キナーゼ複合体のホスホアミノ酸分析も、この複合体に
関連するタンパク質キナーゼ活性の性質を調べるために
行った。親和性精製後、生体外燐酸化は、p85サブユ
ニットがホスホセリンのみを含有していることを示し
(図13,A参照)、これはカーペンターらの報告(C
arpenter et al.,1993)に一致し
ている。同じ条件下において生体外でp110サブユニ
ットに取り込まれた燐酸のレベルは、低すぎてホスホア
ミノ酸分析は不可能であった。
【0117】生体内におけるPI3−キナーゼ複合体の
燐酸化状態を調べるために、昆虫細胞を、バキュロウィ
ルス発現で、32p−PO4と代謝標識されたp85α及
びp110と共同感染させた。これらの細胞の溶離物
を、Y751ホスホペプチドビーズに固定し、次に洗浄し
て、SDSバッファ溶出タンパク質を、SDS−PAG
Eゲル分析後のクーマシーブルー染色によって可視化し
た。これらのゲルのオートラジオグラフィは、クーマシ
ーブルー染色によって決まるタンパク質の存在量に対し
て、p85αに取り込まれた燐酸のレベルがp110に
取り込まれた燐酸のレベルよりもはるかに高いことを示
した(図13,B,レーン1及び2)。ホスホアミノ酸
分析は、標識化を生体内で行った場合(図13,Ci)
にp85αはホスホセリンとホスホトレオニンとの両方
を含有するのに対して、p110サブユニットは、ホス
ホセリンのみを含有している(図13,Cii)ことを
示した。
【0118】燐酸化の反応速度(kinetics)を
調べるために、p85α/p110の抗−p110免疫
沈降物を使用した。p85αの燐酸化のKm(ATP)
値は、約4μMであった。次に、p85αの燐酸化の化
学量を、過剰ATP(50μM)の存在下において測定
した。燐酸のおよそ0.9molが、1molのp85
αタンパク質に組み込まれていた。この燐酸化の度合
は、ラット肝臓から精製されたPI3−キナーゼに会合
することが報告されている(Carpenteret
al.,1993)PIKキナーゼに関して観察された
程度と一致しており、これは、一つの主要な自己燐酸化
場所が使用されていることを示唆するものである。
【0119】例 11 PI3−キナーゼのタンパク質キナーゼ活性がp110
サブユニットに内生的なものであり、会合昆虫細胞活動
に依るものでないことが今や明らかである。p110サ
ブユニットを変異させることによって、PI3−キナー
ゼとタンパク質セリンキナーゼ活性との両方が破壊され
ることが判った。いずれのp85タンパク質アミノ酸配
列も、他のタンパク質キナーゼの配列に対する(Han
kset al.,1988)、あるいは他のタンパク
質のATP又はGTP−結合ドメインの配列に対する
(Saraste et al.,1990)認識可能
なモチーフを示さないので、余剰キナーゼモチーフを有
し、燐酸をATPからPIへ転移出来るp110サブユ
ニットが、内生的タンパク質−セリンキナーゼ活性を有
する物質の最も有力な候補である可能性が高い。p11
0サブユニットは、周知のタンパク質キナーゼの活性場
所及びイーストPI3−キナーゼ,Vsp34p,Hi
les et al.,1992、内において保存され
るアミノ酸を含有している。ヌクレオチド燐酸部分(モ
エティ)の結合と、古典的なタンパク質キナーゼにおけ
る燐酸転移酵素活性のためには、DRHNSN配列が必
須である(Taylor et al.,1992)。
【0120】phosphoinositideキナー
ゼと公知のタンパク質キナーゼとに明らかに共有されて
いるDRHNSN配列の機能的重要性を、場所−指定オ
リゴヌクレオチド特異誘発を利用して調べた。ウシp1
10のDRHNSNモチーフ内における、アルギニン9
16をプロリン(R916P)に変換するポイント特異
誘発を行った。そのプロトコルは、Dhand et
al.,Dual Specificityに詳述され
ている。
【0121】簡単に説明すると、p110のアルギニン
916を、オリゴヌクレチド仲介特異誘発によってプロ
リン残基に変化させた。オリゴヌクレチド5’TGGG
AATTGGGGATCCTCACAATAGTA−
3’を合成し(GenosysBiotechnolo
gies Inc.,Cambridge U.
