JP3471560B2 - めっき密着性に優れる溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
めっき密着性に優れる溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、酸化スケール付き
熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融亜鉛系めっき鋼
板の製造方法に係り、特に板厚2.5mm以下の薄物ない
し極薄物の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、熱間圧延ラインにて製造された熱
延鋼板をめっき原板として溶融亜鉛めっきを施す場合、
熱間圧延の際に鋼板の表裏面に生成付着した酸化スケー
ル(鉄酸化物、黒皮ともいう。)を酸洗ラインにて除去
した後、溶融亜鉛めっきラインに投入し、めっきを施す
ことが通例であった。 【0003】近年、製造コストの削減などのために酸洗
ラインでの酸洗工程の省略が検討されるようになり、例
えば特開平6−145937号公報、特開平6−279
967号公報に開示されているように、酸化スケールが
付着したままの熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融
亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。これらは
いずれも酸化スケールが付着したままの熱延鋼板を溶融
亜鉛めっきラインに通板してめっきを施すものであり、
酸化スケールの付着による不めっきやめっき密着性の低
下を防止するため、原板の酸化スケール付着量や溶融亜
鉛めっきラインの還元条件などを規定したものである。 【0004】前記公報に開示の製造方法は、連続式溶融
亜鉛めっきラインにおいて、めっき原板の地鉄と溶融亜
鉛との濡れ性を向上させ、不めっきのない、めっき密着
性の良好なめっき処理を行うために、めっき原板表面を
活性化する目的で、水素を含むガス雰囲気中で原板を約
600〜800℃に加熱し、その表面を還元処理するも
のであり、還元処理条件として、水素濃度、還元温度、
還元時間などを規定している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記還元処理を行うこ
とにより、不めっきの発生は防止されるのであるが、め
っき密着性については満足できるレベルまでには到らな
いのが現状であり、その改善が強く望まれている。 【0006】本発明はかかる現状に鑑み、酸化スケール
付きの熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融亜鉛系め
っき鋼板の製造方法において、めっき密着性をさらに改
善することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、めっき層の密着機構を詳細に検討し
た結果、めっき密着性はめっき原板である熱延鋼板の酸
化スケール密着性、詳細には酸化スケール剥離量により
大きく影響されることを知見し、熱延鋼板の熱延条件、
スケール剥離量及びめっき条件を規定することにより本
発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明の溶融亜鉛系めっき鋼板
の製造方法は、鋼スラブを熱間圧延し、仕上圧延後50
〜150℃/sの冷却速度で650℃以下まで冷却した
後、巻取ることにより、熱延鋼板の表面に付着した酸化
スケールの平均剥離量が10g/m2以下の熱延原板を得
て、該熱延原板をスキンパス圧延後、酸洗することなく
300℃以上の還元性ガス雰囲気中で少なくとも酸化ス
ケールの表面を還元処理した後、溶融亜鉛系めっきを施
すものである。なお、溶融亜鉛系めっきとは、めっき浴
中に通常の溶融亜鉛めっきレベルのAl、あるいはそれ
以上のAlを含有してもよく、あるいは更にSi、P
b、Fe、Cr、Ni、希土類元素の1種または2種以
上の添加浴であっても適用可能なことを意味するもので
ある。 【0009】本発明を詳細に説明するに際し、まず本発
明がなされた技術背景および製造条件の限定の根拠とな
った実験について説明する。本発明者らは前記公報に開
示された還元条件を溶融亜鉛めっきラインの還元工程に
適用して、酸化スケール付きの熱延鋼板をめっき原板と
して溶融亜鉛めっき鋼板を製造したところ、酸化スケー
ルは還元工程では完全には還元除去されず、溶融亜鉛め
っき鋼板は地鉄の上に酸化スケール層が残り,その上に
溶融亜鉛めっき層が被覆された構造となった。このよう
な構成の溶融亜鉛めっき鋼板に曲げなどの加工を与えた
ところ、酸化スケールの性状によってはめっき層の剥離