K.)、Stratagene ”Double Ta
ke”特異誘発キットを使用して、R916P変異をp
110−Bam HI(Hiles et al.,1
992)に組み込むのに使用した。前記R916P変異
に加えて、このオリゴヌクレチドは、サイレントコドン
変化によって、新規なBamHI位置を導入するもので
ある。R916変異を含む802ベースペアPstI−
HindIIIカートリッジ配列を、DNA配列分析に
よって確認した。
【0122】Sf9細胞内に於ける発現のために、バキ
ュロウィルス転移ベクター,p36C−P110(Hi
les et al.,1992)からの903ベース
ペアPstI−KpnIカートリッジを、前記R916
P変異を含むp110BamHIプラスミドからの対応
カートリッジに置換した。
【0123】変異誘発を含む実験は、p110サブユニ
ットが、PI3−キナーゼの触媒サブユニットであるこ
とを明らかにした。図14,A参照:記載の抗体と免疫
沈降した感染昆虫細胞の溶離物の7.5%SDS−PA
GEクーマシーブルー染色を以下の要領で処理した。a
nti−p85α(レーン1)、anti−p110
(レーン2)、生体外でSf9細胞を含有するp110
と飼養した、anti−85α免疫沈降物(レーン
3)、p85α/p110ウィルスと共同感染させた昆
虫細胞のanti−p110免疫沈降物(レーン4)、
anti−p85α(レーン5)、p110R916P
に感染させた昆虫細胞のanti−p110免疫沈降物
(レーン6)、生体外でSf9細胞を含有する突然変異
体p110−R916Pで飼養したanti−p85α
免疫沈降物(レーン7)、予めp85α/突然変異体p
110−R916Pウィルスと共同感染させた昆虫細胞
のanti−p110免疫沈降物(レーン8)。そし
て、B: Aに記載の要領で感染させ記載された免疫沈
降物に対してPI3−キナーゼ分析を行った。
【0124】先ず、内生ホスホイノシチドキナーゼ活性
に対する変異誘発の効果を評価した。昆虫細胞を、p8
5α及びp110ウィルスのいずれか一方、またはこれ
らの両方で感染させた。その後、免疫沈降したp85α
及びp110を、SDS−PAGEゲル上における分解
後、クーマシーブルー染色されたタンパク質として視覚
化することが出来た(図14,A,レーン1及び2参
照)。
【0125】SDS−PAGE分析に示されているよう
に、二つのタンパク質を生体外で会合させた場合、ある
いは、これらが昆虫細胞内において発現された場合に、
タンパク質がp85αと安定した複合体を形成すること
が判った(図13,A,レーン3及び4参照)。これら
のサンプルの分析はp110タンパク質のみが活性であ
ることを示した(図14,B,レーン2参照)。p11
0を生体外又は生体内においてp85αと固定した時に
活性複合体が形成された(図14,B,レーン3及び4
参照)。免疫沈降したp110−R916Pも、SDS
−PAGEゲルのクーマシーブルー染色によって可視化
され(図14,A,レーン6参照)、野生型p110タ
ンパク質と共同移入(comigrate)することが
判った(図14,A,レーン2)。
【0126】突然変異体p110−R916P及びp8
5αによって共同感染された昆虫細胞が、anti−p
110抗体を使用した免疫沈降によって分析された時
(図14,A,レーン8参照)、あるいは、突然変異体
免疫精製p110−R916Pを生体外でp85αと会
合させた時(図14,A,レーン7参照)、安定した複
合体が回収された。
【0127】前記突然変異体p110を含有する免疫沈
降物は、すべて、PI3−キナーゼ活性を有していない
ことが判った(図14,B,レーン6,7,8)。突然
変異体p110−R916Pの発現及び結合能力は、野
生型p110のそれと対応しているので、このデータ
は、変異が、恐らく、p110タンパク質の構造を完全
に破壊することなく、このタンパク質の触媒位置を破壊
したことを示すものである。
【0128】例 12 PI3−キナーゼ不活性突然変異体p110−R916
Pを使用して、会合タンパク質セリンキナーゼ活性に対
する突然変異の効果を調べた。図15参照。昆虫細胞
を、p85α及び野生型p110(レーン1)、p85
α及び突然変異体p110−R915Pウィルス(レー
ン2)、p110単体(レーン3)、突然変異体p11
0−R916P単体(レーン4)と共同感染させた。こ
れらの細胞の溶離物を、p110サブユニットに対する
抗体と免疫沈降させ、次にこれらの免疫沈降タンパク質
を生体外で燐酸化させた。
【0129】p85αサブユニットは、野生型p110
と複合された時に生体外で燐酸化されることが観察され
た(図15,A,レーン1参照)。これに対して、突然
変異体p110−R916Pと会合したp85サブユニ
ットは、この分析においては燐酸化されていなかった
(図15,A,レーン2参照)。野生型p110も突然
変異体p110−R916Pのいずれも、自己燐酸化は
観察されなかった(図15,A,レーン3及び4参
照)。
【0130】例 13 p110サブユニットが生体外においてp85αに結合
しこれを燐酸化することによってトランス−キナーゼ活
性を示す可能性を調べた。以下の実験の結果は、図1
5,Bに示されている。昆虫細胞からのp85αを、Y