や割れが発生し、めっき密着性の劣化が認められた。こ
の剥離部分を顕微鏡でミクロ的に観察したところ、めっ
き層の剥離や割れは主として地鉄と酸化スケール層の界
面での剥離によって発生していることが判明した。この
結果から、めっき層の密着性には酸化スケール層の地鉄
に対する密着性(耐剥離性)が大幅に関与していること
が分かった。そこで、下記の実験を行い、めっき密着性
を左右する条件を見極めた。 【0010】表1に示す軟鋼(鋼No. A)、390N/
mm2 級(鋼No. B)、440N/mm2 級(鋼No. C)の
鋼を用いて、表2に示す仕上温度(FDT)、仕上圧延
終了後、鋼板温度が650℃まで冷却されるまでの平均
冷却速度(CR)にて冷却した後、巻取り、板厚1.4
〜3.8mmのコイルを得た。そして、スキンパス圧延を
施した後、酸化スケールの厚さおよび地鉄に対する密着
性(耐剥離性)を調査するための試験片、並びに実験室
溶融亜鉛めっき用の試験片を採取した。めっき用試験片
は、還元性雰囲気ガス中で700℃×30s保持し、酸
化スケール層の表面に純鉄層を形成した後、460℃に
て溶融亜鉛めっき処理を施したものである。 【0011】めっき原板の酸化スケールの密着性は、引
張試験片に10%の引張り歪を与えた後、表面側の酸化
スケールを粘着テープにて剥離し、ICP分析により酸
化スケールの剥離量を求めた。 【0012】溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価
は、JIS G3303溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯
の機械的性質;曲げ性に基づいて実施し、めっき剥離無
から剥離大までを4段階(特に良好、良好、やや劣る、
劣る)に分けて評価した。 【0013】めっき原板の酸化スケール厚さ、酸化スケ
ール剥離量および溶融亜鉛めっき後のめっき密着性試験
結果を表2に併せて示す。また、めっき密着性の評価と
めっき原板の酸化スケール剥離量との関係を整理したグ
ラフを図1に示す。 【0014】 【表1】 【0015】 【表2】【0016】図1から明らかなとおり、めっき密着性は
めっき原板の酸化スケール剥離量と密接な関係があり、
剥離量を10g/m2以下、好ましく6g/m2以下にする
ことによりめっき密着性が良好になることがわかる。 【0017】上記結果を基に、本発明の製造条件の限定
理由を以下説明する。熱延条件については、仕上圧延
後、50〜150℃/sの平均冷却速度で650℃以下
まで冷却した後、巻き取る。冷却速度は、酸化スケール
剥離量を10g/m2以下として原板の酸化スケール密着
性を高めるためには、大気中に曝される時間、さらには
650℃以上の温度を維持する時間が極力短かい方が好
ましく、冷却速度は極力速い方が望ましいが、150℃
/sを越える速度は実用的でないため、本発明では50
〜150℃/s、好ましくは60〜120℃/sとす
る。 【0018】なお、連続鋳造から熱延仕上げまでの製造
工程は、直送圧延(HDR)、熱片挿入圧延(HC
R)、再加熱圧延(HRR)などのいずれの方法でもよ
く、スラブ加熱温度も特に限定するものではないが、省
エネによるコストダウン及び加工性改善から1050〜
1200℃が好ましい。また、熱延仕上温度についても
特に限定するものではないが、加工性の確保と材質の均
一化のためにAr3点以上が好ましく、更にスケール密着
性の向上と結晶粒細粒化による加工性の向上のためには
Ar3点〜(Ar3点+50)℃、特にAr3点直上が望まし
い。 【0019】めっき前の還元処理については、酸化スケ
ールとめっき層との密着性を確保するために、酸化スケ
ール層の表面を溶融めっき金属と濡れ性の良好な純鉄に
する必要があり、このために還元温度は300℃以上、
好ましくは500〜800℃とする。酸化スケールの表
面が還元されて生成した純鉄は、非常に薄いものでも効
果があるため、前記還元温度における保持時間は特に限
定されないが、通常、連続式溶融亜鉛系めっきラインで
実現可能な20〜80秒程度でよい。また、還元性雰囲
気ガスの種類も特に問わない。 【0020】また、めっき前にスキンパス圧延あるいは
レベラー等の酸化スケールへの歪みの付与手段を適用す
ることにより、酸化スケール層にクラックが導入され、
このクラックを通して、めっき溶融金属が地鉄と直接接
触するため、いわゆるアンカー効果によりめっき密着性
がより改善されるようになる。 【0021】めっき原板となる熱延鋼板の鋼成分につい
ては、鋼板表面に酸化スケールが付着しているため、鋼
成分がめっき性に与える影響は小さく、特に限定されな
いが、主成分例(単位mass%)を下記に示す。Cは0.
15%以下が好ましく、原板の加工性が望まれる場合は
極C鋼、さらには極低C鋼が好ましい。Siは成分コス
トが比較的安価で、延性を損なわずに高強度を得るのに
有効な元素である。酸洗板をめっきする場合、Siの表
面濃化がめっき性を劣化させるため多量の添加は難かし
いが、本発明では未酸洗で酸化スケールが付着している
ため、1.5%以下で要求強度に応じて添加することが
できる。Mnは鋼板の焼き入れ性を高め、強度の高い低
温変態組織が得られやすいため2.0%以下で必要強度
に応じて添加することができる。P,Sは特に問わない
が、高強度で高延性が必要な場合には0.005%以下
に止めることが好ましい。Alは溶鋼を脱酸する目的で
添加される。0.10%以下であればよく、好ましくは
0.005〜0.040%である。 【0022】以上の主成分のほか、必要により下記の成
分を含有することができる。Ti,Nb,Vは、炭窒化
物を形成し高強度化に有効である。また、極低C鋼の場
合は特に延性が向上する。各単独または複合添加して、
合計で0.005〜0.070%の範囲が好ましい。そ
の他の元素としてCr≦1.0%、Ca≦0.010
%、Cu≦0.5%、B≦0.005%であれば加工性
に影響を及ぼさないので、必要に応じて単独または複合
添加することができる。 【0023】なお、本発明ではめっき原板の板厚を限定
するものではないが、特に2.5mm厚さ以下の薄物及び
極薄物の方が原板の酸化スケール密着性ひいてはめっき
密着性を向上させることができるので望ましい。酸化ス
ケール密着性の向上理由は、、板厚が薄いほど熱延後の
平均冷却速度が速くなるため、酸化スケール厚さがより
薄くなるためと考えられる。さらに、板厚が薄くなれば
冷延鋼板をめっき原板とする溶融亜鉛めっき鋼板の代替
としての製品化も可能となり、コストダウン、生産性の
向上に寄与することができる。 【0024】また、めっき完了後は必要とされる特性、
用途に応じて、合金化処理、スキンパス、クロメート処
理、塗装などの表面処理を1種ないし2種以上を適用し
てもよい。 【0025】 【実施例】表3に示す化学成分を有す鋼を転炉溶解しス
ラブとした後、熱延時のスラブ加熱温度1150℃と
し、表4中に示す各熱延条件にて1.4〜3.8mm厚さ
のコイルとした。一部の試料を除き、これにスキンパス
圧延を施した後、めっき原板での材質、酸化スケール厚
さ、酸化スケール密着性調査用の試験片および実験室で
の溶融亜鉛めっき用の試験片を採取した。めっき条件は
表中に示すの還元処理後、460℃にて溶融亜鉛めっき
処理(非合金化処理)を実施した。原板の酸化スケール
密着性、めっき後のめっき密着性などの試験、評価法は
前述と同様であり、調査結果を表4に併せて示す。鋼種
A,D,E,Fは軟鋼、鋼種Bは390N/mm2 級、鋼
種Cは440N/mm2 級、鋼種Gは640N/mm2 級の
強度鋼板である。 【0026】 【表3】 【0027】 【表4】【0028】表4より、熱延後の冷却条件、スキンパス
圧延後の酸化スケールの還元条件が本発明条件を満足
し、しかも原板の酸化スケール剥離量が10g/m2以下
の鋼板はいずれもめっき後のめっき密着性に優れている
ことがわかる。表4中には板厚変化材の結果も示すが、
例えば試料No. 1と7、No. 9と14から明らかなとお
り、板厚の薄いほど、酸化スケール剥離量が少なく、め
っき密着性も向上していることがわかる。 【0029】これに対して、熱延条件、還元条件が本発
明範囲内であっても酸化スケール剥離量が10g/m2を
越える鋼板はめっき密着性に劣ることがわかる。また、
酸化スケール厚さが薄い鋼板でもスケール剥離量が10
g/m2を越えるもの(例えば、試料No. 4、22)では
めっき密着性が劣ることがわかる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の溶融亜鉛
めっき鋼板の製造方法によれば、仕上圧延後50〜15