751ホスホペプチドカラムを使用してSf9細胞から親
和精製し、次に、バキュロウィルス組換え体発現p11
0(レーン1)、突然変異体p110−R916P(レ
ーン2)、非処理体(レーン3)に感染のSf9細胞の
溶離物と飼養した。これらの複合体を洗浄し、生体外タ
ンパク質キナーゼ分析し、更にSDS−PAGE及びオ
ートラジオグラフィで分析した。
【0131】単体で発現したp85αは燐酸化されてい
なかった(図15,B,レーン3)が、一方、野生型p
110に生体外で固定されたp85αはかなり燐酸化さ
れていた(図15,B,レーン1参照)。これに対し
て、突然変異体p110−R916Pと複合されたp8
5αは、燐酸化されていなかった(図15,B,レーン
2参照)。
【0132】p85αの燐酸化が、昆虫細胞に発現した
p85にのみ関係しているものでないことを確認するた
めに、GST融合タンパク質としてバクテリア発現した
p85αを、代替タンパク質源として使用した。GST
−p85αを親和性樹脂に固定し、次に以下の段落に記
載の要領で処理した。固定後、生体外キナーゼ分析は、
GST p85α単体では会合タンパク質キナーゼ活性
が無いことを示した(図15,C,レーン3参照)。し
かし野生型p110との会合によっては、p85α融合
タンパク質はかなり燐酸化した(図15,C,レーン1
参照)。突然変異体p110−R916Pに固定したG
STp85αにおいては燐酸化は認められない(図1
5,C,レーン2参照)。
【0133】例 14 p85及びp110との会合において他のタンパク質が
検出されるか否かを調べるために更に実験を行った。そ
の結果を図16に示す。具体的には、野生型ウィルス
(レーン1);p85α及びp110(レーン2)、又
はp85αのみ(レーン3)と感染させた昆虫細胞を、
16時間で35Sメチオニンで標識化した。次に、これら
の細胞の溶離物を、Y751カラムに固定した。数回の洗
浄後、SDSバッファによって遊離させたラジオ標識タ
ンパク質を、SDS−PAGEで分析し、オートラジオ
グラフィによって検出した。
【0134】その結果によれば、野生型のバキュロウィ
ルスに感染させた昆虫細胞からの親和性ホスホペプチド
に固定されたタンパク質は存在しない。更に、組換え体
バキュロウィルス発現p85αのみ、あるいはP85α
とp110とで感染させた細胞からは、3日間のオート
ラジオグラフィ後においてさえも、その他の会合タンパ
ク質は検出されなかった。
【0135】マクロ分子を細分化し精製するために、ス
クローズ勾配分析も行った。これらの結果を図17に示
す。p110ウィルスのみ、あるいはp110及びp8
5の両方と感染させたSf9細胞の溶離物を、スクロー
ズ勾配上で分離し、そのフラクションのPI3−キナー
ゼ及びPIタンパク質キナーゼセリン活性を分析した。
沈降は左から右の方向に行った。PI3−キナーゼ活性
は、p110(図17,A)及びp110/p85α
(図17,C)発現の分割細胞溶離物から免疫精製され
た。スクロース勾配上で分離されたp110感染細胞の
分析は、PI3−キナーゼ活性の大部分(図17,A)
と、フラクション7にピークを有する、そのモノマーと
してのマイグレーションと比較可能な分子重量を備えた
p110タンパク質(データ図示せず)とを示した。
【0136】上述のようにp110はあまり自己燐酸化
せず、従って検出できないので、p85をタンパク質キ
ナーゼ活性のための外性基質として使用した。各フラク
ションの免疫沈降物を生成し、精製p85αタンパク質
で飼養し(Gout etal.,1992)、次に、
キナーゼ活性を分析した。図17,Bの結果は、PI3
−キナーゼ活性のピークと正確に共同移動した燐酸化p
85のピークを示している。
【0137】p110及びp85αウィルスと予め共同
感染させておいた昆虫細胞の溶離物に対しても類似の分
析を行った。PI3−キナーゼ活性は、フラクション1
0−2でピークとなり、p110及びp85αのヘテロ
ダイマーの分子重量に一致する分子重量で分割された
(図17,C)。p110(図17,D)に対して特異
的な、あるいはp85に対して特異的な(データ図示せ
ず)抗体で予め免疫沈降させておいたタンパク質セリン
キナーゼ活性も、PI3−キナーゼと、p85及びp1
10タンパク質と共同移動していた。このデータは、タ
ンパク質セリンキナーゼ活性が恐らくPI3−キナーゼ
複合体に内生的なものであることを示している。
【0138】例 15 更に、両方のキナーゼ活性が類似のチオール所要量を有
していると判断された。多数の真核源から分離されたP
Iキナーゼが、sulphydril−modifyi
ng試薬による処理(Hou et al.,198
8; Scholz et al.,1991)や、他
のキナーゼ内における処理に感作することが知られてい
る。
【0139】PI3−キナーゼおよび会合セリンキナー
ゼ活性が、類似のチロール所要量を有しているか否かを
調べるために、次の実験を行った。昆虫細胞を、p85
α/p110複合体(図18,A,レーン1−6)か、
あるいはp110のみ(図18,B,レーン7−12)
と感染させた。それらの免疫沈降物を、PI3−キナー
ゼバッファ(20mM Tris−HCl,pH7.