0℃/sの冷却速度で650℃以下まで冷却した後、巻
取ることにより、熱延鋼板の表裏面に付着した酸化スケ
ールの平均剥離量が10g/m2以下の熱延原板を得て、
これをスキンパス圧延後に酸洗することなく還元処理し
たものをめっき原板として用いるので、優れためっき密
着性が得られ、製造コストが安価で生産性にも優れる。
熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融亜鉛系めっき鋼
板の製造方法に係り、特に板厚2.5mm以下の薄物ない
し極薄物の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、熱間圧延ラインにて製造された熱
延鋼板をめっき原板として溶融亜鉛めっきを施す場合、
熱間圧延の際に鋼板の表裏面に生成付着した酸化スケー
ル(鉄酸化物、黒皮ともいう。)を酸洗ラインにて除去
した後、溶融亜鉛めっきラインに投入し、めっきを施す
ことが通例であった。 【0003】近年、製造コストの削減などのために酸洗
ラインでの酸洗工程の省略が検討されるようになり、例
えば特開平6−145937号公報、特開平6−279
967号公報に開示されているように、酸化スケールが
付着したままの熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融
亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。これらは
いずれも酸化スケールが付着したままの熱延鋼板を溶融
亜鉛めっきラインに通板してめっきを施すものであり、
酸化スケールの付着による不めっきやめっき密着性の低
下を防止するため、原板の酸化スケール付着量や溶融亜
鉛めっきラインの還元条件などを規定したものである。 【0004】前記公報に開示の製造方法は、連続式溶融
亜鉛めっきラインにおいて、めっき原板の地鉄と溶融亜
鉛との濡れ性を向上させ、不めっきのない、めっき密着
性の良好なめっき処理を行うために、めっき原板表面を
活性化する目的で、水素を含むガス雰囲気中で原板を約
600〜800℃に加熱し、その表面を還元処理するも
のであり、還元処理条件として、水素濃度、還元温度、
還元時間などを規定している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記還元処理を行うこ
とにより、不めっきの発生は防止されるのであるが、め
っき密着性については満足できるレベルまでには到らな
いのが現状であり、その改善が強く望まれている。 【0006】本発明はかかる現状に鑑み、酸化スケール
付きの熱延鋼板をめっき原板として用いる溶融亜鉛系め
っき鋼板の製造方法において、めっき密着性をさらに改
善することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、めっき層の密着機構を詳細に検討し
た結果、めっき密着性はめっき原板である熱延鋼板の酸
化スケール密着性、詳細には酸化スケール剥離量により
大きく影響されることを知見し、熱延鋼板の熱延条件、
スケール剥離量及びめっき条件を規定することにより本
発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明の溶融亜鉛系めっき鋼板
の製造方法は、鋼スラブを熱間圧延し、仕上圧延後50
〜150℃/sの冷却速度で650℃以下まで冷却した
後、巻取ることにより、熱延鋼板の表面に付着した酸化
スケールの平均剥離量が10g/m2以下の熱延原板を得
て、該熱延原板をスキンパス圧延後、酸洗することなく
300℃以上の還元性ガス雰囲気中で少なくとも酸化ス
ケールの表面を還元処理した後、溶融亜鉛系めっきを施
すものである。なお、溶融亜鉛系めっきとは、めっき浴
中に通常の溶融亜鉛めっきレベルのAl、あるいはそれ
以上のAlを含有してもよく、あるいは更にSi、P
b、Fe、Cr、Ni、希土類元素の1種または2種以