5,100mM NaCl,0.5mM EDTA)で
二回洗浄した。それらサンプルを、摂氏22度で15分
間、0.3mM 5,5’−ジチオール−ビス(2−ニ
トロベンゼン酸)(Nbs2)で処理、あるいは処理しな
かった。前記複合体を、PI3−キナーゼバッファで三
回洗浄することによって、過剰試薬を除去し、次にその
免疫沈降物を、ジチオトレイトール(DTT)の濃度を
増加させながら、摂氏22度で15分間飼養した。対照
サンプルは、最終濃度300mMのDTTのみによって
飼養した。残りのDTTを、溶離物バッファで洗浄する
ことによって除去し、その免疫沈降物の、PI3−キナ
ーゼ分析、または、下記の生体外キナーゼタンパク質分
析を行った。
【0140】実験を行い、その結果を図18,Aに示
す。生体外PI3−キナーゼ分析は、以下の要領で処理
されたこれらの細胞のanti−p110免疫沈降物に
対して行った。即ち、無処理(図18,A,レーン1及
び7)、300mM DTT(レーン2及び8)、0.
3mM Nbs2で処理したもの(レーン3及び9)、
3mM DTT(レーン4及び10)、30mM DT
T(レーン5及び11)、300mM DTT(レーン
6及び12)でそれぞれ飼養した0.3mM Nbs2
で前処理した免疫沈降物。
【0141】Nbs2およびDTTで処理した生体外キ
ナーゼ活性を調べるために更に別の実験を行った。p8
5α/p110バキュロウィルスに予め共同感染させて
おいたSf9細胞の溶離物を、更に以下の方法で処理し
た。前記溶離物を、anti−p110抗体で免疫沈降
し、次のように処理した。即ち、無処理(図18,B,
レーン1)、300mM DTT(レーン2)、0.3
mM Nbs2(レーン3)、0.3mM Nbs2で前
処理し、次にそれぞれ、3mM DTT(レーン4)、
30mM DTT(レーン5)、そして300mM D
TT(レーン6)で飼養したもの。次にこれらのサンプ
ルの、生体外キナーゼ分析を行い、更に、SDS−PA
GE分析を行った。燐酸化されたタンパク質は、オート
ラジオグラフィによって可視化された。その結果を図1
8,Bに示す。
【0142】前記サンプルが0.3mM Nbs2で飼
養された場合に於て約95%のPI3−キナーゼ活性が
失われ(図18,A,レーン3及び9参照)、タンパク
質セリンキナーゼ活性の類似の損失も観察された(図1
8,B,レーン3参照)。両方の触媒活性を、DTTの
濃度を増加させながら前記修飾酵素を飼養することによ
って回復させることができた(図18,A,レーン4−
6及び10−12;図18,B,レーン4−6参照)。
300mMの最終濃度で、DTTのみで前記PI3−キ
ナーゼ複合体またはp110を飼養することによって、
PI3−キナーゼ活性(図18,A,レーン2及び8)
と、タンパク質セリンキナーゼ活性(図18,B,レー
ン2)の両方が、僅かに活性化された。
【0143】Nbs2及びDTT処理の相対的投与量依
存性を調べるために更に別の実験を行った。図18,C
は、両方のキナーゼ活性における、Nbs2による不活
性化の曲線と、DTT濃度増加による再活性化の曲線を
示している。Nbs2による不活性化と、DTTによる
再活性化との両方が、両方のキナーゼ活性において、実
質的に等しい投与量反応−曲線を示した(図18,C参
照)。
【0144】活性の損失は、恐らく、前記触媒ドメイン
における必須システイン残基とthionitrobe
nzoate(Nbs-)アニオン(s)との間のジス
ルフィド結合の形成に依るものである。
【0145】例 16 p85αタンパク質のp110への結合が、p85がタ
ンパク質キナーゼ活性のための基質として作用するため
の前提必要条件であるか否かを調べるために更に実験を
行った。p85αのサブドメインの様々なGST融合タ
ンパク質を、タンパク質セリンキナーゼ活性の基質であ
る可能性のあるタンパク質として利用した。GST融合
タンパク質を調合する方法については、Dhand,D
ualSpecificity,infra.(199
3)により詳細に記載されている。具体的なGST融合
タンパク質は、図19,Aに記載されている。
【0146】p110タンパク質を、昆虫細胞から免疫
沈降させ、各GST融合タンパク質の同量、もしくはG
STタンパク質のみを、p110と混合し、これらのタ
ンパク質を生体外で燐酸化させた。タンパク質キナーゼ
分析は、Hiles etal.1992に記載の要領
で行ったが、但し、ここで使用したキナーゼバッファ
は、50mM HEPES,pH7.4,150mM
NaCl,5mM EDTA,10mM MnCl2