上の添加浴であっても適用可能なことを意味するもので
ある。 【0009】本発明を詳細に説明するに際し、まず本発
明がなされた技術背景および製造条件の限定の根拠とな
った実験について説明する。本発明者らは前記公報に開
示された還元条件を溶融亜鉛めっきラインの還元工程に
適用して、酸化スケール付きの熱延鋼板をめっき原板と
して溶融亜鉛めっき鋼板を製造したところ、酸化スケー
ルは還元工程では完全には還元除去されず、溶融亜鉛め
っき鋼板は地鉄の上に酸化スケール層が残り,その上に
溶融亜鉛めっき層が被覆された構造となった。このよう
な構成の溶融亜鉛めっき鋼板に曲げなどの加工を与えた
ところ、酸化スケールの性状によってはめっき層の剥離
や割れが発生し、めっき密着性の劣化が認められた。こ
の剥離部分を顕微鏡でミクロ的に観察したところ、めっ
き層の剥離や割れは主として地鉄と酸化スケール層の界
面での剥離によって発生していることが判明した。この
結果から、めっき層の密着性には酸化スケール層の地鉄
に対する密着性(耐剥離性)が大幅に関与していること
が分かった。そこで、下記の実験を行い、めっき密着性
を左右する条件を見極めた。 【0010】表1に示す軟鋼(鋼No. A)、390N/
mm2 級(鋼No. B)、440N/mm2 級(鋼No. C)の
鋼を用いて、表2に示す仕上温度(FDT)、仕上圧延
終了後、鋼板温度が650℃まで冷却されるまでの平均
冷却速度(CR)にて冷却した後、巻取り、板厚1.4
〜3.8mmのコイルを得た。そして、スキンパス圧延を
施した後、酸化スケールの厚さおよび地鉄に対する密着
性(耐剥離性)を調査するための試験片、並びに実験室
溶融亜鉛めっき用の試験片を採取した。めっき用試験片
は、還元性雰囲気ガス中で700℃×30s保持し、酸
化スケール層の表面に純鉄層を形成した後、460℃に
て溶融亜鉛めっき処理を施したものである。 【0011】めっき原板の酸化スケールの密着性は、引
張試験片に10%の引張り歪を与えた後、表面側の酸化
スケールを粘着テープにて剥離し、ICP分析により酸
化スケールの剥離量を求めた。 【0012】溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価
は、JIS G3303溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯
の機械的性質;曲げ性に基づいて実施し、めっき剥離無
から剥離大までを4段階(特に良好、良好、やや劣る、
劣る)に分けて評価した。 【0013】めっき原板の酸化スケール厚さ、酸化スケ
ール剥離量および溶融亜鉛めっき後のめっき密着性試験
結果を表2に併せて示す。また、めっき密着性の評価と
めっき原板の酸化スケール剥離量との関係を整理したグ
ラフを図1に示す。 【0014】 【表1】 【0015】 【表2】【0016】図1から明らかなとおり、めっき密着性は
めっき原板の酸化スケール剥離量と密接な関係があり、
剥離量を10g/m2以下、好ましく6g/m2以下にする
ことによりめっき密着性が良好になることがわかる。 【0017】上記結果を基に、本発明の製造条件の限定
理由を以下説明する。熱延条件については、仕上圧延
後、50〜150℃/sの平均冷却速度で650℃以下
まで冷却した後、巻き取る。冷却速度は、酸化スケール
剥離量を10g/m2以下として原板の酸化スケール密着
性を高めるためには、大気中に曝される時間、さらには
650℃以上の温度を維持する時間が極力短かい方が好
ましく、冷却速度は極力速い方が望ましいが、150℃
/sを越える速度は実用的でないため、本発明では50
〜150℃/s、好ましくは60〜120℃/sとす
る。 【0018】なお、連続鋳造から熱延仕上げまでの製造
工程は、直送圧延(HDR)、熱片挿入圧延(HC
R)、再加熱圧延(HRR)などのいずれの方法でもよ
く、スラブ加熱温度も特に限定するものではないが、省