0.02% Triton X−100,10% グリ
セロールを含有していた。燐酸化タンパク質をSDS−
PAGE及びオートラジオグラフィによって分析した。
この実験の結果を図19,Bに示す。
【0147】p110への結合の原因となるp85αの
領域は、アミノ酸残基478−514を含んでいた。と
いうのは、欠失を有さない類似の構造体と比較して、欠
失突然変異体p85αN−C△478−514はp11
0またはPI3−キナーゼ活性に対して全く結合不能に
されているからである。行われた実験(データ図示せ
ず)は、p110によって燐酸化されたタンパク質は、
既に結合することが証明されていたタンパク質のみであ
ることを示している。全長p85αと、アミノ(N)及
びカーボキシル(C)末端SH2ドメイン及びこれらの
間の領域を含むp85αN−Cドメインのみが、p11
0によって燐酸化されているのが判った。SH2間ドメ
インは、PI3−キナーゼ活性と結合することが知られ
てるが、この分析においては燐酸化されていなかった。
例5参照。
【0148】これらの結果は、もしもキナーゼ残基に対
する生体外燐酸化の場所が、前記二つの隣接SH2ドメ
インのいずれか一方、もしくはSH2間ドメインの両側
に位置する領域内に存在するならば説明可能である。こ
のデータは、p110タンパク質−セリンキナーゼ活性
は、p85の様々な結合されていないサブドメインのみ
では燐酸化を生じさせるには不十分であるので、p11
0が特定の基質p85と高い親和性で結合する場合に初
めて検出可能であるということを示唆するものである。
【0149】例 17 バキュロウィルス発現p85α/p110によって感染
させたSf9細胞から精製したp85αサブユニットの
ホスホアミノ酸分析は、該サブユニットがホスホセリン
を含有していることを示した。生体内ほ乳類細胞中のp
85αにおける燐酸化位置を特定するために、種々の源
からの、生体内と生体外の両方で燐酸化されたp85サ
ブユニットを使用した。生体内で燐酸によって標識化し
たSf9及びSGBAF−1細胞からの精製PI3−キ
ナーゼに、Y751ホスホペプチドカラムを使用して、ホ
スホペプチドマッピングを行った。
【0150】他の細胞に関して前述したように、ウシア
ドレナールコルテックスゾナ通性細胞のpSV3neo と
のトランスフェクションによって、SGBAF−1細胞
線が形成された(Whitley et al.,19
87)。SGBAF−1細胞は、10% FCS,10
i.u.のペニシリン/mlと、10μmのストレプ
トマイシン/mlとを含有のDulbeccoの修飾E
agles媒体(DMEM)中で保持した。昆虫細胞
(Sf9)培養の維持は、前述し、更に、Summer
s and Smith(1987)に記載されている
方法で行った。
【0151】先ず、予めp85α及びp110ウィルス
に共同感染させておいてSf9細胞からのホスホペプチ
ドに結合させたPI3−キナーゼを使用して、燐酸化位
置を生体外で標識化した。又、バクテリア発現GST−
p85αとGST−p85αN−Cとをグルタチオン−
セファロースビーズに結合させ、p110感染Sf9細
胞の溶離物から免疫沈降したP110と生体外会合させ
た。これらのサンプルを、SDS−PAGEゲル上で溶
解し、オートラジオグラフィによって同定されたp85
αタンパク質を、前記ゲルから摘出した。トリプシン消
化後、p85αタンパク質消化物を、逆相HPLCで分
析し、溶離フラクションを、チェレンコフ放射を分析す
ることによって検出した。
【0152】具体的には、実験の条件は下記の通りであ
る。パネルA: p85α/p110ウィルスと共同感
染し、生体外で燐酸で標識化したSf9細胞からのホス
ホペプチド−精製PI3−キナーゼ; B: 生体内で
燐酸で標識化したSGAF−1細胞からの上述の方法で
処理されたPI3−キナーゼ; C: [γ32P]AT
Pの存在下において生体外で燐酸化されたp85α/p
110ウィルスと共同感染したSf9細胞からのホスホ
ペプチド−精製PI3−キナーゼ。GST−p85α
(パネルD)及びGST−p85αN−CSH2(パネ
ルE)は、グルタチオン−セファロースビーズに結合さ
れ、次に、Sf9細胞溶離物含有のp110と飼養し
た。複合タンパク質は、[γ32P]の存在下において生
体外で燐酸化された。図20に示す結果は、タンパク質
が生体外で標識化されていた場合と生体内で標識化され
ていた場合のいずれの場合においても、同じ主ホスホペ
プチドが、すべての種々の調合物質からのp85αのマ
ップに検出されたことを示している。