エネによるコストダウン及び加工性改善から1050〜
1200℃が好ましい。また、熱延仕上温度についても
特に限定するものではないが、加工性の確保と材質の均
一化のためにAr3点以上が好ましく、更にスケール密着
性の向上と結晶粒細粒化による加工性の向上のためには
Ar3点〜(Ar3点+50)℃、特にAr3点直上が望まし
い。 【0019】めっき前の還元処理については、酸化スケ
ールとめっき層との密着性を確保するために、酸化スケ
ール層の表面を溶融めっき金属と濡れ性の良好な純鉄に
する必要があり、このために還元温度は300℃以上、
好ましくは500〜800℃とする。酸化スケールの表
面が還元されて生成した純鉄は、非常に薄いものでも効
果があるため、前記還元温度における保持時間は特に限
定されないが、通常、連続式溶融亜鉛系めっきラインで
実現可能な20〜80秒程度でよい。また、還元性雰囲
気ガスの種類も特に問わない。 【0020】また、めっき前にスキンパス圧延あるいは
レベラー等の酸化スケールへの歪みの付与手段を適用す
ることにより、酸化スケール層にクラックが導入され、
このクラックを通して、めっき溶融金属が地鉄と直接接
触するため、いわゆるアンカー効果によりめっき密着性
がより改善されるようになる。 【0021】めっき原板となる熱延鋼板の鋼成分につい
ては、鋼板表面に酸化スケールが付着しているため、鋼
成分がめっき性に与える影響は小さく、特に限定されな
いが、主成分例(単位mass%)を下記に示す。Cは0.
15%以下が好ましく、原板の加工性が望まれる場合は
極C鋼、さらには極低C鋼が好ましい。Siは成分コス
トが比較的安価で、延性を損なわずに高強度を得るのに
有効な元素である。酸洗板をめっきする場合、Siの表
面濃化がめっき性を劣化させるため多量の添加は難かし
いが、本発明では未酸洗で酸化スケールが付着している
ため、1.5%以下で要求強度に応じて添加することが
できる。Mnは鋼板の焼き入れ性を高め、強度の高い低
温変態組織が得られやすいため2.0%以下で必要強度
に応じて添加することができる。P,Sは特に問わない
が、高強度で高延性が必要な場合には0.005%以下
に止めることが好ましい。Alは溶鋼を脱酸する目的で
添加される。0.10%以下であればよく、好ましくは
0.005〜0.040%である。 【0022】以上の主成分のほか、必要により下記の成
分を含有することができる。Ti,Nb,Vは、炭窒化
物を形成し高強度化に有効である。また、極低C鋼の場
合は特に延性が向上する。各単独または複合添加して、
合計で0.005〜0.070%の範囲が好ましい。そ
の他の元素としてCr≦1.0%、Ca≦0.010
%、Cu≦0.5%、B≦0.005%であれば加工性
に影響を及ぼさないので、必要に応じて単独または複合
添加することができる。 【0023】なお、本発明ではめっき原板の板厚を限定
するものではないが、特に2.5mm厚さ以下の薄物及び
極薄物の方が原板の酸化スケール密着性ひいてはめっき
密着性を向上させることができるので望ましい。酸化ス
ケール密着性の向上理由は、、板厚が薄いほど熱延後の
平均冷却速度が速くなるため、酸化スケール厚さがより
薄くなるためと考えられる。さらに、板厚が薄くなれば
冷延鋼板をめっき原板とする溶融亜鉛めっき鋼板の代替
としての製品化も可能となり、コストダウン、生産性の
向上に寄与することができる。 【0024】また、めっき完了後は必要とされる特性、
用途に応じて、合金化処理、スキンパス、クロメート処
理、塗装などの表面処理を1種ないし2種以上を適用し
てもよい。 【0025】 【実施例】表3に示す化学成分を有す鋼を転炉溶解しス
ラブとした後、熱延時のスラブ加熱温度1150℃と
し、表4中に示す各熱延条件にて1.4〜3.8mm厚さ
のコイルとした。一部の試料を除き、これにスキンパス
圧延を施した後、めっき原板での材質、酸化スケール厚
さ、酸化スケール密着性調査用の試験片および実験室で