【0153】p110によって生体外で燐酸化されトリ
プシンと消化されたバクテリアGSTp85αN−Cが
同じホスホペプチドを含有しているので、このことは、
ホスホセリン残基がp85タンパク質のC−末端半分内
に存在していることを示唆するものである。ホスホペプ
チドは、p85α及びp110ウィルスに共同感染し、
生体外で燐酸化されたSf9細胞からの大量調製p85
のトリプシン消化物から精製され、次に、質量及びN−
末端配列分析を行った。自動アミノ末端エドマン分解に
よって、前記ホスホペプチドのアミノ末端が確認され、
その結果、このアミノ末端がKLNEWLGNENTE
DQYSLVEDDEDLPHHDEKの配列を有して
いることが示唆された。質量分析は、質量が、燐酸化残
基を含有しないペプチドの質量は3484kDaである
はずであるが故に、このペプチドにおける単一の燐酸化
位置と一致する3583kDaであることを示した。ホ
スホアミノ酸分析は、分子がもっぱら生体外でセリン上
で燐酸化されることを示し、これらの結果は、Ser−
608が燐酸化の主要位置であることを示すものであ
る。例10参照。生体内で標識化されたSf9細胞のホ
スホアミノ酸分析においては、ホスホトレオニンも検出
された(図13参照)が、ホスホトレオニンを含有する
ペプチドを回収することは不可能であった。
【0154】例 18 PI3−キナーゼの調節は、会合タンパク質セリン/ト
レオニンキナーゼによって達成可能である。p85α及
びp110タンパク質を発現するウィルスによって共同
感染させておいた昆虫細胞の溶離物を、p110サブユ
ニットに対する抗体で免疫沈降させた。これらの免疫複
合体を、[γ32P]ATPの存在下において、0,1,
2,5,10,20そして40分間へと徐々に時間を増
やしながら、燐酸化させた(図21,A,レーン1−7
参照)。各時間後ごとに、MnCl2をキレート化し除
去するために、10mM EDTA含有溶離物バッファ
でよく洗浄することによって反応を停止させた。次に、
これらの免疫複合体を二つの部分に分解し、SDS−P
AGE及びオートラジオグラフィによるタンパク質の分
析に使用し(図21,A)、のこりのサンプルをPI3
−キナーゼ分析した(図21,B)。
【0155】図21,Bは、p85αサブユニットに観
察される燐酸化のレベル増加が、それに対応するPI3
−キナーゼ活性における減少と平行していることを示し
ている。MnCl2及び[γ32P]ATPの存在下にお
いて酵素を20分間温置した後、約80%のキナーゼ活
性が消滅する。この効果は、不活性化酵素をホスファタ
ーゼによって処理することによって逆行させることが可
能である。セリン燐酸化酵素(図21,C,レーン2)
を、ホスホプロテイン ホスファターゼ2A,レーン
3、又はアルカリホスファターゼ,レーン4のいずれか
によって処理することによって、[γ32P]ATPがp
85αサブユニットから除去された。これらのホスファ
ターゼ−処理サンプルの平行PI3−キナーゼ分析は、
活性の回復を示した(図21,D,レーン1−4参
照)。非処理のPI3−キナーゼも、アルカリホスファ
ターゼあるいはホスホプロテイン ホスファターゼ2A
のいずれかと温置してみたが、PI3−キナーゼ活性に
おいて顕著な変化は観察されなかった。
【0156】参考文献 1. バッカー,ジェイ・エム他,(1992), E
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【0157】
【図面の簡単な説明】
【図1】バキュロウィルスによって発現したp85α及
びp85βの、バキュロウィルス発現p110と共同感
染した時に昆虫細胞内において安定した活性複合物を形
成する能力を示すSDS−PAGE及びPI3−キナー
ゼ分析を示す図
【図2】GST−融合タンパク質に対するPI3−キナ
ーゼ活性を示す図
【図3】SH2及びBCRドメイン間の会合PI3−キ
ナーゼ活性においてエピトープと結合する抗体の分析を
示す図
【図4】p110と直接結合するSH2間領域に於ける
領域の所在と、PI3−キナーゼ活性の分析を示す図
【図5】p110の結合に必要なp85αの478−5
13とp85βの445−485のアミノ酸残基の所在
とPI3−キナーゼ活性を示す図
【図6】SRαWp85α(W)又はSRαWp85α
△478−513(M)プラスミドにトランスフェクシ
ョン感染したマウスL細胞のウェスタンブロット分析結
果を示す図
【図7】p85に結合するp110の領域の所在を示す
【図8】p85に結合するp110の領域の所在を示す
【図9】p85に結合可能なp110の領域のマッピン
グを示す図
【図10】ウシのp85α及びp85βの配列の比較図
【図11】p85のコイル状コイル(coiled−c
oil)ドメインの略図
【図12】Mn2+依存タンパク質キナーゼ活性用の基質
としてのp85α及びp85βのSDS−PAGE/オ
ートラジオグラフィ分析結果を示す図
【図13】生体内及び生体外におけるPI3−キナーゼ
活性のSDS/PAGE/オートラジオグラフィによる
ホスホアミノ酸分析結果を示す図
【図14】PI3−キナーゼのp110サブユニットの
SDS/PAGE/オートラジオグラフィと分析結果を
示す図
【図15】p110サブユニットのタンパク質キナーゼ
分析とSDS/PAGE/オートラジオグラフィを示す
【図16】35Sメチオニン標示トランスフェクション感
染細胞由来の溶離物のSDS/PAGEオートラジオグ
ラフィを示す図
【図17】スクロース濃度グラディエントに関するPI
3−キナーゼ及びセリンキナーゼ活性の分析結果を示す
【図18】所要Nbs2及びDTT−チオール実験を示
す図
【図19】SDS−PAGE及びオートラジオグラフィ
によるGST−p85α突然変異体の生体外キナーゼ分
析を示す図
【図20】生体内及び生体外において燐酸化されたp8
5αのホスホペプチドマッピングを示す図
【図21】p85αのセリン燐酸化とPI3−キナーゼ
活性の抑制を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA C12Q 1/48 5/00 B (72)発明者 マイケル・デレク・ウォーターフィール ド イギリス バークシャー アールジー13 1アールエヌ ニューベリー スピー ン スピーン・レーン(無番地) シャ ントマーレ (72)発明者 イアン・ドナルド・ハイルズ イギリス ケント ビーアール2 7エ ルキュー ブロムリー ヘイズ ジョー ジ・レーン 62 (72)発明者 イヴァン・タラソヴィッチ・ガウト イギリス ロンドン エヌ6 6エヌユ ー ハイゲート・ウェスト・ヒル 91 (72)発明者 春日 雅人 兵庫県神戸市東灘区御影町御影平野 1591‐3‐205 (72)発明者 米澤 一仁 兵庫県神戸市中央区楠町6丁目2‐15- 301 (56)参考文献 Molecular and Cel lular Biology,1993, Vol.13, NO.9, p.5560− 5566 Cell,1991, Vol.65, p.91−104 Annu Rev Cell Bio l,1992, Vol.8, p.429− 462 Cell,1992, Vol.70, p.419−429 Cell,1992, Vol.71, p.359−362 Molecular and Cel lular Biology,1993, Vol.13, No.3, p.1657− 1665 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 C12N 9/12 C12N 9/99 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed (54)【発明の名称】 セリンキナーゼ活性の抑制方法、PI3−キナーゼのサブユニット間の結合活性の調整方法、P I3−キナーゼのサブユニット結合抗体、この抗体を生成するハイブリドーマ細胞系、核酸分 子、プラスミド、アゴニスト、アンタゴニスト、PI3−キナーゼ活性を抑制するサブユニット 結合分子、サブユニットの存在検出方法、PI3−キナーゼ活性の抑制剤製造方法、およびPI 3−キナーゼ活性の抑制剤

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 PI3−キナーゼ酵素のセリンキナーゼ
    活性を抑制する方法であって、PI3−キナーゼのp1
    10サブユニットのDRHNSN配列またはp85サブ
    ユニットのSH2間領域の配列を無効化する工程を有す
    るセリンキナーゼ活性の抑制方法。
  2. 【請求項2】 前記配列が標的変異によって無効化され
    る請求項1に記載のセリンキナーゼ活性の抑制方法。
  3. 【請求項3】 前記配列が、前記PI3−キナーゼ酵素
    のp110サブユニットの前記DRHNSN配列に特定
    的に結合する抗体との相互作用によって無効化される請
    求項1に記載のセリンキナーゼ活性の抑制方法。
  4. 【請求項4】 前記抗体が、前記DRHNSN配列に特
    定的に結合するモノクローナル抗体である請求項3に記
    載のセリンキナーゼ活性の抑制方法。