の溶融亜鉛めっき用の試験片を採取した。めっき条件は
表中に示すの還元処理後、460℃にて溶融亜鉛めっき
処理(非合金化処理)を実施した。原板の酸化スケール
密着性、めっき後のめっき密着性などの試験、評価法は
前述と同様であり、調査結果を表4に併せて示す。鋼種
A,D,E,Fは軟鋼、鋼種Bは390N/mm2 級、鋼
種Cは440N/mm2 級、鋼種Gは640N/mm2 級の
強度鋼板である。 【0026】 【表3】 【0027】 【表4】【0028】表4より、熱延後の冷却条件、スキンパス
圧延後の酸化スケールの還元条件が本発明条件を満足
し、しかも原板の酸化スケール剥離量が10g/m2以下
の鋼板はいずれもめっき後のめっき密着性に優れている
ことがわかる。表4中には板厚変化材の結果も示すが、
例えば試料No. 1と7、No. 9と14から明らかなとお
り、板厚の薄いほど、酸化スケール剥離量が少なく、め
っき密着性も向上していることがわかる。 【0029】これに対して、熱延条件、還元条件が本発
明範囲内であっても酸化スケール剥離量が10g/m2を
越える鋼板はめっき密着性に劣ることがわかる。また、
酸化スケール厚さが薄い鋼板でもスケール剥離量が10
g/m2を越えるもの(例えば、試料No. 4、22)では
めっき密着性が劣ることがわかる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の溶融亜鉛
めっき鋼板の製造方法によれば、仕上圧延後50〜15
0℃/sの冷却速度で650℃以下まで冷却した後、巻
取ることにより、熱延鋼板の表裏面に付着した酸化スケ
ールの平均剥離量が10g/m2以下の熱延原板を得て、
これをスキンパス圧延後に酸洗することなく還元処理し
たものをめっき原板として用いるので、優れためっき密
着性が得られ、製造コストが安価で生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】引張強さの異なるめっき原板の酸化スケール剥
離量とめっき後のめっき密着性との関係を示すグラフで
ある。
離量とめっき後のめっき密着性との関係を示すグラフで
ある。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 岩井 正敏
兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社
神戸製鋼所 加古川製鉄所内
(56)参考文献 特開 平10−1764(JP,A)
特開 平9−143662(JP,A)
特開 平6−264206(JP,A)
特開 平6−116695(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C21D 9/46 - 9/48
C21D 8/00 - 8/04
C23C 2/00 - 2/40
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋼スラブを熱間圧延し、仕上圧延後50
〜150℃/sの冷却速度で650℃以下まで冷却した
後、巻取ることにより、熱延鋼板の表裏面に付着した酸
化スケールの平均剥離量が10g/m2以下の熱延原板を
得て、該熱延原板をスキンパス圧延後、酸洗することな
く300℃以上の還元性ガス雰囲気中で少なくとも酸化
スケールの表面を還元処理した後、溶融亜鉛系めっきを
施すことを特徴とするめっき密着性に優れる溶融亜鉛系
めっき鋼板の製造方法。
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CN105297033A (zh) * | 2014-05-30 | 2016-02-03 | 宝山钢铁股份有限公司 | 热轧免酸洗直接冷轧还原退火热镀产品的生产方法 |
-
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