  5. 【請求項5】 PI3−キナーゼのp85サブユニット
    とp110サブユニットとの間の結合を抑制する方法で
    あって、前記PI3−キナーゼのp85βサブユニット
    のアミノ酸残基445〜アミノ酸残基485を有する領
    域またはp85αサブユニットのアミノ酸残基478〜
    アミノ酸残基513を有する領域を無効化する工程を有
    する、PI3−キナーゼのサブユニット間の結合活性の
    調整方法。
  6. 【請求項6】 PI3キナーゼのp85サブユニットに
    結合するリガンドとしての分離アンタゴニストであっ
    て、このアンタゴニストが、前記p85サブユニットに
    結合することによってセリンである位置608に於ける
    燐酸化が阻止され、これによってPI3−キナーゼ活性
    が減少すると共に、前記アンタゴニストが無効化された
    DRHNSN配列を含有するp110サブユニットであ
    る。
  7. 【請求項7】 p85サブユニットのSH2間領域に位
    置するエピトープにおいてPI3−キナーゼの前記p8
    5サブユニットに特定的に結合する分離抗体であって、
    前記抗体は少なくとも前記PI3−キナーゼの前記p8
    5βサブユニットのアミノ酸残基445〜アミノ酸残基
    485を有するエピトープに特定的に結合するかまたは
    前記PI3−キナーゼの前記p85αサブユニットのア
    ミノ酸残基478〜アミノ酸残基513を有するエピト
    ープに特定的に結合するものであり、それにより前記P
    I3−キナーゼの前記p85サブユニットとp110サ
    ブユニットとの間の結合に干渉する、PI3−キナーゼ
    のサブユニット結合抗体。
  8. 【請求項8】 モノクローナル抗体である請求項7に記
    載のPI3−キナーゼのサブユニット結合抗体。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載のPI3−キナーゼのサ
    ブユニット結合抗体を生成するハイブリドーマ細胞系。
  10. 【請求項10】 PI3−キナーゼのp85サブユニッ
    ト及びp110サブユニット間の結合を抑制する方法で
    あって、p85を含有するサンプルを請求項7の抗体に
    接触させる工程を有する、PI3−キナーゼのサブユニ
    ット間の結合活性の調整方法。
  11. 【請求項11】 PI3−キナーゼ酵素のセリンキナー
    ゼ活性を抑制する方法であって、前記PI3−キナーゼ
    のp85サブユニットの位置608においてセリン残基
    を無効化、又はセリン残基に干渉する工程を有するセリ
    ンキナーゼ活性の抑制方法。
  12. 【請求項12】 前記セリン残基が標的変異によって無
    効化される請求項11に記載のセリンキナーゼ活性の抑
    制方法。
  13. 【請求項13】 PI3キナーゼのセリンである位置6
    08において燐酸化されているp85サブユニットに結
    合する分子であって、前記分子が前記サブユニットに結
    合することによりセリンである位置608における燐酸
    化が保護され、これによってPI3−キナーゼ活性を抑
    制する分子であり、かつ前記分子が抗体または標的化さ
    れたDRHNSN配列を含有するp110サブユニット
    である、サブユニット結合分子。
  14. 【請求項14】 前記分子が抗体である請求項13に記
    載のPI3−キナーゼ活性を抑制するサブユニット結合
    分子。
  15. 【請求項15】 前記抗体はモノクローナル抗体である
    請求項14に記載のPI3−キナーゼ活性を抑制するサ
    ブユニット結合分子。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載のモノクローナル抗
    体を生成するハイブリドーマ細胞系。
  17. 【請求項17】 PI3−キナーゼ活性を抑制するため
    の薬剤を製造する方法であって、PI3−キナーゼ酵素
    のDRHNSN配列に結合、又はDRHNSN配列に干
    渉することが可能な物質を選択し、ここで前記物質は抗
    体または標的化されたDRHNSN配列を含有するp1
    10サブユニットであり、この物質を医療用に調合する
    工程を有する、PI3−キナーゼ活性の抑制剤製造方
    法。
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